- 英
- brain abscess, cerebral abscess
- 同
- 頭蓋内膿瘍 intracranial abscess
- 関
概念
分類
病原体
- see IRE.452
- 細菌性脳膿瘍:連鎖球菌、嫌気性菌、グラム陰性桿菌、黄色ブドウ球菌。連鎖球菌(50-70%)、黄色ブドウ球菌(10-15%)
- 真菌性脳膿瘍:アスペルギルス感染、ムコール症、シュードアレッシェリア症
- 原虫性脳膿瘍:トキソプラズマ症
病期
- see SCN.350
病因
- 心疾患:心内膜炎、右左シャントを伴う心疾患()。血行性に中大脳動脈領域に発生。細菌塞栓による脳梗塞が起こると、細菌は容易に脳組織に移行 (SCN.350)
- 耳鼻科疾患:副鼻腔炎、中耳炎。好発部位は副鼻腔炎で前頭葉、中耳炎では側頭葉、小脳 (SCN.350)
- 開放性外傷:
YN.J-142
疫学
- 30歳代。先天性心疾患、副鼻腔炎、中耳炎の好発年齢と一致。 (SCN.350)
病態
症状
- 発熱、頭痛、嘔吐、意識障害、痙攣で発症。 (SCN.350)
- 髄膜炎と異なり、片麻痺、精神症状、局所痙攣などの局所症状も呈する。 (SCN.350)
検査
血液検査
脳脊髄液
- 細胞数の軽度増加 (SCN.350)
- 所見に乏しく、診断にはあまり有用でない、らしい。
頭部CT
- 単純CT:白質>白質浮腫領域>病変>脳室
- 造影CT:リング上の増強。 ← 被膜形成期に造影剤により増強効果を示す(SCN.350) ← 生体の感染に対する防御反応
頭部MRI
- T1:low intensity
- T2:high intensity
[show details]
診断
鑑別診断
- CT画像上、グリオーマ、転移性脳腫瘍と鑑別。炎症所見が乏しいことが鑑別のカギ(SCN.350)
治療
- IRE.446-
-
-
- 抗菌薬による治療期間は4-6週間(時に8週間) (IRE.449)
- ステロイド:脳圧亢進、脳ヘルニアの危険が迫っている場合に使用。
- 抗痙攣薬:ジアゼパム、フェニトイン
SCN.3550
- 病期のよって治療が変わる
- 脳炎の時期:抗菌薬(経験的に広域スペクトラムの第三世代セフェムを使用)+脳圧降下薬
- 皮膜形成期:ドレナージ
予後
参考
- http://www.masa.go.jp/nes/library/ba.html
国試
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/09/30 22:02:16」(JST)
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脳膿瘍 |
分類及び外部参照情報 |
|
DiseasesDB |
6880 |
MedlinePlus |
000783 |
MeSH |
D001922 |
プロジェクト:病気/Portal:医学と医療 |
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脳膿瘍(のうのうよう、cerebral abscess)は、脳の病気のひとつ。脳の中に細菌感染が起こり、脳組織内の炎症と溜まった膿によって脳が圧迫、占拠された状態をいう。
通常無菌状態の脳の内部にバクテリアなどが侵入して感染を起こすと、脳の組織の一部が壊死するとともに、この感染に反応して炎症が起こる。この炎症によって腫脹が起こり、腫瘍は脳に圧力を加えることとなる。
また、体液や破壊された組織細胞、白血球、バクテリアやその死骸などが集まって膿となり、その周囲に形成される膜によって閉じ込められ膿瘍となる。
これらの腫瘍や膿瘍によって頭蓋内の圧力が上昇し、脳に対してさらに損傷と機能不全を引き起こす。
治療には、ドレナージによる膿の排出、あるいは手術によって開頭し、腫瘍、膿瘍の除去を行うことが必要であることが多い。
診断
- 造影CT
- 膿瘍周辺がリング状に濃染される。
- 拡散強調画像
- 膿瘍全体が著明な高信号(拡散低下)として描出される。
|
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Japanese Journal
- 遺伝子解析によって診断された Campylobacter fetus subsp. fetus による髄膜炎・脳膿瘍の1新生児例
- 中村 幸嗣,宮地 悠輔,鶴岡 純一郎,勝田 友博,立山 悟志,徳竹 忠臣,中島 夏樹,五島 敏郎,大楠 清文,加藤 達夫
- 小児感染免疫 22(4), 357-361, 2011-02-01
- NAID 10027865118
- 症例報告 高用量メロペネム療法が奏功した脳膿瘍の2例
- 症例報告 遺伝子解析が有用であったHIV関連赤痢アメーバ性脳膿瘍の救命例
- 症例 赤痢アメーバ脳内移行による脳炎・脳症が疑われた1例
Related Links
- 脳膿瘍(のうのうよう、cerebral abscess)は、脳の病気のひとつ。脳の中に細菌感染が 起こり、脳組織内の炎症と溜まった膿によって脳が圧迫、占拠された状態をいう。 通常 無菌状態の脳 ... この炎症によって腫脹が起こり、腫瘍は脳に圧力を加えることとなる。 ...
- 脳膿瘍。脳膿瘍とはどんな病気か 脳膿瘍は、脳実質内に限局性にうみがたまった状態 をいいます。膿瘍の形成過程は、まず脳のある部分にうみがたまっていない巣状( そうじょう)の急性炎症が生じます。次に、明らかな化膿性の gooヘルスケア 家庭の 医学。
- 脳膿瘍は、かなり珍しい病気です。原因は、頭部のどこか(歯、鼻、耳など)で起きた 感染の脳への拡大、脳まで達した頭部外傷、体の他の部位で起きた感染が血流から脳 へ波及するなどです。黄色ブドウ球菌、バクテロイデス‐フラジリスを含む多くの種類の 細菌 ...
