- 英
- autoimmune hepatitis AIHA, AIH
- 関
- 類狼瘡肝炎(ルポイド肝炎)、難病
まとめ
- 中年の女性に好発する慢性経過の肝炎であり、自己免疫機序が関与していると考えられる。HLA-DR4陽性例に多いといわれている。診断は除外診断であり、ウイルス性肝炎や原発性胆汁性肝硬変などをを除外する。
概念
疫学
- 男女比=1:7で女性に多く、発症は10-30歳での発症もみられるが、多くは40歳以降。
病型
病型と病態
- LAB.894
- II型は抗LKM-1抗体の存在で特徴づけられる
- IIa型は女性に多く、高力価を示し、肝硬変への進展が早い
- IIb型は中年男性に多く、力価はそれほど高くない
病態生理
- 自己免疫機序により肝細胞が障害されるらしいが、詳細は不明である。
病理
症状
- 自覚症状に乏しく、血液検査で偶然発見される
- 肝障害:黄疸、全身倦怠感、食欲不振。重症例では腹水、肝性脳症、肝不全。
検査
- AST, ALT:高値
- γ-グロブリン:高値(2g/dl以上)
- 免疫グロブリンG:高値(2g/dl以上)
- ウイルスマーカー:陰性 (除外診断)
- 抗核抗体:I型で陽性
- 抗平滑筋抗体:I,IV型で陽性
- 抗LKM-1抗体:II型で陽性
- 抗SLA抗体:III型で陽性
- 肝生検:piecemeal necrosisの所見をもつ慢性肝炎の像
診断基準
- 参考3
診断
- 病歴により、アルコール性肝炎、薬物性肝障害、超音波検査にて脂肪肝を除外。
- 免疫血清学検査を行いウイルス性肝炎を除外。自己抗体や免疫グロブリンの変動、サブタイプの変動をみて絞り込み、病理組織学検査で確定診断する。
鑑別疾患
治療
- 副腎皮質ステロイドが著効する
- ステロイド:十分量の後、維持量を継続する
- ウルソデオキシコール酸:ステロイドの減量に有効。また、軽症例での経過観察に用いられる(IMD)。
- 免疫抑制薬:(ステロイド抵抗性例に対して)アザチオプリン
- インターフェロンは自己免疫を賦活化させる方向に作用するので不適
合併症
肝癌:ウイルス性肝炎よりも発癌リスクが少なく、肝細胞癌のリスクへの影響はあるとはいえない。
- 自己免疫疾患:ウイルス肝炎でもありうるが、自己免疫性肝炎の方がより高頻度で起こる(ウイルス性肝炎(22%)vs自己免疫性肝炎(38%)(参考1))
参考
- 1. [charged] Extrahepatic manifestations of autoimmune hepatitis - uptodate [1]
- 2. 自己免疫性肝炎 - 難病情報センター
- http://www.nanbyou.or.jp/entry/268
- http://jpma-nanbyou.com/Category.aspx?view=c&oid=10&sid=3&kid=1
- http://www8.ocn.ne.jp/~halfboil/criteria/tab-b5.html
Wikipedia preview
出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2016/07/26 01:03:18」(JST)
[Wiki ja表示]
自己免疫性肝炎 |
分類および外部参照情報 |
ICD-10 |
K75.4 |
ICD-9 |
571.42 |
DiseasesDB |
1150 |
MedlinePlus |
000245 |
eMedicine |
med/366 |
MeSH |
D019693 |
自己免疫性肝炎(じこめんえきせいかんえん、英Autoimmune hepatitis:AIH)とは、免疫システムの異常により、肝臓に傷害が起こる自己免疫性疾患の一つ。
目次
- 1 疫学
- 2 検査
- 3 病理
- 4 診断
- 5 分類
- 6 治療
- 7 関連項目
- 8 外部リンク
疫学
中年以上の女性に多く好発する。
検査
血液検査にて以下を呈していく。
- 血清トランスアミナーゼ(AST・ALT)が高値を示す
- IgG高値を示す
- 主に以下の5つの自己抗体が高値を示す
- 抗核抗体(anti nuclear antibody:ANA)
- 抗平滑筋抗体(anti smooth muscle antibody:SMA)
- 肝腎ミクロソーム抗体1型(liver kidney microsome antibody type 1:LKM-1)
- 肝可溶性抗原抗体(soluble liver antigen antibody:SLA)
