A. | 特徴的症状:以下のうち2つ以上が1ヶ月以上の存在 |
(1) 妄想 | |
(2) 幻覚 | |
(3) 解体した会話 | |
(4) ひどく解体したまたは緊張病性の行動 | |
(5) 陰性症状:感情平板化、思考貧困、意欲欠如 | |
B. | 社会的または職業的機能の低下 |
C. | 期間:少なくとも6ヶ月間存在 |
D. | 失調感覚障害(統合失調感情障害)と気分障害を除外 |
E. | 物質や一般身体疾患の除外 |
F. | 広汎性発達障害との関係:自閉性障害や 他の広汎性発達障害の既往歴がある場合、 顕著な幻覚や妄想が少なくとも1ヶ月存在すること |
(a) | 考想化声 thought echo、考想吹込 thought insertion、思考奪取 thought withdrawal、考想伝播 thought broadcasting | いずれか1つ |
(b) | させられ体験 delusion of control、身体的被影響体験 delusion of influence、妄想知覚 delusional perception | |
(c) | 注釈幻声、会話形式の幻聴 auditory hallucination | |
(d) | 宗教的・政治的な身分や超人的な力や能力といった、文化的に不適切で実現不可能なことがらについての持続的な妄想(たとえば天候をコントロールできるとか、別世界の宇宙人と交信しているといったもの)。 | |
(e) | 持続的な幻覚が、感傷的内容を持たない浮動性あるいは部分的な妄想や支配観念に伴って継続的に(数週から数ヶ月)現れる。 | いずれか2つ |
(f) | 思考の流れに途絶や挿入があり(思考途絶)、その結果まとまりのない話しかたをしたり(連合弛緩)、言語新作が見られたりする。 | |
(g) | 興奮、常同姿勢、蝋屈症、拒絶症、緘黙、昏迷などの緊張病性行動 catatonic behavior。 | |
(h) | 著しい無気力、会話の貧困、情動的反応の鈍麻や不適切さのような、社会的引きこもりや、社会的能力の低下をもたらす陰性症状。 | |
(i) | 関心喪失、目的欠如、無為、自分のことだけに没頭する態度、社会的引きこもりなど、個人的行動の質的変化。 |
出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/03/17 00:29:15」(JST)
統合失調症のデータ | |
ICD-10 | F20 |
統計 | 出典:[14][15] |
世界の患者数 | 約2400万人 |
日本の患者数 | 約79万5000人 |
学会 | |
日本 | 日本精神神経学会 |
世界 | 世界精神医学会 |
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統合失調症 | |
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分類及び外部参照情報 | |
統合失調症患者によって施された刺繍
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ICD-10 | F20. |
ICD-9 | 295 |
OMIM | 181500 |
DiseasesDB | 11890 |
MedlinePlus | 000928 |
eMedicine | med/2072 emerg/520 |
MeSH | F03.700.750 |
プロジェクト:病気/Portal:医学と医療 | |
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統合失調症(とうごうしっちょうしょう、ドイツ語: Schizophrenie、英語: schizophrenia)とは、「連想分裂」を中核とする類似の症状の集合から構成される精神病理学あるいは臨床単位上の診断・統計カテゴリーの一つである。疾患あるいは障害単位の存在自体がいまだ不明であり、疾患としては単一のものであるとは考えられておらず、多数の発症原因を持つ多数の疾患であると予測されている。かつては「精神機能の著しい分裂」を基礎障害とするという意味で意訳され「精神分裂病(せいしんぶんれつびょう)と呼ばれていた。この症状の担当診療科は精神科であり、精神科医が診察に当たる。
19世紀の脳病学者エミール・クレペリンが複数の脳疾患を統一的な脳疾患カテゴリーとして取りまとめた「早発性痴呆症」をスイスの精神科医オイゲン・ブロイラーが、その症状群の形容から1911年の著書『"Dementia Praecox oder Gruppe der Schizophrenien" (E. BLEULER 1911):早発性痴呆症あるいは精神分裂病群の集団』の中で定義・呼称した。
ブロイラーは当該症候群の特徴は「精神機能の特徴的な分裂[注 1]」を基本的症状として有するとして Schizo(分裂)、Phrenia(精神病)と呼んだ。ここで「精神機能」とは、当時流行した連合主義心理学の概念で、「精神機能の分裂」とは主に「連合機能の緩み」及び「自閉症状」を意味する。
