- 英
- Anisakis
- 関
- アニサキス属、アニサキス症、胃アニサキス症
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アニサキス属 |
メルルーサ Merluccius
の腹腔内に寄生したアニサキスの幼虫
|
分類 |
界 |
: |
動物界 Animalia |
門 |
: |
線形動物門 Nematoda |
綱 |
: |
双腺綱 Secernentea |
目 |
: |
回虫目 Ascaridida |
上科 |
: |
回虫上科 Ascaridoidea |
科 |
: |
アニサキス科 Anisakidae |
亜科 |
: |
アニサキス亜科 Anisakinae |
属 |
: |
アニサキス属 Anisakis |
|
学名 |
Anisakis (Karl Rudolphi 1809) |
種 |
- Anisakis pegreffii
- Anisakis physeteris Baylis, 1923
- Anisakis schupakovi
- Anisakis simplex (Rudolphi, 1809) Baylis, 1920
- Anisakis typica (Diesing, 1860) Baylis, 1920
- Anisakis ziphidarum
|
アニサキス(学名:Anisakis)は回虫目アニサキス科アニサキス属に属する線虫の総称で、海産動物に寄生する寄生虫である。ヒトにアニサキス症を発症させる原因寄生虫だが、ヒトへ感染するときには主にサケ、サバ、アジ、イカ、タラなどの魚介類から感染する。
アニサキスは、通常アニサキス属の種を指す。アニサキス属以外に近縁のシュードテラノバ属なども、アニサキス症と同様の症状(シュードテラノバ症)を起こすが、これもまとめてアニサキス症と呼ぶ場合もある。アニサキス症を引き起こす種は主に Anisakis physeteris、Anisakis simplex 及び Pseudoterranova decipiens の3種である。シュードテラノバ属は海洋性鰭脚類に寄生する Pseudoterranova decipiens の幼虫である。
目次
- 1 生活環
- 2 アニサキス症
- 2.1 症状
- 2.2 治療
- 2.3 アレルギー
- 2.4 予防
- 2.5 予防効果の期待出来ないもの
- 3 その他
- 4 脚注
- 5 外部リンク
生活環
クジラ、イルカなどの海産哺乳類が最終宿主で、アニサキスの成体はこれらの動物の腸管に寄生している。産卵された卵は糞便とともに海中に放出され、オキアミなどの甲殻類に捕食されその体内で感染性を持つ第3期幼虫まで発育する。甲殻類が捕食され、更に食物連鎖上位の中間宿主である魚類やイカの体内(筋肉や体腔内など)で更に成長する。中間宿主は、アニサキスの種類ごとに異なっている。寄生された魚類やイカがクジラやイルカに食べられると成虫になる。
アニサキスに寄生された魚類やイカをヒトが食べても、ヒトの体内では成体になることはできない[1]ので、産卵もされない。また、魚類などの中間宿主の体内では、アニサキスが内臓だけに寄生する訳ではないため、内臓を避けて食べても感染を完全には防げない。
終宿主
ミンククジラの腺胃に寄生するアニサキス (
Anisakis simplex)。国立科学博物館の展示。
- アニサキス属
- Anisakis physeteris:ハクジラ(マッコウクジラなど)
- Anisakis simplex:ミンククジラなどの鯨類
- Contracaecum:鯨類、鰭脚類、鳥類(水鳥)など
- Hysterothylacium:魚類
- シュードテラノバ属 Pseudoterranova:鰭脚類
- Raphidascaris:魚類
アニサキス症
刺身による寄生虫被害の多くはこのアニサキスの第3期幼虫(体長は11-37mm位)の経口摂取が原因である。厚生労働省の資料[2]によると、日本におけるアニサキス症の発生数は、1年間に少なくとも2,000 - 3,000名以上と推定する報告「日本におけるAnisakidosisの発生状況の解析(石倉肇、臨床と研究、72巻5号、1995年)」もある。
- 食品衛生法での取り扱い
- 1999年12月28日に食品衛生法施行規則の一部改正(厚生省令第105号)が行われ、食中毒事件票の一部が改正された。これに伴ってアニサキスも食中毒原因物質として具体的に例示された。従って、アニサキスによる食中毒が疑われる場合は、24時間以内に最寄りの保健所に届け出ることが必要である[3]。
