- 英
- tablet, tablets, tab.
- ラ
- tabellae
WordNet
- a slab of stone or wood suitable for bearing an inscription
- a small flat compressed cake of some substance; "a tablet of soap"
PrepTutorEJDIC
- (銘文などを彫り込む,金属・石の)銘板 / (昔文字を記した粘土などの)書字板 / 《まれ》(はぎ取り式の)メモ帳,便せん帳(pad) / 錠剤,(チョコレート・石けんなどの)板状小片
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2017/03/21 08:16:25」(JST)
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錠剤(じょうざい、tablets)とは、有効成分または有効成分に賦形剤等を加えたものを圧縮形成などの方法により一定の形に製した固形の製剤である。 携帯性に優れ、容易に一定量を取ることができる。
この項目では医薬品の錠剤について述べる。
目次
- 1 形状
- 2 種類
- 2.1 用法による分類
- 2.2 コーティングによる分類
- 2.3 特殊錠
- 3 製造
- 4 包装形態
- 5 品質
- 6 長所と短所
- 7 服薬時の注意
- 8 出典
- 9 脚注
- 10 関連項目
形状
取り扱いやすさや飲み込みやすさを顧慮して、おおむね重量100–500mg、直径6–15mmほどのもの が多い。円盤形やレンズ形、竿形などさまざまなものがある。座薬や膣錠は、挿入しやすくするために矢尻型など特殊なものがある。素錠には、半分に割るための割線が入っているものがある。
通例、錠剤には識別のための番号や記号が入っているが、素錠は刻印、コーティング錠は印刷で入れる。錠剤は着色することができ、これは識別を容易にするが、タール色素の発癌性などが問題になったことから、近年は無着色の白い錠剤が多い。
種類
用法による分類
- 内服用錠剤
- 口腔用錠剤 — 嚥下せず口腔内で溶解させて使うもの。口腔粘膜から有効成分を吸収させるバッカル錠や舌下錠、咽頭の消毒などに使うトローチ錠がある。
- 外用錠剤 — うがいなどの際に溶かして使う溶解錠や膣錠がある。
コーティングによる分類
- 素錠(裸錠) — 成形したままの錠剤。
- コーティング錠 — 薬剤の安定化、矯味、矯臭などの目的で裸錠の表面に均一に皮膜を施したもの。白糖による糖衣錠、水溶性高分子によるフィルムコーティング錠がある。また、胃酸により影響を受ける有効成分を、酸性では不溶性のコーティング剤で被膜した腸溶錠がある。
特殊錠
- チュアブル錠 — 服用時かみ砕いて使う錠剤。制酸剤など比較的用量の多い医薬品に使われる[1]
- 口腔内崩壊錠(OD錠) — 唾液で崩壊する錠剤で有効成分の吸収は消化管。水なしでも服用できる。
- 舌下錠、バッカル錠 — 舌の下または歯茎と頬の間に入れて溶かし、有効成分を口腔粘膜より吸収させる錠剤。
- 持続性錠(徐放性錠) — 溶解性の異なる基材などを使い、一定時間持続的に有効成分が放出されるよう調整した錠剤。
- ワックスマトリックス錠 — 体内で徐々に崩壊する徐放化基材に有効成分を分散させた錠剤。
- グラデュメット錠 — 多孔質の不溶性樹脂に有効成分を滲み込ませた錠剤。
- 多孔性皮膜錠 — 不溶性で微細な穴の空いた皮膜を施した錠剤。
- 多層錠 — 放出性の異なる複数の層からなる錠剤。速溶層と徐放層を単純に重ねたスパンタブ、速溶錠の核に徐放錠を入れたロンタブ、速溶錠の核に腸溶錠を入れたレペタブがある。
- 有核錠 — 錠剤の中に別の錠剤を埋め込んだもの。
- スパスタブ — 速溶錠の中に徐放性の顆粒を分散させたもの。
- レジネート — イオン交換樹脂を使った錠剤。
