- membranous
- 英
- membranous nephropathy, MN
- 同
- 膜性糸球体腎炎 membranous glomerulonephritis, membranous GN, MGN
- 関
- ネフローゼ症候群
まとめ
- 膜性腎症は免疫複合体が糸球体基底膜上皮下に沈着することで基底膜の肥厚をきたす疾患である。中年以降(30-40歳以降)の男性に多い。自覚症状なしにネフローゼ症候群を来たし、ネフローゼ症候群の原因として成人では30%、小児では5%を占める。病因としては特発性と続発性があるが、免疫複合体の抗原が不明な特発性が大部分(85%)を占め、残りは感染症(B型肝炎、梅毒、住血吸虫マラリア)、膠原病(SLE)、悪性腫瘍、無機金属(金、水銀)、薬剤(ペニシラミン、カプトプリル、NSAID)などによる続発性である。病理組織像では光顕的に糸球体膜の重層化・二重化・肥厚が認められ、PAM染色で糸球体基底膜上皮下にスパイク状・顆粒状の沈着物が認められる。これらは蛍光顕微鏡ではIgG、C3の沈着として認められる。電顕的には電子高密度沈着物(免疫複合体)として認められる。自覚症状はなく検診などで蛋白尿陽性として見いだされることが多い。診断には腎生検の所見による。治療は特発性の場合、無症候性であれば経過観察、ネフローゼ症候群が存在していればステロイドによる治療を行う。二次性の場合は原因疾患の治療も行う。治療抵抗例では免疫抑制薬、抗血小板薬、抗凝固療法を行う。経過は緩徐であり、予後は良好であることが多い。症例の2/3は緩徐進行、1/3は自然緩解する。(YN.E-50 SPE.599)
概念
- 糸球体腎炎の病理診断名の一つ
- 糸球体基底膜の上皮側にびまん性の免疫複合体が沈着し、基底膜が肥厚する疾患。
- (1)糸球体基底膜のびまん性肥厚、(2)糸球体基底膜上皮下へのびまん性沈着
- ネフローゼ症候群を来す。成人ネフローゼの典型例
疫学
- 中年以降(30-50%)の男性に好発。 30-40歳代の男性に多い(QB.E-173)。
- 健診で発覚(チャンス蛋白尿)
- ネフローゼ症候群の原因となる。ネフローゼ症候群のうちそれぞれ占める割合は成人30%、小児5%。 (YN.E-50)
分類
病因による分類
- 特発性(85%) ← 免疫複合体の抗原が不明
- 続発性
- APT.241
- B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、腫瘍、薬物(NSAID)、SLE
病理
- 蛍光抗体法
- 糸球体基底膜のびまん性肥厚 → 糸球体膜の重層化・二重化・肥厚
- 免疫複合体が糸球体基底膜上皮下に沈着 ← 糸球体の外側 → スパイク(PAM染色で) 、 granular pattern(IgG)
- メサンギウム領域の細胞増殖(-)
病態生理
- 80%がネフローゼ症候群で発症し、あとは無症候性蛋白尿(QB.E-173)
症状
検査
- ネフローゼ症候群を来す場合には低蛋白血症、低アルブミン血症
[show details]
- 蛍光顕微鏡(蛍光抗体法):IgG、C3よりなる免疫複合体が糸球体上皮下腔に顆粒状に沈着
[show details]
-
[show details]
診断
- 膜性腎症の診断は腎生検でのみなされる。原因不明のネフローゼ症候群には腎生検を提案している。(uptodate)
- 蛋白尿に対する検査を行う→ネフローゼ症候群 → uptodate Serologic tests in the evaluation of nephrotic syndrome
- 膜性腎症の原因を検索するために以下の検査を行う:自己抗体、血清C3(普通は正常)、血清学的ウイルス検査(B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス)、悪性腫瘍スクリーニング (uptodate)
検査所見
尿検査
治療
- 免疫抑制薬
- ステロイド(微小変化群より奏効しない)
予後
- 治療への反応性がよく予後良好。半数例が自然寛解。 1/3は自然寛解。2/3はゆっくり進行。75%は寛解/腎機能安定/極めて緩徐な進行。(YN.E-50)
- 10-20%が末期腎不全に移行。ネフローゼ症候群が持続する例に多い傾向。
国試
WordNet
- relating to or made of or similar to a membrane; "membranous lining"
- characterized by formation of a membrane (or something resembling a membrane); "membranous gastritis" (同)membrane-forming
- imply as a possibility; "The evidence suggests a need for more clarification" (同)intimate
- call to mind; "this remark evoked sadness" (同)evoke, paint a picture
PrepTutorEJDIC
- 膜の;皮膜に似ている
- 〈考え・計画など〉‘を'『提案する,』言い出す / 〈物事が〉…‘を'『連想させる,』思い起こさせる / …‘を'『それとなく示す』
Wikipedia preview
出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/02/06 15:05:03」(JST)
[Wiki ja表示]
膜性腎症 |
分類及び外部参照情報 |
ICD-10 |
N03..2 |
ICD-9 |
583.1 |
DiseasesDB |
7970 |
eMedicine |
med/885 |
MeSH |
D015433 |
プロジェクト:病気/Portal:医学と医療 |
テンプレートを表示 |
膜性腎症(まくせいじんしょう、Membranous nephropathy:MN、Membranous glomerulonephropathy:MGN)とは、成人のネフローゼ症候群の原因として代表的な慢性糸球体腎炎。
目次
- 1 疫学
- 2 病因・機序
- 3 臨床像
- 4 検査
- 5 診断
- 6 治療
- 7 予後
- 8 脚注
- 9 関連項目
疫学[編集]
成人のネフローゼ症候群の一定数(3~8割)を占める。ネフローゼでない例や治療されていない例も含めると、正確な患者数は不明である。男性にやや多く、40~70歳に好発する。
病因・機序[編集]
Immune complexes (black) are deposited in a thickened basement membrane creating a "spike and dome" appearance on electron microscopy.
