出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/01/09 11:29:45」(JST)
神経(しんけい、英: Nerve)は、動物に見られる組織で、情報伝達の役割を担う。
日本語の「神経」は杉田玄白らが解体新書を翻訳する際、神気と経脈とを合わせた造語をあてたことに由来しており、これは現在の漢字圏でもそのまま使われている。
全体の構造からみると、情報の統合のため体正中部に集合して存在する「中枢神経系」と、中枢外に存在し、個別に線維として認識される「末梢神経系」とに分けられる。末梢では、繊維(線維)の形態が神経繊維束(神経線維束)として明瞭に認められるために、これのみを「神経」と呼ぶことも多い。神経細胞の核を含む部分は「核周部 (perikaryon)」と呼ばれ、小胞体やゴルジ体を含み、タンパク合成の中心的部分となっている。神経細胞は多数の突起を持つが、これらは核周部に向かって情報を運ぶ「樹状突起 (dendrite)」と、核周部から離れた方向に情報を運ぶ「軸索 (axon)」とに分類される。軸索の末端は他の神経や効果器官と、わずかな空間 (1/50,000mm) を隔ててシナプスを形成する。
神経細胞や軸索が単独で存在することは少なく、集団をなすことが多い。一定の機能を持つ神経細胞の核周部が、中枢において集まった場合、この集団を「神経核 (nucleus)」と呼び、末梢では「神経節 (ganglion)」という名で呼んでいる。また哺乳類では、大脳や小脳の表面に神経細胞が隙間なく並んで層状の灰白質を形成する皮質(大脳皮質、海馬、小脳皮質など)がつくられる。
中枢の核や、末梢の神経節に出入りする神繊維維も、まとまって走行することが多いが、各神経繊維は直接接するのではなく、神経膠細胞 (neuroglia) によって支持されたり、被覆・絶縁されたりしている。神経軸索を直接被覆するグリア細胞として、有髄神経の鞘を作り、跳躍伝導に寄与することにより、神経の伝導速度を飛躍的に早めているシュワン細胞(中枢では、希突起膠細胞、oligodendroglia)が有名である。末梢では、神経線維は関節や筋肉周辺を走るために、体の運動に伴った伸張・変形が起こる際に、線維をどう守るかが重要である。肉眼的に認められる神経は、グリアに被覆された神経軸索の束が、更に膠原線維により、神経上膜・周膜・内膜と、三重に取り囲まれた構造物として存在するのである。このようにして末梢神経が多少牽引されても、コラーゲン線維の抗張性により保護される。中枢神経は、多くの場合強固な骨(頭蓋・脊柱)内に格納され、変形することはほとんどないので、コラーゲン成分の少ない部分として知られている。
神経は、19世紀に発達した組織染色技術を適用しても全く染まらず、その染色に懸賞金がかけられる程であった。神経染色に初めて成功したのは、20世紀初頭の時代で、イタリアのカミッロ・ゴルジと、スペインのサンティアゴ・ラモン・イ・カハールであった。しかしシナプス間隙は光学顕微鏡では観察されない狭さだったために、1906年に二人がノーベル賞を授けられた時点では、神経全てが網目を作って一体性をなすというゴルジの考え(網状説)と、神経は多数のニューロン単位から構成されるというラモン・イ・カハールの考え(ニューロン説)が対立していた(ニューロンという名称を提案したのはドイツのハインリヒ・フォン・ワルダイエルである)。電子顕微鏡によって神経細胞の間にシナプス間隙がみつかり、ニューロン説の正しさが証明されたのは、1955年になってからである。
一つの神経細胞内を膜電位の変化により情報が運ばれることを「伝導」、軸索末端に達した電気的変化が細胞膜の微細構造的変化(開口分泌)を起こして、特有な物質が放出されて情報が運ばれることを「伝達」と呼んでいる。フランスのルイ=アントワーヌ・ランヴィエは、軸索を取り巻く髄鞘に切れ目があること(ランヴィエの絞輪)に着目し、髄鞘が絶縁体となっていることを示唆した(1878年)。このことをカエルの単一神経線維を使って実験し、跳躍伝導を初めて記録したのは日本の田崎一二(1939年)であった。そして1952年、この電気的興奮が、細胞膜内外のナトリウムイオンとカリウムイオンの濃度勾配の変化(活動電位)によって生じることを示したのは、イギリスのアラン・ロイド・ホジキンとアンドリュー・フィールディング・ハクスリーである。
ニューロン間の伝達が実際に化学的物質の放出を含む現象であることは、オットー・レーヴィ(1924年)が二つのカエル心臓の一方のみの迷走神経を刺激して証明した。この事実から、神経と内分泌調節が特定の化学物質を介した共通点を持つことが理解されるようになり、後年「神経分泌」現象の認知に道が開かれることになった。
