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この項目では、臨床的うつ病 (Clinical depression)について説明しています。症候については「抑うつ」を、精神障害としての抑うつ障害全般については「気分障害」をご覧ください。 |
うつ病 |
フィンセント・ファン・ゴッホ作「悲しむ老人」。1890年
|
分類及び外部参照情報 |
ICD-10 |
F32, F33 |
ICD-9 |
296 |
OMIM |
608516 |
DiseasesDB |
3589 |
MedlinePlus |
003213 |
eMedicine |
med/532 |
Patient UK |
うつ病 |
世界の疾病負荷(WHO, 2004年)[1]
|
疾患 |
DALY
(100万) |
割合
(%) |
1 |
下気道感染症 |
94.5 |
6.2% |
2 |
下痢性疾患 |
72.8 |
4.8% |
3 |
大うつ病 |
65.5 |
4.3% |
4 |
虚血性心疾患 |
62.6 |
4.1% |
5 |
HIV/AIDS |
58.5 |
3.8% |
6 |
脳血管疾患 |
46.6 |
3.1% |
7 |
未熟児、低出生体重 |
44.3 |
2.9% |
8 |
出生時仮死出生外傷 |
41.7 |
2.7% |
9 |
交通事故 |
41.2 |
2.7% |
10 |
新生児の感染症など |
40.4 |
2.7% |
11 |
結核 |
34.2 |
2.2% |
12 |
マラリア |
34.0 |
2.2% |
13 |
COPD |
30.2 |
2% |
14 |
屈折異常 |
27.7 |
1.8% |
15 |
成人発症性の難聴 |
27.4 |
1.8% |
16 |
先天異常 |
25.3 |
1.7% |
17 |
アルコール使用障害 |
23.7 |
1.6% |
18 |
暴力 |
21.7 |
1.4% |
19 |
糖尿病 |
19.7 |
1.3% |
20 |
自傷行為怪我 |
19.6 |
1.3% |
うつ病(うつびょう、鬱病、欝病、英語: Clinical Depression)は、気分障害の一種であり、抑うつ気分、意欲・興味・精神活動の低下、焦燥(しょうそう)、食欲低下、不眠、持続する悲しみ・不安などを特徴とした精神障害である。
『精神障害の診断と統計マニュアル』第5版 (DSM-5) には、うつ病の診断名と大うつ病性障害(英語: Major depressive disorder)が併記されており、この記事では主にこれらについて取り上げる。これは1日のほとんどや、ほぼ毎日、2、3週間は抑うつであり、さらに著しい機能の障害を引き起こすほど重症である場合である。1 - 2年続く死別の反応、経済破綻、重い病気への反応は理解可能な正常な反応である場合がある。
目次
- 1 用語
- 1.1 下位分類
- 1.2 診断名のうつ病と抑うつ状態
- 2 病態
- 3 分類
- 3.1 古典的分類
- 3.1.1 メランコリー型
- 3.1.2 メランコリー親和型性格
- 3.2 操作的診断基準による分類
- 3.2.1 病相の回数による分類
- 3.2.2 重症度による分類
- 3.3 治療反応性による分類
- 4 原因
- 4.1 生物学的仮説
- 4.1.1 モノアミン仮説
- 4.1.2 脳の海馬領域における神経損傷仮説
- 4.2 心理学的仮説
- 4.2.1 病前性格論
- 4.2.2 認知心理学
- 4.2.3 ストレス脆弱性モデル
- 4.3 薬物やアルコールによる影響
- 4.4 社会的要因
- 5 予防
- 6 診断
- 6.1 臨床評価
- 6.2 DSM-IV-TRとICD-10の診断基準
- 6.2.1 大うつ病エピソード(DSM-IV-TR)
- 6.3 鑑別診断
- 6.3.1 身体疾患による抑うつとの鑑別
- 6.3.2 双極性障害との鑑別
- 6.3.3 他の精神障害
- 7 診療科・医療機関
- 8 治療
- 8.1 援助の方針
- 8.2 心理療法
- 8.2.1 認知行動療法
- 8.2.2 読書療法
- 8.2.3 対人関係療法
- 8.3 薬物療法
- 8.3.1 抗うつ薬による治療
- 8.3.2 その他の薬物療法
- 8.3.3 薬物療法と自殺
- 8.4 運動療法
- 8.5 その他の治療法
- 8.6 日本におけるうつ病治療の現状
- 9 予後
- 10 診断検査の研究事例
- 10.1 光トポグラフィー検査
- 10.2 MRI
- 10.3 血液検査
- 10.4 脳画像
- 11 新型うつ病(現代型うつ病)
- 12 疫学・統計
- 12.1 性差
- 12.2 患者数とその推移
- 12.3 子どものうつ病
- 12.4 自殺企図者とうつ病の統計
- 12.5 喫煙との関連
- 12.6 うつ病によりリスクの高まる身体疾患
- 12.7 国別データ
- 13 脚注
- 14 出典
- 15 参考文献
- 16 関連項目
- 17 外部リンク
用語
うつ病は他の精神障害と同様、原因は特定されていないため、原因によってうつ病を分類したり定義したりすることは現時点では困難である。
診断と医学用語とを共通化する目的で操作的診断基準が開発されてきた。それはアメリカ精神医学会 (APA) の『精神障害の診断と統計マニュアル』(DSM) や、世界保健機関 (WHO) の『ICD-10 精神と行動の障害』といったものである。
日本のうつ病の診療ガイドラインは、うつ病と、DSM-IVの大うつ病性障害、また単極型(短極性)うつ病はほぼ同じ意味であるとしている。第5版のDSM-5の邦訳書では、うつ病の用語は、大うつ病性障害の診断名と、うつ病エピソード(定義されたうつ状態、後述)とを指すために用いることが記されている。以上の範囲を本記事の主な対象とする。なお訳語では、major depressive disorderの major が日本語で大と訳されているが、本来これは「主要な」あるいは「中心的な」という意味で用いられているものであり、誤訳であるとする意見もある[6]。
うつ病という用語は、狭い意味ではDSM-IVにおける大うつ病性障害に相当するものを指しているが、広い意味でのうつ病は、一般的には抑うつ症状が前景にたっている精神医学的障害を含める。そのなかには気分変調性障害をはじめとする様々なカテゴリーが含まれている[7]。
操作的診断基準による「大うつ病性障害」などの概念と、従来の分類による「内因性うつ病」(後述)などは同じ「うつ病」であっても異なる概念であるが、このことが専門家の間でさえもあまり意識されずに使用されている場合があり、時にはそれを混交して使用しているものも多い。そのため一般社会でも、精神医学会においても、うつ病に対する大きな混乱が生まれている[8]。つまり、うつ病という言葉の意味が異なっている場合がある。
下位分類
従来は、心因が強く関与している心因性うつ病と、そうではない内因性うつ病を区別し論じられることが一般的であった。
1980年にアメリカ精神医学会 (APA) が出版した『精神障害の診断と統計マニュアル』第3版 (DSM-III) は、内因性というカテゴリーを削除した[9]。
現在では、DSMのような操作的診断基準によって分類することが一般的であるが、様々な経験則によってそうした下位分類も用いられる。細かくは#分類の項に示す。
診断名のうつ病と抑うつ状態
「抑うつ」および「#鑑別診断」も参照
抑うつの症状を呈し、うつ状態であるからといって、うつ病であるとは限らない[10]。抑うつ状態は、精神医療において最も頻繁に見られる状態像であり、診療においては「熱が38度ある」程度の情報でしかない[10]。状態像と診断名は1対1で対応するものではなく、抑うつ状態は、うつ病以外にも様々な原因によって引き起こされる[10]。
『精神障害の診断と統計マニュアル』において、うつ病(大うつ病性障害)として扱われるのは、1日のほとんどや、ほぼ毎日、2、3週間は抑うつであり、さらに著しい機能の障害を引き起こすほど重症である場合である。また、死別、経済破綻、重い病気への反応は理解可能な正常な反応である場合がある。
病態
うつ病は、単一の疾患ではなく症候群であり、さまざまな病因による亜型を含むと考えられる。
『精神障害の診断と統計マニュアル』第5版 (DSM-5) の診断基準Aによれば、「ほとんど1日中、ほとんど毎日の」の抑うつ気分、あるいは興味、喜びの著しい減退のほか、「ほとんど毎日の」不眠あるいは過眠、易疲労性、精神の焦燥や制止、無価値観や罪の意識、思考力や集中力の減退、体重の減少や増加、反復的な自殺念慮などがみられ、診断基準Bが重症であることを要求している。
うつ病と不安障害は併発し易い。アメリカでの調査では、大うつ病者の51%に、不安障害が伴う[12] 。
分類
前史として、1899年にエミール・クレペリンは、統合失調症と躁うつ病とに大きく分け、うつ病は躁うつ病に含まれた[13]。
古典的分類
「精神障害#外因・内因・心因」も参照
古典的な精神病理学は、内因、外因、心因という原因についての考察から分類がなされていた[14]。内因性うつ病とは、身体である体調の変化から気分が巻き込まれており、典型的には自生的に出現すると考えられた[14]。心因性うつ病とは、葛藤に苦しんでいるなど、環境との相互作用から起こるものである[14]。
内因性うつ病という分類は、抗うつ薬というものが登場したばかりの1958年に、抗うつ作用を発見したローランド・クーン(英語版)が、イミプラミンの適応は内因性うつ病であり、効果が目覚ましいのは重いうつ病であると述べたことから大きく始まる[9]。この説をキールホルツが支持し、DSM-IIIの登場する1980年代まで定説となる[9]。
メランコリー型
1980年にアメリカ精神医学会 (APA) が出版した『精神障害の診断と統計マニュアル』第3版 (DSM-III) は、DSM-IIの内因性うつ病というカテゴリーを削除し、うつ病のサブタイプにメランコリー型という分類を追加した[9]。このメランコリーの特徴は、最も重篤な抑うつでまったく何も楽しめず、感じないといった特徴を持ち、最低限の栄養補給を誘導しなくてはならない。そして、1987年のDSM-III-Rのメランコリー型の診断基準には、身体的な抗うつ療法によく反応したことという一文が加えられ、それを実証した研究がないため議論が起こった[9]。そのため実験が行われ、メランコリー型はそうでないものに比べて、身体的な抗うつ療法に良好な反応をするという知見は得られず、DSM-IVではこの基準は削除された[9]。当時は、反応の違いの原因は重症度であり、中等症のうつ病に抗うつ薬が奏功すると考えられた[9]。(現在の知見と異なる)なおDSM-IVではメランコリー型、DSM-5メランコリーと邦訳されている。