主要な症状は、基礎症状として「連合障害(認知障害)」「自閉(自生思考等)」であり、副次的に「精神病状態(幻覚妄想)」など多様な症状を示し、罹患者個々人によって症状のスペクトラムも多様である。クレペリン、ブロイラー、シュナイダーが共通して挙げている特徴的で頻発の症状は「思考途絶(連合障害)」と「思考化声(自生思考)」である。
日本国政府には独自の診断・統計基準は無く、行政処分においてWHO国際疾病分類第10版 (ICD-10) を用いて診断・分類しており、当該マニュアルではF20になる。発病率は全人口の約1%程度と推計されている[1]。
上記のとおり当該疾患群は、精神障害の診断・統計カテゴリーの一つで、自閉症状と連合障害(認知障害)を基礎障害とする複数の脳代謝疾患群と考えられている。この精神疾患群に属する各症状が同根の神経生物学的基礎を有するか否かは、現在のところ全く不明である。クレペリンは死後脳解剖から前頭葉に類似の細胞変性を観察しているため早発性痴呆群を一つの統計カテゴリーとしたが、ブロイラーは相当多数の疾患群の寄せ集めであろうと予測しており、現在まで決着はついていない。
クレペリンおよびブロイラーが例示した疾患群は以下のとおり。
当該疾患群に共通する症状は精神分裂症(精神機能の分裂症)と呼ばれる状態で、思考や感情がまとまりにくくなり、罹患者が本来有している知的水準や身体能力から期待される役割遂行能力が顕著に障害され、回復のために治療や社会的な援助が必要となる。本来当該疾患は疾患概念であるが回復の困難性・長期性から保健福祉行政上は(自己申告により)障害者概念が適用され得る。
根本的な原因は不明であるが、神経伝達物質のインバランス等の脳の代謝異常と心理社会的なストレスなど環境因子の相互作用が臨床的な発症の発端になると推測されている。心理社会的な因子としては「分裂病者の母親(ダブルバインド)」や「HEE(高い感情表出家族)」などが注目されている。発症率は約1%弱と推計され、日本全国では約79.5万人が罹患していると予測されている。自閉や連合障害、あるいは易疲労性からくる脳の疲弊によって、一部の患者では特徴的な幻覚や妄想を発症する頻度が少なくない。この妄想および幻覚症状は脳内の伝達物質のインバランスの可能性が強く主にドーパミン遮断剤の適量の投与によって高い確率で症状の抑制が可能であるとされる。近年では遮断剤(抑制剤)のみでなくドーパミン安定剤も開発され認知障害や陰性症状などの基礎障害への効果も期待されている。
元々ドイツ語の Schizophrenie に対する訳語として、日本では明治時代に精神分裂病と訳された。Schizophrenie はギリシャ語の σχιζο+φρεν(分裂+横隔膜) から。これはギリシャ時代の医者が魂は横隔膜(和名:サガリ)にあると考えていたことに由来する。
本来、精神分裂病の「精神 (phrenie)」は心理学的意味合いで用いられた単語であり、「知性」や「理性」を現す一般的な意味での精神とは意味が異なる。ところが、「精神分裂病」という名称が日本では「精神が分裂する病気」→「理性が崩壊する病気」と誤って解釈されてしまうケース(統合失調症患者であっても、理性が崩壊するとは限らない)が見られた。患者・家族団体等から病名に対する偏見が著しく強いという苦情が多かった。そこで、2002年(平成14年)に日本精神神経学会総会によって英語の schizophrenia に対する訳語を「統合失調症」にするという変更がなされた。 名称変更でかかった費用の一部は治療に使われる抗精神病薬を販売している外資系企業から提供されたという[2]。詳細は全国精神障害者家族会連合会の項を参照。
江戸時代の日本の医家の間では、「柔狂」や「剛狂」と呼ばれる精神疾患が知られており、それぞれヨーロッパでの「破瓜病」、「緊張病」に相当する病状であったとされている[4]。中期の儒医・香川修徳(香川修庵)は著書『一本堂行余医言』[5]に「狐憑きも野狐の祟りなどではない。被害妄想、誇大妄想、感情荒廃、強迫観念、自閉、不眠、幻想、抑鬱などは狂の症状である」との意味を記していた[6]。
思春期から青年期(20歳代)に発症することが多く、小児期の発症や老年期での発症もみられる。男性と比較して女性は平均発症年齢が遅く、閉経後にも小さな発症のピークがある。
「:en:Epidemiology of schizophrenia」も参照
生涯発病率は約0.85%(120人に1人)であり、まれな病気ではない。米国では生涯罹患率は約1%[7]で、年間発症率は10万人当たり1000人[8]とされる。性差によって発病率は変わらない。
アメリカで行われた調査では日照量の多い地域と土壌中のセレン濃度の多い地域では極めて珍しく、そうでない地域では有病率の比較で相対リスクが高いとの結果が報告されている[9]。
研究対象となった地域・人種などにより罹患率の差があるが、診断基準にも左右され、その意味は明らかではない[10]。アイルランドでの地方間における罹患率の差も議論の対象となっている。
厚生労働省による2008年の調査では、統合失調症あるいはそれに近い診断名で日本の医療機関に受診中の患者数は79.5万人[11]。
統合失調症の原因には素因と環境の両方が関係しており、素因の影響が約3分の2、環境の影響が約3分の1とされている。この値は高血圧や糖尿病に近いものであり、頻度の多い慢性的な病気に共通する値の様である。[12]
