- 英
- premature rupture of the membranes, premature rupture of membranes, PROM
- 同
- premature rupture fetal membrane
- 関
- 破水。プレタームPROM preterm PROM
定義
- 陣痛開始以前に卵膜の破綻を起こしたもの ← 陣痛発生以降は分娩第一期。第一期より前なので「前期破水」と覚える
- 特に、妊娠37週未満の前期破水をpreterm PROM ← ちなみに、妊娠37週未満での出産は早産と定義される
定義のまとめ
前期破水の妊娠期間による別
破水の分娩のステージによる分類
疫学
- 全妊娠の5-10%。このうち約60%は妊娠37週以降に生じる。(参考1)
病因
- 参考1 NGY.457
参考
- http://www.jsog.or.jp/PDF/61/6103-059.pdf
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前期破水 |
|
分類および外部参照情報 |
診療科・
学術分野 |
産科学 |
ICD-10 |
O42 |
ICD-9-CM |
658.1 |
DiseasesDB |
10600 |
eMedicine |
med/3246 |
MeSH |
D005322 |
前期破水(ぜんきはすい)とは、陣痛前の破水である。陣痛が始まり子宮口全開大前の破水は早期破水といい区別される。早産、胎児の感染、臍帯脱出と胎児ジストレスをおこす非常に危険な病態である。
目次
- 1 原因
- 2 診断
- 3 治療
- 4 参考文献
- 5 関連項目
- 6 外部リンク
原因
羊膜絨毛膜炎が原因として最も多い。
診断
破水が起こったことを証明する。具体的には頸管のpHがアルカリ性であるかを確かめる。また母体、胎児の感染徴候を調べる。その際に胎児ジストレスがないかも確認する。前期破水後の子宮内感染は胎児の敗血症を起こしやすいの注意が必要である。羊膜絨毛膜炎では頚管粘液の細菌培養、好中球エラスターゼ、胎児性フィブロネクチンの測定を行う。
治療
感染があれば抗菌薬、陣痛があれば陣痛抑制薬、頸管無力症には頸管縫縮術を行う。胎児ジストレスがおこれば帝王切開を行う。
参考文献
関連項目
外部リンク
|
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Japanese Journal
- 菊地 美帆,境原 三津夫,河内 和直,藤田 ゆかり,渡邊 之夫
- 新潟県立看護大学紀要 2, 23-27, 2013-02-14
- … 陣痛発来時刻および前期破水時刻を対象として,自然現象である気圧と月齢,時間帯との関係を検討した.対象は,2010 年1 月1 日から12 月31 日までの1 年間に,茨城県のT 病院で自然陣痛発来後に分娩に至った236 症例と前期破水後に分娩に至った77 症例である.統計学的に解析した結果,以下のことが明らかとなった.1.気圧と自然陣痛発来数・前期破水数に統計学的に有意 …
- NAID 120005268999
- BCG接種時の皮膚裂傷からEhlers-Danlos症候群と診断された超早産児の一例
- 杉田 依里/平澤 恭子/花谷 あき/鷲尾 洋介/戸津 五月/増本 健一/中西 秀彦/内山 温/楠田 聡/櫻井 裕之/大澤 眞木子
- 東京女子医科大学雑誌 83(E1), E317-E322, 2013-01-31
- … 児は、母体の前期破水と絨毛膜羊膜炎のため、在胎期間27週6日、出生体重1100g、帝王切開で出生した。 …
- NAID 110009559382
- 症例報告 前期破水による緊急帝王切開術後に腹腔内ドレナージ術を要した重症子宮創部感染の1例
- 絨毛膜羊膜炎や前期破水などの周産期合併症と胎児心拍数モニタリング (特集 CTGテキストブック2012 : 日本母体胎児医学会共同企画)
Related Links
- 前期破水。前期破水とはどんな病気か 陣痛がまだ起こっていない段階で卵膜(らんまく) が破れ、羊水が子宮外に流れ出ることを前期破水といいます。 破水は普通は分娩の 途中で起こることが多いのですが、正期産(妊娠37週~ gooヘルスケア 家庭の医学。
- 前期破水の前に「破水」のことについて説明します。 胎児は卵 ... 分娩が開始する前( 陣痛発来前)に破水することを前期破水(premature rupture of the membrane:PROM )といいます。 産婦人 ... 前期破水に似てる用語で早期破水というものもあります。 これ は ...
