- 英
- prothrombin time、PT
- 関
- 血液凝固試験、プロトロンビン時間国際比、活性化部分トロンボプラスチン時間 APTT
概念
- an isolated abnormal prothorombin time suggests FVII deficiency (HIM.725)
- 外因系の凝固能を測定する
- F III(組織トロンボプラスチン)を加えて Ca, F I(フィブリノゲン), F II(プロトロンビン), F V, F VII, F X による凝固能をみる
検体
方法
- クエン酸を加えた血漿を検査用の試験管に入れ37℃で加温。37℃に保温した組織トロンボプラスチン・カルシウムを加え、時間の測定を開始する。試験管を傾斜・浸透させ、フィブリンが析出するまでの時間を測定する。
評価方法
- LAB.414
- 1. プロトロンビン時間:凝固時間をそのまま[s]で表現。
- 2. プロトロンビン比(PR):標準血漿のPT(秒)に対する被検血漿のPT(秒)の比。基準範囲1.00±0.15
- 3. プロトロンビン活性/プロトロンビン濃度:正常対象血漿を100%とし、硫酸バリウム血漿もしくは2mg/mlウシフィブリノゲン液で希釈系列をつくり、そのそれぞれについて凝固時間を測定し検量線を作成する。被検血漿のPT(秒)を測定し、検量線から標準血漿のどれだけの活性があるかを表現する。基準範囲80-100%
- 4. プロトロンビン時間国際比 INR:プロトロンビン時間の測定で用いられる試薬には差があるため、トロンボプラスチン試薬の国際標準品をさだめ、それに対する各試薬の感度ISIを定める。その上で、プロトロンビン比を補正する。
- INR = (プロトロンビン比 PR)ISI=(被検血漿のPT/正常血漿のPT)ISI
臨床関連
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プロトロンビン時間(ぷろとろんびんじかん);PT(prothrombin time)は、血液の凝固因子に関する指標の一つ。外因系及び共通系の凝固異常を判定する検査として用いられる。
目次
- 1 検査法
- 1.1 International normalized ratio (INR)
- 2 プロトロンビン時間の意義
- 3 その他
- 4 脚注
- 5 関連項目
- 6 外部リンク
検査法
まず、被検者の静脈血を採取する。このうち血漿にカルシウムと組織トロンボプラスチンを加え、このときの凝固時間を測定する。
正常では11-13秒(PT-INRで0.80-1.20)。
International normalized ratio (INR)
検査に用いる組織トロンボプラスチンは生物由来の製剤であるために、製造ロットや製造業者によって結果が異なってくる。この差異を標準化するために考案されたものが International normalized ratio(INR, 国際標準比または国際標準化比。PT-INRとも表記される)である。各業者は、製造した組織トロンボプラスチンごとに国際感受性指標 (International Sensitivity Index、ISI)を表示する。ISIはそのロットが国際標準試料とどれだけ異なっているかを表示したものであり、その値は通常1.0から1.4の間である。検体のプロトロンビン時間の正常対照試料に対する比を、正常対照試料のISIで累乗したものがINRとなる。
プロトロンビン時間の意義
プロトロンビン時間の短縮は病的意義が少ない。問題になるのはほとんどが延長である。
- 第VII因子欠乏ないし異常:外因系の因子である。外因系・及び共通系の検査なので、これらの系に異常があればプロトロンビン時間が延長する。
- 第II因子(プロトロンビン)欠乏ないし異常:共通系の因子である。共通系ではAPTTも延長する。
- 第V因子欠乏ないし異常:共通系
- 第X因子欠乏ないし異常:共通系
- 肝硬変・肝炎・肝臓癌:凝固因子を産生しているのは肝臓である。したがって、肝硬変や肝炎などで肝臓の機能が著しく低下した場合、因子の欠乏によってプロトロンビン時間が延長する。同時にAPTTも延長する。
- DIC:凝固因子の消費が過剰。この場合もAPTTが延長する。
- ワーファリン投与・ビタミンK欠乏:第VII因子はビタミンK依存性凝固因子であるため、これが不足すると外因系が阻害され、プロトロンビン時間が延長する。
- ワーファリンによる抗凝固療法のコントロール推奨値は一般にPT-INR=2.0~3.0とされている。[1]ただ70歳以上の高齢者などの、出血の合併症の恐れがあるときにはPT-INR=1.6~2.6とすることとされる。[2]
その他
血友病は内因系の第VIII因子や第IX因子に異常がある。そのためAPTTは延長するものの、プロトロンビン時間は延長しない。
同様に第Ⅷ因子に異常があるヴォン・ヴィレブランド病もAPTT延長・PT正常を示す。
脚注
- ^ Ogawa S, et al : Circ J 2008; 72:1581-1638