出生時の産科的合併症[13]や父親の高齢(父の年齢が10歳増すごとに統合失調症になるリスクは有意に1.47倍増加)[14]、冬生まれ[15]、妊娠中の大きなストレス[16]や幼年期に於ける飢餓[17]、毒素への曝露[18]、薬物乱用[19]、家ネコへの曝露[20]等によるトキソプラズマの感染[21]等は有意に統合失調症発症リスクを増加させるものとしている。
統合失調症の患者は関節リウマチに罹患しにくいことが知られている。最近の研究[22]によれば、およそ4倍前後の差があるとされる。
分類はICD-10による。
(Paranoid schizophrenia) 連合障害や自閉などの基礎症状が目立たず妄想・幻覚が症状の中心である。統合失調症はかつて早発性痴呆症と呼ばれていたように早発性(思春期から青年期)に発症することが多いが、当該亜型は30代以降の比較的遅い発症が特徴的であるとされる。また、薬物療法に比較的感応的とされる。
(Disorganized schizophrenia) 破瓜とは16歳のことで、思春期・青年期に好発とされる。連合弛緩等の連合障害が主要な症状で、解体した思考や行動(disorganized thinking and behavior:混乱した思考や挙動)が目立つ。幻覚妄想はあっても体系的ではない。感情の表出、自発的行動が徐々に失われ人格荒廃に至るケースもあるとされる。
(Catatonia schizophrenia) 筋肉の硬直症状が特異的で興奮・昏迷などの症状を呈する。陽性時には不自然な姿勢で静止したまま不動となったり、また逆に無目的の動作を繰り返したりする。近年では比較的その発症数は減少したと言われる場合がある。
(Undifferentiated schizophrenia) 一般的な基準を満たしているものの、妄想型、破瓜型、緊張型どの亜型にも当てはまらないか、二つ以上の亜型の特徴を示す状態[23]。
急性期の後に訪れることが多く、自殺などを招くことがある。治療法はうつ病にほぼ準じる。
陰性症状が1年以上持続したもの。陽性症状はないかあっても弱い。他の病型の後に見られる急性期症状が消失した後の安定した状態である。
連合障害、自閉などの基礎症状が主要な症状で、幻覚妄想は無いか僅かである。破瓜病の亜型に含めるケースもある。破瓜病に比べ内省的で病識の欠如が稀であるとされる。
F20.8は医療診断を示すために使用することができない。 F20.8にはF20.81(Schizophreniform disorder)とF20.89(Other schizophrenia)の2種のコードが含まれる。
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統合失調症、特定不能のもの
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脳に器質的な障害が発生することによるかどうかは両論ある。病因については、神経伝達物質の一つであるドーパミン作動性神経の不具合によるという仮説をはじめ、様々な仮説が提唱されている。しかし、明確な病因は未だに確定されておらず、発病メカニズムは不明であり、いずれの報告も仮説の域を出ない。
一卵性双生児研究において一致率が高い (30 - 50%) が100%ではないことなどから、遺伝的要因と環境要因両方が発症に関与していると考えられている。遺伝形式も不明で、信頼できる原因遺伝子の同定もされていないが、約60%が遺伝によるとの報告[24]がある。
「:en:Causes of schizophrenia」も参照
「化学的不均衡」も参照
中脳辺縁系におけるドーパミンの過剰が、幻覚や妄想といった陽性症状に関与しているという仮説。実際にドーパミンD2受容体遮断作用をもつ抗精神病薬が陽性症状に有効であるため提唱された。しかし、ドーパミン遮断剤投与後効果が現れるのが長期修正を暗示させる7日から10日であること、ドーパミン受容体は後方細胞だけでなく前方細胞にも存在すること、またドーパミンD2ファミリーに異型が発見されたこと等により臨床医や神経生物学者からは批判も多い。生物学研究では皮質下のDA受容体密度の増加による受容体感受性の高まり(ドーパミンの過剰ではない)を暗示する研究も存在するが、むしろ前頭葉や前部帯状回などでドーパミン受容体結合能の低下を示唆する研究の方が多い。(アメリカの研究者の中にはドーパミン仮説は許認可の為の製薬会社のマーケティングにすぎないという研究者もいる[要出典]。)近年、ドーパミンをコントロールする抗精神病薬の副作用で、脳が萎縮するという研究結果が開示された[25][26]。
現在、日本の精神医学会では否定的であり、前述のドーパミン仮説が通説となっているが少数の症例はある。アドレノクロム(英語版)が過剰という仮説でナイアシンを多量に摂取する治療法である。統合失調症の患者の八割程度が良くなると記述してある出版物もある。原因として食物をあげている。ビタミン、ミネラルなどの不足によりアドレノクロムを代謝できなくなるという。血液検査でビタミン・ミネラルの量を検査する病院もある。このことは糖分の多い清涼飲料水などを多飲するようなペットボトル症候群において低血糖症が誘起されて、体内でアドレノクロムが産生される。過剰な糖分の摂取により体内中のビタミン・ミネラルが排出され、アドレノクロムを代謝できなくなくなり、脳内のアドレノクロムが過剰になって統合失調症の症状を呈するとする文献もある。副腎髄質より分泌されるホルモンであり、また交感神経の末端から出される神経伝達物質の変異は、脳内でチロシン→ドーパ→ドーパミン→ノルアドレナリン→アドレナリン→ストレスや過度な運動により酸化してアドレノクロムとなる。低血糖症や糖尿病の症状を統合失調症と誤診する医療機関もある。
