- 英
- systemic sclerosis, systemic scleroderma, SSc
- 同
- 汎発性強皮症 diffuse sclerosis、進行性全身性硬化症 progressive systemic sclerosis PSS、全身性硬化症
- 関
- 強皮症、膠原病
概念
- 皮膚硬化を特徴とする強皮症のうち、皮膚のみでなく全身の諸臓器(肺、消化管、心、腎、関節など)に病変がみられるもの。
病因
- 珪肺症患者:リスク110倍
- 美容などの豊胸手術後に発症:シリコンがアジュバンドとして作用
- 塩化ビニル工場従事者に多い
- 薬剤(ブレオマイシン、トリプトファン)
- マイクロキメリズム(胎児由来血液幹細胞が母胎に移行)
疫学
- 30-50歳に好発。男女比は1:3-4。(NDE.171)
病型
- limited cuteneous SSc, diffuse cuteneous SSc
limited cuteneous SSc
- 皮膚硬化は肘から末梢に限局
- 内臓病変:軽度
- 予後:良好
- 自己抗体:抗セントロメア抗体
CREST症候群
- C:carcinosis:石灰沈着
- R:Raynaud's phenomenon:レイノー現象
- E:esophageal dysfunction:食道機能不全
- S:sclerodacrylia:強指症
- T:teleangiectasia:毛細血管拡張
diffuse cuteneous SSc
症状
- 初発症状:レイノー現象、指、手の硬化
- 関節炎、食道蠕動運動低下、下部食道の拡張、肺線維症(55%)、肺高血圧(5%)、心症状(不整脈、伝導障害)(10-20%)、心膜炎(3%)、吸収不良症候群、強皮腎(悪性高血圧症。5%)、橋本甲状腺炎
- 強皮腎:血管内皮細胞の障害→血管内膜の肥厚、内腔の狭窄→血管の攣縮・虚血→輸入動脈、糸球体係蹄の壊死→レニン産生の亢進→悪性高血圧→急性腎不全
症状の出現頻度
- 100%:皮膚硬化、レイノー現象
- 60%:食道機能障害、肺線維症
- 20%:小腸、大腸、ミオパチー
- 10%:心肥大
- 5%:肺高血圧、強皮腎
検査
診断
(1) 大基準
手指あるいは足趾を越える皮膚硬化※1
(2) 小基準
① 手指あるいは足趾に限局する皮膚硬化
② 手指尖端の陥凹性瘢痕,あるいは指腹の萎縮※2
③ 両側性肺基底部の線維症
④ 抗トポイソメラーゼⅠ(Scl-70)抗体または抗セントロメア抗体陽性
(3) 除外基準
① ※1 限局性強皮症(いわゆるモルフィア)を除外する
② ※2 手指の循環障害によるもので,外傷などによるものを除く
(4) 診断の判定
大基準を満たすものを強皮症と診断する。
大基準を満たさない場合は,小基準の①かつ②~④のうち1項目以上を満たすものを強皮症と判断する
治療
- 進行性腎不全に陥り予後は重大であるが、早期のACE阻害薬による治療が予後を改善させた(REU.195)
予後
- 5年生存率 :93.7%
- 10年生存率 :76.6%
予後因子
- 全身の皮膚硬化
- 腎病変
- 心、血管病変
- 抗Scl-70抗体 ←予後不良
- 抗セントロメア抗体 ←予後良好
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2016/01/28 21:33:43」(JST)
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強皮症 |
|
分類及び外部参照情報 |
ICD-10 |
L94.0-L94.1, M34 |
ICD-9 |
701.0 710.1 |
強皮症(Scleroderma)は、全身の皮膚が硬くなる他、内臓にも病変を発症する原因不明の慢性疾患である。古典的五大膠原病のひとつ。
目次
- 1 分類
- 2 疫学
- 3 症状
- 4 臨床像
- 5 治療
- 6 外部リンク
分類
強皮症は以下の通りに分類される。一般的には全身性強皮症(SSc)のことをさす。
- 強皮症(Scleroderma)
- 限局性強皮症(Localized Scleroderma)
- 全身性強皮症(Systemic Scleroderma:SSc)
- 限局型強皮症(limited SSc):抗セントロメア抗体
