名称 | 周波数(Hz) | |
ベータ波 | β波 | 13< |
アルファ波 | α波 | 8< <13 |
シータ波 | θ波 | 4< <8 |
デルタ波 | δ波 | <4 |
beta > alpha > theta > delta ; BATD
出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2012/07/23 02:20:24」(JST)
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脳波(のうは、Electroencephalogram:EEG)は、ヒト・動物の脳から生じる電気活動を、頭皮上、蝶形骨底、鼓膜、脳表、脳深部などに置いた電極で記録したものである。英語のElectroencephalogramの忠実な訳語として、脳電図、EEGという呼び方もあり、中国語ではこちらの表現法を取っている。本来は、脳波図と呼ぶべきであるが、一般的には「脳波」と簡略化して呼ばれることが多い。脳波を測定、記録する装置を脳波計(Electroencephalograph:EEG)と呼び、それを用いた脳波検査(electroencephalography:EEG)は、医療での臨床検査として、また医学、生理学、心理学、工学領域での研究方法として用いられる。検査方法、検査機械、検査結果のどれも略語はEEGとなるので、使い分けに注意が必要である。
個々の神経細胞の発火を観察する単一細胞電極とは異なり、電極近傍あるいは遠隔部の神経細胞集団の電気活動の総和を観察する(少数の例外を除く)。
近縁のものに、神経細胞の電気活動に伴って生じる磁場を観察する脳磁図(のうじず、Magnetoencephalogram:MEG)がある。
目次
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波形を直接記録するものと、波形に何らかの加工を行って解析する方の2つに分けられる。
脳波の導出には、電極の配置位置、およびそれらの電極の組み合わせという要素が関わる。
通常の検査や実験では、電極を国際10-20法(こくさいten twentyほう)に従って配置するのが最も一般的である。国際10-20法では頭皮を10%もしくは20%の等間隔で区切り、計21個の電極配置位置を決定する[注釈 1]。
耳朶(あるいは鼻、顎など)を電気的に不活性とみなし、耳朶電極(無関電極)・頭皮上電極(関係電極)間の電位差の変動を記録した場合、これを単極導出と呼ぶ。頭皮上電極どうしの電位差の変動を記録した場合、双極導出と呼ぶ。単極導出の場合、関係電極の入力が無関電極の入力に対し電気的に陰性の場合、記録紙のペンが上へ振れる。単極導出法では基準電極の活性化など問題もあるため平均電位基準電極導出法を併用することがある。しかし平均電位基準導出法ではどこかの誘導で高電位が出現するとそれが全体に影響するという問題もある。
電極は通常、頭皮上に設置されるが、開頭して脳表に設置されるケースもある。
電極接触抵抗は交流インピーダンスによる測定で行う。インピーダンスは10Hzにおける値をもって代表値とし、各電極の接触インピーダンスは10kΩ以下が望ましいとされている。
標準的な記録速度は30mm/secで記録される場合が多い。
50μV/5mmで記録されることが多い。機種によっては50μV/7mmのものもある。
筋弛緩剤の使用、神経変性疾患などの場合、異常な脳活動(てんかん発作)があっても発見できない。このような場合に、3個から5個の電極を用いて持続的に脳波を監視する。極端な過鎮静を検出する目的もある。脳低温療法など、日余に渡り筋弛緩剤を使用する場合に有用である。
また装置自体が安価で使用も容易なため、医学以外の領域での脳研究に使用されることもあるが、あくまで簡易な装置であるため、その実験結果のみを基にした理論(ゲーム脳など)には疑問の声も多い。
二波長指数(BIS:bispectral index(en))は専用の装置を用いて計算する尺度で、100が覚醒、0が脳死状態である。手術中の麻酔深度の管理に使用される。全身麻酔における至適な鎮静レベルは40 - 60といわれている。BISはフーリエ変換を基本としているが、詳しいアルゴリズムは公開されていない。
ほぼ全般性、持続性に出現し、脳波の大部分を形成する特定の脳波活動を基礎律動(背景脳波)という。基礎律動は覚醒度、年齢、薬物によって変化し、基礎律動が異常をしめす病態もある。基礎律動には周波数帯域ごとに以下のように名前が付けられており、それぞれ異なった生理学的な意義を有している。(ギリシャ文字が周波数順になっていない点に留意が必要である。)
