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脳血管障害 | |
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分類及び外部参照情報 | |
ICD-10 | G45-G46, I60-I69 |
ICD-9 | 430-438 |
MeSH | D002561 |
プロジェクト:病気/Portal:医学と医療 | |
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脳血管障害(のうけっかんしょうがい, Cerebral Vascular Disorder: CVD)、脳血管疾患 (Cerebral vascular disease: CVD) は、脳梗塞と脳出血、クモ膜下出血に代表される脳の病気の総称である。他に、もやもや病、慢性硬膜下血腫等も脳血管障害に分類される。
また、脳血管障害のうち急激に発症したものは、脳血管発作 (Cerebrovascular attack: CVA) または脳卒中 (Stroke, Apoplexy) と呼ばれる。俗に言う、「当たった」という状態である[1]。俗にヨイヨイ、中風(ちゅうふう、ちゅうぶ)とも呼ぶ。
個々の疾患については、各々を参照のこと。
脳血管疾患に共通するのは、脳を栄養する頭蓋内の血管(血流)に異常が発生し、出血による炎症・圧排または虚血による脳組織の障害により発症することである。
虚血性疾患においては動脈硬化が最大の危険因子であり、動脈硬化の原因としては、高血圧症、高脂血症、糖尿病、喫煙が挙げられる。出血については各病態で異なり、脳内出血では高血圧が、クモ膜下出血では脳動脈瘤 (Aneurysm) ・脳動静脈奇形 (AVM) が大きな要因となる。日本では、食文化の欧米化とともに罹患率が上昇しており、予防、再発防止、リハビリテーションとも大きな課題となっている。
高血圧については、脳卒中の発症を予測するうえで、脈圧・拡張期血圧 (Diastolic Blood Pressure: DBP) などと比べ、収縮期血圧 (Systolic Blood Pressure: SBP) が性や人種に関係なく、最も重要な因子であるとする論文が American Journal of Hypertension の2007年3月号に掲載された。
高血圧、喫煙、ウエスト・ヒップ比の低値、不健康な食事、定期的な運動の欠如、糖尿病、中等度あるいは高度のアルコール摂取、ストレスまたは抑うつ、アポリポ蛋白B/A1比の高値という9つの因子は、さまざまな国での脳卒中のリスクの90%を占めていた。中でも高血圧は単独因子として、虚血性および出血性の両脳血管障害の52%と、出血性脳血管障害の74%に関与していた。[2]
脳卒中を起こす場合、大抵は高血圧を伴っている。その治療方針は各疾患ごとに異なるので診断をせずに血圧を初めとしてうかつな治療をすることはできない。
神経診断は神経診断学に基づき、病因診断、解剖学的診断、臨床診断と3stepで行うのが通常である。解剖学的診断を行うための診察項目は非常に多い。救急室ではこのような対応は不可能なことが多く、頻度としても救急室に来院する神経病が疑われる患者の多くは脳血管障害であるため、より簡便なスクリーニング法が発達してきた。スクリーニング診察はあくまでも神経病の存在診断のために行うものであり、体系だった神経診断学に基づく診断に比べ、局所診断、病因診断の情報は少ないものの、短時間で行えることから救急室では好まれる。スクリーニング診察の項目としては、意識、脳神経、運動神経、感覚神経、歩行、姿勢、髄膜刺激症状、自律神経、協調運動、深部腱反射(特に病的反射)などを一通り行う場合が多い。