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★リンクテーブル★
[★]
- 次の文を読み、4~6の問いに答えよ。
- 28歳の妊婦。今朝、突然の中等量性器出血と水様帯下とを認めて来院した。
- 現病歴 : 妊娠初期には特に異常はなかったが、妊娠24週3日に上記症状を呈した。下腹部痛はない。
- 既往歴 : 特記すべきことはない。
- 月経歴 : 初経13歳。周期は28日型、整。月経時随伴症状はない。
- 妊娠・分娩歴 : 1年前に妊娠7週で自然流産した。
- 現症 : 身長160cm、体重52kg。体温36.8℃。脈拍72/分、整。血圧122/70mmHg。子宮底は臍上2cm、軟、圧痛はない。膣鏡診で外子宮口の開大は認められないが、少量の淡血性の帯下が認められ、悪臭はない。超音波検査により胎児は頭位、胎児計測値は妊娠週数相当であり、羊水腔はほとんど消失している。
- 入院時検査所見:尿所見:蛋白(±)、糖(-)、ウロビリノゲン(±)、潜血1+。血液所見:赤血球394万、Hb11.2g/dl、Ht38%、白血球11,000、血小板22万。血清生化学所見:総蛋白6.9g/dl、アルブミン4.1g/dl、尿素窒素10mg/dl、クレアチニン0.7mg/dl、総ビリルビン0.6mg/dl、AST18単位(基準40以下)、ALT14単位(基準35以下)、Na136mEq/l、K4.2mEq/l、Cl102mEq/l、Ca8.8mg/dl。CRP0.3mg/dl(基準0.3以下)。経膣超音波写真と胎児心拍数陣痛図とを以下に示す。
[正答]
※国試ナビ4※ [097C003]←[国試_097]→[097C005]
[★]
- 次の文を読み、10~12の問いに答えよ。
- 35歳の1回経産婦。挙児希望で来院した。
- 現病歴 : 月経周期は不規則である。最近100日間の基礎体温表を以下に示す。
- 既往歴 : 27歳時、妊娠40週で正常分娩した。他に特記すべきことはない。
- 現症 : 身長154cm、体重48kg。
- 検査所見 : 血液所見と血清生化学所見とに特記すべきことはない。バルーンカテーテルを用いた子宮卵管造影と初診後の基礎体温表とを以下に示す。
- 初診後の経過 : 月経5日目から5日間治療薬Xを経口服用し、診察A、B及びCで卵胞の発育を確認した。診察Cで卵胞径が20mmとなったので、治療薬Yを筋肉注射した。診察Dで妊娠反応が陽性を示し、診察Eにおける経膣超音波検査で胎嚢は写真に示す通りであり、各々の胎嚢内に胎児心拍動を確認した。
[正答]
※国試ナビ4※ [098C010]←[国試_098]→[098C012]
[★]
- 28歳の初妊婦。妊娠35週に発熱と下腹部痛とを訴えて来院した。
- 2日前に多量の水様性帯下を認めたが放置していた。意識は清明。身長158cm、体重58kg。体温38.5℃。呼吸数32/分。脈拍100/分、整。血圧130/80mmHg。心音と呼吸音とに異常を認めない。子宮に圧痛を認める。
- 内診所見:子宮口閉鎖、展退度50%、子宮口から膿性分泌液の流出を認める。血液所見:赤血球400万、Hb11.3g/dl、白血球18,000。CRP5.5mg/dl。
- 超音波検査所見:頭位で羊水腔をほとんど認めない。胎児心拍数陣痛図所見:心拍数基線180bpm、一過性頻脈なし、一過性徐脈なし、基線細変動10bpm。帝王切開術を施行した。出生体重2,400g、Apgarスコア8点(1分)、9点(5分)。この児に最も起こりやすいのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [099A055]←[国試_099]→[099A057]
[★]
- 30歳の 1回経妊 1回経産婦。妊娠 41週 5日。午前 6時に陣痛発来し、午前 8時に入院した。妊娠経過は順調であった。入院直後の内診所見では、子宮口は 3 cm開大、卵膜を触知し、児頭下降度 SP-1 cmで、同時に行った胎児心拍数陣痛図では異常を認めなかった。午前 10時に自然破水。午後 7時に子宮口全開大し、午後 9時 50分に 3,805 gの男児を経腟分娩した。羊水混濁は認めない。 Apgarスコアは 8点 ( 1分 )、 8点 ( 5分 )であった。午後 10時 10分に胎盤が自然娩出し、出血量は500 mlであった。
- この分娩に関して正しいのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [108E042]←[国試_108]→[108E044]
