- 英
- creatinine, Cr, Cre, CRE
- 同
- メチルグリコシアミジン methylglycocyamidine
- 関
- クレアチン
物性
- 分子量:113.12 g/mol (wikipedia en)
臨床検査
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2013/03/28 14:14:03」(JST)
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| クレアチニン | 
|  | 
|  | 
| 
IUPAC名 
2-アミノ-1-メチル-5H-イミダゾール-4-オン | 
| 識別情報 | 
| CAS登録番号 | 60-27-5 | 
| PubChem | 588 | 
| MeSH | Creatinine | 
|  | 
| 特性 | 
| 化学式 | C4H7N3O | 
| モル質量 | 113.118 | 
| 外観 | 固体 | 
| 密度 | 1.09 g/cm3 | 
| 融点 | 300 ℃ | 
| 危険性 | 
| Sフレーズ | S24/25 | 
| 特記なき場合、データは常温(25 °C)・常圧(100 kPa)におけるものである。 | 
クレアチニン(英: creatinine, Cr, CER, CREA)は、筋肉へのエネルギーの供給源であるクレアチンリン酸の代謝産物。血清生化学検査ではCr、CRE、CREAなどの略号で記載される事が多い。本項では以下Crと記す。
| 
 目次
1 生理2 意義3 検査4 正常値5 判定 | 
生理
Crは主に筋肉で作られて血中に入り、糸球体で濾過された後、殆ど再吸収されず速やかに尿中に排出される。
意義
Crは主に筋肉で作られるので、血清中のCr濃度(以下、血清Cr値)は筋肉のスクリーニング検査に用いられる。また、Crは腎臓から速やかに尿中に排出されるので、血清Cr値は腎臓のスクリーニング検査に用いられる。また、血清Cr値は尿中Cr濃度と併せて腎機能検査に用いられる。
検査
血清Cr値を測定するには採血を行い、血清生化学検査を行う。尿中Cr濃度を測定するには一日蓄尿中検査を行い、一日蓄尿中の重さを体重で割って算出する。腎機能を検査するには血清Cr値と尿中Cr濃度からクレアチニンクリアランスを計算する。
正常値
Cr総量は体筋肉量を反映しているので、体筋肉率の多い男性の方が正常値も高い。正常値は施設によって若干異なるが概ね以下の通り。
- 血清Cr値:男性で0.6~1.2mg/dl、女性で0.4~1.0mg/dl
- 尿中Cr濃度:男性で20~26mg/kg/日、女性で14~22mg/kg/日
判定
- 血清Cr値が正常以上であったり尿中Cr濃度が正常以下である時、異常が高度であれば腎不全が疑われる。異常が軽度であれば、血清濃度が高くなる脱水等や、心不全・ショックや、腎炎(糸球体腎炎、間質性腎炎、等)や、尿路異常症(尿管結石、前立腺肥大、等)や、血中高抗利尿ホルモン症(先端巨大症、等)等が示唆される。
- 血清Cr値が正常範囲以下であったり尿中Cr濃度が正常範囲以上であれば、多くの場合、妊娠、糖尿病の初期、長期臥床、等が示唆される。稀に筋肉量が減る病気(尿崩症、筋ジストロフィー、多発性筋炎、筋萎縮性側索硬化症、等)もある。
|  | ウィキメディア・コモンズには、クレアチニンに関連するカテゴリがあります。 | 
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| アミノ酸代謝の代謝中間体 |  
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| K→アセチルCoA | 
| リシン→ | サッカロピン - アリシン - α-アミノアジピン酸 - グルタリルCoA - グルタコニルCoA - クロトニルCoA - β-ヒドロキシブチリルCoA |  
|  |  
| ロイシン→ | α-ケトイソカプロン酸 - イソバレリルCoA - 3-メチルクロトニルCoA - 3-メチルグルタコニルCoA - ヒドロキシメチルグルタリルCoA |  
|  |  
| トリプトファン→アラニン→ | N'-ホルミルキヌレニン - キヌレニン - アントラニル酸 - 3-ヒドロキシキヌレニン - 3-ヒドロキシアントラニル酸 - 2-アミノ-3-カルボキシムコン酸セミアルデヒド - 2-アミノムコン酸セミアルデヒド - 2-アミノムコン酸 - グルタリルCoA |  |  
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| G | 
| G→ピルビン酸→クエン酸 | 
| グリシン→セリン→ | 3-ホスホグリセリン酸グリシン→クレアチン: グリコシアミン ·  クレアチンリン酸 ·  クレアチニン
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|  |  
| G→グルタミン酸→α-ケトグルタル酸
 | 
| ヒスチジン→ | ウロカニン酸 - イミダゾール-4-オン-5-プロピオン酸 - ホルムイミノグルタミン酸 - グルタミン酸-1-セミアルデヒド |  
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| プロリン→ | 1-ピロリン-5-カルボン酸 |  
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| アルギニン→ | オルニチン - プトレシン - アグマチン |  
|  |  
| 他 | システイン+グルタミン酸→グルタチオン: γ-グルタミルシステイン |  |  
|  |  
| G→プロピオニルCoA→スクシニルCoA
 | 
| バリン→ | α-ケトイソ吉草酸 - イソブチリルCoA - メタクリリルCoA - 3-ヒドロキシイソブチリルCoA - 3-ヒドロキシイソ酪酸 - 2-メチル-3-オキソプロパン酸 |  
|  |  
| イソロイシン→ | 2,3-ジヒドロキシ-3-メチルペンタン酸 - 2-メチルブチリルCoA - チグリルCoA - 2-メチルアセトアセチルCoA |  
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| メチオニン→ | S-アデノシルメチオニン - S-アデノシル-L-ホモシステイン - ホモシステイン - シスタチオニン - α-ケト酪酸 |  
|  |  
| トレオニン→ | α-ケト酪酸 |  
|  |  
| プロピオニルCoA→ | メチルマロニルCoA |  |  
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| G→フマル酸 | 
|  |  
| フェニルアラニン→チロシン→ | 4-ヒドロキシフェニルピルビン酸 - ホモゲンチジン酸 - 4-マレイルアセト酢酸 - 4-フマリルアセト酢酸 |  |  
|  |  
| G→オキサロ酢酸 | 尿素回路を参照 |  |  
|  |  
| 他 |  |  | 
 
UpToDate Contents
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Japanese Journal
- 特発性血小板減少性紫斑病を有した腎不全患者に行った血液型不適合生体腎移植の1例
- 内山 結理,堀田 記世彦,吉田 美穂,高田 徳容,佐藤 択矢,望月 端吾,村橋 範浩,山本 聡,関 利盛,富樫 正樹,平野 哲夫,原田 浩
- 2011-03-31
- … 移植後は即座に利尿が得られ、移植後4 日目には血清クレアチニン(Cre)1.59m g/diまで低下した。 …
- NAID 120003145497
 
 
- 学校検尿の意義と課題 (現代の学校保健 2011) -- (学校保健の現代的課題)
 
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- クレアチニンとは、筋肉運動のエネルギーとして代謝される「クレアチン」の代謝後に残る  老廃物のことです。 クレアチンは主に、無 ... クレアチンが代謝された後の、クレアチニン  老廃物は「腎臓のろ過機能」によってろ過されたのち、尿とともに体外へ排出されます。
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★リンクテーブル★
  [★]
- 次の文を読み、72~74の問いに答えよ。
- 70歳の女性。発熱および左殿部痛のため救急車で搬入された。
- 現病歴:1か月前から左殿部に圧痛を伴う発赤が出現した。また、しばしば腟から排膿することがあった。10日前から発熱が出現し、以後は食事摂取量が少なかったという。左殿部の痛みにより歩行も困難になったため救急車を要請した。
- 既往歴:10年前に人工物による子宮脱の手術を受けた。
- 生活歴:専業主婦。家族歴:父が糖尿病、高血圧症。
- 現症:意識レベルはJCSⅠ-2。身長 145cm、体重 46.6kg。体温 39.0℃。心拍数 92/分、整。血圧 108/76mmHg。呼吸数 24/分。SpO2 98%(マスク 5L/分酸素投与下)。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。左殿部(別冊No.17A)を別に示す。同部に強い圧痛を認める。内診で腟後壁に瘻孔と排膿が観察され、膿は悪臭である。直腸指診では異常を認めない。