スクリーニングの項目だけでも脳血管障害のかなりの情報を得ることができる。殆どの脳血管障害が片麻痺を主訴とするため、これを想定する。まず顔面に麻痺が存在しない頸部以下の片麻痺であれば脊髄レベルの血管障害と考えることができる。片麻痺と対側に顔面麻痺がある場合、すなわち交代性麻痺であれば脳幹障害である。脳幹障害は気管内挿管の必要が高くなる。咽頭反射の消失など球麻痺症状、交代性麻痺はいずれも気管内挿管を積極的に考える状態である。 頭部CTを緊急で行う必要がある(救急室のマネジメントとしては脳出血と診断がついた時点で局在診断は行っても治療方針としては影響は出ない。)。あいまに行う神経診断としては脳神経の検査である。脳神経 I - IV 麻痺ならば中脳、脳神経 V - VIII 麻痺ならば橋、脳神経 IX - XII 麻痺ならば延髄が責任病巣である可能性が高い。片麻痺と同側に顔面麻痺が認められる場合は皮質下レベルか皮質レベルの障害である。この場合テント上病変であるので瞳孔偏位が存在すればそれだけで偏位方向の皮質レベルの障害である(瞳孔偏位はテント上病変では病側を向き、テント下病変では健側を向く)。瞳孔偏位が認められなければ、皮質症状が認められるか、認められないかで鑑別する。皮質症状が存在すれば皮質レベルの障害であり、皮質症状が存在しない、あるいは感覚障害が存在しなければ皮質下レベル、即ちラクナ梗塞である。皮質症状は優位半球の皮質症状としては失語が有名であり、劣位半球皮質症状としては 障害血管の目安としてはそれ以外の高次機能障害、失認、失行、半側空間無視があげられる。また両側大脳皮質の機能として、複合感覚もあるため、これも皮質症状とする。広範な皮質症状としては意識障害もあげられる。 障害血管に関しては皮質レベルの障害の場合は前部大脳循環系の障害が疑わしい。下肢の障害が強ければ前大脳動脈領域、顔面や上肢の障害が強ければ中大脳動脈領域、同名半盲や幻視が認められれば後大脳動脈領域が疑わしい。皮質下、特に内包、視床、大脳基底核は穿通枝によって主に灌流されているため、皮質症状が存在しなかったり、感覚麻痺を伴わない運動麻痺や運動麻痺を伴わない感覚麻痺はラクナ梗塞を疑う。
脳血管障害の局在診断で非常に便利な所見を纏める。
画像 | 超急性期脳出血 | 超急性期脳梗塞 |
---|---|---|
発症直後所見 | 発症直後からT2WI、DWIにて信号変化が認められる | 発症直後は所見は認められない。 |
T2WI | T2WIでは血腫中心部の中等度高信号と辺縁部に低信号、周囲の浮腫性変化 | T2WIでは発症後数時間しないと血管性浮腫による信号変化は認められない。 |
DWI | 血腫中心部の高信号とその辺縁部の低信号 | 発症30分以後ならば所見は出現しうるが最終梗塞とくらべるとまだ限局している。 |
救急室においては超急性期から急性期の所見に基づいて病名とヘルニア、水頭症の有無区別できれば十分であることが多く、上記表に基づいた評価が行われるのが一般的である。血栓融解療法の普及に伴って、まずは CT 撮影を行い、出血がなく、明らかな脳血管障害を疑う症状、病歴があれば脳梗塞と考え治療を行うこともしばしばある。急性期の脳内出血の検出力としては CT と MRI は同等だが、簡便さから CT が好まれる。
脳梗塞の画像所見について述べる。
病期 | 病態 | DWI | ADC-MAP | T2WI | CT | |
---|---|---|---|---|---|---|
発症直後 | (0 - 1時間) | 閉塞直後の灌流異常 | 所見なし | 所見なし | 所見なし | 所見なし |
超急性期 | (1 - 24時間) | 細胞性浮腫 | 高信号 | 低信号 | 所見なし | early CT sign |
急性期 | (1 - 7日) | 細胞性浮腫と血管性浮腫 | 高信号 | 低信号 | 高信号 | 低吸収 |
亜急性期 | (1 - 3週間) | 細胞壊死にてマクロファージ浸潤と血管新生から徐々に浮腫軽減 | 高信号から徐々に低信号へ | 低信号から徐々に高信号へ | 高信号 | 低吸収からFEを介して低吸収へ |
慢性期 | (1か月 - ) | 壊死、吸収、瘢痕化 | 低信号 | 高信号 | 高信号 | 髄液濃度 |