諸外国においても、操作的診断によるうつ病概念の混乱が生じており、ハゴップ・アキスカルやジャーマン・ベリオス、ヒーリーをはじめとした英米圏を代表する学者13名は連名で、DSMを発行している『アメリカ精神医学会誌』において、大うつ病性障害からメランコリーを切り離し、1つの臨床単位として独立させる必要性を提言している[16]。食欲と体重が減少し、SSRI系抗うつ薬よりも三環系抗うつ薬によく反応し、内因性うつ病とか典型的なうつ病と呼ばれてきたものである[16]。
メランコリー親和型性格
メランコリー親和型は内因性うつ病を誘発する病前性格であり、テレンバッハが提唱した学説である[14]。几帳面、良心的、配慮できるといった特徴を持つうつ病の病前性格であり、自分の所属する「社会や集団での役割」に応えようとする中で、不調が生じうつ病を発症する[14]。そのため、笠原は1978年にメランコリー親和型の患者への基本方針として、治ると説明し、休息させ、服薬の重要性を説明し、「患者という役割」に同一化させるという原則を提唱した[14]。内因性うつ病の語は現在では用いられないが、病像としては今なお考慮されている[17]。
うつ病の典型は、内因性のうつ病であり、メランコリー親和型が病前性格であると、以前の日本では捉えられていた[14]。そうして、日本では内因性うつ病と、神経症性うつ病との鑑別が重視された[18]。内因性うつ病は、身体疾患の影響や薬物など明らかな外部の影響が不明で、かといって性格も環境も原因ではなく、食欲と体重は低下し、朝に落ち込み、抗うつ薬が有効である[18]。神経症性うつ病は、そうした特徴がなく不安感を持ち、性格や環境に原因があり、抗うつ薬が効きにくいため環境調整や精神療法が必要である[18]。
1980年代にはこうした性質が顕著ではなくなっているということが議論されており、現代型うつ病の議論が起こっている[13]。役割への同一化を示さない[14]。
操作的診断基準による分類
1980年にアメリカ精神医学会 (APA) が『精神障害の診断と統計マニュアル』第3版 (DSM-III) を発表し、「うつ病性障害」を、ある程度症状の重い「大うつ病 (Major Depressive Disorder)」と、軽いうつ状態が長期間にわたって続く「気分変調症 (Dysthymia)」に二分した。原因による分類・定義が現時点では困難であるため、1994年に発表された第4版のDSM-IVと、『ICD-10 精神および行動の障害』でも、基本的にはDSM-IIIの構成が継承されている[7]。
ICDおよびDSMにおける分類
ICD-10 (F30-39) |
DSM-5 抑うつ障害群 |
- (F32) うつ病エピソード
- (F33) 反復性うつ病性障害
- (F34) 持続性気分(感情)障害
- (F39) 特定不能の気分(感情)障害
|
- (296.2x) うつ病/大うつ病性障害 (Major Depressive Disorder) - 単一エピソード
- (296.3x) うつ病/大うつ病性障害 - 反復エピソード
- サブタイプ
- 不安性の苦痛を伴う
- 精神病性の特徴を伴う
- メランコリア (en:Melancholic depression)
- 非定型 (Atypical)
- 緊張病を伴う (en:Catatonia)
- 周産期 (peripartum, en:Postpartum depression)
- 季節型
- 持続性抑うつ障害/気分変調症
- 月経前不快気分障害
- 重篤気分調節症(児童の持続的・反復的な不機嫌)
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DSMによるうつ病性障害のサブタイプについては「気分障害#うつ病性障害」を参照
病相の回数による分類
ICDでは、うつ病相が1回のみの単一エピソードうつ病に対して、うつ病を繰り返すものを反復性うつ病 (Recurrent depressive disorder) という[19]。DSMでも同様に、296.2x:単一エピソード、296.3x:反復エピソードである。
重症度による分類
詳細は「精神障害#重症度」を参照
DSM-5(5だけでなく以前からも)においては、大うつ病性障害の診断を満たすものについて、296.2x、296.3xの診断コードの末尾x部分に、さらに状態を細分する。
1:軽症(いくつかの愁訴が最低限の基準に該当する)、2:中等症、3:重症(社会的や職業的能力を著しく妨げている)に分類される。エピソード全体の15%を占め、妄想・幻覚など「4:精神病性の特徴を伴うもの」(一般に「精神病性うつ病」とも呼ばれる)。症状が改善して診断基準を満たさなくなったものの、一部の症状が残存している「部分寛解」や、完全寛解などである。
治療反応性による分類
DSM-IVなど操作的診断基準では定義されておらず、基準は一定したものではないが、研究などでは「少なくとも2つ以上の抗うつ薬を十分な量・長期にわたり投与しても症状が改善しないケース」を治療抵抗性うつ病(英語版)あるいは難治性うつ病ということが多い。
原因
うつ病は、単一の障害ではなく症候群であり、さまざまな病因による亜型を含むと考えられる。うつ病の発病メカニズムは未だ不明である。様々な仮説が提唱されている。
生物学的仮説
生物学的仮説としては、薬物の有効性から考え出されたモノアミン仮説、死後脳の解剖結果に基づく仮説[20]、低コレステロールがうつおよび自殺のリスクを高めるとの調査結果、MRIなどの画像診断所見に基づく仮説などがあり、現在も活発に研究が行われている。
モノアミン仮説のうち、近年はSSRIとよばれるセロトニンの代謝に関係した抗うつ薬の売り上げ増加に伴い、セロトニン仮説がよく語られる。また、海馬の神経損傷も論じられている。しかしながら、臨床的治療場面を大きく変えるほどの影響力のある生物学的な基礎研究はなく、決定的な結論は得られていない。
モノアミン仮説
「化学的不均衡」および「モノアミン神経伝達物質#モノアミン仮説」も参照
1956年、抗結核薬であるイプロニアジド、統合失調症薬として開発中であったイミプラミンが、クラインやクーンにより抗うつ作用も有することが発見された。発見当初は作用機序は明らかにされておらず、他の治療に使われる薬物の薬効が偶然発見されたものであった。その後イプロニアジドからモノアミン酸化酵素 (MAO) 阻害作用、イミプラミンにモノアミン類であるノルアドレナリン・セロトニンの再取り込み阻害作用があることが発見された。その後これらの薬物に類似の作用機序を持つ薬物が多く開発され、抗うつ作用を有することが臨床試験の結果明らかなった。よってモノアミン仮説とは、大うつ病性障害などのうつ状態は、モノアミン類であるノルアドレナリン、セロトニンなどの神経伝達物質の低下によって起こるとした仮説である。
抗うつ薬の販売者は自社製品を宣伝するために、セロトニンの欠乏によってうつ病が引き起こされており、選択的セロトニン再取り込み阻害剤 (SSRI) が、この欠乏を正常化するとして宣伝しているが、これは監督庁による製品情報や査読論文によって裏付けられていない比喩的な説明である[21]。
脳の海馬領域における神経損傷仮説
- 神経損傷仮説
- 近年MRIなどの画像診断の進歩に伴い、うつ病において、脳の海馬領域での神経損傷があるのではないかという仮説が唱えられている[22]。そして、このような海馬の神経損傷には、遺伝子レベルでの基礎が存在するとも言われている[23]。
- 心的外傷体験が海馬神経損傷の原因となるという仮説
- また、海馬の神経損傷は幼少期の心的外傷体験を持つ症例に認められるとの研究結果から、神経損傷が幼少期の体験によってもたらされ、それがうつ病発病の基礎となっているとの仮説もある。コルチゾール(cortisol) は副腎皮質ホルモンであり、ストレスによっても発散される。分泌される量によっては、血圧や血糖レベルを高め、免疫機能の低下や不妊をもたらす。また、このコルチゾールは、過剰なストレスにより多量に分泌された場合、脳の海馬を萎縮させることが、近年心的外傷後ストレス障害 (PTSD) 患者の脳のMRIなどを例として観察されている[22]。心理的ストレスを長期間受け続けるとコルチゾールの分泌により、海馬の神経細胞が破壊され、海馬が萎縮する。心的外傷後ストレス障害 (PTSD)・うつ病の患者にはその萎縮が確認される。
心理学的仮説
病前性格論
#古典的分類に示したように、日本では1980年代まで、うつ病の患者に几帳面な人が多いという定説があり、これは病前性格論におけるメランコリー親和型性格や循環性格を指したものであった[13]。
フーベルトゥス・テレンバッハの唱えたメランコリー親和型性格は、几帳面・生真面目・小心な性格を示すメランコリー親和型性格を持つ人が、職場での昇進などをきっかけに仕事の範囲が広がると、責任感から無理を重ね、うつ病を発症するという仮説である。
従来は、メランコリー親和型性格がうつ病の特徴とされ、薬に反応しやすく、休養と服薬で軽快しやすいものであった[24]。
しかし、近年ではうつ病概念の拡大や社会状況の変化に伴い、これらの性格に該当しないディスチミア親和型と呼ばれる一群の患者が増加しているとされる[25]。ディスチミア親和型は、メランコリー親和型とは異なり、薬への反応は部分的であり休養と服薬のみでは、しばしば慢性化する[26]。そのため、メランコリー親和型に準じた治療では改善がみられない[24]。
ディスチミア親和型は、2004年に樽味伸が提唱したもので[24]、以下のような特徴がある[26]。若年層に見られ、社会的役割への同一化よりも、自己自身への愛着が優先する。また成熟した役割意識から生まれる自責的感覚を持ちにくい。ストレスに対しては他責的・他罰的に対処し、抱えきれない課題に対し、時には自傷や大量服薬を行う。幼い頃から競争原理が働いた社会で成長した世代が多く、現実で思い通りにならない事態に直面した際に個の尊厳は破れ、自己愛は先鋭化する。回避的な傾向が目立つ。
ディスチミア親和型うつ病とメランコリー親和型うつ病の対比(樽味伸、2005[25])
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ディスチミア親和型 |
メランコリー親和型 |
年齢層 |
青年層 |
中高年層 |
関連する気質 |
スチューデント・アパシー
退却傾向と無気力 |
執着気質
メランコリー性格 |
病前性格 |
「自己自身(役割ぬき)への愛着
規範に対して『ストレス』であると抵抗する
秩序への否定的感情と万能感
もともと仕事熱心ではない |
社会的役割・規範への愛着
規範に対して好意的で同一化
秩序を愛し、配慮的で几帳面
基本的に仕事熱心 |
症候学的特徴 |
不全感と倦怠
回避と他罰的感情(他者への非難)
衝動的な自傷、一方で「軽やかな」自殺企図 |