[★]
- 32歳の初妊婦。妊娠36週の妊婦健康診査のため来院した。
- 身長155cm、体重65kg(非妊時50kg)。血圧160/90mmHg。子宮底長26cm。下腿に浮腫を認める。
- 尿所見:蛋白1+、糖(-)。超音波検査で胎児の推定体重は2,100gであり、2週前と変化はない。胎児の大横径は正常範囲であるが、腹囲は基準値より小さく羊水過少である。超音波ドプラ検査で胎児の脳への血流量の相対的増加を認める。
- この患者で誤っているのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [099G001]←[国試_099]→[099G003]
[★]
- 35歳の3回経産婦。妊娠35週。昨夜就寝中に軽度の性器出血を認め来院した。膀胱充満を確認後、腹部超音波検査を施行した,その下腹部正中矢状断写真を以下に示す。考えられるのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [096C030]←[国試_096]→[096D002]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [103G014]←[国試_103]→[103G016]
[★]
- 検査用の試験紙(別冊No. 2)を別に示す。この試験紙を用いて診断するのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [109B023]←[国試_109]→[109B025]
[★]
- 出生体重3,560 gの新生児。爪は長い。分娩時羊水量は少なく、臍帯と羊膜とは黄染していた。考えられるのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [095D001]←[国試_095]→[095D003]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [105B011]←[国試_105]→[105B013]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [105C001]←[国試_105]→[105C003]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [098G084]←[国試_098]→[098G086]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [095A115]←[国試_095]→[095A117]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [099E001]←[国試_099]→[099E003]
[★]
- a. (1)(2)(3)
- b. (1)(2)(5)
- c. (1)(4)(5)
- d. (2)(3)(4)
- e. (3)(4)(5)
[★]
- a. (1)(2)(3)
- b. (1)(2)(5)
- c. (1)(4)(5)
- d. (2)(3)(4)
- e. (3)(4)(5)
[★]
- 英
- early separation of placenta
- ラ
- abruptio placentae
- 同
- 胎盤早期剥離、子宮胎盤溢血 apoplexia uteri uteroplacental apoplexy
- 関
- 胎盤後血腫、
定義
- 正常位置すなわち子宮体部に付着している胎盤が、妊娠中または分娩経過中の胎児娩出以前に、子宮壁より剥離するもの(NGY)
病因
- 妊娠高血圧症候群、早期胎盤剥離の既往、切迫早産(前期破水)、外傷(交通事故など)(GUI)
- 妊娠高血圧症候群(常位胎盤早期剥離の50-70%に妊娠高血圧症が存在するとも(NGY))
- 早産例では絨毛膜羊膜炎(NGY)
- 外傷(交通事故、暴行(腹部打撲)、外回転術、臍帯、羊水穿刺) (NGY)(PRI)
- 急激な羊水腔圧の低下(羊水過多の破水時、双胎の第1児娩出後) (NGY)
リスクファクター(GUI)
- 常位胎盤早期剥離:10倍
- 母体の妊娠中期のAFP高値を示す妊婦:10倍
- 慢性高血圧:3.2倍
- 妊娠24週の子宮動脈血流波形にnotch がみられる症例:4.5倍
- 子宮内感染例:9.7倍
- 前期破水:(48時間未満)2.4倍、(48時間以上)9.9倍