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★リンクテーブル★
[★]
- 78歳の男性。帰宅途中に転倒し顔面を打撲したため搬入された。72歳から胃食道逆流症で通院治療中である。10日前に仕事からの帰宅時に尿失禁をしたが、意識障害や麻痺は伴わなかった。5日前の定期来院時、同伴の家族は少し元気がないと訴えたが、本人はそれを否定した。バイタルサイン、心肺および神経学的に異常所見を認めず帰宅した。搬入時、激しい頭痛や嘔吐はないが、右上肢が動かしづらいと訴える。意識は清明。体温 36.8℃。脈拍 92/分、整。血圧 154/64mmHg。右前額部から眼窩部にかけて皮下出血を認める。眼瞼結膜に貧血を認めない。右眼球結膜に出血を認める。胸部と腹部とに異常を認めない。神経学的所見で右指鼻試験がやや稚拙であるが、他に異常を認めない。尿所見、血液所見および血液生化学所見に異常を認めない。心電図と胸部エックス線写真とに異常を認めない。頭部単純CT(別冊No.12)を別に示す。
[正答]
※国試ナビ4※ [104G068]←[国試_104]→[104H001]
[★]
- 29歳の男性。意識障害、頭痛および発熱のため搬入された。4日前から、発熱、頭痛および嘔吐が出現した。翌日、頭が割れるように痛いと訴え、他院を受診した。体温39.6℃。項部硬直はなく、頭部CTで異常を指摘されなかった。セフェム系抗菌薬が投与されたが頭痛と発熱とが持続し、意識障害が出現した。搬入時、意識レベルはJCSIII-300。瞳孔はピンポイント。項部硬直を認める。血液所見:赤血球500万、Hb 14.6 g/dl、Ht 45%、白血球17,900、血小板29万。CRP 7.9 mg/dl。髄液は外見が白色、細胞数1,792 (単核球:多核球=332:1460) /μl(基準0~2)、糖15 mg/dl以下(基準50~75)。頭部単純MRIのT1強調像、T2強調像及び造影T1強調像を以下に示す。
- 考えられるのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [103I060]←[国試_103]→[103I062]
[★]
- 56歳の女性。右耳の聴力低下と歩行障害とを主訴に来院した。4年前から右の聴力低下を自覚し、次第に増悪していた。半年前からは歩行障害を自覚し次第に増悪してきたため受診した。意識は清明。体温 36.2℃、脈拍 72/分、整。血圧 132/78mmHg。呼吸数 18/分。右耳の聴力低下を認め、Weber試験では左に偏位し、Rinne試験は左右ともに陽性である。右小脳性運動失調を認め、腱反射は正常でBabinski徴候は認めない。骨条件の頭部CT(別冊No. 12A)、頭部造影MRI(別冊No. 12B)及び手術により摘出した組織のH-E染色標本(別冊No. 12C)を別に示す。
- 診断はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [110D035]←[国試_110]→[110D037]
[★]
- 63歳の女性。頭痛と行動異常を主訴に来院した。3か月前から起床時の頭痛を自覚し、徐々に悪心を伴うようになってきたため受診した。2か月前から約束を間違える、着衣がうまくできないなどの異常に家族が気付いていたという。意識レベルはJCSⅠ-2。脈拍 68/分、整。血圧 142/88mmHg。神経診察で左不全片麻痺を認める。頭部造影MRI(別冊No.19A)を別に示す。入院し、開頭腫瘍摘出術を施行した。病変部のH-E染色標本(別冊No.19B)を別に示す。
- 診断はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [114D042]←[国試_114]→[114D044]
[★]
- 64歳の男性。右片麻痺を主訴に来院した。6か月前から右足を引きずるようになった。2週前から右手で箸を持ちにくいことに気付き受診した。意識レベルはJCS I-2。脈拍 68/分、整。血圧 164/88mmHg。右同名半盲と右片麻痺とを認める。腱反射は右側優位に両側で亢進し、Babinski徴候は両側で陽性である。頭部造影MRI(別冊No. 19A)と病変部のH-E染色標本(別冊No. 19B)とを別に示す。
- 診断はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [109D040]←[国試_109]→[109D042]
[★]
- 18歳の女子。運動時の息切れと動悸とを主訴に来院した。3か月前から同症状を自覚している。呼吸数14/分。脈拍88/分、整。血圧120/72mmHg。右背部に連続性血管性雑音を聴取し、深吸気で増強する。動脈血ガス分析(自発呼吸、room air):pH7.41、PaO2 72.6Torr、PaCO2 33.6Torr。胸部エックス線写真を以下に示す。
- a. (1)(2)(3)
- b. (1)(2)(5)
- c. (1)(4)(5)
- d. (2)(3)(4)
- e. (3)(4)(5)
[正答]
※国試ナビ4※ [097D012]←[国試_097]→[097D014]
[★]
- 48歳の男性。昨夜から頭痛の悪化、嘔吐および意識障害がみられるようになったため救急車で搬入された。1か月前から上顎の齲歯のため鈍痛が持続していた。4日前から発熱、顔面痛および頭痛を自覚していたが放置していた。意識は昏迷状態で項部硬直と右不全片麻痺とを認める。頭部造影CTを以下に示す。
[正答]
※国試ナビ4※ [096D011]←[国試_096]→[096D013]
[★]
- 61歳の女性。頭痛と嘔吐とを主訴に来院した。1週前から頭痛と嘔吐とがあり, 2日前から38℃台の発熱も加わった。既往歴に副鼻腔炎がある。来院時の意識レベルはJCS I-2。右半身の運動感覚障害、失算および失書を認める。頭部MRIの拡散強調横断像(別冊No.6A)と造影T1強調矢状断像(別冊No.6B)とを別に示す。
- 最も考えられるのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [105I041]←[国試_105]→[105I043]
[★]
- 54歳の男性。7か月前からの後頭部を中心にした頭重感のため来院した。来院前に職場の診療所を受診し鎮痛薬を処方されたが、症状はさほど改善せず、出勤がおっくうな日もある。食欲がなく、熟睡した感じがないと訴えている。意識は清明。体温36.8℃。脈拍62/分、整。血圧108/72 mmHg。項部硬直はない。眼底に異常所見はない。