上記表は脳梗塞における MRI の典型的経時的変化である。超急性期は細胞性浮腫のため拡散係数が低下し、それは DWI にて高信号、ADC-MAP で低信号という形で表現される。急性期では毛細血管の BBB の破綻により血管性浮腫が起る。血管性浮腫により単位組織あたりの水分量が増加するため T2WI にて高信号を示すようになる。急性期に再灌流により血管性浮腫が増悪し、著明な脳浮腫や出血性梗塞を起こすこともある。亜急性期になると細胞壊死と血管壊死により拡散係数が上昇してくるため、一時期見かけ上正常化 (pseudo-normalization) する。拡散強調画像では T2 shine through の影響をうけて亜急性期後半まで高信号が持続する。この現象があるために拡散強調画像で高信号でも拡散係数の低下や脳梗塞超急性期と言えずとすることができず、ADC-MAP を併用して評価する。発症2週間ほどでCTでも血管性浮腫の軽減により一時的に病変が等吸収になる。しかし不明瞭化はしており FE (fogging effect) と言われる。亜急性期では軟膜髄膜吻合による側副血行路の発達や代償性の灌流増加にて比較的小さな梗塞巣内の出血が認められることがあり、T2*にて低信号を示す。これは急性期の出血性梗塞と異なり、重篤な神経症状の増悪を招くことはないが、ラクナ梗塞の場合はこれらの所見がある場合は抗血小板薬投与をしない方が無難とされている。その後は慢性期所見として T2WI 高信号となるが、組織欠損の程度により FLAIR 画像で低信号化したりする。細胞外液腔の開大によるものである。
脳血管障害では遠隔部に二次性が起ることが知られている。代表例を示す。
二次性変化 | 所見 |
---|---|
皮質脊髄路のワーラー変性 | 皮質脊髄路に障害があるとその遠隔部で4週後よりT2短縮、10週頃よりT2延長。DWIでは2日から8日程度で信号変化が認められる。 |
視床の変性 | 外側線条体動脈を含め中大脳動脈領域に障害があると皮質視床路を介して同側視床が発症3か月以降にT2延長。背内側核から起ることが多い。 |
中脳黒質の変性 | 線条体の障害で同側中脳黒質に発症10日前後でT2延長が認められ、1か月ほどで消失する。 |
下オリーブ核仮性肥大 | 小脳歯状核病変では対側の下オリーブ核に橋背側中心被蓋路では同側に変性がおこる。数か月でT2延長がおき、その後肥大する。 |
交叉性小脳萎縮 | 橋核が障害されると対側の中小脳脚にワーラー変性が生じる。橋核近傍が障害されると対側に同様の変性が生じるため、両側性となることも多い。 |
その他、有名な所見としては皮質層状壊死 (cortical laminar necrosis) というものがあり、椎体細胞層(第3層)が選択的に虚血に陥ることであり発症後3週間ほどで T1WI にて皮質に沿った高信号域が認められる。
脳内出血の画像所見について述べる。
画像 | 超急性期脳出血 | 超急性期脳梗塞 |
---|---|---|
発症直後所見 | 発症直後からT2WI、DWIにて信号変化が認められる | 発症直後は所見は認められない。 |
T2WI | T2WIでは血腫中心部の中等度高信号と辺縁部に低信号、周囲の浮腫性変化 | T2WIでは発症後数時間しないと血管性浮腫による信号変化は認められない。 |
DWI | 血腫中心部の高信号とその辺縁部の低信号 | 発症30分以後ならば所見は出現しうるが最終梗塞とくらべるとまだ限局している。 |
MRI の意義はヘモグロビンの生化学的状態が鑑別できることである。
病期 | ヘム鉄の性状 | 磁性 | 局在 | T2WI | T1WI | CT | |
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超急性期 | (24時間以内) | オキシヘモグロビン | Fe2+/反磁性 | 赤血球内 | 軽度高信号 | 軽度低信号 | 高吸収域 |
