出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2013/02/20 01:12:33」(JST)
IUPAC命名法による物質名 | |
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3-(2-chloro-10H-phenothiazin-10-yl)-N,N-dimethyl-propan-1-amine | |
臨床データ | |
胎児危険度分類 | C(US)/妊婦又は妊娠している可能性のある婦人、授乳中の婦人には投与しないことが望ましい(日本) |
法的規制 | ℞ Prescription only |
投与方法 | 経口、坐剤、筋注、静注(点滴) |
薬物動態的データ | |
生物学的利用能 | 経口投与で30~50%(個人差10~70%) |
代謝 | 肝臓(主にCYP2D6) |
半減期 | 16~30時間。長期連用で自己代謝誘導 |
排泄 | 代謝物が胆汁・尿中排泄(未変化体排泄はごくわずか) |
識別 | |
CAS登録番号 | 50-53-3 (free base) 69-09-0 (hydrochloride) |
ATCコード | N05AA01 |
PubChem | CID 2726 |
DrugBank | APRD00482 |
ChemSpider | 2625 |
KEGG | D00270 |
化学的データ | |
化学式 | C17H19ClN2S |
分子量 | 318.86 g/mol (free base) 355.33 g/mol (hydrochloride) |
クロルプロマジン(Chlorpromazine)は、フランスの生化学者アンリ・ラボリ(Henri Laborit,1914-1995)が1952年に発見した、フェノチアジン系の抗精神病薬である。精神安定剤としてはメジャートランキライザーに分類される。メチレンブルー同様、フェノチアジン系の化合物である。塩酸塩が医薬品として承認され利用されている。日本においてクロルプロマジンは劇薬に指定されている。
目次
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1950年、フランスの製薬会社ローヌ・プーラン社(Rhône-Poulenc、現サノフィ・アベンティス)により抗ヒスタミン薬として開発されたものの、鎮静作用が強すぎる上、抗ヒスタミン作用が少ないと当時は評価された(整理番号は4560RP)。
ドパミン遮断剤のほか、古くからヒベルナシオン(hivernation)という麻酔前投与剤として知られていたが、この薬効がドパミン遮断効果(その作用機序は、脳内の中枢神経系で興奮や妄想を生み出すと想定される神経伝達物質ドパミンのD2受容体の回路を遮断する事にある)を有することは、ラボリの発見まで知られていなかった。
約12.5 mg程度で乗物酔の防止効果と悪心の防止効果を生じ、精神神経疾患に対しては、アメリカでは1日あたりの投与量が 1,000 mg 程度のいわゆる『1キロ投与』の統合失調症の障害治療に発明当初から広く使用された。ヒベルナシオンとしての麻酔前投与も古くから行なわれ、この用途では前記発明以前から知られていた。日本では、クロルプロマジンの迂回発明が大阪地方裁判所(昭和35年9月11日言渡:判例時報162号23頁)で認められ、吉富製薬がその迂回発明に拠る製法特許を取得し、市場の西半分は「コントミン」が占有し販売されている。ノバルティスの輸入品は「ウインタミン」(塩野義製薬取次)の商標を使用している。
クロルプロマジンの発明が精神科病院の閉鎖病棟を開放する大きな動機づけとなったことは良く知られている。[要出典]ドパミン遮断薬としては最も歴史が古く、その塩の成分により、前者の迂回発明による吉富製薬迂回製法によるクロルプロマジン剤と塩野義製薬の正規輸入クロルプロマジン剤とで多少の差異があるものの、薬効には差異はみられない。なお、吉富製薬(現「田辺三菱製薬」)はこの当事者系特許侵害訴訟(塩野義製薬が原告で請求棄却)に勝訴し、日本でのクロルプロマジンのシェアを寡占状態近くにまでのばし、旧来の一流製薬企業に比肩することになった。
重要な副作用は、パーキンソン症候群である。初期は手がふるえ、綺麗な文字が筆記できなくなり(くずしたような文字になる)、けいれん(振戦)が生じ、横隔膜のけいれん(しゃっくり)なども生ずることが報告されている。美容上では色素沈着などが生じ、その結果そばかす状の汚点などが生じる。眼科では網膜に色素沈着が生ずることも知られている。おおむね、活力が減退し、「意志」の力が減退する。また、外的なストレスに弱くなり、内部に「ストレス」が蓄積される。[要出典]