- 最も考えられるのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [096F020]←[国試_096]→[096F022]
[★]
- 57歳の女性。意識障害のため搬入された。3日前に37℃台の発熱があり、頭重感を自覚していた。昨日、左片麻痺が出現し、本日意識障害が出現した。体温39.4℃。頭部MRIの造影拡散強調像(別冊No.3A)とT1強調像(別冊No.3B)とを別に示す。
- 診断はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [104I040]←[国試_104]→[104I042]
[★]
- 10歳の男児。数日前からの意識障害のため来院した。Fallot四徴症がある。傾眠状態で、項部硬直、不全四肢麻麻痺、四肢腱反射亢進およびBabinski徴候を認める。頭部MRIのT1強調像と造影T1強調像とを以下に示す。最も考えられるのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [095D048]←[国試_095]→[095D050]
[★]
- 58歳の女性。労作時の息切れを主訴に来院した。ぱち指を認める。両下肺野に連続性の血管雑音を聴取し、深吸気で増強する。胸部エックス線写真と右肺動脈造影写真とを以下に示す。この疾患の合併症として特徴的でないのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [099A013]←[国試_099]→[099A015]
[★]
- a. (1)(2)(3)
- b. (1)(2)(5)
- c. (1)(4)(5)
- d. (2)(3)(4)
- e. (3)(4)(5)
[★]
- 頭部X線CTスキャンでリング状増強効果を示すことが多いのはどれ
- a. (1)(2)(3)
- b. (1)(2)(5)
- c. (1)(4)(5)
- d. (2)(3)(4)
- e. (3)(4)(5)
[★]
- 頭部X線造影CTでリング状の増強効果を示すのはどれか
- a. (1)(2)(3)
- b. (1)(2)(5)
- c. (1)(4)(5)
- d. (2)(3)(4)
- e. (3)(4)(5)
[★]
- ■症例
- 72歳 女性
- 現病歴:胸部の感染症にドキシサイクリンをGPに処方された。関節リウマチに長期間罹患しており、9年間、1日7mgのプレドニゾロンを服用している。関節痛のため時々パラセタモールを服用。GPが測定した血圧は138/82mmHgであった。抗菌薬を服用し始める2日前からはじまって5日間熱っぽく、食欲不振であり、ベットから動けないでいる。水は十分に飲ませている。5日目に傾眠傾向となり、起こすことが困難になったため、救急車で救急部に連れてきた。
- 主訴:傾眠
- 生活歴:単身。退職した娘が世話をするために引っ越してきている。
- 家族歴:なし。
- 身体所見 examination
- 小柄である(50kgと評価された)が、最近になって体重が減少したということはない。体温38.8℃。眠たそうであり、命令には応じる。簡単な質問にしか答えない。全身性に筋緊張低下。局所神経症状無し。脈拍:118/min。血圧:104/68mmHg。頚静脈圧上昇せず。足首に腫脹無し。肺底部にcrackles(ラ音)とwheezes(笛音)を認める。関節にわずかに活動性の炎症と変形が認められる。これは関節リウマチの既往と合う所見である。
- 検査 investigation
- ヘモグロビン:軽度低下。MCV:正常。白血球増多。ナトリウム低下。カリウム正常。尿素上昇。クレアチニン上昇。
- 問題0. □と○に入る言葉を述べよ
- 1) 傾眠とは□□障害に含まれる
- 2) 傾眠とは、刺激を与えなければ□□が低下するが、刺激を与えれば○○する状態である。
- 問題1. 患者に関連する以下の事項のうち何が傾眠と関係あるのだろうか?2つ選べ。
- 1) ドキシサイクリンの副作用
- 2) 関節リウマチの重症化
- 3) プレドニゾロンの服用歴
- 4) パラセタモールの服用歴
- 5) 胸部感染症
- 問題2. 異常な検査所見をどう説明しますか?口頭で述べてください。ぶっちゃけ、やや低血圧であることと、ナトリウム低値が着目点です。腎機能低下は二次的なものです。
- ■意識障害
- 意識障害 (PSY.38)
- 単純な意識障害
- 明識困難状態 < 昏蒙 < 傾眠 < 昏眠 < 昏睡
- ■傾眠
- 昏睡状態の分類の一つ
- ・somnolence
- 放置すれば意識が低下し、眠ったようになるが、刺激で覚醒する。病的な場合にのみ用いられる。(BET.130)
- sleepiness; also, unnatural drowsiness. A depressive mental state commonly caused by encephalitis, encephalomalacia, hepatic encephalopathy, hypoxia and some poisonings, e.g. Filix mas, the male fern.
- (Saunders Comprehensive Veterinary Dictionary, 3 ed. c 2007 Elsevier, Inc. All rights reserved)
- ・drowsiness
- 正常、病的の区別無く眠り込む状態(BET.130)
- a decreased level of consciousness characterized by sleepiness and difficulty in remaining alert but easy arousal by stimuli. It may be caused by a lack of sleep, medications, substance abuse, or a cerebral disorder.
- (Mosby's Medical Dictionary, 8th edition. c 2009, Elsevier.)
- ■意識障害を呈する患者に対してどのような疾患を鑑別に挙げるべきか?
