出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/09/02 15:15:42」(JST)
糖尿病のデータ | |
ICD-10 | E10-E14 |
統計 | |
世界の患者数 | 約1億8000万人 (2006年推定患者数) |
日本の患者数 | 約700万人 (2005年推定患者数) |
学会 | |
日本 | 日本糖尿病学会 |
イギリス | The British Diabetic Association |
アメリカ | American Diabetes Association |
ドイツ | Deutsche Diabetes-Gesellschaft |
フランス | Association Française des Diabétiques |
ブラジル | Sociedade Brasileira de Diabetes |
スペイン | Fundación para la Diabetes |
ラテンアメリカ | American Diabetes Association Español |
この記事はウィキプロジェクトの雛形を用いています |
"糖尿病 " | |
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分類及び外部参照情報 | |
世界糖尿病デーのシンボルマーク「ブルーサークル」[1]
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ICD-10 | E10–E14 |
ICD-9 | 250 |
MedlinePlus | 001214 |
eMedicine | med/546 emerg/134 |
Patient UK |
[http://www.patient.co.uk/doctor/management-of-type-1-diabetes "糖尿病 "] |
プロジェクト:病気/Portal:医学と医療 | |
テンプレートを表示 |
糖尿病(とうにょうびょう、拉,独,英:diabetes mellitus)は、血糖値(血液中のグルコース(ブドウ糖)濃度)が病的に高い状態をさす病名である。ひとことに血糖値が高いと言っても、無症状の状態から、著しいのどの渇き・大量の尿を排泄する状態、さらには意識障害、昏睡に至るまで様々であるが、これらをすべてまとめて、血糖値やヘモグロビンA1c値が一定の基準を超えている場合を糖尿病という。糖尿病は高血糖そのものによる症状を起こすこともあるほか、長期にわたると血中の高濃度のグルコースがそのアルデヒド基の反応性の高さのため血管内皮のタンパク質と結合する糖化反応を起こし、体中の微小血管が徐々に破壊されていき、目、腎臓を含む体中の様々な臓器に重大な障害(糖尿病性神経障害・糖尿病性網膜症・糖尿病性腎症の微小血管障害)を及ぼす可能性があり、糖尿病治療の主な目的はそれら合併症を防ぐことにある。
1674年、イギリスの臨床医学者トーマス・ウィリスはヨーロッパで当時奇病とされていた多尿症の研究をしていた。ウィリスは尿に含まれる成分を何としても知りたいと考え、患者の尿を舐めてみたところ、甘かったことが本病確認のきっかけとされている[2]。
東洋医学では消渇と呼ばれる。
なお、腎臓での再吸収障害のため尿糖の出る腎性糖尿は別の疾患である。
血液中のブドウ糖濃度(血糖値、血糖)は、様々なホルモン(インスリン、グルカゴン、コルチゾールなど)の働きによって正常では常に一定範囲内に調節されている。いろいろな理由によってこの調節機構が破綻すると、血液中の糖分が異常に増加し、糖尿病になる。糖尿病は大きく1型と2型にわけられるが、これはこの調節機構の破綻の様式の違いを表している。1型糖尿病では膵臓のβ細胞が何らかの理由によって破壊されることで、血糖値を調節するホルモンの一つであるインスリンが枯渇してしまい、高血糖、糖尿病へと至る。一方2型糖尿病では、血中にインスリンは存在するのだが肥満などを原因としてインスリンの働きが悪くなるか、あるいは自己免疫的に破壊された訳ではないが膵臓のβ細胞からのインスリン分泌量が減少し、結果として血糖値の調整がうまくいかず糖尿病となる。その他にも、妊娠糖尿病をはじめとして発症機序の違いに基づくいくつかの病名があって、これらをひとまとめにしている糖尿病は病名というより症候群と言ったほうが適切である。
「糖尿病」の名称は、血糖が高まる結果、尿中に糖が排出されることに由来する。しかし尿中に糖が排出されること自体は大きな問題ではない。1型糖尿病の場合、放置すると容易に急激な高血糖と生命の危険も伴う意識障害を来す糖尿病性ケトアシドーシスを引き起こしかねないため、インスリン注射などの積極的な治療により強力に血糖値を下げることが基本的な治療目標となる。一方2型糖尿病においては1型ほど血糖値が上昇することは通常ないが、治療せず長期に放置すると糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症などの糖尿病慢性期合併症の起こる頻度が多くなるため、生活習慣の是正、経口血糖降下薬やインスリン注射により血糖値をある程度下げることによってこのような合併症を引き起こすことを防ぐことが治療目標である。糖尿病は心臓病や脳血管障害の発症の危険因子でもある[3]。長期的に落ち着いている1型糖尿病においては、やはり治療目標は2型と同様のものになる。妊娠糖尿病においては、妊婦の高血糖を原因として胎児奇形や妊産婦合併症の頻度が高くなる理由となるので、それを防ぐために血糖値を下げる治療をするのである。 平成14年度に行われた厚生労働省の調査では、糖尿病が強く疑われる人の割合は、20歳以上の男性全体で12.8%であり、20歳以上の女性全体で6.5%であった。糖尿病が強く疑われ、現在治療を受けている人で合併症を併発している人の割合は、神経障害で15.6%、網膜症で13.1%、腎症で15.2%、足壊疽で1.6%であった。また、加齢と糖尿病は関連があり、糖尿病が強く疑われる男性の割合は、20-29歳で0%、30-39歳で0.8%、40-49歳で4.4%、50-59歳で14.0%、60-69歳で17.9%、70歳以上21.3%であった。さらに、肥満と糖尿病は関連があり、40-59歳の男性で、糖尿病が強く疑われる人の割合は、BMI18.5-22で5.9%、BMI22-25で7.7%、BMI25-30で14.5%、BMI30以上で28.6%であった。なお、加齢を重ねていない20-39歳の男性ではこのような大きな差は出ていなかった[3]。