抗パーキンソン薬(ビペリデン「biperiden」、商標:アキネトン、タスモリン、ビカモール)をクロルプロマジンと同時に投与(1mg/日、から3-6mg/日)する方法で前記の「パーキンソン症候群」を防止することができるが、最悪は「遅発性ジスキネジア」のビペリデンのリバウンドを防ぐことができないので、「抗パーキンソン薬」を安易に投与せず、投薬量を適量まで減薬し、パーキンソン症候群のリバウンドを生じさせない処方への切り替えが呼びかけられている。[1] [2])
クロルプロマジンの使用で、特に頻繁に遭遇する副作用は以下の通りである。
クロルプロマジンの本来の作用と反対の効果、つまり、易興奮性、筋けいれん等が見られる事があるかもしれない。これを「奇異反応」という。こうした反応があった場合、上記のような副作用が現れた場合には減量又は投与を中止することとなっている。
外来患者にクロルプロマジンを処方する場合、眠気・注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないように注意することとなっている。
制吐作用を有するため、他の薬剤に基づく中毒、腸閉塞、脳腫瘍等による嘔吐症状を不顕性化することがある。
抗精神病薬において、肺塞栓症、静脈血栓症等の血栓塞栓症が報告されているので、不動状態・長期臥床・肥満・脱水状態等の危険因子を有する患者に投与する場合には注意が必要。
睡眠時無呼吸発作を有する患者には、呼吸抑制作用によって呼吸停止と死を招く可能性がある。
頻度不明となっているが、報告されている重大な副作用は以下の通り。
クロルプロマジンを過量に摂取した人は、傾眠から昏睡までの中枢神経系の抑制、血圧低下と錐体外路症状等の徴候を示す。その他には、激昂と情緒不安、けいれん、口渇、腸閉塞、心電図変化及び不整脈等があらわれる可能性がある。クロルプロマジンの過量摂取は医学的な緊急事態であり、救急医学関係者による迅速な発見が必要である。処置としては、本質的には対症療法かつ補助療法である。早期の胃洗浄は有効であることが認められている。なおクロルプロマジンは半減期が長いため、対症療法などを続けながらの経過観察が必要とされる。アルコールや中枢神経抑制剤と併用は致死的となる恐れがある。
クロルプロマジンを他の薬剤と併用投与する場合、薬理学的な相互作用の可能性に注意を払わなければならない。とりわけバルビツール酸塩・フェノチアジン・麻薬・アルコールなどのクロルプロマジンの効果を高める薬には注意が必要である。
クロルプロマジンの禁忌には以下のようなものがある。
クロルプロマジンのアメリカ合衆国アメリカ食品医薬品局 (FDA)・胎児危険度分類 (pregnancy category) はカテゴリー「C」である。これは、これは、動物実験では胎児への有害作用が証明されているが、その薬物の潜在的な利益によって、潜在的なリスクがあるにもかかわらず妊婦への使用が正当化されることがありうることを意味する。しかし動物実験では、胎児死亡、流産、早産等の胎児毒性が報告されている。また、妊娠後期に抗精神病薬が投与されている場合、新生児に哺乳障害、傾眠、呼吸障害、振戦、筋緊張低下、易刺激性等の離脱症状や錐体外路症状があらわれたとの報告がある[3]。
なお、クロルプロマジンは母乳中へ移行することが報告されているため、授乳中の婦人には投与しないことが望ましいとされる。
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ホルモン名称 | 腫瘍 | 頻度 (IMD.1040) |
頻度 (RNT. 64) |
症候 | 検査(IMD.1041より引用) |
成長ホルモン | 成長ホルモン産生腺腫 | 20%. | 20%. | 頭痛、視野欠損、手足の成長、顔貌粗造、手根管症候群、いびきおよび閉塞性睡眠時無呼吸、下顎成長および下顎前突症、骨関節炎および関節痛、過剰発汗、醜形恐怖 | ・安静空腹時のGHが10ng/ml以上と持続的に高値。 ・75gOGTTによっても5ng/ml以下にならない。 ・TRHおよびLH-RH負荷に反応してGH増大。 ・L-ドパまたはブロモクリプチンに対する増加反応がない。(正常:DRアゴニスト→GH↑) ・ソマトメジンC(IGF-I)高値。 |