急性期 | (3日以内) | デオキシヘモグロビン | Fe2+/常磁性 | 赤血球内 | 低信号 | 軽度低信号 | 高吸収域 |
急性期 | (7日以内) | メトヘモグロビン | Fe3+/常磁性 | 赤血球内 | 低信号 | 高信号 | 高吸収域 |
亜急性期 | (2週間以内) | フリーメトヘモグロビン | Fe3+/常磁性 | 赤血球外 | 高信号 | 高信号 | 辺縁部から低下 |
慢性期 | (1か月以後) | ヘモジデリン | Fe3+/常磁性 | 赤血球外 | 低信号 | 低信号 | 低吸収域 |
脳内出血発症直後は血腫内の赤血球膜は正常であり、内部のヘモグロビンの多くは酸素を含むオキシヘモグロビンである。オキシヘモグロビンは反磁性体のため T1 緩和時間、T2 緩和時間に影響を与えないが、血餅は水分を含むため、軽度のT2延長を示すのが一般的である。オキシヘモグロビンは数時間以内にデオキシヘモグロビンとなる。デオキシヘモグロビンは常磁性体であり、T2WI にて著明な低信号を示すようになる。磁化率効果に鋭敏なのはグラディエントエコー法であるT2*強調画像である。この画像では急性期血腫は著明な低信号を示す。しかしT2*強調画像では急性期血腫と慢性期血腫の区別が難しい。急性期から亜急性期にかけてデオキシヘモグロビンは辺縁から酸化されメトヘモグロビンに変化していく。メトヘモグロビンは常磁性体であり著明なT1短縮効果を示すため T1WI にて高信号化してくる。この時期には同時に血腫融解がはじまる。赤血球膜破壊によるメトヘモグロビンの血球外流出、浮腫性変化によって T2WI にて高信号化してくる。このころはCTでは血腫の辺縁が低吸収域になってくるため、MRI の方が血腫の境界、浮腫性変化を正確に判定できる。慢性期になるとメトヘモグロビンはヘモジデリンとなり、浮腫も落ち着き、T1WI、T2WI ともに低信号となる。T2*強調画像でも低信号を示す。
最も有名なくも膜下出血のCT所見にペンタゴンといわれる鞍上槽への出血が知られているが、これは頭蓋内内頚動脈動脈瘤破裂の場合によく認められるもので、それ以外の動脈瘤破裂によるクモ膜下出血ではこのような画像にはならない。また破裂動脈瘤の30%ほどに脳内出血を合併すると言われている。脳動脈瘤の好発部位としては前交通動脈 (Acom)、中大脳動脈の最初の分枝部、内頚動脈-後交通動脈 (IC-PC) とされている。前交通動脈瘤では前頭葉下内側および透明中隔に、IC-PC では側頭葉に、中大脳動脈瘤では外包および側頭葉、前大脳動脈遠位部動脈瘤では脳梁から帯状回に脳内血腫を形成する。高血圧性の脳内出血と明らかに分布が異なるほか、原則として近傍にクモ膜下出血を伴っている。亜急性細菌性心内膜炎や絨毛がんなどでは動脈瘤を合併し、クモ膜下出血、脳内出血を合併することが知られている。以下に出血部位から責任動脈瘤を推定する方法を纏める。
破裂部位 | 出血の広がり |
---|---|
前交通動脈 | 大脳縦裂前部、交叉槽、脚間槽などからシルビウス裂まで左右対称的に存在、透明中隔腔内の血腫が特徴的である。 |
中大脳動脈 | 同側のシルビウス裂を中心に存在する |
頭蓋内内頚動脈領域 | 鞍上部脳槽を中心に非対称的に両側性に存在する。所謂、ペンタゴンである。 |
椎骨脳底動脈領域 | 迂回槽、脚間槽、橋槽を中心に左右対称性に存在する。 |
脳卒中の後遺症として、手足の筋肉の痙縮(つっぱり)が見られる場合がある。この後遺症に対しては、ボツリヌス治療などを含む最新の治療法が臨床現場でも試行されている。
脳卒中ホームページへようこそ|厚生労働省
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k氏より