- ^ Yasaka M, et al : Intern Med 2001; 40:1183-8
関連項目
外部リンク
- PT-INR(PT-INRとは(正常値、PTとの違い、ワーファリン)?・PT(PT-INR)とは? 金沢大学 血液内科
- 日本血栓止血学会
- 血栓止血の臨床(研修医のために)
- 特発性血栓症(難病情報センター)
- 抗凝固薬の適正な使い方 (第2版),2008年10月発行 (ISBN978-4-263-73105-5) 櫻川信男・上塚芳郎・和田英夫 編. 参考書籍:[1]
- プロトロンビン時間の微量測定法 Experimental Animals Vol.27 (1978) No.3 P311-314
UpToDate Contents
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Japanese Journal
- 小児の急性肝不全 (特集 小児の肝疾患 up to date)
- 陳 尚顯,藤田 竜一,河 喜鉄,産形 麻美子,多田 祐輔,村田 順,亀岡 信悟
- 日本消化器外科学会雑誌 43(10), 1007-1013, 2010-10-01
- … 判定する術前因子を検討し,また予後を改善するため,死因に関連ある因子と術後合併症を検討したので報告する.方法:2004年1月から2008年8月までに緊急手術を施行した大腸穿孔症例35例を対象とした.年齢,術前合併症,穿孔原因と部位,白血球数,クレアチニン(Cr),プロトロンビン時間(PT),Base excess(BE),体温,血圧,APACHE II score(以下,AS),手術までの時間,腹腔内の汚染度,術式,および術後合併症の有無を救命例と死亡例で比較検討した. …
- NAID 110007730443
- ハイリスク児のプロトロンビン時間(PT)の分布とPT値に影響を及ぼす要因
- 高橋 大二郎,齋藤 玲子,石井 雅宏,松井 美優,荒木 俊介,久保 和泰,佐藤 弘,白幡 聡
- 日本産婦人科・新生児血液学会誌 = The Japanese journal of obstetrical, gynecological & neonatal hematology 19(2), 27-32, 2010-03-01
- NAID 10026710362
Related Links
- 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』. 移動: 案内, 検索. プロトロンビン時間(ぷろとろんびんじかん);PT(prothrombin time)は、血液の凝固 因子に関する指標の一つ。外因系及び共通系の凝固異常を判定する検査として用いられる 。 ...
- プロトロンビン時間とは、出血が始まってから肝臓でプロトロンビン(血液凝固因子)が つくられるまでの時間を測定する検査です。肝硬変や肝臓がんなどの肝機能障害がみ られると、時間は長くなるので、肝機能検査の一つとしても測定されます。
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★リンクテーブル★
[★]
- 32歳の女性。急激な体重減少を主訴に来院した。6か目前から心窩部痛を自覚している。腹部は膨隆し、波動を認める。肝・脾を触知しない。穿刺腹水所見:淡黄褐色、総蛋白4.0g/dl。血液所見:赤沈4mm/1時間、赤血球344万、Hb9.8g/dl、Ht28%、血小板6万、プロトロンビン時間70%(基準80~120)、フィブリノゲン100mg/dl(基準200~400)、FDP28μg/ml(基準5以下)。血清生化学所見:総蛋白6.9g/dl、アルブミン3.5g/dl、AST30IU/l、ALT22IU/l、LDH719IU/l(基準176~353)、ALP230IU/l(基準260以下)。CEA5.5ng/ml(基準5以下)。上部消化管造影写真を以下に示す。
- 考えられるのはどれか。2つ選べ。
[正答]
BE
- 不正な隆起と陥凹が認められ、胃体中下部から幽門が狭窄
-
- 基礎疾患あり 1点、臨床症状 出血?/臓器?、血小板数 2点、血清FDP 2点、フィブリノゲン 2点、PT比 ? ≧7点 ゆえにDICと診断される。
※国試ナビ4※ [101G024]←[国試_101]→[101G026]
[★]
- 20歳の男性。食欲低下を主訴に来院した。5日前から全身倦怠感を自覚するようになり、2日前から悪心と嘔吐とが出現した。意識は清明。体温36.7℃。脈拍84/分、整。眼球結膜に黄染を認める。血液所見:赤血球451万、Hb 13.8g/dl、Ht 42%、白血球3,600、血小板21万。血液生化学所見:総ビリルビン5.0mg/dl、AST 2,232IU/l、ALT 2,958IU/l、LD 981IU/l(基準176~353)、ALP808IU/l(基準115~359)。