製造
添加剤
通例錠剤には、有効成分の他に以下のような添加剤が加えられる。
- 賦形剤 — 有効成分が少ない場合に、取り扱うのに適当な量になるように加えるもの。生理活性を持たない物質として、おもに乳糖やデンプンなどが使われる。
- 結合剤 — 原料の粉体粒子同士を結びつけるために加えるもので、錠剤の機械的強度に影響する。デンプン糊やアラビアゴム糊、ヒドロキシプロピルセルロースなどが使われる。
- 崩壊剤 — 体内の水分を吸って膨張するなどして錠剤を崩壊させ有効成分の放出を容易にするために加えるもの。賦形剤として使われるデンプンは水分を吸って膨張するので崩壊剤としての機能も持つ。その他には、セルロース類などがよく用いられる。また炭酸塩のように水と反応してガスを発生し崩壊させるものもある。これを使った錠剤を発泡錠という。
- 滑沢剤 — 粉体の流動性をよくし圧縮形成を容易にするために加えるもので、ステアリン酸マグネシウムなどのワックスやタルクなどが用いられる。
工程
古くは、有効成分に賦形剤などを加えて練り合わせのばしたものを一定の形に打ち抜いて製造する湿製法があったが、現在は「打錠」と呼ばれる圧縮形成技術により生産される。打錠には、混合した原料をそのまま打錠する直接打錠法と、混合した原料を顆粒にしてから打錠する顆粒打錠法がある。直接打錠法では工程は単純になるが、原料の流動性が悪いと重量にばらつきが出たり仕上がりが悪くなる。また、湿式練合したものを型に入れ乾燥させるOD錠のような製法もある。
以下に一般的な顆粒打錠法の工程を示す。
- 秤量
- 一次混合 — 有効成分、賦形剤、結合剤、崩壊剤などを均一になるように混合する。
- 造粒
- 篩過 — 顆粒の大きさをそろえる。粒径がばらつくと、錠剤の重量や有効成分の放出性などに影響する。
- 二次混合 — 顆粒に滑沢剤を混ぜる。ある程度均一にする必要があるが、混ぜすぎると撥水性のある滑沢剤の場合、錠剤の崩壊性を損ない有効成分が放出されにくくなる。
- 打錠 — 打錠圧と速度が品質に影響する。打錠圧が低いと錠剤の強度が低下する。逆に高すぎると表面が割れて剥がれたりする打錠障害が起きることがある。
- コーティング(必要に応じ)
- 包装
包装形態
錠剤を流通させるのに様々な包装形態がある。
- 瓶入り — 一定数の錠剤をガラスや樹脂製の瓶に詰めたもの。
- SP (strip package) 包装 — 柔軟なプラスチックフィルムなどに1錠ずつ挟み込みヒートシールしたもの。
- PTP (press through package) 包装 — 錠剤の形にへこませた硬質プラスチックなどに錠剤を入れ、アルミニウムフィルムなどで封をしたもの。
錠剤は、吸湿したりすることにより成分が変質したり、崩壊性が低下することがあるので、容器には気密性が要求される。また、医薬品によっては光により分解するものがあり、それらには遮光性がある包材が使用される。
SP包装やPTP包装では切り離しやすいようにミシン目が入っていたが、包装から錠剤を取り出さずに服用してしまう事例があったことから、現在では1錠ずつには切り離せないようになっている。
品質
錠剤には、次のような品質が求められる。
- 重量及び含量の均一性
- 崩壊性及び溶出性
- 機械的強度
先発品メーカーと後発品メーカーの医薬品では、有効成分が同じでもこういった品質に差があり効果の出方が異なるといわれてきた。後発品の使用推進を目指す国では、後発品メーカーに先発品と同等の品質であることを示すことを求めている。
長所と短所
取扱いが容易で、一定量を容易に取ることができるという点で優れる。徐放錠などにすることにより、持続時間を調整したりすることもできる。散剤などと異なり外見で何の薬か識別できることも長所のひとつである。
