ビスホスフォネート
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ビスホスホネート(bisphosphonate;BP ビスフォスフォネートとも)は、破骨細胞の活動を阻害し、骨の吸収を防ぐ医薬品。骨粗鬆症[1]、変形性骨炎(骨ページェット病)、腫瘍(高カルシウム血症の有無にかかわらず)の骨転移、多発性骨髄腫、骨形成不全症、その他骨の脆弱症を特徴とする疾患の予防と治療に用いられる。
上記疾患に有効な医薬品と信じられており、近年急速に使用している患者が増えてきているが、リスク開示なく投与されている患者に顎骨の難治性壊死(BRONJ)が発生することが問題となっている。(ビスホスホネート系薬剤関連顎骨壊死参照) また、逆説的な非定形大腿骨折の発生も、世界的に問題視されるようになっている。
目次
- 1 歴史
- 2 化学と分類
- 3 薬物動態
- 4 作用機序
- 4.1 窒素を含まないビスホスホネート
- 4.2 窒素を含むビスホスホネート
- 5 用途
- 6 副作用
- 7 脚注
- 8 参考文献
歴史
ビスホスホネートが最初に開発されたのは1865年のドイツであった[2] が、最初に骨代謝の疾患の調査が行われたのは1960年代である[2]。医学以外の用途としてはオレンジ畑での灌漑システムで軟水を作る事などに使われていた。人体に使われた最初の目的は骨塩の主要な物質であるハイドロキシアパタイトの溶解を防ぐことで、骨の損失を防ぐことであった。それが証明されたのは1990年代に入ってからであった[3]。
化学と分類
すべてのビスホスホネートは、P-C-P 構造を基本骨格とする[2]。
この基本骨格で、2個のホスホン酸アニオン基(ホスホネート)が炭素と共有結合していることが「ビスホスホネート」の名称と、薬の作用の由来である。長いほうの側鎖(略図でR2)は化学的性質、動作の形式、ビスホスホネートの薬としての強さを決定する。短いほうの側鎖(R1)はおもに化学的性質と薬物動態に影響する。
薬物動態
ビスホスホネートは経口投与されるか、静脈内注射によって体内に入る。およそ50%は変化せずに腎臓から排出される[4]。残りは骨組織に強い親和性を持ち、骨の表面に吸着する。
作用機序
骨組織に付着すると、ビスホスホネートは破骨細胞に取り込まれる[5]。ビスホスホネートは窒素を含むタイプと含まないタイプの二種類があり、それぞれ異なる作用機序を持つ[6]。
窒素を含まないビスホスホネート
第一世代
- エチドロネート - ダイドロネル®(経口製剤・大日本住友製薬)[7]
- クロドロネート
- チルドロネート
窒素を含まないビスホスホネートは細胞の中で代謝され、アデノシン三リン酸(ATP)のterminal pyrophosphate moietyを機能しない形の分子に置き換え、細胞のエネルギー代謝の中でATPを競合的に阻害する。これにより破骨細胞はアポトーシスを始め、死ぬ。このため、骨の減少は遅くなる[8]。
窒素を含むビスホスホネート
- 第二世代
- パミドロネート - アレディア®(注射用製剤・ノバルティスファーマ)[9]
- ネリドロネート
- オルパドロネート
- アレンドロネート - オンクラスト®(注射用製剤・万有製薬 2009年販売中止)[10]・テイロック®(注射薬・帝人ファーマ)[11]・フォサマック®(経口製剤・MSD)[12]・ボナロン®(経口製剤・帝人ファーマ)[13]
- イバンドロネート
- 第三世代
- チルドロネート
- インカドロネート - ビスフォナール®(注射用製剤・アステラス製薬・販売中止)[14]
- リセドロネート - アクトネル®(経口製剤:味の素/エーザイ)[15]・ベネット®(武田薬品工業/ワイス)[16]
- ミノドロネート - リカルボン®(経口製剤:小野薬品)[17]・ボノテオ®(経口製剤:アステラス製薬)
- ゾレドロネート - ゾメタ®(注射用製剤・ノバルティスファーマ)[18]
窒素を含むビスホスホネートの骨代謝での活動はメバロン酸経路内でのファルネシル二リン酸合成酵素(FPPS)の結合と阻害である[19][20]。
