- 英
 
- interstitial pneumonitis, interstitial lung disease, pneumonitis, interstitial pneumonia
 
- 同
 
- びまん性間質性肺炎 diffuse interstitial pneumonia、びまん性線維性肺胞炎 diffuse fibrosisalveolitis、肺臓炎 pneumonitis
 
- 関
 
- 肺炎、間質性肺疾患
 
間質性肺炎と実質性肺炎
- 実質性肺炎・・・いわゆる肺炎。実質(肺胞上皮細胞および肺胞腔)の炎症。区域性の分布
 
- 間質性肺炎・・・実質の間を埋める間質が炎症の場。胞隔炎。びまん性の分布
 
定義
- 間質(肺胞壁や細気管支、細動静脈周囲など)を病変の主座とする炎症性疾患に対する病理組織学的総称。大葉性・小葉性肺炎(肺胞、肺胞道などの気腔内への滲出性病変)に対比して用いられる。
 
検査
病因による分類
- 間質性肺炎を来す疾患として、塵肺(無機塵・有機塵、エアロゾル?)、膠原病(PSS, SLE, RAなど)、感染症(ウイルス感染、細菌感染)、薬物誘起性肺炎、放射線肺炎など
 
WordNet
- inflammation of the lungs; caused by a virus or an allergic reaction
 
Wikipedia preview
出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2013/01/13 15:39:53」(JST)
[Wiki ja表示]
| 
 | 
ウィキペディアは医学的助言を提供しません。免責事項もお読みください。 | 
間質性肺炎(かんしつせいはいえん、interstitial pneumonia (IP))は肺の間質組織を主座とした炎症を来す疾患の総称。治療の困難な難病である。進行して炎症組織が線維化したものは肺線維症(はいせんいしょう)と呼ばれる。間質性肺炎のうち特発性間質性肺炎(後述)は日本の特定疾患。間質性肺臓炎(interstitial pneumonitis)ともいう。
1989年6月には、美空ひばりがこの病因により、52歳で死亡した。また2009年5月には、官房副長官だった鴻池祥肇がこの病気を理由に入院し、官房副長官を辞任した。
| 
 
 目次
- 1 病態概念
 
- 2 症状
 
- 3 所見・診断
 
- 4 治療
 
- 5 予後
 
- 6 原因による分類
 
- 7 急性増悪
 
 
 | 
病態概念
肺は血液中のガスを大気中のものと交換する器官であり、大気を取り込む肺胞と毛細血管とが接近して絡み合っている。それらを取り囲んで支持している組織が間質である。
通常、肺炎といった場合には気管支もしくは肺胞腔内に起こる炎症を指し、通常は細菌感染によるものを指す。間質性肺炎の場合は支持組織、特に肺胞隔壁に起こった炎症であり、肺胞性の肺炎とは異なった症状・経過を示す。
- 肺コンプライアンスの低下
 
- いわば「肺が硬くなる」。肺の支持組織が炎症を起こして肥厚することで、肺の膨張・収縮が妨げられる。肺活量が低下し、空気の交換速度も遅くなる。
 
- ガス交換能の低下
 
- 間質組織の肥厚により毛細血管と肺胞が引き離される。その結果、血管と肺胞の間でのガス交換(拡散)効率が低下し、特に酸素の拡散が強く妨げられる。
 
症状
その病態から、呼吸困難や呼吸不全が主体となる(息を吸っても吸った感じがせず、常に息苦しい)。また、肺の持続的な刺激により咳がみられ、それは痰を伴わない乾性咳嗽である(痰は気管支や肺胞の炎症で分泌されるため)。肺線維症に進行すると咳などによって肺が破れて呼吸困難や呼吸不全となり、それを引きがねとして心不全を起こし、やがて死に至ることもある。
所見・診断
- 理学所見
 
- 診察上特徴的なのは胸部聴診音で、パチパチという捻髪音 fine crackleが知られる。これはマジックテープをはがす音に似ているため、マジックテープのメーカー(ベルクロ社)にちなんでベルクロラ音とも呼ばれる。また、呼吸器障害を反映してばち指がみられることもある。
 
- 臨床検査
 
- 単純X線撮影および胸部CTではすりガラス様陰影 ground-glass opacityが特徴的である。これは、比較的一様に濃度が上がった、ぼやっとした肺陰影である。進行すると線維化を反映して蜂巣状を呈するようになっていく。診断は画像診断でほぼ確定することができる。
 
- 呼吸生理学検査では、%肺活量、一酸化炭素拡散能の低下がみられる。これは重症度判定の目安になる。間質性肺炎は基本的に拘束性換気障害を呈するため、COPDなどの閉塞性肺疾患を合併していない限り、1秒率は低下しない。
 
- 血液検査では、非特異的だがLDH、血沈の上昇が知られる。特異性の高い所見としてはSP-A、SP-D、KL-6の上昇があり、これは炎症の活動度の判定や治療効果の判定に信頼性が高い。
 
- 病理所見
 
- 硝子膜形成、II型上皮の腫大・増生、肺胞壁への炎症細胞浸潤がみられる。末期には蜂窩肺となる。
 
治療
炎症の抑制を目的としてステロイドホルモンや免疫抑制剤が使用される。感染が原因である場合、これらは増悪を招くおそれがある。2008年より、日本ではピルフェニドン(商品名ピレスパ錠200mg®)が発売された。現在日本でのみ承認されている。光線過敏症などの副作用はあるが、特発性肺線維症(病理組織分類では通常型間質性肺炎)に対してはこの薬のみが唯一有効性が証明されている。
対症療法として呼吸不全に対して酸素投与が行われるが、進行して二酸化炭素排泄も不十分となった場合には酸素投与のみでは炭酸ガスナルコーシスを引き起こしかねないため人工呼吸器を導入せざるを得なくなる。
肺移植の有用性も検討されており移植の適応疾患に認められているが、日本では2005年の時点で10例程度施行されたのみである。
予後
進行性で治療に抵抗性のものでは数週間で死に至るものもある。慢性的に進行した場合は10年以上生存することも多い。
原因による分類
- 感染
 
- ウイルス感染は間質性肺炎の形態をとることがあり、間質性肺炎の鑑別診断の一つとして考慮すべきである。血液疾患などで見られることの多いサイトメガロウイルス肺炎が代表的なものであるが、インフルエンザウイルス等も原因となることがある。
 
- 膠原病
 
- 関節リウマチ、全身性強皮症、皮膚筋炎、多発性筋炎、MCTDなど線維化を来す膠原病の一症候として間質性肺炎が出現する頻度が高い。特に皮膚筋炎に合併するものは急速に進行し予後が悪い傾向がある。
 
- 放射線
 
- 画像診断程度の線量ではまず発生することはなく、放射線療法程度の強い被曝に起こる。照射野に一致した炎症像を呈する。また、基礎疾患として間質性肺炎のある患者の場合は照射野外にも広範囲に広がる重篤な間質性肺炎を起こす可能性がある。
 
- 中毒・薬剤性
 
- ブレオマイシン、ゲフィチニブなどの抗癌剤、漢方薬の小柴胡湯、インターフェロン、抗生物質などや胆道疾患改善薬(ウルデストン錠)によるものがよく知られている。特にゲフィチニブによるものは日本(人)での発症率が高く、主として先行販売されていた海外でのデータをもとにして薬事承認されていたため上梓後に危険性が顕在化することとなり、社会的にも大きな影響を生じた。これらが疑われたときには原因薬剤の速やかな中止が第一となる。
 