症状
寄生部位(穿孔部位)により、胃アニサキス症、腸アニサキス症、腸管外アニサキス症に分けられる。多くは消化管壁を貫通出来ないが、貫通した場合は穿孔性腹膜炎や寄生虫性肉芽腫を発症することもある。
- 胃アニサキス症の症状は、食後数時間のうちに始まる激しい腹痛と嘔吐である。嘔吐に際しての吐瀉物は胃液のみで、下痢も一切認められないことが一般的な食中毒と異なる特徴でもある。これはアニサキスの虫体が寄生のために胃壁や腸壁を食い破ろうとするために生ずる症状である。激痛のため診断の確定を待たず緊急開腹せざるを得ないこともある。
- 腸アニサキス症例としては腸重積症[4]。
- 腸管外アニサキス症では、膵アニサキス症[5]。寄生虫性肉芽腫。
治療
胃内寄生の場合、感染の初期段階での一般的な治療は、開腹手術あるいは上部消化管内視鏡(いわゆる胃カメラ)を用いて、消化管粘膜上の虫体を確認し、生検にもちいるのと同じ鉗子を用いて虫体を摘んで取り除く方法がある。虫体を取り除くとすみやかに症状が消失することが多い。特異的な治療薬(特効薬)は存在していないとされている。ただ抗アレルギー剤であるデカドロン®や強力ネオミノファーゲンシー、セレスタミン®やプレドニゾロンを投与すると軽快する症例があることが報告されている[6]。
アレルギー
アルサス型のアレルギー反応であり、初回感染時は無症状で再感染により発症する。イカ、サバ、ハマチ等を摂取した際、発疹及びじんま疹等のアレルギー症状を示すが、検査において魚介類では陽性反応を示さない場合、アニサキスによるアレルギーが原因の場合がある。
本アレルギーの原因物質は、冷凍または加熱をしても残存するので、魚介類加工品を摂取した時も症状が現れる場合がある。ただし、鮮度の低下した魚介類の摂食によるヒスタミン型の食中毒を誤認している場合もある。
予防
アニサキスの宿主を生食しないことが、最も確実といえる。したがって「生きの良いネタ」ほど感染リスクは高くなる。
それ以外では、60℃1分以上の熱処理、または長時間の冷凍によって、感染リスクを減少できる。冷凍温度と保持時間に関する規定は次の通り。
- 日本:-20℃以下で24時間以上(厚生労働省の指導)
- オランダ:ニシンに対し、-20℃以下で24時間以上(1968年の法律で義務付け)
- 米国:生食用の魚に対し、-35℃以下で15時間、または-20℃以下で7日間(食品医薬品局の勧告)
- EU:生食用の海産魚に対し、-20℃以下で24時間以上(衛生管理基準による指示事項。視覚検査も義務付けられている)
予防効果の期待出来ないもの
- よく噛んで食べる:アニサキスの虫体はかなり強靱で、通常の咀嚼では噛み切れない。薄く切るのも同様。
- 薬味(ショウガ、ワサビ、ニンニク)による殺虫:人が食べられる濃度では効果はない[7]。
その他
アニサキス症に罹った患者の胃に未発見の初期ガンがあり、そこにアニサキスが集まっていたことが伊万里有田共立病院から2014年に報告され[8]この報告に着目した九州大学らの研究グループは、カエノラブディティス・エレガンス(Caenorhabditis elegans)を使って、尿による癌検診の判別実験に成功した[9][10]。
脚注
- ^ “寄生虫ミニ辞典 - アニサキス”. 2015年3月12日閲覧。
- ^ 食品媒介の寄生虫疾患対策について 蠕虫類 - 生鮮魚介類により感染するもの
- ^ 国立感染症研究所寄生動物部
- ^ 腸重積を伴った腸アニサキス症の1例日本消化器外科学会雑誌 第28巻 第10号 1995年10月
- ^ 血清免疫学的検査で膵アニサキス症が疑われた1例 (PDF)
- ^ 日経メディカル2010年5月号「トレンドビュー」
- ^ アニサキス症と天然物由来の有効化学物質の検索 (PDF) 東京都健康安全研究センター
- ^ Sonoda H, Yamamoto K, Ozeki K, Inoye H, Toda S, Maehara Y (2014-08-17). "An anisakis larva attached to early gastric cancer: report of a case". Surg Today (Springer Japan). doi:10.1007/s00595-014-0850-3. PMID 24477526. Retrieved 2015-03-12.
