出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2012/08/18 14:46:23」(JST)
ウィキペディアは医学的助言を提供しません。免責事項もお読みください。 |
橋本病 | |
---|---|
分類及び外部参照情報 | |
慢性甲状腺炎の組織像
|
|
ICD-10 | E06.3 |
ICD-9 | 245.2 |
OMIM | 140300 |
DiseasesDB | 5649 |
eMedicine | med/949 |
MeSH | D050031 |
慢性甲状腺炎(まんせいこうじょうせんえん、英: Chronic thyroiditis)あるいは橋本病(はしもとびょう、英: Hashimoto's thyroiditis)は、甲状腺における自己免疫疾患の一種である。 この病気は、自己免疫疾患として認識された最初の病気であった。
慢性甲状腺炎は、北アメリカおよび日本[1]における原発性甲状腺機能低下症の原因のなかでもっとも頻度が高いものと考えられている。女性に多く(男性の10倍から20倍)、また45歳から65歳の年齢層で多くみられる。
目次
|
多くの自己免疫性疾患と同様に遺伝因子と環境因子の組み合わせで発症すると考えられており、家族歴が認められることもある。関連が示されている遺伝子としてはHLA-DR多型、HLA-DR3、HLA-DR4、HLA-DR5、T細胞の調節因子であるCTLA-4の多型と橋本病の発症には関連性が示されている。しかし、これらの遺伝子との関連は1型糖尿病、アジソン病、悪性貧血、白斑症をはじめ多くの自己免疫性疾患でも明らかになっている。
関連する遺伝子の種類は人種により大きく異なっており、またターナー症候群やダウン症候群、およびクラインフェルター症候群などの染色体異常の患者では有病率が高くなるとされる。また慢性的なヨウ素の過剰摂取は甲状腺機能低下症や甲状腺腫を誘発されることが知られているが橋本病の患者はさらに影響を受けやすいことが知られている。
病理学的な特徴としてはリンパろ胞の形成、甲状腺上皮細胞の変性、結合組織の新生、円形細胞のびまん性浸潤である。2010年現在、病理生検によって橋本病の診断を行うことは非常に稀であり、甲状腺ペルオキシダーゼやサイログロブリンに対する自己抗体を用いて診断される場合が多い。しかし、これらの抗体は胎盤移行性があるにも関わらず、胎児に影響を与えないことが知られている。抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(抗TPO抗体)、抗サイログロブリン抗体(抗Tg抗体)は臨床上は重要な診断マーカーであるが病因としては進行中の自己免疫反応を増幅させる二次的なものである。
バセドウ病がB細胞が産出する甲状腺刺激ホルモン受容体(TSHレセプター)に結合するTSH受容体抗体によって引き起こされる甲状腺濾胞細胞の機能亢進と増殖が病態の本態であるのに対して橋本病はT細胞による組織破壊が病態の中心であると考えられている。
慢性甲状腺炎により甲状腺機能低下が起こるとされるが、慢性甲状腺炎の症例全体の中で、甲状腺機能の指標のひとつである血清遊離サイロキシン (fT4) 濃度が低下している症例は約4分の1程度にとどまる[2]。明らかな甲状腺機能異常を伴わない症例や、甲状腺刺激ホルモン (TSH) 値が軽度上昇するも血清fT4濃度や血清遊離トリヨードサイロニン (fT3) 濃度の低下がみられない、潜在的甲状腺機能低下症の段階にとどまる症例の方が多い[2]。また、病初期の急性期には一時的に「ハシトキシコーシス (Hashitoxicosis)」と呼ばれる甲状腺中毒症の状態になり甲状腺機能の亢進が起こることがある。
白血球、とくにTリンパ球の甲状腺への浸潤も特徴的である。非ホジキンリンパ腫との関連が指摘されている。