中毒としては、パラコート中毒の際に細胞障害の結果起きることがある。この場合、パラコートの細胞障害作用には酸素が働いているため酸素投与は絶対禁忌となる。
特発性
以上に挙げた明確な原因を持たないものは特発性間質性肺炎(IIP: Ideopathic Interstitial Pneumonitis)と呼ばれる。組織型によりいくつかに分類されるが、剥離性間質性肺炎は喫煙との関連が明らかになっている。
病理学的分類:Liebow(1968)の分類
- 通常型間質性肺炎(UIP: usual interstitial pneumoniae)
 
- 閉塞性細気管支炎を合併したびまん性肺胞障害(BIP: bronchiolitis obliterans and diffuse alveolar damage)
 
- 剥離型間質性肺炎(DIP: desquamative interstitial pneumoniae)
 
- 巨細胞性間質性肺炎(GIP: giant cell interstitial pneumoniae)
 
- リンパ性間質性肺炎(LIP: lymphoid inerstitial pnumoniae)
 
その後検討され、2002年のATS(American thoracic society)/ERS(European respiratory society)の分類では、以下の7つに分類できる。
- UIP (usual interstitial pneumonia)
 
- NSIP (nonspecific interstitial pneumonia)
 
- COP (cryptogenic organizing pneumonia)- BOOP(bronchiolitis obliterans with organizing pneumoniae:器質化肺炎を伴う閉塞性細気管支炎)と言われていたもの
 
- DIP (desquamative interstitial pneumonia)
 
- RB-ILD (respiratory bronchiolitis-associated interstitial lung disease)
 
- AIP(acute interstitial pnaumonia)
 
- LIP (lymphocytic interstitial pnaumonia)
 
急性増悪
間質性肺炎は、原疾患の病勢、治療薬の副作用、感染症などをきっかけに急激に症状が増悪し致命的となる場合がある。これを急性増悪といい、管理上の最大の問題となる。緊急的にステロイドパルス療法が行われる。
| 
   
呼吸器疾患 (ICD-10 J00〜99) | 
 
 | 
 
| 
   
疾患 | 
 
 | 
 
| 
 閉塞性肺疾患 
 | 
| 
 慢性閉塞性肺疾患 
 | 
 気管支喘息 | 慢性気管支炎 | 肺気腫 | びまん性汎細気管支炎 
 | 
 
 
 | 
 
 | 
 
| 
 拘束性肺疾患 
 | 
| 
 特発性 
 | 
 IPF | NSIP | COP | AIP | DIP | RB-ILD | LIP 
 | 
 
 | 
 
| 
 続発性 
 | 
 塵肺 | 放射線肺炎 | 薬剤性肺炎 
 | 
 
 | 
 
| 
 無気肺 | 気胸 | 血胸 
 | 
 
 
 | 
 
 | 
 
| 
 形態異常 
 | 
 気管支拡張症 | 肺分画症 | 肺嚢胞症 
 | 
 
 | 
 
| 
 腫瘍 
 | 
| 
 良性腫瘍 
 | 
 肺過誤腫 | 硬化性血管腫 
 | 
 
 | 
 
| 
 悪性腫瘍 
 | 
 低悪性度肺腫瘍 | 原発性肺癌 | 転移性肺癌 | 中皮腫 
 | 
 
 
 | 
 
 | 
 
| 
 アレルギー 
 | 
| 
 気管支喘息 
 | 
 アスピリン喘息 
 | 
 
 | 
 
| 
 好酸球性肺炎 
 | 
 Löffler症候群 | 急性好酸球性肺炎 | 慢性酸球性肺炎 | 好酸球増加症候群 
 | 
 
 | 
 
| 
 過敏性肺臓炎 | サルコイドーシス | グッドパスチャー症候群 
 | 
 
 
 | 
 
 | 
 
| 
 肺循環障害 
 | 
 肺血栓塞栓症 | 肺性心 | 新生児呼吸窮迫症候群 | 急性呼吸窮迫症候群 
 | 
 
 | 
 
| 
 肺代謝異常 
 | 
 肺胞蛋白症 | 肺胞微石症 
 | 
 
 | 
 
| 
 機能的障害 
 | 
 過換気症候群 | 睡眠時無呼吸症候群 
 | 
 
 | 
 
| 
 感染性疾患 
 | 
| 
気道感染 | 
 
 | 
 
| 上気道 | 
| 
 風邪 
 | 
 ライノウイルス - アデノウイルス - パラインフルエンザウイルス - RSウイルス - コロナウイルス - エコーウイルス - エンテロウイルス 
 | 
 
 | 
 
| 
 喉頭炎 
 | 
 急性喉頭蓋炎 - クループ 
 | 
 
 | 
 
| 
 咽頭炎 
 | 
 
 
 | 
 
 | 
 
| 下気道 | 
 急性細気管支炎 
 | 
 
 | 
 
| 肺炎 | 
| 
 原因 
 | 
| 
 定型肺炎 
 | 
| 
 グラム陽性 
 | 
 肺炎球菌 - 黄色ブドウ球菌 
 | 
 
 | 
 
| 
 グラム陰性 
 | 
 肺炎桿菌 - インフルエンザ菌 - モラクセラ - 大腸菌 - 緑膿菌 
 | 
 
 
 | 
 
 | 
 
| 
 非定型肺炎 
 | 
| 
 ウイルス性 
 | 
 RSウイルス - インフルエンザ肺炎 - 重症急性呼吸器症候群 
 | 
 
 | 
 
| 
 肺真菌症 
 | 
 ニューモシスチス肺炎 - クリプトコッカス症 - アスペルギルス症 
 | 
 
 | 
 
| 
 レジオネラ菌 - マイコプラズマ - クラミジア肺炎 - オウム病 
 | 
 
 
 | 
 
 | 
 
| 
 抗酸菌症 
 | 
 結核 - 非結核性抗酸菌症 
 | 
 
 
 | 
 
 | 
 
| 
 機序 
 | 
 市中肺炎 - 院内肺炎 - 誤嚥性肺炎 
 | 
 
 | 
 
| 
 病態 
 | 
| 
 肺胞性肺炎 
 | 
 大葉性肺炎 - 気管支肺炎 
 | 
 
 | 
 
| 
 化膿性肺炎 
 | 
 
 
 | 
 
 
 | 
 
 | 
 
| 胸壁 | 
 膿胸 
 | 
 
 
 | 
 
 
 
 | 
 
 
 | 
 
 
 | 
 
 | 
 
| 
   
症候・徴候 | 
 
 | 
 
| 
 異常呼吸 
 | 
 過呼吸 | 頻呼吸 | 徐呼吸 | 低呼吸 | 多呼吸 | 少呼吸 | 起坐呼吸 | 奇異性呼吸 | クスマウル呼吸 | チェーンストークス呼吸 | ビオー呼吸 
 | 
 
