出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2013/12/07 02:00:50」(JST)
上部消化管内視鏡(じょうぶしょうかかんないしきょう)とは、一般に消化器科にて用いられる内視鏡もしくは検査・治療手技のこと。食道、胃、十二指腸までの上部消化管を観察する。英語では機器は Esophagogastroduodenoscope、手技はEsophagogastroduodenoscopyと異なるが、日本語では同じ語句を用いることが一般的である。
胃カメラ(Gastoroscopy)とも呼ばれている。
1967年: 光ファイバーを用いた軟性内視鏡が開発。
2000年: 粘膜面をズームアップできる拡大内視鏡の開発。
2002年: 画像強調内視鏡(旧称:分光内視鏡)の開発。
ファイバー内視鏡と電子スコープ内視鏡は、さらに経口内視鏡、経鼻内視鏡に分類される。
この節の加筆が望まれています。 (2011-11) |
検査前日の夕食後は絶食となる。
胃内の気泡除去のため、バリトゲン消泡液やガスコン・ドロップ、バルギン消泡液などの医療用シリコーンを服用する。
また胃内粘液の影響を軽減するため、プロナーゼMSやガスチームなどの蛋白分解酵素を服用することもある。
有線式の内視鏡の挿入には苦痛が伴うため、欧米では、基本的に鎮静剤を使用する(多くはミダゾラム)[要出典]。日本ではかつて、鎮静剤を使用すると回復に時間がかかるという理由もあり、鎮静剤を使用しない施設が多かったが、近年は、苦痛軽減のために鎮静剤を積極的に使用する施設が増えている。日本ではオピスタン、セルシンなどが主流であったが、ドルミカムを用いる施設も増えつつある(日本ではセルシン、ドルミカムのこの目的での使用は保険適用外)。ミダゾラムは0.07 mg/体重kg当り(最大 4mgまで)とする施設が多い。欧米ではより安全なプレセデックスが用いられることもある[1]。
また消化管が蠕動すると、観察・記録・処置が困難であるため、禁忌がなければブスコパンやチアトンなどの抗コリン剤注射を投与する。緑内障、排尿障害、不整脈などのため抗コリン剤禁忌である場合は、グルカゴン注射を用いる。グルカゴンは高血糖を助長するが、糖尿病においても必ずしも禁忌ではない。
有線式のものは、口もしくは鼻腔から挿入して、咽頭・喉頭・食道・胃・十二指腸を観察する。十二指腸上行脚/横行部・小腸へは直線的な先進が困難なため、ダブルバルーン内視鏡が開発された(販売:(現)富士フイルムメディカル、(旧)フジノン東芝ESシステム)。 口側から挿入することと、肛門側から挿入することにより全小腸の画像診断が可能とされている。
カプセル内視鏡は海外で先行して開発され、日本でも小腸カプセル内視鏡が保険適応である。食道カプセル内視鏡は海外で実用化されたが、胃についてはまだ開発段階にある。
観察時に特殊な色素や化合物を粘膜に散布することにより、より病変の視認性を良好にすることが可能である[2]。インジゴカルミン液、ルゴール液、酢酸、酢酸-インジゴカルミン混合液 (Acetic acid-Indigocarmine Mixture:AIM)[3]、コンゴーレッドなどはその代表である。(色素内視鏡、chromoendoscopy)
色素噴霧した時には、ヒダの集中・途絶・太まり・細まり、粘膜の台状挙上などは悪性病変を示唆することが多いので注意して記録、生検を行う。
高次医療機関や内視鏡専門施設では、拡大内視鏡や分光画像内視鏡を備えている施設もある。
内視鏡は観察のみにとどまらず、標本の採取(生検:組織学的診断のために重要である。またヘリコバクター・ピロリの培養にも用いられる)や治療・手術にも用いられる。例えばポリープ・悪性腫瘍などの粘膜病変に対し、内視鏡を用いて切除する処置(ポリペクトミー, 内視鏡的粘膜切除術;EMR, 内視鏡的粘膜下層剥離術;ESD)が行われる。上部消化管潰瘍・出血に対してはクリッピング・焼灼・エタノール注入・トロンビン散布・硬化療法などが施行される。内視鏡を用いた胆道・膵臓の検査・治療も行われる(ERCP・ERBD・ESTなど)。また胃瘻造設術にも用いられる(PEG; percutaneous endoscopic gastristomy)。先進的医療としては内視鏡的消化管全層切除術(EFTR; endoscopic full-thickness resection), 自然開口部越経管腔的内視鏡手術(NOTES; Natural Orifice Translumenal Endoscopic Surgery)がある[6]。
AIMの組成
日本で2000年に極細径(太さ6mm以下)の内視鏡が開発され、従来の経口内視鏡に代わる経鼻内視鏡が登場した。CCDの高解像度化により、経口内視鏡と同等の上部消化管検査が可能となっている。経口内視鏡に比べ嘔吐感や息苦しさなどの苦痛が少なく、検査中に会話することも可能なため、患者側には好評である。デメリットとしては、個人差による経鼻挿入困難、大きな生検採取やポリープ切除が不可、まれに鼻出血が発生することなどが挙げられる。
通常の生検鉗子では、鉗子の硬さに内視鏡が負け、反転操作が難しくなることがあった。このため経鼻内視鏡を施行したのちに、再度通常径内視鏡での再検査が必要となることも指摘されてきた。現在では住友ベークライトの開発したSB生検鉗子では反転操作が十分に可能となっている。
下咽頭後壁に沿って食道入口部があり、その左右は梨状陥凹が認められる。
気管分岐部付近には大動脈弓、左主気管支が位置しており、生理的に狭窄している。
縦走する柵状血管の下橋が食道胃接合部である。逆流防止機構があり胃の内容物が逆流するのを防いでいる。
噴門部を観察すると、見上げた状態になるのでスコープが見える。
胃体部は皺壁が特徴的である。
胃角部も見上げた状態となりスコープが見える。
NBIでは白色光にフィルターを掛け、ヘモグロビンの反射光に当たる帯域に限局した波長の光をつくる。この波長の光による「狭帯域光観察」は粘膜表層の毛細血管や粘膜模様を強調するオリンパスの技術である。
青色レーザーは、同様な波長のレーザー光を用いた富士フィルムメディカルによる技術である。
色素内視鏡検査の一つ。コントラストが明瞭になる。
ルゴール氏液はグリコーゲンと反応し、褐色に食道粘膜表層を染色する。癌病変は染色されず、白色調に見える。
食道癌の検査で行われる色素内視鏡検査。食道領域では癌はルゴール(ヨード)で茶褐色に染まらず、トルイジンブルーで青染する。
(近年、機器の進歩に伴い咽頭癌,喉頭癌も検査時に発見されることがある。)
胃前庭部の多発胃潰瘍
インジゴカルミン散布後の多発タコいぼ状びらん
胃体部にみられた早期胃癌
左と同じ症例のインジゴカルミン染色像
ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎の酢酸染色後FICE強調像
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ミダゾラム
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