- 他にも肝サイトゾル抗体1型(liver cytosol antibody type 1:LC-1)等が高値を示す
病理
肝生検を行うことで以下の病理所見が特徴的とされている。
- 門脈域に高度のリンパ球・形質細胞の浸潤
- 段階的肝細胞の破壊(piecemeal necrosis)
診断
基本的に、国際自己免疫性肝炎グループ(International Autoimmune Hepatitis Group:IAIHG)から出されている診断基準が広く用いられている。
- Simplified Criteria for the Diagnosis of Autoimmune Hepatitis(2008年)
項目 |
基準 |
点数 |
抗核抗体(ANA) or 抗平滑筋抗体(SMA)
抗核抗体(ANA) or 抗平滑筋抗体(SMA)
肝腎マイクロゾーム抗体(LKM)
SLA抗体(SLA) |
40倍以上
80倍以上
40倍以上
陽性 |
1点
2点
2点
2点 |
IgG |
>正常上限
>1.1倍 |
1点
2点 |
肝生検 |
適応像
典型像 |
1点
2点 |
ウイルス性肝炎が存在しない |
(+) |
2点 |
6点以上:疑診(probable AIH) 7点以上:確診(definite AIH)
分類
以前は、自己抗体の検出パターンによって以下の4つの分類が用いられていた。
- 1型:抗核抗体(ANA)
- 2型:抗平滑筋抗体(SMA)
- 3型:肝腎ミクロソーム抗体1型(LKM-1)
- 4型:肝可溶性抗原抗体(SLA)
最近では以下が用いられている。
- 自己抗体として、ANA・SMA・SLA等が陽性
- 自己抗体として、LKM-1・LC-1等が陽性 小児・若年者に多く重症型を呈する場合が多い
治療
ステロイド・免疫抑制剤投与を行う。
基本的にアメリカ肝臓学会(American Association for the Study of Liver Diseases:AASLD)作成の治療ガイドラインが広く用いられている。
関連項目
外部リンク
- 肝炎情報センター
- 大平弘正:本邦における自己免疫性肝炎の現状と課題 肝臓 Vol.56 (2015) No.5 p.167-178
UpToDate Contents
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Japanese Journal
- 原発性胆汁性肝硬変 : 自己免疫性肝炎オーバーラップ症候群の診断・治療における最新の知見 (特集 自己免疫性肝胆膵疾患 : 最近の知見) -- (自己免疫性肝胆道疾患における最近の知見)
- 自己免疫性肝炎の診断・治療における最近の知見 (特集 自己免疫性肝胆膵疾患 : 最近の知見) -- (自己免疫性肝胆道疾患における最近の知見)
- 自己免疫性肝炎・原発性胆汁性肝硬変・硬化性胆管炎(IgG4関連硬化性胆管炎を含む)の病理診断における最新の知見 (特集 自己免疫性肝胆膵疾患 : 最近の知見) -- (自己免疫性肝胆道疾患における最近の知見)
- 症例報告 プレドニゾロン投与中にニューモシスチス肺炎を発症した自己免疫性肝炎の1例
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★リンクテーブル★
[★]
- 58歳の女性。健康診断で異常を指摘されたため来院した。自覚症状はない。飲酒歴はない。輸血歴はない。身長 152cm、体重 72kg。血圧 152/84mmHg。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。神経診察で異常を認めない。血液所見:赤血球 385万、Hb 12.5g/dL、Ht 38%、白血球 4,900、血小板 18万。血液生化学所見:アルブミン 4.4g/dL、総ビリルビン 1.1mg/dL、直接ビリルビン 0.8mg/dL、AST 78U/L、ALT92 U/L、LD 293U/L(基準 120~245)、ALP 347U/L(基準 115~359)、γ-GT 94U/L(基準 8~50)、アミラーゼ 79U/L(基準 37~160)、尿素窒素 18mg/dL、クレアチニン 0.9mg/dL、尿酸 6.9mg/dL、血糖 158mg/dL、HbA1c 7.6%(基準 4.6~6.2)、総コレステロール 216mg/dL、トリグリセリド 190mg/dL、Na 139mEq/L、K4.4mEq/L、Cl 103mEq/L。免疫血清学所見:HBs抗原 陰性、HCV抗体 陰性、抗核抗体 陰性、抗ミトコンドリア抗体 陰性。