- ^ “がん診断、尿1滴で=線虫の習性利用−10年後の実用化目指す・九大など”. 時事ドットコム (2015年3月12日). 2015年3月12日閲覧。
- ^ “尿1滴で短時間・安価高精度に早期がんを診断!” (PDF) (プレスリリース), 九州大学, (2015年3月12日), http://www.kyushu-u.ac.jp/pressrelease/2015/2015_03_12.pdf 2015年3月12日閲覧。
外部リンク
- 感染症の話 2001年第5週(1月29日〜2月4日)掲載 アニサキス症 国立感染症研究所
- アニサキス症について - 医薬品情報21
- 日本寄生虫学会用語委員会 「暫定新寄生虫和名表」 2008年5月22日
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Japanese Journal
- P1-16-3 Paramyosinを原因抗原と考えたアニサキスアレルギーによる蕁麻疹の1例(P1-16 食物アレルギー3,ポスターセッション,第23回日本アレルギー学会春季臨床大会)
- 長崎県の離島(対馬)における上部消化管異物症例の検討
- 前川 明洋 [他]
- 長崎醫學會雜誌 : Nagasaki Igakkai zasshi 86(1), 21-28, 2011-03-25
- … 1995年1月から2010年6月までに当院で上部消化管内視鏡施行時に診断が確定した上部消化管異物症例69例のうち魚骨とアニサキスで全体の約80%を占めていた。 … アニサキスは春が多いと報告されているが、秋にも注意が必要であることがわかった。 …
- NAID 110008454356
Related Links
- アニサキス(学名:Anisakis)は、線形動物門双腺綱桿線虫亜綱カイチュウ(回虫)目 アニサキス科アニサキス属に属する動物の総称で、海産動物に寄生する寄生虫である。 ヒトにアニサキス症を発症させる原因寄生虫だが、ヒトへ感染するときには主にサケ、 ...
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- 58歳の男性と55歳の女性の夫婦。本日午後11時に、下痢、嘔吐および腹痛を主訴に夫婦とも救急車で搬入された。夫は長期出張から午後8時に帰ったばかりであり、午後9時に夫婦揃って夕食をとった。妻によると献立は鍋物で、具材は冷凍にしておいた牡蠣、スーパーで本日午後に買った豆腐と野菜(春菊、ねぎ、もやし)であった。その他に米飯と市販の漬物と昨日妻が採った山菜の天ぷらで夫婦で同じ物を食べたという。午後10時ころより夫婦とも腹痛が出現し、症状が増悪したため救急車を要請した。
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- 34歳の女性。4年間の不妊を主訴に来院した。月経周期は29日型、整。19歳時に骨盤腹膜炎の診断で抗菌薬投与を受けた既往がある。子宮卵管造影で両側の卵管水腫と診断し、腹腔鏡下手術を施行した。手術時の肝周囲の写真(別冊No. 24)を別に示す。
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- ☆case84 嘔吐
- ■症例
- 32歳 男性
- 主訴:
- 現病歴:2 amにからり酔っぱらって救急部に受診。11.45 pmに気分が悪くなり2度嘔吐。嘔吐物は最初は苦く感じられ、それは食べ物と2Lのビールであった。1時間程度後に、何度か猛烈に吐き気を催した。1 amに鮮赤血を吐いた(bright red blood)。患者が言うには最初は少量だったが、2回目にはかなり多い量であった。服用薬なし。時々マリファナを吸う。タバコ1日10本、アルコール2-3 unit/week
- 既往歴:特記なし