 | 
 
| 
 咳嗽 | 痰 | 呼吸困難 | 胸痛 | 胸水 | ばち指 | チアノーゼ 
 | 
 
 
 | 
 
 
 | 
 
 | 
 
| 
   
所見・検査 | 
 
 | 
 
| 
 聴診 | 胸部X線写真 | 胸部X線CT | 気管支鏡 | 胸腔鏡 
 | 
 
 
 | 
 
 | 
 
| 
呼吸器系の正常構造・生理 | 
 
 | 
 
| 気道系 | 
| 
 解剖学的構造 
 | 
| 
 上気道 
 | 
| 
 鼻 
 | 
 鼻孔 | 鼻腔 | 鼻甲介 | 副鼻腔 
 | 
 
 | 
 
| 
 口 
 | 
 口腔前庭 | 口腔 | 口蓋 
 | 
 
 | 
 
| 
 咽頭 - 喉頭 
 | 
 
 
 | 
 
 | 
 
| 
 下気道 
 | 
| 
 気管 
 | 
 
 | 
 
| 
 気管支 
 | 
 主気管支 - 葉気管支 - 区域気管支 - 亜区域気管支 
 | 
 
 | 
 
| 
 細気管支 
 | 
 小気管支 - 細気管支 - 終末細気管支 
 | 
 
 | 
 
| 
 呼吸細気管支 
 | 
 
 
 | 
 
 | 
 
| 
 ガス交換器 
 | 
 肺 - 肺胞管 - 肺胞嚢 - 肺胞 
 | 
 
 | 
 
| 
 顕微解剖学 
 | 
 I型肺胞上皮細胞 | II型肺胞上皮細胞 | 杯細胞 | クララ細胞 | 気管軟骨輪 
 | 
 
 
 | 
 
 | 
 
| 
 生理学・生化学 
 | 
| 
 生理学 
 | 
 肺気量 | 肺活量 | %肺活量 | 残気量 | 死腔 | 1回換気量 | 1秒率 | 肺サーファクタント | SP-A 
 | 
 
 | 
 
| 
 生化学 
 | 
 PaCO2 | PaO2 | AaDO2 | FiO2 | SpO2 | 呼吸係数および酸素化係数 
 | 
 
 
 | 
 
 
 | 
 
 | 
 
| 血管系 | 
| 
 肺循環系 
 | 
 (右心室 -) 肺動脈 - 毛細血管 - 肺静脈 (- 左心房) 
 | 
 
 | 
 
| 
 気管支循環系 
 | 
 (胸部大動脈 -) 気管支動脈 - 毛細血管 - 気管支静脈 (- 奇静脈/副反奇静脈) 
 | 
 
 
 | 
 
 | 
 
| 運動器系 | 
| 
 骨格 
 | 
 肋骨 | 胸骨 
 | 
 
 | 
 
| 
 呼吸筋 
 | 
 横隔膜 | 内肋間筋 | 外肋間筋 | 胸鎖乳突筋 | 前斜角筋 | 中斜角筋 | 後斜角筋 | 腹直筋 | 内腹斜筋 | 外腹斜筋 | 腹横筋 
 | 
 
 
 | 
 
 | 
 
| 神経系 | 
| 
 中枢神経系 
 | 
 呼吸中枢 | 呼吸調節中枢 | 前頭葉 
 | 
 
 | 
 
| 
 末梢神経系 
 | 
 横隔神経 | 肋間神経 
 | 
 
 
 | 
 
 
 | 
 
 
 | 
 
 
 | 
 
UpToDate Contents
全文を閲覧するには購読必要です。 To read the full text you will need to subscribe.
Japanese Journal
- 抗MDA5/IFIH1抗体と皮膚筋炎・急速進行性間質性肺炎 (AYUMI 自己免疫疾患 : 自己抗体の認識抗原と病因的意義)
 
- 間質性肺疾患合併例に対する呼吸器外科手術 (特集 合併症を有する胸部外科手術) -- (呼吸器領域)
 
- トップランナーに聞く : 最先端の医療に挑む若手研究者への直撃インタビュー(19)間質性肺炎・肺線維症の病態解明と新たな治療法の開発を目指して
 
- 今月の症例 抗KS抗体陽性の抗ARS抗体症候群の1例
 
Related Pictures







★リンクテーブル★
  [★]
- 次の文を読み、 53~ 55の問いに答えよ。
 
- 74歳の女性。意欲低下と全身倦怠感とを主訴に来院した。
 
- 現病歴: 3年前に夫を亡くし、そのころから意欲低下を自覚するようになったが誰にも相談しなかった。 3か月前から意欲低下がこれまでより増悪し、全身倦怠感も徐々に出現した。一昨日、転倒して尻もちをついた。昨日、腰痛も自覚したためかかりつけ医を受診し、カルシトニンの筋肉注射を受け、さらに精査のため紹介されて受診した。
 
- 既往歴: 68歳で脂質異常症と骨粗鬆症とを指摘され、 HMG-CoA還元酵素阻害薬と活性型ビタミン Dとを服用中である。
 
- 生活歴: 3年前から一人暮らし。喫煙歴と飲酒歴とはない。
 
- 家族歴:夫が心筋梗塞のため 75歳で死亡。妹が脂質異常症で治療中。
 
- 現症:意識は清明。身長 153 cm、体重 58 kg。体温 35.8 ℃。脈拍 52/分、整。血圧 116/64 mmHg。甲状腺はびまん性に腫大し硬い。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。
 
- 検査所見:血液所見:赤血球 408万、 Hb 12.0 g/dl、Ht 38%、白血球 5,300、血小板 17万。血液生化学所見:総蛋白 7.0 g/dl、アルブミン 3.7 g/dl、AST 62 IU/l、ALT 42 IU/l、LD 484 IU/l(基準 176~353)、 ALP 275 IU/l(基準 115~359)、 γ -GTP 3 3IU/l(基準 8~50)、 CK 682 IU/l(基準 30~140)、 CK-MB 15 IU/l(基準 20以下 )、尿素窒素 16 mg/dl、クレアチニン 0.9 mg/dl、尿酸 7.2 mg/dl、血糖 98 mg/dl、総コレステロール 216 mg/dl、トリグリセリド 130 mg/dl、HDLコレステロール 45 mg/dl、Na137 mEq/l、K 4.5 mEq/l、Cl 102 mEq/l、Ca 9.5 mg/dl、TSH 56.3 μU/ml(基準 0.2~4.0)、 FT3 0.8 pg/ml(基準 2.5~4.5)、 FT4 0.2 ng/dl(基準 0.8~2.2)。 CRP 1.0 mg/dl。心電図で肢誘導の低電位を認める。胸部エックス線写真で心胸郭比 54%。甲状腺ホルモン補充療法を開始した。
 
- 最も注意すべき有害事象はどれか。
 
[正答]
※国試ナビ4※ [108B054]←[国試_108]→[108B056]
  [★]
- 次の文を読み、4~6の問いに答えよ。
 
- 72歳の男性。眼瞼下垂、複視および易疲労性を主訴に来院した。
 
- 現病歴: 2か月前から疲れやすさを自覚し、眼瞼が下がり、物が二重に見えるようになった。午前中は程度は軽いが、午後になると眼瞼の下垂と疲労とが増悪する。最近は階段の上りや重いものを運ぶのが次第に困難になってきた。
 
- 既往歴: 50歳時に肺結核と診断され、抗結核薬を1年間内服した。
 
- 現症: 意識は清明。身長170cm、体重58kg。脈拍60/分、整。血圧130/82mmHg。両側に眼瞼下垂を認め、1分間上方注視させると下垂は増悪する。全方向で複視を認めるが、瞳孔は左右同大で対光反射は正常である。頭部屈筋と四肢近位筋とに筋力低下を認め、握力は両側20kg。筋萎縮はなく、深部腱反射は正常。感覚障害と自律神経障害とはない。
 
- 検査所見: 尿所見:蛋白(-)、糖(-)。
 
- 血液所見:赤血球488万、Hb14.9g/dl、白血球4,600。
 
- 血清生化学所見:空腹時血糖75mg/dl、総蛋白7.3g/dl、アルブミン4.7g/dl、CK120IU/l(基準40~200)、FT3 3.0pg/ml(基準2.5~4.5)、FT4 1.2ng/dl(基準0.8~2.2)。胸部エックス線写真で肺尖部に陳旧性結核病変を認める。胸部単純CTで前縦隔に異常はない。
 