疫学
- 発生率:総分娩数の約0.5-1.3% (NGY)。全妊娠の約0.5%(PRI)
- 胎児死亡やDICを合併する重症例:全妊娠の0.1-0.2%(PRI)
- 重症例の母体死亡率:約1-2%(NGY)(PRI)。
- 児の周産期死亡率:30-50% (NGY)、20-80%(PRI)
病態形成(PRI)
- 早期剥離は基底脱落膜の出血に始まり、形成された胎盤後血腫がこれに接する胎盤をさらに剥離・圧迫し、最終的には胎盤機能を障害する。剥離部位によって外出血をみる場合と,剥離した胎盤と子宮の間に血腫を形成し外出血をみない潜伏出血といわれる状態になる場合とがある。
- 胎盤の剥離は、子宮内出血と胎児環境の悪化を同時にもたらす。出血のために腹痛,子官内圧の上昇,子宮壁の硬化,そして外出血が起こる。胎児は低酸素症のために急速に胎児仮死に陥り,剥離の程度によっては救命処置を行う余裕のないまま子宮内胎児死亡に至る。子宮内圧の上昇のために子宮筋層内に血液が浸潤し,子宮胎盤溢血の状態となる。胎盤の剥離の進行とともに,トロンボプラスチンの豊富な繊毛成分が母体の静脈から大循環へと流入しDICを引き起こす。
症状
- 常位胎盤早期剥離は臨床症状の程度によって4群に分類され、重傷度により異なる(表)(GNY)
- 初発症状:急激な下腹痛、子宮壁の硬化(板状硬)、子宮収縮、外出血(PRI)
- 典型的には切迫早産様症状(性器出血,子宮収縮,下腹部痛)(GUI)
1. 下腹部痛(NGY)
- 急激に子宮底が上昇し,腹壁が強く緊張し(板状硬,子宮強直)、胎児部分の触知は困難となる。子宮体部、とくに胎盤の付着部位に圧痛を認める。
2. 性器出血(NGY)
- 前置胎盤と異なり外出血は比較的少量であり、陣痛間欠期に増量する。破水後であれば血性羊水を認めることがある。出血量が多い場合、母体は出血性ショックに陥り、血圧低下、頻脈、顔面蒼白などの症状を呈する。とくに内出血(胎盤後血腫)が多い症例では血腫内で凝固因子が消費され、また組織トロンボプラスチンが母体血中へ流入することにより母体にDICを発症するため予後はきわめて不良である。
軽症例(PRI)
- 下腹痛,満期に入る前に突然起こる陣痛が初発症状であることが多い。その場合、I期出血、破水しているときの血性羊水が特徴的な症状である。分娩は比較的急速に進行し、胎児心拍で胎児仮死徴候が明らかとなることが多い。
中等症例(PRI)
- 早期にはshockあるいはDICの臨床症状は呈さないが、処置が遅れると重症例に近い経過になる。
重症例(PRI)
- 発症直後に胎児死亡をきたし、大量の出血のために母体はshock状態となり、DICによる出血傾向が出現する。その場合,腹痛や外出血が著明であることがほとんどである。
診断
診断方針 (GUI)
- 妊娠後半期に切迫早産様症状(性器出血,子宮収縮,下腹部痛)と同時に異常胎児心拍パターンを認めた時は常位胎盤早期剥離を疑い以下の検査を行う。
- 超音波検査
- 血液検査(血小板,アンチトロンビン活性[以前のアンチトロンビンIII 活性],FDPあるいはD-dimer,フィブリノゲン,GOT,LDH など)
- 鑑別診断として前置胎盤,切迫早産を念頭に置く(NGY)。
外診
- 腹部は全体に緊満し、全体的に圧痛を認めるが胎盤剥離部位に一致して強い圧痛がある。子宮筋の緊張のために胎児部分の触知は困難である。内出血量が多い場合は子宮底の上昇が認められる(PRI)。
内診
- 外出血を認めることが多い。未破水で子営口が拡大している場合は、緊満した胎胞を触知する。既破水の場合は血性羊水の流出を認める(PRI)。
全身所見
- 出血の程度によって貧血症状を認める。外出血の程度に比べて重症感が強いのが特徴的である(PRI)。
分娩監視装置による胎児心拍陣痛図(CTG)の所見
- 胎盤剥離面積の程度に伴い、基線細変動の消失、遅発一過性徐脈、遷延性徐脈、sinusoidal pattern、児心音の消失を認める(NGY)(GUI)。子宮収縮曲線ではさざ波様の子宮収縮、過強陣痛を認めることがある(NGY)。
超音波断層法
- 胎盤の所見は剥離が起こってからの時間経過によって変化する。剥離直後は、胎盤後血腫を胎盤実質から区別することは困難で、胎盤実質の「肥厚・巨大化」という印象を受ける。やや時間が経過すると血腫部分のechogenicityが低下してecho free spaceとして描出され、胎盤と区別できる(PRI)。1週間以内には低輝度となる(GUI)。超音波での常位胎盤早期剥離の診断は感度24%、特異度96%であり(GUI)、超音波所見がなかったからといって常位胎盤早期剥離を否定できない。
