被害的内容 | 統合失調症に多い |
迫害妄想 | 自分が迫害されているという妄想 |
被害妄想 | 他人から悪意をもって害されていると信じる妄想 |
追跡妄想 | 追跡されているという妄想 |
関係妄想 | 周囲に起こっている現実を自らに結びつけて考える妄想 |
注察妄想 | 「常に盗聴されている」とか「隠しカメラで監視されている」と思い込む妄想 |
被毒妄想 | 食事に毒を入れられているという妄想 |
嫉妬妄想 | 恋人が浮気していると確信する |
盗害妄想 | 自分の物を盗まれたと思い込む妄想 |
誇大的内容 | 躁状態、統合失調症 |
誇大妄想 | 自己を過剰評価したり、地位・財産・能力があるように思い込む妄想 |
血統妄想 | 自分が高貴な家系と確信する妄想 |
宗教妄想 | 自分が宗教上の救世主と確信する妄想 |
発明妄想 | 自分がすばらしい発明したと確信する妄想 |
恋愛妄想 | 他人が自分を愛しているという妄想 |
微小的内容 | うつ状態 |
貧困妄想 | 自分は非常に貧しい、借金を抱えてしまったなどと信じる妄想 |
罪業妄想 | 自分は非常に悪い存在だ、罰せられるべきだ、皆に迷惑をかけているなどと思いこむ妄想 |
心気妄想 | 自分の身体の一部が病気にかかっていると思いこむ妄想 |
虚無妄想 | 自分の体や世界がなくなったと確信する妄想 |
出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2012/11/14 04:45:01」(JST)
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妄想(もうそう:delusion)とは、非合理的かつ訂正不能な思いこみのこと。妄想を持った本人にはその考えが妄想であるとは認識しない(むしろ病識がない)場合が多い。精神医学用語であり、根拠が薄弱であるにもかかわらず、確信が異常に強固であるということや、経験、検証、説得によって訂正不能であるということ、内容が非現実的であるということが特徴とされている。日常的な会話でも用いられることもあるがそのときはいかがわしい考えや空想を表し、必ずしも病的な意味合いを含むわけではなく軽い意味で使われている。
妄想と一言にくくっても、その内容や程度は個人差が大きい。軽度で生活に支障をほとんど来さないものから重大な支障を来すようなものまで様々である。本人が妄想であるとは自覚していない(「病識」がない)ことが多いが、漠然と非合理性に気づいている場合(いわゆる「病感」がある状態)、あるいは他者の前では隠すことができ生活に適応している場合(いわゆる「二重見当識」)など様々である。
目次
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様々な精神疾患(統合失調症、躁うつ病、うつ病、痴呆、せん妄、あるタイプのてんかん、急性薬物中毒、覚醒剤乱用など)に伴って生じることがある。しかし、健常者においても断眠や感覚遮断など特殊な状況に置かれると一時的に妄想が生じることもある。
また、原因となる基礎疾患によっても生じる妄想の種類が異なる傾向があり、統合失調症に多いのは被害妄想、関係妄想、誇大妄想などで、うつ病に典型的なのは罪業妄想、心気妄想、貧困妄想であるとされているが、必ずしも全例に当てはまる訳ではない。
古典的には、まったく根拠を持たない妄想を一次妄想(「あの人はまだ自分がxxであることに気づいてない。」「おれはナポレオンの生まれ変わりだ」「近所の人たちが私を電波で攻撃している」など)、何かしらの経験と関わりがある妄想を二次妄想(「私の病気は不治の病なのだ」「皆の不幸は私のせいなのだ」など)と区別している。しかし、一次妄想と考えられる妄想にも本人なりの理由が存在している場合も多く、真の無意味で根拠のない妄想はまれである。了解可能か否かで一次妄想と二次妄想を区別するという定義もあるが、「私の病気は不治の病なのだ」という妄想も抑うつ気分から悲観的妄想が出現していれば理解可能であるが健康なひとがそのような妄想をもっていれば了解不能であるため、これらの区別は難しい。偏見との区別も難しく、考えの根拠を聴取し、ひとつひとつ反証していくことで妄想と明らかになるが、文化が異なる反証であるとその方法は有効ではなくなる。