- びまん型強皮症(diffuse SSc):抗トポイソメラーゼⅠ(抗Scl-70)抗体・抗RNAポリメラーゼⅢ抗体
疫学
30-60代に多く、男女比は1:9で、女性に多い。最も頻度が高いのはアメリカ・オクラホマ州のチョクトー族インディアンで、罹患率が100,000人中469人である。
症状
皮膚症状
手指末梢から中枢へかけて進展していく皮膚硬化が特徴的症状である。主に以下が認められる。
- 冷たいところに出ると、突然手が白~紫色になり、数分後逆に真っ赤になってしまうことで、他の膠原病(混合性結合組織病・SLE)などでもみられるが本症にもっとも特徴的である。
- 爪上皮出血点(nail fold bleeding; NFB)
- SScによる二次性レイノー症状の診断には、NFBが有用である。NFBは爪郭の爪上皮内の点状の黒色の出血点として肉眼視できる。NFB はSScの約70%に認められる。
- 病変は、手の指の先端からはじまり次第に体の中心に向かってゆき、皮膚の硬化が体幹にまで至らないのが限局型である。最初は皮膚は浮腫状にはれあがり「ソーセージ状の指」などと呼ばれ、次第にやわらかさが消え、硬くなり、逆に萎縮がみられてゆく。最終的にはカチカチに硬い皮膚となって満足に関節も曲げられなくなる。
- 限局型強皮症に顕著認められ、皮下にカルシウムアパタイトの沈着が見られ、手のレントゲン撮影で容易にわかる。
全身症状
肺・腎臓障害が多く認められ、その他逆流性食道炎等もみられる。
- 上記のレイノー現象、爪上皮出血点も含め、強皮症は「全身におよぶ血管炎」と認識するとその症状は理解しやすい。肺や腎臓(糸球体は小動脈)は毛細血管網からなる臓器であるため傷害を受けやすい。肝臓は類洞構造からなるため、毛細血管網を持たない。
臨床像
限局型強皮症
皮膚硬化が手指等に限局し内臓器障害を生じにくい。自己抗体としては抗セントロメア抗体陽性であり、CREST症候群(Calsinosis Raynaud phenomenon Esohageal hypomotility sclerodactyria and telangiectagia)とも言われる。肺高血圧症の合併は、抗U1-RNP抗体(混合性結合組織病)陽性例に多く予後不良である。
びまん型強皮症
内臓器障害を生じ、特に抗トポイソメラーゼⅠ抗体陽性例では肺線維症を合併し重症化する場合が多い。また、抗RNAポリメラーゼⅢ抗体陽性例では急激な腎機能障害を呈することが多い(腎クリーゼ)。
治療
自然経過である程度症状が改善するという特徴を持った疾患であるため、疾患の経過を改善させるという明確な根拠のある薬剤は存在せず、d-ペニシラミンやシクロスポリンが投与されるが、これも有効であることは示されていない。腎クリーゼの予防としてのACE阻害薬や、対症療法として、皮膚への保湿剤、レイノーへのプロスタグランジン製剤やカルシウム拮抗薬、胸焼けに対するプロトンポンプ阻害薬、肺高血圧に対するエポプロステノールやボセンタンが用いられる。
外部リンク
- 強皮症研究会議 -SSc- | 強皮症をよりよく知るために
- 難病情報センター|強皮症 特定疾患情報
UpToDate Contents
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Japanese Journal
- 症例報告 強皮症と閉塞性動脈硬化症の合併による右足趾潰瘍の1例
- 症例報告 Generalized morphea-like systemic sclerosisの1例
- 症例 皮膚の石灰沈着を認めた特異抗体不明の全身性強皮症
- 症例 抗RNAポリメラーゼ抗体陽性全身性強皮症に伴った指端壊疽の1例
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★リンクテーブル★
[★]
