出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2016/08/09 15:34:56」(JST)
一酸化炭素 | |
---|---|
IUPAC名
一酸化炭素 |
|
識別情報 | |
CAS登録番号 | 630-08-0 |
PubChem | 281 |
ChemSpider | 275 |
EINECS | 211-128-3 |
国連/北米番号 | 1016 |
RTECS番号 | FG3500000 |
特性 | |
化学式 | CO |
モル質量 | 28.010 g/mol |
外観 | 無色気体 |
密度 | 0.789 g/mL, 液体 1.250 g/L at 0 ℃, 1 atm |
融点 |
-205 ℃ (68 K) |
沸点 |
-192 ℃ (81 K) |
水への溶解度 | 0.0026 g/100 mL (20 ℃) |
双極子モーメント | 0.112 D |
危険性 | |
安全データシート(外部リンク) | ICSC 0023 |
EU分類 | 非常に強い可燃性 (F+) Repr. Cat. 1 |
EU Index | 006-001-00-2 |
NFPA 704 |
4
4
0
|
Rフレーズ | R61, R12, R23, R48/23 |
Sフレーズ | S53, S45 |
引火点 | 可燃性気体 |
関連する物質 | |
関連する炭素の酸化物 | 二酸化炭素 亜酸化炭素 |
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。 |
一酸化炭素(いっさんかたんそ、carbon monoxide)は、炭素の酸化物の1種であり、常温・常圧で無色・無臭・可燃性の気体である。一酸化炭素中毒の原因となる。化学式は CO と表される。
炭素や、それを含む有機物が燃焼すると二酸化炭素が発生するが、酸素の供給が不充分な環境で燃焼(不完全燃焼)が起こると一酸化炭素が発生する。さらに高温あるいは触媒存在下では C と CO2 とに分解(不均化)するし、一酸化炭素自身も酸素の存在下で青い炎を上げて燃焼する。
高温では強い還元作用を示し、各種重金属酸化物を還元して単体金属を生成する。常温では遷移金属に配位して種々の金属カルボニルを形成する。その中のニッケルカルボニル (Ni(CO)4) は、かつてニッケル精製の中間体として用いられていた。
一酸化炭素は、水にはほとんど溶けない。
この分子は様々な点で窒素分子(N2)に似ている。分子量28.0で窒素分子とほぼ同じ。結合長は112.8 pm[1][2]に対して窒素は109.8 pm。三重結合性を帯びるところも同じである。結合解離エネルギーは1072 kJ/molで窒素の942 kJ/molに近いがそれより強く、知られている最強の化学結合の一つである[3]。これらの理由から、融点(68 K)・沸点(81 K)も窒素の融点(63 K)・沸点(77 K)と近くなっている。
上のような3つの共鳴構造を持つ。だが三重結合性が強い[4]ため、電気陰性度がC<Oであるにもかかわらず、炭素原子上に負電荷が乗った一番左の構造の寄与が大きい。全体として双極子モーメントは0.122 Dとなる[5]また、σ軌道は71%、π軌道は77%酸素原子側に分極している[4]。
基底状態は一重項状態なので不対電子はない[6]。
工業的には 1800 ℃ 以上(普通は 1,000 ℃ 程度)に、加熱したコークスと水(水蒸気)を反応させて作られる水性ガスから得られる。その反応は、
である。上記反応で右方向(→)への反応は吸熱反応であり、反応進行とともに温度が下がる。排気弁を閉じ、空気を注入してコークスが燃焼して温度が上昇すると、再び水蒸気を注入して一酸化炭素と水素を生成させる。これを繰り返してコークスがなくなったら、次のバッチを充填して反応を開始する。