腎臓の糸球体基底膜の上皮直下に顆粒状に広く分布する免疫複合体が特徴であり、この免疫複合体の形成・沈着に伴う一連の免疫の異常が主たる機序と想定されている。具体的には、全身を循環している免疫複合体が腎に移動・沈着するという説と、上皮基底膜にある何らかの抗原に対して抗体がin situで結合するという説とに二分されるほか、免疫複合体よりもむしろ補体の沈着が組織障害の主因であることを示す実験もある。
原発性膜性腎症の70%以上が内因性抗原であるphospholipase A2 receptor(PLA2R)に対するIgG4型抗体によって発症することが解明された。[1]
臨床像[編集]
足や目の周りの浮腫や体重の増加、尿の泡だち、疲労感などで発症することが多い。IgA腎症で見られるような肉眼的血尿は稀である。高血圧も比較的に少ない。基本的に病気の進行は緩徐であり、ほとんど無症状だったり、寛解と増悪を自然に繰り返したりもする。成人検診での蛋白尿陽性を経て、初めて診断されることもある。また、明らかな病因がある二次性の膜性腎症と、それらが特定できない一次性の膜性腎症とに分けられる。二次性の原因には、悪性腫瘍(膜性腎症全体のおよそ5-20%)、B型肝炎ウイルス・マラリア等の感染、全身性エリテマトーデス(ループス腎炎WHO class V)、D-ペニシラミン・金製剤・ブシラミン・非ステロイド性抗炎症鎮痛薬など特定の薬剤使用が含まれる。二次性の場合は、原則として、原因を除去・治療できれば腎症も治癒する。
検査[編集]
- 腎生検
- 光学顕微鏡:進行度に応じて糸球体基底膜のさまざまな肥厚が見られる。蛍光抗体法では肥厚した基底膜の上皮側に顆粒状かつびまん状にIgG陽性の免疫複合体と補体の沈着が見られる。
- 電子顕微鏡:糸球体基底膜上皮に沈着物(electoron dense deposit)が付着している。
悪性腫瘍のスクリーニング[編集]
二次性膜性腎症の原因にあるように、本症の一部は腫瘍随伴症候群である。もし悪性腫瘍があるにもかかわらずそれを発見できないうちに膜性腎症に対して下記のステロイド治療を開始してしまうと、自己免疫力の低下を介して悪性腫瘍の成長を促す危険がある。したがって、膜性腎症の診断~治療開始にあたっては、悪性腫瘍があるかどうか内視鏡やCTなど入念な検査を行う。
診断[編集]
正確な診断は腎生検に基づく。ただし、明らかな二次性膜性腎症は、患者背景、経過などから見当がつく。
治療[編集]
- 食事療法
- 塩分制限と低タンパク食。後者は本症に限らず慢性腎臓病治療の一環として広く行われているが、その指導は施設・担当医間で大きくことなる。
- 薬物療法
- 予後のよさそうな例では経過観察、そうでない例では副腎皮質ステロイド薬が使われる。施設によってはシクロスポリン(ステロイド剤と併用されることもある)や免疫グロブリンも選択される。海外ではステロイドを単独で使用することは稀であり、腎予後が悲観的でかつ副作用の危険が少ない一部の例に対しては、ステロイド剤にシクロホスファミドやクロラムブチルが併用される。これは、1990年前後のカナダ・イギリスにおける複数の研究で、膜性腎症に対するステロイド剤単独使用の効果が否定された影響が大きい。また、ACE阻害剤・ARBは膜性腎症に限らず、蛋白尿が陽性の場合にはその減少効果や腎不全の遅延効果が裏付けられている。
予後[編集]
進行が非常に緩慢であるため長期的に自然寛解する症例も少なくない。10年以内に腎不全に至る患者の割合は、欧米の統計によれば10~35%であるのに対し、国内の報告ではせいぜい10%である。しかし、ネフローゼを呈している場合は、国内でも20年間で40%が腎不全になる。予後が心配される条件には、ネフローゼのような大量の蛋白尿、男性、60歳以上での初発、クレアチニンの上昇、腎生検での糸球体硬化や尿細管間質の病変などがある。
脚注[編集]
- ^ Beck LH Jr, et al: M-type phospholipase A2 receptor as target atigen in idiopathic membranous nephropathy. N Engl J Med 361: 11-21, 2009.
