- 英
- early separation of placenta
- ラ
- abruptio placentae
- 同
- 胎盤早期剥離、子宮胎盤溢血 apoplexia uteri uteroplacental apoplexy
- 関
- 胎盤後血腫、
定義
- 正常位置すなわち子宮体部に付着している胎盤が、妊娠中または分娩経過中の胎児娩出以前に、子宮壁より剥離するもの(NGY)
病因
- 妊娠高血圧症候群、早期胎盤剥離の既往、切迫早産(前期破水)、外傷(交通事故など)(GUI)
- 妊娠高血圧症候群(常位胎盤早期剥離の50-70%に妊娠高血圧症が存在するとも(NGY))
- 早産例では絨毛膜羊膜炎(NGY)
- 外傷(交通事故、暴行(腹部打撲)、外回転術、臍帯、羊水穿刺) (NGY)(PRI)
- 急激な羊水腔圧の低下(羊水過多の破水時、双胎の第1児娩出後) (NGY)
リスクファクター(GUI)
- 常位胎盤早期剥離:10倍
- 母体の妊娠中期のAFP高値を示す妊婦:10倍
- 慢性高血圧:3.2倍
- 妊娠24週の子宮動脈血流波形にnotch がみられる症例:4.5倍
- 子宮内感染例:9.7倍
- 前期破水:(48時間未満)2.4倍、(48時間以上)9.9倍
疫学
- 発生率:総分娩数の約0.5-1.3% (NGY)。全妊娠の約0.5%(PRI)
- 胎児死亡やDICを合併する重症例:全妊娠の0.1-0.2%(PRI)
- 重症例の母体死亡率:約1-2%(NGY)(PRI)。
- 児の周産期死亡率:30-50% (NGY)、20-80%(PRI)
病態形成(PRI)
- 早期剥離は基底脱落膜の出血に始まり、形成された胎盤後血腫がこれに接する胎盤をさらに剥離・圧迫し、最終的には胎盤機能を障害する。剥離部位によって外出血をみる場合と,剥離した胎盤と子宮の間に血腫を形成し外出血をみない潜伏出血といわれる状態になる場合とがある。
- 胎盤の剥離は、子宮内出血と胎児環境の悪化を同時にもたらす。出血のために腹痛,子官内圧の上昇,子宮壁の硬化,そして外出血が起こる。胎児は低酸素症のために急速に胎児仮死に陥り,剥離の程度によっては救命処置を行う余裕のないまま子宮内胎児死亡に至る。子宮内圧の上昇のために子宮筋層内に血液が浸潤し,子宮胎盤溢血の状態となる。胎盤の剥離の進行とともに,トロンボプラスチンの豊富な繊毛成分が母体の静脈から大循環へと流入しDICを引き起こす。
症状
- 常位胎盤早期剥離は臨床症状の程度によって4群に分類され、重傷度により異なる(表)(GNY)
- 初発症状:急激な下腹痛、子宮壁の硬化(板状硬)、子宮収縮、外出血(PRI)
- 典型的には切迫早産様症状(性器出血,子宮収縮,下腹部痛)(GUI)
1. 下腹部痛(NGY)
- 急激に子宮底が上昇し,腹壁が強く緊張し(板状硬,子宮強直)、胎児部分の触知は困難となる。子宮体部、とくに胎盤の付着部位に圧痛を認める。
2. 性器出血(NGY)
- 前置胎盤と異なり外出血は比較的少量であり、陣痛間欠期に増量する。破水後であれば血性羊水を認めることがある。出血量が多い場合、母体は出血性ショックに陥り、血圧低下、頻脈、顔面蒼白などの症状を呈する。とくに内出血(胎盤後血腫)が多い症例では血腫内で凝固因子が消費され、また組織トロンボプラスチンが母体血中へ流入することにより母体にDICを発症するため予後はきわめて不良である。
軽症例(PRI)
- 下腹痛,満期に入る前に突然起こる陣痛が初発症状であることが多い。その場合、I期出血、破水しているときの血性羊水が特徴的な症状である。分娩は比較的急速に進行し、胎児心拍で胎児仮死徴候が明らかとなることが多い。
中等症例(PRI)