- 家族歴:特記なし
- 生活歴:
- ・身体診断
- 酔っぱらっているように見える。口の周りに乾燥した血液の付着を認める。脈拍:102/分。(臥位(lying))血圧:134/80 mmHg。立位でも血圧の変化は認められない。心血管系、呼吸器系に異常を認めず。腹部:上腹部(心窩部)にわずかに圧痛。
- ・検査
- (血液生化学)
- 異常なし
- ■解説
- (第1パラグラフ)
- もっともな診断は、下部食道もしくは胃上部における吐血を引き起こす粘膜の裂傷である(Mallory-Weiss lesion/Mallory-Weiss tear/Mallory-Weiss laceration)。激しい嘔吐やむかつきによる機械的な外傷で生じる。本症例では、なれない大量飲酒によって生じた。
- (第2パラグラフ)
- 患者の話から出血量を見積もるのは難しい。吐血はびっくりするような出来事であり、吐血の量を多く見積もりがちである。ヘモグロ分派性状であり、急性の出血では吐血量を見積もる手がかりにならない。急性期にヘモグロ分が低ければ慢性の出血をほのめかす。著しい失血の最初のサインは頻脈と起立時の血圧低下であることがある。本症例の彼の脈波速いが、これは不安と関連しているのかもしれない。
- (第3パラグラフ)
- 吐血の他の原因は胃炎か消化性潰瘍である。何度か血液を含まない胃内容物のむかつきと嘔吐の話はマロリーワイス症候群に特徴的である。この疾患は普通介入を必要としない良性の病態である。確定診断は上部消化管内視鏡を必要とするが、典型的な症例ではいつも必要になるわけではない。時に、出血がもりひどかったり、壁の解離が粘膜より深いこともあり、穿孔につながる。
- (第4パラグラフ)
- この症例の管理は注意深い観察、嘔吐で失われた体液を戻すための静脈内輸液である。出血が激しい場合には血液型検査のために採血するが、輸血は必ずしも必要ない。彼は生徒大とH2 blockerで治療された。嘔吐は収まりそれ以上の出血も見られなかった。彼は将来のパーティでは通院しすぎないように決めた。
- ■管理(内科診断学 第2版 医学書院)
- ①本疾患の大多数は安静、絶食、制酸薬・粘膜保護薬の投与で保存的に治療できる。
- ②輸血が必要なほどの貧血は稀である。
- ③内視鏡検査時に出血している症例に対しては内視鏡的止血術を行う。
- ④クリッピング法(図4-89) [図] 、純エタノール局注法、アルゴンプラズマ凝固(APC)法などさまざまあるが、いずれの方法でも良好な止血成績を得られる。
- ■鑑別診断 (内科診断学 第2版 医学書院 p.843)
- ・特発性食道破裂(ブールハーフェ症候群)
- ・逆流性食道炎
- ・食道静脈瘤破裂
- ・出血性胃潰瘍
- ・急性胃粘膜病変(AGML)
- ■KEYPOINT
- ・吐血の前の血液を伴わない激しい嘔吐とむかつきの既往は、上部消化管の裂傷を示唆する。
- ・患者は血液の量を見積もるのが困難と分かるので、吐血で失われた失血の程度は多糸かでないし、消化管の中にとどまっている血液の量は分からない。
- ・アルコールは救急入院の約1/4と直接の連関があるという研究がある。
- □マロリーワイス症候群(内科診断学 第2版 医学書院)
- 嘔吐などにより腹腔内圧が急激に上昇して噴門部近傍に裂創が発生し、これを出血源として顕出血をきたしたもの。30-50歳代の男性に多く、全消化管出血例の約3-15%を占める。 アルコール多飲が原因となることが多いが、ほかに妊娠悪阻、乗り物酔い、脳腫瘍や髄膜炎、医原性のものとしては上部消化管内視鏡検査や心肺蘇生術など、原因となるものは種々である。 ②嘔吐などにより急激に腹圧が上昇すると、急激に胃内圧が上昇し、これにより食道胃接合部近傍に裂創が生じる。
- □吐血 hematemesis (内科診断学 第2版 医学書院)