- 肝障害の原因として、最も考えられるのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [114A060]←[国試_114]→[114A062]
[★]
- 35歳の女性。職場の健康診断で肝機能検査の異常を指摘されて来院した。自覚症状はない。昨年も同様の指摘をされたがそのままにしていた。飲酒は機会飲酒。常用薬はなく、自然食品やサプリメントも服用していない。身長 163cm、体重 56kg。体温 36.3℃。脈拍 56/分、整。血圧 116/62mmHg。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。圧痛を認めない。下肢に浮腫を認めない。血液所見:赤血球 325万、Hb 12.0g/dL、Ht 32%、白血球 5,300、血小板 27万、PT-INR 1.0(基準 0.9~1.1)。血液生化学所見:総蛋白 7.0g/dL、アルブミン 4.3g/dL、総ビリルビン 0.7mg/dL、AST 36U/L、ALT 42U/L、ALP 852U/L(基準 115~359)、γ-GTP 542U/L(基準 8~50)、空腹時血糖 85mg/dL、HbA1c 5.4%(基準 4.6~6.2)、総コレステロール 254mg/dL、トリグリセリド 95mg/dL。HBs抗原陰性、HCV抗体陰性。
- 考えられるのはどれか。2つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [112A067]←[国試_112]→[112A069]
[★]
- 70歳の女性。自宅近くの診療所で初めて受けた血液検査で異常を指摘され来院した。飲酒歴はない。輸血歴はない。常用薬はない。意識は清明。身長158cm、体重74kg.腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。血液所見:赤血球 310万、Hb 10.9g/dl、Ht 31%、白血球 4,200、血小板 9.7万、PT 68%(基準80-120)、血液生化学所見:HbA1c 6.8%(基準4.3-5.8)、アルブミン 3.3g/dl、IgG 2,614mg/dl(基準739-1,649)、IgM 82mg/dl(基準46-260)、総コレステロール 122mg/dl、トリグリセリド 140mg/dl、AST 84IU/l、ALT 98IU/l、γ-GTP 62IU/l(基準8-50)。免疫学所見: HBs抗原、HBs抗体陰性、HBc抗体陰性、HCV抗体陰性、抗核抗体陰性、抗ミトコンドリア抗体陰性。腹部超音波検査で肝表面の凹凸不整、肝腎コントラストの明瞭化および軽度の脾腫を認める。
- 最も考えられるのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [105I045]←[国試_105]→[105I047]
[★]
- 40歳の女性。皮疹と全身倦怠感とを主訴に来院した。3か月前から顔面、両肘および両手に皮疹が出現した。2週前から四肢の脱力、筋肉痛および全身倦怠感を認めた。意識は清明。身長158cm、体重52kg。体温37.2℃。脈拍72/分、整。血圧120/84mmHg。呼吸数28/分。赤沈38mm/1時間。血液所見:赤血球420万、Hb 11.5g/dl、Ht 40%、白血球4,700、血小板28万。血液生化学所見:CK1,404IU/l(基準30~140)。免疫学所見:CRP 0.4mg/dl、抗核抗体80倍(基準20以下)。顔面と手の写真(別冊No.24A、B)を別に示す。
- この疾患で注意すべき合併症はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [107I070]←[国試_107]→[107I072]
[★]
- 41歳の女性。3か月前から皮膚掻痒感があり来院した。2年前に人間ドックで肝障害を指摘されたことがある。身長152cm、体重51kg。血清生化学所見:総蛋白8.3g/dl、トリグリセライド130mg/dl(基準50~130)、AST78単位(基準40以下)、ALT94単位(基準35以下)、アルカリホスファターゼ(ALP)724単位(基準260以下)、γ-GTP340単位(基準8~50)、IgA350mg/dl(基準110~410)、IgG1,850mg/dl(基準960~1,960)、IgM525mg/dl(基準65~350)、免疫学所見:HBs抗原陰性、HCV抗体陰性、抗核抗体陰性。考えられる疾患はどれか。2つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [098B013]←[国試_098]→[098B015]