実験室で作る時は、ギ酸を濃硫酸で脱水するとできる。この時、
の反応が起こる。一酸化炭素は水に溶けにくいので、水上置換で集めることができる。
日本では古くから、マグロなどの鮮魚として出回る魚介を一酸化炭素処理すると、刺身にした際に発色が良くなり新鮮そうに見えることが広く知られていた(後述の項目#症状を参照)。
一酸化炭素がミオグロビンに結びつくとカルボキシミオグロビンになり、鮮やかな赤色を呈する。このカルボキシミオグロビンは、酸素が結びついたミオグロビンや酸化されて茶色を呈するメトミオグロビンよりもより安定した物質である。この安定した色が通常のパックよりもあたかも長持ちして新鮮なように見えることとなる[7]。
1980年代に入ると、日本のマグロ輸入量が急増。日本発の技術として一酸化炭素の処理方法は、輸出先の国々を中心に世界的に広まることとなった。こうした処理技術は消費者が判断する鮮度の基準を狂わせ、食中毒の原因にもなりかねないことから、1994年には、食品衛生法で禁止されることとなった。しかし、世界中に広まった技術を根絶することは難しく、未だに利用する海外の業者は多いとされる。現在でも輸入加工食品の一部で一酸化炭素処理が発覚する事例がしばしば発生する。一酸化炭素処理されたマグロは「COマグロ」と呼ばれることがある。
発症機序は充分に解明されていない[8]が、次のように考えられている。一酸化炭素は酸素の約250倍も赤血球中のヘモグロビンと結合しやすい上、酸素分圧とオキシ・ヘモグロビン濃度との関係を変調させる。ヘモグロビンには4つの酸素結合部位が存在し、結合数が多いほど結合安定が安定になる。すなわち、末梢の酸素分圧が低い組織に運搬されると酸素の結合が乖離し始めるが、結合する酸素が減るほど乖離しやすくなるため、効率的に末梢で酸素を放出する特性がある。ところが、4つある結合サイトのうち1つが一酸化炭素と結合したヘモグロビン(カルボニルヘモグロビン)は、他のサイトに結合した酸素も安定化し放出しにくくなるため、血液の酸素運搬能力が下がり、末梢で酸素分圧が極端に低下し中毒症状を起こす[要出典]。
一酸化炭素は、特に酸欠状態でなくとも燃焼に伴い発生するが、炭鉱での爆発事故や地下空間などで換気が悪い場合に蓄積し、また一般家庭では、屋内での木炭コンロの使用、ガス湯沸かし器やストーブの不完全燃焼によって発生量が急激に増えることにより中毒症状を発症させる。 このため、大気汚染に係る環境基準については「1時間値の1日平均値が 10 ppm 以下であり、かつ、8時間平均値が 20 ppm 以下であること」とされ、また、労働安全衛生法に基づく事務所衛生基準規則では、事務所の室内における濃度について 50 ppm 以下(空気調和設備または機械換気設備のある事務所では 10 ppm 以下)とするよう定められている。
一酸化炭素中毒の恐ろしさは、症状が出て気づいた時には体が動かせなくなっていることである。逃げたり、窓を開けたりする猶予を得るためにも、一酸化炭素を検知できる火災報知器の設置は有効である。
なお、以前の都市ガスには一酸化炭素が含まれる石炭ガスが使われていたため、ガス漏れによる中毒事故が発生したが(2007年にも北見市で大規模なガス漏れによる死亡事故があった)、2010年3月25日に四国ガスが天然ガスへ転換したのを最後に、日本国内で供給される都市ガスは全域で一酸化炭素を含まないものとなり、ガス漏れによる一酸化炭素中毒は起こらなくなった[9]。
この他、火災に伴う一酸化炭素中毒も知られている。なお、火災の場合、アクリルやポリウレタンなどの熱分解の影響でシアン化水素も発生し、一酸化炭素中毒と共にシアン化水素による中毒も併発している場合がある。
また、タバコの煙にも多量に含まれており、循環器系に多大な負担を及ぼすが、煙に含有している濃度では急性症状は発症しない[8]。