1971年から1980年のデータで糖尿病患者と日本人一般の平均寿命を比べると男性で約10年、女性では約15年の寿命の短縮が認められた[4][5]。このメカニズムとして高血糖が生体のタンパク質を非酵素的に糖化させ、タンパク質本来の機能を損うことによって障害が発生する。この糖化による影響は、例えば血管の主要構成成分であるコラーゲンや水晶体蛋白クリスタリンなど寿命の長いタンパク質ほど大きな影響を受ける。例えば白内障は老化によって引き起こされるが、血糖が高い状況ではこの老化現象がより高度に進行することになる[4]。同様のメカニズムにより動脈硬化や微小血管障害も進行する。また、糖化反応により生じたフリーラジカル等により酸化ストレスも増大させる[6]。
世界保健機関 (WHO) によると、2006年の時点で世界には少なくとも1億7100万人の糖尿病患者がいるという。患者数は急増しており、2030年までにこの数は倍増すると推定されている。糖尿病患者は世界中にいるが、先進国ほど(2型の)患者数が多い。しかしもっとも増加率の高い地域はアジアとアフリカになるとみられており、2030年までに患者数が最多になると考えられている。発展途上国の糖尿病は、都市化とライフスタイルの変化にともなって増加する傾向があり、食生活の西欧化よりも、糖質の多量摂取と運動量のバランスを欠く生活が長期間続くと発病する可能性がある。このことから糖尿病には(食事など)生活環境の変化が大きくかかわってくると考えられる。
先進国において、糖尿病は10大(あるいは5大)疾病となっており、他の国でもその影響は増加しつつある。米国を例にとると、北米における糖尿病比率は、少なくともここ20年間は増加を続けている。2005年には、米国だけでおよそ2080万人の糖尿病患者がいた。全米糖尿病協会[9]によると、620万人の人々がまだ診断を受けておらず、糖尿病予備軍は4100万人にまで及ぶ。
2012年時点の全世界での糖尿病罹患率は8.3%であり、日本では5.1%である[10]。
白髪の髪に白髪でない眉を持つ50~70歳代の人々は、髪・眉共に白髪である人々と比べて、成人性糖尿病を持つ人々との相関関係を持っていることが示された[11]。
日本国内の患者数は、この40年間で約3万人から700万人程度にまで増加しており、境界型糖尿病(糖尿病予備軍)を含めると2000万人に及ぶとも言われる。厚生労働省発表によると、2006年11月時点の調査データから、日本国内で糖尿病の疑いが強い人は推計820万人であった。
厚生労働省の2006年の人口動態統計によれば、全国の死亡率の都道府県ワースト1位は1993年から14年連続で徳島県である(10万人当たり19.5人、ちなみに最低は愛知県で7.5人)。特定の疾患等による死亡率で10年以上継続して、同一の県が1位で最低値と3倍近い差があるのは他にあまり例を見ない(他の地域的な高率としては、精神医療の分野において、秋田県が1995年から2006年まで12年連続自殺率1位であることなどが挙げられる。秋田県の自殺率、すなわち人口10万人当たりの自殺者数は42.7人で、全国平均は23.7人である)。糖尿病は生活習慣病の一種であるため、治療型から保健指導型の予防医療への転換を図らない限り、その死亡率を劇的に下げることは難しい。徳島県は医療機関数・医師数などが全国平均よりも高い県であるため、徳島県医師会や医療機関、徳島県その他行政機関及び地域住民の糖尿病予防に対する知識と意識の低さが要因として毎年指摘されている。徳島県は2005年11月に「糖尿病緊急事態宣言」を宣言したが、2006年時点では10万人当たりの死亡率は前年の18.0人から19.5人に悪化し、2007年時点では14.2人と改善した。また徳島県では20歳以上の男性の37.2パーセントが肥満であり、全国平均の28.4パーセントを上回っている。
なお、厚生労働省の2007年の人口動態統計(概数)によれば、徳島県はワースト1位を15年ぶりに脱し、平均14.2人(人口10万人当たり死亡率)ワースト6位になった(全国平均は11.1人)
糖尿病の四大原因は、加齢、遺伝、肥満、運動不足と言われているが、徳島県に限らず、公共交通機関が少ないマイカー頼みの地方社会が死亡率が高い傾向がある。
2006年は、徳島県を筆頭に、2位鹿児島県(14.2人)、3位福島県(14.1人)、4位鳥取県(13.7人)、5位青森県(13.6人)がワースト5であり、逆に東京都(9.9人)の他、岐阜県(9.5人)、長崎県(9.5人)、大分県(9.5人)、宮崎県(9.3人)、滋賀県(9.1人)、埼玉県(8.9人)、奈良県(8.5人)、神奈川県(8.4人)、愛知県(7.5人)の10都県が10万人当たりの死亡率が10人を下回る。際立った地域格差が見られるのも糖尿病死亡率の特徴である。死亡率の低い地域に九州の高齢者が多い地域も入っていることから、加齢や遺伝以外にも、食習慣や運動習慣が大きく影響することは以前より指摘されている。死亡率の高い県は、きめ細かい分析と対応に早急に取り組み、なおかつ、それを根気よく継続していく必要に迫られている。
さまざまな研究がなされている研究の一例を列挙する。