麻酔薬として開発され、のちに精神異常の副作用の為使用が断念されたフェンサイクリジンを投与すると、統合失調症様の陽性症状及び陰性症状がみられたこと、フェンサイクリジンがグルタミン酸受容体(NMDA受容体)の遮断薬であることがのちに判明し、グルタミン酸受容体(NMDA受容体)の異常が統合失調症の発症に関与しているという仮説。実際に欧米を中心に従来の抗精神病薬とグルタミン酸受容体(NMDA受容体)作動薬であるグリシン、D-サイクロセリン(英語版)、D-セリンを併用投与すると抗精神病薬単独投与より陰性症状や認知機能障害の改善度が高くなることが報告されている。将来的に、グルタミン酸受容体に作用する抗精神病薬の開発が期待されている。 2012年、神経伝達物質受容体サブユニットのタンパク質を変化させる遺伝子変異が発症に関与することが理化学研究所において発見された[27]。
カルシニューリンは中枢神経系に多く発現している酵素で、グルタミン酸やドーパミンによる神経伝達を調整する作用がある。統合失調症には、複数のカルシニューリン系遺伝子の変異が関与している可能性があることが発見された[28]。
統合失調症患者と対照群の脳内で別々の働きをする49種類の遺伝子の状態を比較した研究では、統合失調症患者に脳細胞間のシグナリングに欠陥が確認され、ドーパミンやミエリンを生成する遺伝子の働きには、統合失調症患者と対照群の間に差異は確認されていない[29]。アラキドン酸などの脂肪酸を脳へ取り込むタンパク質Fabp7が、遺伝的に脳への脂肪酸取り込みの弱い患者と統合失調症との関連性が発見されている[30]。プレパルス抑制(英語版)が弱いと、統合失調症の患者はささいな小さな音で驚くような傾向が見られる[31]。ある特定の遺伝子の欠損や入れ違いで環境とは無関係に遺伝するタイプと、食生活や運動不足といった環境と遺伝の両方とが関係して起きるタイプの2つの疾患がある、後者のが統合失調症患者の大多数を占めるとされる[32]。なお、びっくり病との差異および関連性にも関与していることから正確な診断が必要である。また稀ではあるがナルコレプシーに付随する情動脱力発作 (cataplexy) との混同例もある。生理的に重要な脳内の脂質に関与する遺伝子が症例と関係する所以は、脳内の非極性脂質は電気絶縁体として有髄神経線維の速やかな興奮伝達を可能にしていることにある、すなわち脳内の信号が適切に伝達すればよいことであって、絶縁されていない場合は脳内の信号が適切に電導せずに異常を来たすという仮説である。
2012年5月29日、藤田保健衛生大学の研究チームは日本人の発症に関係する遺伝子「NOTCH4」の配列を突き止めたと発表[33][34]。
近年、グリオキサラーゼ代謝と呼ばれる機構があり、統合失調症患者のDNAを用いて遺伝子解析を行ったところ、患者の20%に酵素活性の低下を引き起こす遺伝子変異を同定した研究結果が報告されている[35][36]。ヒトの血中や臓器に含まれる糖や脂質、タンパク質などが変性したもので、カルボキシル基に関与する酵素群のひとつが、他の分子へ二酸化炭素の付加を触媒する、このことがペントシジン、カルボキシメチルリジン、ピラリンなどの糖化最終産物(英語版) (advanced glycation end-products: AGEs)[37] をメイラード反応から生成してしまい、過剰な最終糖化物質を体外へ代謝させるビタミンB6(ピリドキシン)が体内で枯渇してしまう[38]。クエン酸回路の変形回路であるグリオキサラーゼ代謝が体内でおこなわれているが、ストレスや過剰な運動で活性酸素や二酸化炭素が血中に多く現われて、最終糖化物質を尿中に排出させる亢進がおこり、結果としてビタミンB6を消費してしまう[39]。糖や脂質およびタンパク質を混合して長期間に放置しておくと、化学的に変性した物質、つまり最終糖化物質が産生される。瓶詰め・缶詰・調味料などを長期間保存したり、空気中に晒して置くことでも産生するが、それら消費期限をすぎた飲食物を摂取すると腸管から吸収されてしまう、このことでカルボニルストレスを増大する。日常生活において飲食物の摂取等で得られるビタミンB6の量を上回る摂取が必要となるビタミンB6依存症に陥っているケースがあり、正常時の数十倍の摂取ではないとホロ酵素を合成できない場合があるが、ビタミンB6だけの摂取で酵素活性の改善率は必ずしも良くなるとはいえず、他のコエンザイム(補酵素)も関与してる可能性がある、これは代謝回路がいくつもの化学変移をおこすものである。
アメリカで行われた統合失調症患者のAGEsの報告で、高濃度になっている患者が多数報告され、AGEsと活性化ビタミンB6との兼ね合いが注目されている。[40]
統合失調症の初発患者において脳の容積が一部低下していたり、死後脳において脳の構造異常が見られたりする例があることから、脳の発達段階での何らかの障害が関与しているとする仮説。
