- 英
- blood sugar BS
- 同
- 血中グルコース blood glucose、血漿グルコース plasma glucose
- 関
- 糖血症、血中ブドウ糖、糖尿病
- 絶食時:80-100mg/dL (4.4-5.6mM)
- 食後 :150-160mg/dL (8.3-8.9mM)
血糖の指標
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/09/06 12:08:09」(JST)
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血糖値(けっとうち、blood sugar concentration / blood glucose level)とは、血液内のグルコース(ブドウ糖)の濃度である。健常なヒトの場合、空腹時血糖値はおおよそ80-100mg/dL程度であり、食後は若干高い値を示す。
ヒトの血糖値は、血糖値を下げるインスリン、血糖値をあげるグルカゴン、アドレナリン、コルチゾール、成長ホルモンといったホルモンにより、非常に狭い範囲の正常値に保たれている。体内におけるグルコースはエネルギー源として重要である反面、高濃度のグルコースは糖化反応を引き起こし微小血管に障害を与え生体に有害であるため、インスリンなどによりその濃度(血糖)が常に一定範囲に保たれている。
目次
- 1 血糖調節メカニズム
- 2 高血糖
- 3 低血糖
- 3.1 低血糖症の分類
- 3.2 ヒト以外の動物における低血糖症
- 4 関連項目
- 5 出典
血糖調節メカニズム
血糖値は、通常の状態では血糖を下げるインスリンと血糖を上げるグルカゴンの作用によって調節されている。食事後血糖値が上昇すると、グルコースはGLUT2トランスポーターまたはGLUT1トランスポーターを通って膵臓のランゲルハンス島β細胞に流入する。グルコキナーゼ(膵β細胞と肝臓にしか発現しない)の作用によりグルコースがグルコース-6-リン酸になると、細胞内にカルシウムイオンの流入が起こりインスリンが放出される。
インスリンの血糖降下作用は3つの経路による。
- インスリンは肝臓でのグリコーゲン合成を促進し、糖新生とグリコーゲン分解の双方を抑制する。
- インスリンは骨格筋と脂肪組織でのグルコース取り込みを促進する(グルコーストランスポーターの動員による)。脂肪細胞では取り込んだグルコースを中性脂肪に変換する。
- インスリンは膵α細胞に入って直接グルカゴンの産生を抑制する。
高血糖
詳細は「糖尿病」および「高血糖症」を参照
血糖上昇に対する防御機構を、動物はほとんど備えていない。たとえばヒトの場合、糖がたっぷりの清涼飲料水を毎日大量に飲むだけで容易に糖尿病性ケトアシドーシスのような重篤な疾患を起こし得ることが知られており、これをペットボトル症候群と呼ぶこともある。このペットボトル症候群が進行して、糖尿病を発する患者が近年見られる。
血糖値が高くなったとき、それを調節するホルモンはインスリンだけである。このたった1つの調節メカニズムが破綻した場合、糖尿病を発症することになる。低血糖における四重の回避メカニズムとは対照的である。破綻の仕方には大きく分けて2種類ある。
- インスリンの分泌が低下した場合
- インスリンは出ているものの、それによる血糖降下作用がうまくいかなくなった場合(インスリン抵抗性が出現している場合)
尿糖
血糖値がおよそ180mg/dLを越えると、腎臓の尿細管でグルコースの再吸収が追いつかなくなり尿に排出されるようになる。つまり尿糖は糖尿病の原因ではなく結果である。例として、スクロース(ショ糖)180g程度以上を一度に摂取すると健常人であっても一過性の糖尿を生ずる。これは食品成分表のコーラ・缶コーヒー等に示される量を基にすると2.5リットル前後(約1100kcal)に相当する。
低血糖
極度に食事を摂らなかったり、糖尿病の薬を飲みすぎたり、特別な病気があると低血糖症を引き起こしやすい [1][2][3]。また、これらの状態で激しい運動を行った時には、低血糖症がより起こりやすくなる。
人体には低血糖に対し数段階の回避システムが用意されている。
- 血糖値が約80mg/dLを下回ると、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの分泌が極端に低下する。
- 約65-70mg/dLに低下すると、血糖値を上げるホルモンであるグルカゴン、アドレナリンが大量に放出され始める。
- 約60-65mg/dLに低下すると、3番目の血糖値を上げるホルモン、成長ホルモンが放出される。
- 最後に60mg/dLをきるようになると、最後の血糖値を上げるホルモン、コルチゾールの分泌が亢進する。
血糖値が50mg/dLを下回ると、大脳のエネルギー代謝が維持できなくなり、精神症状をおこしはじめ、さらには意識消失を引き起こし、重篤な場合は死に至る。ただ上記のような回避システムが血糖値50mg/dlにまで低下するのを防いでいるため、通常は意識に異常をきたすには至らない。しかしながらアドレナリンが大量放出されることに伴い、交感神経刺激症状が現れる(低血糖発作の症状はこれによる)。例としては、大量の冷や汗、動悸、振戦、譫妄などである。アドレナリン、ノルアドレナリンによる諸症状として、精神症状は、にらんでいるような顔つきになり、暴力をふるったり、奇声をあげたりすることがある。身体症状は心拍数や拍出量の増加、血糖と脂質の上昇、代謝の亢進、手足の冷え、呼吸が浅い、眼の奥が痛む、動悸、頻脈、狭心痛、手足の筋肉の痙攣、失神発作、月経前緊張症、手指の震えなどがある。低血糖症の症状のなかでも、細胞のエネルギー不足で起こる症状は、異常な疲労感、日中でも眠気をもよおす、集中力欠如、めまい、ふらつき、健忘症、光過敏症、甘いもの欲求などがあげられる。
これらの低血糖回避メカニズムは、脳が低血糖状態を検出し、血糖を上げるホルモンを動員するよう命令することで開始される。糖尿病治療中やインスリノーマなどの疾患で低血糖症を頻発すると、あまりに頻繁に低血糖状態を脳が検出するために、ある程度の低血糖症では回避システムが働かなくなってしまう。より正確に言うと、脳内の低血糖を感知する領域では細胞外のグルコースをそのまま取り込むことによって血中グルコース濃度をGLUT1トランスポーターがモニターしており、低血糖を頻繁に起こすとこのGLUT1トランスポーターの転写が低下し調整不足をおこす。50mg/dLをきっても発動しないようになると、低血糖発作をおこさないまま精神症状がはじまる。10-20mg/dLをきっても発動しなくなると、低血糖発作をおこさないまま意識がなくなり死亡することもある。
逆に、管理がうまくいっていない糖尿病患者などにおいては、あまりに高血糖状態が続くため、100mg/dL前後のような普通は低血糖とはみなされないような濃度でも低血糖発作をおこしてしまう。これは脳のGLUT1トランスポーターが調整過剰になっているためである。
治療としては基本的には血糖値が70mg/dL以下のときは40kcalほど摂取することが望ましいとされている。経口摂取が可能な場合はブドウ糖10gやグルコレスキューを1袋、インタクト5個といった糖分補給を行う。もちろん糖分を含む飲み物を摂取しても同じである。意識障害があったり30mg/dL以下の低血糖や経口摂取が不可能な場合は点滴で即急に治療する。5%ブドウ糖液50mLに50%ブドウ糖液20mLを混注して点滴投与する方法がよく知られている。
なお、飢餓などの場合により徐々にグルコース源が枯渇し低血糖となった場合、脂肪酸のβ酸化によるアセチルCoAから肝臓で生成されたケトン体が脳関門を通過することができ[4][5][6]、脳関門通過後に再度アセチルCoAに戻されて脳細胞のミトコンドリアのTCAサイクルでエネルギーとして利用される[7][8]。
低血糖症の分類
低血糖症は、空腹時低血糖と食後低血糖に大きく分けられ、その分類法は診断に大いに有用である。
空腹時低血糖
- 症状
- ウィップルの三徴(Whipple's triad)を呈する。
- 発作時低血糖(50mg/dL以下)
- 中枢神経症状を伴う低血糖発作
- ブドウ糖の静脈注射による急速な回復
- 症状は、空腹・欠伸・悪心で始まり、倦怠感が強くなり、やがて発汗などの交感神経症状が現れる。さらに低血糖が進行すると、異常行動が出現し、深昏睡に至る。
- 代表的な原因
- 糖尿病治療薬、ペンタミジン、キニーネなどによる薬剤性
- 副腎不全(副腎皮質ホルモン剤の急な中止など)
- インスリン産生腫瘍(インスリノーマなど)
- 肝細胞癌はそれそのものがインスリン様物質(IGF-II)を産生し、低血糖症の原因となることがある(腫瘍随伴症候群)
- 肝不全
- 重篤な慢性疾患(癌など何でも)
- 自己免疫性低血糖(インスリン・インスリン受容体・膵島β細胞に対する自己抗体による)
- 緊急対応
- 治療は緊急を要する。糖質の多い飲食をさせたり、50%ブドウ糖液を20-40mL静注することで多くは回復する。それでも意識が回復しない時は、ヒドロコルチゾンを静注。それでもまだ意識が回復しない時は、マンニトールを静注する。