一方、微妙な量の調整ができないこと、乳幼児や高齢者では服用が困難な場合があること、複数の医薬品を服用しようとすると量が多くなってしまうことなどが短所としてあげられる。また経口剤は一般に、口腔粘膜から吸収される舌下錠などを除き、有効成分が消化管から吸収され肝臓を通らないと全身血流に移動しないことから、効果の発現までに時間がかかることと、消化液や肝臓での代謝により有効成分が変化し効力を失ってしまうことが短所となることもある。
服薬時の注意
割線の無い素錠や固い錠剤を割るための錠剤カッターの一例。
フィルムコート錠等の徐放性が期待される錠剤には使ってはいけない。
一般に錠剤を服用する際には十分な水で服用する必要がある。水の量は錠剤の崩壊や溶出に影響する。また水が少ないと、錠剤が咽頭などに張り付いてしまい、高濃度の医薬品にさらされた粘膜が潰瘍を起こしたりすることがある。
錠剤を砕いてしまうことは、臭いや味のマスキング効果、徐放性や腸溶性などが失われてしまうので避けなければならない。但し、口中で徐々に溶かしまたは噛み砕いてもよいチュアブル錠のほか、均質な素錠には割線が入っていたり、必要量を調整できるようにしてある錠剤もあり、不明な点は医師や薬剤師に確認して服用する必要がある。
錠剤を手指で割るにはある程度のコツがあり、難しい場合は市販の錠剤カッターを用いるとよい。ハサミやカッターナイフ等を使うと滑ってしまいうまく行かないばかりか怪我をする恐れがある。また、高齢者など嚥下の力が弱っている人には喉に詰まらせたりするおそれがあるので、その際は水分を多めに摂る、ぬるま湯と一緒に飲む(溶解力を高めるものがある)、市販の補助ゼリーを使用するなどの工夫が必要である。
口腔粘膜からの吸収を前提としている舌下錠では、誤って飲み込むと有効成分は消化液により分解されたり、肝臓で代謝されるため効果を失う[2]。
出典
- 薬の飲み方間違っていませんか? 兵庫区薬剤師会ホームページ・トピックス
- ニトロ舌下錠を患者が飲み込んだ。もう1錠追加すべき 日経メディカルオンライン
脚注
- ^ シングレア®チュアブル錠
- ^ くすりの窓:錠剤の剤形について 医療法人 あかね会 土谷総合病院 薬剤部
関連項目
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- 日本薬局方
- 薬剤学
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UpToDate Contents
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Japanese Journal
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- 錠剤 じょうざい 医薬品を一定の形状に圧縮して製したものをいう。錠剤には圧縮錠剤と湿性錠剤の二つがある。湿性錠剤は、原料を混合し、湿らせて型に入れ成型し、乾燥して製する錠剤で、現在ではほとんどみられない。
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Japan Pharmaceutical Reference
薬効分類名
販売名
アスファネート配合錠A81
禁忌
- 本剤及び本剤の成分又はサリチル酸系製剤に対し過敏症の既往歴のある患者
- 消化性潰瘍のある患者(ただし、「 1.慎重投与」の項参照)[胃出血の発現又は消化性潰瘍が悪化するおそれがある。]
- 出血傾向のある患者[出血を増強するおそれがある。]
- アスピリン喘息(非ステロイド性消炎鎮痛剤等による喘息発作の誘発)又はその既往歴のある患者
[重症喘息発作を誘発するおそれがある。]
- 出産予定日12週以内の妊婦[「6.妊婦、産婦、授乳婦等への投与」の項参照]
- 低出生体重児、新生児又は乳児
[錠剤である本剤の嚥下が不能である。]
効能または効果
狭心症(慢性安定狭心症、不安定狭心症)
心筋梗塞
虚血性脳血管障害(一過性脳虚血発作(TIA)、脳梗塞)
- ・冠動脈バイパス術(CABG)あるいは経皮経管冠動脈形成術(PTCA)施行後における血栓・塞栓形成の抑制