- この時点の重症度の評価に必要な血液検査項目はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [107C022]←[国試_107]→[107C024]
[★]
- 血液検査項目と抗凝固薬の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [101B085]←[国試_101]→[101B087]
[★]
- 肝硬変を母地として発生した最大径2cm、単発の肝細胞癌に対する治療方針を決定する上で重要でないのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [ ]←[国試_113]→[113A002]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [105I001]←[国試_105]→[105I003]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [109I013]←[国試_109]→[109I015]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [097B037]←[国試_097]→[097B039]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [101C035]←[国試_101]→[101C037]
[★]
- 慢性肝炎において肝炎活動性の指標となる血液検査項目はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [108C008]←[国試_108]→[108C010]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [114C020]←[国試_114]→[114C022]
[★]
- 肝予備能の評価に有用な血液検査項目はどれか。 3つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [104G017]←[国試_104]→[104G019]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [100B038]←[国試_100]→[100B040]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [103E023]←[国試_103]→[103E025]
[★]
- a. (1)(2)(3)
- b. (1)(2)(5)
- c. (1)(4)(5)
- d. (2)(3)(4)
- e. (3)(4)(5)
[★]
- 英
- cirrhosis of liver (M), liver cirrhosis LC, cirrhosis
- 関
- 肝臓
定義
(アトラス肝臓病 金原出版 谷川久一、阿部弘彦 昭和62年1月30日 p.57)
- 1. 肝細胞死が原因で、びまん性の結合組織増生が肝臓全域に見られる
- 2. 肝実質の結節性再生と小葉構造の改築が認められるもの
概念
- 肝硬変はびまん性に線維化した肝病変の終末像であり、慢性肝炎とともにもっともしばしばみられる肝の病態である。臨床的には様々な程度の肝細胞機能不全状態と門脈圧亢進症による症状がみられる慢性疾患である。
疫学
- 人口10万人あたりの死亡率12.5人
- 45-59歳の男性では死亡順位第4位
- 西日本に多い
病因
病理
- 炎症による細胞の破壊と再生を繰り返す結果、再生した肝細胞と新たに形成された線維性の隔壁を有する結節が形成され(再生結節)、肝硬変となる。(BPT.647)
- ウイルス性肝炎の慢性化による肝硬変では、3mm以上の結節がみられる(macronodular cirrhosis)。
- アルコール性肝炎の慢性化による肝硬変では、平均3mmの結節がみられる(micronodular cirrhosis)。
病態生理
- 肝機能低下により(1)エストロゲンの肝臓における異化が低下、(2)アルブミン合成能が低下、(3)門脈圧亢進が起こる。(1)によるエストロゲンなどの血管拡張因子により血管が拡張し循環血漿量が減少する。(2)による膠質浸透圧の低下はサードスペースへの体液移動を引き起こしさらに循環血漿量を低下させる。これには(3)も相加的に作用すると思われる。循環血漿量の低下はRAA系の亢進をきたし、アルドステロンによるNa、水の貯留引き起こす。
- 非代償性肝硬変では、肝網内系(クッパー細胞など)の機能低下、白血球減少による易感染性を呈する。
症状
合併症
- 参考2
身体所見
[show details]
- 腹部:脾腫 ← 門脈圧と脾腫の程度は相関しない (QB.B-315)
検査
血算
-
- 血小板減少が門脈圧亢進の最初の徴候(HIM.1978)
- 白血球減少 ← 門脈圧亢進によるうっ血性の脾腫に伴う脾機能亢進。 骨髄での産生低下も原因らしい(出典不明)
