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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2012/10/15 18:31:02」(JST)
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市中肺炎(しちゅうはいえん、community-acquired pneumonia)とは、普段の社会生活を送っている中で罹患した肺炎のこと。
疫学
厚生労働省の患者統計によると、外来患者として受診した呼吸器疾患の症例のうち、80%が感染症であり、肺炎はそのうち1%程度を占めている。なお、医療機関に入院して48時間以後に発症したものは院内肺炎(英語版)として区別される。
病原微生物
病原微生物としては、下記のようなものがある。
- 定型肺炎(一般細菌性肺炎)
- 肺炎球菌
- クレブシエラ・ニューモニエ(肺炎桿菌)
- インフルエンザ菌
- 黄色ブドウ球菌
- モラクセラ
- 非定型肺炎
- 細菌
- 偏性細胞内寄生菌
- ウイルス
- RSウイルス
- パラインフルエンザウイルス
- インフルエンザウイルス
- アデノウイルス
また、小児では年齢によって起炎菌が異なることも知られている。
名称 |
時期 |
肺炎好発起炎菌 |
新生児 |
出生後28日未満 |
B群溶血性連鎖球菌、大腸菌、ブドウ球菌 |
乳児 |
生後28日から1歳未満 |
ブドウ球菌、肺炎球菌 |
幼児 |
満1歳から小学校就学前 |
肺炎球菌、インフルエンザ桿菌 |
学童 |
小学生 |
マイコプラズマ、肺炎球菌 |
診断
現在、日本では日本呼吸器学会による市中肺炎ガイドラインが発行されており、検査所見、リスクファクターにのっとって診断を進める。
重症度分類
日本の市中肺炎ガイドラインによる重症度分類システムは、イギリス胸部疾患学会のCURB-65システムを参考にしたもので、A-DROPシステムと称する。
- 使用する指標
- Age - 男性70歳以上、女性75歳以上
- Dehydration - BUN 21mg/mL以上、または脱水あり
- Respiration - SpO2 90%以下(PaO2 60Torr以下)
- Orientation - 意識障害
- Pressure - 収縮期血圧 90mmHg以下
- 重症度分類
- 超重症 - 4〜5項目該当するか、1項目以上該当し、かつ、ショックが存在する場合であり、集中治療室での治療の適応となる。
- 重症 - 3項目該当する場合であり、入院治療の適応となる。
- 中等症 - 1〜2項目該当する場合であり、外来ないし入院治療の適応となる。
- 軽症 - 該当項目がない場合であり、外来での治療の適応となる。
定型/非定型
アメリカにおける肺炎のガイドラインでは定型肺炎と非定型肺炎の区別は不可能とされているが、日本の肺炎のガイドラインは区別が可能としている。定型肺炎と非定型肺炎は以下の6つの項目のスコアリングによって行うことができる。
- 年齢60歳未満。
- 基礎疾患がないあるいは軽微。
- 頑固な咳がある。
- 胸部聴診上所見が乏しい。
- 痰がない。あるいは迅速診断キットで原因菌が証明されない。
- 末梢血白血球が10,000/μl未満である。
以上の項目で、4項目以上に該当すれば非定型肺炎であり、3項目未満であれば定型肺炎である。なお、末梢血白血球数を除いた5項目で3項目以上ならば非定型肺炎であり、2項目未満であれば定型肺炎とする方法も存在し、これならば診療所でも判定可能である。
治療
病原微生物を特定し、これを標的にしぼった治療を行なうのが理想であるが、しばしば肺炎は急激な経過をとるため、受診後4時間以内(かつては8時間以内)の抗菌薬の開始が勧められており、エンピリック治療(英語版)を余儀なくされる場合が多い。この場合、#定型/非定型の鑑別が最優先となる。なお、アメリカのガイドラインではまずは定型肺炎のβラクタム薬と非定型肺炎の治療薬の併用を行い、培養の結果を見て片方を中止するという方法がとられているが、日本の場合は確信できなければ非定型肺炎の治療を行うように推奨されている。
治療方針
「化学療法 (細菌)」も参照
- 定型肺炎
- 基礎疾患や危険因子がなければβ-ラクタム系抗生物質が第一選択となる。アモキシシリンやβ-ラクタマーゼ阻害剤配合アンピシリン(スルタミシリントシル酸塩水和物)が典型的である。
- 65歳以上であったり基礎疾患を有する場合は、マクロライド系抗生物質やテトラサイクリン系抗生物質を併用する。慢性の呼吸器疾患がある場合はニューキノロン系抗生物質を使用する。従来より、レボフロキサシンなどのニューキノロン(IIa世代キノロン)が広く使われてきたが、トスフロキサシンなど第IIb世代以降のキノロン系薬剤はレスピラトリーキノロンと通称されており、より強い抗菌作用が認められている。
- 非定型肺炎
- クラリスロマイシンなどのマクロライド系抗生物質やテトラサイクリン系抗生物質が用いられる。また、特にレジオネラが疑われる場合、シプロフロキサシンなど静注用ニューキノロン系薬剤が第1選択となる。
効果判定
重症例では2日後、通常は3日後に初期抗菌薬の有効性の評価を行う。7日以内に有効性の評価と終了時期の評価を行い、14日以内に終了時期や薬剤の変更の評価を行う。
- 初期治療の効果判定
- 抗菌薬投与終了の目安
- 解熱(目安としては37度以下)
- 白血球増加の改善(正常化が目安)
- CRPの改善(最高値の30%以下への低下)
- 胸部X線写真の明らかな改善
基礎疾患がなければ上記項目4項目中3項目を満たした時点で、基礎疾患があれば4項目中3項目を満たした4日後に治療を終了する。
- 経口薬への変更時期
- 臨床的改善
- 薬物摂取が可能
- 血行動態が安定
- 胃腸管が機能
- 退院不可能な条件
- 解熱していない(37.8度以上)
- 脈拍数100/分以上
- 呼吸数24/分以上
- 酸素飽和度90%以下
- 経口投与不可能
上記項目の2つ以上が残っている場合は不可能とされている。
参考文献
- 渡辺彰 「市中肺炎」『内科診断学 第2版』 医学書院、2008年。ISBN 978-4260002875。
- 青木信樹 「市中肺炎」『今日の治療指針 2010年版』 医学書院、2010年。ISBN 978-4-260-00900-3。
- 三鴨廣繁、山岸由佳 『重症感染症治療において臨床現場で役立つ究極のエンピリック治療ハンドブック 第2版』 ユニオンエ-ス、2009年。ISBN 9784946519109。
気道感染 |