- 早期にはshockあるいはDICの臨床症状は呈さないが、処置が遅れると重症例に近い経過になる。
重症例(PRI)
- 発症直後に胎児死亡をきたし、大量の出血のために母体はshock状態となり、DICによる出血傾向が出現する。その場合,腹痛や外出血が著明であることがほとんどである。
診断
診断方針 (GUI)
- 妊娠後半期に切迫早産様症状(性器出血,子宮収縮,下腹部痛)と同時に異常胎児心拍パターンを認めた時は常位胎盤早期剥離を疑い以下の検査を行う。
- 超音波検査
- 血液検査(血小板,アンチトロンビン活性[以前のアンチトロンビンIII 活性],FDPあるいはD-dimer,フィブリノゲン,GOT,LDH など)
- 鑑別診断として前置胎盤,切迫早産を念頭に置く(NGY)。
外診
- 腹部は全体に緊満し、全体的に圧痛を認めるが胎盤剥離部位に一致して強い圧痛がある。子宮筋の緊張のために胎児部分の触知は困難である。内出血量が多い場合は子宮底の上昇が認められる(PRI)。
内診
- 外出血を認めることが多い。未破水で子営口が拡大している場合は、緊満した胎胞を触知する。既破水の場合は血性羊水の流出を認める(PRI)。
全身所見
- 出血の程度によって貧血症状を認める。外出血の程度に比べて重症感が強いのが特徴的である(PRI)。
分娩監視装置による胎児心拍陣痛図(CTG)の所見
- 胎盤剥離面積の程度に伴い、基線細変動の消失、遅発一過性徐脈、遷延性徐脈、sinusoidal pattern、児心音の消失を認める(NGY)(GUI)。子宮収縮曲線ではさざ波様の子宮収縮、過強陣痛を認めることがある(NGY)。
超音波断層法
- 胎盤の所見は剥離が起こってからの時間経過によって変化する。剥離直後は、胎盤後血腫を胎盤実質から区別することは困難で、胎盤実質の「肥厚・巨大化」という印象を受ける。やや時間が経過すると血腫部分のechogenicityが低下してecho free spaceとして描出され、胎盤と区別できる(PRI)。1週間以内には低輝度となる(GUI)。超音波での常位胎盤早期剥離の診断は感度24%、特異度96%であり(GUI)、超音波所見がなかったからといって常位胎盤早期剥離を否定できない。
- 胎児心拍動の有無を確認する。次に胎盤の肥厚像(5cm以上),胎盤後血腫の有無を確認する。中等症~重症では明らかなecho free spaceを認めるが、軽症では必ずしも血腫像を認めるとは限らない(NGY)。
検査所見
- Hb値の低下、DIC所見(血小板数の減少、出血・凝固時間の延長、PT-APTTの延長、フイブリノーゲンの低下、AT IIIの低下、FDPの上昇)が認められる(NGY)。特にFDP高値(D-dimer高値)、フィブリノゲン低値を伴いやすい(GUI)。
鑑別診断(PRI)
1. 前置胎盤
- 突発する外出血が特徴的である。腹痛はないことが多いが、子宮収縮に伴って出血が起こった場合には鑑別の必要が生じる。今日では、超音波断層検査によって前置胎盤の疑診は比較的容易である。発症前に前置胎盤の診断がなされていれば問題ないが、発症後に初めて超音波検査を行う場合、早期剥離例では胎盤の「肥厚・巨大化」所見のために、胎盤が内子宮口付近に存在しているように描出されることがあり、注意が必要である。
2. 子宮破裂
- 突発する下腹痛・外出血・ショック状態という点で共通する。外出血の割に重症感が強い点も同一である。子宮破裂の場合、発症からショック状態への進行がきわめて迅速であること、胎児の腹腔内への脱出が起こり、その結果胎児部分の触知が容易であることが鑑別点となる。消費性の凝固障害をきたすことが多いので、出血傾向の有無を鑑別診断に用いることは危険である。
治療