関連項目[編集]
腎・泌尿器系の疾患 |
|
疾患 |
|
糸球体病変
|
急性糸球体腎炎 | IgA腎症 | 急速進行性糸球体腎炎 | 慢性糸球体腎炎
|
|
ネフローゼ症候群
|
原発性
|
微小変化群 | 巣状糸球体硬化症 | 膜性腎症 | 膜性増殖性糸球体腎炎
|
|
|
遺伝性腎炎
|
アルポート症候群 | 良性家族性血尿
|
|
尿細管機能障害
|
ファンコニ症候群 | バーター症候群 | ギッテルマン症候群 | リドル症候群 | 尿細管性アシドーシス | 腎性糖尿 | 尿細管間質性腎炎
|
|
続発性腎障害
|
膠原病
|
全身性エリテマトーデス | 全身性強皮症 | シェーグレン症候群
|
|
糖尿病性腎症 | 痛風腎 | クリオグロブリン血症 | アミロイドーシス | 溶血性尿毒症症候群
|
|
|
腎循環障害
|
腎血管性高血圧症 | 腎梗塞 | クルミ割り現象
|
|
泌尿器疾患
|
機能障害
|
膀胱尿管逆流 | 神経因性膀胱 | 水腎症 |
|
|
先天異常
|
多発性嚢胞腎(常染色体優性多発性嚢胞腎 | 常染色体劣性多発性嚢胞腎) | 尿管異所開口 | 重複腎盂尿管 |ポッター症候群
|
|
感染症
|
腎盂腎炎 | 腎膿瘍 | 膀胱炎 | 腎結核
|
|
尿路結石
|
膀胱結石
|
|
腫瘍
|
腎細胞癌 | 腎盂腫瘍 | 尿管腫瘍 | 前立腺肥大症 | 前立腺癌 | 精巣腫瘍 | 陰茎癌 |腎芽腫
|
|
性器の疾患
|
前立腺炎 | 停留精巣 | 精巣捻転 | 包茎 | 勃起不全
|
|
|
|
|
病態・症状 |
|
腎不全
|
急性腎不全
|
急性尿細管壊死
|
|
慢性腎臓病
|
慢性腎不全 | 尿毒症
|
|
|
尿所見異常
|
乏尿 | 無尿 |多尿 |頻尿 |血尿 | タンパク尿 | 尿円柱
|
|
尿閉 |陰嚢腫大
|
|
|
|
検査 |
|
腎機能検査
|
糸球体濾過量 | クレアチニンクリアランス | ナトリウムクリアランス | 尿中ナトリウム排泄率 | 腎不全指数
|
|
腹部X線写真 | 腎盂造影 | レノグラム | 腎生検
|
|
|
|
腎・泌尿器系の正常構造・生理 |
|
腎臓 |
肉眼解剖
|
尿細管
|
近位尿細管 - ヘンレのループ(下行脚 - 細い上行脚 - 太い上行脚) - 遠位尿細管 - 集合管 - 腎盤 ( - 尿管)
|
|
腎循環
|
腎動脈 - 傍尿細管毛細血管 - 輸入細動脈 - (糸球体) - 輸出細動脈 - 直細動脈 - 腎静脈
|
|
ゲロタ筋膜
|
|
|
顕微解剖
|
ネフロン
|
腎小体
|
糸球体
|
毛細血管 | 糸球体内メサンギウム細胞 | ボーマン嚢
|
|
傍糸球体装置
|
緻密斑 | 傍糸球体細胞 | 糸球体外メサンギウム細胞
|
|
|
尿細管
|
|
|
|
生理学
|
アシドーシスとアルカローシス | 膠質浸透圧 | 糸球体濾過量 | 腎血漿流量 | クレアチニンクリアランス
|
|
生化学
|
バソプレッシン | アルドステロン | 心房性ナトリウム利尿ペプチド | エリスロポエチン | レニン-アンジオテンシン系
|
|
|
尿路 |
肉眼解剖
|
尿管 - 膀胱 - 尿道
|
|
顕微解剖
|
移行上皮
|
|
|
生殖器系 |
|
女性器 |
尿道 - 陰核 - 陰裂 - 陰核亀頭 - 陰核亀頭冠 - 陰核包皮 - 陰核小帯 - Gスポット - 処女膜 - 陰唇 - 大陰唇 - 小陰唇 - 膣 - バルトリン腺 - スキーン腺 - 子宮頸部 - 子宮 - 子宮内膜 - 卵管 - 卵巣
|
|
男性器 |
尿道 - 陰茎 - 陰茎亀頭 - 陰茎亀頭冠 - 海綿体 - 陰茎ワナ靭帯 - 陰茎包皮 - 陰茎小帯 - 陰嚢 - 精索 - 精巣上体 - 精細管 - セルトリ細胞 - 精巣輸入管 - 輸精管 - 精嚢 - 射精管 - 前立腺 - 尿道球腺 - 精巣網 - 精巣
|
|
UpToDate Contents
全文を閲覧するには購読必要です。 To read the full text you will need to subscribe.
- 1. 特発性膜性腎症の治療 treatment of idiopathic membranous nephropathy
- 2. 膜性腎症の原因および診断 causes and diagnosis of membranous nephropathy
- 3. 膜性腎症と腎移植 membranous nephropathy and renal transplantation
- 4. 特発性膜性腎症の治療における代替剤 alternative agents in the treatment of idiopathic membranous nephropathy
- 5. 重症蛋白尿およびネフローゼ症候群の概要 overview of heavy proteinuria and the nephrotic syndrome
Japanese Journal
- 抗PLA受容体抗体と特発性膜性腎症 (AYUMI 自己免疫疾患 : 自己抗体の認識抗原と病因的意義)
- 症例 原発性胆汁性肝硬変の経過中に膜性腎症と抗GBM抗体型腎炎を合併した1例
- 森 大輔,角谷 裕之,山口 嘉土 [他]
- The Japanese journal of nephrology 54(4), 550-555, 2012
- NAID 40019351353
- 足細胞陥入糸球体症と膜性腎症の関係 : 電顕・蛍光所見
- 同種造血幹細胞移植後に膜性腎症によるネフローゼ症候群を発症した急性リンパ性白血病
- 相本 瑞樹,山根 孝久,一居 充,森 克仁,相本 蘭,井上 恵里,康 秀男,中根 孝彦,武岡 康信,中前 美佳,小坂 さおり,寺田 芳樹,中前 博久,高 起良,中尾 隆文,大澤 政彦,若狭 研一,石村 栄治,稲葉 雅章,日野 雅之
- 臨床血液 52(7), 556-562, 2011-07-30
- NAID 10029425994
Related Links
- 膜性腎症(まくせいじんしょう、Membranous nephropathy:MN、Membranous glomerulonephropathy:MGN)とは、成人のネフローゼ症候群の原因 ... また、明らか な病因がある二次性の膜性腎症と、それらが特定できない一次性の膜性腎症とに分け られる。 ...
