- 英
- aspirin
- 商
- アスファネート配合、イスキア配合、サリチゾン、ゼンアスピリン、ニチアスピリン、ニトギス配合、バイアスピリン、バッサミン配合、バファリン配合、ファモター配合
- 関
- アスピリン喘息、アセチルサリチル酸 acetylsalicylic acid ASA、アスピリン中毒
構造
分類
-
薬理作用
抗炎症薬
- 脳の体温調整中枢を抑制して解熱。感覚中枢の興奮を抑制? → 鎮痛 1.5g/day
- 少量で血小板凝集を低下。血栓、塞栓を予防 → 40-100mg/day
- 関節リウマチにおける抗炎症には → 3g/day
動態
- アスピリンは弱酸性。胃でプロトンを放出。大部分は回腸で吸収される。
- アスピリンは組織、血漿、特に肝臓に存在するエステラーゼにより30分以内にサリチル酸塩となり抗炎症作用を呈する。25%は酸性?、抱合されて排出される。25%は未変化のまま排泄される。アルカリ尿で排泄されやすい。Cox抑制作用は不可逆的アセチル化反応による。持続時間は血漿半減期に関係しない。半減期は短いが、作用は持続することに注意する。
作用機序
注意
禁忌
- バイアスピリン錠100mg
- 1. 本剤の成分又はサリチル酸系製剤に対し過敏症の既往歴のある患者
- 2. 消化性潰瘍のある患者[プロスタグランジン生合成抑制作用により,胃の血流量が減少し,消化性潰瘍を悪化させることがある.(ただし,「慎重投与」の項参照)]
- 3. 出血傾向のある患者[血小板機能異常が起こることがあるため,出血傾向を助長するおそれがある.]
- 4. アスピリン喘息(非ステロイド性消炎鎮痛剤等による喘息発作の誘発)又はその既往歴のある患者[重篤なアスピリン喘息発作を誘発させることがある.]
- 5. 出産予定日12週以内の妊婦[「妊婦,産婦,授乳婦等への投与」の項参照]
- 6. 低出生体重児,新生児又は乳児[「小児等への投与」の項参照]
- YN.D-34
添付文書
- http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/3399007H1021_1_13/3399007H1021_1_13?view=body
Wikipedia preview
出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2013/01/28 11:37:50」(JST)
[Wiki ja表示]
|
ウィキペディアは医学的助言を提供しません。免責事項もお読みください。 |
アセチルサリチル酸 |
|
|
IUPAC名
2-アセトキシ安息香酸
2-エタノイルオキシベンゼンカルボン酸
|
|
識別情報 |
CAS登録番号 |
50-78-2 |
KEGG |
D00109 |
特性 |
化学式 |
C9H8O4 |
モル質量 |
180.16 |
外観 |
無色固体 |
密度 |
1.40, 固体 |
融点 |
136
|
水への溶解度 |
0.46 g/100mL (20 °C) |
酸解離定数 pKa |
3.49 (25 °C) |
特記なき場合、データは常温(25 °C)・常圧(100 kPa)におけるものである。 |
アセチルサリチル酸(アセチルサリチルさん、英: acetylsalicylic acid、英: Aspirin)とは、代表的な消炎鎮痛剤の一つで非ステロイド性抗炎症薬の代名詞とも言うべき医薬品。ドイツのバイエル社 (独: Bayer AG) が名付けた商標名のアスピリン (独: Aspirin) がよく知られ、日本薬局方ではアスピリンが正式名称になっている。消炎・解熱・鎮痛作用や抗血小板作用を持つ。サリチル酸を無水酢酸によりアセチル化して得られる。
目次
- 1 使用対象
- 2 歴史
- 3 作用機序
- 4 合成法
- 5 禁忌事項
- 6 副作用
- 6.1 報告されている副作用
- 6.2 飲み合わせ
- 6.3 副作用の抑制胃腸薬
- 7 日本での製品
- 7.1 大衆薬
- 7.2 医療用医薬品
- 7.2.1 バイアスピリン錠100 mg
- 7.2.2 アスピリン「バイエル」(粉末)
- 8 脚注
- 9 参考文献
- 10 関連項目
|
使用対象
現在用いられている用途
アスピリンは、関節炎、痛風、腎結石、尿路結石、片頭痛、さらに、小規模から中規模な手術後や、外傷、生理痛、歯痛、腰痛、筋肉痛、神経痛などの鎮痛目的で使用される。
歴史
ヤナギの鎮痛作用はギリシャ時代から知られていた[1]。紀元前400年ごろ、ヒポクラテスはヤナギの樹皮を熱や痛みを軽減するために用い、葉を分娩時の痛みを和らげるために使用していたという記録がある[2][3]。
19世紀にはヤナギの木からサリチル酸が分離された。その後、アセチルサリチル酸の出現まではサリチル酸が解熱鎮痛薬として用いられたが、強い胃腸障害があった。しかし1897年、バイエル社のフェリックス・ホフマンによりサリチル酸がアセチル化され副作用の少ないアセチルサリチル酸が合成された。
バイエルアスピリンの広告(1904年)ヘロインなども宣伝されている
アセチルサリチル酸は世界で初めて人工合成された医薬品である。1899年3月6日にバイエル社によって「アスピリン」の商標が登録され発売された。翌1900年には粉末を錠剤化。発売してからわずかな年月で鎮痛薬の一大ブランドに成長し、なかでも米国での台頭はめざましく、20世紀初頭には、全世界のバイエルの売り上げのうち3分の1を占めた。
しかし、第一次世界大戦のドイツの敗戦で連合国によって商標は取り上げられ、1918年、敵国財産没収によりバイエルの「商標」「社名」、そして「社章(バイエルクロス)」までもが競売にかけられた。この時から76年間、1994年にバイエルがすべての権利を買い戻すまで、米国ではバイエル社製のアスピリンは姿を消すが、しかしこの間もアスピリンは権利を買い取ったスターリング社によって製造される。その商品名には「バイエルアスピリン」がそのまま使われ、しかもバイエルクロス付きで売られ続けた。「バイエルアスピリン」というブランドがいかに人々の信頼を得ていたかを示すエピソードのひとつであったともいえる。
第一次世界大戦後のアメリカ合衆国では禁酒法や大恐慌などによる社会的ストレスからアセチルサリチル酸を服用する人々が激増しアスピリンエイジという言葉が生まれたほどであった。アセチルサリチル酸は頭痛を緩和するものの脳がつかさどる精神疾患の治療には役立たないが、当時の医学では頭痛と精神疾患との関係は不明瞭であった。また、アセチルサリチル酸は血小板の凝集を抑制して血栓の形成をさまたげることから、脳梗塞や虚血性心疾患を予防するために抗血小板剤として(毎日)少量のアセチルサリチル酸を処方することがある。
同様にアセチルサリチル酸の少量長期服用で発癌のリスクを減少させることができるとの報告もある[4]。
特にアメリカでは疾患を持っていなくても日常的にアセチルサリチル酸を飲む人が多く、現在でもアメリカはアセチルサリチル酸の大量消費国であり年間に16,000トン、200億錠が消費されている。ただし、アセチルサリチル酸の過剰摂取は胃潰瘍などの諸症状の原因となる。さらに、鎮痛作用によって、病気の症状に気づくのが遅れることがあり注意が必要である。アメリカでは年間で10万人弱が副作用の胃痛で入院し、2,000人が死亡していると言われている。アメリカにおける薬の副作用被害の4分の1を、アセチルサリチル酸が占めているとも言われる。
作用機序
メカニズムを解明したのはイギリスのロイヤルカレッジ薬理学教授・薬理学者ジョン・ベイン博士。1971年、彼は、「アセチルサリチル酸は体内での伝達物質(プロスタグランジン)の合成を抑制し、痛み、発熱、炎症に効果を発揮する」ことを解明発表した。実にホフマンの合成から70年以上の歳月が経過していた。
アセチルサリチル酸はシクロオキシゲナーゼをアセチル化することにより阻害しプロスタグランジンの産生を抑制する。つまり、アラキドン酸と競合してシクロオキシゲナーゼを阻害するほかの非ステロイド性抗炎症剤とは異なる機序により抗炎症作用を示す。炎症、発熱作用を持つプロスタグランジンが抑制されることで抗炎症作用・解熱作用を発現する。このときの用量は330 mg1日3回である。また、シクロオキシゲナーゼは血小板の作用に関係するトロンボキサンの合成にも関与している。アセチルサリチル酸はトロンボキサン作用も抑制するため、抗血小板作用も有し、抗血小板剤として81-100 mg1日1回の投与を行うことがある。
プロスタグランジンを発見しアセチルサリチル酸の抗炎症作用のメカニズムを解明した薬理学者のジョン・ベイン(イギリス)、ベンクト・サムエルソン(スウェーデン)、スーネ・ベルクストローム(スウェーデン)の3人は1982年にノーベル医学生理学賞を受賞した。プロスタグランジンの研究は、この後急速に脚光を浴び、生化学の最先端分野のひとつとして今日に至っている。
合成法
アセチルサリチル酸は以下の手順で合成される。
フェノールを高温と高圧の下で二酸化炭素と水酸化ナトリウムと反応させて、サリチル酸の二ナトリウム塩を合成する。このカルボキシ化はコルベ・シュミット反応 (Kolbe-Schmitt reaction) と呼ばれ、フェノラートアニオンは共鳴効果によりオルト位の求核性が高まり、これが二酸化炭素に対して求核付加反応する。後処理で二ナトリウム塩を希硫酸で中和し、サリチル酸を遊離させる。
このサリチル酸に無水酢酸を作用させてアセチル化し、アセチルサリチル酸を得る。
禁忌事項
- 鎮痛薬や解熱薬で喘息を起こしたことのある者。
- 消化性潰瘍のある者。
- 高齢者には慎重に用いる。
- 重い肝臓病、心臓病、妊娠後期。
副作用