上述の通り、現在、糖尿病を世界の成人人口の約5~6パーセントが抱えており、その数は増加の一途を辿っている。また糖尿病による死者数は、後天性免疫不全症候群 (AIDS) による死者数に匹敵し、糖尿病関連死亡は、AIDSのそれを超えると推計している。このような状況を踏まえ国際連合は、国際糖尿病連合 (IDF) が要請してきた「糖尿病の全世界的脅威を認知する決議」を2006年12月20日に国連総会で採択し、インスリンの発見者であるバンティング博士の誕生日である11月14日を「世界糖尿病デー」に指定した。日本でも、2007年11月14日には東京タワーや鎌倉大仏、通天閣などを「世界糖尿病デー」のシンボルカラーである青にライトアップし、糖尿病の予防、治療、療養を喚起する啓発活動が展開された。
なお、国連が「世界○○デー」と疾患名を冠した啓発の日を設けたのは、12月1日の「世界エイズデー」に続き「世界糖尿病デー」が2つ目である。
糖尿病は、以下に挙げられているように、発症の機序(メカニズム)によって分類されている。以前は治療のやり方によって「インスリン依存型糖尿病」あるいは「インスリン非依存型糖尿病」に分類されていたことがあった。さらにそれより以前には、I型糖尿病、II型糖尿病とローマ字を使って分類されていた。しかし2010年現在ほぼ世界中すべてにおいて、以下のように病気の原因に基づく分類が用いられている。ここでは日本糖尿病学会分類基準(1999年)にしたがって分類している。
1型糖尿病(いちがたとうにょうびょう、ICD-10:E10)は、膵臓のランゲルハンス島でインスリンを分泌しているβ細胞が死滅する病気である。その原因は主に自分の免疫細胞が自らの膵臓を攻撃するためと考えられているが(自己免疫性)、まれに自己免疫反応の証拠のない1型糖尿病もみられる(特発性)。
一般的に「生活習慣が悪かったので糖尿病になりました」と言う場合、1型糖尿病を指すことはほとんどない。患者の多くは10代でこれを発症する。血糖を下げるホルモンであるインスリンの分泌が極度に低下するかほとんど分泌されなくなるため、血中の糖が異常に増加し糖尿病性ケトアシドーシスを起こす危険性が高い。そのためインスリン注射などの強力な治療を常に必要とすることがほとんどである。
2型糖尿病(にがたとうにょうびょう、ICD-10:E11)は、インスリン分泌低下と感受性低下の二つを原因とする糖尿病である。一般的に「生活習慣が悪かったので糖尿病になりました」と言う場合、この2型糖尿病を指す。欧米では感受性低下(インスリン抵抗性が高い状態)のほうが原因として強い影響をしめすが、日本では膵臓のインスリン分泌能低下も重要な原因である。少なくとも初期には、前者では太った糖尿病、後者ではやせた糖尿病となる。遺伝的因子と生活習慣がからみあって発症する生活習慣病で、日本では糖尿病全体の9割を占める。
2型糖尿病が発症する原因は完全に明らかではないが、大筋を言うと、遺伝的に糖尿病になりやすい体質(遺伝因子)の人が、糖尿病になりやすいような生活習慣を送ること(環境因子)によって2型糖尿病になると考えられている。遺伝的な原因としては、KCNQ2[28][29]、PPARG、KCNJ11、TCF2L7[30] [31][32]などとい った遺伝子上の配列の違いによって、同じような生活習慣を送っていても、ある人は糖尿病が起こりやすく、別の人は起こりにくくなるという違いがあることがわかってきている。また、日本で欧米と比較して多く見られるインスリン分泌能低下を主要因とするやせ型糖尿病の原因遺伝子としてKCNJ15が挙げられていて、日本人において発見されたこの遺伝子上の危険因子となる配列は欧米人にはきわめてまれであると報告されている[33]。
慢性に高血糖が持続すると膵β細胞機能が障害されると共に、過剰な血糖をグリコーゲンに転換して蓄える筋肉や肝臓、脂肪に転換して蓄える脂肪組織においてもインスリン抵抗性が生じて更なる高血糖をもたらし、これがインスリン分泌不全、インスリン抵抗性を更に増悪させ、糖尿病状態を一層悪化させる状態が糖毒性として取り上げられている[34]。 インスリン抵抗性などによって生じた高血糖状態は、膵β細胞内において、大量の活性酸素種の生成やタンパク質とグルコースとの糖化反応を引き起こす。一般に糖毒性と呼ばれるこの現象は、β細胞のインスリン含量の減少やβ細胞数の減少を引き起こすと考えられる[35]。
さらに血中遊離脂肪酸の上昇がみられる肥満では肥大した脂肪細胞から種々のサイトカインや脂肪酸が分泌され、遊離脂肪酸が膵β細胞機能を障害すると共に、インスリン抵抗性が増強される状態が脂肪毒性として取り上げられている[34]。
1型、2型の糖尿病は、その原因が完全に明らかである訳ではない。いっぽうこの項目に分類される疾患は、特定の遺伝子の機能異常によって糖尿病が発症している、という原因がわかっている糖尿病である。頻度はきわめてまれ。いずれも比較的若年(一般的に25歳以下)に発症し、1型ほど重症ではなく、強い家族内発症がみられるという特徴があるが、臨床所見は大きく異なる。
いずれも診断にはゲノムDNAやミトコンドリアDNAを検体とした特殊な検査が必要である。
続発性糖尿病(ぞくはつせいとうにょうびょう、二次性糖尿病)(ICD-10:E13)は、他の疾患によって引き起こされる糖尿病である。以下に挙げたものは代表的な疾患で、ほかにも原因となる疾患は存在する。
ステロイド糖尿病は、膠原病などでステロイドを長期に内服したことによって生じる続発性糖尿病である。ステロイド(糖質コルチコイド)作用の、肝臓の糖新生亢進作用、末梢組織のインスリン抵抗性の亢進、食欲増進作用が関わっているとされる。ステロイドを減量すれば軽快する。ステロイド糖尿病では通常の糖尿病と異なり、網膜症などの血管合併症が起こりにくいとされる。食後高血糖のパターンをとることが多く、入院中ならばインスリンやαGIといった経口剤を用いることが多い。