- 1. 脳原発の疾患(一次性)
- a. テント上病変(脳幹の圧迫性病変ないし脳ヘルニアをきたす疾患)
- 1) 脳血管障害:脳出血、脳梗塞
- 2) 硬膜下血腫
- 3) 脳腫瘍:原発性、転移性
- 4) 脳膿瘍
- b. テント下病変(脳幹網様体の障害)
- 1) 脳幹出血、脳幹梗塞、小脳出血、小脳梗塞、脳腫痛、多発性硬化症など
- c. びまん性病変
- 1) くも膜下出血、中枢神経感染症:髄膜炎、脳炎、 播種性血管内凝固症候群など
- 2. 全身疾患に伴う病態(二次性)
- a. 代謝性またはびまん性病変
- 1) ショック:心筋梗塞、大出血など
- 2) 薬物、毒物
- 3) 無酸素ないし低酸素血症
- 4) DIC、全身性感染症:敗血症など
- 5) 肝不全、腎不全、糖尿病性高血糖、重症肝炎、内分泌疾患など
- 6) 低血糖、ビタミンB1欠乏: Wernicke脳症
- 7) 脳振盪、てんかん大発作後
- 8) 酸塩基平衡および電解質異常
- 9) 栄養障害
- 10) 低体温症
- b. 心因性無反応
- 1) ヒステリー、統合失調症
- ■低ナトリウム血症
- 血清ナトリウムが134mEq/L以下の病態。(正常の下限は135mEq/Lとされる)
- ・病因 ICU.525
- 循環血減少性低ナトリウム血症
- 利尿・副腎不全 :尿中Na > 20mEq
- 嘔吐・下痢 :尿中Na < 20mEq
- 等容量性低ナトリウム血症:細胞外液は増加していないが、水の方が多くなった状態。臨床的に浮腫が無い。
- SIADH :尿浸透圧 > 100 mOsm/L
- 心因性多飲症 :尿浸透圧 < 100 mOsm/L
- 循環血増加性低ナトリウム血症:細胞外液にナトリウムと水が増加しており、なおかつ水の方が多い病態
- 腎不全 :尿中Na > 20mEq
- 心不全・肝不全 :尿中Na < 20mEq
- ・症状
- 全身 :無力感、全身倦怠感
- 消化器:食欲不振、悪心・嘔吐
- 神経 :意識障害(傾眠、昏睡)
- 筋 :痙攣、腱反射低下、筋力低下
- ■アルドステロン
- 1. 腎の接合尿細管と集合管、唾液腺、乳腺、汗腺等に働いてNa+の再吸収を促進し、K+の排出(分泌)を促進する (SP.791,792 によれば、腎接合尿細管を含む)
- 2. 腎集合管でH+の排出(分泌)を促進する。
- Na+/K+-ATPase活性↑@遠位尿細管・皮質集合管 → 管腔側K↑ → K再吸収/H+分泌 (QB CBT vol2 p.360)
- ■副腎皮質球状層から分泌されるアルドステロンの分泌制御
- 1. レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系
- 2. 血清カリウム濃度上昇
- 3. ACTH(寄与は小さい)
- ■低アルドステロン症の症状と臨床検査
- 症状
- 脱水、低血圧、代謝性アシドーシス
- 検査
- 低ナトリウム血症、高カリウム血症
- 尿中ナトリウム高値、尿中カリウム低値
- 血中HCO3-低下
- ■起こっていることは何か?
- ステロイドの突然の中断による急性の副腎不全。特に低アルドステロン症が前面に出た病態。
- 副腎不全の原因(病期による分類)(BPT.793)
- 急性:ウォーターハウス・フリーデリクセン症候群、長期コルチコイド療法の突然の中断、慢性副腎不全患者へのストレス
- 慢性:(major)自己免疫性副腎炎、結核、後天性免疫不全症候群、転移性疾患(metastatic disease)
- (minor)全身性アミロイドーシス、真菌感染、ヘモクロマトーシス、サルコイドーシス
- 症状:
- グルココルチコイドの欠乏 :易疲労感、食欲不振、悪心・嘔吐、体重減少、脱力、嗜眠、低血圧
- ミネラルコルチコイドの欠乏:低血圧、低Na血症、高K血症、味覚の変化(塩分の故意食事を好むようになる)
- ■答え
- (第一パラグラフ)診断とその根拠
- ・二次性急性低アルドステロン症 secondary acute aldosteronism
- ・病因:本症例では、長期にわたるステロイドホルモンの使用により視床下部-下垂体-副腎軸の不全を来した。ステロイドホルモンを長期に使用している状態でステロイドホルモンの需要が高まったとき(感染、外傷(手術))、あるいは嘔吐などで経口ステロイドを服用できないときに起こる。
- ・症状:本症例では傾眠と低血圧として症状が現れている。
- (第二パラグラフ)
- ・本疾患の低ナトリウム血症の解釈 → (1)ナトリウム摂取の低下、(2)水分摂取による希釈
- ・視床下部-下垂体-副腎軸は障害を受けておらずナトリウムを補充する治療をすべき。
- ・一次性急性低アルドステロン症(addisonian crisis)では、鉱質コルチコイドと糖質コルチコイドの分泌不全がおこり、低ナトリウム血症と高カリウム血症を来す。