- コーヒー残渣用の吐血 melanemesis
- 鮮血の吐血 hematoemesis
- □急性胃粘膜病変 acute gastric mucosal lesion AGML
- 急性胃炎の劇症型であり、急速に起こる腹痛(時に、吐血、下血)をきたし、潰瘍・びらん・出血が混在した病態を呈する。
- 病因はアルコール、薬物(アスピリン、ステロイド)、薬品、ストレス、食物(激辛食品など)、アニサキス、中枢神経系障害、熱傷、外科手術
- ■glossary
- inebriate
- vt. (人)を酔わせる(make drunk)。~を有頂天にする
- adj. 酔っぱらいの、大酒飲みの
- n. 酔っぱらい、大酒飲み
- pint n. (液体の単位)1パイント = 1/2クオート=(米)28.8753 inch cube = 0.473 liter = (英) 0.568 liter = 約500cc
- retch
- vi. むかつく、吐き気を催す、無理に吐こうとする
- vt. 吐く
- n. むかつく。ヒック(吐き気を催すときの音)
- lager n. ラガー(ビール)(貯蔵ビール;日本の普通のビール)
- violently adj. 激しく、猛烈に
- drunk adj. (pred)酔って。(fig)酔いしれて
- epigastrium n. 上腹部、心窩部
- blood grouping 血液型判定、血液型検査
- indulge
- vt. ~にふけらせる。気ままにさせる、(子どもを)甘やかす。(欲求などを)思いのままに満たす。喜ばせる、楽しませる。
- vi. (快楽・趣味などに)ふける、身を任す(in)。(略式)たらふく食べる、痛飲する。(~に)従事する。(好ましくないことに)かかわる(in)
- □Hematemesis and Melena(Differential Diagnosis in Primary Care 4th)
- ・吐血か喀血を見分けたい場合はnitrazine paperを使って判定
- ・身体開口部(body orifice)からの出血を鑑別するとき解剖学的なアプローチがよい。
- (食道)
- ・静脈瘤、逆流性食道炎、癌腫、マロリーワイス症候群。
- ・外来異物も忘れるな。
- ・先天性まれな病因として異所性胃粘膜によるバレット食道炎と潰瘍もある。
- ・大動脈瘤、縦隔腫瘍、肺癌が食道を潰瘍化させ出血させることもある。
- (胃)
- ・炎症:胃炎と胃潰瘍。アスピリンとアルコールも良くある原因
- ・幽門部静脈瘤で出血するかもしれない
- ・出血がひどく、他の原因が見つからなければ血液疾患を検索する。
- (診断への道)
- ・吐血の確固たる証拠がある時、内視鏡をつかえる状況にあれば問診とか検査で無駄な時間を使わずに内視鏡で診断&治療をやってしまえ。
- ・血液型検査、血液のクロスマッチ?して輸血の準備、凝固能検査など鑑別に必要な検査をやりなさい。内視鏡検査の準備をしている間に、アルコール、アスピリン、そのほかの薬品の服用、潰瘍の既往、食道疾患既往を聴け
- ・ひどい出血や最近の急な吐血の既往がなければ(内視鏡を使わずに?)伝統的なアプローチでも良い
- ・吐血の前に血液を伴わない嘔吐があればマロリーワイス症候群の診断の助けとなる。
[★]
- 英
- acute gastric mucosal lesion AGML
まとめ
- 突発する臨床症状に加え内視鏡所見で診断される疾患である。臨床症状としては急性に起こる腹痛があり、時に出血、下血を伴う。内視鏡所見としては多発性の浮腫・発赤・びらん・出血が混在して認められる。原因としては薬剤性(特にNSAID。ステロイド、抗菌薬)が多く、ストレス(手術、外傷、熱傷、出血)、アルコールがこれに次ぐ。発生機序としては粘膜の血流障害が考えられている。治療は酸分泌抑制(H2受容体拮抗薬)が用いられる。(QB.A-83 SSUR.503)