- 治療は(1)母胎状態の安定化、(2)子官内容の速やかな除去、(3)DICの予防・早期離脱が軸となる(PRI)(GUI)。
母胎状態の安定化(PRI)(GUI)
- 常位胎盤早期剥離と診断がついた時点で母体がショック・DICに陥っている場合は、母体の全身管理を優先とする。母体の全身状態が安定している場合はただちに児を急速遂娩する(NGY)(GUI)。
- 1. 直ちに血管確保を行い、輸液を開始し、大量の輸血の準備をする。
- 2. 血液検査として重要なのは、血算、出血時間、凝固時間(臨床的には活性化凝固時間が迅速に結果が出て有効である)、血沈、PT、 APTT、fibrinogen、FDP、ATIII、血液生化学などである。尿蛋白の有無を調べる。
- 3. 膀胱にカテーテルを留置し,時間尿量の測定を行う。
- 4. 出血量を評価し、必要量の輸血を行う。新鮮血が望ましいが、入手が困難な場合は濃厚赤血球でもよい。凝固系検査で凝固因子の低下が推測される場合は新鮮凍結血漿を追加する。
- 5. 輸液・輸血により母体のショック状態の改善を図り、 1時間最低限50mlの尿量を確保する。その際、過剰に急速な大量の輸液・輸血は肺水腫・心不全を引き起こす危険がある。中心静脈カテーテルを留置して,中心静脈圧を測定しながら輸液量を決めることが望ましい(中心静脈カテーテルの挿入部位は患者の状態によって決定されるべきである。出血傾向のある場合、鎖骨下からのアプローチは血腫形成の危険もあるので最善とは限らない。むしろ肘静脈からのアプローチのほうが安全である場合もある)。
- 6. 児が生存している場合は、分娩監視装置を装着し連続監視を行う。発症当初、胎児に問題が認められない例でも、急速に胎児の状態が悪化することがある。
- 7. 帝王切開術を行う必要が生じる場合が多いので,手術に耐える状態に安定させることが大切である。
分娩の時期・方法
- 常位胎盤早期剥離と診断された場合、母児の状況を考慮し、原則、急速遂娩を図る(GUI)。DICの進行は母体の生命予後にかかわるので待期治療の余地はない。児の胎外生活能の有無は考慮されない(PRI)。
- non-reassuring fatal statusのない例では、経腹分娩をめざしてもよい(PRI)。その場合は慎重に母体の凝固系的検査・胎児モニタリングを続け、DICの症状が進行する場合、non-reassuring fatal statusのある場合は急速遂娩を行う(PRI)(GIO)。経膣分娩が短時間で終了する見込みのない場合は(1)帝王切開術を施行するか、(2)人工破膜を行う(PRI)(GUI)。人工破膜は子宮内圧を低下させ、トロンボプラスチンや活性化凝固因子の大循環への流入低減、子宮収縮による剥離部位での出血量低減に効果が期待されているがその証明はなされていない(GUI)。
- 胎児死亡をきたしている例、DICに注意しながら積極経膣分娩もしくはDICに注意しながらの急遂分娩が推奨されている(GUI)
- 子宮が子宮胎盤溢血の状態にある例では、子宮筋が互いに離断され、子宮収縮による止血が不十分になるために胎児胎盤の娩出後に弛緩出血を起こしやすい。子宮収縮が不良で出血が持続する場合には子宮を摘出する。全身状態が子宮全摘術に耐えないと判断される場合は、腹上部切断術を選択することがある。
DICへの対処
- 母体にDICを認める場合は可及的速やかにDIC治療を開始する(GUI)。
- DIC徴候が認められる場合は、メシル酸ガバキサート(FOY)、ナフモスタット(FUTHAN)などを投与して凝固系・線洛系の抑制を図る。ATIIIの低下が認められるときはATIII製剤を投与する。子宮内容の除去が迅速に行われてDICの原因が取り除かれれば、 DICの諸徴候は急速に消失することが多い(PRI)。
分娩後の処置
