出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2013/04/12 23:21:56」(JST)
午前(ごぜん)と午後(ごご)は、時刻の区分のひとつ。
目次
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12時間制では、1日の時刻を正午を基準にして2等分し、前半を午前といい、後半を午後という。午前・午後および正午の「午」とは、十二辰刻の7番目に当たる午の刻(うまのこく)のことである。単に「午の刻」と言った場合は24時間制で11時から13時までの2時間を指すこともあるが、この場合は午の刻の中央の時刻(午の正刻、正午)を意味する。
午前・午後は単に1日の前半・後半を示すだけでなく、12時間制で0時から12時までの時刻と組み合せて「午前10時」のように表すのにも用いられる。
午前は午前中(ごぜんちゅう)ともいう。午後は午后(ごご)とも書くが、この「后」は「後」と同じ意味である。
英語などではラテン語由来の単語で午前と午後をそれぞれ ante meridiem / post meridiem といい、a.m. / p.m.と略す。A.M. / P.M.、am / pm、AM / PM、am / pm などとも書く。文法的には、これらは「10:00 a.m.」や「10 a.m.」のように数字の後に付けるのが正しく、「a.m. 10:00」、「a.m. 10」などは誤りである。また、日本語と異なり、時刻と組み合わせずに単に「a.m.」で午前、「p.m.」で午後を表す用法はない。数字との間にはスペースを空けることも空けないこともある。日本では「午前 10:00」や「AM10時」といった書き方はあまり日常的に使われず、この場合「午前10時」や「AM 10:00」と書かれることが普通である。
また、特に日の出ごろから12時までを午前(午前中)、12時から日没ごろまでを午後ということもある。英語ではこの意味での午後を、(after noon ではなく1語で)afternoon と呼び区別する。
論理的に解釈すると、午後1時が正午の1時間後なのは問題ないが、午前1時は正午の1時間前のことになるという指摘がある[1]。この指摘をした人物は、12時間制にはこのような非論理性があるから、12時間制を止めて24時間制に統一するべきだと論じている。この指摘は世界中の多くの言語に当てはまるが、ポーランド語では午前を「子後」(真夜中の後)という意味の po połnocy というため、この問題がない。
明治5年太政官布告第337号(改暦ノ布告) に、定時法[2]と午前・午後の概念を採用する趣旨の記述がある。これが初導入だったとは限らないが [3]、「午前」「午後」という語を明示している。この太政官布告は現在も法令として有効であるとされる。 [4][5]
“ |
時刻ノ儀是迄昼夜長短ニ随ヒ十二時ニ相分チ候処今後改テ時辰儀時刻昼夜平分二十四時ニ定メ子刻ヨリ午刻迄ニ十二時ニ分チ午前幾時ト称シ午刻ヨリ子刻迄ヲ十二時ニ分チ午後幾時ト称候事 |
” |
口語訳(要旨): 一日をこれまで昼と夜の長さにしたがって十二時に分けていたところ、今後は改め、時計の時刻、昼夜を通し二十四時に等分して、子(ね)の刻から午(うま)の刻までを午前幾時、午の刻から子の刻までを午後幾時と称すること。[6]
また、次のような表が付されていた。
午前 |
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一時 子半刻 | 二時 丑刻 | 三時 丑半刻 | |||
四時 寅刻 | 五時 寅半刻 | 六時 卯刻 | 七時 卯半刻 | ||||
八時 辰刻 | 九時 辰半刻 | 十時 巳刻 | 十一時 巳半刻 | ||||
十二時 午刻 | |||||||
午後 | 一時 午半刻 | 二時 未刻 | 三時 未半刻 | 四時 申刻 | |||
五時 申半刻 | 六時 酉刻 | 七時 酉半刻 | 八時 戊刻 | ||||
九時 戊半刻 | 十時 亥刻 | 十一時 亥半刻 | 十二時 子刻 |
なぜか、子刻(真夜中)は午前と午後に掲載されながら、午刻(正午)は午前にのみ掲載されている。
真夜中と正午は、午前と午後の境界をなしているため、その付近の時刻表現についてはさまざまな論争がある。