診察所見としてはびまん性の甲状腺腫大がみられる。また、病初期には甲状腺機能亢進による症状(体重減少、脈拍数の増加など)を呈しうるが、その後は甲状腺機能低下に起因する症状が出現する。体重増加、うつ状態、全身の疲れ、脈拍数の低下、高コレステロール血症、便秘、記憶力の低下、不妊、毛髪の脱落などが起こりうる[3]。
日本甲状腺学会によりガイドライン案が策定されている[4]。これによると、臨床所見としてはびまん性の甲状腺腫大(ただしバセドウ病などの別疾患によるものを除外する)を、また検査所見は甲状腺の自己抗体(抗甲状腺マイクロゾーム抗体、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体、抗サイログロブリン抗体)、または 細胞診におけるリンパ球の浸潤所見を確認し、臨床所見の存在ならびに検査所見のうちいずれか1つの陽性をもって慢性甲状腺炎の診断がなされる。抗甲状腺抗体は細胞診と比較して感度、特異度ともに高い検査と考えられている[5]。
慢性甲状腺炎であることの診断には甲状腺ホルモン値は影響しないが、甲状腺機能異常の合併がよくみられること、また甲状腺機能異常に対しては治療介入が必要であることから、甲状腺機能異常を念頭においた問診と、甲状腺機能(前述のfT4, fT3, TSH値)の測定も必要である。
超音波検査の所見は特異的ではないが、甲状腺腫大に加え、リンパ球の浸潤に伴う不均一な低エコーの所見がみられることが多い[2][4]。
甲状腺腫大が軽度で、甲状腺機能低下のない症例では、特別な治療は行わずに、年に1回程度の診察で経過を観察する[2]。慢性甲状腺炎患者においては甲状腺機能は変動しやすいため、定期的な経過観察が勧められる。また甲状腺機能異常(低下症や亢進症)の症状が出現したときには主治医を受診する必要がある[1]。
甲状腺機能低下を伴う症例に対しては、甲状腺ホルモン剤の補充を行う。一般には合成サイロキシン (T4) 製剤であるレボチロキシンナトリウム(商品名・チラーヂンS)の内服を行うことが多い。T4製剤の場合、血中半減期が長い(約7日)ため、1日1 回の内服で血中の甲状腺ホルモン濃度をコントロールできる[6]。TSHの正常化が投与量の目安となる[1]。
人間ドック受診者を対象とした研究[7]では抗TPO抗体、抗Tg抗体のいずれかが陽性であったものはおよそ18%程度認められるとしている。米国のNHANSEⅢという研究でも同様の結果[8]が得られている。このうち長期経過観察で実際に甲状腺機能低下症を示すものはおよそ20%とされている。即ち、甲状腺学会の診断基準における疑い例を含めると一般人口の18%が慢性甲状腺炎と考えられる。
甲状腺自己抗体は多くの自己免疫性疾患の患者で陽性となるとされており橋本病の合併が疑われる。自己免疫性疾患の中では関節リウマチ、SLEなどにおける合併がよく知られているが、線維筋痛症との合併率は40%と圧倒的に多く、甲状腺自己抗体陽性例と陰性例では臨床像では差が認められないものの、重症度が陽性例の方が強い傾向が示唆されている[9]。
甲状腺機能異常に伴う神経症状としては甲状腺機能低下症による意識障害、認知症、運動失調などを来す粘液水腫脳症、甲状腺機能亢進症に伴う痙攣、躁状態、妄想、不随意運動をきたす甲状腺中毒脳症などが知られている。これらは甲状腺ホルモンの値の正常化によって改善される。これとは別に甲状腺ホルモン値の異常が軽度もしくは正常範囲にも関わらず神経症状をしめすことが知られ、ステロイドによって改善が認められる症候群が知られている。橋本病の合併が多いことからこのような群を橋本脳症と呼ぶ。
エポニムである「橋本病」(あるいは橋本甲状腺炎)の名称は、九州大学の医学者であった内科医の橋本策の姓から由来する。橋本はこの病気を1912年にドイツの学術誌において初めて発表した[10]。
詳細は「橋本策」を参照
[ヘルプ] |
この「慢性甲状腺炎」は、医学に関連した書きかけ項目です。この記事を加筆・訂正などしてくださる協力者を求めています(プロジェクト:医学/Portal:医学と医療)。 |
全文を閲覧するには購読必要です。 To read the full text you will need to subscribe.