血液生化学
-
- 総ビリルビン T-Bil:上昇
- アンモニア NH3:上昇
- Fischer比:低下
- 線維化マーカー (ヒアルロン酸、IV型コラ-ゲン):上昇
- 膠質反応(TTT,ZTT):上昇
- γグロブリン:上昇 ← 門脈血に含まれる細菌の抗原が肝臓をシャントしてリンパ組織に到達するためとされている(uptodate)
-
-
- 糖の処理障害により食後高血糖を来しやすく、糖尿病を発症しやすい。
- 低ナトリウム血症、血漿浸透圧低下 ← 血液中の水が間質に移動する結果、電解質も共に移動する。血液中には水が過剰となり、低ナトリウム血症、血症浸透圧低下となる。volume depletionに対してADHが主に作用するからか、あるいはH2Oが移動しやすいからなのかは不明。
免疫血清検査
- 多クローン性γグロブリン血症
- IgG:増加する傾向あり。 ← 門脈血が肝臓を通過せずにリンパ組織に流れ込む結果。著しく高値であったら自己免疫性肝炎。(参考1)
- IgM:高値であったら90-95%はPBCである。(参考1)
- 壊死、炎症が持続的に起きているから上がると解釈することもできる、みたい。
画像
- (US,CT, MRI,Angio,肝シンチ、上部消化管内視鏡)
腹腔鏡、肝生検
- 分枝鎖アミノ酸(branched chain amino acids, BCAA)と芳香族アミノ酸(aromatic amino acids; AAA)の分子比(モル比)
-
- 肝臓、末梢(筋肉など)でよく代謝される
- ほぼ肝臓で代謝される
診断
治療
- IMD 参考2 YN.B-47
- 治療のゴールは、(1)肝疾患の進展を遅らせたり治癒させること、(2)他の原因による肝臓障害を予防すること、(3)合併症の予防、(4)肝移植の時期を決定することである。
- 方針:原疾患の治療を行い、肝硬変の進展を抑えるように食事、生活療法を行う、非代償期には合併症の治療を行う。
- (1)肝疾患の進展を遅らせたり治癒させる:原疾患の治療を行う(自己免疫性肝炎であればステロイドや免疫抑制薬、アルコール性肝障害であれば禁酒、ウイルス性肝炎であれば病原体に応じた治療)。
- (2)他の原因による肝臓障害を予防する:肝臓に障害を与えないようにする(アルコール摂取、アセトアミノフェンの過剰服用)。予防接種を受ける(肝予備能がほとんど無ければA型肝炎、B型肝炎。肺炎球菌、インフルエンザウイルスに対する予防接種も考慮される。
- (3)合併症の予防:肝細胞癌、静脈瘤出血、特発性細菌性腹膜炎、肝腎症候群、肝性脳症、肝肺症候群
- (4)肝移植の時期を決定:
代償期
- 食後の安静、適切な熱量(25-30kcal/kg/日)で適切な蛋白質(1.2-1.5g/kg)の食事を摂取、ビタミンB、ビタミンK補充
- 肝庇護薬(ウルソデオキシコール酸、グリチルリチンなど)
非代償期
-
- 食塩制限(5-7g以下)。飲水制限(1L/day)(腹水貯留時)
- 蛋白質の補充:分枝鎖アミノ酸の多い食事、分枝鎖アミノ酸製剤の点滴。NH3が上昇するなど肝性脳症の危険があれば低蛋白食とする。
- 膠質浸透圧の維持:アルブミン製剤
- 早朝低血糖に対し、夜食を勧める(肝機能低下により糖新生↓のはず)。(出典不明)
- 利尿薬:抗アルドステロン薬(スピロノラクトン)、トルバプタン、フロセミド、サイアザイド → 後2者はhypokalemiaからmetabolic alkalosisを惹起、アンモニアのNH4+ ⇔ NH3 + H+の平衡を左に移行させてアンモニアの排泄を阻害、高アンモニア血症を増悪しうる(非イオン化状態では尿細管で再吸収されやすいはず)(出典不明)。
- 腹水濃縮再注入法
- 肝内門脈大循環シャント、腹膜静脈短絡術
- 食道静脈瘤の治療:内視鏡的食道静脈瘤硬化術・結紮術、外科的治療
- 肝性脳症の治療:腹水の食事療法に準じるが、NH3再吸収につながる便秘の予防に気をつける。
- 肝移植
予後
- 死因:(1)肝性脳症、(2)静脈瘤破綻、(3)肝癌合併
- (1),(2)の治療が発達したことにより、(3)での死亡が増加している。
参考
- 1. [charged] Diagnostic approach to the patient with cirrhosis - uptodate [1]
- 2. [charged] Overview of the complications, prognosis, and management of cirrhosis - uptodate [2]
国試
[★]
- fulminant
- 英
- fulminant hepatitis
- 同
- 電撃性肝炎、急性肝萎縮症 acute liver atrophy、急性黄色肝萎縮症 acute yellow liver atrophy
- 関
- 肝炎、難病
定義
- 肝炎のうち症状発現後約8週間以内に高度の肝機能障害に基づいて肝性昏睡II度以上の脳症をきたし、プロトロンビン時間40%以下を示すものとする(第12回犬山シンポジウム(1981年8月))