胃障害が生じる可能性がある。イオン捕捉により胃細胞に取り込まれたアセチルサリチル酸がプロスタグランジン生産を抑制し,結果胃酸分泌制御・胃粘膜保護も同時に抑制されるためである。この副作用を抑制するためにアセチルサリチル酸を制酸剤であるダイアルミネート(またはダイバッファーHT)で包んだ薬が「半分は優しさで出来ている」のキャッチコピーで有名になったバファリンである(制酸剤は共にアルミニウム、マグネシウム等の化合物、または合成ヒドロタルサイト)。
風邪(特にインフルエンザや水痘)に感染した小児が使用するとライ症候群を引き起こすことがある。肝障害を伴った重篤な脳障害で死に至る危険があり、小児は服用するべきでない。小児の解熱鎮痛薬としては、アセトアミノフェンなどがある。
なお、高尿酸血症の原因の一つとしてアセチルサリチル酸の服用が挙げられているので、痛風患者は、鎮痛剤としてのアスピリンの服用は避けるべきという説がある一方で、尿細管内での尿酸再吸収を抑制するため、尿酸排泄促進剤としても使用されている。
また、抗凝血を目的に高用量のアセチルサリチル酸を服用しても効果が現れないばかりか、胃に多大な負担をかけるので注意が必要である。
アスピリン(aspirin)は、非ピリン系の薬品(nonpyrazolone drug)であり、アンチピリン(antipyrine)のようなピリン系の薬品(pyrazolone drug)ではない。カタカナ表記では「ピリン」の部分が同じなので混乱がおきやすいが、英語では「アスピリン」の「ピリン(pirin)[pərɪn]」と「ピリン系」の「ピリン(pyrine)[páiriːn]」はつづりも発音もちがい、まったく無関係である。したがってアスピリンとピリン系の薬品とでは副作用も異なる。
報告されている副作用
一般的な副作用は次の通りである:吐き気、消化不良、消化器潰瘍・出血、肝臓酵素増大、下痢、ふらつき、塩および体液停留、高血圧。
まれな副作用は次の通りである:食道潰瘍、心不全、高カリウム血症、腎臓障害、昏迷、気管支痙攣、発疹。
飲み合わせ
- エチルアルコール(アルコール飲料):吸収が早くなり作用が強くなる。
- イチョウ葉エキス・にんにくエキス(アリシン)・ビタミンE:作用が強くなり出血傾向が増す。
- たばこ:抗血小板作用が弱くなる。
- イブプロフェン:抗血小板作用が弱くなる。
副作用の抑制胃腸薬
- 胃酸分泌抑制薬
- プロトンポンプ阻害薬 - 胃の壁細胞のプロトンポンプに作用し、胃酸の分泌を抑制する薬である。
- ヒスタミンH2受容体拮抗薬 - ヒスタミンH2受容体に拮抗し、胃酸の分泌を抑制する。
- 胃粘膜保護剤 - 荒れた胃粘膜を覆って保護し、修復を補助する。
- 制酸剤 - アルカリ性の化合物で胃のpHを上昇させ、増えすぎた胃酸を中和する。
日本での製品
現在、バイエル薬品株式会社が製造販売する「アスピリン」と、アスピリンに制酸緩衝剤(アルミニウム・マグネシウム系)を加えたライオンの「バファリン」、粉末状で胃粘膜保護のため、和漢(ケイヒ)が加えられた銭湯の広告としても有名な内外薬品の「ケロリン」が特に知られており、それぞれ複数のジェネリック医薬品メーカーから局方品や後発品相当の製品が発売されている。ここではバイエルのアスピリンについて記載する。
大衆薬
バイエルアスピリン
1錠あたりアセチルサリチル酸500 mg(高用量)を含有するシンプルな製品で、2001年10月から明治製菓が提携して発売し、2008年10月からは佐藤製薬が発売している。適応症は解熱や頭痛・外傷痛など各種の鎮痛。ライオンのバファリンAよりも1錠あたりのアセチルサリチル酸そのものの量が多く、制酸剤を含まない事から、効果そのものは強い。ただし、胃への負担を軽くする制酸剤を含まないため、使用上の注意に「胃・十二指腸潰瘍を起こしている人」は服用しないようにとの但し書きがある。バファリンの場合は、同症状の場合、医師または薬剤師に相談せよとはあるものの、服用してはいけないとは書かれていない。
医療用医薬品
適応外使用で、産婦人科領域などでも抗凝血を目的に使われることがある。近年、大腸癌の死亡率低下作用が期待されている[5]。
バイアスピリン錠100 mg
1錠あたりアセチルサリチル酸100 mgを含有する。低用量のアセチルサリチル酸を投与すると抗血小板作用が現れることで、日本脳卒中学会、日本循環器学会からの抗血小板剤としての承認・発売要望などから、平成11年2月1日付厚生省医薬審第104号通知「適応外使用に係る医療用医薬品の取り扱いについて」[6]の適応条件に本剤が該当すると判断し承認申請、2000年秋に心筋梗塞・狭心症・虚血性脳血管障害の血栓塞栓形成抑制の効果で承認・薬価収載され、2001年1月に発売された。川崎病に対しても臨床的に有効かつ安全な治療法であることが実証されていることから本剤の追加効能として承認事項一部変更承認申請を行ない、その後、日本小児循環器学会から厚生労働省に対して要望書が提出され、2005年に承認、川崎病の治療にも適用が拡大された。
アスピリン「バイエル」(粉末)
乳幼児向けの投薬量が調整しやすいように、新規にアセチルサリチル酸の粉剤を開発し2006年に発売された。川崎病の治療のほか、バイエルアスピリンと同様の解熱鎮痛にも適用されている。
脚注
- ^ 塩沢俊一 『膠原病学』 丸善出版、2012年、第5版、110頁。ISBN 9784621084687。
- ^ Rainsford, K. D., ed (2004). Aspirin and Related Drugs. London: CRC Press. p. 1. ISBN 0-7484-0885-1.
- ^ パウラ・Y・ブルース 『ブルース有機化学』下、大船泰史、香月勗、西郷和彦、富岡清(監訳)、化学同人、2009年、第5版、822頁。ISBN 4759811699。
- ^ がん死亡リスク、アスピリン常用で大幅減、英大研究 2010年12月7日 2010年12月15日閲覧
- ^ 大腸癌診断後にアスピリンを定期服用すると死亡率が半減する可能性 日経メディカルオンライン 2009年6月3日 2009年6月5日閲覧
- ^ “医薬審第104' 「適応外使用に係る医療用医薬品の取り扱いについて」 (PDF)”. 厚生省医薬安第104号 (1999年2月1日). 2010年5月1日閲覧。
参考文献
- Charles C. Mann(原著)、Mark L. Plummer(原著)『アスピリン企業戦争 - 薬の王様100年の軌跡』平沢 正夫(翻訳)、ダイヤモンド社、ISBN 4-47-886009-2
- 『バイエルアスピリン』添付文書(佐藤製薬)
- 『バイアスピリン錠100 mg』医薬品インタビューフォーム(バイエル薬品)
- 『アスピリン「バイエル」』医薬品インタビューフォーム(バイエル薬品)
関連項目
- アスピリン・ジレンマ
- 食物依存性運動誘発性アナフィラキシー
- アスピリン喘息
|
ウィキメディア・コモンズには、アセチルサリチル酸に関連するメディアがあります。 |
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)(主にM01A,M02A,N02BA) |
|
サリチル酸 |
アセチルサリチル酸(アスピリン) Aloxiprin Benorylate Diflunisal エテンザミド サリチル酸マグネシウム サリチル酸メチル Salsalate サリシン サリチルアミド サリチル酸ナトリウム
|
|
Arylalkanoic acids |
ジクロフェナク Aceclofenac Acemetacin Alclofenac Bromfenac Etodolac インドメタシン インドメタシンファルネシル Nabumetone Oxametacin Proglumetacin Sulindac Tolmetin
|
|
2-Arylpropionic acids
(profens) |
イブプロフェン Alminoprofen Benoxaprofen カルプロフェン Dexibuprofen Dexketoprofen Fenbufen フェノプロフェン Flunoxaprofen フルルビプロフェン Ibuproxam Indoprofen† ケトプロフェン Ketorolac ロキソプロフェン Miroprofen ナプロキセン Oxaprozin Pirprofen Suprofen Tarenflurbil チアプロフェン酸
|
|
N-Arylanthranilic acids
(フェナム酸) |
メフェナム酸 フルフェナム酸 メクロフェナム酸 トルフェナム酸
|
|
ピラゾリジン誘導体 |
フェニルブタゾン アンピロン アザプロパゾン Clofezone Kebuzone Metamizole Mofebutazone Oxyphenbutazone アンチピリン スルフィンピラゾン
|
|
オキシカム |
ピロキシカム Droxicam ロルノキシカム Meloxicam Tenoxicam Ampiroxicam
|
|
COX-2選択的阻害薬 |
セレコキシブ Deracoxib‡ Etoricoxib Firocoxib‡ Lumiracoxib† Parecoxib Rofecoxib† Valdecoxib†
|
|
スルホンアニリド |
ニメスリド
|
|
局所適用製品 |
Bendazac ジクロフェナク Etofenamate フェルビナク フルルビプロフェン イブプロフェン インドメタシン ケトプロフェン ナプロキセン ピロキシカム スプロフェン
|
|
COX-inhibiting nitric oxide donators |
Naproxcinod
|
|
Others |
フルプロクアゾン
|
|
太字はグループで初期に発見された薬物。†承認取消あるいは市場撤退した薬、‡動物用医薬品。
|
|
UpToDate Contents
全文を閲覧するには購読必要です。 To read the full text you will need to subscribe.