ただし、上記のような急性の中毒とは別に、少量の一酸化炭素を長期間にわたって持続的(反復的)に吸入した場合でも中毒症状が現れることもある。この場合、主に、頭痛、めまい、精神機能の低下といった症状が現れる。
中毒症状は、頭痛・耳鳴・めまい・嘔気などの臨床症状と、血中の一酸化炭素結合ヘモグロビン (COHb) 濃度の測定をもって診断を確定する[14]が、これは前述の通り、ヘモグロビンが酸素よりも一酸化炭素と結合しやすい性質による。
前述の通り、中毒患者の血色が「良い」ように見えてしまう作用により、吸光度で血中の酸素飽和度を測るパルスオキシメーターは正確な値を示すことができない。パルスオキシメーターによる呼吸モニターは本症においては有効ではない[8][12]。
動脈血ガス分析では、過換気のため PaCO2 値は低下し、血管透過性が亢進するにつれ代謝性アシドーシスが重症化し[15]血液は濃縮されるためHct値は上昇する。モダリティー検査では、肺水腫や脳浮腫、重症化すると淡蒼球の低吸収域化(チトクロームCオキシダーゼ活性の低下による)がみられる[16]。
脳波検査では、徐波化や低電位が出現する。
患者は全身的な酸素欠乏状態であり、初期治療には酸欠の対策が必須となる[11]ため治療は酸素吸入であるが、純酸素を吸入しても呼吸が不十分な場合は高圧タンク内で酸素を吸入する高圧酸素療法を行うことがある[17]。しかし、常圧酸素療法と高圧酸素療法のどちらを優先するのかは明確になっていない[17]。
一酸化炭素はヘモグロビンと強力に結びつくほか脂肪組織や脳細胞に蓄積される傾向があり、酸素吸入による洗い出しは数日から数十日を要することがある[要出典]。また、脳細胞(特に大脳基底核)への直接的な障害作用もあるため、後遺症としてパーキンソニズム(大脳基底核の障害による)やしびれ(異常感覚)を来すことが多い。
また、淡蒼球の壊死や脱髄疾患が徐々に進行することにより、回復したと思われたあとに数日から数週間後に発症する後遺症もある。こちらは中毒直後(の急性中毒症)と区別して慢性中毒症(間歇型一酸化炭素中毒)などと呼ばれる。
脳波異常や脳萎縮などの高次脳機能障害、意識障害、不随意運動、知能障害、性格障害、多幸症、パーキンソニズム、神経障害等の症状がみられ[11]、中毒初期同様高圧酸素療法やTRH療法を実施する。一酸化炭素中毒の後遺症が現れた場合、 それが軽度のものであれば、数ヶ月の入院治療と合わせて1年程度で時間経過と共に徐々に軽快され完全に後遺症が消失することもあるものの、淡蒼球の壊死が重度に進んでしまった場合など重篤なものであった場合は通常は完全な治癒は望めない[18]。
一酸化炭素はC1化学の分野において、重要な原料化合物である。また、有機化学においてはカルボニル基の原料として、無機化学においては配位子として、一酸化炭素の応用範囲は広い。
例えば、ハロゲン化アリール(芳香族ハロゲン化物)にパラジウムなどの遷移金属触媒と求核剤を加えてクロスカップリングさせる際、一酸化炭素を共存させるとカルボニル基の挿入が起こる。
アルケンに対しても、適切な触媒の作用でホルミル基 (−CHO) の付加を行うことができる。これをヒドロホルミル化、あるいはオキソ法とよび、各種アルデヒドの工業的な製法のひとつである。
また、日光や触媒により塩素と反応させるとホスゲン(COCl2、工業化学上重要な化合物、かつて毒ガスとして用いられていた)が得られる。
ほか、一酸化炭素を利用する人名反応として、ガッターマン・コッホ反応 (Gattermann-Koch reaction)、コッホ・ハーフ反応 (Koch-Haaf reaction) などが知られる。
ウィキメディア・コモンズには、一酸化炭素に関連するカテゴリがあります。 |
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学校の運営は意外と大変なのね