[★]
- 36歳の女性。両足の皮疹を主訴に来院した。病変部からの細菌・真菌培養は陰性である。
- 右足の写真を以下に示す。
- この疾患と関連の深いのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [096D006]←[国試_096]→[096D008]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [099D068]←[国試_099]→[099D070]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [098H035]←[国試_098]→[098H037]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [111I009]←[国試_111]→[111I011]
[★]
[★]
- 英
- primary biliary cholangitis
- 同
- 原発性胆汁性肝硬変
- first aid step1 2006 p.280
- 2009/7/16 III 消化器
まとめ
- 肝内の小葉間胆管が組織的に慢性非可能性破壊性胆管炎により障害され、肝内に胆汁うっ滞をきたしてうっ血性肝障害を起こす疾患である。発症は中年以降の女性に好発する。またHLA-DR8と関連があるらしい。初期症状は皮膚掻痒感であり、黄疸を示さない無症候性PBCがほとんどである。疾患の進行により、黄疸、全身倦怠感が出現、やがて肝硬変、さらに非代償性の肝硬変に陥り、腹水、門脈圧亢進症などを呈する。病理学的には慢性非化膿性破壊性胆管炎が特徴的であり、門脈域周囲にリンパ球の浸潤、非乾酪性壊死を認める。血清学的には抗ミトコンドリア抗体(M2抗体)が疾患特異的に出現し、抗平滑筋抗体も50%弱の症例で陽性となり、またIgMの上昇が認められる。その他血液検査は胆汁うっ滞による肝障害に特徴的な異常がみられる。合併症として、シェーグレン症候群が多く、関節リウマチ、橋本甲状腺炎、強皮症(あるいはCREST症候群)の合併もありうる。治療は対症療法的にウルソデオキシコール酸、ベサフィブラートを用い、肝障害が末期的になれば肝移植の適応となる。
概念
- 特定疾患治療研究対象疾患
- 肝内の中等大小葉間胆管ないし隔壁胆管が障害される原因不明の慢性肝内胆汁うっ滞症。
- 慢性非化膿性破壊性胆管炎(CNSDC)による慢性の肝内胆汁うっ滞を来す疾患(YN.)。
- 初発症状は皮膚掻痒感。
- 末期になると肝硬変像を示す。 → 門脈圧亢進症
- 血清学的には抗ミトコンドリア抗体(IgM)が特徴的だが、胆管障害機序は不明。 → 自己免疫機序?
- 胆汁うっ滞に基づく症状を呈さないPBCを無症候性PBC、症状を呈すものを症候性PBCという。
疫学
- 発症年齢は40から60歳代に集中。約90%は女性。 → 中年以降の女性に好発
YN.
- 有病率:3-4人/10万人。欧米より低いと推定されている。
- 40-60歳の女性。女性が90%
病型と症状
- 初発症状:皮膚掻痒が最も多い。門脈圧亢進症に基く消化管出血が初発症状の場合がある。
- 無症候性PBC:皮膚掻痒感、黄疸など症状を欠く。新規症例の2!3
- 症候性PBC-S1:倦怠感、掻痒感
- 症候性PBC-S2:非代償性。黄疸,腹水
病理
[show details]
病理所見
- 胆管上皮の増殖性変化,胆管上皮細胞の壊死, 胞体の腫大や好酸性変化
- 基底膜の破壊、核の非偏在化、核の重層化、門脈域にリンパ球、形質細胞が浸潤
- 門脈域主体の炎症細胞浸潤
- 小葉内胆管の障害像
- 非乾酪性類上皮肉芽腫
- 好酸球
病態
- 自己免疫機序によると思われる胆管の傷害 → 胆汁うっ滞 → 肝細胞傷害および線維化 → 門脈圧亢進症 → 肝硬変
- 肝内の中等大小葉間胆管ないし隔壁胆管が障害されることによる肝内性胆汁うっ滞 ← これは「肝内胆管が拡張しない」ことの説明になるの?(QB.B-339)
症状(YN., HIM.chapter 302)
- 初発症状:皮膚掻痒感(診断された症例の50%に見られる)、皮膚黄色腫
- 疲労感:肝臓の状態や年齢にそぐわないようなひどい疲労感
- 黄疸
身体所見
- 門脈圧亢進症に基づく症状:肝腫大、脾腫大、腹水、浮腫
- 原発性胆汁性肝硬変に特有:色素沈着(皮膚を掻爬するため)、黄色腫・眼瞼周囲の黄色腫(高脂血症による)
合併症
- YN.
検査(YN.)