- ・川崎病(川崎病による心血管後遺症を含む)
- ・狭心症(慢性安定狭心症、不安定狭心症)、心筋梗塞、虚血性脳血管障害(一過性脳虚血発作(TIA)、脳梗塞)における血栓・塞栓形成の抑制、冠動脈バイパス術(CABG)あるいは経皮経管冠動脈形成術(PTCA)施行後における血栓・塞栓形成の抑制に使用する場合:
通常、成人には1錠(アスピリンとして81mg)を1回量として、1日1回経口投与する。なお、症状により1回4錠(アスピリンとして324mg)まで増量できる。
- ・川崎病(川崎病による心血管後遺症を含む)に使用する場合:
急性期有熱期間は、アスピリンとして1日体重1kgあたり30〜50mgを3回に分けて経口投与する。解熱後の回復期から慢性期は、アスピリンとして1日体重1kgあたり3〜5mgを1回経口投与する。なお、症状に応じて適宜増減する。
- ・空腹時の投与は避けることが望ましい。
- ・心筋梗塞及び経皮経管冠動脈形成術に対する投与に際しては、初期投与量として維持量の数倍が必要とされていることに留意すること1)。
- ・原則として川崎病の診断がつき次第、投与を開始することが望ましい2)。
- ・川崎病では発症後数ヵ月間、血小板凝集能が亢進しているので、川崎病の回復期において、本剤を発症後2〜3ヵ月間投与し、その後断層心エコー図等の冠動脈検査で冠動脈障害が認められない場合には、本剤の投与を中止すること。冠動脈瘤を形成した症例では、冠動脈瘤の退縮が確認される時期まで投与を継続することが望ましい2、3)。
- ・川崎病の治療において、低用量では十分な血小板機能の抑制が認められない場合もあるため、適宜、血小板凝集能の測定等を考慮すること。
慎重投与
- 消化性潰瘍の既往歴のある患者
[消化性潰瘍が再発するおそれがある。]
- 血液の異常又はその既往歴のある患者
[副作用が強くあらわれることがある。]
- 出血傾向の素因のある患者
[出血を増強するおそれがある。]
- 肝障害又はその既往歴のある患者
[副作用が強くあらわれることがある。]
- 腎障害又はその既往歴のある患者
[副作用が強くあらわれることがある。]
- 高血圧の患者
[血管や内臓等の障害箇所に出血が起こることがある。]
- 過敏症の既往歴のある患者
- 気管支喘息のある患者
[喘息発作が誘発されるおそれがある。]
- アルコール飲料の常用者
[胃出血の危険性が増加することがある。(「3.相互作用」の項参照)]
- 高齢者[「 5.高齢者への投与」の項参照]
- 妊婦(ただし、出産予定日12週以内の妊婦は禁忌)又は妊娠している可能性のある婦人[「6.妊婦、産婦、授乳婦等への投与」の項参照]
- 小児[「2.重要な基本的注意」の項、「7.小児等への投与」の項参照]
- 手術、心臓カテーテル検査又は抜歯前1週間以内の患者
[失血量を増加させるおそれがある。]
- 非ステロイド性消炎鎮痛剤の長期投与による消化性潰瘍のある患者で、本剤の長期投与が必要であり、かつミソプロストールによる治療が行われている患者[ミソプロストールは非ステロイド性消炎鎮痛剤により生じた消化性潰瘍を効能・効果としているが、ミソプロストールによる治療に抵抗性を示す消化性潰瘍もあるので、本剤を継続投与する場合には、十分経過を観察し、慎重に投与すること。]
- 月経過多の患者
[月経血が増加するおそれがある。]
重大な副作用
(いずれも頻度不明)
ショック、アナフィラキシー
- ショックやアナフィラキシー(呼吸困難、全身潮紅、血管浮腫、蕁麻疹等)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
出血
脳出血等の頭蓋内出血
- 脳出血等の頭蓋内出血(初期症状:頭痛、悪心・嘔吐、意識障害、片麻痺等)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、このような症状があらわれた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