妊娠糖尿病は、妊娠中のみ血糖値が異常となる症状をいう。ICD-10:O24.4、O24.9。2型糖尿病とは異なる病気であることに注意を要する(必ずしも「生活習慣の悪い妊婦」がなるわけではない)。
原因としては、妊娠中に増加するホルモンであるhPLやエストロゲン、プロゲステロンなどがインスリン抵抗性を悪化させることによる。一般には、出産後に改善する。一方、もともと糖尿病患者が妊娠した場合は、糖尿病合併妊娠と呼ばれる。とは言え、もともと糖尿病であったかどうかを完全に確認できているわけではなく、妊娠糖尿病で発症し、分娩後もそのまま糖尿病が治らないこともままある。基本的に食事療法が行われるが、改善しない場合、後述の胎児へのリスクもあり、また飲み薬は催奇形性の懸念があるためインスリン注射療法を行うことになる。胎児への影響があるため、通常時より厳格な管理を必要とし、六分食やインスリン持続皮下注 (CSII) などを行うこともある。
妊娠糖尿病では先天異常のリスクが高まるが、妊娠初期から正常血糖を保っていれば、通常の妊娠と同等である。早産も多く、羊水過多、妊娠高血圧症候群の頻度も高いハイリスク妊娠のひとつである。妊娠糖尿病では巨大児になりやすいため、難産になりやすい。また妊娠糖尿病では中枢神経系よりも身体の発育が良いので、出産のときに頭が通っても肩が通らない肩甲難産になりやすい。そのため、分娩が長引く場合は帝王切開が良い。
通常糖尿病患者は自覚症状はないと考えることが多い。しかし、よくよく話を聞いてみると、下記に列挙するような手足のしびれや便秘などが実はあるのだが、特別な症状と考えていないことがある。血糖値がかなり高くなってくると、口渇・多飲・多尿という明白な典型的症状が生じる。これらは血糖値が高いということをそのまま反映した症状なので、治療により血糖値が低下するとこれらの症状は収まる。血糖値がさらに高くなると、重篤な糖尿病性昏睡を来たし、意識障害、腹痛などをきたすこともある。いっぽう発症初期の血糖高値のみでこむら返りなどの特異的な神経障害がおこることがある。また発症初期に急激に血糖値が上昇した場合、体重が減少することが多い(血液中に糖分が多い一方、脂肪細胞などは糖分が枯渇した状態になるためである)。
その他の症状は、たいてい糖尿病慢性期合併症にもとづくものである。
これらのような糖尿病に典型的な合併症に加えて、敗血症、心筋梗塞、閉塞性動脈硬化症、脳梗塞も糖尿病においてはきわめて起こりやすい[38]ので、それらの病気に由来する症状を起こすことがある。
症状そのものも重要だが、「あるべき症状を感じないことがある」ことも糖尿病の重要なポイントである。すなわち、神経障害が起こった状態での心筋梗塞がそれである。心筋梗塞は通常激しい胸痛を伴うので、患者はすぐさま医療機関への受診へと至り治療を行うことになる。ところが糖尿病がある場合、この重要な警告情報である「胸痛」を感じないことがあって、「無痛性心筋梗塞」と呼ばれる。これは自覚症状がないので早期の治療を困難にし、知らぬ間に心不全や死亡に至ることがある。同様のこととして、末梢神経障害があるので、手足の先で温度を感じる機能がにぶくなったため、こたつやあんかなどで低温やけどを来すことがある。この場合、糖尿病はさらに閉塞性動脈硬化症を併発していたりして、手足への血液(これは栄養そのものである)の供給が不十分であると、傷ついた手足の皮膚を修復できず、傷がどんどん広がって巨大な足潰瘍に至り足切断をしなければならなくなる。
糖尿病はアルツハイマー型認知症のリスク要因となっている[38]。インスリンの分泌を増やす糖質中心の食習慣、運動不足、内臓脂肪過多がアルツハイマー型認知症の原因となるアミロイドベータの分解を妨げているとしている。アミロイドベータも分解する能力のあるインスリン分解酵素が糖質中心の食生活習慣によって血中のインスリンに集中的に作用するため、脳でのインスリン分解酵素の濃度が低下し、アミロイドベータの分解に手が回らずに蓄積されてしまうとしている。
1998年の久山町の調査では、糖尿病は悪性腫瘍死の発生のリスクを有意に増大させ、高血糖の程度を示すヘモグロビンA1cの高値の者ほど胃がんの発生率が高かった。糖尿病及び高血糖は悪性腫瘍の重要な危険因子である[38]。糖尿病と診断されたことのある人はない人に比べ20-30%ほど、後にがんになりやすくなる傾向があり、男性では肝がん、腎臓がん、膵がん、結腸がん、胃がん、女性では胃がん、肝がん、卵巣がんでこの傾向が強かった[39]。C-ペプチドは、インスリン生成の際、インスリンの前駆体であるプロインスリンから切り放された部分を指すが、男性では、C-ペプチド値が高いと大腸癌リスクが高くなる。C-ペプチドは男性の結腸癌と関連がある[40]。
糖尿病の診断や治療効果判定のためには血液検査のほかに様々な検査を行う。また慢性期合併症の治療目的で行われることもある。
イノシトール(myo-イノシトール)はグルコースと類似の構造を持つ糖アルコールであり、ホスファチジルイノシトールを加水分解することで得られるインスリンメッセンジャーである。[41]イノシトールは、通常糸球体より排泄され、尿細管で再吸収されるが、高血糖状態においては、グルコースと競合するため、再吸収されず尿中排泄量が増加する。その結果、体内のイノシトール量が低下し、ポリオール代謝異常によって、神経症の成因となる。[42]
日本では、日本糖尿病学会が2010年7月より新しい診断基準を施行した。(従来の診断基準は1999年に施行されたもの)
新基準では、血糖値だけでなくヘモグロビンA1c(HbA1c)の基準も設けられた。
血糖値(空腹時血糖値、75gOGTT2時間後血糖値、随時血糖値)及びHbA1cの検査結果で判定を行う。
空腹時血糖(mg/dl) | 75gOGTT2時間後血糖(mg/dl) | 随時血糖値(mg/dl) | HbA1c(%) | |
---|---|---|---|---|
糖尿病型 | 126以上 | 200以上 | 200以上 | 6.5%以上(JDS値では6.1%以上) |