FPPSによるメバロン酸経路の遮断はファルネソールとゲラニルゲラニオールという二つの代謝産物の産生を防ぐ。これらは、細胞膜を作るいくつかの小さなタンパク質を結合させる際に必要となる。この現象はプレニル化として知られていて、亜細胞タンパク質の輸送に重要である[21]。
プレニル化の阻害により破骨細胞内の多くのたんぱく質に影響を与えている上に、Ras,Rho,Racの脂質修飾の崩壊が、ビスホスホネートの作用の基礎にあると考えられている。これらのたんぱく質は、破骨細胞形成・生存・細胞骨格の動態それぞれに影響を与えている。特に、細胞骨格は "ruffled border"を保つ上で重要である。
用途
- ビスホスホネートは骨粗鬆症、変形性骨炎(骨ページェット病)、腫瘍(高カルシウム血症の有無にかかわらず)の骨転移[22]、多発性骨髄腫その他骨の脆弱症を特徴とする疾患に対し用いられる。
- 骨粗鬆症やページェット病に対してはアレンドロネートやリセドロネートが第一選択薬として一般的である。これらが効果がない場合や消化器官の異常を訴えるのならばパミドロネートの静脈注射が利用される。ラネル酸ストロンチウムやテリパラタイドが難病に、選択的エストロゲン受容体モジュレーターのラロキシフェンが閉経後の女性にビスホスホネートに投与されることもある。
- 高用量ビスホスホネートの静脈注射はいくつかの種類の癌特に乳癌の骨転移の進行を抑える効果がある。
- メドロネートやオキシドロネートは放射性テクネチウムに混ぜることで、骨疾患を調べることに用いられる。
- さらに、ビスホスホネートは骨形成不全症の子供の骨折率を下げるのに使用されるようになった。
副作用
もっとも問題となる副作用はビスホスホネート系薬剤関連顎骨壊死とされていた。このほか、最近では大腿骨の非定形骨折などの報告例が激増している。
- 経口ビスホスホネートは胃の不調や食道の炎症、びらんを引き起こす。これらはおもに窒素を含むビスホスホネートで主に発生する。これらは内服後30から60分間まっすぐに座っていることで予防できる。
- ビスホスホネートの静脈注射は初回に発熱やインフルエンザ様の症状が出る。これはビスホスホネートが人のγδT細胞の活性化を引き起こすためであると考えてられている。これらは以後は発生しない。
- 電解質平衡異常をわずかに増加させるリスクがある。しかし、定期的なモニタリングが必要なほどではない。
- 慢性腎不全の場合、排出の速度の低下があるため、投与量の調整が必要となることがある。
- 高度の骨や関節、筋骨格系疼痛の報告が多数されている。[23]
- 最近の研究で、ビスホスホネート(厳密に言うとゾレドロネートとアレンドロネート)は女性の心房細動のリスクファクターと報告された。[24][25][26] 炎症反応やカルシウムの血中濃度の増減がその原因と考えられる[25]。ある研究は、心房細動の3%はアレンドロネートの使用によるものであると評価している。しかしながら、たとえ心房細動の高いリスクを持っている集団(心不全・冠動脈疾患・糖尿病などの患者)でも、今のところビスホスホネートの利益はこのリスクを上回っていると信じられている[25]。また、この研究を否定し、リスクファクターであるとのエビデンスは得られなかったとする研究も存在する。[27]
- 長期間にわたるビスホスホネートの使用が特に大腿骨の転子下で骨代謝回転の過剰な抑制を引き起こすことが懸念されている。これにより骨の小さなひびが治らず[28]、最終的にはそのひびがつながり、非定型の骨折をすると考えられている。この種の骨折の治療は極めて困難で、自家骨移植などの治療は全身骨が既にビスホスホネートに侵されているため適応がない。現在なお、この合併症は一般的でなく、骨折の減少の利益の方が大きいと信じられている。
脚注
- ^ 折茂 他
- ^ a b c 米田, p.13
- ^ Fleisch H
- ^ 米田, p.14
- ^ 米田, pp.14-15
- ^ 福本, p.38-42
- ^ “ダイドロネル錠200”. 大日本住友製薬. 2012年1月19日閲覧。
- ^ Frith J, et al.