Japanese Journal
- 低用量アスピリンがHelicobacter pylori除菌後の内視鏡像変化に与える影響
- 古川 真依子,滝西 あきら,田口 あゆみ,藤田 美貴子,新見 晶子,三坂 亮一,長原 光
- 東京女子医科大学雑誌 80(8), 248-248, 2011-08-25
- 第41回消化器病センター例会 平成22年1月16日(土) 東京女子医科大学弥生記念講堂
- NAID 120003519067
- 小児科領域における研究と治療の進歩(8)川崎病の急性期治療の現状と新たな試み
- 濱田 洋通
- 東京女子医科大学雑誌 81(4), 227-230, 2011-08-25
- … 心疾患のリスクとなり、一生にわたり管理が必要となる.川崎病は未だに原因が不明であり、モデル動物もいないことから、急性期治療法の開発は試行錯誤の連続であった.初期に試みられたステロイド治療、アスピリンの時代、1984年に報告された免疫グロブリン大量療法のすぐれた成績とその後の免疫グロブリン治療標準化の時代を経て、現在は免疫グロブリン不応例に対する新たな追加治療の試みが模索されている. …
- NAID 110008604386
- NSAIDs不耐症による蕁麻疹および血管性浮腫,本邦76例の解析
- 守屋 真希,相原 道子,廣田 理映,平田 祐子,生長 奈緒子,高村 直子,國見 裕子,内田 敬久,池澤 善郎
- アレルギー 60(6), 699-707, 2011-06-30
- … 果】蕁麻疹59例(77.6%),血管性浮腫33例(43.4%),両者合併16例(21%),年齢は平均38.1歳(男女比1:2.45)であった.血管性浮腫は選択的COX-2阻害薬と塩酸チアラミドで症状が誘発されなかったが,蕁麻疹はこれらの投与で誘発される症例がみられた.症状誘発時の血漿ヒスタミン値と血清eosinophil cationic protein値は一部の患者に上昇がみられた.【結語】皮膚型のNSAIDs不耐症はアスピリン喘息とは異なる病態であり,多様性があることが示された. …
- NAID 110008673092
Related Pictures
Japan Pharmaceutical Reference
薬効分類名
販売名
アスファネート配合錠A81
効能または効果
狭心症(慢性安定狭心症、不安定狭心症)
心筋梗塞
虚血性脳血管障害(一過性脳虚血発作(TIA)、脳梗塞)
- ・冠動脈バイパス術(CABG)あるいは経皮経管冠動脈形成術(PTCA)施行後における血栓・塞栓形成の抑制
- ・川崎病(川崎病による心血管後遺症を含む)
- ・狭心症(慢性安定狭心症、不安定狭心症)、心筋梗塞、虚血性脳血管障害(一過性脳虚血発作(TIA)、脳梗塞)における血栓・塞栓形成の抑制、冠動脈バイパス術(CABG)あるいは経皮経管冠動脈形成術(PTCA)施行後における血栓・塞栓形成の抑制に使用する場合:
通常、成人には1錠(アスピリンとして81mg)を1回量として、1日1回経口投与する。なお、症状により1回4錠(アスピリンとして324mg)まで増量できる。
- ・川崎病(川崎病による心血管後遺症を含む)に使用する場合:
急性期有熱期間は、アスピリンとして1日体重1kgあたり30?50mgを3回に分けて経口投与する。解熱後の回復期から慢性期は、アスピリンとして1日体重1kgあたり3?5mgを1回経口投与する。なお、症状に応じて適宜増減する。
- ・空腹時の投与は避けることが望ましい。
- ・心筋梗塞及び経皮経管冠動脈形成術に対する投与に際しては、初期投与量として維持量の数倍が必要とされていることに留意すること1)。
- ・原則として川崎病の診断がつき次第、投与を開始することが望ましい2)。
- ・川崎病では発症後数ヵ月間、血小板凝集能が亢進しているので、川崎病の回復期において、本剤を発症後2?3ヵ月間投与し、その後断層心エコー図等の冠動脈検査で冠動脈障害が認められない場合には、本剤の投与を中止すること。冠動脈瘤を形成した症例では、冠動脈瘤の退縮が確認される時期まで投与を継続することが望ましい2、3)。
- ・川崎病の治療において、低用量では十分な血小板機能の抑制が認められない場合もあるため、適宜、血小板凝集能の測定等を考慮すること。
慎重投与
- 消化性潰瘍の既往歴のある患者
[消化性潰瘍が再発するおそれがある。]
- 血液の異常又はその既往歴のある患者
[副作用が強くあらわれることがある。]
- 出血傾向の素因のある患者
[出血を増強するおそれがある。]
- 肝障害又はその既往歴のある患者
[副作用が強くあらわれることがある。]
- 腎障害又はその既往歴のある患者
[副作用が強くあらわれることがある。]
- 高血圧の患者
[血管や内臓等の障害箇所に出血が起こることがある。]
- 過敏症の既往歴のある患者
- 気管支喘息のある患者
[喘息発作が誘発されるおそれがある。]
- アルコール飲料の常用者
[胃出血の危険性が増加することがある。(「3.相互作用」の項参照)]
- 高齢者[「 5.高齢者への投与」の項参照]
- 妊婦(ただし、出産予定日12週以内の妊婦は禁忌)又は妊娠している可能性のある婦人[「6.妊婦、産婦、授乳婦等への投与」の項参照]
- 小児[「2.重要な基本的注意」の項、「7.小児等への投与」の項参照]
- 手術、心臓カテーテル検査又は抜歯前1週間以内の患者
[失血量を増加させるおそれがある。]
- 非ステロイド性消炎鎮痛剤の長期投与による消化性潰瘍のある患者で、本剤の長期投与が必要であり、かつミソプロストールによる治療が行われている患者[ミソプロストールは非ステロイド性消炎鎮痛剤により生じた消化性潰瘍を効能・効果としているが、ミソプロストールによる治療に抵抗性を示す消化性潰瘍もあるので、本剤を継続投与する場合には、十分経過を観察し、慎重に投与すること。]
- 月経過多の患者
[月経血が増加するおそれがある。]
重大な副作用
(いずれも頻度不明)
ショック、アナフィラキシー様症状
- ショックやアナフィラキシー様症状(呼吸困難、全身潮紅、血管浮腫、蕁麻疹等)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
出血
脳出血等の頭蓋内出血
- 脳出血等の頭蓋内出血(初期症状:頭痛、悪心・嘔吐、意識障害、片麻痺等)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、このような症状があらわれた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
肺出血、消化管出血、鼻出血、眼底出血等
- 肺出血、消化管出血、鼻出血、眼底出血等があらわれることがあるので、観察を十分に行い、このような症状があらわれた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、中毒性表皮壊死症(Lyell症候群)、剥脱性皮膚炎
- 皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死症、剥脱性皮膚炎があらわれることがあるので、観察を十分に行い、このような症状があらわれた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
再生不良性貧血、血小板減少、白血球減少
- 再生不良性貧血、血小板減少、白血球減少があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
喘息発作の誘発
肝機能障害、黄疸
- AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTP等の著しい上昇を伴う肝機能障害や黄疸があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。
消化性潰瘍、小腸・大腸潰瘍
- 下血(メレナ)を伴う胃潰瘍・十二指腸潰瘍等の消化性潰瘍があらわれることがある。また、消化管出血、腸管穿孔を伴う小腸・大腸潰瘍があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
薬効薬理
血小板凝集抑制作用
- 低用量アスピリンの経口投与は、虚血性脳疾患患者18)、虚血性心疾患患者19)及び川崎病患者20)においてADP、コラーゲン等による血小板凝集を抑制 する。高用量のアスピリンは、解熱、鎮痛、抗炎症作用を示す21)。
作用機序
- アスピリンは、そのアセチル基によって血小板シクロオキシゲナーゼを不可逆的に阻害して血小板のトロンボキサンA2(TXA2)の産生を抑制することにより、血小板凝集を抑制し血小板血栓の形成を阻止する21)。一方、アスピリンの主代謝物であるサリチル酸は、抗炎症効果はアスピリンと同程度の効力を示すものの、血小板凝集抑制作用は示さない22)。アスピリンは、血管内皮細胞のシクロオキシゲナーゼも阻害してプロスタサイクリン(PGI2)の生成も抑制し、その結果、血小板凝集抑制作用が減弱される可能性が指摘されてきた(アスピリンジレンマ)。そのため低用量アスピリン(75mg/日?325mg/日)の経口投与が推奨されている。
作用持続時間
- アスピリンの経口投与後、アスピリンの血中濃度半減期は短いにもかかわらず、TXA2産生抑制作用や血小板凝集抑制作用は血小板の寿命期間(7?10日)継続する。これは、アスピリンのアセチル基によるシクロオキシゲナーゼ阻害作用は不可逆的であり、かつ血小板はシクロオキシゲナーゼの合成能を有しないためと考えられている21)。
日本人の健常成人男子に本品1錠(アスピリンとして81mg)を経口投与した場合のコラーゲン1μg/mL刺激による血小板凝集に対する抑制率の経日変化23)
(平均値±SD、n=8)
川崎病
- 川崎病の急性期において、アスピリンは高用量投与による抗炎症作用21)により血管や心筋の炎症を抑えて心血管後遺症の発生を抑制するとともに、発熱などの臨床症状を改善することを目的として使用される。そして、解熱後から慢性期においては、低用量投与による血小板凝集抑制作用により血栓形成を抑制することを目的として使用される2)。
有効成分に関する理化学的知見
アスピリン
一般名
分子式
分子量
化学名
融点
- 約136℃(あらかじめ溶液を130℃に加熱しておく)。
性状
- 白色の結晶、粒又は粉末で、においはなく、わずかに酸味がある。エタノール(95)又はアセトンに溶けやすく、ジエチルエーテルにやや溶けやすく、水に溶けにくい。水酸化ナトリウム試液又は炭酸ナトリウム試液に溶ける。湿った空気中で徐々に加水分解してサリチル酸及び酢酸になる。
炭酸マグネシウム
一般名
- 炭酸マグネシウム(Magnesium Carbonate)
分子式
分子量
化学名
性状
- 白色のもろい塊又は粉末で、においはない。水、エタノール(95)、1-プロパノール又はジエチルエーテ ルにほとんど溶けない。希塩酸に泡立って溶ける。飽和水溶液はアルカリ性である。
ジヒドロキシアルミニウム アミノアセテート
一般名
- ジヒドロキシアルミニウム アミノアセテート (Dihydroxyaluminum Aminoacetate)
分子式
分子量
化学名
- Dihydroxyaluminum Aminoacetate
性状
- 白色の粉末又は粒で、においはなく、味はわずかに甘い。水又はエタノール(95)にほとんど溶けない。希塩酸又は水酸化ナトリウム試液に大部分溶ける。
★リンクテーブル★
[★]
- 次の文を読み、66~68の問いに答えよ。
- 78歳の男性。呼吸困難と下腿浮腫とを主訴に来院した。
- 現病歴:心不全、心筋梗塞および高血圧症にて自宅近くの診療所に通院中であった。2か月前から階段を上がる際に胸部の違和感を覚えるようになった。1か月前から歩行時の呼吸困難と下腿浮腫とを自覚するようになった。呼吸困難は徐々に悪化し、10mさえも歩くことが困難になり受診した。
- 既往歴:65歳から高血圧症。75歳時に心筋梗塞にて経皮的冠動脈形成術(薬剤溶出性ステント留置)。76歳から心不全。アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬、β遮断薬、ループ利尿薬、HMG-CoA還元酵素阻害薬、アスピリン及びチエノピリジン系抗血小板薬を処方されている。