インスリンの抽出は大変意図的に行われたのに対し、スルフォニルウレア薬(SU)は偶然に見つかりました。で、1950年代にはじめに二型糖尿病の患者に使われるようになりました。いまでは20種類くらいのSUが広く世界で使われています。 1997にはメグリチニドが臨床適用されました。食後高血糖の治療薬としてはじめて使用された薬です。 メタフォルミンというビグアナイド薬(BG)は、ヨーロッパで広く使われていましたが、1995年にアメリカでも認可されました。 チアゾリジン1997年に市場導入され、二番目にメジャーなインスリン刺激薬として使用されています。この種類の薬には、広汎な肝障害を起こしにくく、世界中で使われています。
膵臓のβ細胞の刺激によって、インスリンを放出させ、血糖値を下げます。 治療が長引くと、インスリン分泌というSUのβ細胞刺激性の効果が薄れてきますが、β細胞上のSU受容体のダウンレギュレーションによるものです。また、SUはソマトスタチンの放出を刺激します。ソマトスタチンはグルカゴン分泌を抑制しているので、これも関係SUの糖を下げる効果と関係しています。 SUはATP感受性Kチャンネルを抑制します。Kレベルが下がると、まく表面における、脱分極を促し、電位依存性カルシウムチャンネルを通じたカルシウムイオンの流入を促進します。 SUには無視できない膵臓外作用があるという議論があります。確かにありうべきことですが、2型糖尿病の患者の治療においては、それほど重要なことではないようです。
SU薬はそれぞれが似たような作用スペクトラムを持っているので、薬物動態的な特性がここの薬を区別する手がかりです。腸管からのSU薬の吸収の割合は薬によって違いますが、食物や、高血糖は、この吸収を抑制します。高血糖はそれ自身、腸管の運動を抑制するので、ほかの薬の吸収も阻害します。血漿濃度が効果的な値にまで達する時間を考えると、半減期の短いSUは、食前三十分に投与するのが適切です。SU薬は90から99パーセントくらい血中たんぱく質と結合し、特にアルブミンと結合します。 第一世代のSUは半減期や分布において、大きく違っています。この半減期や作用時間の不一致の理由はいまだはっきりしていません。 SUはすべて肝臓で代謝を受け、尿中に排泄されます。なので、肝不全、腎不全患者には要注意で処方します。
めったにありませんが、第一世代服用患者では、4パーセントの割合でおきます。第二世代ではもっと少ないでしょう。低血糖による昏睡がしばしば問題になります。腎不全や肝不全がある高齢者の患者でおきやすいです。 重症の低血糖は脳血管障害も起こしうる。急性の神経障害が見つかった高齢患者では血中グルコースレベルを測るのが大事です。半減期の長いSUもあるので、24から48時間のグルコースを輸液します。 第一世代は多くの薬物と相互作用を持っています。 ほかに、吐き気嘔吐、胆汁うっ滞性黄疸、脱顆粒球症、再生不良性・溶血性貧血、全身性のアレルギー症状があります。 SUが心血管障害による死亡率を上げるのかについては議論の余地あり。
SUは、食事療法だけでは十分なコントロールを得られない2型糖尿病患者の血糖コントロールに用いられます。禁忌はtype 1 DM(diabetes mellitus:糖尿病)、妊婦、授乳中の患者、腎障害や肝障害の患者です。 普通の患者なら五割から八割くらい、経口の糖尿病治療薬が効きます。インスリン療法が必要になる患者もいます。 トルブタマイドの一日量は500ミリグラムで、3000ミリグラムが最大の許容量です。SUの治療成績の評価は患者の様子を頻繁に観察しながら、行います。 SUとインスリンの併用療法はtype 1, type 2 両方の糖尿病で用いられていますが、βセルの残存能力がないとうまくいきません。
レパグリニドはメグリチニドクラスの経口インスリン分泌促進物質です。化学構造上、SUとは異なっており、安息香酸から分離されたものです。 SU薬と同様にレパグリニドは膵臓βセルにおけるATP依存性Kチャンネルを閉じることによりインスリン分泌を促進します。AEもSU薬と同様、低血糖です。
Dふぇにるアラニンから分離された薬。レパグリニドよりもSEとして低血糖が認められづらいです。