- ・二次性急性低アルドステロン症はしばしば間違ってaddisonian crisisと呼ばれる。
- (第三パラグラフ)
- ・感染の拡散も考慮すべき;一次部位が脳で髄膜炎か脳膿瘍を伴っている、あるいは局所的に肺膿瘍あるいは膿胸を起こしている。
- ・高齢とステロイドの服用ということで免疫力がある程度低下している。
- ・ステロイドの量が多いかもしれない。
- (第四パラグラフ)
- ・治療はすぐに経験的治療であるヒドロコルチゾンと生理食塩水の輸液を行う。
- ・患者は(治療に?)反応し、5時間以内に意識レベルは正常となった。そして血圧は上昇し136/78mmHgとなった。胸部X線では両側の肺に肺炎に一致する陰影が見られたが、それ以外に異常は認められなかった。
- ■KEY POINTS
- ・二次性低アルドステロン症はmedical emergency(医学的な緊急事態)である、すぐに経験的治療を行うことが求められる。
- ・長期にわたりステロイドを投与されている患者では、以下の時にステロイドを増量すべき;別の疾患を発症したとき。嘔吐を反復する場合には全身投与に切り替える。
- ■低アルドステロン症ってなによ
- http://enotes.tripod.com/hypoaldosteronism.htm
- ・時々、低アルドステロン症は副腎不全の唯一の、あるいは支配的な徴候である
- ・アルドステロンの生合成の障害 → まれ
- ・アルドステロン生合成の部分的欠損 → 21-ヒドロキシラーゼ欠損による先天性副腎皮質過形成の症状としての低アルドステロン症
- ▲特発性低アルドステロン症 idiopathic hypoaldosteronism
- 症状:高カリウム血症に続発する心ブロック、顕著な低ナトリウム血症の有無を問わず血液量不足に続発する体位性低血圧。
- 検査:血清アルドステロン低値。尿中アルドステロン低値。血清レニン高値。
- ▲低レニン低アルドステロン症
- 特発性低アルドステロン症より一般的な低アルドステロン症
- 疫学:45歳以上の慢性腎臓病。
- 病因:
- ・腎臓病患者において腎臓の間質、尿細管に障害が存在 → レニン分泌能が低下。
- ・レニン分泌が低下する原因は分からないけど傍糸球体装置における障害が常に寄与している。
- ・NSAIDによるプログラスタンジン欠乏は、可逆的な低レニン低アルドステロン症の原因である。SP.793によればレニン分泌刺激 → Na+再吸収を亢進 だそうな。
- ・ヘパリン、カルシウムチャネルブロッカー、βブロッカーも原因となる。
- 症状:
- ・腎臓の障害が原因の低レニン低アルドステロン症患者では糖尿病が一般的みられる所見である。
- ・顕著な特徴は、慢性的で著明な高カリウム血症である。これは高血糖で突然に悪化する。???
- ・高Cl性代謝性アシドーシス+正常or低ナトリウム血症が常に存在
- 増悪因子:ナトリウム制限
- 検査:高カリウム血症、体液量の減少、かつ低ナトリウム血症が存在しているにもかかわらず低レニンであることが特徴的。
[★]
- ☆case75 自宅での意識消失
- ■症例
- 21歳 男性
- 主訴:意識消失
- 現病歴:男性のアパートで意識を失っている所を彼女に発見され、午後5時に搬送された。彼女が最後に彼に会ったのは午後8時で、クリスマスの買い物をして帰宅した時であった。翌日午後、彼女が彼に会いに行った所、彼がお風呂の床で意識を失っているのを見つけた。彼女によれば、前日変わった様子(unusal mood)はなかった。彼は心理学の期末試験が1週間に迫っておりこのことを心配していたが、勉強はうまくいっているようだった。また以前の試験に問題はなかった。
- 喫煙歴:なし。
- 飲酒歴:機会飲酒 10 units/week(1週間に350mlビール6本弱)
- 既往歴:なし
- 家族歴:父と2人の兄弟のうち1人が糖尿病
- 服薬歴:以前、エクスタシー錠剤を服用していたが、静脈注射の薬はやったことがない。
- 身体所見 examination
- 顔貌 青白。注射痕は認められない。脈拍 92/分、血圧 114/74 mmHg、呼吸数 22/分。心血管系、呼吸器系に異常を認めず。神経系 命令に従わないが、痛みに反応して適切に手を引っ込める(GCS M4)。腱反射(+)・対称性、足底反射(-)。瞳孔散大、対光反射(+)。眼底 視神経円板腫脹
- ■鑑別診断をあげるためのkeyword(司会者用)
- ・24時間以内に来した意識消失、糖尿病の家族歴、冬、風呂、精神疾患リスク(試験で悩んでいる。薬物の服用歴)、顔色、脈拍、血圧、呼吸数、腱反射、病的反射、瞳孔、眼底(司会者用)
- ■keywordからどういう疾患を考えるか?