焦燥と抑制
疲弊と罪業感(申し訳なさの表明)
完遂しかねない「熟慮した」自殺企図 |
薬物への反応 |
多くは部分的効果に留まる(病み終えない) |
多くは良好(病み終える) |
認知と行動特性 |
どこまでが「生き方」でどこからが「症状経過」か不分明 |
疾病による行動変化が明らか |
予後と環境変化 |
休養と服薬のみではしばしば慢性化する
置かれた場・環境の変化で急速に改善することがある |
休養と服薬で全般に軽快しやすい
場・環境の変化は両価的である(時に自責的となる) |
認知心理学
認知心理学は、人間の思考など認知過程を対象とした学問で1960年代より発展してきた。この認知心理学の学習モデルによれば、人間には思考が反復的に起こっているとされ、偏った思考と気分が関連付けされた場合に、問題が生じるとしている。その心理療法である認知行動療法は、有効性が科学的に確認されている。
ストレス脆弱性モデル
ストレス脆弱性モデルとは、ストレス自体の強さと、個人にはストレスに対する脆弱性があるという発症を説明する理論である。同様のストレスを受けた場合でも、ストレスに対して脆弱な場合に症状が生じるということである。
薬物やアルコールによる影響
「気分障害#アルコール誘発性気分障害」および「気分障害#ベンゾジアゼピン誘発性気分障害」も参照
DSM-IVでは、その原因が「物質の直接的な精神的作用」に起因すると判断される場合は、気分障害の診断を下すことはできないとしている。うつ病に似た症状が物質乱用や薬物有害反応によって起こされていると判断される場合、それは物質誘発性気分障害と診断される。
アルコール依存症または過度のアルコール消費は、うつ病の発症リスクを大幅に増加させる[27][28][29][30]。また、逆にうつ病が原因となってアルコール依存症になる場合もある(誤った自己治療)[31]。
ベンゾジアゼピンは不安障害や不眠症の人が服用する薬である。アルコールと同様に、ベンゾジアゼピンは大うつ病発症リスクを増加させる。この種類の薬は不眠・不安・筋肉痙攣に広く使用されている[33][34]。このリスク増加はセロトニンとノルアドレナリンの減少など、薬物の神経化学への効果が一因である可能性がある。ベンゾジアゼピン系の慢性使用も抑うつを悪化させ[35][36]、うつ症状は遷延性離脱症候群の1つである可能性がある[33][37][38][39]。2010年の厚生労働科学研究によれば、実際には睡眠導入剤、抗不安薬としてベンゾジアゼピン系などが多く処方されているが、長期の安全性については疑問符があるため適正使用ガイドライン等が検討課題であると述べられている[40]。
メタンフェタミン乱用も抑うつを引き起こすとして広く知られている[41]。
社会的要因
詳細は「抑うつ#人生の出来事」を参照
貧困と社会的孤立は、一般的に精神的健康の問題のリスク増加と関連している。児童虐待(身体的、感情的、性的、またはネグレクト)も、後年になってうつ病を発症するリスクの増加に関連付けられている。
成人では、ストレスの多い生活上の出来事が強く大うつ病エピソードの発症に関連付けられている。生活上のストレスがうつ病につながる可能性が増加したり、社会的支援の欠如がうつ病につながる可能性がある。
予防
対人関係療法や認知行動療法などの行動療法は、うつ病の新規発症を予防する効果があるとされる[42][43][44]。これらのセラピーは個人や小人数グループにて施した場合に最も効果があるとされるため、インターネットを用いて多くの対象者にリーチすれば効果があるだろうと提案されている[45]。
診断
臨床評価
OECD各国のメンタルヘルス問題時の受診先調査。
青は総合診療医、赤は精神科医、緑は臨床心理士。
「:en:Rating scales for depression」も参照
診断評価は、適切な訓練を受けた総合診療医、精神科医、心理士によって、現在の状況、生活歴、現在の症状、家族歴を記録したうえで下される[47]。広い臨床的な目的は、患者の気分に影響がおよぶ関連する生物学的、心理的、社会的要因を系統立てて診るためである。評価の際には、アルコールや薬物の使用など(健康な方法も含めて)気分転換の方法を尋ねる場合もある。評価はまた、現在の気分や思考の内容についての心理検査を行うことがあり、それは特に絶望感や悲観、自傷や自殺、肯定的な考えや計画がない場合である[47]。農村部では精神医療の専門家は少ないため、診断と管理はプライマリケア医によってなされることが多く[48]、特に発展途上国では顕著である[49] 。
プライマリケア医や非精神科医は、身体的な症状の診断と治療に訓練されているため、時にはうつ病の診断を下すのが難しいこともある。うつ病は、様々な身体的(心身的)症状を引き起こすことがあり、彼らは身体的症状だと判断してその治療をしてしまうからである。非精神科医は三分の二のケースで不必要な加療を行ってしまうという[50][51]。
うつ病の診断を行う前に、一般的に医師によって医学的検査と調査が、他が原因となっている症状を除外するために行われる。血液の甲状腺刺激ホルモン(TSH)とチロキシン測定によって甲状腺機能低下症を除外したり、基礎電解質と血中カルシウム測定で代謝障害の除外、全血球算定(赤血球沈降速度ESRを含む)により全身性疾患や慢性疾患の除外など[52]。薬物の副作用やアルコール乱用も同様に除外される。男性の抑うつの場合、テストステロンのレベル測定によって性腺機能低下症も除外される[53]。
自覚的な認知についての訴えが、老人の抑うつに現れることがあるが、それはアルツハイマー病などの認知症の徴候の可能性がある[54][55]。認知検査と脳画像イメージは認知症とうつ病を区別する助けとなる[56]。CTスキャンは、精神病症状や、急な発症、または異常な症状を伴う脳病変を除外することができる。生物的テストでは大うつ病の診断を行う方法はない。一般的に、医学的な兆候がない限りその後検査を繰り返す必要はない。
DSM-IV-TRとICD-10の診断基準
抑うつ状態について最も広く用いられる診断基準は、アメリカ精神医学会による『精神障害の診断と統計マニュアル』第4版改訂版(DSM-IV-TR)と、世界保健機関の『疾病及び関連保健問題の国際統計分類』第10版(ICD-10)である。前者は米国および非ヨーロッパ諸国で多く用いられ、後者はヨーロッパで多く用いられる。2つの著作はお互いを反映するように作業されている。
DSM-IV-TRとICD-10は典型的なうつ病の症状を選定している。ICD-10では3つの典型的なうつ病の症状(気分の落ち込み、 喜びの喪失、気力の低下)を示し、うち2つがうつ病の診断の確定に必要である[19]。DSM-IV-TRでは2つの主なうつ病の症状、気分の落ち込みと、喜びの喪失のうち、ひとつが大うつ病エピソードの診断に必要である。しかし、これらは診断基準の一部であり、すべてではない。
DSM-IV-TRでは大うつ病性障害は気分障害に分類される。診断は単発か繰り返される大うつ病エピソードに基づく。追加の情報はその他の障害と区別するために用いられている。特定不能のうつ病性障害(英語版)は、抑うつ症状のエピソードが、大うつ病エピソードの基準を満たしていない場合に診断される。
ICD-10は、大うつ病性障害という用語を使用していないが、(軽症・中等症・重症)うつ病エピソードの診断のために、非常によく似た基準を一覧にしている。複数のうつ病エピソードが存在し、躁病のないものには反復性うつ病性障害 (recurrent depressive disorder) の診断名が用いられる[19]。
DSMの診断基準は、うつ病を引き起こした個人の他の側面と社会的な状況を考慮していないという点について、批判の対象となっている[64]。
大うつ病エピソード(DSM-IV-TR)
詳細は「:en:Major depressive episode」を参照
大うつ病エピソードは、2週間以上の重症の抑うつ気分の存在を特徴とする。もし躁病や軽躁病のエピソードが存在すれば、診断は代わりに双極性障害となる。
大うつ病エピソードの確定には、「気分の落ち込み」と「興味・喜びの喪失」の2つの主要な症状のうちどちらかが必要である。「気分の落ち込み」とは、気分の落ち込みや、何をしても晴れない嫌な気分や、空虚感・悲しさなどである。「興味・喜びの喪失」とは、以前まで楽しめていたことにも楽しみを見いだせず、感情が麻痺した状態である。またこれは大うつ病エピソードの診断基準Aの片方であり、もう片方は5つ以上の症状の存在である。
- 抑うつ気分
- 患者は抑うつを訴えたり、周囲から見て抑うつ状態にある[66]。ほとんど1日中、ほとんど毎日である[67]。
- 興味・喜びの喪失
- 最近のほぼ全ての活動において、興味や喜びを喪失している(患者本人や周囲の訴えによる) [66]。ほとんど1日中、ほとんど毎日の著しい減退である[67]。
- 食事や体重の変化
- 食事制限を行っていないにもかかわらず体重が著しく増減する(月に5%以上程度)、または最近の食欲が著しく増大または減衰している。ほとんど毎日である[67]。
- 睡眠
- 最近の睡眠が著しく過眠、もしくは不眠となる [66]。ほとんど毎日[67]。
- 活動状態
- 周囲から見て、患者の最近の活動状態には不安を感じたり、のろくなったように思われる[66]。ほとんど毎日[67]。
- 疲労感
- 最近、著しく疲労感を感じる[66]。ほとんど毎日[67]。
- 罪悪感
- 最近、患者は根拠のない心配や不適切な罪悪感を感じており、それらは単に抑うつであって、非現実的である[66]。ほとんど毎日[67]。
- 「どうせ自分なんか価値の無い存在だ」と考えるようになるなど、自尊心が低下する。
- 集中力
- 患者本人や周囲の人によれば、最近の日常活動において意思決定がおっくうであり、集中力を欠いている[66]。ほとんど毎日[67]。
- 自殺念慮・希死念慮
- 患者は、希死念慮(死への恐れとは異なる)、自殺(もしくは自殺計画)、自殺未遂を訴えている[66]。
— 大うつ病エピソード
DSM-IVでは大うつ病エピソードの診断基準Eが死別反応ではないことを要求している。
DSM-5においては、死別反応といった強いストレスに伴う抑うつは、治療なく回復する可能性があるため、死別反応に関する注釈が加えられた[68]。DSM-5では「精神障害の定義」において、よくあるストレスや喪失による、愛する人との死別といった、予測可能な反応は精神障害ではないとされ、診断基準の注釈においては、死別や経済破綻、災害や重篤な病気などへの反応は、理解可能な、正常な反応である場合もあることが記述され、また死別による抑うつ症状も1-2年続くことがあるため、以前のDSM-IVによる2か月以上続いていればうつ病の可能性があるという基準をなくした。以前のDSM-IV-TRでは、症状が死別によるものである場合はうつ病から除外しているが、しかしその気分が長期化し大うつ病エピソードに特徴付けられる要素がある場合は、死別を原因として抑うつエピソードに入る可能性があるとされていた。