検査項目 | 基準 |
換気 | 換気の基準として、二酸化炭素は、1500ppm 以下であることが望ましい。 |
温度 | 10℃以上、30℃以下であることが望ましい。 |
相対湿度 | 30%以上、80%以下であることが望ましい。 |
浮遊粉じん | 0.10mg/m3 以下であること。 |
気流 | 0.5m/秒以下であることが望ましい。 |
一酸化炭素 | 10ppm 以下であること。 |
二酸化窒素 | 0.06ppm 以下であることが望ましい。 |
揮発性有機化合物 | |
ホルムアルデヒド | 100μg/m3 以下であること。 |
トルエン | 260μg/m3 以下であること。 |
キシレン | 870μg/m3 以下であること。 |
パラジクロロベンゼン | 240μg/m3 以下であること。 |
エチルベンゼン | 3800μg/m3 以下であること。 |
スチレン | 220μg/m3 以下であること。 |
ダニ又はダニアレルゲン | 100 匹/m2 以下又はこれと同等のアレルゲン量以下であること。 |
検査項目 | 基準 |
遊離残留塩素 | 0.4mg/.以上であること。また、1.0mg/.以下であることが望ましい。 |
pH値 | 5.8 以上8.6 以下であること。 |
大腸菌 | 検出されないこと。 |
一般細菌 | 1m.中200 コロニー以下であること。 |
有機物等 | 過マンガン酸カリウム消費量として12mg/.以下であること。 |
濁度 | 2度以下であること。 |
総トリハロメタン | 0.2mg/.以下であることが望ましい。 |
循環ろ過装置の処理水 | 循環ろ過装置の出口における濁度は、0.5 度以下であること。また、0.1 度以下であることが望ましい。 |
検査項目 | 基準 |
プール本体の衛生状況等 | :プール水は、定期的に全換水するとともに、清掃が行われていること。 :水位調整槽又は還水槽を設ける場合は、点検及び清掃を定期的に行うこと。 |
浄化設備及びその管理状況 | :循環浄化式の場合は、ろ材の種類、ろ過装置の容量及びその運転時間が、プール容積及び利用者数に比して十分であり、その管理が確実に行われていること。 :オゾン処理設備又は紫外線処理設備を設ける場合は、その管理が確実に行われていること。 |
消毒設備及びその管理状況 | :塩素剤の種類は、次亜塩素酸ナトリウム液、次亜塩素酸カルシウム又は塩素化イソシアヌル酸のいずれかであること。 :塩素剤の注入が連続注入式である場合は、その管理が確実に行われていること。 |
屋内プール | |
空気中の二酸化炭素 | 1500ppm以下が望ましい。 |
空気中の塩素ガス | 0.5ppm以下が望ましい。 |
水平面照度 | 200lx以上が望ましい。 |
COHb(%) | 症状 |
≦10 | ほとんどなし |
10~20 | 前頭部頭重感、皮膚血管拡張 |
20~30 | 拍動性頭痛、体動時の息切れ |
30~40 | 悪心、めまい、視力障害、疲労感、判断力低下 |
40~50 | 頻脈、昏迷、脱力、虚脱 |
50~60 | 昏睡、痙攣 |
60~70 | 低血圧、呼吸微弱 |
≧70 | 呼吸停止、死亡 |
スパイロメトリー | DLCO | |
閉塞性障害あり | 低下 | 肺気腫 |
正常~上昇 | 気管支喘息 | |
拘束性障害あり | 低下 | 肺線維症、(肺切除後) |
正常 | 胸郭・胸膜異常、神経筋疾患 | |
正常 | 低下 | 早期の間質性肺疾患、肺血管障害、貧血、一酸化炭素中毒 |
上昇 | 高度肥満、多血症、(気管支喘息)、左右心内シャント、軽度の左心不全、肺胞出血 |
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