- 真っ先にあげたいもの
- ・二次的な脳圧亢進
- ・糖尿病
- ・薬物中毒、中毒物質の摂取・吸引
- ・神経疾患(てんかんなど)の発作
- ・24時間以内に来した意識消失
- ・クモ膜下出血:局所神経症状、硝子体下出血(subhyaloid hemorrhage)。
- ・糖尿病の家族歴
- ・低血糖発作
- 低血糖による昏睡は早いが糖尿病の新規症状として起こらない。まれにインスリノーマによる低血糖による昏睡があり得る。
- ・糖尿病性ケトアシドーシス diabetic ketoacidosis DKA
- 極度のインスリン欠乏とコルチゾールやアドレナリンなどインスリン拮抗ホルモンの増加により、(1)高血糖(≧250mg/dl)、(2)高ケトン血症(β-ヒドロキシ酪酸の増加)、アシドーシス(pH7.3未満)をきたした状態。(糖尿病治療ガイド 2008-2009 p.66)
- ・高浸透圧性非ケトン性昏睡 nonketotic hyperosmolar coma
- DM type 2
- 50歳以上に好発し、インスリン非依存性糖尿病*患者が腎不全や中枢神経障害、悪性腫瘍、消化器疾患、呼吸器感染などを合併するときに多くみられ、ステロイドや利尿薬の投与、輸液や高カロリー補給、人工透析などの際に医原性に起きやすい。
- 高血糖性の昏睡は発症が早くない。その前に口渇や多尿があるはず。
- → 否定するための検査 → 血糖測定
- ・風呂
- ・脳出血
- ・冬だし、風呂(脱衣所のことか)にガスヒーターがあったら疑わしい。
- ・精神疾患リスク(試験で悩んでいる。薬物の服用歴)
- (最も多いのが)薬物中毒(鎮静薬、アスピリン、アセトアミノフェン)
- (意識障害で運ばれてきたときに考えるべきなのが)一酸化中毒
- 一酸化中毒の場合の顔色は蒼白(cherry-red colorと言われてきたが)。眼底所見:(severe CO中毒で)乳頭浮腫
- ・顔色
- ・脈拍、血圧、呼吸数
- ・腱反射、病的反射
- 腱反射が亢進していたら、上位運動ニューロンの障害を考慮する。腱反射亢進と意識障害が共存していれば、障害部位は脊髄の伝導路ではなくむしろ脳幹・大脳皮質に障害があると考えることができる。
- ・瞳孔
- 瞳孔が散大していれば交感神経興奮、副交感神経の麻痺:フェニレフリン・エピネフリン・コカインなど交感神経刺激、動眼神経麻痺、脳死の徴候
- 瞳孔が縮瞳していれば副交感神経興奮、オピオイド受容体への刺激:麻薬中毒、有機リン中毒、橋出血、脳幹部梗塞(脳底動脈閉塞症など)
- ・眼底 (IMD.71)
- 視神経円板(=視神経乳頭)の腫脹は乳頭浮腫(papilledema, DIF.342)を反映。乳頭浮腫の発生機序は軸索輸送障害や静脈還流うっ滞である。原因として頭蓋内疾患が最も多い。頭蓋外の疾患(高血圧、視神経炎、偽性脳腫瘍)。
- 乳頭浮腫 papilledema DIF.243
- V 動静脈奇形、高血圧による脳血圧脳症・頭蓋内出血、クモ膜下出血、硬膜下血腫
- I 脳膿瘍、慢性経過の髄膜炎(細菌性×)、敗血症による血栓や静脈洞血栓
- N 脳腫瘍
- D -
- C 動静脈奇形、水頭症、頭蓋奇形(尖頭症などによる)、血友病、時にSchilder disease
- A ループス脳炎、動脈周囲炎
- T 急性期の硬膜外血腫や硬膜下血腫ではない。慢性硬膜下血腫ならありうる。
- E 褐色細胞腫による悪性高血圧、偽性脳腫瘍(=特発性頭蓋内圧亢進症)(肥満・無月経・感情障害(emotionally disturbed)をきたした女性に多い)
- ■問題
- 症例だけでは絞れないので、最も疑われる疾患をあげ、鑑別診断を列挙し、検査、治療を考えていくことにします。
- ■一酸化炭素中毒
- ■オチ
- 血中carboxyhemoglobinを測定したところ32%。高レベルの酸素投与でゆっくりだが、48時間で完全に回復。脳浮腫にたいするマンニトールや高圧酸素療法も考慮する。問題は4年間点検されていないガス温水器の不完全燃焼だったとさ。
- ■KEY POINTS
- ・薬物中毒は若い人の意識消失の最も一般的な原因だけど、他の診断もいつも考慮しておく。
- ・一酸化炭素ヘモグロビンレベルは屋内や車内、あるいはよく分からない煙に暴露した意識消失患者で測るべき
- ・一酸化中毒による重度の低酸素血症ではチアノーゼを欠く。
- ■initial plan(救急だからのんびりやってられないだろうけど)
- A.
- 1. 呼吸器系、循環器系の安定を確認
- 2. 血液ガス検査
- 3. 血液生化学(電解質(Na,Ca)、血糖)
- □ビール1本 = 350ml アルコール5%: 350 (ml/本) x 0.05 / 10 (ml/unit) =1.75 (unit/本)
- ■参考文献
- DIF Differential Diagnosis in Primary Care Fourth Edition版 Lippincott Williams & Wilkins
[★]
- 英
- dementia
- 同
- 痴呆、痴呆症、器質痴呆 organic dementia
- 関
- amyotrophic lateral sclerosis、ハチンスキー虚血スコア
定義
- いったん正常に発達した知的機能が持続的に低下し、複数の認知障害があるために社会生活に支障をきたすようになった状態。(参考1)
- 1. 知的機能が脳の器質性障害によって低下
- 2. 認知機能が選択的に障害された状態(PSY.312)
- 3. 記憶と判断力の障害を基本とする症候群(PSY.312)
認知症の概念
- 1. 記憶障害
- 2. 記憶以外の認知機能の障害
- 3. それらによる日常生活や職業生活の障害
- 4. 意識障害によらないこと
認知症と区別すべき病態
など
認知症の分類
-
-
- ピック病:行動の障害、人格変化。Pick球やPick細胞が存在
原因疾患
原因
- KPS.369
認知症症状
1. 中核症状
- 記憶障害:初期には記銘力、短期記憶から障害される。早期:エピソード記憶 → 重症:意味記憶
- 判断力低下
- 見当識障害
- 言語障害(失語)
- 失行
- 失認
2. 周辺症状
認知症と老化現象との違い
- 老化現象
- 体験の一部を忘れる ← ヒントを与えられると思い出せる
- 名前や日付などをとっさに思い出せる
- 日常生活に支障はない
- 物忘れに対して自覚がある
- 体験した全てを忘れる。最近の記憶がない ← ヒントを与えられてても思い出せない
- 時間や自分のいる場所が分からない
- 日常生活を営むことが困難
- 物忘れに対して自覚がない
検査
診断
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アルツハイマー病
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脳血管性認知症
|
ピック病
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認知症
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全般的認知症
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まだら認知症
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アルツハイマー病に類似。 早期には人格、注意力が障害され、 次第に記憶力も障害される。
|
人格
|
晩期に人格障害
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保たれる
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早期に人格障害
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病識
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なし(初期にはあり)
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あり
|
なし
|
経過
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進行性
|
動揺性、階段状に進行性
|
進行性
|
基礎疾患
|
特になし
|
高血圧、糖尿病、心疾患
|
特になし
|
画像検査
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対称性の脳溝開大
|
脳実質内に脳梗塞巣
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側頭葉と前頭葉の萎縮
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機能画像検査
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側頭葉、頭頂葉での代謝低下
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前頭葉を中心とした多発性の脳代謝低下
|
前頭葉、側頭葉での代謝低下
|
treatable dementia
- 治療可能な認知症を診断しておく。根本的な治療が可能で、認知機能は可逆的である。
- → 治療できる認知症
治療
認知症高齢者を対象とした事業・施設
国試
[★]
- 英
- pyrexia
- 同
- 熱 fever, thermogenesis
- 関
- 熱型、≠高体温(体温調節機構の破綻による)、不明熱
- ジェネラリスト診療が上手になる本 p.9
概念
分類
- 微熱:37.5℃以上 37.0~37.9℃(YN.)