- ^ “アレディア点滴静注用”. ノバルティスファーマ. 2012年1月20日閲覧。
- ^ “1ヶ月以内に更新された添付文書情報”. 医薬品医療機器情報提供ホームページ. 医薬品医療機器総合機構 (2009年4月1日). 2012年1月20日閲覧。
- ^ “テイロック注射液5mg/テイロック注射液10mg”. 医薬品医療機器情報提供ホームページ. 医薬品医療機器総合機構. 2012年1月20日閲覧。
- ^ “骨粗鬆症治療薬 フォサマック®錠35mg”. MSD. 2012年1月20日閲覧。
- ^ “ボナロン錠35mg”. 医薬品医療機器情報提供ホームページ. 医薬品医療機器総合機構. 2012年1月20日閲覧。
- ^ “新規採用医薬品”. 国立病院機構南和歌山医療センター. 2012年1月20日閲覧。
- ^ “アクトネル錠17.5mg”. エーザイ. 2012年1月20日閲覧。
- ^ “ベネット錠17.5mg”. 武田薬品工業. 2012年1月20日閲覧。
- ^ リカルボン錠50mg.小野薬品.2012年1月20日閲覧。
- ^ “ゾメタ点滴静注用4mg”. ノバルティスファーマ. 2012年1月20日閲覧。
- ^ van Beek E, et al.(2003)
- ^ 福本, p.40-41
- ^ van beek E, et al.(1999)
- ^ 米田, pp.22-23
- ^ Wysowski D, et al.
- ^ Black DM, et al.
- ^ a b c Heckbert SR, et al.
- ^ Cummings SR, et al.
- ^ Henrik Toft Sørensen, et al.
- ^ 米田, p.30
参考文献
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- 『ゾレドロン酸のEBM』 監修 尾形悦郎、メディカルレビュー社、大阪市中央区、2006年6月1日、第1版第1刷。ISBN 4-89600-978-9。
- 米田俊之 「第1章ゾレドロン酸の概要 1.癌と骨病変の分子細胞生物学 -ビスホスホネート治療の理論的基盤-」『ゾレドロン酸のEBM』、13-35頁。
- 福本誠二 「第1章ゾレドロン酸の概要 2.ビスホスホネートの基礎」『ゾレドロン酸のEBM』、36-45頁。
- 代表 折茂肇 『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2006年版』 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会、ライフサイエンス出版。ISBN 978-4897752280。2009年8月26日閲覧。
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- “アレディア点滴静注用”. ノバルティスファーマ. 2012年1月20日閲覧。
- 宇宙飛行中のビスフォスフォネート投与による骨減少の防止 2011年11月30日 宇宙航空研究開発機構(JAXA)
薬理学:医薬品の分類 |
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消化器/代謝(A) |
胃酸中和剤(制酸薬、H2ブロッカー、プロトンポンプ阻害薬) • 制吐薬 • 瀉下薬 • 止瀉薬/止痢薬 • 抗肥満薬 • 血糖降下薬 • ビタミン • ミネラル
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血液、血液生成器官(B) |
抗血栓薬(抗血小板剤、抗凝固薬、血栓溶解薬) • 抗出血(血小板、凝固・線溶系、抗線維素溶解性)
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循環器系(C) |
心臓療法/狭心症治療薬(強心配糖体、抗不整脈薬、強心剤) • 高血圧治療薬 • 利尿薬 • 血管拡張薬 • 交感神経β受容体遮断薬 • カルシウム拮抗剤 • レニン-アンジオテンシン系(ACE阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、レニン阻害薬) • 脂質降下薬(スタチン、フィブラート、胆汁酸捕捉因子)
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皮膚(D) |
皮膚軟化剤 • 瘢痕形成剤 • 鎮痒薬 • 乾癬治療薬 • 他の皮膚薬
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泌尿生殖器系(G) |
ホルモン避妊薬 • 排卵誘発治療 • SERM • 性ホルモン
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内分泌器(H) |