肺出血、消化管出血、鼻出血、眼底出血等
- 肺出血、消化管出血、鼻出血、眼底出血等があらわれることがあるので、観察を十分に行い、このような症状があらわれた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、剥脱性皮膚炎
- 皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死融解症、剥脱性皮膚炎があらわれることがあるので、観察を十分に行い、このような症状があらわれた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
再生不良性貧血、血小板減少、白血球減少
- 再生不良性貧血、血小板減少、白血球減少があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
喘息発作の誘発
肝機能障害、黄疸
- AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTP等の著しい上昇を伴う肝機能障害や黄疸があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。
消化性潰瘍、小腸・大腸潰瘍
- 下血(メレナ)を伴う胃潰瘍・十二指腸潰瘍等の消化性潰瘍があらわれることがある。また、消化管出血、腸管穿孔を伴う小腸・大腸潰瘍があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
薬効薬理
血小板凝集抑制作用
- 低用量アスピリンの経口投与は、虚血性脳疾患患者18)、虚血性心疾患患者19)及び川崎病患者20)においてADP、コラーゲン等による血小板凝集を抑制 する。高用量のアスピリンは、解熱、鎮痛、抗炎症作用を示す21)。
作用機序
- アスピリンは、そのアセチル基によって血小板シクロオキシゲナーゼを不可逆的に阻害して血小板のトロンボキサンA2(TXA2)の産生を抑制することにより、血小板凝集を抑制し血小板血栓の形成を阻止する21)。一方、アスピリンの主代謝物であるサリチル酸は、抗炎症効果はアスピリンと同程度の効力を示すものの、血小板凝集抑制作用は示さない22)。アスピリンは、血管内皮細胞のシクロオキシゲナーゼも阻害してプロスタサイクリン(PGI2)の生成も抑制し、その結果、血小板凝集抑制作用が減弱される可能性が指摘されてきた(アスピリンジレンマ)。そのため低用量アスピリン(75mg/日〜325mg/日)の経口投与が推奨されている。
作用持続時間
- アスピリンの経口投与後、アスピリンの血中濃度半減期は短いにもかかわらず、TXA2産生抑制作用や血小板凝集抑制作用は血小板の寿命期間(7〜10日)継続する。これは、アスピリンのアセチル基によるシクロオキシゲナーゼ阻害作用は不可逆的であり、かつ血小板はシクロオキシゲナーゼの合成能を有しないためと考えられている21)。
日本人の健常成人男子に本品1錠(アスピリンとして81mg)を経口投与した場合のコラーゲン1μg/mL刺激による血小板凝集に対する抑制率の経日変化23)
(平均値±SD、n=8)
川崎病
- 川崎病の急性期において、アスピリンは高用量投与による抗炎症作用21)により血管や心筋の炎症を抑えて心血管後遺症の発生を抑制するとともに、発熱などの臨床症状を改善することを目的として使用される。そして、解熱後から慢性期においては、低用量投与による血小板凝集抑制作用により血栓形成を抑制することを目的として使用される2)。
有効成分に関する理化学的知見
アスピリン
一般名
分子式
分子量
化学名
融点
- 約136℃(あらかじめ溶液を130℃に加熱しておく)。
性状