- 治療として、プレドニゾロンを20mg/日(隔日投与)で開始し、漸増していくことにした。
 
- 今後、起こりえる合併症はどれか。2つ選べ。
 
[正答]
※国試ナビ4※ [101E005]←[国試_101]→[101E007]
  [★]
- 65歳の男性。胸部エックス線写真で右中肺野に異常陰影を指摘されて受診した。5年前から間質性肺炎を指摘されている。1年前に急性増悪で入院し、その後、外来で副腎皮質ステロイドの内服治療を受けていたが、ここ年は症状が安定していたため、自己判断で内服を中断し受診していなかった。喫煙は20本/日を40年間。5年前から禁煙していたが、6か月前から喫煙を再開していた。胸部単純CTで右肺上葉に腫瘤影を認め、経気管支肺生検で肺扁平上皮癌と診断された。全身検索の結果、右肺門部リンパ節転移を認めたが、それ以外には転移を認めなかった。体温36.6℃。脈拍 76/分、整。血圧 132/76mmHg。呼吸数 12/分。SpO2 95%(room air)。両側胸部でfine cracklesを聴取する。呼吸機能検査:VC 3.5L、FEV1 2.2L。心電図、心エコー検査で異常を認めない。胸部エックス線写真(別冊No.3A)及び胸部単純CT(別冊No.3B)を別に示す。患者に手術の選択肢もあることを説明したところ手術を希望した。
 
- この患者の周術期について適切でないのはどれか。
 
- a 術後早期離床を行う。
 
- b 術前に禁煙指導を行う。
 
- c 術前から酸素療法を行う。
 
- d 術後間質性肺炎急性増悪のリスクがある。
 
- e 術後在宅酸素療法が必要になるリスクがある。
 
[正答]
※国試ナビ4※ [113D018]←[国試_113]→[113D020]
  [★]
- 56歳の女性。皮疹と筋力低下とを主訴に来院した。半年前から階段の昇降がつらくなり、しゃがみ立ちが困難になった。最近、上眼瞼に紫紅色の浮腫が、肘と膝関節との伸側に紅斑が出現した。半年間で5kg体重が減少した。身長161cm、体重37kg。体温37.6℃。脈拍80/分、整。血圧104/62mmHg。前額部、鼻唇溝、後頭部および後頸部に紅斑を認める。右頭部と両膝窩とに大豆大のリンパ節を触知する。心雑音はない。両側下肺野にfine cracklesを聴取する。腹部は平坦で、肝・脾を触知しない。徒手筋力テストで、頸筋3,両側の上下肢筋4。神経学的に異常所見はない。尿所見:蛋白(-)。便潜血1+。血液所見:赤沈25mm/1時間、赤血球366万、Hb10.9g/dl、白血球6,200、血小板20万。血清生化学所見:空腹時血糖100mg/dl、尿素窒素10mg/dl、クレアチニン0.3mg/dl、AST50単位、ALT32単位、CK148単位(基準10~40)。免疫学所見:CRP0.1mg/dl、抗核抗体80倍(基準20倍以下)。
 
- この患者で予想される合併症はどれか。2つ選べ。
 
[正答]
※国試ナビ4※ [100F046]←[国試_100]→[100F048]
  [★]
- 65歳の男性。手指の蒼白化と階段昇降時の息切れとを主訴に来院した。5年前の冬から寒冷時に手指が蒼白になり、紫色に変色することに気付いている。1か月前から指先の皮膚に潰瘍が出現した。また、手指と顔面とのむくみと胸やけとを自覚している。脈拍72/分、整。血圧120/74mmHg。両側上下肢の末梢から1/3までと顔面とに皮膚硬化を認める。指先に皮膚の陥凹を認める。聴診上、両下肺にfine crackles(捻髪音)を聴取する。尿所見:蛋白(-)、潜血(-)。血液所見:赤血球420万、Hb 14.0g/dl、白血球6,500、血小板22万。血清生化学所見:総蛋白7.2g/dl、尿素窒素16mg/dl、クレアチニン1.0mg/dl。免疫学所見:CRP0.1mg/dl(基準0.3以下)、抗核抗体10,240倍(基準20以下)、抗セントロメア抗体(+)、抗Scl-70抗体(-)。この患者で考えられるのはどれか。2つ選べ。
 
[正答]
※国試ナビ4※ [098D052]←[国試_098]→[098D054]
  [★]
- 40歳の女性。皮疹と全身倦怠感とを主訴に来院した。3か月前から顔面、両肘および両手に皮疹が出現した。2週前から四肢の脱力、筋肉痛および全身倦怠感を認めた。意識は清明。身長158cm、体重52kg。体温37.2℃。脈拍72/分、整。血圧120/84mmHg。呼吸数28/分。赤沈38mm/1時間。血液所見:赤血球420万、Hb 11.5g/dl、Ht 40%、白血球4,700、血小板28万。血液生化学所見:CK1,404IU/l(基準30~140)。免疫学所見:CRP 0.4mg/dl、抗核抗体80倍(基準20以下)。顔面と手の写真(別冊No.24A、B)を別に示す。
 
- この疾患で注意すべき合併症はどれか。
 
[正答]
※国試ナビ4※ [107I070]←[国試_107]→[107I072]
  [★]
- 3か月の乳児。激しい咳を主訴に来院した。 2週前に咳が出現し、次第に強くなってきた。今朝からは激しく咳込んだ後に笛が鳴るような呼吸音がしている。保育所で同様の症状の児が複数いるという。呼吸数36/分.心拍数140/分.整。両眼臆は浮腫状。咽頭は軽度発赤しており、舌圧子を入れると咳込む。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦で、右肋骨弓下に肝を2cm触知する。脾を触知しない。血液所見:赤血球 430万、Hb 12.0g/dl、Ht 36%、白血球 21,000(桿状核好中球6%、分業核好中球20% 単球2%、リンパ球72%)。
 
- 注意すべき合併症はどれか。 2つ選べ。
 
[正答]
※国試ナビ4※ [105A053]←[国試_105]→[105A055]
  [★]
- 39歳の女性。2週前から発熱、息切れ及び膿性痰があり、次第に増悪したため来院した。18歳ころから咳嗽と喀痰とがあった。時々血痰と発熱とがあり、その都度、近医で治療をうけていた。体温37.2℃。呼吸数20/分。血圧102/80mmHg。両側下肺野にcoarse crackles(水泡音)を聴取する。血液所見:赤血球410万、Hb 12.1g/dl、白血球14,800、血小板42万。CRP4.8mg/dl(基準0.3以下)。動脈血ガス分析(自発呼吸、room air):pH 7.39、PaO2 55Torr、PaCO2 46Torr。胸部エックス線写真と胸部単純CTとを以下に示す。考えられるのはどれか。
 
[正答]
※国試ナビ4※ [096D013]←[国試_096]→[096D015]
  [★]
- 78歳の男性。発熱、喘鳴および呼吸困難を主訴に来院した。1年前の脳梗塞のため右片麻痺と構音障害とを認める。昨日から咳嗽、喘鳴および呼吸困難が出現した。意識は清明。体温37.8℃。呼吸数24/分。脈拍88/分、整。血圧132/78mmHg。頭頸部に異常を認めない。両背側に吸気終末中心に増強するcoarse cracklesと呼気相全体のrhonchi<いびき様音>とを聴取する。過剰心音と心雑音とを聴取しない。胸部エックス線写真で心拡大を認めない。
 
- 考えられるのはどれか。
 
[正答]
※国試ナビ4※ [103A036]←[国試_103]→[103A038]
  [★]
- 87歳の男性。意識障害のため施設の職員に連れられて来院した。2日前から38℃台の発熱があり、今朝から意識レベルの低下が認められている。5年前から脳梗塞の後遺症で常時介護が必要な状態であり、1年前から家族による介護が困難となったため、特別養護老人ホームに入所している。胸部エックス線写真で右下肺野に浸潤影を認める。
 