視床下部脳下垂体ホルモン • 副腎皮質ホルモン(糖質コルチコイド、ミネラルコルチコイド) • 性ホルモン • 甲状腺ホルモン/抗甲状腺薬
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感染(J、P、QI) |
抗菌薬 (抗生物質) • 抗真菌薬 • 抗ウイルス薬 • 抗寄生虫薬(抗原虫薬、駆虫薬) • 外部寄生虫駆除剤 • 静注用免疫グロブリン • ワクチン
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悪性腫瘍(L01-L02) |
抗がん剤(代謝拮抗薬、抗腫瘍性アルキル化薬、紡錘体毒、抗悪性腫瘍薬、トポイソメラーゼ阻害薬)
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免疫系(L03-L04) |
免疫調節薬(免疫賦活薬、免疫抑制剤)
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筋肉、骨、関節(M) |
アナボリックステロイド • 抗炎症薬(NSAIDs) • 抗リウマチ • 副腎皮質ホルモン • 筋弛緩剤 • ビスホスホネート
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脳、神経(N) |
鎮痛剤 • 麻酔剤(一般、局所・静脈) • 食欲低下薬 • ADHD治療 • 中毒医学 • 抗てんかん薬 • アルツハイマー治療 • 抗うつ薬 • 片頭痛治療 • 抗パーキンソン病薬 • 抗精神病薬 • 抗不安薬 • 抑制剤 • エンタクトゲン • エンセオジェン • 陶酔薬 • 幻覚剤(サイケデリック、解離性麻酔薬、デリリアント) • 催眠薬/鎮静薬 • 気分安定薬 • 神経保護 • スマートドラッグ • 神経毒 • 食欲促進 • セレニック • 覚醒剤 • 覚醒促進物質
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呼吸器(R) |
鬱血除去薬 • 気管支拡張薬 • 鎮咳去痰薬 • 抗ヒスタミン薬
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感覚器(S) |
眼科学 • 耳科学
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その他ATC(V) |
解毒剤 • 造影剤 • 放射性薬理学 • 湿潤療法
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UpToDate Contents
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Japanese Journal
- 大腿骨骨幹部骨折を繰り返すビスホスホネート製剤長期投与の1例
- 長谷川 和宏,池田 和夫,納村 直希,藤巻 芳寧,内藤 充啓
- 中部日本整形外科災害外科学会雑誌. 中部日本整形外科災害外科学会抄録 54(2), 309-310, 2011-03-01
- NAID 10029071814
- ビスホスホネート製剤 (特集 骨粗鬆症--早期に見つけ寝たきりを防ぐ) -- (薬物療法)
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- 宮崎大学医学部附属病院薬剤部 1) 骨粗鬆症患者 非投与群 静注薬投与群 経口薬投与群 A群 (+) 患者数 A群 (-) 患者数 発生率(%) オッズ比(95% C.I.) 339 263,013 0.13 1.0 9 1,742 5.17 4.01 (2.06-7.78) * 150
- 広島の西、廿日市のがん(癌)拠点病院 JA広島総合病院。一般外来、セカンドオピニオン外来など、様々な診療科の看護や診療を行います。 ... BP製剤を服用している人が歯を抜く時はお薬を中止して最低3ヶ月以上たって ...
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- 78歳の男性。呼吸困難と下腿浮腫とを主訴に来院した。
- 現病歴:心不全、心筋梗塞および高血圧症にて自宅近くの診療所に通院中であった。2か月前から階段を上がる際に胸部の違和感を覚えるようになった。1か月前から歩行時の呼吸困難と下腿浮腫とを自覚するようになった。呼吸困難は徐々に悪化し、10mさえも歩くことが困難になり受診した。
- 既往歴:65歳から高血圧症。75歳時に心筋梗塞にて経皮的冠動脈形成術(薬剤溶出性ステント留置)。76歳から心不全。アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬、β遮断薬、ループ利尿薬、HMG-CoA還元酵素阻害薬、アスピリン及びチエノピリジン系抗血小板薬を処方されている。