- 生活歴:喫煙は70歳まで20本/日を50年間。飲酒は機会飲酒。
- 家族歴:父親は脳出血で死亡。母親は胃癌で死亡。
- 現症:意識は清明。身長 154cm、体重 58kg(1か月で3kg増加)。体温 36.3℃。脈拍 96/分、整。血圧 156/86mmHg。呼吸数 24/分。SpO2 96%(鼻カニューラ2L/分酸素投与下)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。頸静脈の怒張を認める。頸部血管雑音を聴取しない。胸部の聴診でⅢ音とⅣ音とを聴取する。心雑音を聴取しない。呼吸音に異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。両側の下腿に浮腫を認める。
- 検査所見:尿所見:蛋白(-)、糖(-)、沈渣に白血球を認めない。血液所見:赤血球 412万、Hb 13.8g/dL、Ht 42%、白血球 6,500(桿状核好中球 30%、分葉核好中球 40%、好酸球 1%、好塩基球 1%、単球 6%、リンパ球 22%)、血小板 19万、Dダイマー 0.6μg/dL(基準 1.0以下)。血液生化学所見:総蛋白 6.5g/dL、アルブミン 3.8g/dL、総ビリルビン 1.1mg/dL、AST 36IU/L、ALT 39IU/L、LD 352IU/L(基準 176~353)、ALP 153IU/L(基準 115~359)、CK 156IU/L(基準30~140)、尿素窒素 21mg/dL、クレアチニン 0.9mg/dL、血糖 114mg/dL、HbA1c 5.7%(基準 4.2~6.2)、総コレステロール 139mg/dL、トリグリセリド 77mg/dL、HDLコレステロール 53mg/dL、Na 137mEq/L、K 4.7mEq/L、Cl 104mEq/L、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)840pg/mL(基準 18.4以下)。CRP 0.2mg/dL。心筋トロポニンT迅速検査は陰性。心電図は心拍数98/分の洞調律で、不完全右脚ブロックを認める。胸部エックス線写真で心胸郭比は58%であり、肺血管陰影の増強と右肋骨横隔膜角の鈍化とを認める。心エコーで左室駆出率は34%で、びまん性に左室の壁運動低下を認める。
- 入院後の経過:入院し適切な治療を行ったところ徐々に病状は改善し、入院3日目には、酸素投与を中止し内服薬をすべて再開した。入院5日目の夜、トイレに行こうとしてベッドサイドで転倒した。意識は清明。体温 36.8℃。脈拍 88/分、整。血圧 138/84mmHg。呼吸数 18/分。SpO2 96%(room air)。大腿骨エックス線写真と腰椎エックス線写真で骨折を認めない。頭部CTで異常を認めない。
- その後の経過:入院10日目の昼ころから、心窩部に軽い痛みを感じるようになった。翌朝、黒色便が出現した。意識は清明。体温 36.6℃。脈拍 100/分、整。血圧 98/56mmHg。呼吸数 20/分。SpO2 97%(room air)。
- 対応として適切でないのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [110G067]←[国試_110]→[110G069]
[★]
- 次の文を読み、63~65の問いに答えよ。
- 35歳の女性。左上下肢の脱力のため夫に連れられて来院した。
- 現病歴:3年前に複視を自覚したが、疲れ目と考え様子をみたところ、数日で自然軽快した。1年前に右眼のかすみを自覚して自宅近くの眼科診療所を受診したが、眼底検査に異常なく約2週間で軽快した。2日前に左下肢、引き続いて左上肢の脱力を自覚した。本日、歩行も困難になったため受診した。
- 既往歴:特記すべきことはない。
- 生活歴:事務職。会社員の夫と2人暮らしで子どもはいない。喫煙歴と飲酒歴はない。
- 家族歴:特記すべきことはない。
- 現症:意識は清明。身長 156cm、体重 50kg。体温 36.5℃。脈拍 64/分、整。血圧 126/68mmHg。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。視力は右0.4(0.8×-1.5 D)、左0.6(1.2×-1.0 D)。他の脳神経に異常を認めない。四肢筋力は、右側は正常、左側は徒手筋力テストで3~4の筋力低下を認める。腱反射は左上下肢で亢進し、左Babinski徴候が陽性である。自覚的に左半身のしびれ感を訴えるが、温痛覚、振動覚および関節位置覚は左右差を認めない。
- 検査所見:尿所見:蛋白(-)、糖(-)、潜血(-)。血液所見:赤血球 468万、Hb 13.9g/dL、Ht 42%、白血球 5,300、血小板 21万、PT-INR 1.0(基準 0.9~1.1)、APTT 31.4秒(基準対照 32.2)。血液生化学所見:総蛋白 7.5g/dL、アルブミン 3.9g/dL、IgG 1,424mg/dL(基準 960~1,960)、総ビリルビン 0.9mg/dL、直接ビリルビン 0.2mg/dL、AST 28U/L、ALT 16U/L、LD 177U/L(基準 176~353)、ALP 233U/L(基準 115~359)、γ-GTP 32U/L(基準 8~50)、CK 72U/L(基準 30~140)、尿素窒素 12mg/dL、クレアチニン 0.6mg/dL、血糖 98mg/dL、Na 140mEq/L、K 4.4mEq/L、Cl 97mEq/L。免疫血清学所見:CRP 0.3mg/dL。抗核抗体、抗DNA抗体、抗カルジオリピン抗体、抗アクアポリン4抗体およびMPO-ANCAは陰性。脳脊髄液所見:初圧 80mmH2O(基準 70~170)、細胞数 1/mm3(基準 O~2)、蛋白 60mg/dL(基準 15~45)、糖 60mg/dL(基準 50~75)。頭部MRIのFLAIR像(別冊No. 13)を別に示す。
- 治療は奏効し、症状は軽快した。
- 再発予防に用いるのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [112C064]←[国試_112]→[112C066]
[★]
- 次の文を読み、49~51の問いに答えよ。
- 77歳の男性。歩行困難のため搬入された。
- 現病歴:最近手のしびれを自覚したため1か月前からかかりつけ医でビタミンB12を投与されていた。今朝、散歩中に公園のトイレで一時的に意識がもうろうとなり転倒した。すぐに意識は回復したが、右殿部の強い痛みで歩けなくなったために救急車を要請した。日常生活は自立していた。
- 既往歴:3年前に軽い脳梗塞を発症し、アスピリンを内服している。残存する上下肢の麻痺はない。逆流性食道炎、前立腺肥大症および脂質異常症で、プロトンポンプ阻害薬、α1遮断薬およびHMG-CoA還元酵素阻害薬を内服している。
- 生活歴:無職。要支援1と認定されている。74歳の妻と2人暮らし。
- 家族歴:父親が肺結核。
- 現症:意識は清明。体温36.4℃。脈拍88/分、整。血圧122/64mmHg。呼吸数20/分。SpO2 96%(鼻カニューラ2L/分 酸素投与下)。眼瞼結膜に異常を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。心電図に異常を認めない。頭部単純CTでは頭蓋内出血を認めない。
- この患者の転倒に最も影響したと考えられる薬剤はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [107B048]←[国試_107]→[107B050]
[★]
- 次の文を読み、67~69の問いに答えよ。
- 58歳の男性。歩行時の胸痛と息苦しさとを主訴に来院した。
- 現病歴: 2か月前から階段を上がったとき前胸部痛を感じていた。前胸部痛は安静になると消失していた。2週前から平地歩行でも胸痛が出現するようになった。また、息苦しさも感じるようになった。
- 既往歴: 特記すべきことはない。
- 生活歴: 喫煙は20本/日を35年間。
- 家族歴: 父親は高脂血症で加療中である。
- 現症 : 身長162cm、体重75kg。脈拍72/分、整。血圧126/76mmHg。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。心音と呼吸音とに異常をみとめない。肝・脾を触知しない。下肢に浮腫を認めない。
- 検査所見: 血液所見:赤血球450万、Hb14.5g/dl、白血球6,800、血小板25万。血液生化学所見:総蛋白7.5g/dl、アルブミン4.0g/dl、尿素窒素15.0mg/dl、クレアチニン1.0mg/dl、総コレステロール270mg/dl、トリグリセライド140mg/dl、HDL-コレステロール44mg/dl、AST25IU/l、ALT20IU/l。冠動脈造影写真を以下に示す。
- 手術後に使用する薬剤で適切なのはどれか。2つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [102G068]←[国試_102]→[102H001]
[★]
- 45歳の女性。関節痛の増悪を主訴に来院した。5年前に両手指関節、両手関節および両肘関節の痛みが出現した。関節リウマチと診断され、サラゾスルファピリジン、非ステロイド性抗炎症薬および少量の副腎皮質ステロイドが処方された。2年前から関節痛が強くなったため、メトトレキサートの投与が開始され痛みは軽減したが、3か月前から増悪し、メトトレキサートが増量されたが効果は不十分で、日常の動作も困難となったため受診した。心音と呼吸音とに異常を認めない。両側の示指、中指、環指の中手指節関節(MP関節)と両手関節および両肘関節の腫脹と圧痛とを認める。血液所見:赤血球 420万、Hb 12.9g/dL、Ht 39%、白血球 7,200。血液生化学所見:AST 16U/L、ALT 20U/L、尿素窒素 12mg/dL、クレアチニン 0.5mg/dL。免疫血清学所見:CRP 2.8mg/dL、リウマトイド因子(RF) 122IU/mL(基準 20未満)、抗CCP抗体 86U/mL(基準 4.5未満)。HBs抗原、HBs抗体、HBc抗体、HCV抗体および結核菌特異的全血インターフェロンγ遊離測定法(IGRA)は陰性である。
- 次に投与する薬剤として適切なのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [112C041]←[国試_112]→[112C043]
[★]
- 83歳の女性。全身の衰弱のため、心配した介護施設の職員に伴われて来院した。2か月前から介助がないと立ち上がれなくなった。1か月前からさらに活気がなくなり、1週間前から食事量も減少してきた。脳梗塞後遺症の左不全片麻痺、高血圧症、脂質異常症、骨粗鬆症および便秘のため、アスピリン、カルシウム拮抗薬、スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、活性型ビタミンD、酸化マグネシウム及びプロトンポンプ阻害薬を内服している。意識レベルはJCSⅠ-2。血圧 126/62mmHg。尿所見:蛋白(-)、潜血(-)。血液所見:赤血球 302万、Hb 9.7g/dL、Ht 30%、白血球 5,700、血小板 14万。血液生化学所見:総蛋白 6.3g/dL、アルブミン 3.3g/dL、AST 11U/L、ALT 16U/L、CK 97U/L(基準 30~140)、尿素窒素 28mg/dL、クレアチニン 2.8mg/dL、LDLコレステロール 120mg/dL、Na 134mEq/L、K 4.5mEq/L、Cl 100mEq/L、Ca 12.5mg/dL、P 3.1mg/dL、Mg 2.5mg/dL(基準 1.8~2.5)。
- この患者の衰弱の原因として最も考えられる薬剤はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [111D045]←[国試_111]→[111D047]
[★]
