出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2012/10/27 16:16:30」(JST)
この項目では、生物学用語について記述しています。エストニアの通貨単位については「クローン (通貨)」をご覧ください。 |
クローンは、同一の起源を持ち、尚かつ均一な遺伝情報を持つ核酸、細胞、個体の集団。
もとはギリシア語で植物の小枝の集まりを意味するκλών から。1903年、ハーバート・ウェッバーが、栄養生殖によって増殖した個体集団を指す生物学用語として定義した。本来の意味は挿し木である。
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クローンとはすなわち、分子・DNA・細胞・生体などのコピーである。
これらは生物学実験や検査において、不可欠な技術である。クローンを作成することをクローニングと言う。
無性生殖は、原則としてクローンを作る。
単細胞生物の細胞分裂は当然クローンとなる。有性生殖をするまで、群落は1つのクローンである。
植物では栄養生殖がある。匍匐茎をのばして増殖する植物は、往々にして群落を形成するが、それらは同一のクローンから構成される。竹林はその例である。
一部の生物、特に三倍体の生物は、マクロには通常どおり種子や胞子を作っているようでも、減数分裂・融合を経ない無融合生殖を行ない、子はクローンとなる。セイヨウタンポポが有名で、広大な範囲(アメリカのいくつもの州など)に渡るクローンを形成することもある。無融合生殖によるクローンは動植物を問わず見られる。
カビでは、体細胞分裂により生殖子を作る無性生殖が広く行なわれており、クローンの子孫が生まれる。分生子を作る子嚢菌や不完全菌、胞子嚢胞子を作る接合菌類である。
アリなど、有性生殖もする個体が単為生殖している場合は、通常、減数分裂を経ており、クローンではない。
クローンは、遺伝的には均質であり、遺伝子という観点からは群落というよりはむしろ1つの個体であると言え、リチャード・ドーキンスなどはクローンを1つの巨大生物にたとえている。
天然にクローンを作る種では、進化により、それに応じた適応が生まれていると考えられる。具体的には、他のクローン個体に対する利他主義や、真社会性の進化が見られると予想される。実際、雌が単為生殖により集団を作るアブラムシ類では真社会性のものが発見されているし、ヒドロ虫類など、無性生殖による群体を作るものには、分業が見られる例も多い。
適応という観点からは、親は自分のクローンのみを生めば、最も効率よく繁殖できることになる。しかしクローンは、単一の要因(伝染病、寄生虫など)により大きな被害を受ける可能性がある。このことが、クローンのみによる繁殖をする種が少ないことの一因である。歴史的には、広くクローンで栽培されていたグロスミッシェル品種のバナナが、パナマ病により絶滅した例がある。
植物については、古くから挿し木などのクローン技術が農業、園芸で利用されている。体細胞を材料とするクローンはメリクロン栽培として実用化されている。
また、遺伝子をクローニングすることは、インシュリン等さまざまな有用物質を生産する遺伝子工学や生物工学において、不可欠の技術となっている。
植物とは異なり、動物では、プラナリアやヒトデなどのごく一部の例外を除き、分化の進んだ体細胞や組織を分離してその細胞を動物個体に成長させることは、未だにできていない。分化の進んでいない(つまり多分化能を維持した状態の)受精卵ではそれが可能である。現在の技術では、胚や体細胞から取り出したDNAを含む細胞核を未受精卵に移植する「核移植」によってクローンを作成する。
受精卵を分割して、それぞれから正常な個体クローンを作成する方法を胚分割という。この方法により初めての人工的なクローン動物が作成された。(#ウニ参照)
クローン元の動物の細胞核を未受精卵に移植することによりクローンを作成する方法を核移植という。クローン元の動物の細胞核が、生殖細胞(胚細胞)由来の場合は胚細胞核移植、体細胞由来の場合は体細胞核移植という。
分化した体細胞からクローンを作製するには、分化した核を飢餓状態に置き、細胞周期を停止させる。その後、核を除去した未受精卵と電気的刺激を与えることにより細胞融合を起こさせ、その後発生を促すことにより体細胞由来のクローンの胎子を作ることができる。
1998年に若山照彦らは、体細胞を核を除去した卵子に直接注入することにより、細胞融合を行わずクローン個体を作製するホノルル法を開発した。現在、このホノルル法がクローン作成法の標準となっている。
人工的な動物個体のクローンは、ウニの胚分割により1891年に初めて作成された。さらに、胚細胞核移植およびに体細胞核移植によるクローンは、カエルのものが初めて作成された。哺乳類のクローンは、ヒツジのものが始めに作られた。細胞融合を必要とする体細胞核移植では、1998年にウシにおいてもクローンが作成された。細胞融合を必要としない体細胞核移植であるホノルル法によって、1997年にマウスのクローンが作成された。現在は、ホノルル方法を用いて、ネコ、ウマ、ヤギ、ウサギ、ブタ、ラット、ラクダなど多くの哺乳動物で、体細胞由来のクローン作成の成功例が報告されている。
1891年にハンス・ドリーシュは、ウニの受精卵を分割して、それぞれから正常なウニの幼生を発生させることに成功した。これは初めて人工的に作製された動物個体のクローンであった。
未受精卵に胚細胞の核を移植する方法(胚細胞核移植)による最初のクローン動物は、1952年にロバート・ブリッグスとトーマス・キングによりヒョウガエルから作られた。このときは、分化の進んでいない初期胚の細胞や核を不活化した未受精卵に移植することによりクローンを作成した。