DSM-IVの特定不能のうつ病性障害の項には、抑うつ性の特徴を伴うものが紹介され、関連する診断に、気分変調症(慢性的だが軽度の気分変調が長く持続する)、抑うつを伴う適応障害(特定可能な出来事やストレッサーによって落ち込みが起きている)があり除外する必要がある。それ以外の場合に特定不能のうつ病性障害が考慮され、大うつ病エピソードが身体疾患や薬物あるいは原因がないのか判別できない場合にこの診断名を用いたり、また共に研究用診断基準案である小うつ病性障害(英語版)(大うつ病エピソードの症状の幾つかのみが存在する)[73]と反復性短期うつ病性障害(英語: recurrent brief depression)(12か月にわたり毎月起きている2週間までのうつ病性のエピソード)が[75]、紹介されている。
鑑別診断
「抑うつ」も参照
抑うつ状態は、次のような原因によって引き起こされる。
正常な落ち込みは生活上の正常な苦痛や苦悩であり、対して、うつ病ではそれが1日のうちほとんど、ほとんど毎日であり「濃く」、機能の障害を起こし重症である。失業、離婚、他の人生の深刻な問題の後に落ち込みが起きていれば、特に軽症の場合には一時的なストレス反応であるかを検討すべきであり、4週間以上観察してもよい。
DSM-IVでは大うつ病性障害の診断基準Bが他の精神障害ではないことを要求し、診断基準Cが躁病エピソード、軽躁病エピソード、混合エピソードが存在したことがないことを要求している。
- 特定できるストレスが原因となっている適応障害、急性ストレス障害、心的外傷後ストレス障害 (PTSD) など。
- パニック障害など、他の障害の症状としてのもの。
- 統合失調症では、気分が正常な時に妄想が生じている。
- 双極性障害は後述。
DSM-IVでは大うつ病エピソードの診断基準Dが、物質あるいは、身体疾患による症状ではないことを要求している。物質の例には、薬物乱用、アルコール乱用、投薬による直接的な生理学的作用としての抑うつが挙げられる。
子どもや思春期では、診断を下すには注意を払い、物質の使用やストレス要因を考慮する。高齢者のような発症が遅い場合には、身体疾患や医薬品の副作用が考慮される。
身体疾患による抑うつとの鑑別
「身体疾患による精神障害」も参照
身体疾患は、抑うつ症状を呈すものがある。
- 中枢神経系(認知症、脳血管障害、パーキンソン病、脳腫瘍など)
- 内分泌系(副腎疾患(アジソン病など)、甲状腺疾患 (橋本病など)、副甲状腺疾患など)
- 炎症性疾患(関節リウマチ、全身性エリテマトーデスなど)
- 歯科治療用重金属中毒[注 1]
双極性障害との鑑別
うつ病の診断においては、軽躁とうつを繰り返す双極II型障害を単極性・反復性と誤診するなど、双極性障害と見分けがつきにくいケースが多い。患者側も、睡眠時間が短くてもすんでしまうなど現代の過酷な社会環境にむしろ適応的であり、ばりばりと働けたなどの充実感などのため、軽躁状態を異常と認識せず、主治医に申告しないこともある。
WHOのガイドラインでは、大うつ病性障害など「うつ病として」受診に来た患者を診断する場合、躁病エピソードの既往症(軽躁エピソードは特に)を確認し、双極性障害でないかどうか明確に鑑別しておくことが重要であるとしている。これは、大うつ病性障害などの単極性の気分障害と双極性障害は、治療法が根本的に異なるためである。
また長期経過の中で、うつ状態に加えて躁状態も生じる場合にも、双極性障害の可能性がある。そのため、躁状態に転じることを常に注意し、素早く対応することが必要であるとも指摘されている。
とくに若年者は、双極性障害のうつ病相や統合失調症の好発年齢であり留意が必要である。
うつ病を繰り返し生じる場合には、反復性うつ病と呼ばれており、これも、遺伝研究などによって、躁うつ病と根本的には同一の障害であるとされている。一方、再発のないうつ病は、単一エピソードうつ病と呼ばれ、躁うつ病とは異なった障害であると考えられている。
他の精神障害
パーソナリティ障害や不安障害、不眠症、精神病の合併の有無を確認する。大うつ病障害に対して、約15%に依存性パーソナリティ障害、約10%に境界性パーソナリティ障害、約9%に強迫性パーソナリティ障害が確認されるとの研究報告がある。
診療科・医療機関
詳細は「精神障害#診療科」および「日本の精神保健」を参照
米国『メルクマニュアル第18版』によれば、プライマリケアの現場(総合診療科)で抑うつを訴える人々の割合は30%だが、大うつ病を有する人々の割合は10%未満である[83]。また、抑うつは、甲状腺機能亢進症、脳腫瘍等の身体疾患でも見られる症状である[83]。
精神障害の治療は、OECD諸国では主に総合診療医が担っている。ある調査によれば、日欧米の一般の人々には精神科受診に対する抵抗感があるという[85]。日本では、うつ状態になった人々の最初の受診先は内科が約60%で、精神科は10%未満という報告もある[85]。日本精神神経学会は、かかりつけの内科医について、患者をよく知っており、的確に治療していることが多いと述べている[86]。一方、症状によっては精神科への紹介を検討すべきと述べている[86]。
日本では、精神障害を適切に診断・治療する診療科は精神科、精神神経科、心療内科である[87]。なお、神経内科は神経専門の診療科なのでうつ病は扱わない[87]。各自治体の保健所や精神保健福祉センターでは、無料かつ匿名で「心の変調」やメンタルヘルスの相談に応じ、医療機関も紹介してもらえる[87]。意外に思われるかもしれないが、保健所の業務の6割は精神保健に関するものである。
精神障害は早期発見が重要なファクターだが、「心の変調」に自分(または周囲)が気づいた場合でも、どの医療機関を受診すれば良いのか分からず、近所の内科などにかかることも少なくなく、症状を進行させてしまう場合がある。2014年にOECDは日本に対し、日本のプライマリケア制度の整備は発展途上であるため、地域医療を担う医療関係者がすべからく精神保健の技能を身につけるよう勧告している。
治療
詳細は「うつ病の治療」を参照
英国国立医療技術評価機構 (NICE) の2009年ガイドラインでは以下のような評価と手順を持つ。
NICEは、うつ病サブタイプや患者の個性に基づいて治療を変えることへの根拠は乏しいため、様々な治療戦略を取っ換え引っ換えし続けることのないよう述べている。
継続する軽症から中等症の症状:治療介入なしに回復しそうであるか、介入を拒否する場合には、積極的に観察する。
- 治療介入としては弱い心理的介入であり、認知行動療法に基づくセルフヘルプ、コンピュータによる認知行動療法 (CBT)、構造化されたグループでの運動療法、この中から患者好みのものを選択。危険性が利益を上回るため抗うつ薬は使用してはならないが、セント・ジョーンズ・ワートには利益があるか可能性があるという証拠が存在する。
- 上の初期治療が効果を示さない場合:抗うつ薬、もしくは認知行動療法 (CBT)、対人関係療法(IPT)、行動活性化(英語版)、行動カップル療法などの強い心理的介入。
中等症から重症の症状:抗うつ薬および、強い心理的介入(CBTもしくはIPT)との併用。
なお患者が不安障害を併発している場合、まずうつ病の治療を第一に行わなければならない。
世界保健機関は、妊娠期および周産期のうつに対して、第一選択は心理療法でなければらず、抗うつ薬は可能な限り避けなけばならないとし、根拠に基づいた心理療法の手引き書The Thinking Healthyを公開している。
援助の方針
NICE (2009) では、治療の前提として、治療者は、患者と信頼関係を結び、治療の基本的原則についてしっかりと説明を行い、患者が納得して治療に取り組むことが必要である。患者も、分からないことは質問していくことが必要である。こうした医師と患者のコミュニケーションが治療の成功には不可欠である。
- うつ病の症状の一つに、将来を悲観してしまうことがある。それは症状であり、軽快するにつれ希望が持てるようになる。
- 以前に興味を持っていた事項については、おっくうであっても、それを放棄せず可能な限り継続すべきである。
- 可能な限り、定期的な運動を継続すべきである。
- 地域活動への参加などについて、通常の範囲で可能な限り続けるべきである。
- 患者には利用可能な自助グループ、支援グループ、行政サービスなどの情報を伝えるべきである。
日本では、#古典的分類節に書いたように、かつての分類である内因性うつ病に対しての、うつ病は治る、薬が効き、励ましてはいけないという説明を一般化した弊害が言われている[13]。これについては宮岡等が『うつ病医療の危機』にて取り上げている。
心理療法
心理療法(精神療法)は、精神福祉の専門家が、個人やグループ・家族に対して行い、精神療法士、精神科医、臨床心理士、臨床ソーシャルワーカー、カウンセラー、訓練を受けた精神保健士が実施する[99][100]。
貧困、失業、大切な人との離別などがうつを引き起こすこともあるが、社会的、状況的原因を薬で解決することはできない[101]。この場合、心理療法の認知行動療法 (CBT) や読書療法などが有効である[101]。また、心理療法は薬物療法に比べてうつが再発する可能性が低い[102][103]。
NICEのガイドラインは心理療法の重要性を認めており、6 - 8回の認知行動療法 (CBT)、または他の根拠に基づいた心理療法を推奨している。英国政府は臨床試験で効果が証明された認知行動療法をはじめとする根拠に基づいた心理療法の拡充を開始し成果を上げているとOECDは述べている。(心理療法アクセス改善)
1998年、世界精神医学会(英語版)の「WPA/PTD うつ病性障害教育プログラム[注 2]」は、高齢者への精神療法の適用について、「精神療法のみ」「精神療法と抗うつ薬の併用」の二つを挙げている。「多様な治療法がある」「再発を予防するために、投薬は継続しなければならない。治療の成功は社会心理的支援がかかせない」としている[108][107]。
2009年、プラセボ効果を研究するハル大学のアービング・カーシュ博士は「心理療法のみの場合と、心理療法と抗うつ薬を併用する場合の効果の大きさは同じなのだから、なぜ、わざわざ抗うつ薬を持ち込む必要があるのだろうか[注 3]」と述べている[109]。両方を併用すれば、抗うつ薬だけを服用するより効果があるが、心理療法を単独で行う以上の効果はない[109]。
2012年、DSM-IVのアレン・フランセス編纂委員長は「精神科の軽度、中度の症状には、精神療法が少なくとも薬物療法と同じくらい効果があり、精神療法のほうが持続効果は長く、副作用は少ないのです。非常に多くの人が必要のない薬物療法を受け、回復に大きく役立つであろう精神療法を受けていないというのは、理不尽であり、経済的動機がそうさせているのだと思います」と述べている[103]。