- 82歳の女性。悪心と骨盤の痛みとを主訴に来院した。2年前に骨病変を伴う多発性骨髄腫と診断された。抗癌化学療法とビスホスホネート製剤の投与とを受けていたが治療抵抗性となり、3か月前に抗癌化学療法は中止した。その後、多発性骨髄腫による骨盤の痛みが生じたため、局所放射線照射を行ったが除痛効果は一時的であり、モルヒネの内服を開始した。当初、痛みは良好にコントロールされていたが、徐々にモルヒネの効果が乏しくなったため、段階的に増量した。数日前から痛みに加え、食欲不振と悪心が強くなり受診した。血液検査で電解質に異常を認めない。腹部エックス線写真でイレウス所見を認めない。
- 対応として適切なのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [112C034]←[国試_112]→[112C036]
[★]
- 54歳の男性。胸やけを主訴に来院した。半年前から週に2回ほど胸やけを自覚するようになった。最近、食後に心窩部痛やもたれ感が出現し、胸やけが増強した。意識は清明。身長168cm、体重78kg。体温36.4℃。脈拍72/分、整。血圧122/68mmHg。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、圧痛を認めない。血液所見: 赤血球 488万、Hb 13.5g/dl、Ht 40%、白血球 7,400、血小板 28万。血液生化学所見: 血糖 138mg/dl、クレアチニン 0.8mg/dl、総コレステロール 248mg/dl、トリグリセリド 125mg/dl、総ビリルビン 1.0mg/dl、AST 28IU/l、ALT 62IU/l。上部消化管内視鏡写真(別冊No.6)を別に示す。
- 治療薬はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [104I044]←[国試_104]→[104I046]
[★]
- 20歳の男性。発熱と咽頭痛とを主訴に来院した。7日前から38℃の発熱、咽頭痛および全身倦怠感が出現し、近医にてかぜと診断され治療を受けたが軽快しなかった。咽頭の発赤、扁桃の発赤・腫脹および頸部・腋窩リンパ節腫脹を認める。胸部に発疹を認める。心音と呼吸音とに異常を認めない。脾を触知する。血液所見:赤血球470万、白血球12,000(桿状核好中球6%、分葉核好中球20%、好塩基球1%、単球6%、リンパ球55%、異型リンパ球12%)、血小板38万。血清生化学所見:クレアチニン0.6mg/dl、AST260単位、ALT310単位、ALP210単位(基準260以下)、LDH670単位(基準176~353)。CRP7.6mg/dl。
- この患者に投与してはならないのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [100I035]←[国試_100]→[100I037]
[★]
- 7か月の乳児。発熱を主訴に来院した。5日前から発熱が続き、昨日から発疹が出現している。体温39.4℃。全身に紅斑を認め、手背と足背とが腫れている。指圧痕は残らない。両側眼球結膜は充血し、口唇は発赤している。心雑音はなく、呼吸音も正常である。腹部は平坦、軟。肝を右肋骨弓下に2cm触知する。脾は触知しない。血液所見:赤血球390万、Hb11.5g/dl、Ht38%、白血球15,600(桿状核好中球19%、分葉核好中球48%、好酸球1%、単球5%、リンパ球27%)、血小板41万。CRP16mg/dl。1か月前に接種したBCG接種部位の写真を以下に示す。まず投与するのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [100A005]←[国試_100]→[100A007]
[★]
- 67歳の男性。労作時胸痛の再発を主訴に来院した。10年前に胃潰瘍の既往がある。4か月前に狭心症、高血圧、高尿酸血症および高脂血症と診断され、経皮的冠動脈ステント留置術を受けた。その後は胸痛が消失し体調が良かったため、自己判断で1週前から処方薬の内服を中断していた。意識は清明。身長168cm、体重68kg、脈拍72/分、整。血圧132/78mmHg。心尖部でIV音を聴取する。呼吸音に異常を認めない。下肢に浮腫を認めない。
- 以前服薬していた薬剤の中で、中断が労作時胸痛の再発に最も影響したのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [104I045]←[国試_104]→[104I047]
[★]
- 70歳の女性。左上腹部痛を主訴に来院した。昨夜、久しぶりに孫たちと遊んだり歌ったりして騒いだ。その 3時間後から左上腹部に痛みを感じるようになった。診察室には前かがみの姿勢で入ってきた。食事摂取は良好であり、悪心や嘔吐はなく便通も正常である。 3年前に脳梗塞を発症し、その後アスピリンを内服している。体温 36.5℃。脈拍 88/分、整。血圧 140/90 mmHg。左上腹部に限局した圧痛を認めるが、反跳痛はない。腹筋を緊張させると疼痛と圧痛とは増強する。腸雑音は正常である。
- 最も考えられるのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [108A027]←[国試_108]→[108A029]
[★]
- 72歳の男性。皮膚筋炎のため1か月前から入院中である。副腎皮質ステロイドと免疫抑制薬とを内服している。2日前に痛みを伴う皮疹が左上腹部に出現し、1日前から抗ウイルス薬の全身投与を開始した。今朝、体幹と四肢とに多発する孤立性の皮疹を認めた。胸腹部の写真(別冊No. 12)を別に示す。
- この患者への対応で正しいのはどれか。
- a 個室隔離が必要である。
- b アスピリンは禁忌である。
- c 直ちにワクチン接種を行う。
- d 副腎皮質ステロイド内服を直ちに中止する。
- e 皮疹には副腎皮質ステロイド外用薬を使用する。
[正答]
※国試ナビ4※ [110A038]←[国試_110]→[110A040]
[★]
- 31歳の3回経妊回経産婦。妊娠8週。左下肢の疼痛を主訴に来院した。2週前から悪心と嘔吐とが出現し、十分な食事が摂れていないという。左下肢の腫脹が著明で、右下肢とは左右差を認める。左腓腹部に把握痛がある。血液所見:赤血球440万、Hb 13.5g/dl、Ht 40%、白血球10,000、血小板25万、Dダイマー5.8μg/ml(基準1.0以下)。CRP 1.4mg/dl。下肢静脈超音波カラードプラ法で、左大腿静脈に血流信号を認めない。入院後輸液を開始した。
- 治療薬として適切なのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [107I040]←[国試_107]→[107I042]
[★]
- 30歳の男性。突然の呼吸困難を主訴に来院した。今朝から感冒様症状があり、市販薬の服用30分後から強い息切れが出現した。1年前から間欠的に夜間・早朝の息切れと咳とを自覚していた。胸部全体にwheezesを聴取する。来院後の治療によって症状は消失した。
- 対応として適切なのはどれか。2つ選べ。
- a. 鼻腔の観察
- b. アスピリンの使用禁止
- c. 感冒時に別の市販薬投与
- d. 感冒時に同じ市販薬少量投与
- e. 血清抗アスペルギルス抗体測定
[正答]
※国試ナビ4※ [103D044]←[国試_103]→[103D046]
[★]
- 21歳の女性。運動時に気が遠くなる感じがあることを主訴に来院した。 3か月前から同様の症状に気付いていた。脈拍68/分、整。血圧112/68mmHg。心尖部にⅣ音を、胸骨左縁第4肋間を中心に収縮期雑音を聴取する。心エコー図(別冊No.11A、 B)を別に示す。
- 治療薬として適切なのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [106D032]←[国試_106]→[106D034]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [100G032]←[国試_100]→[100G034]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [098G102]←[国試_098]→[098G104]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [105I011]←[国試_105]→[105I013]
[★]
- 陳旧性心筋梗塞患者の再発予防に有用なのはどれか。2つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [103I038]←[国試_103]→[103I040]
[★]
- 英
- early separation of placenta
- ラ
- abruptio placentae
- 同
- 胎盤早期剥離、子宮胎盤溢血 apoplexia uteri uteroplacental apoplexy
- 関
- 胎盤後血腫、
定義
- 正常位置すなわち子宮体部に付着している胎盤が、妊娠中または分娩経過中の胎児娩出以前に、子宮壁より剥離するもの(NGY)
病因
- 妊娠高血圧症候群、早期胎盤剥離の既往、切迫早産(前期破水)、外傷(交通事故など)(GUI)
- 妊娠高血圧症候群(常位胎盤早期剥離の50-70%に妊娠高血圧症が存在するとも(NGY))
- 早産例では絨毛膜羊膜炎(NGY)
- 外傷(交通事故、暴行(腹部打撲)、外回転術、臍帯、羊水穿刺) (NGY)(PRI)
- 急激な羊水腔圧の低下(羊水過多の破水時、双胎の第1児娩出後) (NGY)
リスクファクター(GUI)
- 常位胎盤早期剥離:10倍
- 母体の妊娠中期のAFP高値を示す妊婦:10倍
- 慢性高血圧:3.2倍
- 妊娠24週の子宮動脈血流波形にnotch がみられる症例:4.5倍
- 子宮内感染例:9.7倍
- 前期破水:(48時間未満)2.4倍、(48時間以上)9.9倍
疫学
- 発生率:総分娩数の約0.5-1.3% (NGY)。全妊娠の約0.5%(PRI)
- 胎児死亡やDICを合併する重症例:全妊娠の0.1-0.2%(PRI)
- 重症例の母体死亡率:約1-2%(NGY)(PRI)。
- 児の周産期死亡率:30-50% (NGY)、20-80%(PRI)
病態形成(PRI)
- 早期剥離は基底脱落膜の出血に始まり、形成された胎盤後血腫がこれに接する胎盤をさらに剥離・圧迫し、最終的には胎盤機能を障害する。剥離部位によって外出血をみる場合と,剥離した胎盤と子宮の間に血腫を形成し外出血をみない潜伏出血といわれる状態になる場合とがある。
- 胎盤の剥離は、子宮内出血と胎児環境の悪化を同時にもたらす。出血のために腹痛,子官内圧の上昇,子宮壁の硬化,そして外出血が起こる。胎児は低酸素症のために急速に胎児仮死に陥り,剥離の程度によっては救命処置を行う余裕のないまま子宮内胎児死亡に至る。子宮内圧の上昇のために子宮筋層内に血液が浸潤し,子宮胎盤溢血の状態となる。胎盤の剥離の進行とともに,トロンボプラスチンの豊富な繊毛成分が母体の静脈から大循環へと流入しDICを引き起こす。
症状
- 常位胎盤早期剥離は臨床症状の程度によって4群に分類され、重傷度により異なる(表)(GNY)
- 初発症状:急激な下腹痛、子宮壁の硬化(板状硬)、子宮収縮、外出血(PRI)
- 典型的には切迫早産様症状(性器出血,子宮収縮,下腹部痛)(GUI)
1. 下腹部痛(NGY)
- 急激に子宮底が上昇し,腹壁が強く緊張し(板状硬,子宮強直)、胎児部分の触知は困難となる。子宮体部、とくに胎盤の付着部位に圧痛を認める。
2. 性器出血(NGY)
- 前置胎盤と異なり外出血は比較的少量であり、陣痛間欠期に増量する。破水後であれば血性羊水を認めることがある。出血量が多い場合、母体は出血性ショックに陥り、血圧低下、頻脈、顔面蒼白などの症状を呈する。とくに内出血(胎盤後血腫)が多い症例では血腫内で凝固因子が消費され、また組織トロンボプラスチンが母体血中へ流入することにより母体にDICを発症するため予後はきわめて不良である。
軽症例(PRI)
- 下腹痛,満期に入る前に突然起こる陣痛が初発症状であることが多い。その場合、I期出血、破水しているときの血性羊水が特徴的な症状である。分娩は比較的急速に進行し、胎児心拍で胎児仮死徴候が明らかとなることが多い。