血糖値、HbA1cのいずれかが糖尿病型だったにもかかわらず、上記以外ケースで糖尿病と診断にいたらなかった場合は「糖尿病疑い」とされる。糖尿病疑いの人は3~6か月以内の再検査が推奨され、その時点で再度判定することになる。
概要としては以下のとおりである。
運動療法が細胞にグルコースを取り込ませ、血糖値を低下させるメカニズムは次のとおりである。運動が持続するとアデノシン三リン酸(ATP)が消費されてアデノシン二リン酸(ADP)が蓄積する。蓄積されたADPはアデニル酸キナーゼ(AMPキナーゼ)によってATPとアデノシン一リン酸(AMP)へ変換される。AMPは、AMPキナーゼに結合してこれを活性化する。活性化されたAMPキナーゼは、通常はインスリンにしか反応しないインスリン感受性のグルコーストランスポーターであるGLUT4を膜の表面へ移動させ、グルコースを骨格筋内の細胞に取り込む作用がある。この運動によるグルコース取り込みはインスリンによる取り込みとは関係しない[44]。このことから、1型糖尿病であっても、発症初期にはインスリン非依存状態で食事療法と運動療法で良好な血糖値が得られる場合がある[45][46]。
肝細胞は、食後直後に肝臓の重量の8 %(大人で100-120 g)までのグリコーゲンを蓄えることができる[47]。骨格筋中ではグリコーゲンは骨格筋重量の1-2 %程度の低い濃度でしか貯蔵できない。筋肉は、体重比で成人男性の42%、同女性の36%を占める[48]。このため体格等にもよるが大人で300g前後のグリコーゲンを蓄えることができる。グリコーゲンホスホリラーゼは、グリコーゲンをグルコース単位に分解する。グリコーゲンはグルコースが一分子少なくなり、遊離するグルコース分子は グルコース-1-リン酸となる[49]。グルコース-1-リン酸が代謝されるには、ホスホグルコムターゼによってグルコース-6-リン酸に変換される必要がある(詳細はグリコーゲンホスホリラーゼを参照のこと)。肝臓はグルコース-6-ホスファターゼを持ち、解糖系や糖新生でできたグルコース-6-リン酸のリン酸基を外すことができる。こうしてできたグルコースは血液中に放出され、他の細胞に運ばれる。グルコース-6-ホスファターゼは、グルコースの恒常性維持のための役割をもつ肝臓と腎臓で見られ、網状組織内部原形質の内膜に存在する(詳細はグルコース-6-ホスファターゼを参照のこと)。肝臓と腎臓以外の筋肉ではこの酵素を含んでおらず、グルコース-6-リン酸のリン酸基を外してグルコースに変換できないために細胞膜を通過することができず(詳細はグルコース-6-リン酸を参照のこと)、筋肉中のグリコーゲンは他臓器でグルコースとして利用することができず、筋肉自らのエネルギー源として使用される。経口的に摂取された糖の2-3割は骨格筋で利用されると言われているが、骨格筋の糖消費が十分でない場合には食後の血糖が上昇することとなる。このため、運動によるグリコーゲンの消費は骨格筋の糖取り込みを直接刺激するとともに、インスリン感受性も増強させる。また、継続的な運動により肥満が解消されれば、さらにインスリン抵抗性の改善につながる[46]。
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古代中世の世界では糖尿病の根本原因はわからなかった。しかし異常な喉の渇き、異常な頻尿がみられる症状を糖尿病の症状として正しく把握していた。糖尿病に関しての最古の記録は紀元前1550年頃のエジプトのパピルスに書かれた「尿があまりにもたくさん出る病気」という記述である。漢方の世界では「一斗ほどの水を飲み、一斗ほどの小便をする病=消渇病」という名前が糖尿病に与えられていた。「消渇」とは「食べ物が体内で消える・体内を通過してしまう」という意味である。古代ギリシャでも、「まるで魚のようにいつも水が必要になる病」として糖尿病がすでにとらえられていた。
中国史においては唐代に反乱を起こした安禄山(非常な肥満体型として知られる)が反乱の最中に失明などを引き起こしたのが糖尿病によるものではないかとする説がある。また前漢の武帝も糖尿病を患ったが、八味地黄丸などの漢方薬の投与によって治癒したとされている。漢方薬の世界では古代から消渇病=糖尿病に対して対処治療してきた蓄積があり、八味地黄丸、牛車腎気丸などの補腎薬が糖尿病に効果があるとされている。これはこれら補腎薬が膵臓の機能を回復させる働きをもつためである。また田七人参や朝鮮人参なども、血液を浄化し膵臓など内臓機能を回復させるため、漢方では糖尿病に効果があるとされてきた。
日本史上では藤原道長の晩年の健康状態を記した記録(藤原実資の日記「小右記」に見られる)が糖尿病の病態と酷似しており、糖尿病の日本での最古の記録に相当するのではないかと言われている[50]。また、道長の一族には「飲水」と呼ばれる病気が原因で死去するものが多かったと伝えられており、詳細は不明であるが患者はしばしば水を飲用したがる病状が見られるという記録からこれを糖尿病であると考えて、藤原摂関家には糖尿病の遺伝的要因があったのではとする学者もいる。この当時、酒の醸造技術が未熟で、酒には大量のアルコールに変化していない糖が含まれていた。日夜宴会に明け暮れ大量の飲酒の習慣を持ち、しかも糖質中心の食事、家人が労働のほとんどを受け持ち、極度の運動不足な(筋肉中のグリコーゲンを消費しない)生活をおくる貴族は常に糖尿病の危険性に晒されていた。
織田信長やJ.S.バッハ等も当時の文献に残された症状から、糖尿病だったのではないかと言われている。ちなみに信長は肥満体型ではなかったが、かなりの甘党であった。記録によると晩年の信長は喉渇と頻尿、さらに糖尿病由来と思われる神経痛に苦しめられていた。戦国時代同時期の73歳の長寿であった家康は食後の血糖値上昇を抑制する効果のある水溶性食物繊維(食物繊維を参照のこと)の豊かな麦飯を常食していた[51]。エジソン、セザンヌ、バルザックなども糖尿病に罹患していた可能性が高い。