2015年、OECDはうつ病や不安障害については、会話療法(心理療法)は薬物療法と同じぐらい効果があり、また患者にも好まれるとしており[110]、またコストの面からも、うつ病治療の第一選択肢としては書籍ベースまたはコンピュータによるセルフヘルプとするよう提案している[110]。
認知行動療法
認知行動療法 (CBT) とは、外界の認識の仕方で、感情や気分をコントロールしようという治療法。抑うつの背後にある認知のゆがみを自覚させ、合理的で自己擁護的な認知へと導くことを目的とする。考え方のバランスを取ってストレスに上手に対応できるこころの状態をつくっていく[111]。
心理療法の中では、CBTには、子供と青年のうつ病に対する有効性の証拠が多く存在する。CBTと対人関係療法 (IPT) は思春期のうつ病に対して勧められる。NICEでは、18歳未満に対して薬物治療を行う場合はCBT、ICT、家族療法などといった心理療法を併用しなければならないとしている[112]。
- NICEは、CBTを実施する場合、16-20セッションの治療を3-4ヶ月かけて行ない、また重症では最初の2-3週間は週2回セッションで検討するとしている。
- アメリカ精神医学会のガイドラインでは、認知行動療法など心理療法は患者の初期治療の選択肢として推奨されている。
- 日本うつ病学会のガイドラインでは、認知行動療法の有効性は中等症以上に証拠があるとしているが、軽症の場合に選択肢に入れている。
認知行動療法は、心理職が国家資格化されている国々では、精神科(精神科医、薬物療法中心)、心理療法科(心理士、心理療法中心)に分かれることがあり、薬物療法と同時並行的に行われるとは限らない[116]。
日本では2010年に診療報酬が点数化され、外来患者について、認知療法・認知行動療法に習熟した医師が一連の治療に関する計画を作成し患者に説明を行った上で、1回あたり30分以上の認知療法・認知行動療法を行った場合について、16回を上限として算定できる[117]。
読書療法
「認知行動療法#セルフヘルプ」および「読書療法」も参照
プラセボ効果を研究するアービング・カーシュ博士は、認知行動療法 (CBT) を受けなくても、そのメリットの多くを得ることができる方法として認知行動療法の読書療法を薦めており、臨床試験で良い結果が得られたものの中から2冊を紹介している[118]。『うつのセルフ・コントロール』(熊谷久代訳、創元社、1993年)、『いやな気分よ、さようなら―自分で学ぶ「抑うつ」克服法』(デビッド・D・バーンズ、星和書店、2004年)はいずれも認知行動テクニックに関する本である[118]。『いやな気分よ、さようなら』の臨床試験では、短期的には、標準的なCBTを実際に受けた人のほうが改善の度合いが高かったが、3ヶ月後には同等になった[118]。3年間の追跡調査から効果が持続的であることも示唆されている[118]。注意点は、読書療法の臨床試験は中程度のうつ病のみを対象として行われたことである[118]。軽症から中等症のうつ病であれば、代替法として妥当だが、重度のうつ病にはどのような効果を発揮するのか分かっていない[118]。
対人関係療法
対人関係療法 (IPT) は、人間関係を強化する心理療法である。NICEはIPTを実施する場合、IPTを実施する場合は16-20セッションの治療を3-4ヶ月かけて行わなければならない、また重度の場合は最初の2-3週間を週2回セッションで検討するとしている。アメリカ精神医学会の治療ガイドラインでも治療の有効性が確認されている。
薬物療法
NICEのガイドラインでは、抗うつ薬は、軽症から中等症では初期治療が効果を示さない場合において選択肢の一つであり、中等症から重症では、抗うつ薬および心理療法(CBTまたはIPT)の併用を推奨している[注 4]。
2012年の日本うつ病学会のうつ病の治療ガイドラインによれば、軽症うつ病の場合、安易な薬物療法は避けるべきであり、中程症以上のうつ病では薬物療法は軽症に比べてより積極的に行う。希死念慮の強い急性期、重症患者には薬物療法と精神療法、とりわけ薬物療法が重要である。薬物療法では効果がない場合、mECTを検討する[123]。
WHOのうつ病ガイドラインでは、12歳以下では抗うつ薬の投与は禁止であり、また12歳以上の青年では抗うつ薬の投与は第一選択肢としては禁止であり、まず心理療法を行うべきだとしている。NIHは、高齢者の場合、再発防止のため薬物療法の併用が有効であるとしている[124]。
抗うつ薬による治療
抗うつ薬の効果は必ずしも即効的ではなく、効果が明確に現れるには1週間ないし3週間の継続的服用が必要である。NICEは処方に際し、患者と離脱症状(SSRI離脱症候群など)も含めて副作用について話し合わなければならないとしている。
抗うつ薬のうち、従来より用いられてきた三環系抗うつ薬あるいは四環系抗うつ薬は、口渇・便秘・尿閉などの抗コリン作用や眠気などの抗ヒスタミン作用といった副作用が比較的多い。これに対して近年開発された、セロトニン系に選択的に作用する薬剤SSRIや、セロトニンとノルアドレナリンに選択的に作用する薬剤SNRI、NaSSA等は副作用は比較的少ないとされるが、臨床的効果は三環系抗うつ薬より弱いとされる[注 5]。
詳細は「抗うつ薬#主な抗うつ薬」および「抗うつ薬#副作用」を参照
NICEは薬剤の選択について、他の抗うつ薬より危険性と利益の比率が良好であるため、一般的にSSRIを選ばなければならない (should normally be) としている。さらにNICEは、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチンは他のSSRIより薬物相互作用が起きやすく、またパロキセチンは他のSSRIより離脱症状の報告率が高く、三環系抗うつ薬はlofepramineを除いて過剰摂取のリスクが高率 (greatest risk) であるとしている。
詳細は「抗うつ薬#効果の限界と方策」を参照
服薬から4週間後に患者の抑うつ症状が改善されていれば、さらに2-4週間の投与を続ける。効果を示さないとか、副作用が生じる、あるいは患者の申出があれば、他の薬に切り替える。
抗うつ薬の有効性および安全性については議論がある。うつ病は、治療を行わなくても長期的には自然回復することが多く[126][127][128][129]、数ヶ月以内の自然回復率が50%を越えるため、各種治療法の有効性の判断は難しい[127][129]。アメリカ国立精神衛生研究所(英語版) (NIMH) の専門家たちは、抗うつ薬が回復までの時間短縮に役立つ可能性はあっても、長期回復率の上昇には役立たないと考えている[126][127][129]。SSRIはプラセボ程度の効果しかないとの見解もある[130]。
- NICEの2009年のガイドラインは、軽症以下の抑うつでは、危険性/利益の比率が悪いため抗うつ薬を継続的に使用してはいけないとしている[注 6]。初期治療が効果を示さない場合、軽症から中等症では選択肢の一つであり、重症では心理療法と組み合わせて使用するとされる。
- 日本うつ病学会のガイドラインによれば、中等症・重症うつ病に対しては、1種類の抗うつ薬の使用を基本とし、十分な量の抗うつ薬を十分な期間に渡って投与すべきである、また寛解維持期には十分な継続・維持療法を行い、抗うつ薬の投与の終結を急ぐべきではないとしている。一方で軽症うつ病に対しては、薬物療法もしくは体系化された精神療法を、単独もしくは組み合わせて用いることを推奨しており、軽症うつ病への薬物療法の是非は議論が分かれるとしている。
詳細は「抗うつ薬#議論」を参照
抗うつ薬の投与は、抑うつ症状が見られなくなってから9-12ヶ月経過し、かつ日常生活を行うことができる状態であれば、投与中断を検討する。減薬に際しては離脱症状が起こりえるため、4週間以上の時間をかけて行う。重度の離脱症状の場合は投与を再開し、さらに時間をかけて減薬する。
その他の薬物療法
「多剤大量処方」も参照
抗うつ薬の治療反応に乏しい場合、別の種類の抗うつ薬への変薬や追加(併用)のほか、炭酸リチウム、甲状腺ホルモン、抗てんかん薬、非定型抗精神病薬の追加(増強療法)、(米国などでは)アンフェタミン、メチルフェニデートなどが試みられる。
米国や日本ではアリピプラゾールも既存治療で十分な効果が認められない場合に限って認可されている[134]。抗うつ薬の多剤投与、抗不安薬の多剤投与を合理性なく行ってはならない。
不安障害を併発している場合などは抗不安薬を、不眠が強い場合は睡眠導入剤を併用することも多い。抗不安薬・睡眠導入剤としてベンゾジアゼピン系がしばしば用いられるが、これらはベンゾジアゼピン依存症・ベンゾジアゼピン離脱症候群をまねき、うつ病を悪化させる。
- 各国政府はベンゾジアゼピンの処方を最大でも数週間に限るよう勧告している。
- NICEでは、ベンゾジアゼピン系の使用は、慢性的な不安症状がある場合を除き、依存の形成を防止するために2週間以上の投与はすべきではないとしている。
- うつ病の予防・治療日本委員会 (JCPTD) によると、薬物治療急性期には抗うつ効果発現までのベンゾジアゼピン系薬物処方は有用であるが、依存性のため長期投与は推奨していない。
日本うつ病学会ガイドラインでは、中等症・重症のエピソード急性期において、ベンゾジアゼピン単剤、スルピリド単剤、非定型抗精神病薬単剤による治療は推奨していない。
中枢刺激薬、バルビツール酸系の使用は推奨されない。
薬物療法と自殺
詳細は「抗うつ薬#副作用」を参照
抗うつ薬による治療開始直後には、年齢に関わりなく自殺企図の危険が増加する危険性があるとアメリカ食品医薬品局 (FDA) から警告が発せられ、日本でもすべてのSSRIおよびSNRIの抗うつ薬の添付文書に自殺企図のリスク増加に関する注意書きが追加された[140]。
FDAは、子供・青年・18-24歳の若年者に対しては、SSRI治療は自殺念慮と自殺企図について高いリスクが存在すると報告している[141][142][143][144][145]。 成人についてはSSRIと自殺リスクの関係は明確ではない[145]。あるレビューでは関係性が認められておらず[146]、別のレビューではリスクが増加すると報告され[147]、第三のレビューでは25-65歳ではリスクはなく65歳以上では低リスクと報告している[148]。 疾病データ上では、新しいSSRI時代の抗うつ薬の普及により伝統的に自殺リスクの高い国で自殺率の大幅な低下をもたらしていると分かった[149]が、因果関係は確定されていない[150]。