- 胎児心拍動の有無を確認する。次に胎盤の肥厚像(5cm以上),胎盤後血腫の有無を確認する。中等症~重症では明らかなecho free spaceを認めるが、軽症では必ずしも血腫像を認めるとは限らない(NGY)。
検査所見
- Hb値の低下、DIC所見(血小板数の減少、出血・凝固時間の延長、PT-APTTの延長、フイブリノーゲンの低下、AT IIIの低下、FDPの上昇)が認められる(NGY)。特にFDP高値(D-dimer高値)、フィブリノゲン低値を伴いやすい(GUI)。
鑑別診断(PRI)
1. 前置胎盤
- 突発する外出血が特徴的である。腹痛はないことが多いが、子宮収縮に伴って出血が起こった場合には鑑別の必要が生じる。今日では、超音波断層検査によって前置胎盤の疑診は比較的容易である。発症前に前置胎盤の診断がなされていれば問題ないが、発症後に初めて超音波検査を行う場合、早期剥離例では胎盤の「肥厚・巨大化」所見のために、胎盤が内子宮口付近に存在しているように描出されることがあり、注意が必要である。
2. 子宮破裂
- 突発する下腹痛・外出血・ショック状態という点で共通する。外出血の割に重症感が強い点も同一である。子宮破裂の場合、発症からショック状態への進行がきわめて迅速であること、胎児の腹腔内への脱出が起こり、その結果胎児部分の触知が容易であることが鑑別点となる。消費性の凝固障害をきたすことが多いので、出血傾向の有無を鑑別診断に用いることは危険である。
治療
- 治療は(1)母胎状態の安定化、(2)子官内容の速やかな除去、(3)DICの予防・早期離脱が軸となる(PRI)(GUI)。
母胎状態の安定化(PRI)(GUI)
- 常位胎盤早期剥離と診断がついた時点で母体がショック・DICに陥っている場合は、母体の全身管理を優先とする。母体の全身状態が安定している場合はただちに児を急速遂娩する(NGY)(GUI)。
- 1. 直ちに血管確保を行い、輸液を開始し、大量の輸血の準備をする。
- 2. 血液検査として重要なのは、血算、出血時間、凝固時間(臨床的には活性化凝固時間が迅速に結果が出て有効である)、血沈、PT、 APTT、fibrinogen、FDP、ATIII、血液生化学などである。尿蛋白の有無を調べる。
- 3. 膀胱にカテーテルを留置し,時間尿量の測定を行う。
- 4. 出血量を評価し、必要量の輸血を行う。新鮮血が望ましいが、入手が困難な場合は濃厚赤血球でもよい。凝固系検査で凝固因子の低下が推測される場合は新鮮凍結血漿を追加する。
- 5. 輸液・輸血により母体のショック状態の改善を図り、 1時間最低限50mlの尿量を確保する。その際、過剰に急速な大量の輸液・輸血は肺水腫・心不全を引き起こす危険がある。中心静脈カテーテルを留置して,中心静脈圧を測定しながら輸液量を決めることが望ましい(中心静脈カテーテルの挿入部位は患者の状態によって決定されるべきである。出血傾向のある場合、鎖骨下からのアプローチは血腫形成の危険もあるので最善とは限らない。むしろ肘静脈からのアプローチのほうが安全である場合もある)。
- 6. 児が生存している場合は、分娩監視装置を装着し連続監視を行う。発症当初、胎児に問題が認められない例でも、急速に胎児の状態が悪化することがある。
- 7. 帝王切開術を行う必要が生じる場合が多いので,手術に耐える状態に安定させることが大切である。
分娩の時期・方法
- 常位胎盤早期剥離と診断された場合、母児の状況を考慮し、原則、急速遂娩を図る(GUI)。DICの進行は母体の生命予後にかかわるので待期治療の余地はない。児の胎外生活能の有無は考慮されない(PRI)。
- non-reassuring fatal statusのない例では、経腹分娩をめざしてもよい(PRI)。その場合は慎重に母体の凝固系的検査・胎児モニタリングを続け、DICの症状が進行する場合、non-reassuring fatal statusのある場合は急速遂娩を行う(PRI)(GIO)。経膣分娩が短時間で終了する見込みのない場合は(1)帝王切開術を施行するか、(2)人工破膜を行う(PRI)(GUI)。人工破膜は子宮内圧を低下させ、トロンボプラスチンや活性化凝固因子の大循環への流入低減、子宮収縮による剥離部位での出血量低減に効果が期待されているがその証明はなされていない(GUI)。
- 胎児死亡をきたしている例、DICに注意しながら積極経膣分娩もしくはDICに注意しながらの急遂分娩が推奨されている(GUI)