- 肝炎ウイルスや薬物が原因となって、肝細胞の広範な壊死と脱落をきたす重篤な肝障害で、致命率が高い。
- 先行する慢性肝疾患が認められる場合には除外するが、B型肝炎ウイルスの無症候性キャリアの急性増悪は含める。(参考1)
- リンパ球浸潤など肝炎像が見られることは本疾患の要件で、薬物中毒、術後肝障害、急性妊娠脂肪肝など肝炎像の認められないものは除外。(参考1)
- 肝性昏睡II度以上の出現が8-24週のものは遅発性肝不全(late onset hepatic failure, LOHF)に分類される。(参考1)
- 難治性疾患克服研究事業とされている(難病#難治性疾患克服研究事業(調査研究対象:130疾患))
病因
- IMD
- ウイルス性の劇症肝炎ではB型肝炎ウイルスによるものが多く、A型肝炎ウイルスがこれに次ぐ
- 急性型 :B型 約50%、原因不明 約20%、A型 約15%、その他(薬物性、C型、E型)
- 亜急性型:成因不明 約45%、B型 約20%、薬物性 約15%、その他(A型、C型、E型)
- YN.B-34
- YN.B-34 参考1
- ウイルス性:B型肝炎ウイルス(約40%)、その他ウイルス
- 自己免疫性:自己免疫性肝炎(15%)
- 薬剤性:薬剤性肝障害(10%):PAS、ハロタン、サルファ剤
- 代謝性:急性妊娠性脂肪肝、ウイルソン病、ライ症侯群
- 虚血性:出血性ショック、心原性ショック、および敗血症性ショックの後
病型
- 急性 :急性肝炎発症後10日以内に脳症が出現
- 亜急性:急性肝炎発症後11日以降に脳症が出現 予後が悪い
検査
- 画像検査で肝萎縮が認められた場合には予後不良(SSUR.591)
血液検査
- コリンステラーゼ:低下(40%以下)
- アルブミン:低下
- AST・ALT:上昇したのち低下
- ビリルビン:上昇
- 血中アンモニア:上昇。(SSUR.591)
腹部CT
シンチグラフィ
重症度の指標
- YN.B-34
- プロトロンビン時間40%以下
- アルブミン<2.5g/dL
- 腹水、浮腫、肝性脳症
- コリンエステラーゼ:低値
- コレステロールエステル:低値 ← LCATは肝臓で合成される。
- 血中アンモニア:上昇
- ビリルビン上昇(直接ビリルビン/間接ビリルビン<0.5) ← 抱合能低下により間接ビリルビンが増加
- BUN≦6mg/dl
- 血清肝細胞増殖因子(HGF)≧1ng/ml → 肝細胞の増殖を促そうとしている。予後評価に有用
- 肝萎縮(CT, US)
症状
- 初発症状:全身倦怠感、発熱、黄疸、悪心、食欲不振。その後症状が持続。意識障害(急性型では初発することあり。亜急性型では遅発する)。(IMD)
合併症
- 脳浮腫、消化管出血、腎不全、血管内凝固症候群、全身感染症
治療
- a. 輸液管理:アミノ酸を含まないブドウ糖主体の輸液。→ 肝臓の尿素サイクルの著しい障害が見られるため分枝アミノ酸の投与は行わない
- b. 肝性脳症予防:合成二糖類(ラクツロース)、非吸収性抗菌薬PO(カナマイシン、ポリミキシンB)
- c. 合併症の治療:脳浮腫(マンニトール、グリセロール)
- d. その他:感染予防、呼吸器管理、消化管出血(予防にはH2ブロッカーが有効)に対する対応
-
- 抗ウイルス療法 ・・・ B型肝炎ウイルス
- 免疫抑制療法 ・・・・ 自己免疫性肝炎
- 肝細胞の壊死を抑制:抗凝固療法(新鮮凍結血漿、アンチトロンビン製剤、蛋白分解酵素阻害薬、副腎皮質ステロイドパルス療法 ・・・ 有効性はまだ認められていない
劇症肝炎の肝移植適応基準
- 劇症肝炎の肝移植適応基準 (第22回日本急性肝不全研究会,1996年4月) YN.B-35
- I. 脳症発現時に次の5項目のうち2項目を満たす場合は死亡と予測して肝移植の登録を行う
- 1) 年齢:45歳以上
- 2) 初発症状から脳症発現までの日数:11日以上(亜急性型) → 予後不良を示唆
- 3) プロトロンビン時間:10%以下 → 肝機能低下
- 4) 血清総ビリルビン濃度:18mg/dl以上
- 5) 直接/総ビリルビン比:0.67以下 → 抱合能低下
- II. 治療開始(脳症発現)から5日後における予後の再評価
- 下記項目について認められる項目数が2項目の場合生存と予測し肝移植登録を取り消す。0または1項目の場合死亡と予測して肝移植登録を継続する。
- 1) 脳症がI度以内に覚醒、あるいは昏睡度でII度以上の改善
- 2) プロトロンビン時間が50%以上に改善
予後
SUR.591
- 肝性昏睡II度:60%救命
- 肝性昏睡IV度~V度:10-20%救命
参考
- 1. 難治性の肝炎のうち劇症肝炎 - 難病情報センター
- http://www.nanbyou.or.jp/entry/242
[★]
- 英
- disseminated intravascular coagulation DIC, disseminated intravascular coagulopathy?