- 意識障害患者には、血糖を確認することなく時間のかかるCT検査などをすることは禁忌である。つまり意識障害の原因が低血糖ではないことを先に除外することが基本とされている。
食後低血糖
胃切除後、ダンピング症候群などでみられる。また、糖尿病のごく早期には、あまりに高い血糖値を下げようと大量にインスリンが分泌され、かえって低血糖症をひきおこすことがまれにある。
ヒト以外の動物における低血糖症
- イヌではインスリノーマを原因とすることが多く、神経症状、虚弱、失明を引き起こす。また、キシリトールの摂取により発症する[9]。
- ブタでは出生直後は糖新生系酵素が不完全であるために低血糖を引き起こしやすく、神経症状を示す。
関連項目
- 糖尿病
- ヘモグロビンA1c
- グリコアルブミン
- 糖新生
出典
- ^ メルクマニュアル家庭版 低血糖
- ^ メルクマニュアル 低血糖症
- ^ 内科診断検査アクセス 低血糖症 関根信夫
- ^ 太田成男 「体が若くなる技術」Q&A Q4
- ^ ガイトン臨床生理学 医学書院
- ^ 糖尿病の新常識 糖質ゼロの食事術 P.105~ 釜池豊秋著
- ^ “ケトン体合成”. 講義資料. 福岡大学機能生物化学研究室. 2011年10月18日閲覧。
- ^ イラストレイテッドハーパー・生化学 丸善 P.127,P.161~
- ^ 犬のキシリトール中毒について公益社団法人 日本獣医学会
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- 生体信号の情報処理のためのプラットフォームについて
- 長嶋 洋一
- 情報処理学会研究報告. [音楽情報科学] 2015-MUS-106(14), 1-6, 2015-02-23
- … 場した新たなプラットフォームについて検討するとともに,新・筋電センサ回路を実装した生体情報処理システムについて紹介する.検討の対象とした生体情報は,血流/脈拍・脳波・心電・呼吸・体温・血圧・姿勢・皮膚電気抵抗・血糖値・筋電など約 10 種類,マイコン・プラットフォームは AKI-H8・Arduino・Propeller・Raspberry Pi・mbed の 5 種類である.実装の詳細や追試可能なサンプルコードも全て雑誌記事と Web にて公開した. …
- NAID 110009877966
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- 長嶋 洋一
- 情報処理学会研究報告. EC, エンタテインメントコンピューティング 2015-EC-35(14), 1-6, 2015-02-23
- … 場した新たなプラットフォームについて検討するとともに,新・筋電センサ回路を実装した生体情報処理システムについて紹介する.検討の対象とした生体情報は,血流/脈拍・脳波・心電・呼吸・体温・血圧・姿勢・皮膚電気抵抗・血糖値・筋電など約 10 種類,マイコン・プラットフォームは AKI-H8・Arduino・Propeller・Raspberry Pi・mbed の 5 種類である.実装の詳細や追試可能なサンプルコードも全て雑誌記事と Web にて公開した. …
- NAID 110009877940
- 病気の自覚がなく、食事療法を実践できずに血糖コントロールが悪化していく患者さん (特集 患者さんのピンチをチャンスに変える! ナースにできる糖尿病の食事指導 : 患者指導・院内勉強会でそのまま使えるクイズ・症例つき) -- (ピンチをチャンスに! 逆転の食事指導術)
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- 次の文を読み、65-67の問いに答えよ。
- 45歳の男性。めまい、嘔気および嘔吐を主訴に来院した。
- 現病歴 24歳から毎年健康診断を受けていたが、異常を指摘されたことはなかった。直近では6月14日に健康診断を受け、空腹時血糖98mg/dl、HbA1c5.1%であった。7月25日ころから軽い咳が出現し、7月30日に突然、口渇、多飲および多尿が出現した。8月1日にめまいが出現し、熱中症ではないかと自己判断して、スポーツ飲料を4リットル飲んだ。その夜から嘔気と嘔吐とが出現し、8月2日に受診した。
- 既往歴 5年前に痔瘻の手術。
- 生活歴 喫煙は20歳から15本/日を17年間。飲酒は機会飲酒。
- 家族歴 父が高血圧症、高尿酸血症および糖尿病で治療中である。母は胆嚢摘出術を受けている。
- 現症 意識は清明。身長171cm、体重58kg。体温36.8℃。呼吸数22/分。脈拍64/分、整。血圧102/68mmHg。甲状腺の腰大を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。
- 検査所見 尿所見:蛋白(-)、糖3+、ケトン体2+。血液所見:赤血球 468万、Hb 13.9g/dl、Ht 42%、白血球 12,300(好中球75%、好酸球1%、好塩基球1%、単球6%、リンパ球17%)、血小板27万。血液生化学所見:血糖 610mg/dl、HbA1c 5.8%(基準4.3-5.8)、総蛋白 7.5g/dl、アルブミン 3.9g/dl、尿素窒素 12mg/dl、クレアチニン 0.6mg/dl、尿酸 6.9mg/dL、総コレステロール 246mg/dl、トリグリセリド 190mg/dl、総ビリルビン 0.9mg/dl、AST 10IU/l ALT 16IU/l、LD 177IU/l(基準176-353)、ALP 174IU/l(基準115-359)、アミラーゼ 950IU/l(基準37-160)、Na 131mEq/l、K 4.4mEq/l、Cl 97mEq/l。CRP 1.0mg/dl。動脈血ガス分析(自発呼吸、room air):pH 7.25、PaCO2 28Torr、PaO2 102Torr、HCO3- 12mEq/l。
[正答]
※国試ナビ4※ [105G066]←[国試_105]→[105G068]
[★]
- 以下の文を読み、62~64の問いに答えよ。
- 56歳の男性。心窩部痛を主訴に妻に伴われて来院した。
- 現病歴:昨晩、夕食後に心窩部痛と悪心とを自覚した。心窩部痛は次第に増強し、背部痛も伴うようになった。
- 既往歴:30歳代から肝機能障害を指摘されている。
- 生活歴:飲酒は日本酒3合/日を30年間。喫煙は20本/日を36年間。
- 家族歴:父親が胃癌、母親が高血圧。
- 現症:意識はやや混濁。身長168cm、体重58kg。体温37.8℃。呼吸数40/分、脈拍120/分、整。血圧100/56mmHg。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部はやや膨隆して、上腹部に圧痛と抵抗とを認める。肝・脾を触知しない。下肢に浮腫を認めない。
- 検査所見: 尿所見:蛋白(-)、糖1+。血液所見:赤血球450万、Hb12.6g/dl、Ht39%、白血球18,800(杆状核好中球61%、分葉核好中球10%、好酸球2%、好塩基球2%、単球5%、リンパ球20%)、血小板6.9万。血液生化学所見:HbA1c7.6%、総蛋白6.0g/dl、アルブミン3.2g/dl、クレアチニン2.8mg/dl、尿酸7.8mg/dl、総コレステロール180mg/dl、トリグリセリド140mg/dl、総ビリルビン1.2mg/dl、直接ビリルビン0.3mg/dl、AST130IU/l、ALT150IU/l、ALP380IU/l(基準115~359)、γ-GTP130IU/l(基準8~50)、アミラーゼ2,400IU/l(基準37~160)、Na142mEq/l、K4.0mEq/l、Cl 112mEq/l、P3.0mg/dl。動脈血ガス分析(自発呼吸、room air):pH7.41、HCO3- 26mEq/l。免疫学所見:CRP3.2mg/dl、CEA2.5ng//ml(基準5以下)、CA19-918U/ml(基準37以下)、CA125 120U/ml(基準35以下)。
[正答]
※国試ナビ4※ [103G062]←[国試_103]→[103G064]
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- 78歳の男性。意識障害のため搬入された。
- 現病歴: 7日前から上腹部の鈍痛と38.3℃の発熱とがみられていた。 6日前にかかりつけの診療所を受診し、解熱薬を処方された。 5日前、症状が軽快したため、薬の内服を中止した。 2日前から再び右上腹部痛を自覚し、 37.6℃の発熱と全身倦怠感とがみられた。昨日から食欲低下と悪寒とを伴うようになったため、中断していた解熱薬の内服を再開した。昨日の時点で、尿の色が濃いことに気付いていた。本日、起床後に悪寒と悪心とが出現し、意識がもうろうとした状態となった。家族の問いかけに対してつじつまの合わない返答がみられたため、家族が救急車を要請した。
- 既往歴: 7年前から高血圧症に対しアンジオテンシン変換酵素阻害薬を内服中。3年前に腹部超音波検査で3、 4個の胆石を指摘された。
- 生活歴:喫煙は15本/日を58年間。飲酒は日本酒2合/日を58年間。