名城大学の鍋島俊隆教授らは統合失調症の一部は、胎児期の脳神経系の発達障害が原因であることを明らかにした[注 6]。鍋島教授らは統合失調症の候補遺伝子で、神経系の成長を促す「DISC1」に注目し、マウスを使った実験によってこのことを確かめた。脳のDISC1を一時的に働かないようにすると、成長したマウスは音に過敏に反応したり、認知機能が低下したりするなど、統合失調症に特有の症状を示した。マウスは統合失調症の治療薬の投与で症状は改善し、また、脳の神経細胞の数は正常だが、回路が未熟で、機能が低下していた。鍋島教授は「統合失調症の特徴をここまで再現したマウスはなかった。治療薬の開発に役立てたい」と話したという。
しかしながら、脳の構造的異常が意味するところは今のところ不明である。例えば、もともと脳に異常があるために症状が発現(統合失調症を発症)したのか、慢性的で長期に渡る罹患と治療の結果、症状や服薬等の影響が脳を変成させた可能性との鑑別が困難であることがこの問題の研究上の課題として挙げられる。また、この両者は矛盾せずに両立することができるが、現時点でも脳を見ただけで統合失調症か否かを鑑別できるわけではなく、そもそもMRIやCTといった検査方法で発見できるのはマクロな異常だけであるので、原因がミクロな異常にあった場合や単一的というより複合的であった場合、こうしたマクロ的アプローチの有効性は低いものとなる。また、脳検査で何らかの異常な所見を示す患者よりも示さない患者の方が多いことも、多くの研究者が「統合失調症患者の脳研究」を放棄した理由の一つである。
ストレスが小さくても統合失調症にかかりやすい素因(あいまいに耐える力が弱い)、脆弱性が大きければ発病してしまうと考える。脆弱性はあまりなくてもストレスが大きければまた発病すると考える。内因を素因、心因をストレスとする、原因を内因と心因の両方にもとめる学説である。統合失調症に関しては、個体の抗病的閾値が低下し、これにストレスが脆弱性の閾値(しきいち)を超えると発症されるとされるがその詳細は論じられていない。ストレスとは精神的な緊張・不安・恐怖・興奮・飢餓・感染・過労・睡眠不足・運動不足といった、ごく普通の社会的な生活で起こる諸情である。さらには、寒暑・騒音・化学物質などの要素も含む。
1977年、ZubenとSpringによって、ライフイベントからくるストレスが原因になる、という説が唱えられた[41]。参考文献に挙げられた岡田著『統合失調症』87ページにも、ライフイベントが重なると発症しやすいとある。
胎生期と思春期に、2回にわたる何らかの脳へのダメージを受けて発症するという仮説。
かつて、二重拘束説(Double bind theory:親から2つの互いに矛盾するメッセージ(重厚長大の倫理と軽薄短小の論理)を受け取った子供が、それをうまく処理することができず(分裂状態で統合できないでいる、心理的に解決できない)、しかしそれに応えようとして発病するという仮説)や、high EE説(Expressed Emotion:否定的なメッセージを送りやすい家庭で育つことと再発率が関係しているとする仮説)などの心因説が、統合失調症の原因として唱えられ、患者の家族が不当に苦しんだ時代があったが、その後の研究でそれらの心因説は否定され、発病後の症状悪化要因ではあっても決して原因ではない、とされる。心理的な解決で統合されるケースである。精神科医は臨床心理士のカウンセリングを受けさせる場合がある。統合失調症はカウンセリングは効果がない場合が多いが、このケースは効果がある、統合失調症の中のある種のタイプである。
麻薬や覚醒剤、脱法ドラッグの使用により一時的な快楽が得られるが、禁断症状にみられる諸症状を誘起させる。本来、精神作用物質使用による精神および行動の障害ICD-10 F1xグループに分類される為、統合失調症(F20)とは区別される。
人体に必須な栄養素の不足によって様々な諸症状を誘起させるとした書物もある[42]。主に欧米各国で過去に論議を醸し出したが、現在は研究課題から外されて論議も皆無に等しい。栄養学は医科大学の履修分野でないことから精神医学の分野でおいてはその関連性は無く度外視される。だが、国外において臨床効果および治療実績がはっきり現われている点は見逃せない。国内での各種栄養素の取扱は診療報酬の対象とはならず、むしろ副作用を懸念するため処方はされない、ごく一部の医療機関で実費にて分子整合精神医学と称してビタミン剤を高額で処方するところもある。
ウイルス説、前頭葉機能の低下仮説など様々な仮説が唱えられている。妊娠初期にインフルエンザに罹ると生まれてくる子供が統合失調症になる確率が3倍になるという研究[43]がある。また、食物による脳内のアレルギー疾患(ヒスタミンの過剰)だと指摘する医者もいる、このことは絶食や食事の改良などの対症療法で解決したとの報告も各国で散在している。さらには抗生物質の服用により少量のビタミンBを産生する体内の腸内細菌が死滅してしまい、ビタミン不足に陥って統合失調症の症状を呈するとの見解もあるが定かではない。統合失調症患者の不眠に処方されるバルビツール酸系の睡眠導入剤の常用で、その副作用としてビタミンB6の吸収を阻害するため、精神遅滞を起こしたり皮膚炎を起こしたりするケースがみられる。なお、現在の睡眠導入剤は、ほとんどがベンゾジアゼピン系に置き換わっており、バルビツール酸系の睡眠導入剤を常用する必要はない。