血液一般
- 赤血球、白血球、血小板:減少 → 門脈圧亢進症による脾腫が原因
生化学 - 脂質
生化学 - 銅
- 血清Cu:上昇、尿中Cu:上昇、肝組織内銅含有量:上昇
- 血清セルロプラスミン:上昇
肝障害
胆汁
- 胆汁うっ滞の所見が特徴的。ただし総ビリルピンの上昇は末期
免疫血清学
- 抗ミトコンドリア抗体(AMA):陽性。臓器特異性はない ← 90%の患者で陽性。PBCに特異的。
- M2抗体:PBCに特異的。 AMA陰性患者でもほとんどの場合M2抗体が陽性。
- M2の主要対応抗原はミトコンドリア内膜のpyruvate dehydrogenase (PDH) E2 component。
- 抗PDH抗体:陽性。抗PDH-E2抗体と反応する分子がPBCの胆管上皮に高濃度に存在。
- IgM:上昇:70%の症例 ← PBCではIgM産生能が高まったB細胞が末梢血中に存在する。PBCの発症機序との関連が示唆されている。(参考3)
- ANA、抗平滑筋抗体は50%の症例で陽性
- AMA陽性 + ANA陽性 = オーバーパップ症候群
AMAのターゲット(HIM.chapter.302)
- これらの抗原に対する自己抗体は病態形成には関与していないが、疾患のマーカーとなる。
- pyruvate dehydrogenase complex
- branched chain-2-oxoacid dehydrogenase complex
- 2-oxogluterate dehydrogenase complex
超音波検査・CT・MRI
診断
- 臨床症状、血清学的検査、エコー、CTで疑い、肝生検による組織診で確定診断する。
- ALP、γ-GTP → エコーで胆道閉塞性疾患を否定 → AMA、IgM検査 → 肝生検
- AMA陰性の場合は肝生検が決め手
参考2より抜粋
- 次のいずれか1つに該当するものをPBCと診断する。
- 1. 組織学的にCNSDCを認め,検査所見がPBCとして矛盾しないもの。
- 2. AMAが陽性で,組織学的にはCNSDCの所見を認めないが,PBCに矛盾しない組織像を示すもの。
- 3. 組織学的検索の機会はないが,AMAが陽性で,しかも臨床像及び経過からPBCと考えられるもの。
鑑別診断
- 1期: florid duct lesion - 無症候性
- 慢性非化膿性破壊性胆管炎(CNSDC)といわれる所見、すなわち、胆管上皮細胞の変性、壊死、脱落と、胆管周囲へのリンパ球、形質細胞の浸潤。
- 2期: ductular prliferation - 無症候性
- 細胆管の増生と門脈域より肝実質へのリンパ球浸潤。
- 架橋壊死と線維性隔壁を伴った瘢痕。
- 肝硬変
予後
- 黄疸が出現したら肝臓の予後は不良 → つまり進行性
- 無症候性PBCの予後はおおむね良好、15-20年間経過観察された無症候性PBCの約10%が症候性PBC(黄疸あり)へ移行
- 症候性PBCの5年生存率は約40%、総ビリルビン>2.0mg/mlで数年以内に腹水貯留などの肝不全の徴候があらわれてくることが多い
冶瞭
- UDCA(ウルソデオキシコール酸)、ベサフィブラート、肝移植(scheuer stage IV)
薬物療法
- ウルソデオキシコール酸:胆汁排泄を促進して胆道系酵素を低下させる。 → 病態の進行を遅らせるだけに過ぎない
臓器移植
- 進行例に対して肝移植を施行
- 肝移植: 1年生存率 75-90%、 5年生存率 75-85%
- 再発は20-30%(確診), 28-90%(compartible)
禁忌
- ステロイド:骨粗鬆症の増悪を招くため! → 自己免疫性肝炎ではステロイドを使用(よく反応するらしい)。 PBCに対するステロイド療法は症状緩和のみで根治できず、長期投与が必要になるということか???
合併症
鑑別診断
他疾患との比較
PBCとPSCの比較
Table 16-7. Main Features of Primary Biliary Cirrhosis and Primary Sclerosing Cholangitis
|
Parameter
|
primary biliary cirrhosis
|
primary sclerosing cholangitis
|
Age
|
Median age 50 years (30-70)
|
Median age 30 years
|
Gender
|
90% female
|
70% male
|
Clinical course
|
Progressive
|
Unpredictable but progressive
|
Associated conditions
|
Sjogren syndrome (70%)
|
inflammatory bowel disease (70%)
|