さらに一次妄想は以下の5つに細分化されている。
妄想知覚などは統合失調症でよくみられる現象である。二次妄想はうつ病でよく見られる現象である。心気妄想、微小妄想などが有名である。「なんとなく胃が痛い、病院にいって検査しても異常がない、心療内科の受診を勧められ、それでうつ病と診断される」こういったエピソードが心気妄想には多い。
大半がうつ病によく見る病状でもある。
誇大妄想は、現実的な状況から逸脱し、自己を過剰評価したり、実際には存在しない地位・財産・能力があるように思い込んでいる状態である。躁病によく見られる。誇大妄想の原因として評価基準の甘さと自己と他者の評価のバランスの悪さがある。
詳細は「被害妄想」を参照
他人から悪意をもって害されていると信じる妄想。何らかの犯罪的な干渉を受けていると信じこみ、事業や就職などにおいて失敗しても、他者からの攻撃で失敗したと考えたり、「脳内に何らかの機器を埋め込まれ、意識や行動を操作されている」と考えたりする。
「常に盗聴されている」とか「隠しカメラで監視されている」と思い込む妄想。
周囲に起こっている現実を自らに結びつけて考える妄想。周囲の行動・言葉に過敏で自己に関係して捉えるがそれに動じることも多く妄想まで発展し現実離れしていく。
自分の物を盗まれたと思い込む。認知症によく見られる。
「自分は非常に悪い存在」「罰せられるべきだ」「皆に迷惑をかけている」などと思いこむ妄想。うつ病によく見る病状の一つでもある。
自分の身体の一部が病気にかかっていると思いこむ妄想。実際に病気に罹っていても、その症状が自分の思っているより非常に軽い場合もこの種類に分類される。
現実にはそうでないにも関わらず、「自分は非常に貧しい」「借金を抱えてしまった」などと信じる妄想。
誇大妄想の延長上、またはひとつの症状として考えられる。統合失調症のひとつの症状としても考えられているが、自分自身に何か超次元的で特別なパワーがあると信じたり、霊界のような所から特別な預言や啓示を受けた、またはあらゆる病気を癒す力を授けられたなど、内容が極めて非日常的で壮大なものであり、訂正不能な強固な確信があることが特徴で、現実世界からは考え得ることのできない壮大なスケールによって描かれる妄想が大半である。つまり自分自身を“神”の化身であると信じてしまう症例である。人格崩壊まで至るケースは稀であるが憑依妄想を共に発症するケースがある。これが極端になると新興宗教の教祖にまでなってしまうケースも見受けられる。
不死妄想、Capgras妄想、被毒妄想、恋愛妄想、血統妄想など(詳しくは統合失調症参照)。嫉妬妄想は隠される場合が多い。
統合失調症では中脳辺縁系のドパミン神経の過活動が妄想、幻覚の発生に関与していることが示唆されている。うつ病やせん妄に伴って生じる妄想に対してもドパミン遮断薬である抗精神病薬が有効であることなどから、それらの疾患でもドパミン神経系の過活動が関与していることが推測される。
戦争や災害の被災者や凶悪事件等の被害者が、一時的に妄想状態に陥ることがある。これは、現実から遊離する事によって精神的なダメージを回避しているとみなすこともできる。統合失調症などの疾患においての妄想ですら、過剰なストレスが精神を破壊しないようにするため逃げ場であるという見方すらできる(ジョン・シュタイナー「こころの退避」参照)。但し安全装置という観点では妄想の代わりに衝動性が生じることもある(いわゆる、キレる状態)。
しかし安全装置であるとはいえ病的な方法であることには間違いなく、治療が必要である。そして、本人にとっては安全装置であったがゆえに、治療の途中で激しい抵抗に遭うことは珍しくない。それなりに安住の地であった妄想の世界から現実の世界を直視することは苦しみを伴うのである。ここでいかに本人のペースを尊重しつつ、希望や安心感を与えつつ現実と折り合いをつけてもらうかが、精神科医や援助者の力量が問われるところである。