認知、情動、意欲、行動、自我意識など、多彩な精神機能の障害が見られる。大きく陽性症状と陰性症状の二つがあげられ、その他の症状に分けられる。全ての患者が全ての症状を呈するのでないことに注意が必要。
おおよそ急性期に生じるもの。
思考過程の障害と思考内容の障害に分けられる。総合的に診て自閉症と重複し、誤診されることもたびたび起こる。
客観的に見てありえないことを事実だと信じること。妄想には以下のように分類される。一人の統合失調症患者において以下の全てが見られることは稀で、1種類から数種類の妄想が見られることが多い。また統合失調症以外の疾患に伴って妄想がみられることもある。関連語に妄想着想(妄想を思いつくこと)、妄想気分(世界が全体的に不吉であったり悪意に満ちているなどと感じること)、妄想知覚(知覚入力を、自らの妄想に合わせた文脈で認知すること)がある。
また、上記の妄想に質的に似ているが、程度が軽く患者自身もその非合理性にわずかに気づいているものを「 - 念慮(被害念慮、注察念慮)」という。
実在しない知覚情報を体験する症状を、幻覚 (hallucination) という。幻覚には以下のものがあるが、統合失調症では幻聴が多くみられる一方、幻視は極めて希である。また、統合失調症以外の疾患(譫妄、癲癇(てんかん)、ナルコレプシー、気分障害、痴呆性疾患など)、あるいは特殊な状況(断眠、感覚遮断、薬物中毒など)におかれた健常者でも幻覚がみられることがある。
幻覚を体験する本人は外部から知覚情報が入ってくるように感じるため、実際に知覚を発生する人物や発生源が存在すると考えやすい。そのため、「悪魔が憑いた」、「狐がついた」、「神が話しかけてくる」、「宇宙人が交信してくる」、「電磁波が聴こえる」、「頭に脳波が入ってくる」などと妄想的に解釈する患者も多い。幻聴はしばしば悪言の内容を持ち、患者が「通りすがりに人に悪口を言われる」、「家の壁越しに悪口を言われる」、「周囲の人が組織的に自分を追い詰めようとしている」などと訴える例は典型的である。また、幻味、幻嗅などは被毒妄想(他人に毒を盛られているという妄想)に結びつくことがある。なお、体感幻覚に類似するものとして、体感症(セネストパシー)(cenestopathy)があるが、その異常感が常態ではみられない奇妙な性状のものであることをよくわきまえている点で,ほかのさまざまな体感幻覚とは趣を異にしている。
自己と他者を区別することの障害。自己モニタリング機能の障害と言われている。すなわち、自己モニタリング機能が正常に作動している人であれば、空想時などに自己の脳の中で生じる内的な発声を外部からの音声だと知覚することはないが、この機能が障害されている場合、外部からの音声だと知覚して幻聴が生じることになる。音声に限らず、内的な思考を他者の考えと捉えると考想伝播につながり、ひいては「考えが盗聴される」などという被害関係妄想につながることになる。
幻覚・妄想など以外のエネルギーの低下からおこる症状。おおよそ消耗期に生じるもの。
認知機能障害は統合失調症の中核をなす基礎的障害である。クレペリンやブロイラーなどの当該疾患の定義の時代(1900年頃)より、統合失調症に特異的な症状群として最も注目されていた。認知機能とは、記憶力、注意・集中力などの基本的な知的能力から、計画、思考、判断、実行、問題解決などの複雑な知的能力をいう。この認知機能が障害されるために社会活動全般に支障をきたし、疾患概念より障害概念に近いものとして理解されている。この障害ゆえに、作業能力の低下、臨機応変な対処の困難、経験に基づく問題解決の困難、新しい環境に慣れにくいなど社会生活上多くの困難を伴い、長期のリハビリが必要となる。
不安感・焦燥感・緊張感
抑うつ・不安を伴うこともある。自分には解決するのが非常に難しい問題がたくさんあり、抑うつ・不安になっていることもあるだろう。抑うつは現状・将来を悲観するという場合と病名から来る自分のイメージ、他者の健常者や同じ心の病の者との比較ということもある。
躁状態 何でもできる気分・万能感、金遣いが荒くなる、睡眠時間が少ないなど。
統合失調症でもパニック障害類似のパニック発作が起こることがある[46][47]。治療法はパニック障害にほぼ準じる[48]。
連想が弱くなり、話の内容がたびたび変化してしまう。単語には連合がある。わかりやすく言えば単語の意味での関係でのグループ(連合)がある。この連合が弛緩して全然関係のない単語を連想することである。しかし落語にあるようなダジャレは連合弛緩でない。連想が関係を未視しているのである。
判断基準が確立せず、左右の価値の違いや金銀の価値の違いなどがわからず、どちらもという状態をいう。
幻聴や妄想世界での会話があるが、ただ無闇に言葉を羅列することもありそれを教科書では「言葉のサラダ」と言っている。原因には長年の投薬による認知機能低下の説もある[49]。
血液検査では、看護婦および看護師による患者の血液採取にはじまり、規模の小さな開業医であれば検査結果を外部委託することになる。このことは患者が薬物投与により肝機能の衰えなど(ALT:GPTなど)の副作用を検査するためである。通常であらば3か月程度の間隔で行われると同時に、電解質の異常や糖尿病の形跡、低血糖症、栄養失調の診断にも生かされ、より正確な診断がなされる。外部委託先にビタミンやミネラル類の検査項目も追加できるが、そのような依頼は極まれである[50]。