- 家族歴 :父親が脳出血で死亡。
- 現 症:意識レベルはJCS II-10。身長164cm、体重59kg。体温39.0℃。心拍数112/分、整。血圧82/58mmHg。呼吸数24/分。 SpO2 97%(3l/分酸素投与下)。眼球結膜に黄染を認める。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部はやや膨隆し、軟で、肝・脾を触知しない。右季肋部を中心に圧痛を認める。
- この患者の循環状態の重症度を評価するための検査で適切なのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [106F026]←[国試_106]→[106F028]
[★]
- 次の文を読み、 26、 27の問いに答えよ。
- 88歳の男性。意識障害のため搬入された。
- 現病歴:元来、軽度の物忘れと難聴とがあるが、 1人で杖をついて散歩をするなどして元気に過ごしていた。数日前から風邪気味となり、食欲が徐々に低下した。本日、ぐったりして言葉がはっきりしなくなったため、同居している長男が救急車を要請した。
- 既往歴: 68歳時に糖尿病と高血圧症とを指摘された。自宅近くの診療所に通院して、 10種類の薬剤を処方されているが、飲み忘れや飲み間違いが多いという。
- 生活歴:長男家族と同居。
- 家族歴:長男が高血圧症で加療中。
- 現 症:意識レベルはJSCⅡ-10。体温37.3℃。脈拍104/分、整。血圧98/60mmHg。呼吸数28/分。 SpO2 96%(2l/分酸素投与下)。発汗が著明である。眼瞼結膜に貧血を認めない。眼球結膜に黄染を認めない。甲状腺と頸部リンパ節とを触知しない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。四肢に浮腫を認めない。右上下肢に軽度の筋力低下を認める。膝蓋腱反射に左右差を認めない。病的反射を認めない。
- 最初に行うべき検査はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [106C025]←[国試_106]→[106C027]
[★]
- 79歳の女性。上腕から背中の痛みとこわばりを主訴に来院した。
- 現病歴:2週間前に、両側上腕から背中にかけての痛みとこわばりが出現した。1週間前から右側の拍動性の頭痛を自覚している。また、夕方から夜にかけて 38℃台の発熱があった。起床時に背中のこわばりがひどく、寝返りができないため受診した。週間で体重が 1.5kg減少した。悪心、嘔吐はなく、四肢のしびれや脱力はない。
- 既往歴:高血圧症で内服治療中。片頭痛の既往はない。
- 生活歴:独居生活。喫煙歴と飲酒歴はない。
- 現症:意識は清明。体温 38.9℃。脈拍 104/分、整。血圧 142/80mmHg。呼吸数 14/分。眼瞼結膜は貧血様である。右側頭部に索状の腫脹と圧痛を認めるが、皮疹は認めない。項部硬直はなく、頸部リンパ節を触知しない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。圧痛や腫瘤を認めない。ばち指、Osler結節および下腿浮腫を認めない。両側の上腕に把握痛を認める。関節に腫脹と圧痛を認めない。
- 精査の結果、副腎皮質ステロイドの内服加療を行うこととした。治療に伴い注意すべき検査項目はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [113B042]←[国試_113]→[113B044]
[★]
- 次の文を読み、63~65の問いに答えよ。
- 25歳の男性。気分不良を主訴に来院した。
- 現病歴:官庁街近くのレストランで昼食をとっていたところ「液体のようなものがまかれた」という声がして、レストラン内で数人が倒れた。気分が悪くなったためレストランから飛び出し、徒歩で近くの病院を受診した。会話は可能であり、目の前が暗く感じ、鼻水が止まらないと訴えている。
- 患者を救急室で診察し以下の情報を得た。
- 既往歴:幼少時からアレルギー性鼻炎がある。
- 生活歴:独身。1人暮らし。会社員。喫煙は20本/日を5年間。飲酒はビール500ml/日を5年間。
- 家族歴:母親が高血圧症で内服加療中。
- 現症:意識は清明。頭痛と悪心とを訴えている。体温36.8℃。脈拍108/分、整。血圧140/90mmHg。呼吸数24/分。SpO2 92%(room air)。瞳孔は高度に縮瞳し、対光反射は消失している。鼻汁、流涎および発汗がみられる。四肢に運動麻痺を認めない。腱反射の異常を認めない。呼吸音に異常を認めない。心雑音を聴取しない。
- この患者で予想される血液生化学所見はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [107G063]←[国試_107]→[107G065]
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- 生後11日の新生児女児。2日前から嘔吐を繰り返し哺乳力が低下したため、両親に連れられて来院した。在胎 39週、出生体重 3,180g、Apgarスコア 9点(1分)、9点(5分)で出生した。完全母乳栄養であるが、来院の3日前までの哺乳力は良好で、1日2回の黄色顆粒便を排泄していた。出生した産科診療所から新生児マススクリーニングで異常を認めたと本日、家族が連絡を受けた。来院時は活気がなく、泣き声は微弱であった。身長 52cm、体重 3,230g。体温 36.3℃。心拍数 160/分、整。血圧 60/30mmHg。呼吸数 50/分。SpO2 96%(room air)。毛細血管再充満時間 4秒と延長している。全身の色素沈着と軽度の黄染とを認める。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、右肋骨弓下に肝を1.5cm触知するが、脾は触知しない。腸雑音に異常を認めない。大泉門は径1.5cmでやや陥凹している。陰核の肥大を認める。診断のため血液検査を施行することとなった。
- 異常高値を呈する可能性の高い検査項目はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [113A031]←[国試_113]→[113A033]
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- 1歳の男児。今朝39℃の発熱があり、けいれんをきたしたので来院した。
- 現病歴 : 2、3日前から咳と鼻汁とがみられている。けいれんは全身性、強直性であり、2~3分で消失した。哺乳力は良好で、下痢と嘔吐とはない。
- 既往歴 : 周産期に異常はなく、成長・発達は正常である。けいれんの既往はない。
- 現症 : 意識は清明。身長75cm、体重10kg。体温39℃。脈拍140/分、整。咽頭は発赤している。大泉門は平坦で、項部硬直はない。胸部に心雑音はなく、肺野にラ音を聴取しない。腹部は平坦で、肝・脾は触知しない。深部(四肢腱)反射は正常である。皮膚の緊張度は正常である。
- 検査所見 : 尿所見:蛋白(-)、糖(-)。血液所見:赤血球450万、Hb13.3g/dl、Ht40%、白血球11,000(桿状核好中球4%、分葉核好中球56%、好酸球2%、単球3%、リンパ球35%)、血小板31万。血清生化学所見:血糖83mg/dl、総蛋白7.0g/dl、尿素窒素9mg/dl、Na143mEq/l、K4.0mEq/l、Cl104mEq/l、Ca8.9mg/dl。
[正答]
※国試ナビ4※ [097F042]←[国試_097]→[097F044]
[★]
- 次の文を読み、26、27の問いに答えよ。
- 32歳の男性。激しい頭痛と意識障害のため救急車で搬入された。
- 現病歴:1週間前から咽頭痛と38℃台の発熱とを自覚していたが、市販薬を内服して様子をみていた。昨日から頭部全体の頭痛を訴えていたが、今朝になって呼びかけに対する反応が鈍くなったため家族が救急車を要請した。
- 既往歴:3年前に交通事故で下顎骨骨折。歯科治療中。
- 生活歴:喫煙は20本/日を12年間。飲酒はビール1,000mL/日を週5回程度で12年間。
- 家族歴:特記すべきことはない。
- 現症:眼を閉じているが呼びかけると開眼する。簡単な質問には返答できるが内容が混乱している。手の挙上など簡単な命令には応じる。体温 40.1℃。心拍数 136/分、整。血圧 126/72mmHg。SpO2 98%(マスク5L/分酸素投与下)。項部硬直とKernig徴候を認める。その他の神経学的所見に異常を認めない。
- 脳脊髄液検査を行うこととした。鑑別診断のために脳脊髄液検査の結果と対比すべき血液検査の項目はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [111C026]←[国試_111]→[111C028]
[★]
- 次の文を読み、47、48の問いに答えよ。
- 54歳の男性。意識障害を主訴に来院した。