- 家庭医学館 膜性腎症の用語解説 - [どんな病気か] 膜性腎症は、免疫複合体(めんえき ふくごうたい)(体内に入ったウイルス、細菌、異物などの抗原(こうげん)と、それを無害 化する抗体(こうたい)が結合したもの)が、糸球体(しきゅうたい)の基底膜(きていまく) ...
Related Pictures
★リンクテーブル★
[★]
- 次の文を読み、67-69の問いに答えよ。
- 58歳の男性。体重増加と下肢の浮腫とを主訴に来院した。
- 現病歴: 3年前から降圧薬の投与を受けていた。3か月前から尿の泡立ちに気付き、1か月前から下肢の浮腫と3kgの体重増加とを認めている。
- 既往歴: 特記すべきことはない。
- 生活歴: 喫煙歴はない。飲酒は機会飲酒。
- 家族歴: 父に高血圧がある。
- 現症: 意識は清明。身長167cm、体重72kg。体温36.4℃。脈拍68/分、整。血圧146/90mmHg。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾・腎を触知しない。前脛骨部に圧痕を伴う浮腫を認める。
- 検査所見: 尿所見:蛋白(4+)、糖(-)、尿潜血(1+)。24時間尿蛋白4.2g/day.尿赤血球5-10/HPF、尿沈渣(超生体染色)の写真(別冊No.16A)を別に示す。血液所見:赤血球 420万、Hb l2.4g/dl、Ht 38%。血液生化学所見:血糖 98mg/dl、HbA1c 5.2、総蛋白 5.0g/dl、アルブミン 2.4g/dl、尿素窒素 18mg/dl、クレアチニン 1.0mg/dl、尿酸 6.2mg/dl、総コレステロール 325mg/dl、Na l42mEq/l、K 3.6mEq/l、Cl 108mEq/l、Ca 8.4mg/dL、P 2.7mg/dl。腎生検のH-E染色標本(別冊No.16B)、蛍光抗体基底膜(緑)とIgG(赤)染色標本(別冊No.16C)及び電子顕微鏡写真(別冊No.16D)を別に示す。
[正答]
※国試ナビ4※ [104E067]←[国試_104]→[104E069]
[★]
- 58歳の男性。発熱、皮疹および関節痛を主訴に来院した。14日前に急性腰痛症のため自宅近くの診療所で非ステロイド性抗炎症薬を処方され服用していた。2日前から発熱、皮疹および関節痛が出現し増悪してきたため受診した。既往歴に特記すべきことはない。体温 37.3℃、脈拍84/分、整。血圧 138/86mmHg。全身に紅斑性丘疹を播種状に認める。両側の肩関節、肘関節および膝関節に疼痛と腫脹とを認める。尿所見:蛋白(±)、糖(-)、潜血(±)、沈渣に赤血球 1~4/1視野、白血球 5~9/1視野。β2-マイクログロブリン 54,630ng/L(基準 200以下)。血液所見:赤血球 350万、Hb 10.8g/dL、Ht 32%、白血球 9,600(分葉核好中球 49%、好酸球 24%、好塩基球 1%、単球 1%、リンパ球 25%)、血小板 34万。血液生化学所見:総蛋白 7.0g/dL、アルブミン 3.8g/dL、IgG 1,410mg/dL(基準 960~1,960)、IgA 200mg/dL(基準 110~410)、IgE 320IU/mL(基準 250未満)、尿素窒素 24mg/dL、クレアチニン 1.6mg/dL、HbA1c 5.4%(基準 4.6~6.2)。腎生検のPAS染色標本(別冊No. 18)を別に示す。蛍光抗体法では糸球体に免疫グロブリンの沈着を認めない。
- 診断はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [109I056]←[国試_109]→[109I058]
[★]
- 50歳の女性。足の甲のむくみを主訴に来院した。 7年前に関節リウマチと診断され、以後メトトレキサートによる治療を継続している。 6か月前から腹痛と下痢とを認めるようになり、その頻度が増加してきた。 2週前に出現した足背の浮腫が改善しないため受診した。身長154cm、体重58kg(6か月前と比べて4kgの体重増加)。体温36.2℃。脈拍72/分、整。血圧128/68mmHg。呼吸数14/分。足背に圧痕を伴う浮腫を認める。両側肩関節、両側手関節、右第2-4中手指節間関節および両側膝関節に疼痛と腫脹とを認める。 尿所見:蛋白3+、糖(-)、ケトン体(-)、潜血1 +、沈渣に円柱を認めない。血液所見:赤血球328万、 Hb9.8g/dl、Ht27%、白血球11,800、血小板48万。血液生化学所見:総蛋白4.8g/dl、アルブミン2.0g/dl、尿素窒素28mg/dl、クレアチニン1.2mg/dl、総コレステロール328mg/dl、トリグリセリド182mg/dl。 CRP16mg/dl。直腸生検でコンゴーレッド染色陽性の沈着物を認めた。
- 腎病変として最も考えられるのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [106A037]←[国試_106]→[106A039]
[★]