- 検査所見:血液所見:赤血球 403万、Hb 12.2g/dL、Ht 35%、白血球 1,800、血小板 3万、PT-INR 1.3(基準 0.9~1.1)、血清FDP 26μg/mL(基準 10以下)。血液生化学所見:総蛋白 4.6g/dL、アルブミン 1.7g/dL、総ビリルビン 2.4mg/dL、AST 48U/L、ALT 47U/L、LD 216U/L(基準 120~245)、γ-GT 40U/L(基準 8~50)、アミラーゼ 17U/L(基準 37~160)、CK 72U/L(基準 30~140)、尿素窒素 32mg/dL、クレアチニン 2.1mg/dL、血糖 215mg/dL、HbA1c 9.0%(基準 4.6~6.2)、Na 132mEq/L、K 3.8mEq/L、Cl 105mEq/L。CRP 19mg/dL。殿部CTの水平断像(別冊No.17B)を別に示す。
- この患者において重症度判定に有用でないのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [114F073]←[国試_114]→[114F075]
  [★]
- 79歳の女性。上腕から背中の痛みとこわばりを主訴に来院した。
- 現病歴:2週間前に、両側上腕から背中にかけての痛みとこわばりが出現した。1週間前から右側の拍動性の頭痛を自覚している。また、夕方から夜にかけて 38℃台の発熱があった。起床時に背中のこわばりがひどく、寝返りができないため受診した。週間で体重が 1.5kg減少した。悪心、嘔吐はなく、四肢のしびれや脱力はない。
- 既往歴:高血圧症で内服治療中。片頭痛の既往はない。
- 生活歴:独居生活。喫煙歴と飲酒歴はない。
- 現症:意識は清明。体温 38.9℃。脈拍 104/分、整。血圧 142/80mmHg。呼吸数 14/分。眼瞼結膜は貧血様である。右側頭部に索状の腫脹と圧痛を認めるが、皮疹は認めない。項部硬直はなく、頸部リンパ節を触知しない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。圧痛や腫瘤を認めない。ばち指、Osler結節および下腿浮腫を認めない。両側の上腕に把握痛を認める。関節に腫脹と圧痛を認めない。
- 精査の結果、副腎皮質ステロイドの内服加療を行うこととした。治療に伴い注意すべき検査項目はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [113B042]←[国試_113]→[113B044]
  [★]
- 6歳の女児。腹痛と血便を主訴に来院した。昨日から腹痛を訴え、本日血便がみられたため、母親に連れられて受診した。2日前に近所の店で焼肉を食べたという。意識は清明。体重 20kg。体温 37.5℃。脈拍 90/分、整。血圧 110/60mmHg。呼吸数 20/分。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦で臍周囲に軽度圧痛を認める。肝・脾を触知しない。腸雑音は亢進している。尿所見:蛋白 (-)、糖 (-)、ケトン体 2+、潜血(-)。血液所見:赤血球 420万、Hb 13.2g/dL、Ht 42%、白血球 12,300(桿状核好中球 30%、分葉核好中球 55%、好酸球 1%、好塩基球 1%、単球 6%、リンパ球 7%)、血小板 21万、PT-INR 1.2(基準 0.9~1.1)、APTT 32秒(基準対照 32.2)。血液生化学所見:総蛋白 7.5g/dL、アルブミン 3.9g/dL、総ビリルビン 0.9mg/dL、AST 28U/L、ALT 16U/L、LD 300U/L(基準 175~320)、CK 60U/L(基準 46~230)、尿素窒素 20mg/dL、クレアチニン 0.6mg/dL、血糖 98mg/dL、Na 131mEq/L、K 4.4mEq/L、Cl 97mEq/L。CRP 4.5mg/dL。便中ベロトキシン陽性であった。
- この患者で溶血性尿毒症症候群(HUS)の発症に注意するために有用な血液検査項目はどれか。3つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [113A073]←[国試_113]→[113A075]
  [★]
- 次の文を読み、63~65の問いに答えよ。
- 25歳の男性。気分不良を主訴に来院した。
- 現病歴:官庁街近くのレストランで昼食をとっていたところ「液体のようなものがまかれた」という声がして、レストラン内で数人が倒れた。気分が悪くなったためレストランから飛び出し、徒歩で近くの病院を受診した。会話は可能であり、目の前が暗く感じ、鼻水が止まらないと訴えている。
- 患者を救急室で診察し以下の情報を得た。
- 既往歴:幼少時からアレルギー性鼻炎がある。
- 生活歴:独身。1人暮らし。会社員。喫煙は20本/日を5年間。飲酒はビール500ml/日を5年間。
- 家族歴:母親が高血圧症で内服加療中。
- 現症:意識は清明。頭痛と悪心とを訴えている。体温36.8℃。脈拍108/分、整。血圧140/90mmHg。呼吸数24/分。SpO2 92%(room air)。瞳孔は高度に縮瞳し、対光反射は消失している。鼻汁、流涎および発汗がみられる。四肢に運動麻痺を認めない。腱反射の異常を認めない。呼吸音に異常を認めない。心雑音を聴取しない。
- この患者で予想される血液生化学所見はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [107G063]←[国試_107]→[107G065]
  [★]
- 次の文を読み、30、31の問いに答えよ。
- 45歳の女性。動悸と体重減少とを主訴に来院した。
- 現病歴:1か月前から動悸、発汗および手指振戦が出現し改善しないため受診した。食欲は普通だが1か月間で体重が5kg減少した。口渇、多飲および多尿は自覚していない。
- 既往歴:9歳で虫垂炎。
- 生活歴:喫煙歴と飲酒歴とはない。
- 家族歴:姉が脂質異常症で治療中。
- 現症:意識は清明。身長 163cm、体重 58kg。体温 37.1℃。脈拍 102/分、不整。血圧 116/64mmHg。眼瞼結膜は貧血様でない。眼瞼短縮を伴う眼球突出を認める。甲状腺はびまん性に腫大している。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。皮膚は湿潤。下腿に浮腫を認めない。
- 検査所見:血液所見:赤血球 470万、Hb 12.9g/dL、Ht 40%、白血球 4,800、血小板 21万。血液生化学所見:ALP 478IU/L(基準 115~359)、空腹時血糖 92mg/dL、総コレステロール 122mg/dL、TSH 0.02μU/mL未満(基準 0.4~4.0)、FT4 8.5ng/dL(基準 0.8~1.8)。
- 内服治療の開始早期に、変動に最も注意すべき検査項目はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [109C030]←[国試_109]→[109D001]
  [★]
- 次の文を読み、33、34の問いに答えよ。
- 62歳の女性。意識障害のため家族とともに来院した。
- 現病歴 : このところ忙しく便秘気味であった。昨夕から食事中に箸を落としたり、しばらくボーッとするなど、少し様子がおかしいことに家族が気付いた。
- 既往歴 : 30歳時分娩の際に大量出血をきたし輸血を受けた。病院に行くのが嫌いなため、その後血液検査を受けたことがない。
- 現症 : 意識はやや低下している。身長157cm、体重56kg。体温35.8℃。脈拍80/分、整。血圧146/82mmHg。眼球結膜に軽度の黄染を認める。胸部にくも状血管腫を認める。腹部は平坦、軟で、心窩部に肝を8cm触知する。脾は触知しないが、脾濁音界は拡大している。下肢に浮腫は認めない。
[正答]
※国試ナビ4※ [098F032]←[国試_098]→[098F034]
  [★]
- 次の文を読み、43、44の問に答えよ。
- 56歳の男性。会社役員。1週前からの軽い頭痛を主訴に来院した。
- 現病歴: 3年前から毎年の健康診断で高血圧を指摘されていたが放置していた。
- 既往歴: 特記すべきことはない。
- 嗜 好: 喫煙歴なし。飲酒歴はビール1本/日を30年間。塩辛い食事を好む。
- 家族歴: 高血圧症なし。糖尿病なし。
- 現 症: 身長172cm、体重60kg。脈拍72/分、整。血圧182/120 mmHg。皮膚やや湿潤。腹部に異常なく、神経学的にも異常はない。
- 検査所見: 尿所見:蛋白(-)、糖(-)。血清生化学所見:空腹時血糖102 mg/dl、総蛋白6.8 g/dl、クレアチニン 0.9 mg/dl、総コレステロール 220 mg/dl、トリグリセライド 180 mg/dl(基準50~130)、Na 142 mEq/l、K 4.4 mEq/l、Cl 104 mEq/l
- この患者に予想される胸部所見はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [095F042]←[国試_095]→[095F044]
  [★]
- 次の文を読み、53~55の問いに答えよ。
- 64歳の男性。発熱と排尿困難とを主訴に来院した。
- 現病歴 : 2年前から夜間頻尿と尿線狭小とを自覚していたが、生活に 支障がないため放置していた。5日前から風邪をひいていた。2日前から 頻尿、排尿痛および排尿困難を認めた。昨晩から悪寒がある。
- 既往歴 : 特記すべきことはない。
- 現 症 : 意識は清明。身長160cm、体重62kg。体温38.9℃。脈拍104/ 分、整。血圧 148/88mmHg。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。下肢に浮腫を認めない。腹部超音波写真を以下に示す。