真夜中と正午以外では、午前×時は真夜中の×時間後、午後×時は正午の×時間後であることから、真夜中と正午も同様に、正午は午前12時(真夜中の12時間後)、真夜中は午後12時(正午の12時間後)であると考えるのが連続性がある。このような考え方を便宜上日本式とする。日本式では12時≠0時である。
太政官布告第337号の表はこの方式をとっており、国立天文台広報普及室[7]や独立行政法人情報通信研究機構周波数標準課[8]も同様のアナウンスをしている。
しかし、日本式の考えを真夜中または正午を1分でも過ぎた12時×分に推し進めると、問題が起こる。午前12時×分は正午の×分後なので、正午を過ぎても午前を用いていることになり、原義に照らすと明らかに誤りである。国立天文台広報普及室は「このような場合は午後0時×分と言うほうがいい」としており、情報通信研究機構周波数標準課も「午前・午後とも12時00分00秒に終わる」としている。
このような問題が起きるのは、午前・午後と12時間制の時刻を一体として考えるからである。両者を分離して考えればわかりやすい。12時間制はアナログ時計でもわかるように12時間で時刻が循環し、したがって12時=0時である。一方、午前・午後は正午の前・後であるから、両者を組み合わせれば正午と真夜中以外は時刻表現が一義的に確定する。しかし、この考え方でも正午と真夜中の時刻表現については依然として曖昧さが残る。
事実、英米では前記のような解釈をし、正午の前なら必ず「a.m.」、正午の後なら必ず「p.m.」と表現するので日本式のような問題はない。つまり、午前12時×分(12:xx a.m.)は真夜中の×分後、午後12時×分(12:xx p.m.)は正午の×分後である。12時ちょうどについては多少の論争があるが、午前12時(12:00 p.m.)は正午、午後12時(12:00 a.m.)は真夜中とするのが普通である[9]。このような考え方を便宜上英米式とする。英米式の表現は12時台と12時台以外の間に連続性がない。12時間制を24時間制に換算する場合、日本式では「(表現が)午後なら12時間を足す」となるが、英米式なら「12時台は12時間を引いて0時台とする」という処理が「午後なら12時間を足す」の前に必要となる。
12時間制のデジタル時計の表示は、日本メーカーも含めて国際的に英米式が主流である。ただし、時計メーカーの業界団体である社団法人日本時計協会は社団法人日本時計学会と共同で、「12時間制のデジタル時計では12時は不適当であり0時を使うのが妥当である」と発表したが、依然として「12:00」などと表示するデジタル時計も多く見られる。テレビ局の時刻出しは「12:00」ではなく「0:00」を用いるのが普通だが、午前・午後の表示はない。
正午と真夜中の時刻表現については英米でも完全に統一されているわけではない。U.S. Government Printing Office Style Manual では一時日本と同じ方式を採用していた(現在は英米式になっている)。アメリカ国立標準技術研究所 (NIST) は、正午と真夜中についてはそもそも午前・午後を使わず、midnight / noon もしくは 12:00 Midnight / 12:00 Noon とすべきとしている。英語圏では他に 12:00 m.n. / 12:00 m.(m.n.はmidnight、m.はmeridianの略)、12:00m / 12:00n(mはmidnight、nはnoonの略)などの記法もある。ただし、これらの表現では「×日のmidnight」と言っただけでは×日の始まりか終わりかわからない。また、「m」がmidnightかmeridianか紛らわしい。
午前・午後を使わず24時間制にすれば、これらの問題は完全に解決する。
時刻 | 日本式 | 英米式 | 日本時計協会 | NIST | 24時間制 |
---|---|---|---|---|---|
正午 | 午前12時 | 12:00 p.m. | 0:00 p.m. | (12:00) Noon | 12:00 |
正午の1分後 | 午後0時1分 | 12:01 p.m. | 0:01 p.m. | 12:01 | |
真夜中 | 午後12時 | 12:00 a.m. | 0:00 a.m. | (12:00) Midnight | 00:00 |
真夜中の1分後 | 午前0時1分 | 12:01 a.m. | 0:01 a.m. | 00:01 |
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