scleroderma (5%)
|
pancreatitis (≦25%)
|
thyroid disease (20%)
|
idiopathic fibrosing disease (retroperitoneal fibrosis)
|
Serology
|
95% AMA positive
|
0% to 5% AMA positive (low titer)
|
20% ANA positive
|
6% ANA positive
|
60% ANCA positive
|
82% ANCA positive
|
Radiology
|
normal
|
strictures and beading of large bile ducts; pruning of smaller ducts
|
duct lesion
|
florid duct lesion; loss of small ducts
|
concentric periductal fibrosis; loss of small ducts
|
自己免疫性肝炎と原発性胆汁性肝硬変
症例
- 52歳女性。3ヶ月前から皮膚の掻痒感と軽度の黄疸が出現したため来院した。抗ミトコンドリア抗体が陽性である。
参考
- http://www.nanbyou.or.jp/sikkan/029_i.htm
- http://www.nanbyou.or.jp/pdf/029_s.pdf
- 3. [charged] Pathogenesis of primary biliary cirrhosis - uptodate [2]
国試
[★]
- 英
- cirrhosis of liver (M), liver cirrhosis LC, cirrhosis
- 関
- 肝臓
定義
(アトラス肝臓病 金原出版 谷川久一、阿部弘彦 昭和62年1月30日 p.57)
- 1. 肝細胞死が原因で、びまん性の結合組織増生が肝臓全域に見られる
- 2. 肝実質の結節性再生と小葉構造の改築が認められるもの
概念
- 肝硬変はびまん性に線維化した肝病変の終末像であり、慢性肝炎とともにもっともしばしばみられる肝の病態である。臨床的には様々な程度の肝細胞機能不全状態と門脈圧亢進症による症状がみられる慢性疾患である。
疫学
- 人口10万人あたりの死亡率12.5人
- 45-59歳の男性では死亡順位第4位
- 西日本に多い
病因
病理
- 炎症による細胞の破壊と再生を繰り返す結果、再生した肝細胞と新たに形成された線維性の隔壁を有する結節が形成され(再生結節)、肝硬変となる。(BPT.647)
- ウイルス性肝炎の慢性化による肝硬変では、3mm以上の結節がみられる(macronodular cirrhosis)。
- アルコール性肝炎の慢性化による肝硬変では、平均3mmの結節がみられる(micronodular cirrhosis)。
病態生理
- 肝機能低下により(1)エストロゲンの肝臓における異化が低下、(2)アルブミン合成能が低下、(3)門脈圧亢進が起こる。(1)によるエストロゲンなどの血管拡張因子により血管が拡張し循環血漿量が減少する。(2)による膠質浸透圧の低下はサードスペースへの体液移動を引き起こしさらに循環血漿量を低下させる。これには(3)も相加的に作用すると思われる。循環血漿量の低下はRAA系の亢進をきたし、アルドステロンによるNa、水の貯留引き起こす。
- 非代償性肝硬変では、肝網内系(クッパー細胞など)の機能低下、白血球減少による易感染性を呈する。
症状
合併症
- 参考2
身体所見
[show details]
- 腹部:脾腫 ← 門脈圧と脾腫の程度は相関しない (QB.B-315)
検査
血算
-
- 血小板減少が門脈圧亢進の最初の徴候(HIM.1978)
- 白血球減少 ← 門脈圧亢進によるうっ血性の脾腫に伴う脾機能亢進。 骨髄での産生低下も原因らしい(出典不明)
血液生化学
-
- 総ビリルビン T-Bil:上昇
- アンモニア NH3:上昇
- Fischer比:低下
- 線維化マーカー (ヒアルロン酸、IV型コラ-ゲン):上昇
- 膠質反応(TTT,ZTT):上昇
- γグロブリン:上昇 ← 門脈血に含まれる細菌の抗原が肝臓をシャントしてリンパ組織に到達するためとされている(uptodate)
-
-
- 糖の処理障害により食後高血糖を来しやすく、糖尿病を発症しやすい。
- 低ナトリウム血症、血漿浸透圧低下 ← 血液中の水が間質に移動する結果、電解質も共に移動する。血液中には水が過剰となり、低ナトリウム血症、血症浸透圧低下となる。volume depletionに対してADHが主に作用するからか、あるいはH2Oが移動しやすいからなのかは不明。
免疫血清検査
- 多クローン性γグロブリン血症