その妄想に対して否定的な現実を敵視したり、妄想を認めない他人に攻撃的になることがある。ときには暴力に結びつくこともある。周囲からみれば異常な行動をとり、周囲に疎まれ孤立したり攻撃されたりする危険がある(例としては「警察に電波で盗聴されている」と思い込み、警察に「そのような捜査が許されるのか」と乗り込んだり、それで相手にされなかったり警察が否定すると警視庁のトップや大臣、果ては総理大臣に記録が残るかたちで質問状を送る、当然相手にされるはずがないが、それで満足な回答が得られないと「答えられないのには理由があるはずだ」などと極めて強引かつ自分にいいように解釈するというものがある。インターネットのウェブサイトやブログ上でその主張を公開する者も多い)。本来、社会的動物である所の人間が社会から逸脱する事は、当人にとっても周囲にとっても非常にダメージが大きい。妄想が回復した後の社会復帰にも支障が残ることもある。
ただし、だからといって疑うことをやめてしまうと、実際に他者にいいように利用される可能性もあるため、妄想とそうでない場合との線引きは事実上難しいといえる。「自分は空を飛べる」などの妄想に支配され転落したり、「頭の中に埋め込まれた装置を取り出す」ために頭部を自傷するなど自らを傷つける危険性もある。
仏教では妄想を「もうぞう」と読むことが多い。妄想は心を曇らして煩悩を増幅せしめる最大の原因として厳しく戒められている。精神医学でいわれる病的なものとは異なり、仏教における妄想は範囲が広く、健常者が日常的に行っていることである。過去を悔やんだり、未来をあれこれ気にしたり、主観的な価値判断や断定をしたり、考えてもわからないことを頭の中であれこれ思考することなど多岐に及ぶ。
元寇の脅威にさらされていた鎌倉時代、大軍勢の外敵とどのように戦えばいいのか苦慮していた執権北条時宗に対し、禅僧無学祖元は「莫妄想」(妄想することなかれ)と諭したといわれる。
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A. | 特徴的症状:以下のうち2つ以上が1ヶ月以上の存在 |
(1) 妄想 | |
(2) 幻覚 | |
(3) 解体した会話 | |
(4) ひどく解体したまたは緊張病性の行動 | |
(5) 陰性症状:感情平板化、思考貧困、意欲欠如 | |
B. | 社会的または職業的機能の低下 |
C. | 期間:少なくとも6ヶ月間存在 |
D. | 失調感覚障害(統合失調感情障害)と気分障害を除外 |
E. | 物質や一般身体疾患の除外 |
F. | 広汎性発達障害との関係:自閉性障害や 他の広汎性発達障害の既往歴がある場合、 顕著な幻覚や妄想が少なくとも1ヶ月存在すること |
(a) | 考想化声 thought echo、考想吹込 thought insertion、思考奪取 thought withdrawal、考想伝播 thought broadcasting | いずれか1つ |
(b) | させられ体験 delusion of control、身体的被影響体験 delusion of influence、妄想知覚 delusional perception | |
(c) | 注釈幻声、会話形式の幻聴 auditory hallucination | |
(d) | 宗教的・政治的な身分や超人的な力や能力といった、文化的に不適切で実現不可能なことがらについての持続的な妄想(たとえば天候をコントロールできるとか、別世界の宇宙人と交信しているといったもの)。 | |
(e) | 持続的な幻覚が、感傷的内容を持たない浮動性あるいは部分的な妄想や支配観念に伴って継続的に(数週から数ヶ月)現れる。 | いずれか2つ |
(f) | 思考の流れに途絶や挿入があり(思考途絶)、その結果まとまりのない話しかたをしたり(連合弛緩)、言語新作が見られたりする。 | |
(g) | 興奮、常同姿勢、蝋屈症、拒絶症、緘黙、昏迷などの緊張病性行動 catatonic behavior。 | |
(h) | 著しい無気力、会話の貧困、情動的反応の鈍麻や不適切さのような、社会的引きこもりや、社会的能力の低下をもたらす陰性症状。 | |
(i) | 関心喪失、目的欠如、無為、自分のことだけに没頭する態度、社会的引きこもりなど、個人的行動の質的変化。 |
など
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