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上気道 |
風邪
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ライノウイルス - アデノウイルス - パラインフルエンザウイルス - RSウイルス - コロナウイルス - エコーウイルス - エンテロウイルス
|
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喉頭炎
|
急性喉頭蓋炎 - クループ
|
|
咽頭炎
|
|
|
下気道 |
急性細気管支炎
|
|
肺炎 |
原因
|
定型肺炎
|
グラム陽性
|
肺炎球菌 - 黄色ブドウ球菌
|
|
グラム陰性
|
肺炎桿菌 - インフルエンザ菌 - モラクセラ - 大腸菌 - 緑膿菌
|
|
|
非定型肺炎
|
ウイルス性
|
RSウイルス - インフルエンザ肺炎 - 重症急性呼吸器症候群
|
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肺真菌症
|
ニューモシスチス肺炎 - クリプトコッカス症 - アスペルギルス症
|
|
レジオネラ菌 - マイコプラズマ - クラミジア肺炎 - オウム病
|
|
|
抗酸菌症
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結核 - 非結核性抗酸菌症
|
|
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機序
|
市中肺炎 - 院内肺炎 - 誤嚥性肺炎
|
|
病態
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肺胞性肺炎
|
大葉性肺炎 - 気管支肺炎
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化膿性肺炎
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胸壁 |
膿胸
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UpToDate Contents
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Japanese Journal
- 画像診断ワンポイントレッスン(第5回)市中肺炎を見極める!--二次小葉に着目した読影のススメ
- 呼吸器内科 (特集 スーパーローテートで学ぶ 感染症診療のエッセンス) -- (各診療科別 感染症診療のエッセンス)
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★リンクテーブル★
[★]
- 65歳の男性。 10日前から市中肺炎の治療のため入院中である。肺炎は第三世代セフェム系抗菌薬による治療で軽快し、 3日前に投薬終了となった。 2日前から下痢が出現し、昨日は下痢が10回以上認められた。
- 体温37.2℃。脈拍96/分、整。血圧128/80mmHg。呼吸数16/分。胸部に異常を認めない。腹部は平坦、軟で、圧痛を認めない。腸雑音の亢進を認める。直腸指診で異常を認めない。下部消化管内視鏡写真(別冊No. 7)を別に示す。
- 治療のために経口投与するのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [106A028]←[国試_106]→[106A030]
[★]
- 87歳の男性。意識障害のため施設の職員に連れられて来院した。2日前から38℃台の発熱があり、今朝から意識レベルの低下が認められている。5年前から脳梗塞の後遺症で常時介護が必要な状態であり、1年前から家族による介護が困難となったため、特別養護老人ホームに入所している。胸部エックス線写真で右下肺野に浸潤影を認める。
- この患者の肺炎の分類として正しいのはどれか。2つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [111A051]←[国試_111]→[111A053]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [109I006]←[国試_109]→[109I008]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [105A004]←[国試_105]→[105A006]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [103C006]←[国試_103]→[103C008]
[★]
[★]
- 英
- community-acquired pneumonia
- 関
- 市中肺炎
[★]
- 英
- pneumonia pneumonitis
- 関
疫学
- 日本の肺炎の受療率は人口10万対3、死亡率は人口10万対7。死因順位は第4位である。
- 受療率・罹患率共に高齢になるに従い急激に増加し、85歳以上の男性では死因第2位、90歳以上の男性では死因第1位となる(ガイドライン1)。
- 死亡者の95%以上が高齢者である。
- 年代と病原体
日本における肺炎の年齢階級別受療率と死亡率(人口10 万対,2002 年)
- ガイドライン1 2004 年「国民衛生の動向」 改変
|
年齢階級
|
総数
|
15~
|
25~
|
35~
|
45~
|
55~
|
65~
|
75~
|
85~
|
90~
|
19
|
29
|
39
|
49
|
59
|
69
|
79
|
89
|
|
受療率
|
外来
|
6
|
3
|
4
|
3
|
3
|
6
|
7
|
14
|
21
|
21
|
入院
|
19
|
2
|
3
|
2
|
3
|
7
|
21
|
86
|
309
|
489
|
死亡率
|
男性
|
76.4
|
0.5
|
0.5
|
1.5
|
4.6
|
15.2
|
69.2
|
339
|
2087
|
4317
|
女性
|
62.7
|
0.3
|
0.5
|
0.9
|
1.9
|
5.6
|
22.4
|
144
|
934
|
2291
|
総数
|
69.4
|
0.4
|
0.5
|
1.2
|
3.2
|
10.3
|
44.6
|
249
|
1291
|
2787
|
分類
発症の場
原因
病理
- 上気道から連続的に下気道へ、あるいは、直接下気道に及んでいる。炎症は上皮に包まれた管腔内
肺炎の比較
ガイドライン
[★]
- 関
- 炎光、炎症