定義
- 1968年、Katzらが疾病分類学的概念として提唱
- 急性びらん性胃炎、急性胃潰瘍、出血性胃炎をまとめた病態
- 激しい症状で急激に発症し、胃および上部消化管(食道、十二指腸)にびらんなどの多彩な粘膜病変を生じ、誘因の除去によって早期に治癒する病態
- 急性胃炎の劇症型であり、急速に起こる腹痛(時に、吐血、下血)をきたし、潰瘍・びらん・出血が混在した病態を呈する。(消化器 090615 III,IV)
参考1
- 臨床検査にて胃粘膜に異常所見を認めるもの。 病理的には急性胃炎と急性胃潰瘍病変を伴うもの。 すなわち粘膜固有層のみの炎症病変と粘膜筋板を浸潤する潰瘍病変が同時に生じる。
病因
- 発症には胃粘膜の血流障害が関与するとされている。
- アルコール
- 薬物(アスピリン、ステロイド)、薬品
- ストレス
- 食物(激辛食品など)
- アニサキス
- 中枢神経系障害
- 熱傷
- 外科手術
QB.A-82
- 60%:薬剤性(約60%がNSAIDs、10%がステロイド、10%が抗菌薬)
- 15%:アルコール
- 15%:ストレス
SSUR.503
- 出血や心窩部痛などの急激な症状に対し、内視鏡検査が行われ急性びらん、急性潰瘍、あるいは出血潰瘍のいずれかが認められた場合。
治療
- (酸分泌抑制)H2受容体拮抗薬
- (腹痛)抗コリン薬
参考
- http://d.hatena.ne.jp/pebbleinsky/20091231
- http://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/p/pebbleinsky/20100116/20100116155625.jpg
- http://hkytt2004.wilbo.jp/files/2011/03/gpf2photo120041007124208.png
[★]
- 英
- gastric anisakiasis
- 同
- 胃アニサキス
- 関
- アニサキス症、腸アニサキス症
- 生鮮魚介類(サバ、イワシ、アジ、イカ)とともに経口摂取されたアニサキス幼虫が胃粘膜に穿入することにより発生する。
- 病型は急性と慢性とがある。慢性のものはほとんど無症状で、腫瘤性病変の疑いで偶然発見され、病理組織標本から診断されることが多い。
- 即時型過敏性反応による胃の攣縮による疼痛が病態。痛みの質は疝痛である。
- 潜伏期間:原因食品摂取後2時間から8時間、ないし生食後6~12時間以内
- 疼痛部位:心窩部
- 疼痛の質:疝痛、絞扼感
- 随伴症状:時に悪心・嘔吐、下痢、蕁麻疹、多量吐血
- 治療:上部消化管内視鏡で虫体を確認し、生検鉗子で虫体を除去する。
[★]
- 英
- anisakiasis
- 関
- アニサキス Anisakis、アニサキスIgG・IgA抗体
分類
- 穿入部位は胃が90%以上、腸管は5-8%
病態
- 虫体刺入によるI型、III型アレルギーが関与している、らしい。
病理
- 虫体刺入部位の粘膜には好酸球が浸潤し肉芽腫を形成。末梢血の好酸球は増加しない。
予防
参考
- http://www.travel-med.bug4all.jp/zoology/parasites/nematoda/anisakis.html
- http://www.pref.aichi.jp/eiseiken/5f/anisakiasis.html
- . [charged] Miscellaneous nematodes - uptodate [1]
[★]
- 英
- Anisakis
参考
- http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%8B%E3%82%B5%E3%82%AD%E3%82%B9