- 24歳の男性。血尿を主訴に来院した。これまで尿の異常を指摘されたことはなかった。4日前に咽頭痛と38℃の発熱があり、昨日から血尿が出現したため受診した。体温 37.8℃、脈拍 72/分、整。血圧 120/78mmHg。口蓋扁桃の腫大を認める。顔面および下肢に浮腫を認めない。皮疹は認めない。尿所見:蛋白 3+、潜血 3+、沈渣は赤血球 100以上/HPF。随時尿の尿蛋白/クレアチニン比 2.0g/gクレアチニン(基準 0.15未満)。血液生化学所見:総蛋白 6.7g/dL、アルブミン 3.8g/dL、IgG 1,400mg/dL(基準 960~1,960)、IgA 450mg/dL(基準 110~420)、IgM 100mg/dL(基準 65~350)、CK 50U/L(基準 30~140)、尿素窒素 18mg/dL、クレアチニン 0.8mg/dL。免疫血清学所見:抗核抗体 陰性、CH50 30mg/dL(基準 30~40)、C3 88mg/dL(基準 52~112)、C4 20mg/dL(基準 16~51)、ASO 200単位(基準 250以下)、MPO-ANCA 陰性、PR3-ANCA 陰性。
- 最も考えられるのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [113A056]←[国試_113]→[113A058]
[★]
- 66歳の男性。両下腿の浮腫と体重増加とを主訴に来院した。10年以上前に糖尿病と診断され治療を受けていたが、最近は医療機関を受診していなかった。3か月前に両下腿の浮腫が出現し浮腫の増悪と4kgの体重増加とを自覚したために受診した。腎疾患の家族歴はない。身長 165cm、体重 75kg。脈拍 76/分、整。血圧 138/72mmHg。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、血管雑音を聴取しない。顔面および下腿に圧痕性の浮腫を認める。尿所見:蛋白4+、潜血(-)、尿蛋白 4.2g/日。血液所見:赤血球 380万、Hb 12.0g/dL、Ht 38%、白血球 8,800、血小板 24万。血液生化学所見:総蛋白 5.8g/dL、アルブミン 2.6g/dL、尿素窒素 25mg/dL、クレアチニン 1.8mg/dL、尿酸 6.8mg/dL、HbA1c 7.2%(基準 4.6~6.2)、総コレステロール 280mg/dL。
- 蛋白尿の原因として考えられるのはどれか。2つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [112D072]←[国試_112]→[112D074]
[★]
- 13歳の女子。下肢の浮腫を主訴に母親に連れられて来院した。半年前の学校検尿で蛋白尿と尿潜血とを指摘され、近くの小児科で専門医療機関の受診を勧められていたが、自覚症状がないため受診していなかった。身長 154cm、体重 53kg。脈拍 72/分、整。血圧 114/60mmHg。尿所見:蛋白3+、潜血2+、沈渣に赤血球 10~29/1視野、脂肪円柱3/1視野、尿蛋白 3.8g/日。血液所見:赤血球 510万、Hb 16.9g/dL、Ht 48%、白血球 9,600、血小板 25万。血液生化学所見:総蛋白 5.1g/dL、アルブミン 3.0g/dL、IgA 280mg/dL(基準 110~410)、尿素窒素 10mg/dL、クレアチニン 0.5mg/dL、尿酸 4.5mg/dL、総コレステロール 260mg/dL。C3 18mg/dL(基準 52~112)。腎生検のPAS染色標本(別冊No. 12A)と蛍光抗体C3染色標本(別冊No. 12B)とを別に示す。
- この患者の診断はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [111I056]←[国試_111]→[111I058]
[★]
- 55歳の男性。下腿の浮腫を主訴に来院した。4か月前に夕方になると靴下のゴムの痕がつくことに気付いた。徐々に浮腫の程度が強くなってきた。意識は清明。体温36.6℃。脈拍72/分、整。血圧150/86mmHg。皮膚に発疹と発赤とを認めない。眼瞼に軽度の浮腫を認める。頸部と胸部とに異常はない。下腿と足背とに圧痕を残す浮腫を認める。尿所見:蛋白3+、潜血(-)、沈渣に赤血球0/1視野、脂肪円柱3/1視野。血液所見:赤血球520万、Hb16.2g/dl、Ht48%、白血球4,600。血清生化学所見:空腹時血糖96mg/dl、HbA1c5.4%(基準4.3~5.8)、総蛋白5.9g/dl、アルブミン2.2g/dl、尿素窒素22mg/dl、クレアチニン1.3mg/dl、Na135mEq/l、K4.6mEq/l。免疫学所見:抗核抗体陰性、CH50 37U/ml(基準30~40)。腎生検PAS染色標本を以下に示す。
- 最も可能性の高い疾患はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [101G035]←[国試_101]→[101G037]
[★]
- 68歳の男性。進行する下腿の浮腫を主訴に来院した。2か月前から両側下腿の浮腫を自覚していたが、次第に増惑するため紹介されて受診した。10年前から高血圧症で降圧薬を服用している。6年前から関節リウマチで自宅近くの診療所にて薬物治療中である。脈拍76/分、整。血圧138/86mmHg。尿所見:蛋白3+、糖(+)、潜血(±)。血液生化学所見:総蛋白 5.5g/dL、アルブミン 2.6g/dl、総コレステロール 368mg/dl、尿素窒素 22mg/dl、クレアチニン 1.1mg/dl、尿酸 7.4 mg/dl。腎生検の蛍光抗体IgG染色標本(別冊No.26)を別に示す。
- この腎病変をきたす原因として可能性が低いのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [105I078]←[国試_105]→[105I080]
[★]
