- 英
- intravenous injection
- 関
- 静注、静脈内注射、静脈内投与、静脈投与
Wikipedia preview
出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2016/08/04 04:25:05」(JST)
[Wiki ja表示]
注射(ちゅうしゃ)とは、注射針を用いて直接体内に薬剤を注入する投与法。効果の発現が早く安定しているのが特徴である。注射に使う器具を注射器という。
目次
- 1 概要
- 2 投与経路による分類
- 3 注射による健康被害
- 4 派生した俗語
- 5 脚注
- 6 参考文献
- 7 関連項目
- 8 外部リンク
概要
注射は、直接的に生物(その多くでは人間)の体に薬剤を投入する方法で、経口投与(口から薬剤を投入する)や皮膚・粘膜への塗布、ないし吸引などよりも直接的に必要な個所(患部)に薬剤を投入できるため、他の投与方法より効果が出始めるまでの時間が短く、また吸収経路でろ過されてしまったり他の物質に変質してしまったり、または吸収の過程にて解毒作用で分解されてしまうような種類の薬剤でも投与できるため、より確実な方法である。
反面、生体の組織に中空の針を貫通させるため、この侵襲(人為的に傷付けること)に対する拒否感や実質的な被害もあり、そういった問題を解決するために、様々な技術改良や器具使用の技能的な向上も日夜進められている。
アルコール消毒
以前は注射の際にアルコール綿で拭き清める場合が多かったが、2008年2月号の『日経メディカル』にて、関節注射や留置針を除く一般の皮下注射では蒸留水を含ませた綿などで拭いた場合と有意な差が見られないとする報告がなされ、意味がない行為だと認識され消毒をしない医師も増えてきている。なお同報告によれば、皮下注射の場合には穿刺の際に皮下に混入する細菌の数が極めて少ないこと、加えて皮膚表面と皮下組織とではペーハーが大きく異なり、皮膚表面の菌が活動・繁殖できないこと、皮下組織の感染は細菌だけによるものではないことを指摘しており、逆に作り置きのアルコール綿ではアルコール分が揮発してしまい「ただの水で湿った脱脂綿」として菌類の繁殖がありうるともいう。ただし厚生労働省の定める「予防接種実施要領」[1]によれば、アルコールによる接種部位の消毒をすべきことが明記されている。また穿刺前にその箇所を単純に洗ったり拭いて衛生的にすること自体に、患者側の衛生状態によっては全く意味が無いわけではない。[2]
注射と苦痛
注射は、針を皮膚に突き刺す行為なので痛みがある。実際の痛み以上に、針が刺さるのが視覚的に痛いと感じてしまう。特に子供はこれを大いに嫌い、医者にかかるときに注射するかどうかは最大の懸案である。ただ子の健康を案じている親の側にしてみれば、注射は経験上で劇的な効果が出易いとみなされ、注射してくれることを希望する場合もある。また飲み薬を出されるなどの投薬よりも、より直接的に医師が治療に参加している行為とも受け止められ、注射による治療を期待する場合も見られる。これは刺される側にとっては苦痛でありストレスを与えうるため、血液検査の後に血圧を測ると、心理的影響から普段より高い値が出てしまう場合もある。
注射の種類(使用する薬剤や様式・後述)によってもまちまちであるが、技能や患者の扱いがうまいなどの腕のよい者が注射すると、注射の際にそれほどの痛みは生じない。反面、注射する側が技能的に未熟であったり、注射される側が身構えたり暴れたりすると、余計に痛い場合も珍しくはない。こと技能的に未熟で、何度も針を刺し直しされたりすると、痛いどころの騒ぎではない。したがって患者が医者や看護師への評価する場合の基準に、注射の上手下手が大きな地位を占めることもある。また歯茎への注射のように、針を刺す部位にあらかじめ麻酔する場合もある。