米国では2007年に、SSRIとその他の抗うつ薬について24歳以下の若年者では自殺リスクを増加させる可能性があるという黒枠警告がなされた[151]。同様の警告は日本の厚生労働省からもされている[140]。米国ではFDAの警告以降に若年者の自殺死者数が増加している。FDA警告の結果、若年者の抗うつ薬治療が少なくなり、結果として自殺者が増えたとすれば問題である[152]。
- APAガイドラインでは、抗うつ薬は自殺リスクを減らすエビデンスは小さい、しかしうつ症状の軽減に必要だとしている[注 7]。
- NICEガイドラインによると、2005年4月にヨーロッパ医薬品評価委員会はSSRIとSNRIについて、子供と青年には処方すべきではない(承認適応症を除くがこれは通常の抑うつは含まない)としている。
- 英国『モーズレイ処方ガイドライン第10版[注 8]』(2009年)では、うつ病の治療が希死念慮および自殺企図を防ぐ最も効果的な方法であり、ほとんどの場合、抗うつ薬による治療が最も効果的な方法であるとしている[123]。
運動療法
貧困、失業、大切な人との離別などが抑うつを引き起こすこともあるが、社会的、状況的原因を薬で解決することはできない[101]。この場合、運動などが有効である[101]。また、運動療法は薬物療法に比べてうつが再発する可能性が低い[155][156]。
WHOのガイドラインにおいては、提供可能な場合の補助療法として提案されている。NICEのガイドラインでは、軽症から中等度のうつ病に対してはCBTと並んで、運動療法 (a structured group physical activity programme) を選択肢の一つとして推奨している。患者が運動療法を選択した場合は、訓練を受けたコーチの下でグループ単位で行わなければならない、また1回あたり45分-1時間、週3回を10-14週間程度としなければならないとしている。
2004年、英国国立医療技術評価機構 (NICE) は「抗うつ薬はリスク便益比の観点から、軽症のうつの初期治療には推奨できない[注 9]」としている。寧ろ、医師は薬物以外の代替法を試し、「軽症のうつ病患者には年齢を問わず、構造化された指導付き運動プログラムのメリット[注 10]」を推奨すべきだとしている[158]。
2007年のNICEのガイドラインでは、フィジカルトレーニングは軽症のうつ病治療に推奨された[159]。
2009年、イギリスの総合診療医 (GP) の20%以上(2004年の4倍)が抑うつ症状の患者にしばしば運動療法を「処方」している。短期的には、6週間以内に著しい改善があり、効果は大きく、抑うつ症状のある患者の70%が運動プログラムに反応したという研究報告がある。長期的にも多くの副効果(心臓血管機能・認知機能・性的機能・筋力・社会性の向上、高血圧・睡眠の改善)がある[160]。
2012年、日本うつ病学会のガイドラインは「本来軽症に限った治療法ではない」と断った上で、軽症のうつ病への適用について、「運動を行うことが可能な患者の場合、うつ病の運動療法に精通した担当者のもとで、実施マニュアルに基づいた運動療法が用いられることがある。一方で運動の効果については否定的な報告もあり、まだ確立された治療法とは言えない」と述べている。
2013年、コクラン・ライブラリのシステマティック・レビューによれば、運動の効果は心理療法や薬物療法と同程度である[161]。
2012年のランダム化比較試験は、運動はうつ病の症状を改善させない、通常の治療と比較して抗うつ薬の使用を減少させない、身体活動を増加させることはうつ病からの回復の機会を増加させないとしている。多くの研究は身体活動のプラス効果を報告しているが、現在の証拠のほとんどは、医療現場で非実用的な介入をした、小さな非臨床サンプルに由来する[162]。多くの証拠を精査したガイドラインやシステマティックレビューではないことに注意が必要である。
その他の治療法
その他、限定的に行われる特殊な治療法や、実験的段階にあるものとして以下のようなものが挙げられる。
- 電気けいれん療法 (ECT)
- 頭皮の上から電流を通電し、人工的にけいれんを起こすことで治療を行う。薬物療法が無効な場合や自殺の危険が切迫している場合などに行う。最近は全身麻酔を使用した苦痛のない方法がとられることがほとんどである(そのため入院も可能な大病院でしかできない)[163]。安全管理も慎重に行われるようになった[164]。前述の場合に有効性が高い治療法であると考える臨床家も多く[164]、保険診療でも認められている。
- NICEのガイドラインでは、重症のうつ病のみに用いられるべき (should only be used) 、標準的なうつ病に対しては繰り返しECTを行ってはならないが複数の薬物治療と心理療法に効果を示さない場合は検討できる、予防目的のECTを行ってはならないとしている[165]。
- 経頭蓋磁気刺激法 (TMS)
- 頭の外側から磁気パルスを当て、脳内に局所的な電流を生じさせることで脳機能の活性化を図るもの。日本では[167]保険は未承認。6週間治療での寛解率は27%程度、続く24週間治療での寛解率は50-60%程度。副作用としては、刺激部位の痛みや不快感、頭痛など[167]。
- 断眠療法
- うつ病患者が夜間眠らないことでうつ症状が急速に改善するという治療法である。薬物治療への効果が乏しく、うつ状態が長く続いているような場合に施行される。
- 効果が持続しにくく、その場合、薬物療法や光療法を併用する[168]。
- 光療法
- 強い光(太陽光あるいは人工光)を浴びる治療法。過食や過眠のあることが多い、冬型の「季節性うつ病」(高緯度地方に多い冬季にうつになるタイプ)に効果が認められている。最新ではない2002年のガイドラインでは、冬季うつ病の第一義的な治療法は光療法とされ、抗うつ薬よりも有効性が高いことが確認されている[169][170]。
- また、光療法が非季節性のうつ病の治療に有効であることが実証され[168]、光療法がうつ病に効果があるかどうかは古くから検討されてきたものの、有効、無効の両方の報告があり、有効であることの決定的な証拠はなかったが、2004年と2005年のメタアナリシスによりその有効性が報告されていると、論文にて報告されている[168]。(ガイドラインではない)
- 2012年の日本うつ病学会によるガイドラインは、季節性うつ病の場合は双極性障害の可能性を念頭に置かねばならないとしている。
- ハーブの利用
- ハーブとして利用されているセント・ジョーンズ・ワートは、ドイツをはじめいくつかの国では軽症のうつに対して従来の抗うつ薬より広く処方されている[171]。日本ではサプリメントとして市販されている。副作用があり、日本での治療エビデンスは希薄である。臨床研究の結果は成否さまざまで、軽症から中等症のうつに対して有効でかつ従来の抗うつ薬よりも副作用が少ないとする研究がある一方で、プラセボ以上の効果は見られないとする研究もある。コクランレビューによる2008年の報告[172]によると、これまでのエビデンスからプラセボ群より優れた効果を示し、標準的な抗うつ薬と同等に効果があるが副作用は小さいことが示唆されるという。ただし重度の抑うつには効果が弱いとされるほか、同時に服用した他の薬の効果に干渉することがあるため注意が必要とされる[173]。
- セント・ジョーンズ・ワートにおいてもセロトニン症候群の可能性があるので、注意が必要である[174]。
日本におけるうつ病治療の現状
「日本の精神保健」も参照
2012年の日本うつ病学会のガイドラインには、薬を飲んで休んでいればいいというような説明では、患者側の積極的な治療への参加が放棄されることもあり、生活上の工夫やリハビリについての説明も必要であるとされる。
心因が強く影響していると考えられるうつ病の場合、環境のストレスが大きい場合は調整可能かどうかを検討し、対応する[176]。
厚生労働省老人保健課の『介護予防マニュアル』の「うつ予防・支援マニュアル」には、「休んで、薬をうまく利用する」ことである[177]。
2010年の日本うつ病学会の提言では「薬物療法などの生物学的治療法と、精神療法などの心理学的治療法は車の両輪であり、両者がそろって初めて最適な治療となることは論を俟たない」と述べられている。
上記提言によると、日本で心理療法が十分に行われていない理由としては、
- 認知行動療法ができる心理専門職の不足
- 患者数の著しい増加により、一人の患者に十分な時間がかけにくい
- 薬物療法が進歩した結果、患者・医師双方にとって複雑、時に難解で時間のかかる精神療法を行わなくても、薬の服用のみで十分という風潮が生じている
- 薬物療法に比べて、精神療法の有効性についてのデータが相対的に少なく、積極的な精神療法への動機付けが乏しい
などが挙げられ、その対策として、人材不足の解消、心理職の国家資格化、保険診療化などを提唱している。
2014年のOECDによる日本の医療の質についてのレビューでは、日本は「専門家及び地域社会双方による精神保健医療福祉サービスにおいて、不適切な薬剤使用(行き過ぎた多剤投与)を削減し、診療報酬を通じて代替的治療法が適切に評価されるようにするために、一層の努力が必要である」と勧告されている[110]。そのためOECDは日本に対し、軽中程度の患者に対しては心理療法(認知行動療法など)を中心とした治療を提供できるよう、根拠に基づいた治療プログラムの整備を進めるよう勧告し[110]、その参考例としてイギリスの心理療法アクセス改善 (IAPT) プログラムを挙げている[110]。
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構では、リワーク支援(職業リハビリテーション)を実施している。ストレスへの対処法(認知行動療法の一部)、リハビリ出勤、会社との調整など実施している[178]。
予後
回復率
大うつ病は、治療の有無に関わらず時間が解決することが多い。うつの外来患者リストの10 - 15パーセントは数ヶ月以内に減少し、約20パーセントはもはやうつ病基準を完全には満たさない[179]。エピソードの中央値は23週と推定されており、最初の3ヶ月間で回復する率が最も高い[180]。
日本での研究では、6か月程度の治療で回復する症例が、50パーセント程度であるとされ[181]、多くの症例が、比較的短い治療期間で回復する。しかし、一方では20パーセント程度の症例では、1年以上うつ状態が続くとも言われ、必ずしもすべての症例で、簡単に治療が成功するわけではない。また、一旦回復した後にも、再発しない症例がある一方、うつ病を繰り返す症例もある。
非投薬時の予後は良い[182]。抗うつ薬は長期的な予後を悪化(再発率増大、慢性化)させるが、薬物療法を前提とし、投薬時の予後をうつ病の予後として説明することがある[182]。
「抗うつ薬#長期間の使用」も参照
再発率