中等症例(PRI)
- 早期にはshockあるいはDICの臨床症状は呈さないが、処置が遅れると重症例に近い経過になる。
重症例(PRI)
- 発症直後に胎児死亡をきたし、大量の出血のために母体はshock状態となり、DICによる出血傾向が出現する。その場合,腹痛や外出血が著明であることがほとんどである。
診断
診断方針 (GUI)
- 妊娠後半期に切迫早産様症状(性器出血,子宮収縮,下腹部痛)と同時に異常胎児心拍パターンを認めた時は常位胎盤早期剥離を疑い以下の検査を行う。
- 超音波検査
- 血液検査(血小板,アンチトロンビン活性[以前のアンチトロンビンIII 活性],FDPあるいはD-dimer,フィブリノゲン,GOT,LDH など)
- 鑑別診断として前置胎盤,切迫早産を念頭に置く(NGY)。
外診
- 腹部は全体に緊満し、全体的に圧痛を認めるが胎盤剥離部位に一致して強い圧痛がある。子宮筋の緊張のために胎児部分の触知は困難である。内出血量が多い場合は子宮底の上昇が認められる(PRI)。
内診
- 外出血を認めることが多い。未破水で子営口が拡大している場合は、緊満した胎胞を触知する。既破水の場合は血性羊水の流出を認める(PRI)。
全身所見
- 出血の程度によって貧血症状を認める。外出血の程度に比べて重症感が強いのが特徴的である(PRI)。
分娩監視装置による胎児心拍陣痛図(CTG)の所見
- 胎盤剥離面積の程度に伴い、基線細変動の消失、遅発一過性徐脈、遷延性徐脈、sinusoidal pattern、児心音の消失を認める(NGY)(GUI)。子宮収縮曲線ではさざ波様の子宮収縮、過強陣痛を認めることがある(NGY)。
超音波断層法
- 胎盤の所見は剥離が起こってからの時間経過によって変化する。剥離直後は、胎盤後血腫を胎盤実質から区別することは困難で、胎盤実質の「肥厚・巨大化」という印象を受ける。やや時間が経過すると血腫部分のechogenicityが低下してecho free spaceとして描出され、胎盤と区別できる(PRI)。1週間以内には低輝度となる(GUI)。超音波での常位胎盤早期剥離の診断は感度24%、特異度96%であり(GUI)、超音波所見がなかったからといって常位胎盤早期剥離を否定できない。
- 胎児心拍動の有無を確認する。次に胎盤の肥厚像(5cm以上),胎盤後血腫の有無を確認する。中等症~重症では明らかなecho free spaceを認めるが、軽症では必ずしも血腫像を認めるとは限らない(NGY)。
検査所見
- Hb値の低下、DIC所見(血小板数の減少、出血・凝固時間の延長、PT-APTTの延長、フイブリノーゲンの低下、AT IIIの低下、FDPの上昇)が認められる(NGY)。特にFDP高値(D-dimer高値)、フィブリノゲン低値を伴いやすい(GUI)。
鑑別診断(PRI)
1. 前置胎盤
- 突発する外出血が特徴的である。腹痛はないことが多いが、子宮収縮に伴って出血が起こった場合には鑑別の必要が生じる。今日では、超音波断層検査によって前置胎盤の疑診は比較的容易である。発症前に前置胎盤の診断がなされていれば問題ないが、発症後に初めて超音波検査を行う場合、早期剥離例では胎盤の「肥厚・巨大化」所見のために、胎盤が内子宮口付近に存在しているように描出されることがあり、注意が必要である。
2. 子宮破裂
- 突発する下腹痛・外出血・ショック状態という点で共通する。外出血の割に重症感が強い点も同一である。子宮破裂の場合、発症からショック状態への進行がきわめて迅速であること、胎児の腹腔内への脱出が起こり、その結果胎児部分の触知が容易であることが鑑別点となる。消費性の凝固障害をきたすことが多いので、出血傾向の有無を鑑別診断に用いることは危険である。
治療
- 治療は(1)母胎状態の安定化、(2)子官内容の速やかな除去、(3)DICの予防・早期離脱が軸となる(PRI)(GUI)。
母胎状態の安定化(PRI)(GUI)
- 常位胎盤早期剥離と診断がついた時点で母体がショック・DICに陥っている場合は、母体の全身管理を優先とする。母体の全身状態が安定している場合はただちに児を急速遂娩する(NGY)(GUI)。
- 1. 直ちに血管確保を行い、輸液を開始し、大量の輸血の準備をする。
- 2. 血液検査として重要なのは、血算、出血時間、凝固時間(臨床的には活性化凝固時間が迅速に結果が出て有効である)、血沈、PT、 APTT、fibrinogen、FDP、ATIII、血液生化学などである。尿蛋白の有無を調べる。
- 3. 膀胱にカテーテルを留置し,時間尿量の測定を行う。
- 4. 出血量を評価し、必要量の輸血を行う。新鮮血が望ましいが、入手が困難な場合は濃厚赤血球でもよい。凝固系検査で凝固因子の低下が推測される場合は新鮮凍結血漿を追加する。
- 5. 輸液・輸血により母体のショック状態の改善を図り、 1時間最低限50mlの尿量を確保する。その際、過剰に急速な大量の輸液・輸血は肺水腫・心不全を引き起こす危険がある。中心静脈カテーテルを留置して,中心静脈圧を測定しながら輸液量を決めることが望ましい(中心静脈カテーテルの挿入部位は患者の状態によって決定されるべきである。出血傾向のある場合、鎖骨下からのアプローチは血腫形成の危険もあるので最善とは限らない。むしろ肘静脈からのアプローチのほうが安全である場合もある)。
- 6. 児が生存している場合は、分娩監視装置を装着し連続監視を行う。発症当初、胎児に問題が認められない例でも、急速に胎児の状態が悪化することがある。
- 7. 帝王切開術を行う必要が生じる場合が多いので,手術に耐える状態に安定させることが大切である。
分娩の時期・方法
- 常位胎盤早期剥離と診断された場合、母児の状況を考慮し、原則、急速遂娩を図る(GUI)。DICの進行は母体の生命予後にかかわるので待期治療の余地はない。児の胎外生活能の有無は考慮されない(PRI)。
- non-reassuring fatal statusのない例では、経腹分娩をめざしてもよい(PRI)。その場合は慎重に母体の凝固系的検査・胎児モニタリングを続け、DICの症状が進行する場合、non-reassuring fatal statusのある場合は急速遂娩を行う(PRI)(GIO)。経膣分娩が短時間で終了する見込みのない場合は(1)帝王切開術を施行するか、(2)人工破膜を行う(PRI)(GUI)。人工破膜は子宮内圧を低下させ、トロンボプラスチンや活性化凝固因子の大循環への流入低減、子宮収縮による剥離部位での出血量低減に効果が期待されているがその証明はなされていない(GUI)。
- 胎児死亡をきたしている例、DICに注意しながら積極経膣分娩もしくはDICに注意しながらの急遂分娩が推奨されている(GUI)
- 子宮が子宮胎盤溢血の状態にある例では、子宮筋が互いに離断され、子宮収縮による止血が不十分になるために胎児胎盤の娩出後に弛緩出血を起こしやすい。子宮収縮が不良で出血が持続する場合には子宮を摘出する。全身状態が子宮全摘術に耐えないと判断される場合は、腹上部切断術を選択することがある。
DICへの対処
- 母体にDICを認める場合は可及的速やかにDIC治療を開始する(GUI)。
- DIC徴候が認められる場合は、メシル酸ガバキサート(FOY)、ナフモスタット(FUTHAN)などを投与して凝固系・線洛系の抑制を図る。ATIIIの低下が認められるときはATIII製剤を投与する。子宮内容の除去が迅速に行われてDICの原因が取り除かれれば、 DICの諸徴候は急速に消失することが多い(PRI)。
分娩後の処置
- 分娩後はDICに伴う多臓器不全(特に肝腎機能障害、Sheehan症候群、手術部位の血腫形成、輸血後肝炎、術後感染症などに注意する。(PRI)
- 帝王切開時に胎盤付着部の子宮漿膜面が青紫色に変色していた場合(Couvelaire uterus)は子宮収縮が不良となりやすいため弛緩出血に十分注意する。難治性の弛緩出血に対してはPorro手術を行う(NGY)。
国試
[★]
- ☆case84 嘔吐
- ■症例
- 32歳 男性
- 主訴:
- 現病歴:2 amにからり酔っぱらって救急部に受診。11.45 pmに気分が悪くなり2度嘔吐。嘔吐物は最初は苦く感じられ、それは食べ物と2Lのビールであった。1時間程度後に、何度か猛烈に吐き気を催した。1 amに鮮赤血を吐いた(bright red blood)。患者が言うには最初は少量だったが、2回目にはかなり多い量であった。服用薬なし。時々マリファナを吸う。タバコ1日10本、アルコール2-3 unit/week
- 既往歴:特記なし
- 家族歴:特記なし
- 生活歴:
- ・身体診断
- 酔っぱらっているように見える。口の周りに乾燥した血液の付着を認める。脈拍:102/分。(臥位(lying))血圧:134/80 mmHg。立位でも血圧の変化は認められない。心血管系、呼吸器系に異常を認めず。腹部:上腹部(心窩部)にわずかに圧痛。
- ・検査
- (血液生化学)
- 異常なし
- ■解説
- (第1パラグラフ)
- もっともな診断は、下部食道もしくは胃上部における吐血を引き起こす粘膜の裂傷である(Mallory-Weiss lesion/Mallory-Weiss tear/Mallory-Weiss laceration)。激しい嘔吐やむかつきによる機械的な外傷で生じる。本症例では、なれない大量飲酒によって生じた。
- (第2パラグラフ)
- 患者の話から出血量を見積もるのは難しい。吐血はびっくりするような出来事であり、吐血の量を多く見積もりがちである。ヘモグロ分派性状であり、急性の出血では吐血量を見積もる手がかりにならない。急性期にヘモグロ分が低ければ慢性の出血をほのめかす。著しい失血の最初のサインは頻脈と起立時の血圧低下であることがある。本症例の彼の脈波速いが、これは不安と関連しているのかもしれない。
- (第3パラグラフ)
- 吐血の他の原因は胃炎か消化性潰瘍である。何度か血液を含まない胃内容物のむかつきと嘔吐の話はマロリーワイス症候群に特徴的である。この疾患は普通介入を必要としない良性の病態である。確定診断は上部消化管内視鏡を必要とするが、典型的な症例ではいつも必要になるわけではない。時に、出血がもりひどかったり、壁の解離が粘膜より深いこともあり、穿孔につながる。
- (第4パラグラフ)
- この症例の管理は注意深い観察、嘔吐で失われた体液を戻すための静脈内輸液である。出血が激しい場合には血液型検査のために採血するが、輸血は必ずしも必要ない。彼は生徒大とH2 blockerで治療された。嘔吐は収まりそれ以上の出血も見られなかった。彼は将来のパーティでは通院しすぎないように決めた。
- ■管理(内科診断学 第2版 医学書院)
- ①本疾患の大多数は安静、絶食、制酸薬・粘膜保護薬の投与で保存的に治療できる。
- ②輸血が必要なほどの貧血は稀である。
- ③内視鏡検査時に出血している症例に対しては内視鏡的止血術を行う。
- ④クリッピング法(図4-89) [図] 、純エタノール局注法、アルゴンプラズマ凝固(APC)法などさまざまあるが、いずれの方法でも良好な止血成績を得られる。
- ■鑑別診断 (内科診断学 第2版 医学書院 p.843)
- ・特発性食道破裂(ブールハーフェ症候群)
- ・逆流性食道炎
- ・食道静脈瘤破裂
- ・出血性胃潰瘍
- ・急性胃粘膜病変(AGML)
- ■KEYPOINT
- ・吐血の前の血液を伴わない激しい嘔吐とむかつきの既往は、上部消化管の裂傷を示唆する。
- ・患者は血液の量を見積もるのが困難と分かるので、吐血で失われた失血の程度は多糸かでないし、消化管の中にとどまっている血液の量は分からない。
- ・アルコールは救急入院の約1/4と直接の連関があるという研究がある。
- □マロリーワイス症候群(内科診断学 第2版 医学書院)
- 嘔吐などにより腹腔内圧が急激に上昇して噴門部近傍に裂創が発生し、これを出血源として顕出血をきたしたもの。30-50歳代の男性に多く、全消化管出血例の約3-15%を占める。 アルコール多飲が原因となることが多いが、ほかに妊娠悪阻、乗り物酔い、脳腫瘍や髄膜炎、医原性のものとしては上部消化管内視鏡検査や心肺蘇生術など、原因となるものは種々である。 ②嘔吐などにより急激に腹圧が上昇すると、急激に胃内圧が上昇し、これにより食道胃接合部近傍に裂創が生じる。