- 現病歴: 5年前に1型糖尿病と診断され、インスリン治療を開始した。1週前から38℃台の発熱と咽頭痛とがあり、2日前食欲低下と嘔気とを認めたためインスリン注射を自己中止した。今朝、意識がもうろうとしているところを家族に気付かれた。
- 家族歴: 特記すべきことはない。
- 現症: 意識はJCSII-20。身長176cm、体重60kg。体温37.3℃。呼吸数30/分。脈拍92/分、整。血圧124/76mmHg。貧血と黄疸とを認めない。舌は乾燥している。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾は触知しない。 検査所見:尿所見:蛋白(-)、糖4+、ケトン体3+。血糖は簡易測定器で測定可能範囲を超える異常高値である。
[正答]
※国試ナビ4※ [101D046]←[国試_101]→[101D048]
[★]
- 76歳の男性。繰り返す数秒間の意識消失のため救急車で搬入された。昨日の夕方に一過性の意識消失を自覚した。今朝から30分に1回程度の間隔で数秒間の意識消失を繰り返すため、家族が救急車を要請した。動悸を自覚するのとほぼ同時に意識消失するという。10年前から高血圧症、うつ病、胃潰瘍および便秘症のためサイアザイド系降圧利尿薬、カルシウム拮抗薬、四環系抗うつ薬、ヒスタミンH2受容体拮抗薬、甘草を含む漢方薬および刺激性の下剤を内服している。モニター心電図で意識消失に一致する10秒程度の多形性心室頻拍を認め、このときは脈拍を触知しない。12誘導心電図(別冊No. 22)を別に示す。
- 治療方針の決定のため、まず行うべき検査はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [111I068]←[国試_111]→[111I070]
[★]
- 45歳の男性。意識障害のため搬入された。身長175cm、体重95kg。体温35.7℃。脈拍112/分、整。血圧 110/70mmHg。尿所見:蛋白(±)、糖(-)。血液所見:赤血球650万、Hb 17.5g/dl、Ht 56%、白血球 13,000、血小板 10万。血液生化学所見:血糖 40mg/dl、HbA1c 10.0%、尿素窒素 30mg/dl、クレアチニン 1.1mg/dl、尿酸 8.0mg/dl、総コレステロール 250mg/dl、トリグリセリド 300mg/dl、Na 145mEq/l、K 5.2mEq/l、Cl 105mEq/l。CRP 3.0mg/dl。動脈血ガス分析(自発呼吸、room air):pH 7.50、PaO2 106 Torr、PaCO2 34 Torr、HCO3- 20mEq/l。
[正答]
C
- a.ヘモグロビン:≦ 5g/dl、≧17 g/dl
- b.血小板:≦ 3万、≧100万
- c.血糖:≦40 mg/dl、≧350 mg/dl
- d.カリウム:≧6.0 mEq/l(外来)、≧7.0 mEq/l(入院)
- e.pH:≦7.2、≧7.6
※国試ナビ4※ [103F017]←[国試_103]→[103F019]
[★]
- 次の文を読み、33、34の問いに答えよ。
- 26歳の1回経妊、未産婦。今朝、多量の性器出血と下腹部痛とが突然出現したため来院した。
- 現病歴 : 2か月前に経ロ避妊薬の服用を中止し、消退出血があった。その後、持続する性器出血があったが、自然に消失した。
- 現症 : 意識は清明。身長156cm、体重50㎏。体温36.5℃。臥位で、脈拍68/分、整。血圧104/76mmHg。腹部はほぼ平坦であるが、下腹部に圧痛を認める。双合診で子宮の大きさは鷲卵大、軟。両側付属器に異常を認めない。膣鏡診で外子宮ロから多量の出血を認める。
- 検査所見 : 血液所見:赤血球380万、Hb11.2g/dl、Ht35%、白血球6,300、血小板19万。
- a. 尿沈渣
- b. 血糖測定
- c. 血清電解質測定
- d. 尿妊娠反応
- e. 腹部エックス線単純撮影
[正答]
※国試ナビ4※ [097F032]←[国試_097]→[097F034]
[★]
- 39歳の女性。全身倦怠感を主訴に来院した。 10日前から倦怠感が出現し、増強してきたという。 35歳の第 1子分娩時に輸血歴がある。分娩後も無月経が持続している。 2か月前に、職場での健康診断を契機に甲状腺機能低下症と診断され、自宅近くの診療所でサイロキシン補充療法が開始されている。家族歴に特記すべきことはない。身長 154 cm、体重 48 kg。脈拍 76/分、整。血圧 104/70 mmHg。顔面の表情はやや乏しく、顔面を含め全身の皮膚の色調は白い。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。甲状腺腫を触知しない。浮腫を認めない。尿所見:蛋白 (-)、糖(-)。
- 異常がみられる可能性が高いのはどれか。3つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [108D058]←[国試_108]→[108D060]
[★]
- 7歳の男児。腹痛、頻回の嘔吐および全身倦怠感を主訴に母親に連れられて来院した。この数日間、運動会の練習があり易疲労感を訴えていた。昨夜はほとんど食事をとらずに就寝した。今朝から腹痛と頻回の嘔吐とが出現し、徐々に元気がなくなり、表情に乏しく歩行もできなくなったため受診した。5歳ころから今回と同様の経過を数回繰り返している。身長 122cm、体重 18kg。体温 36.4℃。脈拍 92/分、整。顔面は蒼白。咽頭に発赤を認めない。呼気に酸臭を認める。心音と呼吸音とに異常を認めない。皮膚のツルゴールは低下している。
- 検査で高値を示すのはどれか。
- a 血糖
- b 血清Na
- c 血清Ca
- d 尿ケトン体
- e 血清総ビリルビン
[正答]
※国試ナビ4※ [110I055]←[国試_110]→[110I057]
[★]
- 生後40日の乳児。昨日から不機嫌となり、今朝吐血したため来院した。在胎40週、自然分娩、体重3,040gで出生した。Apgarスコア9点(1分)、10点(5分)。母乳栄養である。今朝2、3回けいれん様に体をふるわせた。身長52cm、体重3,850g,大泉門はやや膨隆している。痛み刺激への反応が少し鈍い。心雑音はなく、ラ音も聴取しない。腹部は軽度膨隆しているが、腫瘤は触れない。肝を右肋骨弓下に1cm触知する。脾は触れない。膝蓋腱反射は亢進し、Babinski徴候は陽性である。
- この患児で低値が考えられるのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [096A034]←[国試_096]→[096A036]
[★]
- 32歳の女性。手指のしびれ感とつっぱり感とを主訴に来院した。症状は数年前からあったというが、本日、いつも以上に強くなったため受診した。バイタルサイン測定時の写真 (別冊 No.19A)と頭部単純 CT(別冊 No.19B)とを別に示す。
- 異常所見が予想されるのはどれか。
- a 血清Ca
- b 血清Cl
- c 血清Na
- d 血糖
- e 脳波
[正答]
※国試ナビ4※ [108I054]←[国試_108]→[108I056]
[★]
- 出生直後の新生児。体重2,700g。Apgarスコアは1分後6点。呼吸数40/分。心拍数132/分、整。全身にチアノーゼを認める。外表奇形を認めない。直ちに100%酸素の投与を開始したが全身のチアノーゼは改善しない。胸部エックス線写真で肺野に異常を認めない。次に行う検査はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [100F002]←[国試_100]→[100F004]
[★]
- 中年の男性。意識がないため搬入された。呼名に反応はない。呼吸は規則的。脈拍108/分、整。血圧160/94mmHg。頸動脈と橈骨動脈とは触知可能。四肢体幹の皮膚には冷感と著明な湿潤とがある。浮腫は認めない。まず行う検査はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [102C021]←[国試_102]→[102C023]
[★]
- 血液検査項目と抗凝固薬の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [101B085]←[国試_101]→[101B087]
[★]
- 英
- hypoglycemics
- 同
- hypoglycemic agent、antidiabetic agent、antidiabetic drug、antidiabetics、glucose-lowering agent、hypoglycemic、hypoglycemic drug、hypoglycemics
- 関
- [[]]
投稿記事
k氏より
インスリンの抽出は大変意図的に行われたのに対し、スルフォニルウレア薬(SU)は偶然に見つかりました。で、1950年代にはじめに二型糖尿病の患者に使われるようになりました。いまでは20種類くらいのSUが広く世界で使われています。