- 29歳の女性。頭痛を主訴に来院した。1年前に手指の腫脹、皮膚硬化を自覚し、自宅近くの医療機関で精査を受けた結果、全身性強皮症と診断された。プレドニゾロン20mg/日を開始され、手指の腫脹と硬化は軽快した。プレドニゾロンは漸減され、5mg/日で維持されていたが、3か月前に皮膚硬化の増悪を認めたため、10mg/日に増量されていた。昨日から頭痛を自覚したため受診した。体温36.7℃。脈拍72/分、整。血圧172/108mmHg。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。圧痛を認めない。両手指、前腕部および前胸部に皮膚硬化を認める。下腿に浮腫を認めない。血液所見:赤血球343万、Hb 10.5g/dL、Ht 32%、白血球 11,200(桿状核好中球 32%、分葉核好中球 45%、好酸球 1%、好塩基球 0%、単球 5%、リンパ球17%)、血小板43万。血液生化学所見:尿素窒素45mg/dL、クレアチニン1.5mg/dL、Na 140mEq/L、K 4.2mEq/L、Cl 108mEq/L。抗RNAポリメラーゼⅢ抗体 陽性。
- まず行うべきなのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [113A016]←[国試_113]→[113A018]
[★]
- 54歳の男性。頭痛と視力低下とを主訴に来院した。2年前の冬にRaynaud現象が出現し、1年前に指先に潰瘍が出現したため皮膚科を受診し、全身性強皮症の診断を受けた。仕事が忙しくて半年間病院を受診していなかったが、頭痛と急な視力低下が出現したため来院した。脈拍 92/分、整。血圧 218/120mmHg。四肢に皮膚硬化を認める。尿所見:蛋白1+、潜血1+。血液所見:赤血球 250万、Hb 7.5g/dL、Ht 24%、網赤血球 3.0%、白血球 8,200、血小板5万。血液生化学所見:総蛋白 6.9g/dL、総ビリルビン 2.0mg/dL、AST 28U/L、ALT 35U/L、LD 610U/L(基準 176~353)、尿素窒素 52mg/dL、クレアチニン 4.5mg/dL。眼底検査で視神経乳頭の浮腫を認める。末梢血塗抹標本で破砕赤血球を認める。
- この患者で認められる所見はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [112A043]←[国試_112]→[112A045]
[★]
- 疾患とその疾患に特異的な自己抗体との組合せで正しいのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [114F006]←[国試_114]→[114F008]
[★]
- 46歳の女性。1年前から全身掻痒感有り来院した。肝を右肋骨弓下に1cm触知する。赤血球388万、Hb 12.0g/dl、白血球6,100。血清化学所見:総ビリルビン1.9mg/dl, AST 110単位、ALT 105単位、ALP 690単位(正常290以下)、γ-GTP 108単位(正常8-50)、抗ミトコンドリア抗体陽性
- この疾患の合併症で最も頻度の高いのはどれか?
[★]
[★]
- 英
- autoantibody
- 関
- 抗体
疾患特異的自己抗体
- 抗Sm抗体-SLE
- 抗RNA抗体-SLE,MCTD(overlap syndrome)
- 抗SS-B抗体-シェーグレーン症候群
- 抗Scl-70抗体-強皮症
- 抗セントロメア抗体-強皮症(手足限局型)
- 抗Jo-1抗体-多発性筋炎
- 抗白血球細胞質抗体(ANCA)
- C-ANCA-Wegener肉芽腫
- P-ANCA-壊死性半月体形成性腎炎、顕微鏡的多発血管炎、チャーグ-ストラウス症候群(アレルギー性肉芽腫性血管炎)
特異的自己抗体 NDE.178
[★]
- 英
- leg ulcer
- 関
- 下腿潰瘍
分類
- 動脈性潰瘍:虚血性が原因なので治療は末梢血行の改善がfirst
- 静脈性潰瘍:中年女性、立ち仕事が多い者に後発。下腿内側>下腿外側。
- 糖尿病性潰瘍
- 中枢神経系の疾患に基づく麻痺(脳卒中、脊髄損傷、二分脊椎症)
- ハンセン氏病
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[★]
- 英
- localized scleroderma, circumscribed scleroderma
- ラ
- scleroderma circumscriptum
- 同
- 剣創状強皮症 sclerodermie en coup de sabre、限局性皮膚強皮症?、limited cutaneous scleroderma?
