出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2016/02/18 16:16:43」(JST)
脱臼(だっきゅう、dislocation, luxation)とは、関節を構成する骨同士の関節面が正しい位置関係を失っている状態。 程度により完全脱臼と不完全脱臼(亜脱臼)に分類される。 靭帯や軟骨、骨が損傷を受ける為、骨を正しい位置に戻しただけでは治らず、ギプスでの固定か手術が必要で後遺症が残る可能性がある。
関節とは骨と骨の連結部分であり、骨と骨が向かい合っている面がある(右図では水色の部分)。この面が位置関係が本来の状態からずれた状態を脱臼と呼ぶ。 外力により発生するほか、病的な原因で起こるケースがある(→原因による分類)。
脱臼の症状のうち、脱臼固有の症状には弾発性固定、関節部の変形がある。また、一般外傷症状(脱臼固有ではない症状)として疼痛、腫脹、機能障害があげられる(→#症状)。 脱臼が見落とされるなどして長期間放置されると、徒手整復が困難となるため、早期に治療を行うことが大切である。 脱臼の発生頻度は青壮年で高く、小児や高齢者では比較的少ない。これは、小児や高齢者では外力が働いた場合に脱臼ではなく骨折を起こすためと考えられている。
なお、関節部の損傷を示す言葉のひとつに捻挫があるが、これは関節包や靭帯の損傷を指す用語であり、骨の位置関係の異常を指すものではない。
脱臼は様々な観点から分類することができる。
脱臼に陥る場所は多用される関節に限らず、骨と骨を繋ぐ場所ならば何処でも起こり得る。脱臼の症状に、関節部の痛みや腫脹、関節の変形、関節を軸にその先の部位が正常に動かす事が出来ない、脱臼をした部位が短くなっている、等の症状がある場合、脱臼が起こっている恐れがある。脱臼は一刻も早く元に戻す事が大切であり、遅くとも8時間以内に整復を行うべきである。あまり遅れると、全身麻酔の手術が必要となることもある。
人体には自己修復能があり、また素人治療が施される事があるが、脱臼の整復には原則として専門家の手を必要とする。素人治療のあげく、正確な定位置に復元されていない状態で長時間が経ってしまうと、関節が変形した状態で固定されてしまい、将来痛みや炎症の原因ともなりうる。
整復には固定が必要であり、関節の回復は遅くおよそ6~9ヶ月かかる事からも根気良く時間をかけ修復する必要があるが、肩関節や顎関節は日常で使う部位であり、長期固定が難しい事もあり脱臼が習慣化する事が多い。
自分で整復できた場合でも専門家や医療機関での受診が必須である。関節内の損傷状況により固定、リハビリテーション、加療が必要となる。 特に、靱帯などや周辺の筋肉損傷、骨折、神経組織を圧迫している場合もあるので、素人判断は禁物である。
外傷性脱臼を起こしたあとに、軽微な力で脱臼を繰り返すことがあり、これを反復性脱臼と呼ぶ。治療を中断して固定期間が不足した場合、腱の付着部位が剥離骨折している場合などに発生する。肩関節、顎関節に発生しやすい。また、明らかな外傷がないにも関わらず軽微な力で脱臼を繰り返すものを習慣性脱臼と呼ぶ。関節の弛緩など素因がある場合に発生することがある。
腱を骨溝に固定する筋支帯もしくは靭帯が損傷され、腱が本来の位置から滑り出た状態を腱脱臼(英:dislocation of the tendon、独:Sehnenluxation)という。腓骨筋腱や上腕二頭筋長頭腱に起こることが多いが、まれに後脛骨筋腱にも見られる。腓骨筋腱で起こる症例では長腓骨筋腱のみのものが多く、整復は容易であるが再脱臼を起こしやすい。脱臼発生時には弾発と同時に疼痛が起こる。ほとんどの場合は外傷性だが、腱の通る溝が浅いことも素因になる場合がある。いずれも反復性になるため、手術を要する。
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