- 生活歴:喫煙は70歳まで20本/日を50年間。飲酒は機会飲酒。
- 家族歴:父親は脳出血で死亡。母親は胃癌で死亡。
- 現症:意識は清明。身長 154cm、体重 58kg(1か月で3kg増加)。体温 36.3℃。脈拍 96/分、整。血圧 156/86mmHg。呼吸数 24/分。SpO2 96%(鼻カニューラ2L/分酸素投与下)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。頸静脈の怒張を認める。頸部血管雑音を聴取しない。胸部の聴診でⅢ音とⅣ音とを聴取する。心雑音を聴取しない。呼吸音に異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。両側の下腿に浮腫を認める。
- 検査所見:尿所見:蛋白(-)、糖(-)、沈渣に白血球を認めない。血液所見:赤血球 412万、Hb 13.8g/dL、Ht 42%、白血球 6,500(桿状核好中球 30%、分葉核好中球 40%、好酸球 1%、好塩基球 1%、単球 6%、リンパ球 22%)、血小板 19万、Dダイマー 0.6μg/dL(基準 1.0以下)。血液生化学所見:総蛋白 6.5g/dL、アルブミン 3.8g/dL、総ビリルビン 1.1mg/dL、AST 36IU/L、ALT 39IU/L、LD 352IU/L(基準 176~353)、ALP 153IU/L(基準 115~359)、CK 156IU/L(基準30~140)、尿素窒素 21mg/dL、クレアチニン 0.9mg/dL、血糖 114mg/dL、HbA1c 5.7%(基準 4.2~6.2)、総コレステロール 139mg/dL、トリグリセリド 77mg/dL、HDLコレステロール 53mg/dL、Na 137mEq/L、K 4.7mEq/L、Cl 104mEq/L、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)840pg/mL(基準 18.4以下)。CRP 0.2mg/dL。心筋トロポニンT迅速検査は陰性。心電図は心拍数98/分の洞調律で、不完全右脚ブロックを認める。胸部エックス線写真で心胸郭比は58%であり、肺血管陰影の増強と右肋骨横隔膜角の鈍化とを認める。心エコーで左室駆出率は34%で、びまん性に左室の壁運動低下を認める。
- 入院後の経過:入院し適切な治療を行ったところ徐々に病状は改善し、入院3日目には、酸素投与を中止し内服薬をすべて再開した。入院5日目の夜、トイレに行こうとしてベッドサイドで転倒した。意識は清明。体温 36.8℃。脈拍 88/分、整。血圧 138/84mmHg。呼吸数 18/分。SpO2 96%(room air)。大腿骨エックス線写真と腰椎エックス線写真で骨折を認めない。頭部CTで異常を認めない。
- 対応として適切なのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [110G066]←[国試_110]→[110G068]
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- 次の文を読み、54~56の問いに答えよ。
- 84歳の女性。ふらつきがあり、頻回に転倒するため夫と来院した。
- 現病歴:2か月前に腰椎圧迫骨折を起こし、自宅近くの病院に入院した。入院後は腰痛のためベッド上で安静にしていた。徐々に痛みは改善し、1か月後、自宅に退院したが、退院後にふらつきを自覚し、転倒するようになった。ふらつきは特に朝方に強い。難聴と耳鳴りは自覚していない。入院した病院で頭部を含めた精査を受けたが原因が明らかでなく、症状が改善しないため受診した。
- 既往歴:68歳時から糖尿病と高血圧症、75歳時から逆流性食道炎と不眠症。
- 生活歴:夫と2人暮らし。喫煙歴と飲酒歴はない。入院までは夫と飲食業をしていた。リハビリテーションは週1回続けている。
- 家族歴:父親は胃癌で死亡。母親は肺炎で死亡。弟は糖尿病で治療中。
- 現症:意識は清明。身長 150cm、体重 36kg(2か月前は40kg)。体温 36.0℃。脈拍 72/分、整。血圧 146/78mmHg(立位3分後 138/74mmHg)。呼吸数 16/分。眼瞼結膜に貧血を認めない。頸静脈の怒張を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。下腿に浮腫を認めない。脳神経に異常を認めない。眼振を認めない。四肢に明らかな麻痺を認めない。筋強剛を認めない。握力 14kg(基準 18以上)。指鼻試験 陰性。Romberg徴候 陰性。明らかな歩行障害を認めない。通常歩行速度 0.7m/秒(基準 0.8以上)。手指振戦を認めない。振動覚と腱反射は正常である。