- この患者の肺炎の分類として正しいのはどれか。2つ選べ。
 
[正答]
※国試ナビ4※ [111A051]←[国試_111]→[111A053]
  [★]
- 35歳の男性。手足の発疹を主訴に来院した。半年前から、手掌と足蹠とに皮疹が出現した。苛性カリ検鏡法で真菌は陰性である。皮膚生検H-E染色標本を以下に示す。この疾患に合併しやすいのはどれか。
 
[正答]
※国試ナビ4※ [100H035]←[国試_100]→[100H037]
  [★]
- 40歳の女性。両足の皮疹を主訴に来院した。病変部からの細菌・真菌培養は陰性である。胸骨部の痛みを訴えている。右足の写真を以下に示す。
 
[正答]
※国試ナビ4※ [103A055]←[国試_103]→[103A057]
  [★]
- 36歳の女性。両足の皮疹を主訴に来院した。病変部からの細菌・真菌培養は陰性である。
 
- 右足の写真を以下に示す。
 
- この疾患と関連の深いのはどれか。
 
[正答]
※国試ナビ4※ [096D006]←[国試_096]→[096D008]
  [★]
[正答]
※国試ナビ4※ [100G101]←[国試_100]→[100G103]
  [★]
聴診所見と呼吸器疾患の組合せで誤っているのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [113E007]←[国試_113]→[113E009]
  [★]
[正答]
※国試ナビ4※ [097G077]←[国試_097]→[097G079]
  [★]
[正答]
※国試ナビ4※ [110G019]←[国試_110]→[110G021]
  [★]
[正答]
※国試ナビ4※ [101C014]←[国試_101]→[101C016]
  [★]
[正答]
※国試ナビ4※ [105D007]←[国試_105]→[105D009]
  [★]
[正答]
※国試ナビ4※ [103H002]←[国試_103]→[103H004]
  [★]
- ラ
 
- polyarteritis nodosa PAN PN
 
- 関
 
- 特定疾患、血管炎
 
[show details]
 
疾患概念
|  
 | 
 
 | 
症状
 | 
検査
 | 
病理
 | 
治療
 | 
| 結節性多発動脈炎
 | 
polyarteritis nodosa,PN
 | 
細動脈に壊死性血管炎を引き起こす。糸球体腎炎なし。
 | 
① 全身症状あり ② 他臓器の虚血障害〈脳出血、肺出血、虚血性心疾患(心臓の冠動脈が虚血)〉 ③ 進行性腎機能低下、腎血管性高血圧(炎症動脈狭窄→レニン分泌)
 | 
尿所見に乏しい進行性腎機能低下、腰痛
 | 
・ 腎臓を含む多臓器の動脈に炎症が生じる。  ・ 腎動脈造影で弓状動脈に生じた結節様病変、糸球体病変は軽度。
 | 
ステロイド&免疫抑制剤(シクロホスファミド)
 | 
| 顕微鏡的多発動脈炎
 | 
microscopic polyangitis,MPA
 | 
小血管の炎症。糸球体腎炎あり。
 | 
①全身症状:発熱、体重減少、多発関節炎、筋肉痛 ②多臓器の虚血障害:肺出血(血痰) ③進行性腎機能低下(急性進行性糸球体腎炎)(高齢者のRPGNにMPAが多い)
 | 
①RPGN症状が(血尿、蛋白尿、円柱、週単位での腎機能低下) ②MPO-ANCA陽性が85%を占める。 
 | 
腎の微小血管と糸球体及び、肺の微小血管に炎症が生じる。  ① 半月体形成:糸球体係蹄壁の外側に増殖した細胞が半月状の形態をとる。  ② 免疫グロブリンや補体の沈着はなし。(p-ANCAがELIZA法で検出される。) 
 | 
 
 | 
症候スペクトル
- HIM.2125より
 
定義
- 中程度の筋性血管を冒す全身性の壊死性血管炎。抗好中球抗体とは無関係。(参考1)
 
- 多発動脈炎は1866年にKussmaulとMaierによって記載された。結節性多発動脈炎は複数の臓器に分布する小~中程度の筋性動脈に壊死性血管炎を起こす。典型的には腎臓や内臓の血管が冒される。結節性多発動脈炎では肺動脈は冒されないが、気管支の血管は冒されることがある。肉芽腫、著明な好酸球増多、あるいはアレルギー素因は見られない。
 
罹患率(incidence)と有病率(prevalence)
- 米国でのしっかりした統計はない。非常にまれな病気に感じられる。
 
- (日本では特定疾患に指定されており、登録患者数は5,753名(2007年時点)。10万人あたり患者が4~5名とまれな病気である)
 
病理と病因
- 結節性多発動脈炎の血管病変は中小の筋性動脈における壊死性血管炎である。病変は節性で(とびとびに存在する。つまり連続性ではない)、血管の分岐部や分岐した枝を冒す傾向がある。病変は動脈周囲に広がり近くの静脈も冒すかもしれないが、細静脈は冒さない。もし冒されていれば、顕微鏡的多発血管炎(MPA)である。病期の初期では多核白血球が血管壁の全層と血管周囲領域に浸潤する。これにより血管内膜の増殖と血管壁の変性が起こる。病変が亜急性から慢性に進むと、単核球はその病変部位に浸潤してくる。血管のフィブリノイド壊死は血管腔を傷つけ、血栓を形成し、血液を供給している臓器に梗塞を起こし、症例によっては出血をきたす。病変が治癒すると、コラーゲンが蓄積する。これはさらに血管腔を閉塞させるかもしれない。血管の病変部位に沿って1cm程度までの血管瘤の拡大が結節性多発動脈炎の特徴である。肉芽腫や好酸球の組織浸潤を伴う顕著な好酸球増多は特徴的ではなく、この場合はチャーグ-ストラウス症候群を疑う。
 
- 複数の臓器が影響を受け、臨床病理所見は血管病変の程度や部位、あるいは結果としての虚血性変化を反映する。前述したように肺の血管は影響を受けないし、気管支動脈の損傷はよく見られるわけではない。古典的結節性多発動脈炎の病理は糸球体腎炎を伴わない腎臓の血管炎である。著明納高血圧をともなう患者では糸球体硬化の典型的な病理像が見られる。加えて高血圧の続発としての病理像が体のどこかで見られるかもしれない。
 
- 循環血液中に、B型肝炎の抗原と面隙グロブリンの免疫複合体が単離され、また血管壁におけるB型肝炎抗原、IgM、補体の免疫蛍光により証明される事にくわえ、全身性の血管炎、特に結節性多発動脈炎タイプの血管炎を有する患者の10-30%にB型肝炎の抗原血症が見られとこれは結節性多発動脈炎の疾患の原因として免疫現象が関わっていることを示唆している。発病のメカニズムは不明だが、ヘアリー細胞白血病も結節性多発動脈炎と関係している。
 
臨床症状と検査所見
- 非特異的な徴候が結節性多発動脈炎の特徴である(つまり、診断しづらい)。半分以上の症例で発熱、体重減少、倦怠感がある。患者は普通脱力、倦怠感、頭痛、腹痛、および筋痛のような漠然とした症状を訴えて受診する。このような症状は急激に劇症の病態に進展することがある。特定の臓器系に関わる血管と関連した特異的な主訴もまた結節性多発動脈炎の全経過と同様来院時の病像を左右する。結節性多発動脈炎では、一般的に腎病変は高潔悦、腎不全あるいは微小血管瘤による出血として現れる。
 