研究では、初めて大うつ病を経験した人の80%が一生で1回以上の再発を経験し[183]、その平均は4回であった[184]。他の一般的な調査では、約半数が治療を行ったかどうかに関わらず回復しているが、残りの半数は最低1回は再発し、およそ15%は慢性的な再発を繰り返す[185]。
再発率は、うつを繰り返すたびに高くなる傾向にあり、初発の場合の次回再発率は50パーセント、2回目の場合75パーセント、3回目の場合は90パーセントにものぼる。
診断検査の研究事例
研究レベルでは、うつ病等の精神障害を客観的に診断できる指標を探索するために、健常者および患者の血液を用いて、プロテオミクスあるいはメタボロミクスが積極的に行なわれると考えられる。社会的に普及するかどうかは医療保険適応か先進医療か等の費用の程度が大きな問題である。100%やそれに近い精度では診断できないため、慎重な運用が求められる[186]。
光トポグラフィー検査
光トポグラフィー検査 (NIRS) によって、抑うつ症状の鑑別診断の補助に用いる[187]。近赤外光によって、大脳皮質の血液量変化を推定することによって、約7 - 8割の精度で、その抑うつ症状が、うつ病のものか、双極性障害あるいは統合失調症のものかを判別するため、鑑別診断の補助検査として用いることができる[187]。2014年4月には、診療報酬として「抑うつ症状の鑑別診断の補助に使用するもの」が適用された。
MRI
国立精神・神経医療研究センター神経研究所は、核磁気共鳴画像法 (MRI) によって、50人の女性のうつ病と統合失調症患者とを約8割の精度で鑑別したことを報告した[188]。
血液検査
2011年には、山形県のヒューマン・メタボローム・テクノロジーズおよび東京の国立精神・神経医療研究センターが血液中のエタノールアミンリン酸 (EAP) で大うつ病を診断できると発表した。同年、広島大学などの研究グループは、血液中のBDNF遺伝子のメチル化を調べることで大うつ病を診断できる可能性があると発表[189]したが、臨床応用できる段階ではない。
ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズが、うつ病の診断に役立つ生物学的指標を発見したことが報道され、それはエタノールアミンリン酸 (EAP) の含有量を調べる検査であり、2013年に特許を取得しており、2019年には保険適用で検査が行えるようにしたいとしている[190]。血液中のエタノールアミンリン酸 (EAP) の含有量を調べることで、うつ病を捕捉する感度は80%以上であり、うつ病ではない人がうつ病と診断されない特異度は95%を超えると報道された[191]。同社のホームページでは、その2013年時点の特許について、うつ病との鑑別が難しい適応障害や不安障害との判別にも利用できると、記載されている[192]。
脳画像
アメリカの医学博士のダニエル・エイメン(英語版)によれば、脳画像の単一光子放射断層撮影 (SPECT) により、7タイプに分類でき、それぞれのタイプによる治療法、投薬すべき薬、緩和に効果のあるサプリメントが異なるとしており、精神障害は脳の疾患であり、脳画像を用いて診断を行うことでより正確な治療が行える[193]。
新型うつ病(現代型うつ病)
新型うつ病、あるいは、現代型うつ病とは、従前からの典型的なうつ病とは異なる特徴を持つものの総称であり、正式な用語でもないが意味が独り歩きし、専門家の間でも一致した見解が得られていない[194][195]。従来のメランコリー親和型の性格標識を持たない患者を指すことが多い[196]。
日本うつ病学会は、新型うつ病は専門用語ではないとし、現代型うつ病、ディスチミア親和型などの他に提唱されている名称に言及している[196]。また非定型うつ病は正式な医学用語であるが、医学用語としての本来の意味と離れて、日本のマスメディアなどによってここでいう新型うつ病と同義に用いられている[196]。
こうして様々に類型される、考察や仮説の段階にある若年者の軽症の抑うつ状態に対する研究から、マスコミが一側面だけを切り取り、新型あるいは現代型うつ病などと呼ばれているが、医学的に明確な根拠なく広まりを見せ混乱が生じている。そのため日本うつ病学会による診療ガイドラインにおいても、深い考察も治療の証拠もないためとりあげないとしている。
詳細は「新型うつ病」を参照
疫学・統計
「メンタルヘルス#各国の精神保健」も参照
2004年の100,000人あたりの単極性うつ病の障害調整生命年 (DALY)[199]
no data
less than 700
700-775
775-850
850-925
925-1000
1000-1075
1075-1150
1150-1225
1225-1300
1300-1375
1375-1450
more than 1450
うつ病の12カ月有病率(過去12カ月に経験した者の割合)は、世界では1 - 8%、オーストラリアでは4.1%(男性3.1%、女性5.1%、2007年)[200]、日本では1 - 2%(厚生労働省)[176]、3.1%(水野らによる)[201]とされている。
また生涯有病率は、世界では3-16%(川上による)[176]、日本では6.7%(川上[203])とされている。
これらの研究結果から、ある時点ではだいたい50人から35人に1人、生涯の間には15人から7人に1人がうつ病にかかると考えられている。
うつ病による経済損失は、米国では5兆円(生産性低下53%、医療費28%、自殺17%)、日本では110億米ドル(うち69.1億米ドルは職場でのコスト)とされている。
性差
男性より女性のほうが2倍ほどうつ病になりやすいとされている[204]。
閉経や子どもの自立による喪失体験、PMSによるストレス、男性より寿命が長いことによる配偶者との死別などによる部分も少なくはないと思われ、社会生活によるストレスが多い男性にも普通に見られる。
女性の発症率の高さについては、妊娠・出産期・閉経期・月経前(PMS、PMDD、セロトニンの減少)の女性ホルモン、セロトニンの激減がマタニティブルーや産後うつに関与している可能性がある。産後うつは乳児の育児時の睡眠不足もある[205]。日本ではうつ病が増加傾向にあるが、女性の高齢化による自然増もある。
患者数とその推移
日本の患者数の少なさについては、受診率の低さが原因としてあげられる。[206]
日本の患者数の年度ごとの増加傾向には、高齢化やうつ病についての啓発活動による受診率の増加が原因としてあげられる[207]。
うつ病の患者数が20世紀になって増加していることについて、SSRIの導入後6年間で2倍に増えるという経験則があり、製薬会社のキャンペーンが影響している、とした説もある[208]。「副作用の少ない」抗うつ薬の普及に伴い、うつ病と診断される患者数が増加している側面がある。
子どものうつ病
詳細は「:en:Depression in childhood and adolescence」を参照
「児童精神医学」および「メンタルヘルス#児童・青年」も参照
子どもでもうつになる場合があり、日本の子どもの大うつ病の時点有病率は児童期で0.1-2.6%、青年期で0.7-4.7%とされている[209]。カナダの12-19歳人口においては、おおよそ男性で5%、女性で12%が大うつ病エピソードを経験し、その経済的コストは3.2億加ドルとされている[210]。
自殺企図者とうつ病の統計
「自殺#自殺と精神保健」および「日本の自殺」も参照
WHOの自殺予防マニュアルによれば、自殺既遂者の90%が精神障害を持ち、また60%がその際に抑うつ状態であったと推定している。日本においては、重大な自殺を図った者の75%に精神障害があり、その46%はうつ病である。
喫煙との関連
詳細は「ニコチン依存症」を参照
製薬会社のファイザーが2009年6月に10年以上の喫煙歴がある40 - 90歳の男女計600人を対象にインターネットで行った調査によると、ニコチン依存症の人の16.8パーセントにはうつ病やうつ状態の疑いがあり、ニコチン依存症でない人でのその割合は6.3パーセントのため、ニコチン依存症の人ほど、うつ病・うつ状態の可能性が高いと報告している[212]。また、典型的な抗うつ薬であるイミプラミンについて、喫煙者は効果が半減するとの指摘がなされている[213]。
ただし、喫煙者であって重症のうつ病の間の禁煙は医師との相談が必要である[214][215][216]。ニコチン離脱時にうつ病が再燃しやすいのである[214]。
うつ病によりリスクの高まる身体疾患
- 2型糖尿病
- 糖尿病患者の死亡率
- 動脈硬化
- 冠動脈虚血性疾患
- 心筋梗塞発症後1年間の心血管死,心筋梗塞再発など
- 脳梗塞
- 乳がん患者のがん死亡率
国別データ
100,000人あたりのうつ病の障害調整生命年(DALY)については、Major Depressive DALY Ratesを参照。
脚注
- ^ 「Solving the Puzzle of Mystert Syndromes」によると、181人のうつ病患者(含自殺願望の患者)の口中から水銀アマルガムの詰め物を取り除いた結果、全員が完治または改善を報告している。
- ^ 原題: “WPA/PTD Educational Program on Depressive Disorders” [106][107]
- ^ 原文: “the effect of psychotherapy alone is as great as the combined effect of psychotherapy and antidepressants, why bother with the drugs?” [109]
- ^ ”Step 3: persistent subthreshold depressive symptoms or mild to moderate depression with inadequate response to initial interventions, and moderate and severe depression - For people with moderate or severe depression, provide a combination of antidepressant medication and a high-intensity psychological intervention (CBT or IPT).” (英国国立医療技術評価機構 2009b, Chapt.1.5.1.2)
- ^ なお、非定型うつ病については、欧米ではモノアミン酸化酵素阻害薬(MAO阻害剤)が第一選択として活用されているが、その激しい副作用と厳しい食事制限のため、2012年現在日本で認可されているものはない。NICEはMAOIの処方は精神医療専門家のみが行われなければならないしている。