神経を分類するには、構造的・機能的な観点によるが、一長一短がある。上にあげた中枢と末梢の名称は完全に構造的な区別によるもので、これを更に推し進めると、脳神経、脊髄神経のように、どの部分から神経が出ているかの細分に続く。しかし中枢と末梢は実際には切れ目なく続いている。機能的には、運動神経(体性および内臓)と知覚神経(体性および内臓知覚)に大別されるが、内臓の運動・知覚に関係するものは、自律神経としてまとめられ、更に自律神経は交感神経と副交感神経とに分けられる。また体性運動・知覚に関するものを「動物神経系」、内臓運動・知覚に関するものを「植物神経系」としてまとめることも行われる。しかし一本の末梢神経を例に取っても、純粋に一つの機能を持った神経が束ねられたものは少なく、機能的に異なる神経が混在することから、神経の分類の困難さがわかる。
内分泌を通じた情報伝達に比較して、
という上記のことから、神経が短時間で微細な調節を担うことがわかるであろう。
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B
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E
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A
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肉単P | 筋名 | 起始 | 停止 | 支配神経 | 機能 | |
K-12 | 肩甲挙筋 | C1-C4(横突起) | 肩甲骨(上角・内側縁上部) | 肩甲背神経 | 肩甲骨の挙上、下方回旋 | |
K-14 | 大菱形筋 | T1-T4(棘突起) | 肩甲骨(内側縁下部) | 肩甲背神経 | 肩甲骨の後退、下方回旋 | |
K-13 | 小菱形筋 | C6・C7(棘突起) | 肩甲骨(内側縁上方) | 肩甲背神経 | 肩甲骨の後退、挙上、下方回旋 | |
K-16 | 僧帽筋 | 上部 | 後頭骨、項靱帯 | 鎖骨(外側1/3) | 副神経と頚神経叢 | 肩甲骨の後退、挙上、上方回旋 |
T1-T6(棘突起)、棘状靱帯 | 肩甲骨(肩峰、肩甲棘) | 副神経と頚神経叢 | 肩甲骨の後退 | |||
T7-T12(棘突起)、棘状靱帯 | 肩甲骨(肩甲棘) | 副神経と頚神経叢 | 肩甲骨の後退、下制、下方回旋 | |||
K-01 | 前鋸筋 | 第1~8肋骨(外側面中央部) | 肩甲骨(内側縁の肋骨面) | 長胸神経 | 肩甲骨の前進、わずかに上方回旋、肋骨の挙上 | |
鎖骨下筋 | 第1肋骨と肋軟骨の境界 | 鎖骨内側1/3の下面 | 鎖骨下神経(第5・第6頚神経) | 鎖骨を固定し下制する | ||
K-03 | 小胸筋 | 第3~5肋骨 | 肩甲骨(烏口突起) | 内側胸筋神経 | 肩甲骨の下制、わずかに下方回旋、肋骨の挙上 | |
L-01 | 大胸筋 | 鎖骨部 | 鎖骨(内側1/2) | 上腕骨(大結節稜) | 内側胸筋神経、外側胸筋神経 | 肩関節の内転、内旋、屈曲、水平屈曲 |
胸肋部 | 胸骨、第1~6軟骨 | 肩関節の内転、内旋、屈曲、水平屈曲 | ||||
腹部 | 外腹斜筋の腱膜 | 肩関節の内転、内旋、屈曲、水平屈曲 | ||||
L-03 | 広背筋 | T6-L5の棘突起、仙骨、腸骨 | 上腕骨(結節間溝、小結節稜) | 胸背神経 | 肩関節の伸展(後方挙上)、内旋、内転 | |
M-01 | 三角筋 | 鎖骨部・前部 | 鎖骨(外側1/3) | 上腕骨(三角粗面) | 腋窩神経 | 肩関節の屈曲、内旋、水平屈曲 |
肩峰部・中部 | 肩甲骨(肩峰) | 肩関節の外転 | ||||
肩甲棘部・後部 | 肩甲骨(肩甲棘下縁) | 肩関節の外転、伸展、水平伸展 | ||||
L-12 | 小円筋 | 肩甲骨(外側縁・下角) | 上腕骨(大結節) | 肩関節の内転、伸展、外旋 | ||
L-10 | 棘上筋 | 肩甲骨(棘上窩) | 肩甲上神経 | 肩関節の外転 | ||
L-11 | 棘下筋 | 肩甲骨(棘下窩) | 肩関節の外旋、伸展 | |||
L-13 | 肩甲下筋 | 肩甲骨(肩甲下窩) | 上腕骨(小結節) | 肩甲下神経 | 肩関節の内旋、水平屈曲 | |
L-14 | 大円筋 | 肩甲骨(外側縁・下角) | 上腕骨(結節間溝、小結節稜) | 肩関節の伸展(後方挙上)、内転、内旋 | ||
M-02 | 烏口腕筋 | 肩甲骨(烏口突起) | 上腕骨(内側縁) | 筋皮神経 | 肩関節の内転、屈曲 | |