- 16歳の男子。眼瞼の浮腫と全身倦怠感とを主訴に来院した。
- これまで健康診断で異常を指摘されたことはない。2週前に上気道炎に罹患し、4日前から急に眼瞼の浮腫と全身倦怠感とが出現した。血圧148/92mmHg。眼瞼と下腿とに浮腫を認めるほかに身体所見に異常はない。尿所見:蛋白3+、糖(-)、潜血3+、沈渣に赤血球多数/1視野、赤血球円柱20~30/1視野を認める。
- 血清生化学所見:総蛋白6.8g/dl、クレアチニン1.5mg/dl。免疫学所見:ASO 640単位(基準250以下)、抗核抗体陰性、C3 12mg/dl(基準55~112)、C4 5mg/dl(基準16~51)。腎生検組織のH-E染色標本と蛍光抗体法抗C3染色標本とを以下に示す。
[正答]
※国試ナビ4※ [096D035]←[国試_096]→[096D037]
[★]
- 67歳の男性。数週前から夕方になると足がむくみ、靴が履きにくくなるため来院した。足背に浮腫を認める以外特記すべき所見はない。血圧142/86mmHg。尿所見:蛋白3+、糖(-)、沈さに赤血球1~3/1視野、白血球1~3/1視野。血液生化学所見:総蛋白5.1g/dl、アルブミン2.2g/dl、尿素窒素18.0mg/dl、クレアチニン0.9mg/dl、総コレステロール310mg/dl。腎生検組織の蛍光抗体IgG染色標本と電子顕微鏡写真とを以下に示す。
- 基礎疾患として考えられるのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [102D049]←[国試_102]→[102D051]
[★]
- 55歳の女性。3か月前から下腿浮腫が出現してきたため来院した。15年前から関節リウマチに罹患し、3年前から金製剤で治療されている。尿所見:蛋白3+、糖(-)、潜血(-)、尿蛋白5.5g/日。血清生化学所見:総蛋白5.0g/dl、尿素窒素12mg/dl、クレアチニン0.8mg/dl、総コレステロール385mg/dl。考えられる腎病変はどれか。2つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [099G034]←[国試_099]→[099G036]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [105D012]←[国試_105]→[105D014]
[★]
- a. (1)(2)
- b. (1)(5)
- c. (2)(3)
- d. (3)(4)
- e. (4)(5)
[正答]
※国試ナビ4※ [096H038]←[国試_096]→[096H040]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [112B020]←[国試_112]→[112B022]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [101F043]←[国試_101]→[101F045]
[★]
- a. (1)(2)
- b. (1)(5)
- c. (2)(3)
- d. (3)(4)
- e. (4)(5)
[正答]
※国試ナビ4※ [097H037]←[国試_097]→[097H039]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [108A016]←[国試_108]→[108A018]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [096B024]←[国試_096]→[096B026]
[★]
[★]
- 英
- rheumatoid arthritis, RA
- 同
- リウマチ様関節炎、萎縮性関節炎 atrophic arthritis
- 関
- カプラン症候群、膠原病
概要
- 原因不明のchronic multisystem disease
- 炎症性の関節炎が、特に末梢の関節で全身性に起こる。
- 経過は多様
症候
- 朝のこわばり、疼痛、腫脹、関節の動揺、関節可動域制限、変形(手指、足趾、膝関節)。(SOR.211)
- 手指の近位指節間関節(PIP関節)、中手指節関節(MP関節)。遠位指節間関節(DIP関節)に初発することは稀。(SOR.211)
- 左右対称性に生じることが多い。手関節、足趾、膝関節に初発する。(SOR.211)
- 朝のこわばりは1時間以上持続する(⇔変形性関節症では30分以内におさまる。関節を使わないと痛みがひどくなる)
関節外症状
- 100CASE p.76
- SOR.213改変
症候スペクトル
合併症
- YN. F-43
検査
単純X線
- 軟部組織の腫脹によるX線透過性の低下、関節周囲の骨萎縮(傍関節性骨骨粗鬆症)、関節辺縁のびらん、骨洞、関節裂隙狭小化、関節面の破壊、関節亜脱臼・脱臼(SOR.216)(下線の症状は変形性関節症では認めない)
血液
- 赤血球:小球性低色素性貧血
- 白血球:正常あるいは軽度増加。ただし 脾腫 + 白血球減少 + RA = フェルティー症候群
- 血小板:増加
- 補体:高値?。(SOR.217)SLEと違って低下しない。経過中に低下してきたのなら悪性関節リウマチを考慮
- リウマチ因子:陽性(70-80%の症例)
- 炎症所見:赤沈・CRP・免疫グロブリン高値
関節液
- 淡黄緑色、混濁、滑膜細胞の細片の浮遊を認める。粘稠度低下(SOR.218)
関節内視鏡
身体所見 (SOR.213,417)
手
手関節