1997にはメグリチニドが臨床適用されました。食後高血糖の治療薬としてはじめて使用された薬です。
メタフォルミンというビグアナイド薬(BG)は、ヨーロッパで広く使われていましたが、1995年にアメリカでも認可されました。
チアゾリジン1997年に市場導入され、二番目にメジャーなインスリン刺激薬として使用されています。この種類の薬には、広汎な肝障害を起こしにくく、世界中で使われています。
スルフォニルウレア薬 SU薬
膵臓のβ細胞の刺激によって、インスリンを放出させ、血糖値を下げます。
治療が長引くと、インスリン分泌というSUのβ細胞刺激性の効果が薄れてきますが、β細胞上のSU受容体のダウンレギュレーションによるものです。また、SUはソマトスタチンの放出を刺激します。ソマトスタチンはグルカゴン分泌を抑制しているので、これも関係SUの糖を下げる効果と関係しています。
SUはATP感受性Kチャンネルを抑制します。Kレベルが下がると、まく表面における、脱分極を促し、電位依存性カルシウムチャンネルを通じたカルシウムイオンの流入を促進します。
SUには無視できない膵臓外作用があるという議論があります。確かにありうべきことですが、2型糖尿病の患者の治療においては、それほど重要なことではないようです。
SU薬はそれぞれが似たような作用スペクトラムを持っているので、薬物動態的な特性がここの薬を区別する手がかりです。腸管からのSU薬の吸収の割合は薬によって違いますが、食物や、高血糖は、この吸収を抑制します。高血糖はそれ自身、腸管の運動を抑制するので、ほかの薬の吸収も阻害します。血漿濃度が効果的な値にまで達する時間を考えると、半減期の短いSUは、食前三十分に投与するのが適切です。SU薬は90から99パーセントくらい血中たんぱく質と結合し、特にアルブミンと結合します。
第一世代のSUは半減期や分布において、大きく違っています。この半減期や作用時間の不一致の理由はいまだはっきりしていません。
SUはすべて肝臓で代謝を受け、尿中に排泄されます。なので、肝不全、腎不全患者には要注意で処方します。
めったにありませんが、第一世代服用患者では、4パーセントの割合でおきます。第二世代ではもっと少ないでしょう。低血糖による昏睡がしばしば問題になります。腎不全や肝不全がある高齢者の患者でおきやすいです。
重症の低血糖は脳血管障害も起こしうる。急性の神経障害が見つかった高齢患者では血中グルコースレベルを測るのが大事です。半減期の長いSUもあるので、24から48時間のグルコースを輸液します。
第一世代は多くの薬物と相互作用を持っています。
ほかに、吐き気嘔吐、胆汁うっ滞性黄疸、脱顆粒球症、再生不良性・溶血性貧血、全身性のアレルギー症状があります。
SUが心血管障害による死亡率を上げるのかについては議論の余地あり。
SUは、食事療法だけでは十分なコントロールを得られない2型糖尿病患者の血糖コントロールに用いられます。禁忌はtype 1 DM(diabetes mellitus:糖尿病)、妊婦、授乳中の患者、腎障害や肝障害の患者です。
普通の患者なら五割から八割くらい、経口の糖尿病治療薬が効きます。インスリン療法が必要になる患者もいます。
トルブタマイドの一日量は500ミリグラムで、3000ミリグラムが最大の許容量です。SUの治療成績の評価は患者の様子を頻繁に観察しながら、行います。
SUとインスリンの併用療法はtype 1, type 2 両方の糖尿病で用いられていますが、βセルの残存能力がないとうまくいきません。
レパグリニドはメグリチニドクラスの経口インスリン分泌促進物質です。化学構造上、SUとは異なっており、安息香酸から分離されたものです。
SU薬と同様にレパグリニドは膵臓βセルにおけるATP依存性Kチャンネルを閉じることによりインスリン分泌を促進します。AEもSU薬と同様、低血糖です。
Dふぇにるアラニンから分離された薬。レパグリニドよりもSEとして低血糖が認められづらいです。
メトフォルミンとフェノフォルミンは1957年に市場導入され、ブフォルミンが1958年に導入されました。ブフォルミンは使用が制限されていますが、前者二つは広く使われています。フェノフォルミンは1970年代に乳酸アシドーシスのAEによって市場から姿を消しました。メトフォルミンはそのようなAEは少なく、ヨーロッパカナダで広く使われています。アメリカでは1995年に使用可能に。メトフォルミンは単独かSUと併用して使われます。
ものの言い方によると、メトフォルミンは抗高血糖であって、血糖を下げる薬ではありません。膵臓からのインスリン放出は促さないので、どんな大容量でも低血糖は起こしません。グルカゴン・コルチゾール・成長ホルモン・ソマトスタチンにも影響なし。肝での糖新生を抑制したり、筋や脂肪におけるインスリンの働きを増すことで、血糖を押さえます。
小腸から吸収。安定な構造で、血中の蛋白と結合しないで、そのまま尿中に排泄。半減期は二時間。2.5グラムを食事と一緒に飲むのがアメリカで最もお勧めの最大用量。
メトフォルミンは腎不全の患者には投与しないこと。肝障害や、乳酸アシドーシスの既往、薬物治療中の心不全、低酸素性の慢性肺疾患なども合併症として挙げられる。乳酸アシドーシスはしかしながら、めちゃくちゃまれである。1000人年(たとえば100人いたら、10年のうちにという意味の単位。または1000人いたら1年につき、ということ。)につき0.1という割合。
メトフォルミンの急性のAEは患者の20パーセントに見られ、下痢、腹部不快感、吐き気、金属の味、食欲不振などです。メタフォルミンを飲んでいる間はビタミンB12や葉酸のきゅうしゅうが 落ちています。カルシウムをサプリで取ると、ビタミンB12の吸収が改善されます。
血中乳酸濃度が3ミリMに達するとか、腎不全・肝不全の兆候が見られたら、メタフォルミンは中止しましょう。
PPARγに効く。(ペルオキシソーム・プロライファレーター・アクチベイティッド・受容体、つまりペルオキシソーム増殖活性受容体みたいな。)PPARγに結合して、インスリン反応性をまして、炭水化物とか、脂質の代謝を調整します。
ロジグリタゾンとピオグリタゾンは一日一度。チアゾリジンは肝にて代謝され、腎不全のある患者にも投与できますが、活動性の肝疾患があるときや肝臓のトランスアミナーゼが上昇しているときは、使用しないこと。
ロジグリタゾンはCYP2C8で代謝されますがピオグリタゾンはCYP3A4とCYP2C8で代謝されます。ほかの薬との相互作用や、チアゾリジン同士の相互作用はいまだ報告されていませんが、研究中です。
ピオグリタゾンとロジグリタゾンは肝毒性とはめったに関係しませんが、肝機能をモニターする必要があります。心不全のある患者はまずそちらを治療してから。
αGIは小腸の刷子縁におけるαグルコシダーゼの働きを阻害することによって、でんぷん・デキストリン・ダイサッカリダーゼの吸収を抑制します。
インスリンを増やす作用はないので、低血糖もおきません。吸収がよくない薬なので、食事の開始と一緒に飲むとよいです。
アカルボースとミグリトールは食後高血糖の抑制に使われます。
αGIは用量依存性に、消化不良・ガス膨満・下痢などをきたします。αGIとインスリンを併用中に低血糖症状が出たら、、グルコースを補充します。
経口から、グルコースが静脈を通ると、インスリンが上がることがわかっていました。消化管の上部からはGIP、消化管下部からはGLP1というホルモンが出ていて、糖依存性のインスリン放出を促していることがわかりました。これらのホルモンはインクレチンといわれています。この二つのホルモンは別の働き方でインスリンの放出を促進します。GIPはtype 2 DMではインスリン分泌を促進する能力がほとんど失われています。一方でGLP1は糖依存性のインスリン分泌を強く促しています。つまりtype 2 DMの治療ではGIPをターゲットにすればよいということになります。GLPはグルカゴンを抑制し。空腹感を押さえ、食欲を抑えます。体重減少も実現できます。この長所を相殺するように、GLP1は迅速にDPPIV(ヂペプチジルペプチダーゼ4エンザイム)によって負活化されます。つまり、GLP1を治療に使うなら、連続的に体に入れなければなりません。GLP1受容体のアゴニストが研究され、これはDPPIVにたいして抵抗性があります。
そのほかのGLP1療法のアプローチに仕方としては、DPPIVプロテアーゼの不活性化で、それによってGLP1の循環量を増やそうとするものです。type 2 DM治療に新しい薬がでるかもしれないですね。
[★]
- ラ
- anorexia nervosa, AN
- 同
- 神経性食欲不振症、神経性無食欲症
- also see KPS. 798
概念
- 器質的・特定の精神的疾患がないのに、拒食や過食などの食行動の異常、極端なやせ、無月経など種々の身体・精神症状をきたす病態。
- 身体像(ボディイメージ)の障害、やせ願望や肥満恐怖などによる。
病型
- 制限型:少食でやせを維持
- むちゃ食い/排出型:過食しながら自己嘔吐や下剤・利尿薬の乱用でやせを維持
病因
- 1. 遺伝的要因
- 2. 環境要因(人格的脆弱性、生活環境、社会文化的要因)など → ストレスを適切に処理できないために発症