- 検査所見:尿所見:蛋白(-)、糖1+、ケトン体(-)。血液所見:赤血球 403万、Hb 12.1g/dL、Ht 38%、白血球 7,400。血液生化学 所見:総蛋白 6.8g/dL、アルブミン 3.3g/dL、AST 22U/L、ALT 14U/L、LD 278U/L(基準 176~353)、CK 90U/L(基準 30~140)、尿素窒素 21mg/dL、クレアチニン 0.7mg/dL、血糖 128mg/dL、HbA1c 7.4%(基準 4.6~6.2)、総コレステロール 186mg/dL、トリグリセリド 100mg/dL、HDLコレステロール 50mg/dL、Na 135mEq/L、K 4.2mEq/L、Cl 97mEq/L。心電図に異常を認めない。高齢者総合機能評価(CGA):基本的日常生活動作(Barthel指数)100点(100点満点)、手段的日常生活動作 (IADLスケール)8点(8点満点)、Mini-Mental State Examination(MMSE)27点(30点満点)、Geriatric Depression Scale2点(基準5点以下)。
- 来院時の内服薬を調べたところ、経口血糖降下薬、降圧薬、ビスホスホネート製剤、ベンゾジアゼピン系睡眠薬、プロトンポンプ阻害薬が処方されていた。
- まず減量を検討すべきなのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [112C055]←[国試_112]→[112C057]
[★]
- 次の文を読み、63~65の問いに答えよ。
- 84歳の女性。失神と眼前暗黒感とを主訴に来院した。
- 現病歴:1週間前から時々気が遠くなるようなふらつきを自覚していたが、本日、朝食前に突然眼前暗黒感を自覚し意識が消失した。意識はすぐに回復したが、心配になり長女に付き添われて救急外来を受診した。
- 既往歴:60歳ごろから高血圧症と脂質異常症。75歳ごろから骨粗鬆症と逆流性食道炎。80歳ごろから心不全と心房細動で内服治療中。アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬、スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、ビスホスホネート製剤、プロトンポンプ阻害薬およびジゴキシンを処方されている。
- 生活歴:ADLは自立している。長女夫婦と3人暮らし。喫煙歴と飲酒歴はない。
- 家族歴:父親が心筋梗塞で死亡。母親が胃癌で死亡。
- 現症:意識は清明。身長 150cm、体重 42kg。体温 35.8℃。脈拍 36/分、不整。血圧 152/70mmHg。呼吸数 20/分。SpO2 96%(room air)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。心尖部を最強点とするⅡ/Ⅵの汎収縮期雑音を聴取する。呼吸音に異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。下腿に浮腫を認めない。神経学的所見に異常を認めない。
- 検査所見:尿所見:蛋白(±)、糖(-)、沈渣に白血球を認めない。血液所見:赤血球 352万、Hb 11.8g/dL、Ht 36%、白血球 5,800、血小板 16万。血液生化学所見:総蛋白 6.8g/dL、アルブミン 3.9g/dL、AST 28U/L、ALT 32U/L、ALP 164U/L(基準 115~359)、CK 45U/L(基準 30~140)、尿素窒素 24mg/dL、クレアチニン 1.4mg/dL、血糖 110mg/dL、HbA1c 5.7%(基準 4.6~6.2)、Na 133mEq/L、K 3.6mEq/L、Cl 97mEq/L。CRP 0.3mg/dL。
- 中止すべき薬剤はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [111G063]←[国試_111]→[111G065]
[★]
- 82歳の女性。転倒し救急車で搬入された。
- 現病歴:廊下で倒れているところを家族が発見し、救急車を要請した。半年前から階段昇降時の息切れを自覚していた。
- 既往歴:68歳時から高血圧症のためカルシウム拮抗薬、糖尿病のためビグアナイド薬、75歳時から深部静脈血栓症のためワルファリン、76歳時から不眠症のためベンゾジアゼピン系睡眠薬、骨粗鬆症のためビスホスホネート製剤で治療中。
- 生活歴:日常生活動作(ADL)は自立。
- 家族歴:特記すべきことはない。
- 現症:問いかけに対し名前を言うことができる。身長 152cm、体重 42kg。体温 36.6℃。心拍数 72/分、整。仰臥位で血圧 112/68mmHg。呼吸数 18/分。SpO2 98%(room air)。眼瞼結膜は貧血様である。眼球結膜に黄染を認めない。前頭部に2cm大の皮下血腫を認める。心音と呼吸音とに異常を認めない。神経診察を含む身体診察に異常を認めない。