メトフォルミンとフェノフォルミンは1957年に市場導入され、ブフォルミンが1958年に導入されました。ブフォルミンは使用が制限されていますが、前者二つは広く使われています。フェノフォルミンは1970年代に乳酸アシドーシスのAEによって市場から姿を消しました。メトフォルミンはそのようなAEは少なく、ヨーロッパカナダで広く使われています。アメリカでは1995年に使用可能に。メトフォルミンは単独かSUと併用して使われます。
ものの言い方によると、メトフォルミンは抗高血糖であって、血糖を下げる薬ではありません。膵臓からのインスリン放出は促さないので、どんな大容量でも低血糖は起こしません。グルカゴン・コルチゾール・成長ホルモン・ソマトスタチンにも影響なし。肝での糖新生を抑制したり、筋や脂肪におけるインスリンの働きを増すことで、血糖を押さえます。
小腸から吸収。安定な構造で、血中の蛋白と結合しないで、そのまま尿中に排泄。半減期は二時間。2.5グラムを食事と一緒に飲むのがアメリカで最もお勧めの最大用量。
メトフォルミンは腎不全の患者には投与しないこと。肝障害や、乳酸アシドーシスの既往、薬物治療中の心不全、低酸素性の慢性肺疾患なども合併症として挙げられる。乳酸アシドーシスはしかしながら、めちゃくちゃまれである。1000人年(たとえば100人いたら、10年のうちにという意味の単位。または1000人いたら1年につき、ということ。)につき0.1という割合。 メトフォルミンの急性のAEは患者の20パーセントに見られ、下痢、腹部不快感、吐き気、金属の味、食欲不振などです。メタフォルミンを飲んでいる間はビタミンB12や葉酸のきゅうしゅうが 落ちています。カルシウムをサプリで取ると、ビタミンB12の吸収が改善されます。 血中乳酸濃度が3ミリMに達するとか、腎不全・肝不全の兆候が見られたら、メタフォルミンは中止しましょう。
PPARγに効く。(ペルオキシソーム・プロライファレーター・アクチベイティッド・受容体、つまりペルオキシソーム増殖活性受容体みたいな。)PPARγに結合して、インスリン反応性をまして、炭水化物とか、脂質の代謝を調整します。
ロジグリタゾンとピオグリタゾンは一日一度。チアゾリジンは肝にて代謝され、腎不全のある患者にも投与できますが、活動性の肝疾患があるときや肝臓のトランスアミナーゼが上昇しているときは、使用しないこと。 ロジグリタゾンはCYP2C8で代謝されますがピオグリタゾンはCYP3A4とCYP2C8で代謝されます。ほかの薬との相互作用や、チアゾリジン同士の相互作用はいまだ報告されていませんが、研究中です。
ピオグリタゾンとロジグリタゾンは肝毒性とはめったに関係しませんが、肝機能をモニターする必要があります。心不全のある患者はまずそちらを治療してから。
αGIは小腸の刷子縁におけるαグルコシダーゼの働きを阻害することによって、でんぷん・デキストリン・ダイサッカリダーゼの吸収を抑制します。 インスリンを増やす作用はないので、低血糖もおきません。吸収がよくない薬なので、食事の開始と一緒に飲むとよいです。 アカルボースとミグリトールは食後高血糖の抑制に使われます。 αGIは用量依存性に、消化不良・ガス膨満・下痢などをきたします。αGIとインスリンを併用中に低血糖症状が出たら、、グルコースを補充します。
経口から、グルコースが静脈を通ると、インスリンが上がることがわかっていました。消化管の上部からはGIP、消化管下部からはGLP1というホルモンが出ていて、糖依存性のインスリン放出を促していることがわかりました。これらのホルモンはインクレチンといわれています。この二つのホルモンは別の働き方でインスリンの放出を促進します。GIPはtype 2 DMではインスリン分泌を促進する能力がほとんど失われています。一方でGLP1は糖依存性のインスリン分泌を強く促しています。つまりtype 2 DMの治療ではGIPをターゲットにすればよいということになります。GLPはグルカゴンを抑制し。空腹感を押さえ、食欲を抑えます。体重減少も実現できます。この長所を相殺するように、GLP1は迅速にDPPIV(ヂペプチジルペプチダーゼ4エンザイム)によって負活化されます。つまり、GLP1を治療に使うなら、連続的に体に入れなければなりません。GLP1受容体のアゴニストが研究され、これはDPPIVにたいして抵抗性があります。 そのほかのGLP1療法のアプローチに仕方としては、DPPIVプロテアーゼの不活性化で、それによってGLP1の循環量を増やそうとするものです。type 2 DM治療に新しい薬がでるかもしれないですね。