プロラクチン | プロラクチン産生腺腫 | 32%. | 30%. | 頭痛、視野欠損、希発月経または無月経、妊孕性の低下、性欲喪失、勃起不全、エストロゲンで初回刺激を受けた(estrogen-primed)女性乳房における乳汁漏出 | ・抗精神病薬、乳房刺激などの原因を除外しても血清PRL濃度が100ng/ml以上。 ・インスリン負荷(IRI)(0.1U/kg)による低血糖刺激(正常:低血糖→TRH↑→PRL↑)、TRH負荷(500μg)(正常:TRH↑→PRL↑)、クロルプロマジン負荷(25mg)(正常:D2R↓→PRL↑)による反応減少。 |
副腎皮質刺激ホルモン | ACTH産生腺腫 | 3%. | 5%. | 頭痛、視野欠損、近位筋障害、求心性の脂肪分布、神経精神医学的症状、線条、易傷性、皮膚の菲薄化、多毛、骨減少 | ・血中コルチゾールが高値、かつ日内変動なし。 ・尿中17-ヒドロキシコルチコステロイド(17-OHCS)、尿中17-ケトステロイド(17-KS)、尿中コルチゾールが高値。 ・CRH試験(CRH100μg静注) ・健常者:血中ACTHは30分後に、血中コルチゾールは60分後に、それぞれ前値の約2倍に上昇。 ・Cushing病:過剰反応 ・副腎腫瘍・異所性ACTH産生腫瘍によるCushing症候群:無反応 |
甲状腺刺激ホルモン | 動悸、振戦、体重減少、不眠、過剰な排便(hyperdefecation)、発汗 | *freeT3、freeT4上昇。 *TSHが、(1)上昇、(2)T3で抑制されない、(3)TRH負荷で無反応。 | |||
卵胞刺激ホルモン | ゴナドトロピン産生腺腫 | 10%. | |||
黄体形成ホルモン | |||||
非機能性腺腫 | 18%. | 40%. | 頭痛、視野欠損、下垂体不全、などmassの圧排による続発性性腺機能低下症。まれに、卵巣過剰刺激、精巣増大、またはテストステロン値の上昇、 |
名称 | 構造 | 分泌細胞 | 下垂体前葉細胞 全細胞に対する 産生細胞の割合 |
染色性 | 腫瘍 | 頻度 (IMD.1040) |
頻度 (RNT. 64) |
症候 | |||
成長ホルモン | GH | ペプチド | somatotroph | 40-50% | 好酸性 | 成長ホルモン産生腺腫 | 成長ホルモン分泌細胞腺腫 | 20%. | 20%. | 頭痛、視野欠損、手足の成長、顔貌粗造、手根管症候群、いびきおよび閉塞性睡眠時無呼吸、下顎成長および下顎前突症、骨関節炎および関節痛、過剰発汗、醜形恐怖 | |
プロラクチン | PRL | mammotroph | 10-25% | 好酸性 | プロラクチン産生腺腫 | プロラクチノーマ | 32%. | 30%. | 頭痛、視野欠損、希発月経または無月経、妊孕性の低下、性欲喪失、勃起不全、エストロゲンで初回刺激を受けた(estrogen-primed)女性乳房における乳汁漏出 | ||
副腎皮質刺激ホルモン | ACTH | corticotroph | 0.1 | 好塩基性 | 嫌色素性 | ACTH産生腺腫 | コルチコトロフ腺腫 | 3%. | 5%. | 頭痛、視野欠損、近位筋障害、求心性の脂肪分布、神経精神医学的症状、線条、易傷性、皮膚の菲薄化、多毛、骨減少 | |
甲状腺刺激ホルモン | TSH | 糖タンパク | thyrotroph | 0.05 | 好塩基性 | 甲状腺刺激ホルモン分泌細胞腺腫 | 動悸、振戦、体重減少、不眠、過剰な排便(hyperdefecation)、発汗 | ||||
卵胞刺激ホルモン | FSH | gonadotroph | 10-15% | 好塩基性 | ゴナドトロピン産生腺腫 | 10%. | |||||
黄体形成ホルモン | LH | 好塩基性 | |||||||||
非機能性腺腫 | 非機能性腺腫 | 18%. | 40%. | 頭痛、視野欠損、下垂体不全、などmassの圧排による続発性性腺機能低下症。まれに、卵巣過剰刺激、精巣増大、またはテストステロン値の上昇、 |
肝細胞傷害型 | 肝壊死型 | 中心帯壊死(zone 3) | 四塩化炭素,アセトアミノフェン,ハロタン |
中間帯壊死(zone 2) | フロセミド | ||
周辺帯壊死(zone 1) | リン,硫酸鉄 | ||
肝炎型 | イソニアジド,メチルドパ,ケトコナゾール | ||
肝線維症型 | メトトレキサート,塩化ビニル,ビタミンA | ||
脂肪肝型 | 小滴性 | テトラサイクリン,バルプロ酸,リン | |
大滴性 | エタノール,メトトレキサート | ||
リン脂質症 | アミオダロン,DH剤 | ||