- □吐血 hematemesis (内科診断学 第2版 医学書院)
- コーヒー残渣用の吐血 melanemesis
- 鮮血の吐血 hematoemesis
- □急性胃粘膜病変 acute gastric mucosal lesion AGML
- 急性胃炎の劇症型であり、急速に起こる腹痛(時に、吐血、下血)をきたし、潰瘍・びらん・出血が混在した病態を呈する。
- 病因はアルコール、薬物(アスピリン、ステロイド)、薬品、ストレス、食物(激辛食品など)、アニサキス、中枢神経系障害、熱傷、外科手術
- ■glossary
- inebriate
- vt. (人)を酔わせる(make drunk)。~を有頂天にする
- adj. 酔っぱらいの、大酒飲みの
- n. 酔っぱらい、大酒飲み
- pint n. (液体の単位)1パイント = 1/2クオート=(米)28.8753 inch cube = 0.473 liter = (英) 0.568 liter = 約500cc
- retch
- vi. むかつく、吐き気を催す、無理に吐こうとする
- vt. 吐く
- n. むかつく。ヒック(吐き気を催すときの音)
- lager n. ラガー(ビール)(貯蔵ビール;日本の普通のビール)
- violently adj. 激しく、猛烈に
- drunk adj. (pred)酔って。(fig)酔いしれて
- epigastrium n. 上腹部、心窩部
- blood grouping 血液型判定、血液型検査
- indulge
- vt. ~にふけらせる。気ままにさせる、(子どもを)甘やかす。(欲求などを)思いのままに満たす。喜ばせる、楽しませる。
- vi. (快楽・趣味などに)ふける、身を任す(in)。(略式)たらふく食べる、痛飲する。(~に)従事する。(好ましくないことに)かかわる(in)
- □Hematemesis and Melena(Differential Diagnosis in Primary Care 4th)
- ・吐血か喀血を見分けたい場合はnitrazine paperを使って判定
- ・身体開口部(body orifice)からの出血を鑑別するとき解剖学的なアプローチがよい。
- (食道)
- ・静脈瘤、逆流性食道炎、癌腫、マロリーワイス症候群。
- ・外来異物も忘れるな。
- ・先天性まれな病因として異所性胃粘膜によるバレット食道炎と潰瘍もある。
- ・大動脈瘤、縦隔腫瘍、肺癌が食道を潰瘍化させ出血させることもある。
- (胃)
- ・炎症:胃炎と胃潰瘍。アスピリンとアルコールも良くある原因
- ・幽門部静脈瘤で出血するかもしれない
- ・出血がひどく、他の原因が見つからなければ血液疾患を検索する。
- (診断への道)
- ・吐血の確固たる証拠がある時、内視鏡をつかえる状況にあれば問診とか検査で無駄な時間を使わずに内視鏡で診断&治療をやってしまえ。
- ・血液型検査、血液のクロスマッチ?して輸血の準備、凝固能検査など鑑別に必要な検査をやりなさい。内視鏡検査の準備をしている間に、アルコール、アスピリン、そのほかの薬品の服用、潰瘍の既往、食道疾患既往を聴け
- ・ひどい出血や最近の急な吐血の既往がなければ(内視鏡を使わずに?)伝統的なアプローチでも良い
- ・吐血の前に血液を伴わない嘔吐があればマロリーワイス症候群の診断の助けとなる。
[★]
- 英
- acute myocardial infarction, AMI
- 関
- 心筋梗塞
症状
- 胸痛:デルマトームC7-T1への放散痛(PHD.179)。デルマトームT1-T4への放散痛(IMD.418)→胸骨裏側、左上肢の尺側側、頚部、下顎部
- 痛みは虚血により生じた代謝産物(アデノシン、乳酸)が局所の神経終末を刺激することで生じる
PDH.179
特徴的な疼痛
|
持続性で、ひどい痛み、典型的には胸骨下痛
|
交感神経による作用
|
発汗
|
皮膚が湿って冷たく感じられる
|
副交感神経による作用
|
悪心・嘔吐
|
倦怠感
|
炎症反応
|
中程度の発熱
|
心臓の所見
|
IV音ギャロップ(うっ血性心不全があればIII音も)
|
その他
|
運動異常を伴う膨隆(前壁梗塞なら)
|
心膜摩擦音(心膜炎があれば)
|
収縮期雑音(僧帽弁閉鎖不全症や心室中隔欠損があれば)
|
肺のラ音(うっ血性心不全があれば)
|
頚動脈の拡大(右室梗塞)
|
身体所見(ST-segment elecation MI HIM.1533)
- 不安、不穏、ベットの上で場所を変えたり身体を曲げたりして痛みを和らげようとしている。
- 蒼白
- 四肢の冷感
- 30分以上持続する後胸骨痛 + 発汗 → ST上昇心筋梗塞を示唆
- 多くの患者は最初の1時間は脈拍、血圧、正常
- 前壁梗塞の患者の1/4は交感神経が興奮 → 頻脈、高血圧
- about one-fourth of patients with anterior infarction have manifestations of sympathetic nervous system hyperactivity (tachycardia and/or hypertension)
- 下壁梗塞の1/2は副交感神経興奮 → 徐脈±低血圧
- up to one-half with inferior infarction show evidence of parasympathetic hyperactivity (bradycardia and/or hypotension)
検査
血液生化学検査: マーカー
時系列
→→→→→→→→→→→→→→→→→→
|
myo
|
W
|
TnT
|
myo
|
AST
|
LDH
|
CRP
|
H
|
CK
|
2-3時間 ~~~~~~半日~ 1日
|
|
心電図
- PECG.168
- (超急性期:発症直後~数時間)T波先鋭化、非特異的ST上昇
- (急性期 :数時間~12時間)特異的ST上昇(上に凸)、R波減高、異常Q波出現
- (亜急性期:24時間~1週間)ST上昇は減高、T波が陰転化(冠性T波:左右対称な陰性T波)。しばしばQT延長を伴う。
- 全層虚血でのST上昇は対側誘導でST低下が見られる。
- 異常Q波 + ST上昇 が数週間持続 → 高度の壁運動の異常 → 心室瘤の形成を示唆
診断
- 心筋梗塞を疑ったら診察は、病歴、心電図変化、心筋マーカーの上昇で行う。心エコーで心筋壁の障害が認められ、CAGで冠動脈の閉塞または狭窄所見が見られたら確実(YN.C81)
治療
初期治療
- PHD.187 ガイドライン1
- アスピリン:治療開始から退院後も継続的に服用。
- 未分画ヘパリン:冠動脈の開存性を保つ。
- βブロッカー:酸素需要減少。拡張期の延長による障害心筋への灌流を改善。静脈投与→経口投与。
- 禁忌:喘息、低血圧、著しい徐脈。
- 硝酸薬:前負荷・後負荷軽減による心筋酸素需要量低減、冠攣縮の解除・予防、側副路の血流増加。
- 使用不可:収縮期血圧<90mmHg or 通常血圧より30mmHg以上血圧低下、高度徐脈(<50bpm)、頻脈(>100bpm)、下壁梗塞・右室梗塞合併疑い例
- 禁忌:勃起不全治療薬服用後24時間以内。
- 未分画ヘパリン:PCIが施行される場合にはヘパリンをactivated clotting timeが250を越えるように使用。tPAを使用した血栓溶解を行った後にはヘパリン48時間投与し、APTTを50-70秒に保つ。
- 鎮痛薬:塩酸モルヒネ:硝酸薬使用後も疼痛が持続する場合。
再灌流療法
- 適応:発症後12時間以内 (救急医療パーフェクトマニュアル p.43)
二次予防
- 患者教育
- 禁煙指導
- 食事療法:血圧管理、脂質管理、体重管理、糖尿病管理
- 運動療法
- 抗血小板薬
- 脂質異常症治療薬
- RAA系阻害薬
- βブロッカー
- カルシウム拮抗薬:血圧管理や狭心症が他の薬剤でコントロールできない場合に限る(心筋梗塞発症早期での短時間作用型カルシウム拮抗薬投与による総死亡低下に対する有効性が確認されなかったため)。,STEMI患者への短時間作用型ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬投与は通常禁忌。(ガイドライン1)
- ニコランジル
- ワルファリン
合併症
機械的合併症
- NSU.424 SSUR.397
- 心筋梗塞の破裂は全心筋梗塞例の2-4%でみられ、3/4の例で左室自由壁破裂、1/4の例で心室中隔穿孔、僧帽弁乳頭筋断裂はごく稀(SSUR.397)。
-
- 心室中隔を栄養する血流の途絶により中隔の壊死を来たす。左右シャントを生じ、原疾患である心筋梗塞による心不全を増悪させ、前方不全、すなわち低心拍出量症候群をきたす。増悪すれば、心原性ショックに陥る。右室は容量負荷をうけ右心不全をきたすことがある。症状は苦悶、血液低下、尿量減少を来たし、半数例においては心原性ショックが見られる。治療は循環が悪化している場合にはドパミン、ドブタミン、ニトログリセリンが用いられるが一時的であり、大動脈内バルーンパンピングによって循環動態を安定させる。その後、速やかに手術を施行する。循環動態が安定している例では2-3週間後に手術を行う(NSU.424)。手術は心停止下に左室梗塞部を切開して中隔穿孔部をダクロンパッチで閉鎖する。
- 2. 虚血性僧帽弁不全症(急性:乳頭筋断裂、慢性:乳頭筋機能不全)
- 乳頭筋断裂の75%は下壁梗塞に合併して後乳頭筋に発生し、残りは前乳頭筋に生ずる。僧帽弁尖の逸脱が起こり急性僧帽弁閉鎖不全症の病態を呈する。原疾患の心筋梗塞による心不全に加え、急性僧帽弁閉鎖不全症により心原性ショックに陥る。治療はIABPを挿入して循環動態を安定化後、僧帽弁置換術を行う。
-
- 自由壁破裂は左室に多く、健常部と梗塞部位の境界に多い。病型は急激に大出血するblow-out型とじわじわ出血するoozing型がある。いずれの場合でも出血による心タンポナーデを来たし、低心拍出量の低下、さらに心原性ショックに陥る。症状は血圧低下、意識消失、呼吸停止、徐脈、心停止に至る。治療は直ちにPCPSにより循環の維持を図り(oozing型の場合は心嚢穿刺によるタンポナーデの解除を行う)、開胸手術により出血部のフェルトを用いた縫合閉鎖を行う。
ガイドライン
- 1. 急性心筋梗塞(ST上昇型)の診療に関するガイドライン
- http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2008_takano_h.pdf
国試
[★]
- ☆case75 自宅での意識消失
- ■症例
- 21歳 男性
- 主訴:意識消失
- 現病歴:男性のアパートで意識を失っている所を彼女に発見され、午後5時に搬送された。彼女が最後に彼に会ったのは午後8時で、クリスマスの買い物をして帰宅した時であった。翌日午後、彼女が彼に会いに行った所、彼がお風呂の床で意識を失っているのを見つけた。彼女によれば、前日変わった様子(unusal mood)はなかった。彼は心理学の期末試験が1週間に迫っておりこのことを心配していたが、勉強はうまくいっているようだった。また以前の試験に問題はなかった。
- 喫煙歴:なし。
- 飲酒歴:機会飲酒 10 units/week(1週間に350mlビール6本弱)
- 既往歴:なし
- 家族歴:父と2人の兄弟のうち1人が糖尿病
- 服薬歴:以前、エクスタシー錠剤を服用していたが、静脈注射の薬はやったことがない。
- 身体所見 examination
- 顔貌 青白。注射痕は認められない。脈拍 92/分、血圧 114/74 mmHg、呼吸数 22/分。心血管系、呼吸器系に異常を認めず。神経系 命令に従わないが、痛みに反応して適切に手を引っ込める(GCS M4)。腱反射(+)・対称性、足底反射(-)。瞳孔散大、対光反射(+)。眼底 視神経円板腫脹
- ■鑑別診断をあげるためのkeyword(司会者用)
- ・24時間以内に来した意識消失、糖尿病の家族歴、冬、風呂、精神疾患リスク(試験で悩んでいる。薬物の服用歴)、顔色、脈拍、血圧、呼吸数、腱反射、病的反射、瞳孔、眼底(司会者用)
- ■keywordからどういう疾患を考えるか?