- 発熱:38.0℃以上
- ジェネラリスト診療が上手になる本 p.9
- 37.1~38.0℃:微熱
- 38.1~38.5℃:軽度発熱
- 38.6~39.0℃:中等度発熱
- 39.1℃~:高熱
小児
病態生理
- 発熱サイトカイン(IL-1, TNF)が視床下部に作用してPGE2の産生を亢進し、PGE2により体温調節中枢を司る細胞内のcAMP濃度が上昇することでの体温セットポイントがあがる。
熱源の精査
- 咽頭、肺、胆道系、泌尿器系、皮膚・軟部組織(蜂窩織炎、褥瘡)
疾患と発熱
膠原病と発熱
発熱40℃(PMID 8107744)
発熱の後に関節炎(PMID 8107744)
原因不明の熱の鑑別
- 感染症
- 腫瘍
- 膠原病
- 薬剤熱 → 比較的元気、比較的徐脈、比較的CRP
- 体温1℃上昇に付き心拍数20上がる。これ以上の上昇が見られる場合、敗血症を疑う。 ← 1℃に付き10上がるという資料もあり(比較的徐脈)
発熱を伴う内科的緊急疾患
- 内科レジデントの鉄則 第2版 p.6
院内における発熱の鑑別疾患
- 感染性 :肺、泌尿器、褥瘡、クロストリジウム・ディフィシル感染症、カテーテル関連感染症
- 非感染性:薬剤熱、偽痛風、深部静脈血栓症
小児科における発熱の原因
年齢
|
原因
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乳児(生後3ヶ月未満)
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敗血症、細菌性髄膜炎、尿路感染症、肺炎、B群溶連菌感染、グラム陰性桿菌
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乳児(生後3ヶ月以降)
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ウィルス感染(突発性発疹などの発疹性疾患)、中耳炎、尿路感染症、消化器・呼吸器疾患、川崎病
|
幼児、学童期
|
溶連菌感染症、伝染性単核球症、膠原病、factitious fever(詐病)、学校での感染症の流行
|
- 乳児における中耳炎、尿路感染症は症状が発熱であることが多く原因が追及しづらい。鼓膜を観察したり、尿の培養をすることが重要かもしれない。
小児における発熱
- SPE.63
新生児・乳児における発熱
see also step beyond resident 2 救急で必ず出会う疾患編 p.20
- 3ヶ月未満は免疫力が弱く重症細菌感染症にかかりやすい。
- 生後 :対処
- 0-1ヶ月 :入院。血液検査・各種培養検査を。
- 2-3ヶ月 :外来で小児科医が診察し、血液検査で細菌感染が疑われれば入院
- 4-6ヶ月 :外来で小児科医が診察し、発熱以外に所見がなければ、十分な水分摂取を指示し、翌日再診を。
- 6ヶ月以降:食欲・機嫌がよければ、翌日再診を。
漢方医学
[show details]
- 臨床医の漢方治療指針より
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実熱
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虚熱
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発病
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急速に発病
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緩徐に発病
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症状
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悪寒、高熱 顔面紅潮 苦痛あり、四肢運動多 声大きく明瞭 口渇強い 便秘 色調濃い尿
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軽度悪寒、熱覚 顔面蒼白 苦痛少なく、静かに臥床 声小さい 口渇少ない 軟便、下痢 薄い色調の尿
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脈
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早く大きく、緊張
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小さく早く、緊張なし
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舌苔
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厚くて乾燥、白~黄~褐色
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薄くて白い、無苔、鏡面舌
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その他
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頭痛、関節痛、無汗~発汗
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倦怠感、眩暈感、盗汗
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実熱
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麻黄湯
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悪寒、発熱、頭痛、関節痛
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葛根湯
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悪寒、発熱、頭痛、肩背部のこり
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小柴胡湯
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午後からの発熱、食欲不振、口の苦み
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柴胡桂枝湯
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詳細孤島の症状、関節痛、腹痛
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大柴胡湯
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胆嚢炎、便秘
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柴陥湯
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詳細孤島の症状、咳嗽、胸痛
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黄芩湯
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発熱、腹痛、下痢
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虚熱
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桂枝湯