- 分娩後はDICに伴う多臓器不全(特に肝腎機能障害、Sheehan症候群、手術部位の血腫形成、輸血後肝炎、術後感染症などに注意する。(PRI)
- 帝王切開時に胎盤付着部の子宮漿膜面が青紫色に変色していた場合(Couvelaire uterus)は子宮収縮が不良となりやすいため弛緩出血に十分注意する。難治性の弛緩出血に対してはPorro手術を行う(NGY)。
国試
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常位胎盤早期剥離(じょういたいばんそうきはくり)とは、正常位置、即ち子宮体部に付着した胎盤が胎児娩出前に子宮壁から剥離する病態である。
目次
- 1 疫学
- 2 症状
- 3 検査
- 4 治療
- 5 参考文献
- 6 関連項目
- 7 外部リンク
疫学
- 全分娩の1%ほどに起こる。特に妊娠高血圧症候群の例に多い。
- 分娩を重ねるほど、高齢であるほど起こりやすい。
症状
- 妊娠高血圧症の既往
- 妊娠後期の持続性の下腹部痛
- 性器出血
- 胎動の減弱、消失
- ショック
- DIC
特に、DIC、弛緩出血の合併に注意する。
検査
- 外診
- 子宮底の上昇、緊張、膨大、圧痛
- 腹壁緊張し、胎児部分を触れにくい
- 内診
- 卵膜の緊張
- 超音波断層法
- 胎盤後血腫像
- 胎児ジストレス
治療
- ショックの治療
- 帝王切開術
- 但し、子宮口開大で児頭が骨盤腔内に存在するときは、吸引・鉗子分娩を行う。
参考文献
関連項目
外部リンク
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Japanese Journal
- P2-10-6 常位胎盤早期剥離を契機として判明した先天性低フィブリノーゲン血症の1例(Group84 合併症妊娠(症例)2,一般演題,第63回日本産科婦人科学会学術講演会)
- P1-25-29 超音波ドプラ法による子宮・胎児血流計測から常位胎盤早期剥離の発症は予測可能か(Group59 胎盤異常(症例),一般演題,第63回日本産科婦人科学会学術講演会)
- 永川 健太郎,吉里 俊幸,大竹 良子,小濱 大嗣,野尻 剛志,宮本 新吾
- 日本産科婦人科學會雜誌 63(2), 650, 2011-02-01
- NAID 110008509373
- P1-25-19 子宮内胎児死亡を来たした常位胎盤早期剥離の管理について : 最近経験した2症例から(Group58 HELLP・早産・胎盤異常(症例),一般演題,第63回日本産科婦人科学会学術講演会)
- 藤本 悦子,大下 孝史,大畠 清久,堀川 正城,小松 正明,赤木 武文
- 日本産科婦人科學會雜誌 63(2), 646, 2011-02-01
- NAID 110008509363
- P1-19-29 3Dパワードップラー超音波による子宮らせん動脈血流描出法の確立(Group41 妊娠・分娩・産褥の生理・病理9 常位胎盤早期剥離・超音波診断,一般演題,第63回日本産婦人科学会学術講演会)
- 成瀬 勝彦,重富 洋志,大野 木輝,吉澤 順子,野口 武俊,吉田 昭三,佐道 俊幸,小林 浩
- 日本産科婦人科學會雜誌 63(2), 593, 2011-02-01
- NAID 110008509205
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- 2008年5月3日 ... ここで常位胎盤早期剥離の基礎知識をおさらいしたいと思います。これについては 小児科医の私の解説より専門家である「ある産婦人科のひとりごと」氏の常位胎盤早期 剥離についてを読んでもらった方が遥かに良いのですが、ごく簡単に ...