- 性格:内向的、自己中心的、小心、完全癖、潔癖症など
- 生活環境:家庭内の葛藤、学業や人間関係の悩み
- 病態的には、心理的ストレスが大脳皮質を介して視床下部摂食中枢のコルチコトロピン放出ホルモン系を活性化することなどにより、食欲抑制や性機能障害をきたす。
疫学
- 1980年代より増加傾向。日本の有病率は0.4-1.0%(摂食異常調査表による調査)(IMD.922)
- 12-25歳に好発(YN.D-166)。10代後半-20代前半、15歳以下の発症例も増加傾向(IMD.922)。
- 99%が女性(YN.D-166)。男性例は5%以下(IMD.922)
症状
- やせ、無月経
- 病識なし、活動性亢進、むちゃ食い/排出型の場合は自己嘔吐や下剤・利尿薬乱用の習慣化
- 飢餓症候群
- 生活すべてが食とやせの維持に振り回され、ついには飢餓に伴う精神症状が出現
- 集中力・判断力の低下、抑うつ、不安、過敏性、不眠、自傷行為など
身体所見(IMD.922, YN.D-166)
- 低栄養だが、性ホルモンは比較的維持。
- 低血圧、低体温、便秘、徐脈 ← 自律神経失調
- (背中)うぶ毛密生、貧血、浮腫、肝機能障害、
- カロチン症
- 循環障害による皮膚色の変化や凍瘡、末梢神経麻痺
- やせに比して乳房は比較的保たれ、腋毛・恥毛は脱落しないことが多い。
検査
- 白血球数減少、貧血、血小板減少
- 肝機能障害、低血糖、低蛋白血症
- (むちゃ食い/排出型)低Na・低K血症、代謝性アルカローシスや高アミラーゼ血症 ← 低K血症(循環血漿量減少 → RAA系の亢進 → アルドステロンによるKの排出)
- 血清コレステロール値:(軽症)上昇、(重症)低下
- 骨密度の低下
- 甲状腺:T4:→/↑、T3:↓、reverse T3:↑(低T3症候群)。
- 成長ホルモン:↑、インスリン様成長因子-I(IGF-I):↓ ← 末梢でIGF-Iの産生が低下、負のフィードバックにより成長ホルモンが増加
- ACTH、コルチゾール:↑
- 卵胞刺激ホルモン(FSH):→/↑
- 黄体ホルモン(LH):↓
診断
診断基準(厚生省特定疾患・神経性食欲不振症調査研究班, 1990年)
- (2) 標準体重の -20%以上のやせ
- (3) 食行動の異常(不食、大食、隠れ食いなど)
- (4) 体重や体型についての歪んだ認識(体重増加に対する極端な恐怖など)
- (1) 発症年齢:30歳以下
- (5) (女性ならば)無月経
- (6) やせの原因と考えられる器質性疾患がない
- やせや無月経をきたす器質性疾患:視床下部腫瘍、下垂体機能低下症、糖尿病、慢性膵炎、甲状腺機能亢進症、炎症性腸疾患、結核などの感染症、悪性腫瘍
鑑別診断
食思不振症とか錐体機能低下症の比較 IMD.923改変
- 神経性食思不振症では成長ホルモンと糖質コルチコイドの上昇、末梢の甲状腺ホルモンの異常(reverse T3↑のこと?)、インスリン分泌の異常が認められることがある。(参考6) ← 甲状腺、副腎機能は正常と言い切っている書物もあるが、、、
治療
- 医師と患者の信頼関係が重要。体重増加を受け入れてもらう
- 栄養療法:少量・低エネルギー食より開始。栄養不良が著しい場合には静脈栄養/経腸栄養
- 心理社会的療法(認知行動療法)
予後
- 改善50%、不変25%、悪化25%、死亡率5-8%(YN.D-167) ← 過食性食思不振症に比して予後が悪い
参考
- http://www.aiiku.or.jp/aiiku/jigyo/contents/kaisetsu/ks0712/ks0712_4.pdf
- 5. [charged] Patient information: Anorexia nervosa (TheBasics) - uptodate [1]
- 6. [charged] 成人における神経性食思不振症:診断、随伴する臨床的特徴、および評価 - uptodate [2]
- 7. [charged] 成人における神経性食思不振症:合併症の評価およびこれらの合併症管理のための入院基準 - uptodate [3]
- 8. [charged] 成人における神経性食思不振症:薬物療法 - uptodate [4]
- 9. [charged] 成人および思春期における神経性食思不振症:再栄養症候群 - uptodate [5]
- 10. [charged] 成人および思春期における神経性食思不振症:内科的合併症およびその管理 - uptodate [6]
- 11. [charged] 摂食障害:疫学、病因、および臨床的特徴の概要 - uptodate [7]
- 12. [charged] 摂食障害:治療および転帰 - uptodate [8]
[★]
- ☆case76 頭痛
- ■glossary
- 傾眠 drowsiness 正常、病的の区別なく眠り込む場合に用いられる
- 意識不鮮明 confusion 周囲に対する認識や理解は低下し、思考の清明さや、記憶の正確さが失われる
- 錯乱 confusion 夢幻様状態より見当識障害と思考の滅裂が見られる状態(PSY.40)
- MA = Master of Arts 文学修士
- The Master of Arts (BrE: MA, UsE: M.A.) is awarded in Arts, Humanities, Theology and Social Sciences (Wikipedia)
- graduate student 大学院生
- rousable adj. 覚醒できる、目を覚ますことができる
- rouse vt. ~の目を覚まさせる、呼び起こす。喚起する、鼓舞する、奮起させる。(感情を)起こさせる、かき立てる
- lateralize vt. (生理)(大脳が)(左右半球に心的機能差がある、左右差がある。(器官・機能・活動などが)大脳の(左右いずれかの)片側優位下にある。(医学)(障害などが)大脳の片半球にあると診断される
- 乳頭浮腫 papilledema 原因を問わず視神経乳頭が腫脹している状態
- うっ血乳頭 choked disc 脳圧亢進による乳頭浮腫
- ■症例
- 24歳、男性 精神学の修士過程を専攻している大学院生
- 主訴:激しい頭痛
- 現病歴:頭部全体に痛みがある。2回嘔吐。傾眠と錯乱が認められるようになった。明るい光を嫌う()he finds bright lights uncomfortable。
- 既往歴:病気の既往はない。アレルギーはない。タバコ1日10本。アルコール24 unit/week(缶ビール(350ml)13.7本/週)。薬は服用してない。
- 家族歴:彼女と同居。3歳と4歳の子供がいる。
- ・診察 examination
- 見た感じ紅潮しており、調子が悪そう。体温:39.2℃。項部硬直あり(he has stiffness on passice flexion of his neck)。皮疹なし。副鼻腔に圧痛なし。鼓膜所見は正常。脈拍:120/分。血圧:98/74 mmHg。心血管系、胸部、腹部に異常所見なし(normal)。意識レベル低下。命令に応じて覚醒する(JCS10?)。局所神経症状認めない。眼底所見正常
- ・検査 investigation
- 血液検査
- 白血球:上昇。血清Na:低下。血清尿素:上昇。血清クレアチニン:上昇。血液培養:検査中
- 画像検査
- 胸部X線:異常所見なし。頭部CT:正常
- 心電図:洞性頻脈
- 腰椎穿刺
- 髄液所見:混濁。白血球:増多。蛋白:増多。糖:低下(普通の人の血糖100mg/dLと考える。→ 1g/L → 1/180 mol/L → 5.56 mmol/L。グラム染色:結果待ち
- ■Q
- 診断、鑑別診断、管理
- ■A
- 細菌性髄膜炎、髄膜炎・クモ膜下出血、経験的抗菌薬投与・
- ■解説
- (第1パラグラフ)細菌性髄膜炎
- ・(症状)突然発症。激しい頭痛、嘔吐、錯乱、羞明、項部硬直
- ・低血圧、白血球増多、腎機能低下 → ウイルス性よりむしろ細菌性の感染を示唆する。 ← 重症敗血症~敗血症ショックかな?(私見)
- ・(髄膜炎菌の種類)
- <テーブル挿入 髄膜炎>
- ・(疫学)HIM. 2621 (多分、全患者中(←私見))
- Streptococcus pneumoniae ~50%
- Neisseria meningitidis ~25%、
- group B streptococci ~15%
- Listeria monocytogenes ~10%
- Haemophilus influenzae type B <10%
- ・Neisseria meningitidisは全身性の脈管の皮疹(点状出血、紫斑)が特徴的(generalized vasculitic rash)
- (第2パラグラフ)鑑別診断
- ・激しい頭痛
- ・the most severe headaches are experienced in meningitis, subarachnoid hemorrhage and classic migraine.