- IgG:増加する傾向あり。 ← 門脈血が肝臓を通過せずにリンパ組織に流れ込む結果。著しく高値であったら自己免疫性肝炎。(参考1)
- IgM:高値であったら90-95%はPBCである。(参考1)
- 壊死、炎症が持続的に起きているから上がると解釈することもできる、みたい。
画像
- (US,CT, MRI,Angio,肝シンチ、上部消化管内視鏡)
腹腔鏡、肝生検
- 分枝鎖アミノ酸(branched chain amino acids, BCAA)と芳香族アミノ酸(aromatic amino acids; AAA)の分子比(モル比)
-
- 肝臓、末梢(筋肉など)でよく代謝される
- ほぼ肝臓で代謝される
診断
治療
- IMD 参考2 YN.B-47
- 治療のゴールは、(1)肝疾患の進展を遅らせたり治癒させること、(2)他の原因による肝臓障害を予防すること、(3)合併症の予防、(4)肝移植の時期を決定することである。
- 方針:原疾患の治療を行い、肝硬変の進展を抑えるように食事、生活療法を行う、非代償期には合併症の治療を行う。
- (1)肝疾患の進展を遅らせたり治癒させる:原疾患の治療を行う(自己免疫性肝炎であればステロイドや免疫抑制薬、アルコール性肝障害であれば禁酒、ウイルス性肝炎であれば病原体に応じた治療)。
- (2)他の原因による肝臓障害を予防する:肝臓に障害を与えないようにする(アルコール摂取、アセトアミノフェンの過剰服用)。予防接種を受ける(肝予備能がほとんど無ければA型肝炎、B型肝炎。肺炎球菌、インフルエンザウイルスに対する予防接種も考慮される。
- (3)合併症の予防:肝細胞癌、静脈瘤出血、特発性細菌性腹膜炎、肝腎症候群、肝性脳症、肝肺症候群
- (4)肝移植の時期を決定:
代償期
- 食後の安静、適切な熱量(25-30kcal/kg/日)で適切な蛋白質(1.2-1.5g/kg)の食事を摂取、ビタミンB、ビタミンK補充
- 肝庇護薬(ウルソデオキシコール酸、グリチルリチンなど)
非代償期
-
- 食塩制限(5-7g以下)。飲水制限(1L/day)(腹水貯留時)
- 蛋白質の補充:分枝鎖アミノ酸の多い食事、分枝鎖アミノ酸製剤の点滴。NH3が上昇するなど肝性脳症の危険があれば低蛋白食とする。
- 膠質浸透圧の維持:アルブミン製剤
- 早朝低血糖に対し、夜食を勧める(肝機能低下により糖新生↓のはず)。(出典不明)
- 利尿薬:抗アルドステロン薬(スピロノラクトン)、トルバプタン、フロセミド、サイアザイド → 後2者はhypokalemiaからmetabolic alkalosisを惹起、アンモニアのNH4+ ⇔ NH3 + H+の平衡を左に移行させてアンモニアの排泄を阻害、高アンモニア血症を増悪しうる(非イオン化状態では尿細管で再吸収されやすいはず)(出典不明)。
- 腹水濃縮再注入法
- 肝内門脈大循環シャント、腹膜静脈短絡術
- 食道静脈瘤の治療:内視鏡的食道静脈瘤硬化術・結紮術、外科的治療
- 肝性脳症の治療:腹水の食事療法に準じるが、NH3再吸収につながる便秘の予防に気をつける。
- 肝移植
予後
- 死因:(1)肝性脳症、(2)静脈瘤破綻、(3)肝癌合併
- (1),(2)の治療が発達したことにより、(3)での死亡が増加している。
参考
- 1. [charged] Diagnostic approach to the patient with cirrhosis - uptodate [3]
- 2. [charged] Overview of the complications, prognosis, and management of cirrhosis - uptodate [4]
国試
[★]
- fulminant
- 英
- fulminant hepatitis
- 同
- 電撃性肝炎、急性肝萎縮症 acute liver atrophy、急性黄色肝萎縮症 acute yellow liver atrophy
- 関
- 肝炎、難病
定義
- 肝炎のうち症状発現後約8週間以内に高度の肝機能障害に基づいて肝性昏睡II度以上の脳症をきたし、プロトロンビン時間40%以下を示すものとする(第12回犬山シンポジウム(1981年8月))
- 肝炎ウイルスや薬物が原因となって、肝細胞の広範な壊死と脱落をきたす重篤な肝障害で、致命率が高い。
- 先行する慢性肝疾患が認められる場合には除外するが、B型肝炎ウイルスの無症候性キャリアの急性増悪は含める。(参考1)
- リンパ球浸潤など肝炎像が見られることは本疾患の要件で、薬物中毒、術後肝障害、急性妊娠脂肪肝など肝炎像の認められないものは除外。(参考1)
- 肝性昏睡II度以上の出現が8-24週のものは遅発性肝不全(late onset hepatic failure, LOHF)に分類される。(参考1)