- 白色の結晶、粒又は粉末で、においはなく、わずかに酸味がある。エタノール(95)又はアセトンに溶けやすく、ジエチルエーテルにやや溶けやすく、水に溶けにくい。水酸化ナトリウム試液又は炭酸ナトリウム試液に溶ける。湿った空気中で徐々に加水分解してサリチル酸及び酢酸になる。
炭酸マグネシウム
一般名
- 炭酸マグネシウム(Magnesium Carbonate)
分子式
分子量
化学名
性状
- 白色のもろい塊又は粉末で、においはない。水、エタノール(95)、1-プロパノール又はジエチルエーテ ルにほとんど溶けない。希塩酸に泡立って溶ける。飽和水溶液はアルカリ性である。
ジヒドロキシアルミニウム アミノアセテート
一般名
- ジヒドロキシアルミニウム アミノアセテート (Dihydroxyaluminum Aminoacetate)
分子式
分子量
化学名
- Dihydroxyaluminum Aminoacetate
性状
- 白色の粉末又は粒で、においはなく、味はわずかに甘い。水又はエタノール(95)にほとんど溶けない。希塩酸又は水酸化ナトリウム試液に大部分溶ける。
★リンクテーブル★
[★]
- ☆case75 自宅での意識消失
- ■症例
- 21歳 男性
- 主訴:意識消失
- 現病歴:男性のアパートで意識を失っている所を彼女に発見され、午後5時に搬送された。彼女が最後に彼に会ったのは午後8時で、クリスマスの買い物をして帰宅した時であった。翌日午後、彼女が彼に会いに行った所、彼がお風呂の床で意識を失っているのを見つけた。彼女によれば、前日変わった様子(unusal mood)はなかった。彼は心理学の期末試験が1週間に迫っておりこのことを心配していたが、勉強はうまくいっているようだった。また以前の試験に問題はなかった。
- 喫煙歴:なし。
- 飲酒歴:機会飲酒 10 units/week(1週間に350mlビール6本弱)
- 既往歴:なし
- 家族歴:父と2人の兄弟のうち1人が糖尿病
- 服薬歴:以前、エクスタシー錠剤を服用していたが、静脈注射の薬はやったことがない。
- 身体所見 examination
- 顔貌 青白。注射痕は認められない。脈拍 92/分、血圧 114/74 mmHg、呼吸数 22/分。心血管系、呼吸器系に異常を認めず。神経系 命令に従わないが、痛みに反応して適切に手を引っ込める(GCS M4)。腱反射(+)・対称性、足底反射(-)。瞳孔散大、対光反射(+)。眼底 視神経円板腫脹
- ■鑑別診断をあげるためのkeyword(司会者用)
- ・24時間以内に来した意識消失、糖尿病の家族歴、冬、風呂、精神疾患リスク(試験で悩んでいる。薬物の服用歴)、顔色、脈拍、血圧、呼吸数、腱反射、病的反射、瞳孔、眼底(司会者用)
- ■keywordからどういう疾患を考えるか?
- 真っ先にあげたいもの
- ・二次的な脳圧亢進
- ・糖尿病
- ・薬物中毒、中毒物質の摂取・吸引
- ・神経疾患(てんかんなど)の発作
- ・24時間以内に来した意識消失
- ・クモ膜下出血:局所神経症状、硝子体下出血(subhyaloid hemorrhage)。
- ・糖尿病の家族歴
- ・低血糖発作
- 低血糖による昏睡は早いが糖尿病の新規症状として起こらない。まれにインスリノーマによる低血糖による昏睡があり得る。
- ・糖尿病性ケトアシドーシス diabetic ketoacidosis DKA
- 極度のインスリン欠乏とコルチゾールやアドレナリンなどインスリン拮抗ホルモンの増加により、(1)高血糖(≧250mg/dl)、(2)高ケトン血症(β-ヒドロキシ酪酸の増加)、アシドーシス(pH7.3未満)をきたした状態。(糖尿病治療ガイド 2008-2009 p.66)
- ・高浸透圧性非ケトン性昏睡 nonketotic hyperosmolar coma
- DM type 2
- 50歳以上に好発し、インスリン非依存性糖尿病*患者が腎不全や中枢神経障害、悪性腫瘍、消化器疾患、呼吸器感染などを合併するときに多くみられ、ステロイドや利尿薬の投与、輸液や高カロリー補給、人工透析などの際に医原性に起きやすい。