名称 | 読み | 周波数帯域 |
---|---|---|
δ波 | デルタ波 | 1-3Hz |
θ波 | シータ波 | 4-7Hz |
α波 | アルファ波 | 8-13Hz |
β波 | ベータ波 | 14-Hz[注釈 2] |
一般に健常者では、安静・閉眼・覚醒状態では後頭部を中心にα波が多く出現する。また睡眠の深さ(睡眠段階)は脳波の周波数などに基づいて分類されている。
α波を基準としてそれよりも周波数の遅い波形を徐波、周波数の早い波形を速波という。振幅は正常人は20μV - 70μVであり、これを中等電位という。20μV以下で低電位、100μV以上で高電位ということがある。30mm/secで50μV/5mmで記録されることが多い。
α波は頭部後方部分に覚醒時出現する8Hz - 13Hzの律動であり、精神的に比較的活動していないときに出現する。注意や精神的努力によって抑制、減衰する。加齢により徐波化する傾向がある。α波の発生説にはいくつか存在するが、Andersenらの仮説では皮質のα波は視床からの入力によるものであり、視床におけるペースメーカーが皮質リズムを形成し、視床の反回性抑制ニューロンがリズムの周波数を作っているとしている。Nunezらの説では皮質と皮質間を結ぶ長い連合線維によって生じるとされている。
β波は14Hz以上の律動を示す。30Hz以上でγ波と分類することもある。もっともよく認められるものは前頭部から中心部に記録される。多くは30μV以下である。その起源は扁桃体や海馬が考えられているが明らかになっていない。
θ波は4Hz - 8Hzの律動を示す。α波が徐波化して出現する場合は後頭葉優位であり、傾眠時は側頭葉優位に出現する。
基礎活動の異常としては周波数の異常、電位の異常、分布の異常などに分けることができる。
突然始まり、急速に最大振幅に達し、突然終わるような出現様式をとる脳波を突発波という。突発波の判読で最も重要なのはてんかんであり、てんかんの診断、分類、治療効果判定に脳波は行われることがある。突発波の異常には波形の異常、出現の仕方、出現の場所などの性状が知られている。
発作名 | 発作時脳波 | 非発作時脳波 |
---|---|---|
定型欠神発作 | 広汎性3Hz棘徐波複合 | 広汎性3Hz棘徐波複合(短い) |
非定型欠神発作 | 広汎性遅棘徐波複合 | 広汎性遅棘徐波複合他 |
ミオクロニー発作 | 広汎性多棘徐波複合 | 広汎性多棘徐波複合 |
強直発作 | 広汎性漸増律動 | 不定 |
強直間代発作 | 広汎性棘波、棘徐波 | 広汎性棘徐波複合など |
部分発作 | 局在性棘波律動 | 局在性棘波、棘徐波、徐波あるいは徐波律動(出現しないこともある) |
その他、有名なものとしてWest症候群のヒプスアリスミアやLennox症候群非発作期の2Hz前後の鋭・徐波複合、irregularな1.5Hz - 2.5Hzのsharp-and-slow-wave-complexなどが知られている。
下記に述べるものは病的意義に乏しい。
限られた検査時間内で効率よく異常波を誘発・観察するため、主に以下の賦活法が用いられる。
睡眠段階 | 特徴的波形 |
---|---|
stage W | α波 |
stage 1 | α波の減少、V波(hump) |
stage 2 | 睡眠紡錘波(spindle)、K複合波 |
stage 3 | δ波(20% - 50%) |
stage 4 | δ波(50%以上) |
stage REM | 低振幅脳波に急速眼球運動(REMs)が出現する |
中脳網様体―視床―皮質の連絡によって波形の成り立ちは説明される。睡眠が深くなると中脳網様体、視床、皮質の順に求心性支配が順次減少すると考えられている。
意識が清明な場合は開眼によってα波が抑制されるが、眠気があり軽い意識混濁が認められると開眼してもα波は持続して現れる。
低振幅脳波や広汎性徐波を示す。音刺激などで脳波が反応することがあり、この場合は回復の可能性がある。
θ波などの他に、三相波、PLEDs、supression-burst,α-comaなどが認められる。
当初は肝性脳症で認められると報告されたが、その他の病態でも出現する。徐波が主体の脳波であり、陰-陽-陰の三相の波がほぼ同期し、頭部前方優勢に現れる。頭部前方から後方にかけて波に時間のずれが見られる。またバーストや群として現れ、振幅の減衰や抑圧が認められることもある。
棘波、鋭波、あるいは複合波が1秒 - 2秒の間隔で片側性に繰り返し現れる場合をPLEDs(プレズ)という。両側に認められる場合をBiPLEDsという。