動物の体細胞の核を未受精卵に移植する方法(体細胞核移植)による最初のクローンは、1962年にジョン・ガードンによりアフリカツメガエルのオタマジャクシから作られた。
1963年に童第周が作製した、初めての魚類のクローンである。オスのアジア鯉のDNAを抽出し、メスのアジア鯉の卵に移植した。1973年には、オスのアジア鯉のDNAをメスのヨーロッパ鯉の卵に移植し、初めての生物種間をまたがるクローンを作製した[1]。
哺乳類のクローンは、ヒツジのものが始めに作られた。Steen Willadsenは、1981年にヒツジの受精卵からクローン個体を作製した。さらに1984年に、分化の進んでいない初期胚を未受精卵に核移植することでクローンを作製した。1995年にはロスリン研究所で、分化の進んだ胚細胞からメーガンとモラグという二体のヒツジのクローンが作製された。1996年7月には、ロスリン研究所のイアン・ウィルムットとケイス・キャンベルによって、ヒツジの乳腺細胞核の核移植によるクローン、ドリー(2003年2月14日死亡)が作られた。これは哺乳類で初めて体細胞から作られたという点で注目を集めた。さらに、1997年には同研究所において、人為的に改変を加えた遺伝子を持つトランスジェニックヒツジのクローンポリーとモリーが作成された。これはトランスジェニック動物のクローンとして世界で初めてのものである。
1986年、ソ連の科学者は、マーシャ ("Masha") と呼ばれるマウスのクローンを胚細胞核移植によって作製した[2]。
1997年、ハワイ大学マノア校の柳町隆造研究室の若山照彦らによって、ホノルル法を用いた初めてのクローンがマウスから作成された。このマウスは、Cumulinaと名付けられた。
2001年12月にテキサスA&M大学の研究者がCC (コピーキャット) と呼ばれる初めての猫のクローンを作製した[3]。CCはクローン元の猫と全く同じDNAを持つにも関わらず、性格はそれぞれ異なっていた。例えば、CCは恥ずかしがりやで臆病だったが、クローン元の猫は好奇心旺盛で活発だった。
2004年には、初めての商業用ペットとしてのネコクローンリトルニッキーがGenetic Savings & Clone社によって作製された[4]。
2005年、哺乳類において最も生殖工学の適用が難しいと考えられていたイヌでのクローン作製が、韓国の研究者グループによって報告された。ところが、このイヌのクローンについて発表したソウル大学の黄禹錫教授らに関して、2005年末に『ヒト胚性幹細胞捏造事件』(ES細胞論文の捏造・研究費等横領・卵子提供における倫理問題)が発覚し、これを契機に過去の主だった論文の精査が行なわれた。結局、それまでの黄禹錫の発表成果のうちイヌクローンのみは成功していたことが立証された。
ヒトのクローンは未だ成功していないとする考えが一般的ではある[要出典][いつ?]。2009年、ほぼすべての動物のクローン体には何らかの欠陥(エラー)が報告されており、この技術を人間に適用するのは、倫理的な問題以前に技術的な問題があるとされている。たとえば、細胞の分裂に必要なテロメアの長さが短いことがわかってきている。そのため、クローン体は通常より寿命が短い可能性も否定できない。
「クローン人間」というと、「自分と姿・形が全く同じ人間」というイメージが一般にあるが、仮に自分のクローンを作る場合、誕生した時点ではクローンは赤ん坊であるため、現在の自分とは年齢のギャップが生じる。
また発生生物学的にも血管のパターン(配置構造)や指紋などは後天的な影響によるものと考えられており、生体認証の上で利用される血管パターンや指紋の同一な個体の発生率は遺伝的に異なる他の個体と同程度であると考えられている(ただし認証手法によって技術的に同一と判定される率は変化する)ことから、クローン体を用いて生体認証のコンピュータセキュリティを突破しようとすることは現実的ではない。ウシクローン体では鼻紋が、ネコクローン体では毛色が元個体と違うことが確認されている。
個体全身を作製するクローンではなく、体細胞クローン技術やその途中経過である移植者自身の体細胞より発生した幹細胞を利用することで、臓器を複製し機能の損なわれた臓器と置き換えたり、あるいは幹細胞移植による再生医療も研究されている。
日本におけるクローン技術規制法のように、世界各国でヒトクローンを禁止する枠組みができつつある。理由としては、先ほど出たような寿命が短いというような問題の他に、「外見の全く一緒の人達が何人もいると社会制度上大変なことになる」「優秀な人間のクローンをたくさん作り優秀な人間だけの軍隊を作る」、「独裁者がクローンで影武者を立てる」などといった事態[5]が起こるから、ということが挙げられるが、上記のように根本的に不可能なものがある。また、「優秀な人間だけの軍隊・野球チーム・サッカーチーム」などという存在は、生まれてきたクローン人間に強制的に軍人やスポーツ選手の道[6]を歩ませない限り不可能であり、これは「クローン人間に普通の人間並みの人権を認めない」ということになり人権上問題があるばかりか、ある意味奴隷制度にもつながりかねないものである。なお、研究上ネアンデルタール人等といった古人類のクローンについては規定が明確ではなくグレーの部分がある。絶滅した古人類をヒトとして扱うか動物として扱うかは本来法的に問題にならないが、クローン技術で復活させて研究する等といった、技術的な進歩次第では人類進化のための研究を認めるか等を考慮する必要性が発生することも考えられる。
このような禁止措置はES細胞、iPS細胞などの生命科学の発展の障害となる可能性があり、考え方の対立が問題となっている。
この「クローン」は、自然科学に関連した書きかけ項目です。この記事を加筆・訂正などしてくださる協力者を求めています(Portal:自然科学)。 |
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