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- 次の文を読み、4~6の問いに答えよ。
- 28歳の妊婦。今朝、突然の中等量性器出血と水様帯下とを認めて来院した。
- 現病歴 : 妊娠初期には特に異常はなかったが、妊娠24週3日に上記症状を呈した。下腹部痛はない。
- 既往歴 : 特記すべきことはない。
- 月経歴 : 初経13歳。周期は28日型、整。月経時随伴症状はない。
- 妊娠・分娩歴 : 1年前に妊娠7週で自然流産した。
- 現症 : 身長160cm、体重52kg。体温36.8℃。脈拍72/分、整。血圧122/70mmHg。子宮底は臍上2cm、軟、圧痛はない。膣鏡診で外子宮口の開大は認められないが、少量の淡血性の帯下が認められ、悪臭はない。超音波検査により胎児は頭位、胎児計測値は妊娠週数相当であり、羊水腔はほとんど消失している。
- 入院時検査所見:尿所見:蛋白(±)、糖(-)、ウロビリノゲン(±)、潜血1+。血液所見:赤血球394万、Hb11.2g/dl、Ht38%、白血球11,000、血小板22万。血清生化学所見:総蛋白6.9g/dl、アルブミン4.1g/dl、尿素窒素10mg/dl、クレアチニン0.7mg/dl、総ビリルビン0.6mg/dl、AST18単位(基準40以下)、ALT14単位(基準35以下)、Na136mEq/l、K4.2mEq/l、Cl102mEq/l、Ca8.8mg/dl。CRP0.3mg/dl(基準0.3以下)。経膣超音波写真と胎児心拍数陣痛図とを以下に示す。
[正答]
※国試ナビ4※ [097C003]←[国試_097]→[097C005]
[★]
- 日齢6の新生児。NICUに入院中である。常位胎盤早期剥離のため緊急帝王切開で出生した。在胎26週4日、出生体重750gであった。出生6分で気管挿管が行われ、10分後には開眼した。その後NICU入院となり、呼吸管理を受けている。入院後、経口胃管を挿入し、日齢1から少量のミルクを開始した。本日、ミルク注入前に胃内にミルクが残っており、腹部が軽度膨満していた。体温 36.7℃。心拍数 124/分、整。血圧 52/24mmHg。呼吸数 48/分。SpO2 99%(FIO2 0.25)。大泉門は平坦で、心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は軽度膨満があり、腸雑音は減弱している。四肢の運動があり、筋緊張に異常を認めない。胸腹部エックス線写真(臥位正面および左側臥位正面像)(別冊No. 26A、B)を別に示す。
- 考えられる疾患はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [114A055]←[国試_114]→[114A057]
[★]
- 38歳の初妊婦(1妊0産)。妊娠34週に激しい腹痛と性器出血のため救急車で搬入された。これまでの妊娠経過は順調であったが、妊娠33週の妊婦健康診査で両下腿の浮腫と尿蛋白、軽度の血圧上昇を指摘されていた。喫煙は、妊娠前は20本/日であったが、妊娠後は5本/日に減らしている。体温 36.9℃。心拍数 72/分、整。血圧 170/90mmHg。腹痛のため表情は苦悶様で、腹部は膨隆しており板状に硬く、圧痛を認める。腟鏡診で少量の性器出血を認め、内診で子宮口は閉鎖している。尿蛋白2+。超音波検査で子宮底部に存在する胎盤の著明な肥厚を認める。胎児心拍数陣痛図で基線細変動の減少と遅発一過性徐脈を認める。
- 最も考えられるのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [114E027]←[国試_114]→[114E029]
[★]
- 31歳の初産婦。妊娠33週2日。切迫早産と診断され妊娠28週から入院中である。「数時間前から少しずつおなかが痛くなってきて、赤ちゃんの動きが少ない」との訴えがあり診察した。腟鏡診で分泌物は褐色少量。内診で子宮口は閉鎖している。胎児心拍数陣痛図で頻回の子宮収縮と遅発一過性徐脈を認め、胎児機能不全と診断し緊急帝王切開を行った。帝王切開時、羊水は血性で胎盤母体面に凝血塊を伴っていた。児娩出後の子宮の写真(別冊No. 9)を別に示す。
- 胎児機能不全の原因として最も考えられるのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [109I040]←[国試_109]→[109I042]
[★]
- 35歳の経産婦(3妊2産)。妊娠33週に周産期管理目的で、自宅近くの産科診療所から紹介され受診した。既往歴は、30歳時および32歳時に、それぞれ骨盤位および既往帝王切開の適応で選択的帝王切開。身長 156cm、体重 56kg(妊娠前体重 48kg)。体温 36.8℃。脈拍 84/分、整。血圧 108/76mmHg。現時点で自覚症状はなく、胎児心拍数陣痛図で異常を認めない。骨盤MRIのT2強調像(別冊No. 31)を別に示す。
- 考えられるのはどれか。2つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [113A070]←[国試_113]→[113A072]
[★]