- 子宮が子宮胎盤溢血の状態にある例では、子宮筋が互いに離断され、子宮収縮による止血が不十分になるために胎児胎盤の娩出後に弛緩出血を起こしやすい。子宮収縮が不良で出血が持続する場合には子宮を摘出する。全身状態が子宮全摘術に耐えないと判断される場合は、腹上部切断術を選択することがある。
DICへの対処
- 母体にDICを認める場合は可及的速やかにDIC治療を開始する(GUI)。
- DIC徴候が認められる場合は、メシル酸ガバキサート(FOY)、ナフモスタット(FUTHAN)などを投与して凝固系・線洛系の抑制を図る。ATIIIの低下が認められるときはATIII製剤を投与する。子宮内容の除去が迅速に行われてDICの原因が取り除かれれば、 DICの諸徴候は急速に消失することが多い(PRI)。
分娩後の処置
- 分娩後はDICに伴う多臓器不全(特に肝腎機能障害、Sheehan症候群、手術部位の血腫形成、輸血後肝炎、術後感染症などに注意する。(PRI)
- 帝王切開時に胎盤付着部の子宮漿膜面が青紫色に変色していた場合(Couvelaire uterus)は子宮収縮が不良となりやすいため弛緩出血に十分注意する。難治性の弛緩出血に対してはPorro手術を行う(NGY)。
国試
[★]
- 英
- oligoamnios, oligohydramnios
- 同
- 羊水過少(臨床所見を認めないもの。臨床所見を認めるものが羊水過少症)
- 関
- 羊水
概念
原因
胎児合併症
母体合併症
治療
- 特にない
- 分娩時に臍帯圧迫などによる変動一過性徐脈が認められたら人口羊水の注入をすることがある。
参考
- 1. 〔よりよい妊娠管理を目指して(その1)〕羊水過多(症),羊水過少(症)の管理 - 日産婦誌51巻1号
- http://www.jsog.or.jp/PDF/51/5101-009.pdf
- http://www.jsog.or.jp/PDF/54/5403-039.pdf
国試
[★]
- 英
- preterm birth, preterm labor, preterm delivery
- premature birth, premature labor, premature delivery, premature obstetric labor
- ラ
- partus praematurus, partus praetemporarius
- 同
- 早期産
- 関
- 切迫早産。正期産、過期産
定義
- 妊娠22週以後(22月0日)から37週未満(36週6日)の分娩。
- 37週未満の分娩(WHO)
- 妊娠22-26週
疫学
- 早産は全分娩の6-7%ないし5-10%と言われている。
リスク
- 膣炎・頚管炎、多胎妊娠、子宮筋腫合併妊娠、子宮奇形、感染症(尿路感染、肺炎など)、羊水過多、抗リン脂質抗体症候群
原因
- QB.P-236 など
母胎側要因
胎児側要因
- 胎児ジストレス
- 高度の子宮内発育遅延
- その他重篤な胎児異常
予後
- 妊娠22週での出生では救命率が10%程度、妊娠30週であれば救命率95%。あくまでも目安。
[★]
- 英
- metreurysis
- 同
- 子宮口拡張法 hystereurysis、メトロイリンテル挿入法
- 関
- 陣痛誘発
- メトロイリンテル(子宮拡張器)と称するゴム製嚢を子宮腔内に挿入し、滅菌水で充満させ、子宮下部への機械的な刺激によって陣痛を誘発し、頚管を拡張する方法。
- 頚管が3-4cm開大している場合、ゴム製バルーン(メトロイリンテル、バルーンメトロなど)を経頚管的に子宮下部の卵膜下位に装着し、滅菌生食液を100-150ml程度注入して膨らます。子宮筋が進展される結果、子宮収縮が誘発される。(NGY.360)
- 禁忌:前置胎盤、前期破水
[★]
- 同
- プレタームPROM
- 関
- 前期破水 premature rupture of the membranes, premature rupture of membranes PROM
- 特に、妊娠37週未満の前期破水をpreterm PROM ← ちなみに、妊娠37週未満での出産は早産と定義される
[★]
- 英
- rupture of membrane, amniorrhexis, rupture of bag of waters
- ラ
- ruptura bursae aquarum
- 同
- 胎胞破裂 rupture of bag