胆汁うっ滞型 | hepatocanalicular | クロルプロマジン,エリスロマイシンエストレート | |
canalicular | C-17アルキル化ステロイド,経口避妊薬,シクロスポリンA | ||
ductular | ベノキサプロフェン | ||
血管障害型 | 肝静脈血栓 | 経口避妊薬,抗腫瘍薬 | |
門脈血栓 | 経口避妊薬 | ||
静脈閉塞性疾患 | 蛋白同化ステロイド,経口避妊薬,抗腫瘍薬 | ||
肝紫斑病 | 蛋白同化ステロイド,経口避妊薬,トロトラスト,アザチオプリン,ファロイジン,塩化ビニル | ||
肉芽腫形成型 | アロプリノール,カルバマゼピン | ||
腫瘍形成型 | 限局性結節性過形成 | 経口避妊薬 | |
腺腫 | 経口避妊薬,蛋白同化ステロイド | ||
癌腫 | 経口避妊薬,蛋白同化ステロイド,トロトラスト,塩化ビニル | ||
血管肉腫 | トロトラスト,塩化ビニル,蛋白同化ステロイド |
表 DDW-J 2004薬物性肝障害ワークショップのスコアリング(肝臓 2005; 46: 85-90より引用) | |||||
肝細胞障害型 | 胆汁うっ滞または混合型 | スコア | |||
1. 発症までの期間 | 初回投与 | 再投与 | 初回投与 | 再投与 | |
a.投与中の発症の場合 投与開始からの日数 |
5~90日 | 1~15日 | 5~90日 | 1~90日 | 2 |
<5日、>90日 | >15日 | <5日、>90日 | >90日 | 1 | |
b.投与中止後の 発症の場合 投与中止後の日数 |
15日以内 | 15日以内 | 30日以内 | 30日以内 | 1 |
>15日 | >15日 | >30日 | >30日 | 0 | |
2. 経過 | ALTのピーク値と正常上限との差 | ALPのピーク値と正常上限との差 | |||
投与中止後のデータ | 8日以内に50%以上の減少 | (該当なし) | 3 | ||
30日以内に50%以上の減少 | 180日以内に50%以上の減少 | 2 | |||
(該当なし) | 180日以内に50%未満の減少 | 1 | |||
不明または30日以内に50%未満の減少 | 不変、上昇、不明 | 0 | |||
30日後も50%未満の減少か再上昇 | (該当なし) | -2 | |||
投与続行および不明 | 0 | ||||
3. 危険因子 | 肝細胞障害型 | 胆汁うっ滞または混合型 | |||
飲酒あり | 飲酒または妊娠あり | 1 | |||
飲酒なし | 飲酒、妊娠なし | 0 | |||
4. 薬物以外の原因の有無2) | カテゴリー1、2がすべて除外 | 2 | |||
カテゴリー1で6項目すべて除外 | 1 | ||||
カテゴリー1で4つか5つが除外 | 0 | ||||
カテゴリー1の除外が3つ以下 | -2 | ||||
薬物以外の原因が濃厚 | -3 | ||||
5. 過去の肝障害の報告 | 過去の報告あり、もしくは添付文書に記載 | 1 | |||
なし | 0 | ||||
6.好酸球増多(6%以上) | あり | 1 | |||
なし | 0 | ||||
7. DLST | 陽性 | 2 | |||
擬陽性 | 1 | ||||
陰性および未施行 | 0 | ||||
8.偶然の再投与が行われた時の反応 | 肝細胞障害型 | 胆汁うっ滞または混合型 | |||
単独再投与 | ALT倍増 | ALP(T.Bil)倍増 | 3 | ||
初回肝障害時の併用薬と共に再投与 | ALT倍増 | ALP(T.Bil)倍増 | 1 | ||
偶然の再投与なし、または判断不能 | 0 | ||||
1) 薬物投与前に発症した場合は「関係なし」、発症までの経過が不明の場合は「記載不十分」 と判断して、スコアリングの対象としない。 投与中の発症か、投与中止後の発症化により、a またはb どちらかのスコアを使用する。 2) カテゴリー1:HAV、 HBV、 HCV、 胆道疾患(US)、アルコール、ショック肝 カテゴリー 2:CMV、 EBV. ウイルスはIgM HA 抗体、HBs 抗原、HCV 抗体、IgM CMV 抗体、IgM EB VCA 抗体で判断する。 判定基準:総スコア 2点以下:可能性が低い 3、4点:可能性あり 5点以上:可能性が高い |
-薬剤性肝障害
<youtube>http://www.youtube.com/watch?v=JzAPh2v-SCQ</youtube>
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