- 高血糖性の昏睡は発症が早くない。その前に口渇や多尿があるはず。
- → 否定するための検査 → 血糖測定
- ・風呂
- ・脳出血
- ・冬だし、風呂(脱衣所のことか)にガスヒーターがあったら疑わしい。
- ・精神疾患リスク(試験で悩んでいる。薬物の服用歴)
- (最も多いのが)薬物中毒(鎮静薬、アスピリン、アセトアミノフェン)
- (意識障害で運ばれてきたときに考えるべきなのが)一酸化中毒
- 一酸化中毒の場合の顔色は蒼白(cherry-red colorと言われてきたが)。眼底所見:(severe CO中毒で)乳頭浮腫
- ・顔色
- ・脈拍、血圧、呼吸数
- ・腱反射、病的反射
- 腱反射が亢進していたら、上位運動ニューロンの障害を考慮する。腱反射亢進と意識障害が共存していれば、障害部位は脊髄の伝導路ではなくむしろ脳幹・大脳皮質に障害があると考えることができる。
- ・瞳孔
- 瞳孔が散大していれば交感神経興奮、副交感神経の麻痺:フェニレフリン・エピネフリン・コカインなど交感神経刺激、動眼神経麻痺、脳死の徴候
- 瞳孔が縮瞳していれば副交感神経興奮、オピオイド受容体への刺激:麻薬中毒、有機リン中毒、橋出血、脳幹部梗塞(脳底動脈閉塞症など)
- ・眼底 (IMD.71)
- 視神経円板(=視神経乳頭)の腫脹は乳頭浮腫(papilledema, DIF.342)を反映。乳頭浮腫の発生機序は軸索輸送障害や静脈還流うっ滞である。原因として頭蓋内疾患が最も多い。頭蓋外の疾患(高血圧、視神経炎、偽性脳腫瘍)。
- 乳頭浮腫 papilledema DIF.243
- V 動静脈奇形、高血圧による脳血圧脳症・頭蓋内出血、クモ膜下出血、硬膜下血腫
- I 脳膿瘍、慢性経過の髄膜炎(細菌性×)、敗血症による血栓や静脈洞血栓
- N 脳腫瘍
- D -
- C 動静脈奇形、水頭症、頭蓋奇形(尖頭症などによる)、血友病、時にSchilder disease
- A ループス脳炎、動脈周囲炎
- T 急性期の硬膜外血腫や硬膜下血腫ではない。慢性硬膜下血腫ならありうる。
- E 褐色細胞腫による悪性高血圧、偽性脳腫瘍(=特発性頭蓋内圧亢進症)(肥満・無月経・感情障害(emotionally disturbed)をきたした女性に多い)
- ■問題
- 症例だけでは絞れないので、最も疑われる疾患をあげ、鑑別診断を列挙し、検査、治療を考えていくことにします。
- ■一酸化炭素中毒
- ■オチ
- 血中carboxyhemoglobinを測定したところ32%。高レベルの酸素投与でゆっくりだが、48時間で完全に回復。脳浮腫にたいするマンニトールや高圧酸素療法も考慮する。問題は4年間点検されていないガス温水器の不完全燃焼だったとさ。
- ■KEY POINTS
- ・薬物中毒は若い人の意識消失の最も一般的な原因だけど、他の診断もいつも考慮しておく。
- ・一酸化炭素ヘモグロビンレベルは屋内や車内、あるいはよく分からない煙に暴露した意識消失患者で測るべき
- ・一酸化中毒による重度の低酸素血症ではチアノーゼを欠く。
- ■initial plan(救急だからのんびりやってられないだろうけど)
- A.
- 1. 呼吸器系、循環器系の安定を確認
- 2. 血液ガス検査
- 3. 血液生化学(電解質(Na,Ca)、血糖)
- □ビール1本 = 350ml アルコール5%: 350 (ml/本) x 0.05 / 10 (ml/unit) =1.75 (unit/本)
- ■参考文献
- DIF Differential Diagnosis in Primary Care Fourth Edition版 Lippincott Williams & Wilkins
[★]
- 英
- rapidly disintegrating tablet
[★]
- 英
- drug、agent
- 関
- 薬、作用薬、ドラッグ、媒介物、病原体、麻薬、薬剤、薬物、代理人、薬品