近代日本においては明治天皇が、糖尿病の悪化と併発した尿毒症で崩御したことが知られている。明治天皇も信長と同様、肥満体型ではなかったが甘党であった。87歳の長寿であった昭和天皇は麦飯を常食していたと言われる(麦飯を参照のこと)。寿命に関した研究では、超高齢者に共通していたことは、体格は中程度で主食は麦飯であったこと、魚、大豆製品を主なタンパク質源として摂取していたこと、が指摘されている[52]。政治家では田中角栄、大平正芳、芸能人では山城新伍、根上淳、村田英雄などが糖尿病罹患者として知られている。
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国試過去問 | 「113A059」「108G049」「095F030」「113D021」「097H060」「102G048」「106E023」「097G109」「101B045」「112E001」 |
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C
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C
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k氏より
インスリンの抽出は大変意図的に行われたのに対し、スルフォニルウレア薬(SU)は偶然に見つかりました。で、1950年代にはじめに二型糖尿病の患者に使われるようになりました。いまでは20種類くらいのSUが広く世界で使われています。 1997にはメグリチニドが臨床適用されました。食後高血糖の治療薬としてはじめて使用された薬です。 メタフォルミンというビグアナイド薬(BG)は、ヨーロッパで広く使われていましたが、1995年にアメリカでも認可されました。 チアゾリジン1997年に市場導入され、二番目にメジャーなインスリン刺激薬として使用されています。この種類の薬には、広汎な肝障害を起こしにくく、世界中で使われています。
膵臓のβ細胞の刺激によって、インスリンを放出させ、血糖値を下げます。 治療が長引くと、インスリン分泌というSUのβ細胞刺激性の効果が薄れてきますが、β細胞上のSU受容体のダウンレギュレーションによるものです。また、SUはソマトスタチンの放出を刺激します。ソマトスタチンはグルカゴン分泌を抑制しているので、これも関係SUの糖を下げる効果と関係しています。 SUはATP感受性Kチャンネルを抑制します。Kレベルが下がると、まく表面における、脱分極を促し、電位依存性カルシウムチャンネルを通じたカルシウムイオンの流入を促進します。 SUには無視できない膵臓外作用があるという議論があります。確かにありうべきことですが、2型糖尿病の患者の治療においては、それほど重要なことではないようです。
SU薬はそれぞれが似たような作用スペクトラムを持っているので、薬物動態的な特性がここの薬を区別する手がかりです。腸管からのSU薬の吸収の割合は薬によって違いますが、食物や、高血糖は、この吸収を抑制します。高血糖はそれ自身、腸管の運動を抑制するので、ほかの薬の吸収も阻害します。血漿濃度が効果的な値にまで達する時間を考えると、半減期の短いSUは、食前三十分に投与するのが適切です。SU薬は90から99パーセントくらい血中たんぱく質と結合し、特にアルブミンと結合します。 第一世代のSUは半減期や分布において、大きく違っています。この半減期や作用時間の不一致の理由はいまだはっきりしていません。 SUはすべて肝臓で代謝を受け、尿中に排泄されます。なので、肝不全、腎不全患者には要注意で処方します。
めったにありませんが、第一世代服用患者では、4パーセントの割合でおきます。第二世代ではもっと少ないでしょう。低血糖による昏睡がしばしば問題になります。腎不全や肝不全がある高齢者の患者でおきやすいです。 重症の低血糖は脳血管障害も起こしうる。急性の神経障害が見つかった高齢患者では血中グルコースレベルを測るのが大事です。半減期の長いSUもあるので、24から48時間のグルコースを輸液します。 第一世代は多くの薬物と相互作用を持っています。 ほかに、吐き気嘔吐、胆汁うっ滞性黄疸、脱顆粒球症、再生不良性・溶血性貧血、全身性のアレルギー症状があります。 SUが心血管障害による死亡率を上げるのかについては議論の余地あり。
SUは、食事療法だけでは十分なコントロールを得られない2型糖尿病患者の血糖コントロールに用いられます。禁忌はtype 1 DM(diabetes mellitus:糖尿病)、妊婦、授乳中の患者、腎障害や肝障害の患者です。 普通の患者なら五割から八割くらい、経口の糖尿病治療薬が効きます。インスリン療法が必要になる患者もいます。 トルブタマイドの一日量は500ミリグラムで、3000ミリグラムが最大の許容量です。SUの治療成績の評価は患者の様子を頻繁に観察しながら、行います。 SUとインスリンの併用療法はtype 1, type 2 両方の糖尿病で用いられていますが、βセルの残存能力がないとうまくいきません。
レパグリニドはメグリチニドクラスの経口インスリン分泌促進物質です。化学構造上、SUとは異なっており、安息香酸から分離されたものです。 SU薬と同様にレパグリニドは膵臓βセルにおけるATP依存性Kチャンネルを閉じることによりインスリン分泌を促進します。AEもSU薬と同様、低血糖です。
Dふぇにるアラニンから分離された薬。レパグリニドよりもSEとして低血糖が認められづらいです。
メトフォルミンとフェノフォルミンは1957年に市場導入され、ブフォルミンが1958年に導入されました。ブフォルミンは使用が制限されていますが、前者二つは広く使われています。フェノフォルミンは1970年代に乳酸アシドーシスのAEによって市場から姿を消しました。メトフォルミンはそのようなAEは少なく、ヨーロッパカナダで広く使われています。アメリカでは1995年に使用可能に。メトフォルミンは単独かSUと併用して使われます。