[正答]
※国試ナビ4※ [103B054]←[国試_103]→[103B056]
  [★]
- 2歳の女児。4日前から続く発熱、下痢および血便を主訴に来院した。前日から尿回数が減少しており、今朝から排尿を認めない。意識は清明。顔色は不良で活気がない。眼瞼結膜に貧血を認める。眼球結膜に軽度の黄染を認める。眼瞼と下腿前面とに浮腫を認める。顔面と前胸部とに出血斑を認める。呼吸音に異常を認めない。腹部はやや膨隆し全体に圧痛を認める。腸雑音は減弱している。右肋骨弓下に肝を1cm触知する。脾を触知しない。
- この患児の血液検査所見として考えにくいのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [104I079]←[国試_104]→[104A001]
  [★]
- 7歳の男児。腹痛、下痢および顔色不良を主訴に母親に連れられて来院した。4日前から下痢が始まり、昨晩から腹痛を伴う血便が認められた。今朝から排尿がないのに気付かれ受診した。7日前に家族で焼肉を食べに行った。母親、父親および兄も軽い下痢を呈している。意識は清明。身長 115cm、体重 22kg(1週前は 20.5kg)。体温 37.1℃。脈拍 124/分、整。血圧 130/76mmHg。呼吸数 24/分。SpO2 98%(room air)。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦で、自発痛と圧痛とを認めるが、筋性防御は認めない。肝・脾を触知しない。尿所見:蛋白2+、ケトン体1+、潜血3+。
- この患児の血液検査所見で予測されるのはどれか。2つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [109D054]←[国試_109]→[109D056]
  [★]
- 39歳の女性。全身倦怠感を主訴に来院した。 10日前から倦怠感が出現し、増強してきたという。 35歳の第 1子分娩時に輸血歴がある。分娩後も無月経が持続している。 2か月前に、職場での健康診断を契機に甲状腺機能低下症と診断され、自宅近くの診療所でサイロキシン補充療法が開始されている。家族歴に特記すべきことはない。身長 154 cm、体重 48 kg。脈拍 76/分、整。血圧 104/70 mmHg。顔面の表情はやや乏しく、顔面を含め全身の皮膚の色調は白い。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。甲状腺腫を触知しない。浮腫を認めない。尿所見:蛋白 (-)、糖(-)。
- 異常がみられる可能性が高いのはどれか。3つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [108D058]←[国試_108]→[108D060]
  [★]
- 2歳6か月の女児。歩行障害と下肢の変形とを主訴に受診した。
- 母親の妊娠・出産歴に特記すべきことはない。7か月までは母乳で育てられ順調に成長していた。母親は患児を祖父に預けて農作業をしていた。祖父は病弱でほとんど外出することがなく、家の中で生活していた。
- 患児は1歳ころから肘をついて這っていた。1歳6か月ころから背部が突出する変形がみられ、さらに下肢の変形を伴い、歩行できないため受診した。
- 下肢の写真と手根骨エックス線写真とを以下に示す。
- この疾患の血清で低値が予想されるのはどれか。2つ選べ。
 
[正答]
※国試ナビ4※ [098D051]←[国試_098]→[098D053]
  [★]
- 14歳の女子。発熱を主訴に祖母に連れられて来院した。4日前から発熱を認め、2日前から両側眼瞼の腫脹と両側頸部に腫瘤を触れるのに気が付いた。本日も解熱しないため受診した。体温 38.9℃。脈拍 92/分、整。呼吸数 20/分。SpO2 98%(room air)。四肢、体幹に発疹を認めない。両側眼瞼の腫脹を認める。眼瞼結膜に貧血を認めない。眼球結膜に黄染や充血を認めない。口蓋桃は発赤し白苔を認める。両側頸部に径2cmのリンパ節を数個ずつ触知する。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、右肋骨弓下に肝を2cm、左肋骨弓下に脾を3cm触知する。
- 診断に有用な血液検査項目はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [113D016]←[国試_113]→[113D018]
  [★]
- 45歳の男性。タクシーの運転手で、高血圧症、糖尿病、脂質異常症および高尿酸血症に対して食事療法と運動療法とを行っている。午前11時30分ごろ定期受診のため来院した。担当医との会話を示す。
- 医師「こんにちは。お変わりありませんか」
- 患者「はい、特に変わりありません。今日は朝食から時間が経っていますので、血液検査をしていただけますか」
- 医師「朝食は何時に摂られましたか」
- 患者「5時半ごろにうどんを食べました」
- 血液生化学検査項目のうち最も朝食の影響を受けるのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [111C024]←[国試_111]→[111C026]
  [★]
[正答]
※国試ナビ4※ [104G015]←[国試_104]→[104G017]
  [★]
- 高尿酸血症患者の検査結果を示す。
- 尿所見: pH 5.5、クレアチニン 80mg/dL、尿酸 34mg/dL。
- 血液生化学所見:クレアチニン 1.0mg/dL、尿酸 8.0mg/dL。
- 尿酸排泄率(FEUA)を求めよ。
- ただし、小数点以下第2位を四捨五入すること。
- ① 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9
- ② 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9
 
[正答]
※国試ナビ4※ [106I079]←[国試_106]→[   ]
  [★]
[正答]
※国試ナビ4※ [103E028]←[国試_103]→[103E030]
  [★]
- 血液検査項目とその検査結果が低値となる状態の組合せで正しいのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [107E018]←[国試_107]→[107E020]
  [★]
- 検体が溶血を起こしたとき、検査値が大きく変化するのはどれか。2つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [102G012]←[国試_102]→[102G014]
  [★]
[正答]
※国試ナビ4※ [104I031]←[国試_104]→[104I033]
  [★]
- ■症例
- 72歳 女性
- 現病歴:胸部の感染症にドキシサイクリンをGPに処方された。関節リウマチに長期間罹患しており、9年間、1日7mgのプレドニゾロンを服用している。関節痛のため時々パラセタモールを服用。GPが測定した血圧は138/82mmHgであった。抗菌薬を服用し始める2日前からはじまって5日間熱っぽく、食欲不振であり、ベットから動けないでいる。水は十分に飲ませている。5日目に傾眠傾向となり、起こすことが困難になったため、救急車で救急部に連れてきた。
- 主訴:傾眠
- 生活歴:単身。退職した娘が世話をするために引っ越してきている。
- 家族歴:なし。
- 身体所見 examination
-  小柄である(50kgと評価された)が、最近になって体重が減少したということはない。体温38.8℃。眠たそうであり、命令には応じる。簡単な質問にしか答えない。全身性に筋緊張低下。局所神経症状無し。脈拍:118/min。血圧:104/68mmHg。頚静脈圧上昇せず。足首に腫脹無し。肺底部にcrackles(ラ音)とwheezes(笛音)を認める。関節にわずかに活動性の炎症と変形が認められる。これは関節リウマチの既往と合う所見である。
- 検査 investigation
-  ヘモグロビン:軽度低下。MCV:正常。白血球増多。ナトリウム低下。カリウム正常。尿素上昇。クレアチニン上昇。
- 問題0. □と○に入る言葉を述べよ
-  1) 傾眠とは□□障害に含まれる
-  2) 傾眠とは、刺激を与えなければ□□が低下するが、刺激を与えれば○○する状態である。
- 問題1. 患者に関連する以下の事項のうち何が傾眠と関係あるのだろうか?2つ選べ。
-  1) ドキシサイクリンの副作用
-  2) 関節リウマチの重症化
-  3) プレドニゾロンの服用歴
-  4) パラセタモールの服用歴
-  5) 胸部感染症
- 問題2. 異常な検査所見をどう説明しますか?口頭で述べてください。ぶっちゃけ、やや低血圧であることと、ナトリウム低値が着目点です。腎機能低下は二次的なものです。
- ■意識障害
- 意識障害 (PSY.38)
-  単純な意識障害
-   明識困難状態 < 昏蒙 < 傾眠 < 昏眠 < 昏睡
- ■傾眠
-  昏睡状態の分類の一つ
-  ・somnolence
-   放置すれば意識が低下し、眠ったようになるが、刺激で覚醒する。病的な場合にのみ用いられる。(BET.130)
-   sleepiness; also, unnatural drowsiness. A depressive mental state commonly caused by encephalitis, encephalomalacia, hepatic encephalopathy, hypoxia and some poisonings, e.g. Filix mas, the male fern.