- 手関節と遠位橈尺関節の滑膜炎→腫脹、運動痛、手関節の掌背屈及び前腕の回旋制限
- 尺骨頭の背側亜脱臼:ピアノキーサイン
- 手根骨の尺側移動、掌側移動
- 手関節強直:手関節が破壊されて癒合すると線維性強直、骨性強直が起きて関節の変形が固定される。
指
MP関節(MCP関節)
- 掌側脱臼、尺側偏位、伸筋腱の尺側脱臼
PIP関節
趾
MP関節(MTP関節)
- 外反母趾:第1中足骨が内反し、第1中足趾節関節で母指基節骨が外反し、中足骨骨頭が内側に膨隆し「く」の字型の変形を起こしたもの。
診断基準
|
7項目中、4項目以上を満たすとき、関節リウマチと診断される
|
備考
|
1
|
1時間以上持続する朝のこわばりが、6週間以上あること
|
|
2
|
3領域以上の関節の腫れが、6週間以上あること
|
領域は、PIP関節・MP関節・手・肘・膝・足・MTP関節の14領域に分けられる
|
3
|
手関節またはMP関節またはPIP関節の腫れが、6週間以上あること
|
少なくとも1ヵ所での軟部組織腫脹
|
4
|
対称性関節腫脹
|
PIP、MCP、MTP関節は完全に対象である必要はない
|
5
|
リウマトイド結節
|
骨突起部、伸側表面/関節近傍の皮下結節
|
6
|
リウマトイド因子が陽性
|
正常人コントロールで5%以下の陽性率を示す測定法を用いること
|
7
|
X線、関節リウマチに特有の骨びらんが見られる
|
手・指を中心に見る、びらん以上の破壊も含む
|
診断
治療
- 以前は、病状の進行に合わせて作用の弱い薬剤から強い薬剤を用いていたが、最近では初期に強力に炎症を抑制して関節破壊を防ぐ治療方針に変わってきている。
TNF阻害薬の適応
- 1. 既存の抗リウマチ薬(DMARD)通常量を3ヶ月以上継続して使用してもコントロール不良のRA患者。コントロール不良の目安として以下の3項目を満たす者。
- 1) 圧痛関節数6関節以上
- 2) 腫脹関節数6関節以上
- 3) CRP 2.0mg/dl以上あるいはESR 28mm/hr以上
- a) 画像検査における進行性の骨びらんを認める
- b) DAS28-ESRが3.2(moderate activity)以上
- のいずれかを認める場合も使用を考慮する。
- 2. さらに日和見感染症の危険性が低い患者として以下の3項目も満たすことが望ましい。
- 1) 末梢血白血球数 4000/mm3以上
- 2) 末梢血リンパ球数 1000/mm3以上
- 3) 血中β-D-グルカン陰性
参考
- 2. 株式会社医学生物学研究所 MESACUP CCPテスト
- 3. 関節リウマチの診療マニュアル(改訂版) 診断のマニュアルとEBMに基づく治療ガイドライン
- http://www.rheuma-net.or.jp/rheuma/rm400/library/guideline.html
[★]
- 英
- nephrotic syndrome, NS
- 同
- ネフロージス nephrosis
- 関
- 腎 ネフローゼ症候群、小児ネフローゼ症候群
- 蛋白分画
概念
- 高度の蛋白尿とそれに起因する低蛋白血症、浮腫および高脂血症を呈した臨床病態
- 臨床的な概念であり、尿中に多量の血清タンパク成分を喪失するときにみられる共通の病態
病型
- 原発性糸球体腎炎
- 続発性ネフローゼ症候群:先行する疾患(膠原病、糖尿病など)に続発する
疫学
成人(IMD)
ネフローゼ症候群の原因
- 微小変化群:大人,約20-30%. 子供,70-80%
- 膜性腎症:大人,約30%. 子供,5%
- 膜増殖性糸球体腎炎:大人,5-7%
病理
- 広範囲にわたる著明な糸球体臓側上皮細胞の障害が認められ、足突起が単純化(simplification; 足突起の突起が減少すること?))および消失している。(PRE.224)
ネフローゼ症候群に関わる3つの基本的な病型
- PRE.224
- 1. 糸球体上皮細胞の障害:微小鹸化群、原発性巣状硬化症 ← 単球から放出されたサイトカインが上皮細胞の障害に関わっている
- 2. 上皮下における免疫複合体の形成と補体の活性化により、沈着した免疫複合体の周りに基底膜マトリックスが沈着し、基底膜が肥厚する膜型病変を呈する
- 3. 糸球体壁に影響を及ぼす蓄積病変は、ALアミロイドーシスや軽鎖蓄積病、あるいは糖尿病性腎症がある。
検査
- IMD
血液検査
凝固系検査
- フィブリノゲン、第I因子、第VIII因子、第X因子など → 肝臓で産生される。肝臓機能の亢進を示唆
血液生化学検査
- アルブミン:低値
- γ-グロブリン:低値 → IgGが低値となる。これが易感染性と関連している。なぜこうなるかは分かっていない。 → 易感染性につながる
- α2-グロブリン高値
- β-グロブリン:高値
- コレステロール:高値
- 中性脂肪:増加(特にLDL、VLDL)
- 低カルシウム血症 ← アルブミン低値による(アルブミン1.0 g/dlの低下により血清カルシウム0.8mg/dlの低下)。
- フィブリノゲン:高値 → 肝機能の亢進による
α2グロブリンが高値になるメカニズム
ネフローゼの場合血中のタンパクはどんどん尿に漏出していく。そのためアルブミン、γグロブリンは割合が低下している。α2分画にはα2マクログロブリンが存在する。これは分子量が77万から82万という大きな分子であるので、ネフローゼで糸球体のサイズバリアが崩壊しているとしても尿中に排出されず残るため、相対的にα2分画が高くなる。
赤沈が亢進するメカニズム