国試過去問 | 「104C027」「104C026」「102I057」「104B017」「089E019」「096H056」「104E010」「098G060」「072A055」「086B051」 |
リンク元 | 「試験」「甲状腺機能低下症」「甲状腺」「うつ病」「アレルギー」 |
関連記事 | 「病」 |
C
※国試ナビ4※ [104C026]←[国試_104]→[104C028]
D
※国試ナビ4※ [104C025]←[国試_104]→[104C027]
※国試ナビ4※ [102I056]←[国試_102]→[102I058]
C
※国試ナビ4※ [104B016]←[国試_104]→[104B018]
C
※国試ナビ4※ [096H055]←[国試_096]→[096H057]
BE
※国試ナビ4※ [104E009]←[国試_104]→[104E011]
D
※国試ナビ4※ [098G059]←[国試_098]→[098G061]
月経前の婦人集団 | 集団サイズ(人) | 患者全体に占める割合(%) | ||
月経周期正常 | 無月経・希発月経 | 過多月経 | ||
甲状腺機能低下症 | 171 | 77 | 16 | 7 |
健常者 | 214 | 92 | 7 | 1 |
n | 峡部 | 横断厚 | 横径 | 縦経(右) | 縦経(左) | |
男性 | 34 | 1.8±0.6 | 18±3.0 | 48±4.8 | 49±3.7 | 49±3.8 |
女性 | 16 | 1.3±0.8 | 16±2.2 | 46±3.6 | 45±6.0 | 46±3.0 |
Henry Gray (1825-1861). Anatomy of the Human Body. 1918.
Henry Gray (1825-1861). Anatomy of the Human Body. 1918.
Henry Gray (1825-1861). Anatomy of the Human Body. 1918.
[★] 鬱病
I型アレルギー | II型アレルギー | III型アレルギー | IV型アレルギー | V型アレルギー | |||
免疫反応の主体 | IgE | IgM, IgG | 免疫複合体 | Th1細胞 | Th2細胞 | Tc細胞 | IgG |
抗原 | 水溶性抗原 | 細胞や マトリックスに 結合している抗原 |
水溶性抗原 | 水溶性抗原 | 水溶性抗原 | 細胞関連の抗原 | 細胞表面レセプター |
エフェクター機構 | 肥満細胞の活性化 | 補体 (CDC)|NK細胞、好中球 (ADCC) | 補体、好中球 | マクロファージの活性化 | IgE産生、好酸球と肥満細胞活性化 | 細胞障害 | 抗体の結合 |
アレルギー疾患の例 | 気管支喘息 アレルギー性鼻炎 花粉症 喘息 蕁麻疹 アトピー性皮膚炎 ラテックスアレルギー |
ABO不適合輸血 新生児溶血性貧血 グッドパスチャー症候群 自己免疫性溶血貧血 AIHA 特発性血小板減少性紫斑病 ITP 橋本病 超急性移植片拒絶反応 |
アルツス反応 アニサキス症 トリ飼い病 農夫肺 血清病 急性糸球体腎炎 ループス腎炎(SLE) 関節リウマチ 過敏性肺臓炎 アレルギー性気管支肺アスペルギルス症 |
接触性皮膚炎 ツベルクリン反応 慢性肉芽腫症 |
慢性喘息 慢性アレルギー鼻炎 |
移植片拒絶 | 慢性蕁麻疹 バセドー病 重症筋無力症 |
検査方法 | RAST法 RIST法 皮内反応 プリックテスト スクラッチテスト 負荷試験 |
免疫組織染色 凝集反応(完全抗体) 凝集反応(不完全抗体, クームステスト) |
皮内反応 |
.