-    (Saunders Comprehensive Veterinary Dictionary, 3 ed. c 2007 Elsevier, Inc. All rights reserved)
-  ・drowsiness
-   正常、病的の区別無く眠り込む状態(BET.130)
-   a decreased level of consciousness characterized by sleepiness and difficulty in remaining alert but easy arousal by stimuli. It may be caused by a lack of sleep, medications, substance abuse, or a cerebral disorder.
-    (Mosby's Medical Dictionary, 8th edition. c 2009, Elsevier.)
- ■意識障害を呈する患者に対してどのような疾患を鑑別に挙げるべきか?
- 1. 脳原発の疾患(一次性)
-  a. テント上病変(脳幹の圧迫性病変ないし脳ヘルニアをきたす疾患)
-   1) 脳血管障害:脳出血、脳梗塞
-   2) 硬膜下血腫
-   3) 脳腫瘍:原発性、転移性
-   4) 脳膿瘍
-  b. テント下病変(脳幹網様体の障害)
-   1) 脳幹出血、脳幹梗塞、小脳出血、小脳梗塞、脳腫痛、多発性硬化症など
-  c. びまん性病変
-   1) くも膜下出血、中枢神経感染症:髄膜炎、脳炎、 播種性血管内凝固症候群など
- 2. 全身疾患に伴う病態(二次性)
-  a. 代謝性またはびまん性病変
-   1) ショック:心筋梗塞、大出血など
-   2) 薬物、毒物
-   3) 無酸素ないし低酸素血症
-   4) DIC、全身性感染症:敗血症など
-   5) 肝不全、腎不全、糖尿病性高血糖、重症肝炎、内分泌疾患など
-   6) 低血糖、ビタミンB1欠乏: Wernicke脳症
-   7) 脳振盪、てんかん大発作後
-   8) 酸塩基平衡および電解質異常
-   9) 栄養障害
- 10) 低体温症
-  b. 心因性無反応
-   1) ヒステリー、統合失調症
- ■低ナトリウム血症
- 血清ナトリウムが134mEq/L以下の病態。(正常の下限は135mEq/Lとされる)
- ・病因 ICU.525
- 循環血減少性低ナトリウム血症
- 利尿・副腎不全	:尿中Na > 20mEq
- 嘔吐・下痢    	:尿中Na < 20mEq
- 等容量性低ナトリウム血症:細胞外液は増加していないが、水の方が多くなった状態。臨床的に浮腫が無い。
- SIADH    	:尿浸透圧 > 100 mOsm/L
- 心因性多飲症 	:尿浸透圧 < 100 mOsm/L
- 循環血増加性低ナトリウム血症:細胞外液にナトリウムと水が増加しており、なおかつ水の方が多い病態
- 腎不全		:尿中Na > 20mEq
- 心不全・肝不全	:尿中Na < 20mEq
- ・症状
- 全身 :無力感、全身倦怠感
- 消化器:食欲不振、悪心・嘔吐
- 神経 :意識障害(傾眠、昏睡)
- 筋  :痙攣、腱反射低下、筋力低下
- ■アルドステロン
- 1. 腎の接合尿細管と集合管、唾液腺、乳腺、汗腺等に働いてNa+の再吸収を促進し、K+の排出(分泌)を促進する (SP.791,792 によれば、腎接合尿細管を含む)
- 2. 腎集合管でH+の排出(分泌)を促進する。
- Na+/K+-ATPase活性↑@遠位尿細管・皮質集合管 → 管腔側K↑ → K再吸収/H+分泌 (QB CBT vol2 p.360)
- ■副腎皮質球状層から分泌されるアルドステロンの分泌制御
-  1. レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系
-  2. 血清カリウム濃度上昇
-  3. ACTH(寄与は小さい)
- ■低アルドステロン症の症状と臨床検査
- 症状
- 脱水、低血圧、代謝性アシドーシス
- 検査
- 低ナトリウム血症、高カリウム血症
- 尿中ナトリウム高値、尿中カリウム低値
- 血中HCO3-低下
- ■起こっていることは何か?