なお穿刺の痛みは、注射に用いられる針の大きさや形状によっても大きく異なり、予防接種のような集団への注射では、圧力注射とも呼ばれる皮膚に高い圧力で薬剤を浸透させる針を使わない注射器が利用される場合もある。ほかにも、用途は限られるが極めて微細なため刺しても痛くない注射針「ナノパス33」というものも登場し、糖尿病患者がインスリン投与時に使用するインジェクター等に使用されている。
投与経路による分類
詳細は「投与経路」を参照
薬液を投与する部位によって効き方(薬物動態)が異なる。以下のように分類される。
- 皮内注射 (intracutaneous injection)
- 表皮と真皮の間に薬液を投与する。ツベルクリン反応など検査で用いられる。投与量は0.1 - 0.2mlと少量。
- 皮下注射 (subcutaneous injection)
- 皮下組織に薬液を投与する。針は皮膚に対して斜めに刺す。数mlまで投与できる。有効成分は比較的緩徐に吸収される。吸収は毛細血管の血流に影響されるため、血管収縮薬と併用すると吸収が遅延する。
- 筋肉内注射 (intramuscular injection)
- 筋肉中に薬液を投与する。針は皮膚に対し垂直に近い角度で刺す。数mlまで投与できる。一般に皮下注射より有効成分の吸収は早い。筋肉が未発達な小児への筋肉注射は大腿四頭筋拘縮症の原因の一つといわれている。また、筋肉内には神経や動脈が走っているので投与の際は損傷を避ける必要がある。
- 静脈内注射 (静注、intravenous injection)
- 薬液を直接静脈内に投与する。容量の制限がなく、効果の発現も早い。100 ml 以上で水分、栄養素の投与などを目的とするものは一般に『輸液』と呼ばれている。少量を一度に投与する場合には注射器を用いるが、50mlを超える場合には点滴で投与する。輸液ポンプを使って長時間一定速度で投与する方法もある。一般的には末梢の静脈に投与するが、高カロリー輸液は中心静脈に投与する。
- その他
- 抗癌剤などを直接病巣に到達させる動脈内注射や、脊椎麻酔の際に行われる脊髄腔内注射、若齢動物や小動物に対して行われる腹腔内注射などがある。
注射による健康被害
注射は注射剤そのものの副作用の他に、次のような健康被害を起こすことが知られている。
- 感染症
- 予防接種の際などに注射器や注射針を交換しないで連続で用いたことにより肝炎ウイルスの集団感染を引き起こしたことがある。また医療関係者が、使用後の注射針の扱いを誤り自分に刺して肝炎ウイルスに感染するいわゆる『針刺し事故』も報告されている。近年では、薬物乱用者が注射器を使い回しすることによるヒト免疫不全ウイルス(HIV)などの感染拡大が危惧されている。
- 大腿四頭筋拘縮症
- 乳児に対し、大腿部への筋肉注射を頻回に行うことによる組織の壊死が原因とされる。
派生した俗語
- 大相撲における八百長を「注射」という隠語で表現する。打てば(頼めば)すぐ効く(勝てる)ということから。元来この隠語は確実に賭博に勝つように便宜を図る目的で賭けの対象となる競技等の結果を八百長で操作することを指していたが、いつしか相撲用語になった。
- パチスロ3号機時代には、内部基盤のうちの特定のRAM部品の上にさらに重ねる形でのアダプターを取り付け、本来なら保通協に認可されていないプログラムを無断で書き込む(上書きする)行為を、パチンコ業界・およびファンなどは注射と呼んでいた。注射を行なうと多くの場合、大連チャンや大ハマリといった荒っぽい内容のゲーム性になる。もちろん、違法行為である。
脚注
- ^ 定期の予防接種実施要領
- ^ 井蛙内科開業医ブログ
参考文献
関連項目
|
ウィキメディア・コモンズには、注射に関連するカテゴリがあります。 |
- 投与方法
- 投与経路
- 注射剤
- 注射器
- 点滴静脈注射
- 薬物動態
外部リンク
|
この項目は、医学に関連した書きかけの項目です。この項目を加筆・訂正などしてくださる協力者を求めています(プロジェクト:医学/Portal:医学と医療)。 |
UpToDate Contents
全文を閲覧するには購読必要です。 To read the full text you will need to subscribe.