- 結節性多発動脈炎の診断を付けることができる血清学的な検査はない。75%以上の患者で好中球優位の白血球増多が見られる。好酸球増多は希であり、もし高レベルに増加していればチャーグ-ストラウス症候群を示唆する。慢性の経過では貧血が見られるかもしれない、またESRの上昇は常に見られる。他の主要な検査所見は特定の臓器の関与を反映している。高ガンマグロブリン血症が見られることがあり、また30%までの患者はHBs抗原陽性である。MPO-ANCAやPR3-ANCAは結節性多発動脈炎で陽性になることは希である。
 
診断
- 結節性多発動脈炎の診断は病変部位の臓器を生検し、そこに特徴的な血管炎を証明することが基となる(つまり、一番大切な所見である)。生検で簡単に到達できる組織が無いときは、病変部位の血管を動脈造影して病変をとらえる。特に、人道、肝臓、あるいは内臓の中小動脈における動脈瘤を証明することは診断するのに十分である。動脈瘤は結節性多発動脈炎に特徴的なものではない。さらに、動脈瘤はいつも存在するわけでないし、血管造影所見は血管の狭窄や閉塞に限られるかもしれない。結節性の皮膚病変、有痛性の精巣、あるいは神経/筋のような症状が出ている臓器は最も診断的な結果を与えてくれる。
 
治療
- 未治療の結節性多発動脈炎の予後はきわめて悪く、5年生存率は10-20%である。死亡する場合、大抵胃腸合併症、特に腸梗塞、腸穿孔、そして心血管原性のもの原因となる。難治性の高血圧は肝臓、心臓、あるいは中枢神経系のような他の臓器における機能不全を複合しており、晩期における罹患率と死亡率に相加的に作用する。治療の導入によって生存率は著しく向上する。結節性多発動脈炎の良好な治療結果はプレドニゾンとシクロホスファミドの組み合わせで報告されている。比較的重症でない症例では、グルココルチコイド単剤で寛解に至っている。B型肝炎が関係する結節性多発動脈炎の治療ではグルココルチコイド、血漿交換に抗ウイルス薬を組み合わせて良好な治療結果が得られている。高血圧に対して慎重に治療することで、腎臓、心臓、中枢神経に関連した急性期と晩期の有病率と死亡率を低減させることができる。良好な治療の継続で、結節性多発動脈炎の再発は10%の患者でのみ起こると見積もられている。
 
古典的結節性多発動脈炎にともなう臓器病変とその症候
- HIM. Table 319-5より
 
参考
- 1. [charged]Clinical manifestations and diagnosis of polyarteritis nodosa - uptodate [1]
 
-PN
  [★]
- 英
 
- rheumatoid arthritis, RA
 
- 同
 
- リウマチ様関節炎、萎縮性関節炎 atrophic arthritis
 
- 関
 
- カプラン症候群、膠原病
 
概要
- 原因不明のchronic multisystem disease
 
- 炎症性の関節炎が、特に末梢の関節で全身性に起こる。
 
- 経過は多様
 
症候
- 朝のこわばり、疼痛、腫脹、関節の動揺、関節可動域制限、変形(手指、足趾、膝関節)。(SOR.211)
 
- 手指の近位指節間関節(PIP関節)、中手指節関節(MP関節)。遠位指節間関節(DIP関節)に初発することは稀。(SOR.211)
 
- 左右対称性に生じることが多い。手関節、足趾、膝関節に初発する。(SOR.211)
 
- 朝のこわばりは1時間以上持続する(⇔変形性関節症では30分以内におさまる。関節を使わないと痛みがひどくなる)
 
関節外症状
- 100CASE p.76
 
- SOR.213改変
 
症候スペクトル
合併症
- YN. F-43
 
検査
単純X線
- 軟部組織の腫脹によるX線透過性の低下、関節周囲の骨萎縮(傍関節性骨骨粗鬆症)、関節辺縁のびらん、骨洞、関節裂隙狭小化、関節面の破壊、関節亜脱臼・脱臼(SOR.216)(下線の症状は変形性関節症では認めない)
 
血液
- 赤血球:小球性低色素性貧血
 
- 白血球:正常あるいは軽度増加。ただし 脾腫 + 白血球減少 + RA = フェルティー症候群
 
- 血小板:増加
 
- 補体:高値?。(SOR.217)SLEと違って低下しない。経過中に低下してきたのなら悪性関節リウマチを考慮
 
- リウマチ因子:陽性(70-80%の症例)
 
- 炎症所見:赤沈・CRP・免疫グロブリン高値
 
関節液
- 淡黄緑色、混濁、滑膜細胞の細片の浮遊を認める。粘稠度低下(SOR.218)
 
関節内視鏡
身体所見 (SOR.213,417)
手
手関節
- 手関節と遠位橈尺関節の滑膜炎→腫脹、運動痛、手関節の掌背屈及び前腕の回旋制限
 
- 尺骨頭の背側亜脱臼:ピアノキーサイン
 
- 手根骨の尺側移動、掌側移動
 
- 手関節強直:手関節が破壊されて癒合すると線維性強直、骨性強直が起きて関節の変形が固定される。
 
指
MP関節(MCP関節)
- 掌側脱臼、尺側偏位、伸筋腱の尺側脱臼
 
PIP関節
趾
MP関節(MTP関節)
- 外反母趾:第1中足骨が内反し、第1中足趾節関節で母指基節骨が外反し、中足骨骨頭が内側に膨隆し「く」の字型の変形を起こしたもの。
 
診断基準
|  
 | 
7項目中、4項目以上を満たすとき、関節リウマチと診断される
 | 
備考
 | 
| 1
 | 
1時間以上持続する朝のこわばりが、6週間以上あること
 | 
 
 | 
| 2
 | 
3領域以上の関節の腫れが、6週間以上あること
 | 
領域は、PIP関節・MP関節・手・肘・膝・足・MTP関節の14領域に分けられる
 | 
| 3
 | 
手関節またはMP関節またはPIP関節の腫れが、6週間以上あること
 | 
少なくとも1ヵ所での軟部組織腫脹
 | 
| 4
 | 
対称性関節腫脹
 | 
PIP、MCP、MTP関節は完全に対象である必要はない
 | 
| 5
 | 
リウマトイド結節
 | 
骨突起部、伸側表面/関節近傍の皮下結節
 | 
| 6
 | 
リウマトイド因子が陽性
 | 
正常人コントロールで5%以下の陽性率を示す測定法を用いること
 | 
| 7
 | 
X線、関節リウマチに特有の骨びらんが見られる
 | 
手・指を中心に見る、びらん以上の破壊も含む
 | 
診断
治療
- 以前は、病状の進行に合わせて作用の弱い薬剤から強い薬剤を用いていたが、最近では初期に強力に炎症を抑制して関節破壊を防ぐ治療方針に変わってきている。
 
TNF阻害薬の適応
- 1. 既存の抗リウマチ薬(DMARD)通常量を3ヶ月以上継続して使用してもコントロール不良のRA患者。コントロール不良の目安として以下の3項目を満たす者。
 