-  ステロイドの突然の中断による急性の副腎不全。特に低アルドステロン症が前面に出た病態。
-  副腎不全の原因(病期による分類)(BPT.793)
-   急性:ウォーターハウス・フリーデリクセン症候群、長期コルチコイド療法の突然の中断、慢性副腎不全患者へのストレス
-   慢性:(major)自己免疫性副腎炎、結核、後天性免疫不全症候群、転移性疾患(metastatic disease)
-      (minor)全身性アミロイドーシス、真菌感染、ヘモクロマトーシス、サルコイドーシス
- 症状:
-  グルココルチコイドの欠乏 :易疲労感、食欲不振、悪心・嘔吐、体重減少、脱力、嗜眠、低血圧
-  ミネラルコルチコイドの欠乏:低血圧、低Na血症、高K血症、味覚の変化(塩分の故意食事を好むようになる)
- ■答え
- (第一パラグラフ)診断とその根拠
- ・二次性急性低アルドステロン症 secondary acute aldosteronism
- ・病因:本症例では、長期にわたるステロイドホルモンの使用により視床下部-下垂体-副腎軸の不全を来した。ステロイドホルモンを長期に使用している状態でステロイドホルモンの需要が高まったとき(感染、外傷(手術))、あるいは嘔吐などで経口ステロイドを服用できないときに起こる。
- ・症状:本症例では傾眠と低血圧として症状が現れている。
- (第二パラグラフ)
- ・本疾患の低ナトリウム血症の解釈 → (1)ナトリウム摂取の低下、(2)水分摂取による希釈
- ・視床下部-下垂体-副腎軸は障害を受けておらずナトリウムを補充する治療をすべき。
- ・一次性急性低アルドステロン症(addisonian crisis)では、鉱質コルチコイドと糖質コルチコイドの分泌不全がおこり、低ナトリウム血症と高カリウム血症を来す。
- ・二次性急性低アルドステロン症はしばしば間違ってaddisonian crisisと呼ばれる。
- (第三パラグラフ)
- ・感染の拡散も考慮すべき;一次部位が脳で髄膜炎か脳膿瘍を伴っている、あるいは局所的に肺膿瘍あるいは膿胸を起こしている。
- ・高齢とステロイドの服用ということで免疫力がある程度低下している。
- ・ステロイドの量が多いかもしれない。
- (第四パラグラフ)
- ・治療はすぐに経験的治療であるヒドロコルチゾンと生理食塩水の輸液を行う。
- ・患者は(治療に?)反応し、5時間以内に意識レベルは正常となった。そして血圧は上昇し136/78mmHgとなった。胸部X線では両側の肺に肺炎に一致する陰影が見られたが、それ以外に異常は認められなかった。
- ■KEY POINTS
- ・二次性低アルドステロン症はmedical emergency(医学的な緊急事態)である、すぐに経験的治療を行うことが求められる。
- ・長期にわたりステロイドを投与されている患者では、以下の時にステロイドを増量すべき;別の疾患を発症したとき。嘔吐を反復する場合には全身投与に切り替える。
- ■低アルドステロン症ってなによ
-  http://enotes.tripod.com/hypoaldosteronism.htm
- ・時々、低アルドステロン症は副腎不全の唯一の、あるいは支配的な徴候である
- ・アルドステロンの生合成の障害 → まれ
- ・アルドステロン生合成の部分的欠損 → 21-ヒドロキシラーゼ欠損による先天性副腎皮質過形成の症状としての低アルドステロン症
- ▲特発性低アルドステロン症 idiopathic hypoaldosteronism
-  症状:高カリウム血症に続発する心ブロック、顕著な低ナトリウム血症の有無を問わず血液量不足に続発する体位性低血圧。
-  検査:血清アルドステロン低値。尿中アルドステロン低値。血清レニン高値。
- ▲低レニン低アルドステロン症
-  特発性低アルドステロン症より一般的な低アルドステロン症
-  疫学:45歳以上の慢性腎臓病。
-  病因:
-   ・腎臓病患者において腎臓の間質、尿細管に障害が存在 → レニン分泌能が低下。
-   ・レニン分泌が低下する原因は分からないけど傍糸球体装置における障害が常に寄与している。
-   ・NSAIDによるプログラスタンジン欠乏は、可逆的な低レニン低アルドステロン症の原因である。SP.793によればレニン分泌刺激 → Na+再吸収を亢進 だそうな。
-   ・ヘパリン、カルシウムチャネルブロッカー、βブロッカーも原因となる。
-  症状:
-   ・腎臓の障害が原因の低レニン低アルドステロン症患者では糖尿病が一般的みられる所見である。
-   ・顕著な特徴は、慢性的で著明な高カリウム血症である。これは高血糖で突然に悪化する。???
-   ・高Cl性代謝性アシドーシス+正常or低ナトリウム血症が常に存在
-  増悪因子:ナトリウム制限
-  検査:高カリウム血症、体液量の減少、かつ低ナトリウム血症が存在しているにもかかわらず低レニンであることが特徴的。
  [★]
- ☆case76 頭痛
- ■glossary
- 傾眠  drowsiness  正常、病的の区別なく眠り込む場合に用いられる
- 意識不鮮明 confusion  周囲に対する認識や理解は低下し、思考の清明さや、記憶の正確さが失われる
- 錯乱 confusion 夢幻様状態より見当識障害と思考の滅裂が見られる状態(PSY.40)
- MA = Master of Arts 文学修士
-  The Master of Arts (BrE: MA, UsE: M.A.) is awarded in Arts, Humanities, Theology and Social Sciences (Wikipedia)
- graduate student 大学院生
- rousable adj. 覚醒できる、目を覚ますことができる
- rouse vt. ~の目を覚まさせる、呼び起こす。喚起する、鼓舞する、奮起させる。(感情を)起こさせる、かき立てる
- lateralize vt. (生理)(大脳が)(左右半球に心的機能差がある、左右差がある。(器官・機能・活動などが)大脳の(左右いずれかの)片側優位下にある。(医学)(障害などが)大脳の片半球にあると診断される
- 乳頭浮腫 papilledema 原因を問わず視神経乳頭が腫脹している状態
- うっ血乳頭 choked disc 脳圧亢進による乳頭浮腫
- ■症例
- 24歳、男性 精神学の修士過程を専攻している大学院生
- 主訴:激しい頭痛
- 現病歴:頭部全体に痛みがある。2回嘔吐。傾眠と錯乱が認められるようになった。明るい光を嫌う()he finds bright lights uncomfortable。
- 既往歴:病気の既往はない。アレルギーはない。タバコ1日10本。アルコール24 unit/week(缶ビール(350ml)13.7本/週)。薬は服用してない。
- 家族歴:彼女と同居。3歳と4歳の子供がいる。
- ・診察 examination
-  見た感じ紅潮しており、調子が悪そう。体温:39.2℃。項部硬直あり(he has stiffness on passice flexion of his neck)。皮疹なし。副鼻腔に圧痛なし。鼓膜所見は正常。脈拍:120/分。血圧:98/74 mmHg。心血管系、胸部、腹部に異常所見なし(normal)。意識レベル低下。命令に応じて覚醒する(JCS10?)。局所神経症状認めない。眼底所見正常
- ・検査 investigation
-  血液検査
-   白血球:上昇。血清Na:低下。血清尿素:上昇。血清クレアチニン:上昇。血液培養:検査中
-  画像検査
-   胸部X線:異常所見なし。頭部CT:正常
-  心電図:洞性頻脈
-  腰椎穿刺
-   髄液所見:混濁。白血球:増多。蛋白:増多。糖:低下(普通の人の血糖100mg/dLと考える。→ 1g/L → 1/180 mol/L → 5.56 mmol/L。グラム染色:結果待ち
- ■Q
-  診断、鑑別診断、管理
- ■A
-  細菌性髄膜炎、髄膜炎・クモ膜下出血、経験的抗菌薬投与・
- ■解説
- (第1パラグラフ)細菌性髄膜炎
- ・(症状)突然発症。激しい頭痛、嘔吐、錯乱、羞明、項部硬直
- ・低血圧、白血球増多、腎機能低下 → ウイルス性よりむしろ細菌性の感染を示唆する。 ← 重症敗血症~敗血症ショックかな?(私見)
- ・(髄膜炎菌の種類)
- <テーブル挿入 髄膜炎>
- ・(疫学)HIM. 2621 (多分、全患者中(←私見))
-  Streptococcus pneumoniae ~50%
-  Neisseria meningitidis ~25%、
-  group B streptococci ~15%
-  Listeria monocytogenes ~10%
-  Haemophilus influenzae type B <10%
- ・Neisseria meningitidisは全身性の脈管の皮疹(点状出血、紫斑)が特徴的(generalized vasculitic rash)
- (第2パラグラフ)鑑別診断
- ・激しい頭痛
-  ・the most severe headaches are experienced in meningitis, subarachnoid hemorrhage and classic migraine.
-   ・meningitis:単回の発作(single episode)。症状は時間単位で出現。
-   ・subarachnoid hemorrhage:単回の発作(single episode)。突然発症(突発完成?)。硝子体出血を認めることがある。
-   ・classic migraine:繰り返す(数回/年~1回/週。平均月2回。発作は4-72時間継続)
- ・髄膜刺激:急性に発熱をきたした多くの病態でみられる(acute febrile conditions)。特に子供。 ← そうなの?