Japanese Journal
- 点滴静脈注射の基本手順 (特集 輸液管理における"リスク"と"対策") -- (輸液管理の基本をおさらいしよう)
- T-PASで実感する体験型研修の実際(4・特別編)古賀総合病院 静脈注射の手技を再確認し現場への指導に役立てる
- 山崎 佐「歯科医師の診療能力の範囲」(昭和13年)について
- 渋谷 鉱,山口 秀紀,那須 郁夫,加來 洋子,牧村 正治
- 日本歯科医史学会会誌 29(4), 322-344, 2012-09-30
- … 昭和11年,歯科医師が行った静脈注射が医師法違反に問われた,いわゆる「クロールカルシウム静脈注射」事件がある.第二審において歯科医師側の弁護を担当した山崎佐「歯科医師の診療能力の範囲」(昭和13年)からその内容について紹介した.本文の総文字数は約26,100文字におよぶものであり,論旨の概要は以下のとおりである. …
- NAID 110009544229
Related Pictures
★リンクテーブル★
[★]
- 28歳の女性。風疹ワクチン接種を希望して来院した。第1子妊娠中に風疹抗体価が陰性であることが判明した。第2子の挙児希望があり、現在は妊娠していない。内服薬や出血傾向をきたす基礎疾患はない。
- 風疹ワクチンの適切な投与経路はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [111F021]←[国試_111]→[111F023]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [107E002]←[国試_107]→[107E004]
[★]
- ☆case75 自宅での意識消失
- ■症例
- 21歳 男性
- 主訴:意識消失
- 現病歴:男性のアパートで意識を失っている所を彼女に発見され、午後5時に搬送された。彼女が最後に彼に会ったのは午後8時で、クリスマスの買い物をして帰宅した時であった。翌日午後、彼女が彼に会いに行った所、彼がお風呂の床で意識を失っているのを見つけた。彼女によれば、前日変わった様子(unusal mood)はなかった。彼は心理学の期末試験が1週間に迫っておりこのことを心配していたが、勉強はうまくいっているようだった。また以前の試験に問題はなかった。
- 喫煙歴:なし。
- 飲酒歴:機会飲酒 10 units/week(1週間に350mlビール6本弱)
- 既往歴:なし
- 家族歴:父と2人の兄弟のうち1人が糖尿病
- 服薬歴:以前、エクスタシー錠剤を服用していたが、静脈注射の薬はやったことがない。
- 身体所見 examination
- 顔貌 青白。注射痕は認められない。脈拍 92/分、血圧 114/74 mmHg、呼吸数 22/分。心血管系、呼吸器系に異常を認めず。神経系 命令に従わないが、痛みに反応して適切に手を引っ込める(GCS M4)。腱反射(+)・対称性、足底反射(-)。瞳孔散大、対光反射(+)。眼底 視神経円板腫脹
- ■鑑別診断をあげるためのkeyword(司会者用)
- ・24時間以内に来した意識消失、糖尿病の家族歴、冬、風呂、精神疾患リスク(試験で悩んでいる。薬物の服用歴)、顔色、脈拍、血圧、呼吸数、腱反射、病的反射、瞳孔、眼底(司会者用)
- ■keywordからどういう疾患を考えるか?
- 真っ先にあげたいもの
- ・二次的な脳圧亢進
- ・糖尿病
- ・薬物中毒、中毒物質の摂取・吸引
- ・神経疾患(てんかんなど)の発作
- ・24時間以内に来した意識消失
- ・クモ膜下出血:局所神経症状、硝子体下出血(subhyaloid hemorrhage)。
- ・糖尿病の家族歴
- ・低血糖発作
- 低血糖による昏睡は早いが糖尿病の新規症状として起こらない。まれにインスリノーマによる低血糖による昏睡があり得る。
- ・糖尿病性ケトアシドーシス diabetic ketoacidosis DKA
- 極度のインスリン欠乏とコルチゾールやアドレナリンなどインスリン拮抗ホルモンの増加により、(1)高血糖(≧250mg/dl)、(2)高ケトン血症(β-ヒドロキシ酪酸の増加)、アシドーシス(pH7.3未満)をきたした状態。(糖尿病治療ガイド 2008-2009 p.66)
- ・高浸透圧性非ケトン性昏睡 nonketotic hyperosmolar coma
- DM type 2
- 50歳以上に好発し、インスリン非依存性糖尿病*患者が腎不全や中枢神経障害、悪性腫瘍、消化器疾患、呼吸器感染などを合併するときに多くみられ、ステロイドや利尿薬の投与、輸液や高カロリー補給、人工透析などの際に医原性に起きやすい。
- 高血糖性の昏睡は発症が早くない。その前に口渇や多尿があるはず。
- → 否定するための検査 → 血糖測定
- ・風呂
- ・脳出血
- ・冬だし、風呂(脱衣所のことか)にガスヒーターがあったら疑わしい。