拡張 | 破裂 | 末梢の循環不全 | ||
上行大動脈 | 大動脈弁不全 上行大動脈瘤 上大静脈症候群 |
心膜腔出血 (心タンポナーデ) 胸腔内出血 |
||
冠状動脈 | 狭心症、心筋梗塞 | |||
弓部大動脈 | 弓部大動脈瘤 嗄声、嚥下障害 |
縦隔出血 | ||
弓部分枝 | 脳血管障害 上肢虚血 | |||
下行大動脈 | 下行大動脈瘤 嚥下障害 |
胸腔出血 縦隔出血 |
||
肋間動脈、腰動脈 | 対麻痺 | |||
腹部大動脈 | 腹部大動脈瘤 | |||
腹部分枝 | 腹腔出血 後腹膜出血 |
腸管虚血 | ||
腎動脈 | 腎虚血 | |||
腸骨動脈 | 下肢虚血 | |||
その他の病態 | 発熱、DIC、胸水貯溜 |
痙性片麻痺歩行 | hemiplegic gait | 錐体路障害 | 脳血管障害 変形頚椎症 多発性硬化症 頸髄ミエロパチー | |
ぶん回し歩行 | ||||
円弧歩行 | ||||
痙性対麻痺歩行 | spastic paraplegic gait | 両大脳半球・脳幹・脊髄側索における両側錐体路障害 | 家族性痙性対麻痺 脳性小児麻痺(Little病) HTLV-I associated myelopathty | |
はさみ歩行 | scissor gait | |||
パーキンソン歩行 | parkinsonian gait | 錐体外路障害 | パーキンソン病 | |
小刻み歩行 | short-stepped gait | パーキンソン症候群 | ||
失調歩行 | 小脳性運動失調・前庭性運動失調 | 小脳障害 前庭神経障害 |
OPCA LCCA Wernicke脳症 | |
酩酊様歩行 | ||||
脊髄後索性 | 深部感覚障害による空間見当識障害(位置覚・振動覚) | 脊髄癆 亜急性脊髄連合変性症 Friedreich失調症 多発性神経炎 | ||
踵打歩行 | ||||
鶏歩 | steppage gait | 下位運動ニューロン(腓骨神経麻痺で生じる下腿筋の筋力低下) | Charcot-Marie-Tooth病 腓骨神経麻痺 ポリオ 糖尿病 | |
動揺性歩行 | waddling gait | 肢体筋の障害 | Duchenne型筋ジストロフィー 多発筋炎 Kugelberg-Welander病 | |
トレンデレンブルグ歩行 | Trendelenburg gait | |||
アヒル様歩行 | ||||
間欠性跛行 | intermittent claudication | 下肢動脈の血流障害 下肢神経の障害 |
動脈 | 内膜 | 中膜 | 外膜 |
弾性血管 | 内皮細胞(ワイベル・パラーデ小体を含む) 基底板 内皮下層(少数の線維芽細胞、散在する平滑筋細胞、膠原線維) 不完全な内弾性板 |
40-70層の有窓性弾性板 弾性板の間に存在する平滑筋細胞 薄い弾性板 外半分には脈管栄養細胞が分布 |
線維・弾性結合組織 脈管栄養血管 リンパ管 神経細胞 |
筋性動脈 | 内皮細胞(ワイベル・パラーデ小体を含む) 基底板 内皮下層(少数の線維芽細胞、散在する平滑筋細胞、膠原線維) 厚い内弾性板 |
40層に及ぶ平滑筋細胞層 厚い外弾性板 |
薄い線維・弾性結合組織 脈管栄養血管は著明でない リンパ管 神経線維 |
細動脈 | 内皮細胞(ワイベル・パラーデ小体を含む) 基底板 内皮下層:目立たない 内弾性板はなく、弾性線維がある |
1-2層の平滑筋細胞 | 疎性結合組織 神経線維 |
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