- 36歳の2回経妊1回経産婦。妊娠39週5日。陣痛発来のため入院した。妊娠経過は順調であった。入院直後の内診では、分泌物は血性少量で子宮口は3cm開大していた。1時間後、突然の気分不快と持続性の腹痛とが出現した。その時の腹部超音波像(別冊No.7A)と胎児心拍数陣痛図(別冊No.7B)とを別に示す。
- 最も考えられるのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [107I041]←[国試_107]→[107I043]
[★]
- 30歳の2回経産婦。分娩は2回とも児頭骨盤不均衡(CPD)のため帝王切開を受けた。妊娠30週3日で少量の性器出血があり、近医から紹介され入院した。内診所見では子宮口未開大。超音波断層検査では胎児の推定体重は1,500gである。入院直後の胎児心拍陣痛図とMRIとを以下に示す。考えられるのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [099H002]←[国試_099]→[099H004]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [104B043]←[国試_104]→[104B045]
[★]
- 30歳の女性。0経妊。妊娠を希望し、相談のため来院した。飲酒の習慣はないが、1日に15~20本の喫煙を10年間続けている。家族歴と既往歴とに特記すべきことはない。この女性の妊娠で発生のリスクが高いのはどれか。
- a. (1)(2)(3)
- b. (1)(2)(5)
- c. (1)(4)(5)
- d. (2)(3)(4)
- e. (3)(4)(5)
[正答]
※国試ナビ4※ [096I004]←[国試_096]→[096I006]
[★]
- 28歳の2回経産婦。妊娠35週。交通事故による腹部打撲のため搬入された。意識は清明。体温37.2℃。脈拍92/分、整。血圧120/80mmHg。胎児心拍数90bpm。痛みを伴う持続的な子宮収縮と性器出血とを認める。
- 最も考えられるのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [103I077]←[国試_103]→[103I079]
[★]
- a. (1)(2)(3)
- b. (1)(2)(5)
- c. (1)(4)(5)
- d. (2)(3)(4)
- e. (3)(4)(5)
[正答]
※国試ナビ4※ [097B009]←[国試_097]→[097B011]
[★]
- 周産期異常と発症時期の組合せで正しいのはどれか。 2つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [105D016]←[国試_105]→[105D018]
[★]
- 胎児心拍数陣痛図を以下に示す。心拍数陣痛パターンと最も関係するのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [102G011]←[国試_102]→[102G013]
[★]
- 未感作Rh(D)陰性妊婦に分娩後抗Rh(D)ヒトガンマグロブリン投与を考慮しなくてもよいのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [096H001]←[国試_096]→[096H003]
[★]
- 娩出された胎盤の肉眼的観察が診断に重要でないのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [106B013]←[国試_106]→[106B015]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [095A115]←[国試_095]→[095A117]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [112B023]←[国試_112]→[112B025]
[★]
[正答]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [107H038]←[国試_107]→[107I002]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [097G109]←[国試_097]→[097G111]
[★]
- 英
- lower abdominal pain
- 関
- 下腹痛。腹痛
診療エッセンシャルズ.271 改変
産婦人科疾患
- NGY.138
急性かつ重篤な下腹痛
中等度の下腹痛
- 1. 鎖陰
- 2. 卵巣嚢腫破裂
- 3. 子宮内膜症
- 4. 月経困難症
- 5. 子宮筋腫
- 6. 急性付属器炎、子宮内膜炎:子宮内膜炎は子宮内操作や流産後などに起こり、ほとんどが上行性感染と考えられ、発熱や不正出血などの随伴症状を伴うことが多い。卵管に炎症が波及し付属器炎になると下腹痛も増悪し、骨盤腹膜炎を来すことがある。起因菌はクラミジアの頻度が増加している。(参考1)
- 7. 流産
産婦人科の下腹部痛の鑑別疾患
- 参考1
病みえ産婦人科
- 引用p.212