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発熱、軽度の頭痛、発汗
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桂麻各半湯
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発熱、発疹
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参蘇飲
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発熱、食欲不振、咳嗽、あつがる
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柴胡桂枝乾姜湯
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微熱、上半身の自汗、盗汗、食欲不振、背部の冷汗
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竹じょ温胆湯
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発熱、咳嗽、不眠
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補中益気湯
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微熱、倦怠感、食欲不振、盗汗
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滋陰降火湯
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微熱、下半身の脱力感、盗汗、咳嗽
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滋陰至宝湯
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微熱、倦怠感、食欲不振、精神不安定状態
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真武湯
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陰病、微熱、食欲不振、倦怠感、いつも寝ている
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麻黄細辛附子湯
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陰病、微熱、寒がる
|
[★]
- 英
- tetralogy of Fallot TOF ToF TF
- 同
- (国)Fallot四徴症
- 関
- 先天性心疾患、心奇形
まとめ
- 肺動脈狭窄、心室中隔欠損、大動脈騎乗、右室肥大が四徴とされており、漏斗部中隔が右前方へ偏位したために生じた大きな心室中隔欠損と漏斗部狭窄が病態の核心である。出生後は体重増加正常であるが、生後数ヶ月後より徐々にチアノーゼが出現、次第に増悪していく。無酸素発作が出現するようになり、小児期には蹲踞の姿勢をとるようになる。聴診上、2-3LSBに駆出性雑音を聴取、またII音は単一II音として聴取される。低酸素血症の持続により、バチ指、多血症、鉄欠乏性貧血を来す。治療は鉄欠乏性貧血に対して鉄材内服、無酸素発作に対して胸膝位、酸素投与、モルヒネ、βブロッカーとし、予防的にβブロッカーを投与する。手術療法としては1歳頃までに頻回の失神発作、無酸素発作をきたす例に対して、Blalock-Taussig手術を施行、1-3歳頃に根治的に心内修復術(心室中隔欠損の閉鎖、肺動脈の拡張/右室流出路形成)を行う。合併症として脳血栓、脳膿瘍、感染性心内膜炎に留意する。(文献(2) YN.C-121 SPE.452)
原因
- 発生の過程で、円錐動脈管中隔(漏斗中隔)が前方に変位 → 円錐の不等分割 (L.225)
- 22q11の微少な欠損が関係する (PHD.391)
- 22q11.2欠失症候群 CATCH22
四徴
病態
肺動脈狭窄
- (左室の心筋収縮による駆出圧が、心室中隔欠損により右室壁に加わる)
PSと大動脈騎乗を伴う心室中隔欠損
疫学
- 9.6/10000出生。 5/10,000 live births(PHD.391)
- 心奇形を合併しうる (PHD.391)
症状
- 息切れ、易刺激性、チアノーゼ、頻呼吸、ときに失神、痙攣。無酸素発作
- 運動時、食事、哺乳 → 全身の血管が拡張 → 肺血管抵抗 >> 全身血管抵抗 → ↑右左シャント → チアノーゼ
- 子供は全身の血管抵抗を上げるためにしゃがむようになる(蹲踞)。大腿の血管が圧排されて全身血管抵抗が上がる → ↓右左シャント → ↓チアノーゼ
- 中心性チアノーゼ(生後2-3ヶ月) → 無酸素発作(生後6ヶ月) → 蹲踞の姿勢(2歳以降)
- 無酸素発作/低酸素発作:生後、3-4ヶ月移行、急に多呼吸になりチアノーゼが増強。呼吸困難、意識消失を来す。午前中の覚醒時に起きることが多い。右室流出路狭窄の増強が引き金となり、肺血流の低下が起こる。3ヶ月頃から出現。
身体所見
聴診 PHD.393
- RV heave:右室肥大
- 単一II音 ← 肺動脈への駆出路が狭窄しており、かつ肺動脈弁は低形成であるためP2成分は小さく聴取できない。そのためA2成分のみS2として聴くことになる。
- 左右の胸骨縁に収縮期雑音:右室の駆出路で乱流が発生することで生じる(肺動脈までの流路が狭窄しているから)
-
- 心室中隔欠損症 VSDによる雑音は生じない。欠損している部分が大きすぎるため
検査
胸部単純X線写真
- 心陰影は正常/やや小さい ← 拡大はない
- 木靴心:左第二弓陥凹、左第四弓突出
- 肺血管陰影の減弱
心エコー
[show details]
心電図
- 右室肥大所見(high RV1, deep SV6)
心カテーテル検査
右室造影
治療
内科療法
- 多血症:Ht>60%で注意、>70%で危険なので、瀉血を行う。 (PED.919)
薬物療法
- 鉄欠乏性貧血、無酸素発作の予防が目的。
- 無酸素発作:(治療)胸膝位、酸素投与、モルヒネ、βブロッカー、アシドーシス補正の補液。(予防)βブロッカー ⇔ 禁忌:β刺激薬 → 漏斗部狭窄(肺動脈弁下狭窄)を増強させてしまう
- 治療
- βブロッカー:右室流出路狭窄の改善
- モルヒネ:鎮静、漏斗部のspasm解除。
末梢血管の拡張、静脈還流量減少? ← 塩酸モルヒネ/ペチロルファンを用いる(PED.918)
- アシドーシス補正の補液:重炭酸を含む輸液
- 予防
- 塩酸プロプラノロール/塩酸カルテオロール (PED.918)
手術療法
- 新生児期において動脈管依存性の重症例では、プロスタグランジンE1の持続投与を行い、ブラロック・タウシグ手術(Blalock-Taussig手術)を行う。(ガイドライン1)。
- 動脈管非依存性の場合、1歳頃に頻回の失神発作、無酸素発作をきたす例に対して(YN.C-122)、内科的に無酸素発作のコントロールが困難な症例や著しい肺動脈低形成に対してブラロック・タウシグ手術を行う(ガイドライン1)。
- 1-2歳(ガイドライン1)/1-3歳(YN.C-122)頃に、根治的に心内修復術(心室中隔欠損の閉鎖、肺動脈の拡張/右室流出路形成)を行う。
合併症
ガイドライン
- 1. 先天性心疾患の診断、病態把握、治療選択のための検査法の選択ガイドライン
- http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2010_hamaoka_h.pdf
国試
症例
- 2歳男児。運動後にチアノーゼが見られるため来院した。家族の話によると、うずくまっていることが多くなってきたという。胸骨左縁第2肋間に駆出性収縮期雑音を聴取する。