- ^ ”Do not use antidepressants routinely to treat persistent subthreshold depressive symptoms or mild depression because the risk–benefit ratio is poor,”(英国国立医療技術評価機構 2009b, Chapt.1.4.4)
- ^ "Surprisingly, there is limited evidence that antidepressants reduce suicide risk. Because depression is one of the most significant risk factors for suicide, however, antidepressants may be essential in the treatment of suicidal patients for depressive-symptom reduction." (アメリカ精神医学会 2004, pp. 378-379)
- ^ David Taylor(チーフ薬剤師、精神薬理学教授)、Carol Paton(チーフ薬剤師、名誉研究員)、Shitij Kapur(精神医学研究所学部長・教授)らによって著された向精神薬の処方マニュアルである[154]。
- ^ 原文: “antidepressants are not recommended for the initial treatment of mild depression, because the risk-benefits ratio is poor.” [158]
- ^ 原文: “patients of all ages with mild depression of the benefits of following a structured and supervised exercise programme.” [158]
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関連項目
- メンタルヘルス
- 精神科医 / 臨床心理士 / 精神保健福祉士
- 気分障害
- 双極性障害(躁うつ病)
- 退却神経症
- メランコリー
- セロトニントランスポーター遺伝子
- ストレス脆弱性モデル
- うつ病を患った人物の一覧
外部リンク
- Depression アメリカ国立精神衛生研究所 (英語)
- Clinical depression - イギリス国民保健サービス (英語)
- Depression (NICE Pathways) (英語)
- 厚生労働省 うつ病
- 日本うつ病学会
- 一般社団法人うつ病の予防・治療日本委員会 (JCPTD) - UTU-NET うつ・不安啓発委員会公式ホームページ
精神と行動の障害(ICD-F - 290-319) |
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器質性 / 症状性 |
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認知症
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- 軽度認知症
- アルツハイマー型認知症
- 多発性脳梗塞認知症
- ピック病
- クロイツフェルト・ヤコブ病
- ハンチントン病
- パーキンソン病
- AIDS認知症症候群
- 前頭側頭型認知症
- 日没症候群
- 認知症徘徊
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その他
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- せん妄
- 脳振盪後症候群
- 器質脳症候群
- 他の症状性を含む器質性精神障害
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精神作用物質使用、薬物乱用による障害 |
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- 薬物中毒 / オーバードース
- 身体依存
- 薬物依存症
- 反跳作用
- 二重反跳
- 離脱
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気分障害(感情障害) |
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- 躁病
- 双極性障害(I型 - II型 - 気分循環症)
- 抑うつ症状(大うつ病性障害 - 気分変調症 - 季節性情動障害 - 非定型うつ病 - メランコリー型うつ病)
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神経症 - ストレス関連 - 身体表現性障害 |
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不安障害
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恐怖症
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- 広場恐怖症
- 社会恐怖 / 社交不安障害(対人恐怖)
- 特定の恐怖症(閉所恐怖症)
- 単一社会恐怖
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その他
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- パニック障害
- 全般性不安障害
- 強迫性障害
- ストレス(急性ストレス障害 - PTSD)
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適応障害
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身体表現性障害
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- 身体化障害
- 身体醜形障害
- 心気症
- 疾病恐怖
- ダ・コスタ症候群
- 疼痛性障害
- 機能性神経症状症(ガンザー症候群 - 咽喉頭異常感症)
- 神経衰弱
- Mass Psychogenic Illness
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解離性障害
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- 解離性同一性障害
- 解離性健忘
- 解離性遁走
- 離人感・現実感消失障害
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生理的・身体的 |
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摂食障害
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- 神経性無食欲症
- 神経性大食症
- 反芻性障害
- 特定不能の摂食障害
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非器質性睡眠障害
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- 過眠症
- 不眠症
- 睡眠時随伴症(レム睡眠行動障害 - 夜驚症 - 悪夢)
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性機能障害
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- 性的欲求(性欲低下障害 - 性欲亢進)
- 性的関心・興奮 (女性の性的関心・興奮障害)
- 勃起障害
- オルガスム(無快楽症 - 射精遅延 - 早漏 - 性的冷感)
- 疼痛(膣痙 - 性交疼痛)
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産後
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成人のパーソナリティと行動 |
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性と性同一性
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- 性成熟障害
- 自我異和的性的志向性
- 性的関係機能障害
- 性的倒錯(性依存症 - 窃視症 - フェティシズム)
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その他
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- パーソナリティ障害
- 衝動制御障害(窃盗症 - 抜毛症 - 放火癖)
- 体を対象とした反復的行動
- 虚偽性障害(ミュンヒハウゼン症候群)
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小児の精神障害 |
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精神遅滞
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精神発達(発達障害)
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感情・行動の障害
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- ADHD
- 行為障害(反抗挑戦性障害)
- 情動障害(分離不安症)
- 社会的機能(場面緘黙症 - 愛着障害 - 脱抑制性愛着障害)
- チック症(トゥレット障害)
- 言語障害(吃音症 - 早口症)
- 運動障害(常同運動症)
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未分類 |
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- 緊張病
- 想像妊娠
- 間欠性爆発性障害
- 精神運動性激越
- 常同症
- 心因性非てんかん性発作
- Kluver-Bucy症候群
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