妊娠の有無による鑑別
参考
- 1. (12)日本産婦人科医会研修プログラム;痛みの診断と治療
3)急性腹症,がん性疼痛への対応 - 日産婦誌58巻9号
- http://www.jsog.or.jp/PDF/58/5809-395.pdf
[★]
- 英
- oligoamnios, oligohydramnios
- 同
- 羊水過少(臨床所見を認めないもの。臨床所見を認めるものが羊水過少症)
- 関
- 羊水
概念
原因
胎児合併症
母体合併症
治療
- 特にない
- 分娩時に臍帯圧迫などによる変動一過性徐脈が認められたら人口羊水の注入をすることがある。
参考
- 1. 〔よりよい妊娠管理を目指して(その1)〕羊水過多(症),羊水過少(症)の管理 - 日産婦誌51巻1号
- http://www.jsog.or.jp/PDF/51/5101-009.pdf
- http://www.jsog.or.jp/PDF/54/5403-039.pdf
国試
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- 英
- obstetrical shock, obstetric shock
- ラ
- shock obstetricus
- 同
- 分娩時ショック
- 関
- ショック
分類
- G10M.274改変 QB.P316
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- 英
- preterm birth, preterm labor, preterm delivery
- premature birth, premature labor, premature delivery, premature obstetric labor
- ラ
- partus praematurus, partus praetemporarius
- 同
- 早期産
- 関
- 切迫早産。正期産、過期産
定義
- 妊娠22週以後(22月0日)から37週未満(36週6日)の分娩。
- 37週未満の分娩(WHO)
- 妊娠22-26週
疫学
- 早産は全分娩の6-7%ないし5-10%と言われている。
リスク
- 膣炎・頚管炎、多胎妊娠、子宮筋腫合併妊娠、子宮奇形、感染症(尿路感染、肺炎など)、羊水過多、抗リン脂質抗体症候群
原因
- QB.P-236 など
母胎側要因
胎児側要因
- 胎児ジストレス
- 高度の子宮内発育遅延
- その他重篤な胎児異常
予後
- 妊娠22週での出生では救命率が10%程度、妊娠30週であれば救命率95%。あくまでも目安。
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- 英
- placenta (Z)
発生
- G10M.30 NGY.287
- 妊娠7週から形成が始まり、妊娠4ヶ月末(妊娠15週末,妊娠前期末)に完成。妊娠10ヶ月末まで増大し続ける。
解剖
- NGY.287
- 正期産では500g、直径20cm、厚さは中央部で2cmの扁平な円盤状構造物である。
Henry Gray (1825-1861). Anatomy of the Human Body. 1918.
機能
ガス・物質交換と代謝
単純核酸
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酸素、二酸化炭素、遊離脂肪酸、脂溶性ビタミン、ナトリウム、カリウム、尿素、尿酸、薬剤の大部分、麻酔学
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促進拡散
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グルコース。GLUT1とGLUT3による
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能動輸送
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アミノ酸、水溶性ビタミン、カルシウム、リン酸塩、鉄、ヨード
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エンドサイトーシス
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IgG, LDLコレステロール
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薬物・毒物・感染性物質の胎盤通過性
- 脂溶性・非イオン性薬剤、分子量≧600、非抱合型ステロイドホルモン、脂質
- 水溶性・イオン性薬剤、分子量<1000、血清蛋白結合能の強い薬剤、ポリペプチドホルモン、抱合型ステロイドホルモン
ホルモン産生
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- 英
- early stage、early、preterm
- 関
- 初期、早産、早く
[★]
- 英
- detachment, ablation
- 関
- 表皮剥離、表皮剥脱