赤沈は第1相で赤血球同士が連銭形成し、第2相で沈んでいき、第3相では沈んできた赤血球の密度が上昇して沈降速度が鈍ってくる。赤沈が亢進するには、凝集が促進されるか、沈降の抵抗が少ないかである。赤血球の膜は負に帯電しており、正に帯電しているフィブリノゲン、γグロブリンが増加すると負の電荷同士で集まり合い凝集が促進される。逆に負に帯電しているアルブミンの量が減少すると、負同士の反発が軽減し凝集が容易になる。また貧血であると第3相で密度が低くなり沈降が早くなる。以上より、ネフローゼの場合アルブミンが尿中に排泄され血清アルブミンの濃度が低下、また、β分画のフィブリノゲンが上昇しているため赤沈は亢進する。
尿検査
- 蛋白尿
- 顕微鏡的血尿
- 顆粒円柱、脂肪球、卵円脂肪体
診断基準(厚生省特定疾患 ネフローゼ症候群 調査研究班)
- 1.と2.が 成人ネフローゼ症候群の必須条件。
- また尿沈渣中多数の卵円形脂肪体、重屈折脂肪体は参考所見となる
- 高脂血症と浮腫は必須条件ではない。
合併症
- IMD
- 1.乏尿、急性腎不全(循環血液量の減少)
- 2.低栄養(アルブミンの低下)、感染症(リンパ球サブセット・サイトカインの変化、血漿γグロブリン減少)
- 3.胸水、腹水(アルブミンの低下、体液量の増加)
- 4.起立性低血圧(循環血液量の減少)
- 5.凝固能亢進・血栓症(凝固因子増加、線溶活性低下、循環血液量減少、血液濃縮、脂質代謝異常):静脈血栓症、腎静脈血栓症、肺梗塞(アンチトロンビンIII低下例に多い)
- 6.治療薬(糖質コルチコイド、シクロスポリン?)の副作用:易感染性、消化性潰瘍、精神症状、高血圧、白内障、多毛、肥満、免疫性低下、白血球減少、出血性膀胱炎
- 2+3. 特発性細菌性腹膜炎
予後
- 糸球体選択指数 selection index S.I.によって治療の予後が予測できるらしい。
- SI(selectivity index)=(尿中IgG/血清IgG)/(尿中Tf/血清Tf)。
- SIが小さいほどサイズバリアーが機能しているということ。
- 0.2以下:high selective :プレドニゾロンに反応しやすい
- 0.2以上:low selective :プレドニゾロンに反応しにくい
[★]
- 英
- chronic glomerulonephritis CGN
- 同
- 慢性腎炎 chronic nephritis, 慢性腎炎症候群 chronic nephritic syndrome、慢性糸球体腎炎症候群 chronic glomerulonephritic syndrome
概念
- 蛋白尿・血尿が1年以上持続する病態
- 透析導入原疾患の第2位をしめる。
疫学
- 参考1
- 慢性糸球体腎炎が減少し続ける理由:学校検尿・健康健診・人間ドックによる早期発見治療。治療の進歩、生活環境の清潔化、RAA系の抑制薬の登場、腎炎に関する知識の普及
原疾患
診断基準
参考
- http://www.jsn.or.jp/jsn_new/iryou/kaiin/free/primers/pdf/CKDguide2009.pdf
[★]
- 英
- fluorescent antibody technique
- 同
- 免疫蛍光法 immunofluorescence technique
- 関
QB.E-173
[★]
- 英
- glomerular selectivity index
- 同
- 選択指数 selectivity index
- 関
- 蛋白尿
- 尿蛋白質選択性 selectivity of urine protein
- 非選択性蛋白尿 nonselective proteinuria
定義
- 選択指数(S.I.) = CIgG()/Ctransferrin
- SI(selectivity index)=(尿中IgG/血清IgG)/(尿中Tf/血清Tf)。
- M.W.: IgG=150kDa, トランスフェリン=80kDa
- Cはクリアランスで、大きいほどよく尿中から排泄されていることを示す。
判定
- SI < 0.1 → 高選択性
- SI > 0.5 → 低選択性
必要なパラメータ
- 血清中Ig濃度、血清中トランスフェリン濃度
- 尿中Ig濃度、尿中トランスフェリン濃度
参考
- http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/imed3/lab_2/page4/page4-7.html
- http://www.muikamachi-hp.muika.niigata.jp/ClinCal/SI.html
[★]
- 英
- idiopathic membranous nephropathy、idiopathic membranous glomerulonephritis
- 同
- 特発性膜性糸球体腎炎 idiopathic membranous glomerulonephritis
- 関
- 膜性腎症、ヘイマン腎炎、膜性糸球体症、特発性膜性糸球体腎炎
[★]
- 英
- secondary membranous nephropathy
- 関
- 膜性腎症
[★]
- 英
- nephropathy
- 同
- ネフロパシー、腎障害 renal damage
- 関
- 腎炎、ネフローゼ nephrosis
[show details]
[★]
- 英
- sis, pathy
[★]
- 英
- membranous、membraneous
- 関
- 膜状