- 1) 圧痛関節数6関節以上
 
- 2) 腫脹関節数6関節以上
 
- 3) CRP 2.0mg/dl以上あるいはESR 28mm/hr以上
 
- a) 画像検査における進行性の骨びらんを認める
 
- b) DAS28-ESRが3.2(moderate activity)以上
 
 
- のいずれかを認める場合も使用を考慮する。
 
- 2. さらに日和見感染症の危険性が低い患者として以下の3項目も満たすことが望ましい。
 
- 1) 末梢血白血球数 4000/mm3以上
 
- 2) 末梢血リンパ球数 1000/mm3以上
 
- 3) 血中β-D-グルカン陰性
 
参考
- 2. 株式会社医学生物学研究所 MESACUP CCPテスト
 
- 3. 関節リウマチの診療マニュアル(改訂版) 診断のマニュアルとEBMに基づく治療ガイドライン
 
- http://www.rheuma-net.or.jp/rheuma/rm400/library/guideline.html
 
  [★]
- ☆case27 関節痛
 
- ■症例
 
- 37歳 女性
 
- 主訴:関節痛
 
- 現病歴:数ヶ月、膝の痛みがだんだん強くなっていると感じていた。痛みは手や足の小関節に多く、朝歩くときに最もこわばる。痛みはジクロフェナクを飲むと和らぐ。そのほかの症状として疲労感を感じ、最近、体重が3ヶ月で4kg減っている。
 
- 喫煙歴:なし。
 
- 飲酒歴:機会飲酒
 
- 既往歴:なし
 
- 家族歴:既婚、子供は2人
 
- 服薬歴:ジクロフェナク
 
- 職業歴:legal sevretary
 
- 身体所見 examination
 
-  顔貌 青白、臨床的な貧血を認める。近位指節間関節・中手指節関節 腫脹・effusionを伴う疼痛。中足趾節関節 圧痛。それ以外は正常。
 
- 検査 investigation
 
-  血液検査
 
-   Hb低下
 
-   ESR上昇
 
-   尿素軽度上昇
 
-   クレアチニン軽度上昇
 
-   正常:白血球、MCV、血小板、ナトリウム、カリウム、グルコース、アルブミン
 
-  尿検査
 
-   蛋白(-)、尿糖(-)、潜血(-)、
 
- ■問題
 
-  本症例では診断とその根拠を考えるのは簡単なので、鑑別疾患をあげてその疾患に特徴的な症候を列挙しましょう。
 
- ■関節痛 DIF.283
 
-  V Vascular
 
-   血友病 hemophilia 血友病性関節症(急性:疼痛、腫脹、熱感(SOR.241)
 
- 慢性:可動域の低下、変形、関節周囲筋萎縮(SOR.241))。家族歴
 
-   壊血病 scurvy 。生活環境。食事歴
 
-   無菌性骨壊死 aseptic bone necrosis (Osgood-Schlatter diseaseとか)
 
-  I Inflammatory
 
-   感染性関節炎(細菌性関節炎(化膿性関節炎・淋菌性関節炎・結核性関節炎・嫌気性菌関節炎 )、真菌性関節炎、スピロヘータ関節炎(梅毒性関節炎・ライム関節炎)、マイコプラズマ関節炎、ウイルス性関節炎)
 
-  N Neoplastic disorders
 
-   骨原性肉腫 osteogenic sarcoma
 
-   巨細胞腫 giant cell tumors
 
-  D Degenerative disorders
 
-   degenerative joint disease
 
-   変形性関節症 osteoarthritis
 
-  I Intoxication
 
-   痛風 gout (uric acid)
 
-   偽痛風 pseudogout (calcium pyrophosphate)
 
-   ループス症候群 lupus syndrome of hydralazine (Apresoline) and procainamide
 
-   gout syndrome of diuretics
 
-  C Congenital and acquired malformations bring to mind the joint deformities of tabes dorsalis and syringomyelia and congenital dislocation of the hip. Alkaptonuria is also considered here.
 
-  A Autoimmune indicates
 
-   関節リウマチ RA
 
-   血清病 serum sickness
 
-   全身性エリテマトーデス lupus erythematosus
 
-   リウマチ熱 rheumatic fever
 
-   ライター症候群 Reiter syndrome
 
-   潰瘍性大腸炎 ulcerative colitis
 
-   クローン病=限局性回腸炎 regional ileitis
 
-   乾癬性関節炎 psoriatic arthritis
 
-   リウマチ性多発筋痛症 polymyalgia rheumatica
 
-  T Trauma
 
-  E Endcrine
 
-   先端肥大症 acromegaly
 
-   閉経 menopause
 
-   糖尿病 diabetes mellitus
 
- ■関節炎の分類
 
- ・炎症部位の数
 
-  単関節炎:痛風、偽痛風、離断性骨軟骨炎、血行性の化膿性関節炎のほとんど
 
-  多関節炎:リウマチ性疾患、ウイルス性疾患、白血病での関節症状、易感染性宿主における血行性の化膿性関節炎
 
- ■関節リウマチ
 
-  診断基準
 
-  関節症状
 
-   朝のこわばり、疼痛、腫脹、関節の動揺、関節可動域制限、変形(手指、足趾、膝関節)。(SOR.211)
 
-   手指の近位指節間関節(PIP関節)、中手指節関節(MP関節)。遠位指節間関節(DIP関節)に初発することは稀。(SOR.211)
 
-   左右対称性に生じることが多い。手関節、足趾、膝関節に初発する。(SOR.211)
 
-  関節外症状
 
-   全身症状:発熱
 
-   皮膚症状:リウマトイド結節(肘の伸側、後頭部、手指)
 
-   眼症状:上胸膜炎(10日の経過で治癒)、強膜炎(予後不良)。稀に角膜穿孔
 
-   血液障害:(高頻度)貧血、白血球減少(Felty病。DMARDs投与中の場合は薬剤性の骨髄抑制を考慮)
 
-   アミロイドーシス:ネフローゼや下痢を来した症例で疑う。アミロイド蛋白はAA
 
-   腎障害:稀。アミロイドーシスの続発症か薬剤性を考慮。
 
-   呼吸器症状:間質性肺炎の合併多い。下肺野に好発。通常無症状。メトトレキセートなどの使用により薬剤性の急性間質性肺炎を生じることがある。
 
-   心・血管障害:リンパ管炎による難治性の浮腫。
 
-   神経症状:環軸関節亜脱臼により項部痛や脊髄症上が出現しうる。
 
-   骨粗鬆症
 
-   腱鞘滑膜炎:手指、手関節、足関節
 
- ■両側性多関節炎の鑑別疾患
 
-  OA:遠位指節間関節を冒すのが特徴的で、近位指節間関節、中手指節関節を冒しうる。
 
-  RA:
 
-  SLE:軽度、症状の程度が変動する非びらん性の関節炎
 
-  gout:単関節炎からはじまる。
 
-  血清陰性関節炎:強直性脊椎炎、感染、ライター病:中~大関節に非対称性の関節炎。仙腸関節と遠位指節間関節にも関節炎
 
-  急性ウイルス性関節炎:風疹。
 
- ■KEY POINTS
 
- ・RAでは遠位指節間関節は冒されない傾向がある。
 
- ・RAの全身症状は関節症状に先行することがある。
 
- ・RAの活動性と貧血及びESRは相関している。
 
- ・NSAIDsは腎機能に悪影響を与えることがある。
 
- ■initial plan
 
-  Dx 1. 単純X線写真
 
-     ・亜脱臼、関節周囲の骨萎縮(傍関節性骨骨粗鬆症,juxta-articular osteoporosis)、関節裂隙の狭小化、関節辺縁のびらん(bony erosion)
 
-      ・初期のRAで第5趾に骨びらんが一般的に見られる。
 
-     ・血液検査
 
-      ・RF、抗DNA抗体
 
-  Tx 1. 鎮痛薬
 
-     ・NSAIDs:鎮痛とこわばりの軽減
 
-    2. DMARDs(メトトレキセート、レフルノミド、金製剤、ペニシラミン)
 