- 関
- 強皮症、全身性強皮症、線状強皮症
検査
参考
- 1. [charged] Pathogenesis, clinical manifestations, and diagnosis of morphea (localized scleroderma) in adults - uptodate [1]
[★]
- 英
- eosinophilic fasciitis
- 同
- シャルマン症候群 Shulman syndrome Shulman's syndrome
- 好酸球性びまん性筋膜炎 好酸球増加を伴うびまん性筋膜炎 diffuse fasciitis with eosinophilia、
- 関
- 全身性強皮症
概念
- 強皮症類似疾患
- 激しい運動、労作の後に数日以内に急激に発症
- 四肢に対称性有痛性腫脹 → 硬化(orange peel sign)
- 近位関節の運動制限と拘縮。
- 顔面に皮膚硬化が及ぶことはまれ
- レイノー現象を伴わない
病理
- 四肢の強皮症様の皮膚硬化
- 末梢血好酸球の増加
- 筋膜の著明な肥厚
検査
- 末梢血好酸球増加、高γグロブリン血症
- 自己抗体陰性
診断
- 血算、皮膚生検(筋膜、筋を含めた生検。筋膜肥厚、好酸球浸潤)
治療
[★]
- 英
- progressive systemic sclerosis, PSS
- 関
- 進行性全身性硬化症
[★]
- 英
- limited scleroderma
- 関
- 肢端硬化症
[★]
- 英
- scleroderma SD
- ラ
- sclerodermia
- 同
- 皮膚硬化症、硬皮症、鞏皮症
- 関
- 膠原病
概念
- 結合組織の病変による厚く硬い皮膚(皮膚硬化)が特徴とする疾患。
病型
- limited cutaneous SSc:抗セントロメア抗体陽性例。皮膚硬化は肘から末梢に限局。
- diffuse cutaneous SSc:抗Scl-70抗体陽性例。皮膚硬化はびまん性、内臓病変が急速に進行し予後不良。
- CREST症候群:全身強皮症の亜型であるが、limited cutaneous SScと同義に使われることがあるらしい。
病理
- 全身の結合組織における炎症性、変性病変 → 膠原線維の肥厚・増加
病因
病態
- 皮膚外臓器病変はSScでよく見られる。肺、腎臓、消化管、および心臓が良く冒される臓器である。
- 食道:早期に出現する症状は食道蠕動機能低下、下部食道括約筋の機能不全である。症状は主に慢性食道炎・狭窄、バレット食道、および運動異常を伴う胃食道逆流症から生じる。
症状
- 消化器病変:(dcSSc,lcSSc))90%以上の症例で見られるが、半数近くの例で無症状である。強皮症による影響は消化管全体に及ぶ。
- 嚥下困難・窒息、胸焼け、嚥下時のむせ、bloating、下痢と便秘の交代症、偽腸閉塞
・消化不良を伴う小腸の細菌過剰増殖、便失禁。
- 胃:胃幽門部での血管拡張がよく見られ、慢性の胃小腸出血により貧血を来す。
- 肺病変:慢性の胃食道逆流症とくり返し起こる胃内容物の肺への吸引により、肺の間質性病変を来しうる。
- 口咽頭病変
- 食道病変
- 胃病変
- 小腸病変
- 結腸病変・肛門直腸病変
- 結腸病変(colonic disease)は10-50%の患者で見られる。肛門直腸病変の頻度は食道病変と同程度である。病理組織では、SScで見られる大腸病変は小腸で見られる病変と同じである。コラーゲン線維が粘膜と粘膜下層に蓄積し、固有筋層は萎縮する。筋層が薄くなることで腸間膜付着部対側に入り口の広い憩室が形成される。病態は胃結腸反射の消失、肛門直腸機能の障害(便失禁)などがある。
検査
自己抗体
- 抗セントロメア抗体:陽性 → 皮膚硬化が限局性で予後良好
- 抗トポイソメラーゼI抗体:陽性 → びまん性の皮膚硬化・肺線維症
- 抗U1RNP抗体:浮腫性硬化、炎症所見、肺病変
参考
- 1. [charged] Overview of the clinical manifestations of systemic sclerosis (scleroderma) in adults - uptodate [2]
- 2. [charged] Gastrointestinal manifestations of systemic sclerosis (scleroderma) - uptodate [3]
症候スペクトル
[★]
- 英
- whole body、total body、systemic、general、whole-body
- 関
- 一般、全身性、全身的、通常、一般的、普遍的、浸透移行性、全般
[★]
- 英
- systemic、generalized、systemically
- 関
- 全身、全身的、汎化、全般的、浸透移行性、全般性
[★]
- 英
- sis, pathy