CT・MRIにて、側頭葉・頭頂葉の灰白質の体積の減少を認める。白質の体積は減少していない。
脳体積の減少は長期的な話である。人と人との間でも脳体積は少なくとも10%は異なるため、一度の体積測定で判定することはできない。また、抗精神病薬が脳体積を減少させることも知られている[51][52][53][54]。
「抗精神病薬#副作用」も参照
SPECTにて、課題遂行中や会話時に通常見られる前頭前野の血流増加が少ないという報告がある。
プレパルス抑制(英語版)を参照。
遺伝子性の疾患を特定するためのツールとしてDNAシークエンシングがある。
国内の精神科において尿検査を行うことはない。ピロール尿症におけるクリプトピロールや違法薬物の痕跡を調査することができるが、臨床試験的に尿を検査することがごく稀にある。生化学研究設備があればクリプトピロールなどの化学物質を判別できるが、そのような精神医学は国内には存在しない。
NIRS脳計測装置や光トポグラフィー検査により、問診と同時に脳内の血流量を赤外線により測定する。うつ病、統合失調症、双極性障害の判断材料になる可能性がある研究中の検査手法である。国内ではわずかだが実施している。最先端医療の分野である。 信頼性は低く、「高価なおもちゃ(原文ママ)」の域を出ていない[55][56]。
ICD-10での診断基準は以下のとおり。
症状基準 項目(1)の症状のうち1つ以上、項目(2)のうち2つ以上が1か月以上続くこと。
DSM-IV-TRでの診断基準は以下のとおり。
以下の2つ以上が各1か月以上(治療が成功した場合は短い)いつも存在する。
統合失調症で一番目立つ症状は被害妄想と幻聴。しかし必ずしも上記の症状が現れるという訳ではない。統合失調症患者が心因反応という診断名が初診時に付いている場合がある。心因反応は心因性で統合失調症は内因性である。外因性精神病という外傷によるものもある。これらは違う病気とする学説もある。DSMについては米国がベトナム戦争において被災した軍人を診断するために基準を設けた指標でもある、現在の診断基準となっている点に議論が残る。
PANSS (Positive and Negative Symptom Scale) での評価[57]
精神科医にとって、統合失調症の病の性格、精神医療現場の環境(発達障害などを扱う児童精神医学は専門外の場合がある。数を上げるとその医学を専門としている『児童精神科医』は約200人ほどしかいない[58]など)から他の精神疾患や発達障害との誤診が起きる可能性があるとの意見や報道もある[59][60]。誤診されやすいものとしては強迫性障害、びっくり病 (Hyperekplexia)、ナルコレプシーにおける情動脱力発作 (Cataplexy) やアスペルガー症候群が挙げられている。そのうちアスペルガー症候群は統合失調症に似た症状がおきやすいと以前から指摘がある。アスペルガー症候群を再評価し紹介したイギリスの医師ローナ・ウィングの最初の論文(1981年発表)では報告された18人のうち1人に統合失調症様の症状があった[61]。
精神医学は数字で測れる指標は少ないが、主要な精神疾患については症状や経過の詳細がわかれば通常の診断能力を持つ精神科医にとって、正確に診断することは難しいものではなく、診断の不一致も一般に思われているよりはるかに少ないとしている[62]。
前述におけるプレパルス抑制およびびっくり病、さらには糖尿病や低血糖症と差異をも見出さなければならない。長時間に渡る問診にもよるが、科学的な根拠(エビデンス)を基とする診断がある上で、正確な統合失調症の症状を精神科医は判断しなければならない。
統合失調症の診断はそもそも難しい。DSM-II(1968年)の前文は「最善は尽くしましたが、(アメリカ精神医学会の)委員会はこの障害について合意を得ることができませんでした。合意できたのは診断名だけです[注 7]」(ix頁)と述べている。DSM-III(1980年)は「統合失調症の概念の範囲は曖昧です[注 8]」(181頁)、DSM-III-R(1987年)は「統合失調症に限っては、単一の特徴をいつも示さなかったり、生じないことに注意すべきです[注 9]」(188頁)と述べている[63][64][65][66]
1988年、ニューヨーク州立大学のトーマス・サズ(英語版)博士は「統合失調症はとても曖昧に定義されています。実のところ、話し手の気に入らない行動のほとんど全てにしばしば適用される用語です [注 10]」と述べている[67]。
1994年、著名な統合失調症研究者であり、アメリカ国家科学賞受賞者のナンシー・アンドレアセン博士は、何が統合失調症なのか分からないと認めており、「ヨーロッパの人々は、誰が本当に統合失調症を持っているのか、何が本当の統合失調症なのか、解決策を見つけて私たちを助けることによって、アメリカの科学を救うことができます[注 11]」と述べている[68][69][70]。
「:en:Management of schizophrenia」も参照
詳細は「抗精神病薬」、「向精神薬」、「抗不安薬」、「抗うつ薬」、および「睡眠薬」を参照