- ・頚部硬直:頚部や脊椎の局所感染症でも起こる。 ← パーキンソン病などによる筋トーヌスの異常亢進も除外しよう
- ・他の髄膜炎:脳脊髄液所見で鑑別する
- (第3パラグラフ)経験的治療
- ・(細菌性)髄膜炎が疑われたら、確定診断する前に適切な抗菌薬を投与(empirical treatment)。 → 数時間の経過で死亡することがある。
- ・ペニシリンアレルギーがなければ、ceftriaxoneかceftaximeの静脈内投与が一般的な治療法
- (第4パラグラフ)腰椎穿刺
- ・乳頭浮腫がない、あるいは占拠性病変を示唆する片側性の神経徴候(lateralized neurological signs)がある患者では(CTの結果を待たずに)腰椎穿刺をすぐにやるべき(CASES) ← どういう事?
- ・局在性の神経徴候(localized neurological sign)がある場合はまずCTを撮るべき(CASES)。 → the dangers of coning ← 鉤ヘルニアの事?
- (第5パラグラフ)細菌性髄膜炎の管理
- ・診断:CSF検査(グラム染色、髄液培養(確定診断、感受性試験)
- ・管理
-  ・意識が低下しているのでそれなりの看護(must be nursed)。アヘン剤による鎮痛。生理食塩水による低ナトリウム血症の補正。低血圧を補正するためにinotrope(a drug with positive inotropic effects, e.g. dobutamine, digitalis, milrinone )も必要かもしれない。(100CASES)
-  ・感受性のある抗菌薬の投与(大量静注、髄液移行性の高いもの)、髄液所見の正常化・CRP 陰転後、1週間抗菌薬を投与して治療を終了。対症療法として脳圧亢進には高張脳圧降下薬(マンニトールなど)を投与。(IMD.1042)
- (第6パラグラフ)家族構成を考えた治療
- ・(意訳)誰が3-4歳の世話をしていたのか分からないけど、子供も検査すべき。髄膜炎菌か原因菌が不明だったら、リファンピシンによる予防的治療と髄膜炎球菌に対する予防接種をすべき。 ← 日本ではどうなんでしょうか。
- □350ml アルコール5%
- 350x0.05/10=1.75 unit
- ■莢膜を有し、髄膜炎を起こす細菌 → 莢膜を有することで血液中で補体などを介した貪食を免れ、血行性にクモ膜下腔まで到達しうる。
- ・Streptococcus pneumoniae
- ・Haemophilus influenzae type b
- ・Neisseria meningitidis
- ■敗血症
- ・定義
-  感染症による全身性炎症反応症候群(SIRS)をセプシス(sepsis, 広義の敗血症?)とする
-  感染症の病原体は、一般細菌(グラム陽性菌・陰性菌)、真菌、寄生虫、ウイルスなど
-  皮膚や粘膜の傷とか、種々の臓器にある感染巣から、細菌がリンパ流から血中に入り、全身に播種されて、新たに転移性の感染巣をつくり、重篤な全身症状を引き起こす。
- ・全身性炎症反応症候群の診断基準
-  下記項目のうち2項目以上が当てはまる
-   1. 体温>38℃ or 体温<36℃
-   2. 心拍数>90bpm
-   3. 呼吸数>20回/min or PaCO2<32mmHg
-   4. (白血球数>12,000/ul or 白血球数<4,000/ul) or ( 幼若好中球>10% ) ← ここでいう幼若好中球とは桿状好中球のことである。
- ・敗血症の周辺疾患概念
-  1. 全身性炎症反応症候群 systemic inflammatory response syndrome SIRS
-   発熱や白血球増加などの全身の炎症の徴候によって特徴づけられる病態(SIRSの診断基準に合致する病態)
-  2. 敗血症 sepsis
-   SIRSが感染の結果である場合
-  3. 重症敗血症 severe sepsis
-   主要臓器障害を伴う敗血症
-  4. 敗血症性ショック septic shock
-   輸液投与に不応性の低血圧を伴う重症敗血症
-  5. 多臓器機能障害症候群 multiorgan dysfunction syndrome MODS
-   2つ以上の主要臓器の機能異常
-  6. 多臓器不全 multiorgan failure MOF
-   2つ以上の主要臓器の不全状態
- ■参考文献
- HIM = Harrison's Principles of Internal Medicine 17th Edition
- PSY = 標準精神医学 第3版
- CASES = 100 Cases in Clinical Medicine Second edition
- IMD = 内科診断学第2版
  [★]
- ☆case59 尿中の血液
- 52歳 ビジネスマン
- 顕微鏡的血尿のため泌尿器科医に紹介があった。
- 主訴:顕微鏡的血尿
- 現病歴:6ヶ月前、new jofのためのisurance medicalで血尿を指摘された。以来、家庭医に2回血尿指摘された。以前の尿検査は正常だった。一度も顕微鏡は指摘されたことが無く、泌尿器系の症状もなかった。顕微鏡的血尿であることを除けば健康である。視覚、聴覚に問題なし。タバコ1日30本、アルコール35 unit/week(缶ビール(350ml)20本/週)
- 既往歴:特記無し。
- 家族歴:特記無し。腎臓病の家族歴無し
- ・身体所見
-  栄養状態良く体調はよい。心拍:72/分、整。血圧:146/102 mmHg。心血管系、呼吸器系、腹部、神経学所見:異常なし。眼底鏡でarteriovenous nippingを認める。
- ・検査
- (血液生化学)
-  上昇:尿素、クレアチニン、γ-GTP
-  
- (尿検査)
- 蛋白:++。血尿:++。赤血球:>100 red cells
- 24時間尿蛋白:1.2g; 正常値 <200mg/24hr
- (その他)
- ECG:左室拡大。腎超音波検査:大きさは正常
- (第一パラグラフ)
-  ・顕微鏡的血尿の原因は腎臓と尿路系のものがある(ex.前立腺病変、結石)。
-  ・顕微鏡的血尿 + 高度のタンパク尿 + 高血圧 + 腎障害 = 慢性糸球体腎炎の病態
-  ・γ-GTP高値はアルコールの過剰摂取による肝臓病であることに適合する
-  ・男性で推奨されるアルコール摂取の上限は、28unit/週 ()
- (第二パラグラフ)IgA腎症
-  ・IgA腎症は先進国における一般的な糸球体腎炎。メサンギウム領域におけるIgAの蓄積が特徴的
-  ・患者はしばしば、上気道感染と同時におこる顕微鏡血尿のエピソードがある
-  ・IgA腎症は多くは特発性だけど、ヘノッホ-シェーンライン紫斑病(Henoch-Schonlein purpura)とアルコール性肝硬変(alcoholic cirrhosis)と関連するのが普通である。
-  ・IgA腎症の患者の20%は20年の経過で末期腎不全(end-stage renal failure)に陥る。
- (第三パラグラフ)基底膜病・アルポート症候群
-  ・菲薄基底膜病はisolated microscopic hematuria、minimal proteinuria及び正常腎機能(悪化しない)をしめす家族性の疾患である。
-  ・電顕的にはびまん性の糸球体基底膜の菲薄化が見られる(300-400nm -> 150-225nm)
-  ・アルポート症候群は進行性糸球体病態であり、聴覚消失と視覚異常と関連している。ふつうX連鎖優性遺伝で、男性がひどく影響を受ける。
- (第四パラグラフ)What further incestigations would you organize?