ものの言い方によると、メトフォルミンは抗高血糖であって、血糖を下げる薬ではありません。膵臓からのインスリン放出は促さないので、どんな大容量でも低血糖は起こしません。グルカゴン・コルチゾール・成長ホルモン・ソマトスタチンにも影響なし。肝での糖新生を抑制したり、筋や脂肪におけるインスリンの働きを増すことで、血糖を押さえます。
小腸から吸収。安定な構造で、血中の蛋白と結合しないで、そのまま尿中に排泄。半減期は二時間。2.5グラムを食事と一緒に飲むのがアメリカで最もお勧めの最大用量。
メトフォルミンは腎不全の患者には投与しないこと。肝障害や、乳酸アシドーシスの既往、薬物治療中の心不全、低酸素性の慢性肺疾患なども合併症として挙げられる。乳酸アシドーシスはしかしながら、めちゃくちゃまれである。1000人年(たとえば100人いたら、10年のうちにという意味の単位。または1000人いたら1年につき、ということ。)につき0.1という割合。 メトフォルミンの急性のAEは患者の20パーセントに見られ、下痢、腹部不快感、吐き気、金属の味、食欲不振などです。メタフォルミンを飲んでいる間はビタミンB12や葉酸のきゅうしゅうが 落ちています。カルシウムをサプリで取ると、ビタミンB12の吸収が改善されます。 血中乳酸濃度が3ミリMに達するとか、腎不全・肝不全の兆候が見られたら、メタフォルミンは中止しましょう。
PPARγに効く。(ペルオキシソーム・プロライファレーター・アクチベイティッド・受容体、つまりペルオキシソーム増殖活性受容体みたいな。)PPARγに結合して、インスリン反応性をまして、炭水化物とか、脂質の代謝を調整します。
ロジグリタゾンとピオグリタゾンは一日一度。チアゾリジンは肝にて代謝され、腎不全のある患者にも投与できますが、活動性の肝疾患があるときや肝臓のトランスアミナーゼが上昇しているときは、使用しないこと。 ロジグリタゾンはCYP2C8で代謝されますがピオグリタゾンはCYP3A4とCYP2C8で代謝されます。ほかの薬との相互作用や、チアゾリジン同士の相互作用はいまだ報告されていませんが、研究中です。
ピオグリタゾンとロジグリタゾンは肝毒性とはめったに関係しませんが、肝機能をモニターする必要があります。心不全のある患者はまずそちらを治療してから。
αGIは小腸の刷子縁におけるαグルコシダーゼの働きを阻害することによって、でんぷん・デキストリン・ダイサッカリダーゼの吸収を抑制します。 インスリンを増やす作用はないので、低血糖もおきません。吸収がよくない薬なので、食事の開始と一緒に飲むとよいです。 アカルボースとミグリトールは食後高血糖の抑制に使われます。 αGIは用量依存性に、消化不良・ガス膨満・下痢などをきたします。αGIとインスリンを併用中に低血糖症状が出たら、、グルコースを補充します。
経口から、グルコースが静脈を通ると、インスリンが上がることがわかっていました。消化管の上部からはGIP、消化管下部からはGLP1というホルモンが出ていて、糖依存性のインスリン放出を促していることがわかりました。これらのホルモンはインクレチンといわれています。この二つのホルモンは別の働き方でインスリンの放出を促進します。GIPはtype 2 DMではインスリン分泌を促進する能力がほとんど失われています。一方でGLP1は糖依存性のインスリン分泌を強く促しています。つまりtype 2 DMの治療ではGIPをターゲットにすればよいということになります。GLPはグルカゴンを抑制し。空腹感を押さえ、食欲を抑えます。体重減少も実現できます。この長所を相殺するように、GLP1は迅速にDPPIV(ヂペプチジルペプチダーゼ4エンザイム)によって負活化されます。つまり、GLP1を治療に使うなら、連続的に体に入れなければなりません。GLP1受容体のアゴニストが研究され、これはDPPIVにたいして抵抗性があります。 そのほかのGLP1療法のアプローチに仕方としては、DPPIVプロテアーゼの不活性化で、それによってGLP1の循環量を増やそうとするものです。type 2 DM治療に新しい薬がでるかもしれないですね。
糖尿病ケトアシドーシス : 約 90,300 件 糖尿病性ケトアシドーシス : 約 61,300 件
DKA | HONK | ||
糖尿病病型 | 1型糖尿病 | 2型糖尿病 | |
発症年齢 | 若年 | 高齢 | |
前駆症状 | 多飲、多尿、消化器症状 | 特異的なものはない | |
身体異常 | 脱水、アセトン臭、クスマウル大呼吸 | 脱水、アセトン臭-、中枢神経症状(痙攣、振戦) | |
検査所見 | 尿ケトン体 | (+)~(++) | (-)~(±) |
血糖値(mg/dL) | 300~1000 | 600~1500 | |
浸透圧(mOsm/L) | >300 | >350 | |
Na (mEq/L) | 正常~軽度低下 | >150mEq/L | |
pH | <7.3 | 7.3~7.4 | |
BUN | 上昇 | 著明上昇 | |
K | ↑ | ↑ |
疾患 | 危険因子 | 防御因子 | |
悪性腫瘍 | 胃癌 | 塩辛い食品、喫煙、くん製製品、ニトロソアミン土壌、腸上皮化生、Helicobacter pyroli | ビタミンC、野菜、果実 |
食道癌 | 喫煙、飲酒、熱い飲食物 | 野菜、果実 | |
結腸癌 | 高脂肪食、肉食、低い身体活動、腸内細菌叢の変化、遺伝(家族性大腸腺腫症) | ||
肝癌 | HBVキャリア・HCVキャリア、アフラトキシン、住血吸虫、飲酒 | ||
肺癌 | 喫煙(特に扁平上皮癌)、大気汚染、石綿(扁平上皮癌、悪性中皮腫) | 野菜、果実 | |
膵癌 | 高脂肪食、喫煙 | ||
口腔癌 | 喫煙(口唇・舌-パイプ)、ビンロウ樹の実(口腔、舌)、飲酒 | ||