前駆期、急性期、消耗期(休息期)、回復期と経過を分けている。
例えば、重度の骨折をした場合、一般的に診断、治療、回復、リハビリ、寛解(かんかい)という段階を経る。この中でもリハビリは困難を伴う一方大変重要な段階であるが、この疾患にもこれと同じことが当てはまる。
陽性症状は時間の経過により改善することも多く、それとともに陰性症状が目立ってくる。
経過中に自殺を図る患者もいる。特に患者が喫煙者の場合、自殺企図の危険は有意に高くなる[79]。陽性症状が強い時期に、幻聴から逃れたり妄想のために自殺をする患者もいるが、陰性症状しか見られない段階でも思考の短絡化(健康な人の適切な思考でなく、例えば、会社を辞めればすむ問題なのに究極の選択である自殺を考えるように順序建てて物事を考えられない。優先順位がつけられない)によって少しの不安でも耐えられずに自殺してしまうこともある。
統合失調症の予後については、「進行性経過を取り、ほとんどが人格の荒廃状態に至る」というイメージないし偏見が今日もなお残っているが、これは事実に反している。
予後研究によると、全体の三分の一の患者はほとんど後遺症を残さずに寛解し、三分の一が中等度以上の陰性症状や慢性の幻覚・妄想を残し、残りの三分の一が適応水準に若干問題を残して軽快する[80]。過去(特に薬物療法がなかった時代)に比べ、全体的に予後はかなり向上しているといわれている。
病型別に予後を見ると、緊張型や妄想型では、幻覚妄想などの症状の方が抗精神病薬に反応しやすく、予後がよく、破瓜型や単純型などの陰性症状には、治療の効果が得られにくいため予後が悪いと一般的に言われている。ただし、こうした傾向はあるが、妄想型などでも治療に反応しない例も稀ではなく、病型により機械的に予後が予測できるようなものではない。
患者の生活態度や薬物投与を含めた環境を改善することで症状を軽減できるが、生活レベルでの具体的な改善策は唱えら得られていないのが現状である。患者にもよるが、患者本人の病気に対する問題意識が欠如していてフィードバックが効かなく、患者が入退院を繰り返すなどの日本固有の問題も指摘されている。一定数一定規模における精神科ではソーシャルワーカーを設置する義務があるが、ソーシャルワーカーは患者本人の生活改善を提案・提示するまでもなく、生活保護の申請を幇助したり、障害年金需給の斡旋などを行っているのが現状である。欧米諸国では精神疾患で入退院をするような事例はほんのわずかである、通常では5-6回の通院で終わる。日本では開業医を除いた場合、精神科精神病棟での一定の病床数を構えるという独特な形態をとるとされており、海外からは異端視されていると同時に、商業経営化した医療と揶揄されている。
精神科・精神神経科等。神経科や心療内科を標榜している病院でも精神科等と同じ診察内容になっている施設もある。
本来の心療内科は精神医学ではなく、心身医学である。1996年に厚生省(現在の厚生労働省)が認可したが、ほとんどの医療施設で精神科医が標榜科として掲げてしまい、誤解を招くことになった[81]。
「:en:List of people with schizophrenia」も参照
画家、イラストレイターのルイス・ウェインは57歳で統合失調症を発したが、その後も絵を描き続け特徴的な作品を数多く残している。発症以前のウェインの絵は比較的おとなしい色彩と具象的な画調であったが、発症後には原色を帯びた色彩と抽象的な画調の作品が見られる。しかし統合失調症の患者が必ずしもこのような画調の変化を起こすわけではない。例えば晩年に統合失調症を患った高村智恵子が療養当時制作したとされる紙絵は、比較的素朴なものが多い。
ノルウェーの画家エドヴァルド・ムンクの代表作『叫び』は統合失調症の前駆期の影響による世界没落体験と幻聴を絵にしたものであるとされている[82][83]。
フィンセント・ファン・ゴッホの発作などの症状については、数多くの仮説のうち、癲癇とする説と統合失調症とする説が有力である。(木下 (2002: 100))[84]。
数学者のジョン・ナッシュは統合失調症の発症により自らの研究を中断したが、後に克服し、ノーベル経済学賞を受賞するに至っている。ただし受賞の理由とされた論文は、発病以前に発表されたものである。
草間彌生は少女時代より統合失調症を病み、繰り返し襲う幻覚や幻聴から逃れるために、それら幻覚や幻聴を描きとめる絵を描き始めた。その後現代アートの旗手との高い評価を得て、朝日賞、紺綬褒章、フランス芸術文化勲章オフィシエ、旭日小綬章などを受けている。
詩人にして思想家のフリードリヒ・ヘルダーリンは統合失調症を発病し、その生涯を塔に幽閉されて過ごした。この為、彼の詩に対する病気の影響が指摘されている。
アメリカのコルネット奏者のバディ・ボールデンは統合失調症の影響によりジャズ音楽のルーツを創ったと考えられている[85]。
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[★] 鬱病
また、統合失調症患者を対象とした海外のプラセボ対照二重盲検比較試験において、錐体外路障害の発現頻度には、プラセボ投与群との間に有意な差を認めなかった。
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