-     ・NSAIDsで症状が治まらない場合に考慮
 
-    3. 抗TNF抗体
 
-     ・重症のRAで効果がある場合がある。
 
- ■参考文献
 
- SOR 標準整形外科学  第10版  医学書院
 
- DIF Differential Diagnosis in Primary Care  Fourth Edition版  Lippincott Williams & Wilkins
 
  [★]
- 英
 
- granulomatosis with polyangiitis GPA
 
- 同
 
- (国試)ウェゲナー肉芽腫症 Wegener肉芽腫症、ウェゲナー肉芽腫 Wegener's granulomatosis, Wegener granulomatosis, WG
 
- 関
 
- 難病、血管炎、小型血管炎、抗好中球細胞質抗体関連血管炎 antineutrophil cytoplasmic antibody-associated vasculitis AAV
 
概念
- 難病であり、特定疾患治療研究事業に指定されている。
 
- 全身性に小動脈以下に壊死性肉芽腫性血管炎を生じる疾患で、特に鼻、肺、腎に出現する上気道症状、下気道症状、腎症が三主徴とされる
 
- 病理的には上気道・肺に壊死性肉芽腫、腎臓では半月体形成腎炎が認められる。
 
- PR3-ANCA陽性が特徴的である。
 
定義
- CHCC 2012
 
通常、上気道および下気道を障害する壊死性肉芽腫性炎症で、主に小型血管から中型血管(例えば毛細血管、細静脈 または細動脈、動脈そして静脈)も障害する壊死性血管炎。壊死性糸球体腎炎は非常によくみられる。
疫学
- 性別:男女比1:1で性差はなし。
 
- 年齢:中年に多い。男性では30-60歳代、女性では50-60歳代が多い
 
病因
病型
- 全身型:以下の症状が全て出現
 
- 限局型(不全型?):以下の症状の一部が出現
 
病理
- 参考2
 
- 1. 上気道、肺、腎臓の巨細胞を伴う壊死性肉芽腫性炎
 
- 2. 免疫グロブリン沈着を伴わない壊死性半月体形成腎炎
 
- 3. 小・細動脈の壊死性肉芽腫性血管炎
 
経過
- 参考2
 
- 症状はELKの順に出現し、難治性の鼻炎、副鼻腔炎に続いて咳嗽、血痰、胸痛を来たし、発熱、体重減少、腎不全を呈するようになる。
 
症状
- 参考2
 
上気道の症状
- E
 
- 鼻:鞍鼻(鼻中隔の破壊による)、膿性鼻漏、出血
 
- 眼:眼痛、視力低下、眼球突出(副鼻腔の骨破壊が起きた場合)  「肉芽腫性強膜ぶどう膜炎」も起こる。眼球炎、頭蓋骨の骨破壊も起きうる。
 
- 耳:中耳炎
 
- 口腔・咽頭:潰瘍、嗄声、気道閉塞  咽喉頭潰瘍も起きうる。
 
肺の症状
- L
 
- 壊死性肉芽腫性病変の多発による結節影や空洞の形成。肺炎様陰影、血性胸水などもみられる。
 
腎の症状
- K
 
- 急速進行性糸球体腎炎(病理的には巣状分節状糸球体腎炎~半月体形成性糸球体腎炎)による症状
 
その他症状
- 全身症状:発熱、体重減少
 
- 紫斑、多関節炎、上強膜炎、多発神経炎、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)、消化管出血(吐血、下血)、胸膜炎
 
検査
- 白血球:増加
 
- CRP:上昇
 
- BUN:上昇
 
- クレアチニン:上昇
 
- 胸部単純X線写真:結節性陰影
 
- 胸部単純CT:結節性陰影
 
治療
- 免疫抑制薬(シクロホスファミド、アザチオプリン)と大量の副腎皮質ステロイドを併用。
 
- (副作用)シクロホスファミド:骨髄抑制、出血性膀胱炎。副腎皮質ステロイド:種々
 
予後
- 未治療で数ヵ月から1-2年で死亡
 
- 発症早期の免疫抑制療法による加療で高率に寛解
 
症候スペクトル
参考
- http://www.nanbyou.or.jp/entry/210
 
- http://www.nanbyou.or.jp/upload_files/006_s.pdf
 
  [★]
- 英
 
- systemic sclerosis, systemic scleroderma, SSc
 
- 同
 
- 汎発性強皮症 diffuse sclerosis、進行性全身性硬化症 progressive systemic sclerosis PSS、全身性硬化症
 
- 関
 
- 強皮症、膠原病
 
概念
- 皮膚硬化を特徴とする強皮症のうち、皮膚のみでなく全身の諸臓器(肺、消化管、心、腎、関節など)に病変がみられるもの。
 
病因
- 珪肺症患者:リスク110倍
 
- 美容などの豊胸手術後に発症:シリコンがアジュバンドとして作用
 
- 塩化ビニル工場従事者に多い
 
- 薬剤(ブレオマイシン、トリプトファン)
 
- マイクロキメリズム(胎児由来血液幹細胞が母胎に移行)
 
疫学
- 30-50歳に好発。男女比は1:3-4。(NDE.171)
 
病型
- limited cuteneous SSc, diffuse cuteneous SSc
 
limited cuteneous SSc
- 皮膚硬化は肘から末梢に限局
 
- 内臓病変:軽度
 
- 予後:良好
 
- 自己抗体:抗セントロメア抗体
 
CREST症候群
- C:carcinosis:石灰沈着
 
- R:Raynaud's phenomenon:レイノー現象
 
- E:esophageal dysfunction:食道機能不全
 
- S:sclerodacrylia:強指症
 
- T:teleangiectasia:毛細血管拡張
 
diffuse cuteneous SSc
症状
- 初発症状:レイノー現象、指、手の硬化
 
- 関節炎、食道蠕動運動低下、下部食道の拡張、肺線維症(55%)、肺高血圧(5%)、心症状(不整脈、伝導障害)(10-20%)、心膜炎(3%)、吸収不良症候群、強皮腎(悪性高血圧症。5%)、橋本甲状腺炎
 
- 強皮腎:血管内皮細胞の障害→血管内膜の肥厚、内腔の狭窄→血管の攣縮・虚血→輸入動脈、糸球体係蹄の壊死→レニン産生の亢進→悪性高血圧→急性腎不全
 
症状の出現頻度
- 100%:皮膚硬化、レイノー現象
 
- 60%:食道機能障害、肺線維症
 
- 20%:小腸、大腸、ミオパチー
 
- 10%:心肥大
 
- 5%:肺高血圧、強皮腎
 
検査
診断
(1) 大基準
 手指あるいは足趾を越える皮膚硬化※1
(2) 小基準
 ① 手指あるいは足趾に限局する皮膚硬化
 ② 手指尖端の陥凹性瘢痕,あるいは指腹の萎縮※2
 ③ 両側性肺基底部の線維症
 ④ 抗トポイソメラーゼⅠ(Scl-70)抗体または抗セントロメア抗体陽性
(3) 除外基準
 ① ※1 限局性強皮症(いわゆるモルフィア)を除外する
 ② ※2 手指の循環障害によるもので,外傷などによるものを除く
(4) 診断の判定
 大基準を満たすものを強皮症と診断する。
 大基準を満たさない場合は,小基準の①かつ②~④のうち1項目以上を満たすものを強皮症と判断する
治療
- 進行性腎不全に陥り予後は重大であるが、早期のACE阻害薬による治療が予後を改善させた(REU.195)
 
予後
- 5年生存率 :93.7%
 
- 10年生存率 :76.6%
 
予後因子
- 全身の皮膚硬化
 
- 腎病変
 
- 心、血管病変
 
- 抗Scl-70抗体 ←予後不良
 
- 抗セントロメア抗体 ←予後良好