-  ・腎生検
-  ・age>50: 尿細胞診、前立腺特異抗原、膀胱鏡 → 除外診断のため(膀胱・前立腺病変)
-  ・肝超音波検査が必要で、肝生検を考慮するべき。
- (第五パラグラフ)What advice would you give this patient
-  ・指導:禁酒、血圧のコントロール
-  ・経過観察:透析、腎移植に移行しうるため
-  ・血清/血漿クレアチニン:これはGFRが50%減らないと上昇しない → この症例では軽度のクレアチニンの上昇は腎機能は正常の腎機能の40%であることを示す。
-  ・治療:免疫抑制薬がIgA腎症の大部分で透析導入を遅らせるという証拠はない
- ■KEYPOINT
-  ・50歳以下の血尿のみを訴える患者はまず腎臓専門医に紹介すべき。
-  ・50歳以上の血尿のみを訴える患者は、膀胱や前立腺の疾患を除外するためにまず泌尿器科医に紹介すべき
-  ・血清/血漿クレアチニンのわずかな上昇は腎機能の大きな喪失を示している。
-  ・大量のアルコール摂取による肝障害は明らかな徴候なく起こるかもしれない。
- ■もっとも一般的な顕微鏡的血尿をきたす糸球体による原因
- IgA腎症
- 菲薄基底膜病(thin basement membrane disease)
- アルポート症候群(XR)
- ■高血圧の病理的帰結 HIM.1552
- ・高血圧が生み出すリスクファクター:粥状硬化症
- ・高血圧が悪化因子?(predisposing factor)となる疾患:心不全、冠動脈疾患、梗塞、腎臓病、末梢動脈疾患
-  心臓:高血圧性心疾患は高血圧に対する機能的・構造的適応 → 左心室肥大、拡張期機能不全(diastolic dysfunction)、うっ血性心不全、血行異常(冠状動脈の粥状硬化・微小血管障害による)、不整脈
-  左心室肥大(1遺伝的要因と血行動態要因による) → ↑リスク:冠動脈心疾患、梗塞、慢性心不全、突然死
-  拡張期機能不全:(左心室壁が肥厚して拡張期に十分拡張できないという意味での機能不全(written by s))
-  脳:(高血圧は脳梗塞と脳出血のリスクファクター)
-   ・認知症(脳梗塞による)
-   ・高血圧脳症(autoreguration(50-150mmHg)が傷害され、重度の頭痛、悪心・嘔吐、巣状神経徴候(focal neurologic sign)、精神状態の変調をきたす)
-  腎臓:高血圧は腎障害と末期腎臓病のリスクファクター。
-   ・腎臓における粥状硬化性の高血圧に関連した血管損傷は、最初に糸球体の前の細動脈に及ぶ。これにより糸球体と糸球体の後の構造に虚血性の変化を起こす。
-   ・糸球体の損傷は糸球体の高灌流による糸球体毛細血管の損傷の結果かもしれない。
-   ・糸球体の病理は糸球体硬化症を呈し、そして尿細管は虚血により萎縮する。
-  末梢動脈:長期にわたって持続する高血圧により、下肢の動脈を狭窄させる → 跛行
-  網膜:交差現象(http://www.1stretinalscreen.com/ra_DR_NonDR.asp )
- AV nipping is indicative of hypertension and describes the changes which occur at arteriovenous crossings in the retina where an artery crosses a vein. In patients with hypertension and associated arteriolosclerosis (narrowing of the artery) the artery applies increased pressure on the vein at the point where it passes over the top of the vein.
- ■顕微鏡的血尿
-  血尿のうち、肉眼的には血尿ではないが、尿沈渣で400倍毎視野1個以上の赤血球を認める場合をいう。 しかしそれでは再現性に乏しいので、一般的には5個以上の赤血球を認める場合を顕微鏡的血尿といい病的意義をもつ。
- ■glossary
- modest adj. 謙虚な。慎み深い、控えめな、遠慮がちの。(主に女性が)しとやかにした、ひどく上品な。質素な、地味な。適度の、穏当な。大きくない、ささやかな。
  [★]
- ☆case27 関節痛
- ■症例
- 37歳 女性
- 主訴:関節痛
- 現病歴:数ヶ月、膝の痛みがだんだん強くなっていると感じていた。痛みは手や足の小関節に多く、朝歩くときに最もこわばる。痛みはジクロフェナクを飲むと和らぐ。そのほかの症状として疲労感を感じ、最近、体重が3ヶ月で4kg減っている。
- 喫煙歴:なし。
- 飲酒歴:機会飲酒
- 既往歴:なし
- 家族歴:既婚、子供は2人
- 服薬歴:ジクロフェナク
- 職業歴:legal sevretary
- 身体所見 examination
-  顔貌 青白、臨床的な貧血を認める。近位指節間関節・中手指節関節 腫脹・effusionを伴う疼痛。中足趾節関節 圧痛。それ以外は正常。
- 検査 investigation
-  血液検査
-   Hb低下
-   ESR上昇
-   尿素軽度上昇
-   クレアチニン軽度上昇
-   正常:白血球、MCV、血小板、ナトリウム、カリウム、グルコース、アルブミン
-  尿検査
-   蛋白(-)、尿糖(-)、潜血(-)、
- ■問題
-  本症例では診断とその根拠を考えるのは簡単なので、鑑別疾患をあげてその疾患に特徴的な症候を列挙しましょう。
- ■関節痛 DIF.283
-  V Vascular
-   血友病 hemophilia 血友病性関節症(急性:疼痛、腫脹、熱感(SOR.241)
- 慢性:可動域の低下、変形、関節周囲筋萎縮(SOR.241))。家族歴
-   壊血病 scurvy 。生活環境。食事歴
-   無菌性骨壊死 aseptic bone necrosis (Osgood-Schlatter diseaseとか)
-  I Inflammatory
-   感染性関節炎(細菌性関節炎(化膿性関節炎・淋菌性関節炎・結核性関節炎・嫌気性菌関節炎 )、真菌性関節炎、スピロヘータ関節炎(梅毒性関節炎・ライム関節炎)、マイコプラズマ関節炎、ウイルス性関節炎)
-  N Neoplastic disorders
-   骨原性肉腫 osteogenic sarcoma
-   巨細胞腫 giant cell tumors
-  D Degenerative disorders
-   degenerative joint disease
-   変形性関節症 osteoarthritis
-  I Intoxication
-   痛風 gout (uric acid)
-   偽痛風 pseudogout (calcium pyrophosphate)
-   ループス症候群 lupus syndrome of hydralazine (Apresoline) and procainamide
-   gout syndrome of diuretics
-  C Congenital and acquired malformations bring to mind the joint deformities of tabes dorsalis and syringomyelia and congenital dislocation of the hip. Alkaptonuria is also considered here.