- ・meningitis:単回の発作(single episode)。症状は時間単位で出現。
- ・subarachnoid hemorrhage:単回の発作(single episode)。突然発症(突発完成?)。硝子体出血を認めることがある。
- ・classic migraine:繰り返す(数回/年~1回/週。平均月2回。発作は4-72時間継続)
- ・髄膜刺激:急性に発熱をきたした多くの病態でみられる(acute febrile conditions)。特に子供。 ← そうなの?
- ・頚部硬直:頚部や脊椎の局所感染症でも起こる。 ← パーキンソン病などによる筋トーヌスの異常亢進も除外しよう
- ・他の髄膜炎:脳脊髄液所見で鑑別する
- (第3パラグラフ)経験的治療
- ・(細菌性)髄膜炎が疑われたら、確定診断する前に適切な抗菌薬を投与(empirical treatment)。 → 数時間の経過で死亡することがある。
- ・ペニシリンアレルギーがなければ、ceftriaxoneかceftaximeの静脈内投与が一般的な治療法
- (第4パラグラフ)腰椎穿刺
- ・乳頭浮腫がない、あるいは占拠性病変を示唆する片側性の神経徴候(lateralized neurological signs)がある患者では(CTの結果を待たずに)腰椎穿刺をすぐにやるべき(CASES) ← どういう事?
- ・局在性の神経徴候(localized neurological sign)がある場合はまずCTを撮るべき(CASES)。 → the dangers of coning ← 鉤ヘルニアの事?
- (第5パラグラフ)細菌性髄膜炎の管理
- ・診断:CSF検査(グラム染色、髄液培養(確定診断、感受性試験)
- ・管理
- ・意識が低下しているのでそれなりの看護(must be nursed)。アヘン剤による鎮痛。生理食塩水による低ナトリウム血症の補正。低血圧を補正するためにinotrope(a drug with positive inotropic effects, e.g. dobutamine, digitalis, milrinone )も必要かもしれない。(100CASES)
- ・感受性のある抗菌薬の投与(大量静注、髄液移行性の高いもの)、髄液所見の正常化・CRP 陰転後、1週間抗菌薬を投与して治療を終了。対症療法として脳圧亢進には高張脳圧降下薬(マンニトールなど)を投与。(IMD.1042)
- (第6パラグラフ)家族構成を考えた治療
- ・(意訳)誰が3-4歳の世話をしていたのか分からないけど、子供も検査すべき。髄膜炎菌か原因菌が不明だったら、リファンピシンによる予防的治療と髄膜炎球菌に対する予防接種をすべき。 ← 日本ではどうなんでしょうか。
- □350ml アルコール5%
- 350x0.05/10=1.75 unit
- ■莢膜を有し、髄膜炎を起こす細菌 → 莢膜を有することで血液中で補体などを介した貪食を免れ、血行性にクモ膜下腔まで到達しうる。
- ・Streptococcus pneumoniae
- ・Haemophilus influenzae type b
- ・Neisseria meningitidis
- ■敗血症
- ・定義
- 感染症による全身性炎症反応症候群(SIRS)をセプシス(sepsis, 広義の敗血症?)とする
- 感染症の病原体は、一般細菌(グラム陽性菌・陰性菌)、真菌、寄生虫、ウイルスなど
- 皮膚や粘膜の傷とか、種々の臓器にある感染巣から、細菌がリンパ流から血中に入り、全身に播種されて、新たに転移性の感染巣をつくり、重篤な全身症状を引き起こす。
- ・全身性炎症反応症候群の診断基準
- 下記項目のうち2項目以上が当てはまる
- 1. 体温>38℃ or 体温<36℃
- 2. 心拍数>90bpm
- 3. 呼吸数>20回/min or PaCO2<32mmHg
- 4. (白血球数>12,000/ul or 白血球数<4,000/ul) or ( 幼若好中球>10% ) ← ここでいう幼若好中球とは桿状好中球のことである。
- ・敗血症の周辺疾患概念
- 1. 全身性炎症反応症候群 systemic inflammatory response syndrome SIRS
- 発熱や白血球増加などの全身の炎症の徴候によって特徴づけられる病態(SIRSの診断基準に合致する病態)
- 2. 敗血症 sepsis
- SIRSが感染の結果である場合
- 3. 重症敗血症 severe sepsis
- 主要臓器障害を伴う敗血症
- 4. 敗血症性ショック septic shock
- 輸液投与に不応性の低血圧を伴う重症敗血症
- 5. 多臓器機能障害症候群 multiorgan dysfunction syndrome MODS
- 2つ以上の主要臓器の機能異常
- 6. 多臓器不全 multiorgan failure MOF
- 2つ以上の主要臓器の不全状態
- ■参考文献
- HIM = Harrison's Principles of Internal Medicine 17th Edition
- PSY = 標準精神医学 第3版
- CASES = 100 Cases in Clinical Medicine Second edition
- IMD = 内科診断学第2版
[★]
- ☆case75 自宅での意識消失
- ■症例
- 21歳 男性
- 主訴:意識消失
- 現病歴:男性のアパートで意識を失っている所を彼女に発見され、午後5時に搬送された。彼女が最後に彼に会ったのは午後8時で、クリスマスの買い物をして帰宅した時であった。翌日午後、彼女が彼に会いに行った所、彼がお風呂の床で意識を失っているのを見つけた。彼女によれば、前日変わった様子(unusal mood)はなかった。彼は心理学の期末試験が1週間に迫っておりこのことを心配していたが、勉強はうまくいっているようだった。また以前の試験に問題はなかった。
- 喫煙歴:なし。
- 飲酒歴:機会飲酒 10 units/week(1週間に350mlビール6本弱)
- 既往歴:なし
- 家族歴:父と2人の兄弟のうち1人が糖尿病
- 服薬歴:以前、エクスタシー錠剤を服用していたが、静脈注射の薬はやったことがない。
- 身体所見 examination
- 顔貌 青白。注射痕は認められない。脈拍 92/分、血圧 114/74 mmHg、呼吸数 22/分。心血管系、呼吸器系に異常を認めず。神経系 命令に従わないが、痛みに反応して適切に手を引っ込める(GCS M4)。腱反射(+)・対称性、足底反射(-)。瞳孔散大、対光反射(+)。眼底 視神経円板腫脹
- ■鑑別診断をあげるためのkeyword(司会者用)
- ・24時間以内に来した意識消失、糖尿病の家族歴、冬、風呂、精神疾患リスク(試験で悩んでいる。薬物の服用歴)、顔色、脈拍、血圧、呼吸数、腱反射、病的反射、瞳孔、眼底(司会者用)
- ■keywordからどういう疾患を考えるか?