- 同
- 播種性血管内凝固、汎発性血管内血液凝固 generalized intravascular coagulation
- 関
- TNF-αの作用により血管内で血液が凝固する(2008年前期免疫学)
- 致死率は70-80% (2008年前期免疫学)
概念
- 癌、敗血症、白血病などを基礎とし、過度の凝固亢進により、全身の微小血管に血栓が多発して循環障害による臓器障害と、血小板・凝固因子の消費と線溶系の亢進による著明な出血傾向を来す病態
病因
疫学
病変形成&病理
症状
- 出血傾向(紫斑など皮下出血、鼻出血、血尿、消化管出血、肺出血)
- 臓器障害(血栓形成に基づく循環障害)
- 初発は70%が出血(紫斑、うっ血斑、注射部位からの出血、消化管出血など)。
診断
表1.DIC診断基準
|
|
厚労省DIC診断基準
|
急性期DIC診断基準
|
基礎疾患
|
基礎疾患あり:1点
|
基礎疾患は必須項目
|
臨床症状
|
出血症状あり:1点 臓器症状あり:1点
|
要除外診断 SIRS(3項目以上):1点
|
血小板数 (X104/μL)
|
8< ≦12:1点 5< ≦ 8:2点 ≦ 5:3点
|
8≦<12 or 30%以上減少/24h:1点 <8 or 50%以上減少/24h:3点
|
血清FDP(μg/ml)
|
10≦ <20:1点 20≦ <40:2点 40≦ :3点
|
10≦ <25: 1点 25≦ :3点 D-dimerもFDPとの換算表により使用可能
|
フィブリノゲン(mg/dl)
|
100< ≦150:1点 ≦100:2点
|
―
|
PT比
|
1.25≦ <1.67:1点 1.67≦ :2点
|
1.2≦:1点
|
DIC診断
|
7点以上 (白血病群では、出血症状と血小板数を除いて、4点以上)
|
4点以上 (白血病群には適応できない)
|
検査
治療
予後
予防
参考
- どの診断基準を使うべきか記載有り
- http://fhugim.com/?p=2454
[★]
- 英
- Child-Pugh classification
- 関
- Childの分類、肝硬変。肝障害度
チャイルド・ピュー分類
- A:5-6 (2), B:7-9 (3), C:10-15 (6)
- ばばぷー → BABAP: "B"rain( -> encephalopathy), "A"scites, "B"illirubin, "A"lbumin, "P"rothrombin
参考
- http://www.kanen.ncgm.go.jp/cont/010/kankouhen.html
[★]
- 英
- liver function test, LFT
[★]
- 英
- prothrombin time percentage activity PT%
- 関
- プロトロンビン時間比
[★]
- 英
- prothrombin time ratio
[★]
プロトロンビン時間
[★]
- 英
- prothrombin
- 同
- 第II因子 factor II
- 関
- 血液凝固因子
概念
検査
プロトロンビンが関与する検査値
[★]
- 英
- thrombin
- 同
- 第IIa因子 factor IIa、F IIa、フィブリノゲン分解酵素 fibrinogenase
- 商
- アナクト、アンスロビン、タココンブ、タコシール、ノイアート、ノンスロン、ベリプラストP、ボルヒール
- 関
- 血液凝固因子、Thrombinar, Thrombogen, Thrombostat
[★]
- 関
- 一方、インター、~の中で
[★]
- 英
-
- 関
- 期間、時期、時、瞬間、モーメント、~倍の
[★]
- 英
- pro