アルツハイマー型認知症の患者では脳波は以下のように推移することが知られている。コリンエステラーぜ阻害薬によって徐波が減少することが知られている。
安静・閉眼時に出現していた後頭部優位のα波は開眼すると速やかに振幅が減衰する。このように、感覚入力(体性感覚、聴覚、視覚など)、運動、覚醒状態の変化、認知活動などによって周波数成分が変わることが知られており、生理学や心理学研究で応用されている。高速フーリエ変換、周波数フィルタなどの信号処理技術が必要となる。
ある周波数成分が刺激などの事象に前後して増加することを「事象関連同期(event-related synchronization : ERS)」と呼び、減少することを「事象関連脱同期(event-related desynchronization : ERD)」と呼ぶ。
また周波数変化を利用してロボットアームなどを動かす研究(brain-computer interface : BCI)の研究も進められており、義手などへの応用が期待される。
例えば正中神経刺激を行うと、約20ms後に対側一次感覚野の神経細胞が反応する。この反応は、背景脳波に比べて電位がかなり小さいので直接波形を観察しても見分けることはできない。これを解決するために、正中神経刺激を複数回(100回など)繰り返し、刺激に時間をそろえて加算平均(average)すると、正中神経刺激に関連した電位変化のみ観察できる。これは背景脳波は電気刺激とは無関係にランダムに発生していると考えられるため複数回平均することで打ち消しあうことを利用したものである。
加算平均を応用した方法として、体性感覚誘発電位(SEP)、聴覚脳幹誘発電位(BAEP、ABR)、視覚誘発電位(VEP)、さまざまな事象関連電位、聴性脳幹反応などがある。
Fpz | 前頭極正中部 | F3 | 左前頭部 | O2 | 右後頭部 |
Fz | 正中前頭部 | F4 | 右前頭部 | F7 | 左側頭前部 |
Cz | 正中中心部 | C3 | 左中心部 | F8 | 右側頭前部 |
Pz | 正中頭頂部 | C4 | 右中心部 | T3 | 左側頭中央部 |
Oz | 後頭中央部 | P3 | 左頭頂部 | T4 | 右側頭中央部 |
Fp1 | 左前頭極部 | P4 | 右頭頂部 | T5 | 左側頭後部 |
Fp2 | 右前頭極部 | O1 | 左後頭部 | T6 | 右側頭後部 |
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覚醒期 | α波、β波(低振幅) | |||
第1期 | 入眠期 | α波の振幅が次第に減少し、発生が不連続になる。 代わって低振幅のθ波があらわれる。 θ波(4-8Hz)は前頭部や頭頂部で著名である。 覚醒時にも情緒不安定時に見られる。 |
うとうとしている状態で低振幅の徐波が増えてきて それに時々頭頂部を中心に瘤波(hump)と呼ばれる鋭波が混じる |
|
第2期 | 軽睡眠期 | 脳波は全体として平坦化し、13-15Hzの紡錘波が現れる | 浅い睡眠層で、あまり振幅の高くない徐波が連続するようになり、 それに12-14Hzの紡錘波が混じったり、 K-complexと言われる群発波が現れたりする。 |
Stage1よりθ波が目立つ vertex wave: 頭頂葉に鋭波が出現 sleep sindle: short bursts of 12-16 Hz activity K complex:sleep spindleが重なった高振幅波 眼運動なし、筋緊張若干低下 |
第3期 | 中程度睡眠期 | 4Hz以下の徐波(δ波)が現れるが、紡錘波も残る | 深い睡眠相。高振幅徐波(δ波)が50%より少ない | |
第4期 | 深睡眠期 | 大きな振幅のδ波が記録の50%以上の期間に出現し、紡錘波は消失する。 | 深い睡眠相。高振幅徐波(δ波)が50%以上。 | |
レム睡眠期 | 深い睡眠中にもかかわらず脳波は覚醒時の低振幅の速波を示す。 θ波(低振幅)、β波 |
覚醒時に似た低振幅の脳波。 覚醒時とは筋電図が消失することで区別される。(筋弛緩) 眼球電図も特徴的な眼球運動を示す。(急速眼球運動(REM) 呼吸、脈拍の不規則変化、血圧上昇 |
後頭野で一過性の大きいPGO spikeが出現 |
α波減衰 : 80 件 α減衰 : 約 545 件 α波ブロッキング : 22 件 αブロッキング : 約 283 件 アルファ波減衰 : 13 件 アルファ減衰 : 22 件 アルファ波ブロッキング : 7 件 アルファブロッキング : 75 件
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