- 難治性疾患克服研究事業とされている(難病#難治性疾患克服研究事業(調査研究対象:130疾患))
病因
- IMD
- ウイルス性の劇症肝炎ではB型肝炎ウイルスによるものが多く、A型肝炎ウイルスがこれに次ぐ
- 急性型 :B型 約50%、原因不明 約20%、A型 約15%、その他(薬物性、C型、E型)
- 亜急性型:成因不明 約45%、B型 約20%、薬物性 約15%、その他(A型、C型、E型)
- YN.B-34
- YN.B-34 参考1
- ウイルス性:B型肝炎ウイルス(約40%)、その他ウイルス
- 自己免疫性:自己免疫性肝炎(15%)
- 薬剤性:薬剤性肝障害(10%):PAS、ハロタン、サルファ剤
- 代謝性:急性妊娠性脂肪肝、ウイルソン病、ライ症侯群
- 虚血性:出血性ショック、心原性ショック、および敗血症性ショックの後
病型
- 急性 :急性肝炎発症後10日以内に脳症が出現
- 亜急性:急性肝炎発症後11日以降に脳症が出現 予後が悪い
検査
- 画像検査で肝萎縮が認められた場合には予後不良(SSUR.591)
血液検査
- コリンステラーゼ:低下(40%以下)
- アルブミン:低下
- AST・ALT:上昇したのち低下
- ビリルビン:上昇
- 血中アンモニア:上昇。(SSUR.591)
腹部CT
シンチグラフィ
重症度の指標
- YN.B-34
- プロトロンビン時間40%以下
- アルブミン<2.5g/dL
- 腹水、浮腫、肝性脳症
- コリンエステラーゼ:低値
- コレステロールエステル:低値 ← LCATは肝臓で合成される。
- 血中アンモニア:上昇
- ビリルビン上昇(直接ビリルビン/間接ビリルビン<0.5) ← 抱合能低下により間接ビリルビンが増加
- BUN≦6mg/dl
- 血清肝細胞増殖因子(HGF)≧1ng/ml → 肝細胞の増殖を促そうとしている。予後評価に有用
- 肝萎縮(CT, US)
症状
- 初発症状:全身倦怠感、発熱、黄疸、悪心、食欲不振。その後症状が持続。意識障害(急性型では初発することあり。亜急性型では遅発する)。(IMD)
合併症
- 脳浮腫、消化管出血、腎不全、血管内凝固症候群、全身感染症
治療
- a. 輸液管理:アミノ酸を含まないブドウ糖主体の輸液。→ 肝臓の尿素サイクルの著しい障害が見られるため分枝アミノ酸の投与は行わない
- b. 肝性脳症予防:合成二糖類(ラクツロース)、非吸収性抗菌薬PO(カナマイシン、ポリミキシンB)
- c. 合併症の治療:脳浮腫(マンニトール、グリセロール)
- d. その他:感染予防、呼吸器管理、消化管出血(予防にはH2ブロッカーが有効)に対する対応
-
- 抗ウイルス療法 ・・・ B型肝炎ウイルス
- 免疫抑制療法 ・・・・ 自己免疫性肝炎
- 肝細胞の壊死を抑制:抗凝固療法(新鮮凍結血漿、アンチトロンビン製剤、蛋白分解酵素阻害薬、副腎皮質ステロイドパルス療法 ・・・ 有効性はまだ認められていない
劇症肝炎の肝移植適応基準
- 劇症肝炎の肝移植適応基準 (第22回日本急性肝不全研究会,1996年4月) YN.B-35
- I. 脳症発現時に次の5項目のうち2項目を満たす場合は死亡と予測して肝移植の登録を行う
- 1) 年齢:45歳以上
- 2) 初発症状から脳症発現までの日数:11日以上(亜急性型) → 予後不良を示唆
- 3) プロトロンビン時間:10%以下 → 肝機能低下
- 4) 血清総ビリルビン濃度:18mg/dl以上
- 5) 直接/総ビリルビン比:0.67以下 → 抱合能低下
- II. 治療開始(脳症発現)から5日後における予後の再評価
- 下記項目について認められる項目数が2項目の場合生存と予測し肝移植登録を取り消す。0または1項目の場合死亡と予測して肝移植登録を継続する。
- 1) 脳症がI度以内に覚醒、あるいは昏睡度でII度以上の改善
- 2) プロトロンビン時間が50%以上に改善
予後
SUR.591
- 肝性昏睡II度:60%救命
- 肝性昏睡IV度~V度:10-20%救命
参考
- 1. 難治性の肝炎のうち劇症肝炎 - 難病情報センター
- http://www.nanbyou.or.jp/entry/242
[★]
- 英
- antinuclear antibody ANA, anti nuclear antibodies ANAs
- 関
- SLE、自己抗体
- 検査法:HEp-2細胞を器質に用いる。
- 頻度についてはsee REU.14
- 正常値:40倍以下(REU.13)
- 高齢者では80,160倍と言った値が見られることがある。
- 20-60歳の健常人を調べた検査で、40倍での陽性率30%、80倍は13%、160倍は3%。
- 参考1
参考
- http://www.srl.info/srlinfo/kensa_ref_CD/otherdata/127-P77-0361.html