-  A Autoimmune indicates
-   関節リウマチ RA
-   血清病 serum sickness
-   全身性エリテマトーデス lupus erythematosus
-   リウマチ熱 rheumatic fever
-   ライター症候群 Reiter syndrome
-   潰瘍性大腸炎 ulcerative colitis
-   クローン病=限局性回腸炎 regional ileitis
-   乾癬性関節炎 psoriatic arthritis
-   リウマチ性多発筋痛症 polymyalgia rheumatica
-  T Trauma
-  E Endcrine
-   先端肥大症 acromegaly
-   閉経 menopause
-   糖尿病 diabetes mellitus
- ■関節炎の分類
- ・炎症部位の数
-  単関節炎:痛風、偽痛風、離断性骨軟骨炎、血行性の化膿性関節炎のほとんど
-  多関節炎:リウマチ性疾患、ウイルス性疾患、白血病での関節症状、易感染性宿主における血行性の化膿性関節炎
- ■関節リウマチ
-  診断基準
-  関節症状
-   朝のこわばり、疼痛、腫脹、関節の動揺、関節可動域制限、変形(手指、足趾、膝関節)。(SOR.211)
-   手指の近位指節間関節(PIP関節)、中手指節関節(MP関節)。遠位指節間関節(DIP関節)に初発することは稀。(SOR.211)
-   左右対称性に生じることが多い。手関節、足趾、膝関節に初発する。(SOR.211)
-  関節外症状
-   全身症状:発熱
-   皮膚症状:リウマトイド結節(肘の伸側、後頭部、手指)
-   眼症状:上胸膜炎(10日の経過で治癒)、強膜炎(予後不良)。稀に角膜穿孔
-   血液障害:(高頻度)貧血、白血球減少(Felty病。DMARDs投与中の場合は薬剤性の骨髄抑制を考慮)
-   アミロイドーシス:ネフローゼや下痢を来した症例で疑う。アミロイド蛋白はAA
-   腎障害:稀。アミロイドーシスの続発症か薬剤性を考慮。
-   呼吸器症状:間質性肺炎の合併多い。下肺野に好発。通常無症状。メトトレキセートなどの使用により薬剤性の急性間質性肺炎を生じることがある。
-   心・血管障害:リンパ管炎による難治性の浮腫。
-   神経症状:環軸関節亜脱臼により項部痛や脊髄症上が出現しうる。
-   骨粗鬆症
-   腱鞘滑膜炎:手指、手関節、足関節
- ■両側性多関節炎の鑑別疾患
-  OA:遠位指節間関節を冒すのが特徴的で、近位指節間関節、中手指節関節を冒しうる。
-  RA:
-  SLE:軽度、症状の程度が変動する非びらん性の関節炎
-  gout:単関節炎からはじまる。
-  血清陰性関節炎:強直性脊椎炎、感染、ライター病:中~大関節に非対称性の関節炎。仙腸関節と遠位指節間関節にも関節炎
-  急性ウイルス性関節炎:風疹。
- ■KEY POINTS
- ・RAでは遠位指節間関節は冒されない傾向がある。
- ・RAの全身症状は関節症状に先行することがある。
- ・RAの活動性と貧血及びESRは相関している。
- ・NSAIDsは腎機能に悪影響を与えることがある。
- ■initial plan
-  Dx 1. 単純X線写真
-     ・亜脱臼、関節周囲の骨萎縮(傍関節性骨骨粗鬆症,juxta-articular osteoporosis)、関節裂隙の狭小化、関節辺縁のびらん(bony erosion)
-      ・初期のRAで第5趾に骨びらんが一般的に見られる。
-     ・血液検査
-      ・RF、抗DNA抗体
-  Tx 1. 鎮痛薬
-     ・NSAIDs:鎮痛とこわばりの軽減
-    2. DMARDs(メトトレキセート、レフルノミド、金製剤、ペニシラミン)
-     ・NSAIDsで症状が治まらない場合に考慮
-    3. 抗TNF抗体
-     ・重症のRAで効果がある場合がある。
- ■参考文献
- SOR 標準整形外科学  第10版  医学書院
- DIF Differential Diagnosis in Primary Care  Fourth Edition版  Lippincott Williams & Wilkins
  [★]
- ☆case16 膝の痛み
- ■glossary
- indigestion 消化障害、消化不良
- ■症例
- 80歳 男性
- 主訴:左膝の痛みと腫脹
- 現病歴:左膝の痛みを2日前から認めた。膝は発熱・腫脹しており、動かすと疼痛を生じる。時々胸焼けと消化不良が見られる。6ヶ月前のhealth checkで、高血圧(172/102mmHg)と血中クレアチニンが高い(正常高値)こと以外は正常といわれた。その4週間数回血圧を測定したが、高値が継続したため、2.5mg bendrofluamethizide(UK)/ベンドロフルメチアジドbendroflumethiazide(US)で治療を開始した。最近の血圧は138/84 mmHgであった。
- 喫煙歴:なし。
- 飲酒歴:一週間に平均4unit。
- 既往歴:股関節に中程度(mild)の変形性関節症
- 家族歴:特記なし
- 服薬歴:アセトアミノフェン(股関節の疼痛に対して)
- 身体所見 examination
-  血圧 142/86mmHg。体温37.5℃。脈拍88/分。grade 2 hypertensive retinopathy(高血圧症性網膜症)。心血管系、呼吸器系に検査場異常なし。手にDIPにヘバーデン結節なし。
-  左膝が発熱し腫脹している。関節内に液、patellar tap陽性。90℃以上膝関節を屈曲させると痛みを生じる。右の膝関節は正常に見える。
- 検査 investigation
-  生化学:白血球増多、ESR上昇、尿素高値、グルコース高値
-  単純X線:関節間隙やや狭小。それ以外に異常は認めない。
- ■problem list
-  #1 左膝の痛み
-  #2 胸焼け
-  #3 消化不良
-  #4 高血圧
-  #5 クレアチニン正常高値
-  #6 股関節の変形性リウマチ
-  #7 高血圧性網膜症
- ■考え方
-  ・関節痛の鑑別診断を考える。
-  ・VINDICATEで考えてみてもよいでしょう。
-  ・関節痛の頻度としては 外傷>慢性疾患(OAなど)>膠原病>脊椎疾患>悪性腫瘍
- ■関節痛の鑑別疾患
- DIF 282
- V Vascular 血友病 hemophilia, 壊血病 scurvy, 無菌性骨壊死 aseptic bone necrosis (Osgood-Schlatter diseaseとか)
- I Inflammatory 淋疾 gonorrhea, ライム病 lyme disease, 黄色ブドウ球菌 Staphylococcus, 連鎖球菌 Streptococcus, 結核 tuberculosis, 梅毒 syphilis, 風疹 rubella, 単純ヘルペス	herpes simplex, HIV	human immunodeficiency virus, サイトメガロウイルス	cytomegalovirus
- N Neoplastic disorders 骨原性肉腫 osteogenic sarcoma, 巨細胞腫 giant cell tumors
- D Degenerative disorders degenerative joint disease or 変形性関節症 osteoarthritis
- I Intoxication 痛風 gout (uric acid), 偽痛風 pseudogout	(calcium pyrophosphate), ループス症候群 lupus syndrome of hydralazine (Apresoline) and procainamide, gout syndrome of diuretics
- C Congenital and acquired malformations bring to mind the joint deformities of tabes dorsalis and syringomyelia and congenital dislocation of the hip. Alkaptonuria is also considered here.
- A	Autoimmune indicates	(多い)関節リウマチ RA	(可能性)血清病 serum sickness, 全身性エリテマトーデス lupus erythematosus, リウマチ熱 rheumatic fever, ライター症候群 Reiter syndrome, 潰瘍性大腸炎 ulcerative colitis, 	クローン病=限局性回腸炎 regional ileitis, 乾癬性関節炎	psoriatic arthritis	(老人であり得る)リウマチ性多発筋痛症 polymyalgia rheumatica
- T Trauma 外傷性滑膜炎 traumatic synovitis, tear or rupture of the collateral or cruciate ligaments, 亜脱臼 subluxation or laceration of the meniscus (semilunar cartilage), 脱臼 dislocation of the joint or patella, a 捻挫 sprain of the joint, and fracture of the bones of the joint.
- E Endcrine 先端肥大症 acromegaly, 閉経 menopause, 糖尿病 diabetes mellitus
- ■答え
-  骨格筋系-関節炎-単関節炎-急性単関節炎
-  痛風 尿酸 → 発熱、ESR↑、白血球↑
-  偽痛風 ピロリン酸カルシウム
-  高齢女性でチアジド系利尿薬の使用により痛風が誘発されやすい。特に腎機能低下、糖尿病の人はこのリスクが高まる。
- ■(BSTからの知識「)循環器領域での利尿薬
- ・心不全の治療において、循環血漿量を減らし、心臓の前負荷を軽減する。
- ・利尿薬は高尿酸血症を起こす。(けど、心不全の治療において高尿酸血症になったからといって痛風を発症している患者はみたことない)
- ・電解質異常を起こしやすいので、血液生化学の検査でモニタして注意する。たとえば低Kで不整脈のリスクが高まる。
- ・チアジド系の利尿薬は血糖を上げるし、尿酸を上げる
- ・長期の使用で腎機能を低下させる
- ■initial plan
-  Dx 1. 関節液の吸引:関節液の一般検査、生化学検査、培養検査、
-     ・白血球が増加していれば急性炎症性であることを示す。
-     ・偏光顕微鏡で関節液を検鏡する。
-      ・尿酸の結晶:針状結晶。negatively birefringent
-      ・ピロリン酸カルシウムの結晶:positively birefringent
-  Tx 1. 関節液の吸引:炎症が軽度改善
-    2. NSAIDによる疼痛管理
-    3. PPI:NSAID潰瘍を予防するため
-    4. ACE inhibitorの導入