- 頭部CTでは皮下血腫のみで頭蓋内に異常を認めなかった。座位にしたところ1分後にふらつきを生じ「目の前が暗くなる」と訴えた。心拍数 120/分、整。血圧 82/40mmHg。呼吸数 20/分。直腸診で黒色便の付着を認める。静脈路を確保して輸液を開始し、血圧は 110/62mmHgに上昇した。
- 検査所見:血液所見:赤血球 245万、Hb 7.5g/dL、Ht 24%、白血球 9,600、血小板 18万。血液生化学所見:総蛋白 6.5g/dL、アルブミン 3.2g/dL、AST 20U/L、ALT 30U/L、尿素窒素 65mg/dL、クレアチニン 0.6mg/dL、Na 140mEq/L、K 4.5mEq/L、Cl 108mEq/L。
- この患者において今後の頭蓋内出血の出現を予測する上で、最も注意すべき薬剤内服歴はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [113C055]←[国試_113]→[113C057]
[★]
- 82歳の女性。転倒し救急車で搬入された。
- 現病歴:廊下で倒れているところを家族が発見し、救急車を要請した。半年前から階段昇降時の息切れを自覚していた。
- 既往歴:68歳時から高血圧症のためカルシウム拮抗薬、糖尿病のためビグアナイド薬、75歳時から深部静脈血栓症のためワルファリン、76歳時から不眠症のためベンゾジアゼピン系睡眠薬、骨粗鬆症のためビスホスホネート製剤で治療中。
- 生活歴:日常生活動作(ADL)は自立。
- 家族歴:特記すべきことはない。
- 現症:問いかけに対し名前を言うことができる。身長 152cm、体重 42kg。体温 36.6℃。心拍数 72/分、整。仰臥位で血圧 112/68mmHg。呼吸数 18/分。SpO2 98%(room air)。眼瞼結膜は貧血様である。眼球結膜に黄染を認めない。前頭部に2cm大の皮下血腫を認める。心音と呼吸音とに異常を認めない。神経診察を含む身体診察に異常を認めない。
- 頭部CTでは皮下血腫のみで頭蓋内に異常を認めなかった。座位にしたところ1分後にふらつきを生じ「目の前が暗くなる」と訴えた。心拍数 120/分、整。血圧 82/40mmHg。呼吸数 20/分。直腸診で黒色便の付着を認める。静脈路を確保して輸液を開始し、血圧は 110/62mmHgに上昇した。
- 検査所見:血液所見:赤血球 245万、Hb 7.5g/dL、Ht 24%、白血球 9,600、血小板 18万。血液生化学所見:総蛋白 6.5g/dL、アルブミン 3.2g/dL、AST 20U/L、ALT 30U/L、尿素窒素 65mg/dL、クレアチニン 0.6mg/dL、Na 140mEq/L、K 4.5mEq/L、Cl 108mEq/L。
- 次に優先すべき検査はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [113C054]←[国試_113]→[113C056]
[★]
- 72歳の男性。腰背部痛を主訴に来院した。3年前に多発性骨髄腫と診断され、3種類の異なる抗癌化学療法を施行されてきたが、現在まで一度も寛解に至っていない。2か月前から腰痛、背部痛および肋骨痛が出現しNSAIDsが投与されたが、疼痛は増悪しており、最近は疼痛のため室内移動も困難であり1日中ベッドに横になっていることが多い。数日前から症状が増悪し、食欲低下および嘔吐をきたすようになった。意識は清明。身長 172cm、体重 54kg。体温 37.2℃。脈拍 84/分、整。血圧 102/68mmHg。パフォーマンスステイタス(PS)4。眼瞼結膜は貧血様である。胸骨右縁第2肋間を最強点とする収縮期駆出性雑音を聴取する。四肢に皮下出血を認めない。血液所見:赤血球 277万、Hb 6.1g/dL、Ht 26%、白血球 3,300、血小板 4万。血液生化学所見:総蛋白 11.5g/dL、アルブミン 2.9g/dL、IgG 8,450mg/dL(基準 960~1,960)、IgA 26mg/dL(基準 110~410)、IgM 18mg/dL(基準 65~350)、総ビリルビン 0.6mg/dL、AST 23U/L、ALT 17U/L、LD 325U/L(基準 176~353)、ALP 420U/L(基準 115~359)、尿素窒素 30mg/dL、クレアチニン 1.8mg/dL、尿酸 9.2mg/dL、Na 145mEq/L、K 4.0mEq/L、Cl 101mEq/L、Ca 14.0mg/dL。全身の骨エックス線写真で両側大腿骨に広範な骨融解像と第4、第5腰椎に圧迫骨折を認める。
- 現時点で考慮すべき治療はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [113F061]←[国試_113]→[113F063]