咽頭癌 | EBウイルス(上咽頭癌)、飲酒 | ||
喉頭癌 | 喫煙、男性、アルコール | ||
乳癌 | 高年初産、乳癌の家族歴、肥満、未婚で妊娠回数少ない、無授乳、脂肪の過剰摂取、低年齢初経、高年齢閉経 | 母乳授乳 | |
子宮頚癌 | 初交年齢若い、早婚、多産、性交回数が多い(売春)、貧困、不潔]、HSV-2、HPV、流産、人工妊娠中絶回数が多い | ||
子宮体癌 | 肥満、糖尿病、ピル、エストロゲン常用、未婚、妊娠回数少ない、乳癌後のタモキシフエン内服 | ||
膀胱癌 | 喫煙、鎮痛剤乱用、ビルハルツ住血吸虫、サッカリン、防腐剤 | ||
皮膚癌 | 日光(紫外線)、ヒ素(Bowen病) | ||
白血病 | 放射線、ベンゼン、地域集積性(ATL)、ダウン症(小児白血病) | ||
骨腫瘍 | 電離放射線 | ||
甲状腺癌 | ヨード欠乏または過剰 | ||
バーキットリンパ腫 | EBウイルス | ||
循環器疾患 | 脳出血 | 高血圧、重筋肉・夜勤労働、蛋白摂取不足、低アルブミン血症、食塩、家族歴、初老期の男、過度の習慣性飲酒、ストレス、寒冷 | |
脳梗塞 | 高血圧、運動不足、糖尿病、肥満、食塩、喫煙、家族歴、加齢、高脂血症 | 有酸素運動 | |
虚血性心疾患 | 高血圧、高脂血症、喫煙、HDLコレステロール低値、糖尿病、肥満、過度の飲酒、運動不足、年齢、性、ストレス | 適度の飲酒 | |
高血圧疾患 | 寒冷、食塩、肥満、飲酒、カリウム(野菜、果物)の摂取不足、ストレス | 減量 | |
2型糖尿病 | 家族歴、肥満、脂肪の過剰摂取、運動不足、喫煙、薬剤(降圧薬etc.) | ||
肝硬変 | HCV、HBV、飲酒(多量) |
高浸透圧高血糖症候群 : 約 5,680 件 高血糖高浸透圧症候群 : 約 10,800 件
DKA | HONK | ||
糖尿病病型 | 1型糖尿病 | 2型糖尿病 | |
発症年齢 | 若年 | 高齢 | |
前駆症状 | 多飲、多尿、消化器症状 | 特異的なものはない | |
身体異常 | 脱水、アセトン臭、クスマウル大呼吸 | 脱水、アセトン臭-、中枢神経症状(痙攣、振戦) | |
検査所見 | 尿ケトン体 | (+)~(++) | (-)~(±) |
血糖値(mg/dL) | 300~1000 | 600~1500 | |
浸透圧(mOsm/L) | >300 | >350 | |
Na (mEq/L) | 正常~軽度低下 | >150mEq/L | |
pH | <7.3 | 7.3~7.4 | |
BUN | 上昇 | 著明上昇 | |
K | ↑ | ↑ |
糖尿病との関係 | 疾患 | 臨床的特徴 |
糖尿病が直接病因に関与する疾患 | 糖尿病性手関節症(diabetic cheiroarthropathy) | コントロール不良の糖尿病に多い。原因不明の皮膚硬化が徐々に進行し、手指の屈曲拘縮を来し手全体に及び、強皮症と誤診される。手指を合わせることができない(Prayer徴候)。 |
シャルコー関節 | 頻度は低い(1%)が、長期糖尿病コントロール不良患者に多い。通常、足根中足関節などの中足部が多く、足底表面、前足部、中足部に潰瘍形成の合併を認めることがあり、骨髄炎との鑑別が困難な例あり。 | |
糖尿病性骨溶解(diabetic osteolysis) | 原因不明の足趾の末節骨や基節骨の骨吸収が起こリ、足痛の原因となる。X線ではickedcandy変形を呈し、骨髄炎との鑑別が困難。 | |
糖尿病性筋梗塞 | 外傷、感染、腫瘍がなく大腿部などに急激に増大する疼痛を伴う腫瘤を認める。生検は出血の危険があるため行わない。通常1~2カ月で自然寛解する | |
糖尿病性筋萎縮症(diabetic amyotrophy) | 糖尿病性末梢神経障害の一型。大腿前部の痛みで、時に脱力や萎縮が非対称性に起きる。CPKの上昇はなく、脳脊髄液で軽度蛋白上昇以外の有意な所見はない。神経伝導速度.筋電図では神経原性変化を認め、筋生検では炎症細胞浸潤を伴わない筋線経の萎縮あり。 | |
直接の関係は不明だが糖尿病患者に頻度が高い疾患 | 癒着性関節包炎(凍結肩または五十肩) | 糖尿病患者の10-33%にみられる。長期2型糖尿病を有する女性に多く、肩の痛みと可動域障害を呈する。約半数が両側性だが非利き手側で症状が強い。炎症反応やX線異常を認めず、数週~数カ月で自然寛解する。 |
複合性局所疼痛症候群1型(complex regional pain syndrome CRPS) | 四肢の疼痛、皮膚色変化、皮膚温の変化、浮腫、可動域制限などの症候を呈するまれな症候群。 | |
手掌屈筋鍵炎 | 糖尿病患者の5-33%に認められる。長期に罹患した女性に多く、利き手側の母指に頻度(75%)が高いが、どの指にもみられる。 | |
Dupuytren拘縮 | 手掌筋膜の短縮と肥厚(有痛性結節)を生じ、第4、5指の屈曲拘縮を呈する。1型糖尿病で長期に罹患した患者に多いが、血糖コントロールとの関係はない。 | |
手根管症候群 | 手根管症候群の全患者の最大15%に糖尿病を認める。 | |
広汎性特発性骨増殖症(diffuse idiopathic skeletal hyperostosis DISH) | 2型糖尿病患者の約20%にみられ、50才以上の肥満患者に多い。頭部、腰部のこわばリ、関節の可動域制限を呈する。全身の腱付着部痛を呈することもある。 | |
その他 | 感染性関節炎や骨髄炎 | 血糖上昇による免疫力低下が感染症リスクを上昇させることによる |
正常 糖尿病型 空腹時血糖値 <110mg/dL ≧126mg/dL and or 75g OGTT2時間値 <140mg/dL ≧200mg/dL
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