- ・精神疾患リスク(試験で悩んでいる。薬物の服用歴)
- (最も多いのが)薬物中毒(鎮静薬、アスピリン、アセトアミノフェン)
- (意識障害で運ばれてきたときに考えるべきなのが)一酸化中毒
- 一酸化中毒の場合の顔色は蒼白(cherry-red colorと言われてきたが)。眼底所見:(severe CO中毒で)乳頭浮腫
- ・顔色
- ・脈拍、血圧、呼吸数
- ・腱反射、病的反射
- 腱反射が亢進していたら、上位運動ニューロンの障害を考慮する。腱反射亢進と意識障害が共存していれば、障害部位は脊髄の伝導路ではなくむしろ脳幹・大脳皮質に障害があると考えることができる。
- ・瞳孔
- 瞳孔が散大していれば交感神経興奮、副交感神経の麻痺:フェニレフリン・エピネフリン・コカインなど交感神経刺激、動眼神経麻痺、脳死の徴候
- 瞳孔が縮瞳していれば副交感神経興奮、オピオイド受容体への刺激:麻薬中毒、有機リン中毒、橋出血、脳幹部梗塞(脳底動脈閉塞症など)
- ・眼底 (IMD.71)
- 視神経円板(=視神経乳頭)の腫脹は乳頭浮腫(papilledema, DIF.342)を反映。乳頭浮腫の発生機序は軸索輸送障害や静脈還流うっ滞である。原因として頭蓋内疾患が最も多い。頭蓋外の疾患(高血圧、視神経炎、偽性脳腫瘍)。
- 乳頭浮腫 papilledema DIF.243
- V 動静脈奇形、高血圧による脳血圧脳症・頭蓋内出血、クモ膜下出血、硬膜下血腫
- I 脳膿瘍、慢性経過の髄膜炎(細菌性×)、敗血症による血栓や静脈洞血栓
- N 脳腫瘍
- D -
- C 動静脈奇形、水頭症、頭蓋奇形(尖頭症などによる)、血友病、時にSchilder disease
- A ループス脳炎、動脈周囲炎
- T 急性期の硬膜外血腫や硬膜下血腫ではない。慢性硬膜下血腫ならありうる。
- E 褐色細胞腫による悪性高血圧、偽性脳腫瘍(=特発性頭蓋内圧亢進症)(肥満・無月経・感情障害(emotionally disturbed)をきたした女性に多い)
- ■問題
- 症例だけでは絞れないので、最も疑われる疾患をあげ、鑑別診断を列挙し、検査、治療を考えていくことにします。
- ■一酸化炭素中毒
- ■オチ
- 血中carboxyhemoglobinを測定したところ32%。高レベルの酸素投与でゆっくりだが、48時間で完全に回復。脳浮腫にたいするマンニトールや高圧酸素療法も考慮する。問題は4年間点検されていないガス温水器の不完全燃焼だったとさ。
- ■KEY POINTS
- ・薬物中毒は若い人の意識消失の最も一般的な原因だけど、他の診断もいつも考慮しておく。
- ・一酸化炭素ヘモグロビンレベルは屋内や車内、あるいはよく分からない煙に暴露した意識消失患者で測るべき
- ・一酸化中毒による重度の低酸素血症ではチアノーゼを欠く。
- ■initial plan(救急だからのんびりやってられないだろうけど)
- A.
- 1. 呼吸器系、循環器系の安定を確認
- 2. 血液ガス検査
- 3. 血液生化学(電解質(Na,Ca)、血糖)
- □ビール1本 = 350ml アルコール5%: 350 (ml/本) x 0.05 / 10 (ml/unit) =1.75 (unit/本)
- ■参考文献
- DIF Differential Diagnosis in Primary Care Fourth Edition版 Lippincott Williams & Wilkins
[★]
- 英
- intravenous administration、intravenous injection
- 関
- 静注、静脈内注射、静脈内投与、静脈注射、点滴静脈投与、点滴静脈内投与
[★]
- 英
- intravenous administration, intravenous injection
- 関
- 静注、静脈内注射、静脈投与、静脈注射、点滴静脈投与、点滴静脈内投与
[★]
- 英
- intravenous injection、i.v.
- 関
- 静脈内、静脈内注射、静脈内投与、静脈投与、静脈注射
[★]
- 英
- intravenous drug use, IDU
[★]
- 英
- injection、shot、inject
- 関
- インジェクション、充血、注入、発射、注射剤、ショット、注射薬、インジェクト、撃つ
- 皮内注射:皮膚にほぼ並行::アレルギー反応の判定
- 皮下注射:皮膚に対し20-30°:持続性:インスリン、ワクチン
- 筋肉注射:皮膚に対し直角:中殿筋、三角筋。皮下注射に比較して即効性がある(吸収性の悪い薬品)。:ブスコパン、オピオイド系鎮痛薬、トキソイド
- 静脈注射:静脈に刺入:即効性、確実性
国試
[★]
- 英
- vein (Z)
- ラ
- vena
- 毛細血管から発生した静脈血を心臓に送るために使われる血管。