[★]
- 82歳の女性。転倒し救急車で搬入された。
- 現病歴:廊下で倒れているところを家族が発見し、救急車を要請した。半年前から階段昇降時の息切れを自覚していた。
- 既往歴:68歳時から高血圧症のためカルシウム拮抗薬、糖尿病のためビグアナイド薬、75歳時から深部静脈血栓症のためワルファリン、76歳時から不眠症のためベンゾジアゼピン系睡眠薬、骨粗鬆症のためビスホスホネート製剤で治療中。
- 生活歴:日常生活動作(ADL)は自立。
- 家族歴:特記すべきことはない。
- 現症:問いかけに対し名前を言うことができる。身長 152cm、体重 42kg。体温 36.6℃。心拍数 72/分、整。仰臥位で血圧 112/68mmHg。呼吸数 18/分。SpO2 98%(room air)。眼瞼結膜は貧血様である。眼球結膜に黄染を認めない。前頭部に2cm大の皮下血腫を認める。心音と呼吸音とに異常を認めない。神経診察を含む身体診察に異常を認めない。
- 転倒の原因を評価するための質問として有用性が低いのはどれか。
- a 「転倒した時のことを覚えていますか」
- b 「打撲して最も痛い部位はどこですか」
- c 「転倒するときに何かにつまずきましたか」
- d 「手足のしびれや、動かしづらさはありませんか」
- e 「これまで痙攣発作を起こしたと言われたことがありますか」
[正答]
※国試ナビ4※ [113C053]←[国試_113]→[113C055]
[★]
- 44歳の女性。紅斑、全身倦怠感および食欲不振を主訴に来院した。1か月前から掻痒を伴う紅斑が四肢に出現したため皮膚科を受診し、抗アレルギー薬と副腎皮質ステロイド外用薬を処方されたが改善せず、紅斑は体幹にも広がった。同時に全身倦怠感と食欲不振も出現したため受診した。父親が血液疾患で死亡。体温 38.5℃。脈拍 96/分、整。全身に紅斑を認める。両側の頸部、腋窩および鼠径部に径1~2cmのリンパ節を6個触知する。血液所見:赤血球466万、Hb 14.4g/dL、Ht 44%、白血球 12,900(異常リンパ球 25%)、血小板 23万。血液生化学所見:総蛋白 6.0g/dL、アルブミン 3.0g/dL、総ビリルビン 0.3mg/dL、AST 28U/L、ALT 15U/L、LD 1,600U/L(基準 176~353)、尿素窒素 24mg/dL、クレアチニン 1.3mg/dL、空腹時血糖 90mg/dL、Na 140mEq/L、K 4.1mEq/L、Cl 102mEq/L、Ca 12.3mg/dL。背部の皮疹(別冊No. 33A)及び末梢血塗抹May-Giemsa染色標本(別冊No. 33B)を別に示す。
- 行うべき治療はどれか。3つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [113A072]←[国試_113]→[113A074]
[★]
- 82歳の女性。悪心と骨盤の痛みとを主訴に来院した。2年前に骨病変を伴う多発性骨髄腫と診断された。抗癌化学療法とビスホスホネート製剤の投与とを受けていたが治療抵抗性となり、3か月前に抗癌化学療法は中止した。その後、多発性骨髄腫による骨盤の痛みが生じたため、局所放射線照射を行ったが除痛効果は一時的であり、モルヒネの内服を開始した。当初、痛みは良好にコントロールされていたが、徐々にモルヒネの効果が乏しくなったため、段階的に増量した。数日前から痛みに加え、食欲不振と悪心が強くなり受診した。血液検査で電解質に異常を認めない。腹部エックス線写真でイレウス所見を認めない。
- 対応として適切なのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [112C034]←[国試_112]→[112C036]
[★]
- 甲状腺全摘術後に発症したテタニーに対し、直ちに投与すべきなのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [114A005]←[国試_114]→[114A007]
[★]
- 英
- bisphosphonate
- 同
- ビスフォスフォネート、ビスホスホネート、ビスホスホン酸、ビスホスホネート製剤
- 関
- 骨粗鬆症
[★]
- 英
- (調剤)formulation、preparation、dosage、(工業)drug product
- 関
- 製剤形態、剤形、処方、準備、調製、投薬量、投与量、標品、標本、服用量、プレップ、プレパラート、薬用量、用意、用量、製法
[★]
- 英
- drug、agent
- 関
- 薬、作用薬、ドラッグ、媒介物、病原体、麻薬、薬剤、薬物、代理人、薬品
[★]
- 英
- phospho
- 関
- フォスフォ、ホスフォ、リン酸
[★]
ビスホスフォネート