- 真っ先にあげたいもの
- ・二次的な脳圧亢進
- ・糖尿病
- ・薬物中毒、中毒物質の摂取・吸引
- ・神経疾患(てんかんなど)の発作
- ・24時間以内に来した意識消失
- ・クモ膜下出血:局所神経症状、硝子体下出血(subhyaloid hemorrhage)。
- ・糖尿病の家族歴
- ・低血糖発作
- 低血糖による昏睡は早いが糖尿病の新規症状として起こらない。まれにインスリノーマによる低血糖による昏睡があり得る。
- ・糖尿病性ケトアシドーシス diabetic ketoacidosis DKA
- 極度のインスリン欠乏とコルチゾールやアドレナリンなどインスリン拮抗ホルモンの増加により、(1)高血糖(≧250mg/dl)、(2)高ケトン血症(β-ヒドロキシ酪酸の増加)、アシドーシス(pH7.3未満)をきたした状態。(糖尿病治療ガイド 2008-2009 p.66)
- ・高浸透圧性非ケトン性昏睡 nonketotic hyperosmolar coma
- DM type 2
- 50歳以上に好発し、インスリン非依存性糖尿病*患者が腎不全や中枢神経障害、悪性腫瘍、消化器疾患、呼吸器感染などを合併するときに多くみられ、ステロイドや利尿薬の投与、輸液や高カロリー補給、人工透析などの際に医原性に起きやすい。
- 高血糖性の昏睡は発症が早くない。その前に口渇や多尿があるはず。
- → 否定するための検査 → 血糖測定
- ・風呂
- ・脳出血
- ・冬だし、風呂(脱衣所のことか)にガスヒーターがあったら疑わしい。
- ・精神疾患リスク(試験で悩んでいる。薬物の服用歴)
- (最も多いのが)薬物中毒(鎮静薬、アスピリン、アセトアミノフェン)
- (意識障害で運ばれてきたときに考えるべきなのが)一酸化中毒
- 一酸化中毒の場合の顔色は蒼白(cherry-red colorと言われてきたが)。眼底所見:(severe CO中毒で)乳頭浮腫
- ・顔色
- ・脈拍、血圧、呼吸数
- ・腱反射、病的反射
- 腱反射が亢進していたら、上位運動ニューロンの障害を考慮する。腱反射亢進と意識障害が共存していれば、障害部位は脊髄の伝導路ではなくむしろ脳幹・大脳皮質に障害があると考えることができる。
- ・瞳孔
- 瞳孔が散大していれば交感神経興奮、副交感神経の麻痺:フェニレフリン・エピネフリン・コカインなど交感神経刺激、動眼神経麻痺、脳死の徴候
- 瞳孔が縮瞳していれば副交感神経興奮、オピオイド受容体への刺激:麻薬中毒、有機リン中毒、橋出血、脳幹部梗塞(脳底動脈閉塞症など)
- ・眼底 (IMD.71)
- 視神経円板(=視神経乳頭)の腫脹は乳頭浮腫(papilledema, DIF.342)を反映。乳頭浮腫の発生機序は軸索輸送障害や静脈還流うっ滞である。原因として頭蓋内疾患が最も多い。頭蓋外の疾患(高血圧、視神経炎、偽性脳腫瘍)。
- 乳頭浮腫 papilledema DIF.243
- V 動静脈奇形、高血圧による脳血圧脳症・頭蓋内出血、クモ膜下出血、硬膜下血腫
- I 脳膿瘍、慢性経過の髄膜炎(細菌性×)、敗血症による血栓や静脈洞血栓
- N 脳腫瘍
- D -
- C 動静脈奇形、水頭症、頭蓋奇形(尖頭症などによる)、血友病、時にSchilder disease
- A ループス脳炎、動脈周囲炎
- T 急性期の硬膜外血腫や硬膜下血腫ではない。慢性硬膜下血腫ならありうる。
- E 褐色細胞腫による悪性高血圧、偽性脳腫瘍(=特発性頭蓋内圧亢進症)(肥満・無月経・感情障害(emotionally disturbed)をきたした女性に多い)
- ■問題
- 症例だけでは絞れないので、最も疑われる疾患をあげ、鑑別診断を列挙し、検査、治療を考えていくことにします。
- ■一酸化炭素中毒
- ■オチ
- 血中carboxyhemoglobinを測定したところ32%。高レベルの酸素投与でゆっくりだが、48時間で完全に回復。脳浮腫にたいするマンニトールや高圧酸素療法も考慮する。問題は4年間点検されていないガス温水器の不完全燃焼だったとさ。
- ■KEY POINTS
- ・薬物中毒は若い人の意識消失の最も一般的な原因だけど、他の診断もいつも考慮しておく。
- ・一酸化炭素ヘモグロビンレベルは屋内や車内、あるいはよく分からない煙に暴露した意識消失患者で測るべき
- ・一酸化中毒による重度の低酸素血症ではチアノーゼを欠く。
- ■initial plan(救急だからのんびりやってられないだろうけど)
- A.
- 1. 呼吸器系、循環器系の安定を確認
- 2. 血液ガス検査
- 3. 血液生化学(電解質(Na,Ca)、血糖)
- □ビール1本 = 350ml アルコール5%: 350 (ml/本) x 0.05 / 10 (ml/unit) =1.75 (unit/本)
- ■参考文献
- DIF Differential Diagnosis in Primary Care Fourth Edition版 Lippincott Williams & Wilkins
[★]
- ☆case16 膝の痛み
- ■glossary
- indigestion 消化障害、消化不良
- ■症例
- 80歳 男性
- 主訴:左膝の痛みと腫脹
- 現病歴:左膝の痛みを2日前から認めた。膝は発熱・腫脹しており、動かすと疼痛を生じる。時々胸焼けと消化不良が見られる。6ヶ月前のhealth checkで、高血圧(172/102mmHg)と血中クレアチニンが高い(正常高値)こと以外は正常といわれた。その4週間数回血圧を測定したが、高値が継続したため、2.5mg bendrofluamethizide(UK)/ベンドロフルメチアジドbendroflumethiazide(US)で治療を開始した。最近の血圧は138/84 mmHgであった。
- 喫煙歴:なし。
- 飲酒歴:一週間に平均4unit。
- 既往歴:股関節に中程度(mild)の変形性関節症
- 家族歴:特記なし
- 服薬歴:アセトアミノフェン(股関節の疼痛に対して)
- 身体所見 examination
- 血圧 142/86mmHg。体温37.5℃。脈拍88/分。grade 2 hypertensive retinopathy(高血圧症性網膜症)。心血管系、呼吸器系に検査場異常なし。手にDIPにヘバーデン結節なし。
- 左膝が発熱し腫脹している。関節内に液、patellar tap陽性。90℃以上膝関節を屈曲させると痛みを生じる。右の膝関節は正常に見える。
- 検査 investigation
- 生化学:白血球増多、ESR上昇、尿素高値、グルコース高値
- 単純X線:関節間隙やや狭小。それ以外に異常は認めない。
- ■problem list
- #1 左膝の痛み
- #2 胸焼け
- #3 消化不良
- #4 高血圧
- #5 クレアチニン正常高値
- #6 股関節の変形性リウマチ
- #7 高血圧性網膜症
- ■考え方
- ・関節痛の鑑別診断を考える。
- ・VINDICATEで考えてみてもよいでしょう。
- ・関節痛の頻度としては 外傷>慢性疾患(OAなど)>膠原病>脊椎疾患>悪性腫瘍
- ■関節痛の鑑別疾患
- DIF 282
- V Vascular 血友病 hemophilia, 壊血病 scurvy, 無菌性骨壊死 aseptic bone necrosis (Osgood-Schlatter diseaseとか)
- I Inflammatory 淋疾 gonorrhea, ライム病 lyme disease, 黄色ブドウ球菌 Staphylococcus, 連鎖球菌 Streptococcus, 結核 tuberculosis, 梅毒 syphilis, 風疹 rubella, 単純ヘルペス herpes simplex, HIV human immunodeficiency virus, サイトメガロウイルス cytomegalovirus
- N Neoplastic disorders 骨原性肉腫 osteogenic sarcoma, 巨細胞腫 giant cell tumors
- D Degenerative disorders degenerative joint disease or 変形性関節症 osteoarthritis
- I Intoxication 痛風 gout (uric acid), 偽痛風 pseudogout (calcium pyrophosphate), ループス症候群 lupus syndrome of hydralazine (Apresoline) and procainamide, gout syndrome of diuretics
- C Congenital and acquired malformations bring to mind the joint deformities of tabes dorsalis and syringomyelia and congenital dislocation of the hip. Alkaptonuria is also considered here.
- A Autoimmune indicates (多い)関節リウマチ RA (可能性)血清病 serum sickness, 全身性エリテマトーデス lupus erythematosus, リウマチ熱 rheumatic fever, ライター症候群 Reiter syndrome, 潰瘍性大腸炎 ulcerative colitis, クローン病=限局性回腸炎 regional ileitis, 乾癬性関節炎 psoriatic arthritis (老人であり得る)リウマチ性多発筋痛症 polymyalgia rheumatica
- T Trauma 外傷性滑膜炎 traumatic synovitis, tear or rupture of the collateral or cruciate ligaments, 亜脱臼 subluxation or laceration of the meniscus (semilunar cartilage), 脱臼 dislocation of the joint or patella, a 捻挫 sprain of the joint, and fracture of the bones of the joint.
- E Endcrine 先端肥大症 acromegaly, 閉経 menopause, 糖尿病 diabetes mellitus
- ■答え
- 骨格筋系-関節炎-単関節炎-急性単関節炎
- 痛風 尿酸 → 発熱、ESR↑、白血球↑
- 偽痛風 ピロリン酸カルシウム
- 高齢女性でチアジド系利尿薬の使用により痛風が誘発されやすい。特に腎機能低下、糖尿病の人はこのリスクが高まる。
- ■(BSTからの知識「)循環器領域での利尿薬
- ・心不全の治療において、循環血漿量を減らし、心臓の前負荷を軽減する。
- ・利尿薬は高尿酸血症を起こす。(けど、心不全の治療において高尿酸血症になったからといって痛風を発症している患者はみたことない)
- ・電解質異常を起こしやすいので、血液生化学の検査でモニタして注意する。たとえば低Kで不整脈のリスクが高まる。
- ・チアジド系の利尿薬は血糖を上げるし、尿酸を上げる
- ・長期の使用で腎機能を低下させる
- ■initial plan
- Dx 1. 関節液の吸引:関節液の一般検査、生化学検査、培養検査、
- ・白血球が増加していれば急性炎症性であることを示す。
- ・偏光顕微鏡で関節液を検鏡する。
- ・尿酸の結晶:針状結晶。negatively birefringent
- ・ピロリン酸カルシウムの結晶:positively birefringent
- Tx 1. 関節液の吸引:炎症が軽度改善
- 2. NSAIDによる疼痛管理
- 3. PPI:NSAID潰瘍を予防するため
- 4. ACE inhibitorの導入