M-11 | 上腕二頭筋 | 長頭 | 肩甲骨(関節上結節) | 橈骨(橈骨粗面) | 肘関節の屈曲、前腕の回外 | |
短頭 | 肩甲骨(烏口突起) | 橈骨(橈骨粗面)、前腕筋膜 | 肘関節の屈曲、前腕の回外 | |||
M-17 | 上腕筋 | 上腕骨(遠位2/3の前面) | 尺骨(尺骨粗面) | 肘関節の屈曲 | ||
M-6 | 上腕三頭筋 | 長頭 | 肩甲骨(関節下結節) | 尺骨(肘頭) | 橈骨神経 | 肘関節の伸展 |
外側頭 | 上腕骨(後面) | 肘関節の伸展 | ||||
内側頭 | 上腕骨(前面) | 肘関節の伸展 | ||||
M-18 | 腕橈骨筋 | 上腕骨(外側上顆) | 橈骨(茎状突起) | 肘関節の屈曲、前腕を回内、回外位から半回内位に回旋 | ||
N-2 | 回外筋 | 上腕骨(外側上顆、外側下部) | 橈骨(近位外側面) | 前腕の回外 | ||
P-1 | 長橈側手根伸筋 | 上腕骨(外側上顆)、尺骨(回外筋稜) | 第2中手骨(骨底背面) | 手関節の背屈、橈屈 | ||
P-2 | 短橈側手根伸筋 | 上腕骨(外側上顆) | 第3中手骨(骨底背面) | 手関節の背屈、橈屈 | ||
P-3 | 尺側手根伸筋 | 上腕骨頭 | 上腕骨(外側上顆) | 第5中手骨(骨底背面) | 手関節の背屈、尺屈 | |
尺骨頭 | 尺骨(斜線と後縁) | 第5中手骨(骨底背面) | 手関節の背屈、尺屈 | |||
N-1 | 方形回内筋 | 尺骨(遠位1/4の前面) | 橈骨(遠位1/4の前面) | 正中神経 | 前腕の回内 | |
N-3 | 円回内筋 | 浅頭・上腕骨頭 | 上腕骨(内側上顆) | 橈骨(中央の外側面) | 前腕の回内 | |
深頭・尺骨頭 | 尺骨(鈎状突起) | 橈骨(中央の外側面) | 前腕の回内 | |||
O-1 | 橈側手根屈筋 | 上腕骨(内側上顆) | 第2中手骨、第3中手骨(骨底前面) | 手関節の掌屈、橈屈 | ||
O-3 | 長掌筋 | 上腕骨(内側上顆) | 手首の屈筋支帯、手掌腱膜 | 手関節の掌屈、手掌腱膜の緊張 | ||
O-6 | 長母指屈筋 | 橈骨(中部の前面) | 母指末節骨(掌側面) | 母指の屈曲(主にIP関節) | ||
O-4 | 尺側手根屈筋 | 上腕骨頭 | 上腕骨(内側上顆) | 豆状骨、豆中手靭帯、第5中手骨 | 尺骨神経 | 手関節の掌屈、尺屈 |
尺骨頭 | 尺骨(肘頭、後面上部) | 豆状骨、豆中手靭帯、第5中手骨 | 手関節の掌屈、尺屈 |
# | 神経 | 由来 | |
1 | 肋間上腕神経 | intercostobrachial nerve | T2 |
2 | 内側上腕皮神経 | medial cutaneous nerve of arm | 内側神経束 |
3 | 内側前腕皮神経 | medial cutaneous nerve of forearm | 内側神経束 |
4 | 上外側上腕皮神経 | superior lateral cutaneous nerve of arm | 腋窩神経 |
5 | 下外側上腕皮神経 | inferior lateral cutaneous nerve of arm | 橈骨神経 |
6 | 外側前腕皮神経 | lateral cutaneous nerve of forearm | 筋皮神経 |
7 | 後上腕皮神経 | posterior cutaneous nerve of arm | 橈骨神経 |
8 | 後前腕皮神経 | posterior cutaneous nerve of forearm | 橈骨神経 |
腹側 | 背側 | ||
外側 | 内側 | ||
上腕上部 | 4 | 1 | |
上腕下部 | 5 | 2 | 7 |
前腕 | 6 | 3 | 8 |
前頭骨 | |||
蝶形骨 | 篩骨 | 涙骨 | |
頬骨 | 口蓋骨 | ||
上顎骨 |
解剖 | 血管 | 神経 | |
視神経管 | 眼動脈 | 視神経 | CN II |
上眼窩裂 | 上眼静脈 | 滑車神経 | CN IV |
涙腺神経 | CN V1 | ||
前頭神経 | CN V1 | ||
動眼神経 | CN III | ||
鼻毛様体神経 | CN V1 | ||
外転神経 | CN VI | ||
交感神経 | |||
下眼窩裂 | 下眼静脈 | 上顎神経 | CN V2 |
総腱輪の内 | |||
総腱輪の外 |
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