- 真っ先にあげたいもの
- ・二次的な脳圧亢進
- ・糖尿病
- ・薬物中毒、中毒物質の摂取・吸引
- ・神経疾患(てんかんなど)の発作
- ・24時間以内に来した意識消失
- ・クモ膜下出血:局所神経症状、硝子体下出血(subhyaloid hemorrhage)。
- ・糖尿病の家族歴
- ・低血糖発作
- 低血糖による昏睡は早いが糖尿病の新規症状として起こらない。まれにインスリノーマによる低血糖による昏睡があり得る。
- ・糖尿病性ケトアシドーシス diabetic ketoacidosis DKA
- 極度のインスリン欠乏とコルチゾールやアドレナリンなどインスリン拮抗ホルモンの増加により、(1)高血糖(≧250mg/dl)、(2)高ケトン血症(β-ヒドロキシ酪酸の増加)、アシドーシス(pH7.3未満)をきたした状態。(糖尿病治療ガイド 2008-2009 p.66)
- ・高浸透圧性非ケトン性昏睡 nonketotic hyperosmolar coma
- DM type 2
- 50歳以上に好発し、インスリン非依存性糖尿病*患者が腎不全や中枢神経障害、悪性腫瘍、消化器疾患、呼吸器感染などを合併するときに多くみられ、ステロイドや利尿薬の投与、輸液や高カロリー補給、人工透析などの際に医原性に起きやすい。
- 高血糖性の昏睡は発症が早くない。その前に口渇や多尿があるはず。
- → 否定するための検査 → 血糖測定
- ・風呂
- ・脳出血
- ・冬だし、風呂(脱衣所のことか)にガスヒーターがあったら疑わしい。
- ・精神疾患リスク(試験で悩んでいる。薬物の服用歴)
- (最も多いのが)薬物中毒(鎮静薬、アスピリン、アセトアミノフェン)
- (意識障害で運ばれてきたときに考えるべきなのが)一酸化中毒
- 一酸化中毒の場合の顔色は蒼白(cherry-red colorと言われてきたが)。眼底所見:(severe CO中毒で)乳頭浮腫
- ・顔色
- ・脈拍、血圧、呼吸数
- ・腱反射、病的反射
- 腱反射が亢進していたら、上位運動ニューロンの障害を考慮する。腱反射亢進と意識障害が共存していれば、障害部位は脊髄の伝導路ではなくむしろ脳幹・大脳皮質に障害があると考えることができる。
- ・瞳孔
- 瞳孔が散大していれば交感神経興奮、副交感神経の麻痺:フェニレフリン・エピネフリン・コカインなど交感神経刺激、動眼神経麻痺、脳死の徴候
- 瞳孔が縮瞳していれば副交感神経興奮、オピオイド受容体への刺激:麻薬中毒、有機リン中毒、橋出血、脳幹部梗塞(脳底動脈閉塞症など)
- ・眼底 (IMD.71)
- 視神経円板(=視神経乳頭)の腫脹は乳頭浮腫(papilledema, DIF.342)を反映。乳頭浮腫の発生機序は軸索輸送障害や静脈還流うっ滞である。原因として頭蓋内疾患が最も多い。頭蓋外の疾患(高血圧、視神経炎、偽性脳腫瘍)。
- 乳頭浮腫 papilledema DIF.243
- V 動静脈奇形、高血圧による脳血圧脳症・頭蓋内出血、クモ膜下出血、硬膜下血腫
- I 脳膿瘍、慢性経過の髄膜炎(細菌性×)、敗血症による血栓や静脈洞血栓
- N 脳腫瘍
- D -
- C 動静脈奇形、水頭症、頭蓋奇形(尖頭症などによる)、血友病、時にSchilder disease
- A ループス脳炎、動脈周囲炎
- T 急性期の硬膜外血腫や硬膜下血腫ではない。慢性硬膜下血腫ならありうる。
- E 褐色細胞腫による悪性高血圧、偽性脳腫瘍(=特発性頭蓋内圧亢進症)(肥満・無月経・感情障害(emotionally disturbed)をきたした女性に多い)
- ■問題
- 症例だけでは絞れないので、最も疑われる疾患をあげ、鑑別診断を列挙し、検査、治療を考えていくことにします。
- ■一酸化炭素中毒
- ■オチ
- 血中carboxyhemoglobinを測定したところ32%。高レベルの酸素投与でゆっくりだが、48時間で完全に回復。脳浮腫にたいするマンニトールや高圧酸素療法も考慮する。問題は4年間点検されていないガス温水器の不完全燃焼だったとさ。
- ■KEY POINTS
- ・薬物中毒は若い人の意識消失の最も一般的な原因だけど、他の診断もいつも考慮しておく。
- ・一酸化炭素ヘモグロビンレベルは屋内や車内、あるいはよく分からない煙に暴露した意識消失患者で測るべき
- ・一酸化中毒による重度の低酸素血症ではチアノーゼを欠く。
- ■initial plan(救急だからのんびりやってられないだろうけど)
- A.
- 1. 呼吸器系、循環器系の安定を確認
- 2. 血液ガス検査
- 3. 血液生化学(電解質(Na,Ca)、血糖)
- □ビール1本 = 350ml アルコール5%: 350 (ml/本) x 0.05 / 10 (ml/unit) =1.75 (unit/本)
- ■参考文献
- DIF Differential Diagnosis in Primary Care Fourth Edition版 Lippincott Williams & Wilkins
[★]
- 英
- arteriosclerosis obliterans, ASO
- 関
- 慢性動脈閉塞症、ルリッシュ症候群 Leriche症候群
定義
疫学
- 50歳以上の中年男性に多く、1-3%と報告されている。
診断基準
- 糖尿病大血管障害研究会
- (1)または(2)
- (3)+Minor criteria1つ以上
Major Criteria
- 血管造影にて閉塞が著明である
- API=0.8以下:(API=Ankle pressure index)
- 虚血による間欠性跛行 or 安静時痛
Minor Criteria
- 動脈拍動の減弱・欠損
- 壊疽・潰瘍の存在または既往
- 四肢動脈の著しい石灰化
リスク因子
- 年齢:加齢に伴いASOの罹患率が上昇し、60歳以上では1-3%、70歳以上では2-5%とされている。
- 性別:男性は女性に比べて1-2倍リスクが高い。
- 喫煙:オッズ比が3-4倍と高い。喫煙本数と重症度が比例している。禁煙によって発症頻度が低下する。
- 糖尿病:オッズ比が3-4倍と高い。
- 高血圧:オッズ比は1.5-2倍とされている。
- 脂質異常症:有意なリスクファクターであるが、発症の寄与度としては高血圧や糖尿病より小さい
- 冠動脈疾患 CAD:冠動脈に有意な狭窄が確認された患者においてABI0.9未満の頻度は13-19%。
- 脳血管疾患 CVD:脳卒中患者において、ABI0.9未満の割合は18.8%。
- 透析:ABI 0.9%未満の頻度は15-24%、ABI 1.3以上の異常高値は10%程度に認めた。
- その他:慢性腎臓病、CRP高値、高ホモシステイン血漿、血漿フェブリノーゲン高濃度がか指摘されている。
検査
分類
鑑別
|
ASO
|
TAO
|
好発年齢と性差
|
中高年の男性 (50歳以上)
|
若年男性 (20-40歳)
|
全身性合併症 (基礎疾患)
|
高血圧,糖尿病,脂質異常症
|
なし
|
好発部位
|
大動脈分枝部~大腿動脈 (下肢の中枢側)
|
膝窩動脈以下 (下肢の末梢側)
|
遊走性静脈炎
|
なし
|
あり
|
喫煙
|
危険因子の一つ
|
増悪
|
血管造影
|
虫食い像、動脈壁硬化
|
先細り像、Corkscrew状側副路。多発性分節的閉塞(閉塞は途絶状)
|
石灰化
|
多い
|
少ない
|
予後
|
不良
|
良好
|
治療
- 運動療法:歩行など。血管の側副路の発達などにより歩行距離の延長
- 薬物療法
- PTA:カテーテルにより血栓溶解(ウロキナーゼ)、血栓吸引、ステント留置術など
- バイパス術:適応は急性閉塞。大動脈-腸骨動脈・大腿動脈などPTAの困難例
- 外科手術:広範囲の潰瘍・壊死性病変、感染を伴う例では肢切断。
- 細胞移植治療:ASO による慢性重症の虚血で、PTA やバイパス術が適応できない場合には、自己骨髄細胞移植治療が試みられる。
|
ASO
|
L-SCS
|
発生部位
|
腓腹部
|
大腿後面、下腿外側
|
症状変動
|
あまりない
|
変動有り
|
改善
|
急速で速やかに改善 たったままで治る
|
時間がかかる 座位(前屈)で軽減
|
頻度
|
少
|
多
|
ガイドライン2015に基づく治療
- 末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン(2015 年改訂版)
-
- 高血圧:(クラスI)降圧目標は140/90mmHg未満、CAD/CVDがなければ130/80mmHgを目標とする。β遮断薬の使用は差し支えない。
- 脂質異常症:(クラスI)LDL-Cの管理目標は120mg/dL未満としてスタチンを導入する。(クラスIIa)低HDL-Cと高TGを有する場合にはフィブラート系薬やEPA製剤の投与を考慮する。
- 糖尿病・肥満・メタボリックシンドローム:(クラスI)糖尿病、高血圧、肥満、喫煙などのリスクファクターを早期から厳格にコントロールする。
- 喫煙:禁煙状況や禁煙医師の評価を行い、適宜カウンセリングし薬物療法、行動療法を含めた禁煙治療を行う。
- 血小板薬の適応:(クラスIIa)症候性ASO患者に対して、CVD/CAD予防のためにアスピリンやクロピドグレルを投与する。脳卒中の二次予防のためにはシロスタゾールを投与する。
- 冠動脈疾患合併:(クラスI)CADを有するASO患者に対してoptimal medical therapy(生活習慣改善指導、血圧・血糖・脂質コントロール、抗血小板薬・β遮断薬・RA系阻害薬・スタチン処方、基礎心疾患の介入)を行う。
- 脳血管疾患合併:(クラスIIa)症候性ASO患者に対して脳卒中予防のために抗血小板薬を投与する。
- 無症候性:(クラスI)無症候性ASO患者に動脈硬化のリスク管理と生活習慣の改善を行う;無症候性ASO患者の下肢予後は良好とされているが、5年後の生命予後は健常者と比べて有意に不良であることから動脈硬化性疾患の発症予防に努める必要がある。
- 有症候性:間欠性跛行
- 観血的歩行患者には初期治療として監視下運動療法を行う。
- 心不全のない間欠性歩行患者にシロスタゾールを投与する。
- 運動療法や薬物療法による跛行の改善が不十分な場合には血行再検の適応がある。
参考
- http://mymed.jp/di/zh8.html
ガイドライン
- http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2010_shigematsu_h.pdf
- 2. INTER-SOCIETY CONSENSUS FOR THE MANAGEMENT OF PERIPHERAL ARTERIAL DISEASE (TASC II)
- http://www.tasc-2-pad.org/upload/SSRubriqueProduit/Fichier2/597.pdf
- 3.末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン(2015 年改訂版)
- https://www.j-circ.or.jp/old/guideline/pdf/JCS2015_miyata_h.pdf