先天性食道閉鎖症
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Japanese Journal
- 46.肺形成異常を合併した食道閉鎖症の2例(セッション9 一般演題(その他),第21回日本小児呼吸器外科研究会)
- 田中 拡,和田 基,佐々木 英之,風間 理郎,西 功太郎,福沢 太一,山木 聡史,天江 新太郎,仁尾 正記
- 日本小児外科学会雑誌 47(7), 1097, 2011-12-20
- NAID 110008896862
- 5.先天性食道閉鎖症に合併した先天性食道狭窄症の1例(一般演題,第48回日本小児外科学会九州地方会)
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- 食道閉鎖症は食道が途中で途切れていてミルクが飲めない病気ですが,下の図のように気管との間に 瘻孔 があることが多く,その繋がり方によって5つの型に分類されています.一番多いのは下側の食道が気管とつながっているC型で ...
- 概要 先天性食道閉鎖症は、食道が盲端に終わり閉鎖してしまう疾患です(一部開通している病型もあります)。胎生(たいせい)4~7週頃の気管と食道の分離過程の異常によって発症するという説が有力です。発生頻度は3000~5000例に1例 ...
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- ヒント:タイトルに騙されるな!
- 45歳 女性
- 主訴:肺炎
- 現病歴:過去6ヶ月の間、咳、発熱、および膿性痰をともなう3回のエピソードがあった。このうち1回のエピソードでは、右側の胸膜炎性胸痛があった。一連のエピソードはgeneral practitionerの外来で治療していた。これらのエピソードに加え、5年間の嚥下困難の既往がある。嚥下困難は最初は中等度であったが、だんだんと増悪している。食べ物が胸骨後部の下方に刺さる様だと言っている。どういう固形物であってもこのような症状がでる。体重は過去2ヶ月で5kg減少した。嚥下困難は食事中に改善することがあるようだ。最近、形のはっきりとした食物を嘔吐する問題を抱えている。
- 3年前外来で施行した上部消化管内視鏡では問題は認められなかった。器質的な問題がないことが保証されたが、症状はひどくなってきた。排尿障害はない。便秘傾向があるが、最近少し悪くなってきた。
- 既往歴:無し
- 家族歴:無し
- 社会歴:10年前まで4年間、アメリカ合衆国の北西の沿岸部にすんでいた。店員として働いている。
- 嗜好歴:喫煙なし。飲酒は週に5units以下。
- 服用薬:
- 身体所見 examination
- やせて見える。右の肺底部にcrackleを認める。心血管系、消化器系、およびそのほかの臓器系に異常を認めない。
- 検査所見 investigations
- 胸部単純X線写真(供覧)
- 問題
- 診断名は?
- どうやって診断をつけるの?
- 答え
- 噴門部のアカラシア
- ■嚥下障害の鑑別疾患
- DIF.125
- 嚥下というのは喉頭、咽頭、食道の機能で、1)機械的閉塞(ex. 腫瘍)、2)生理的閉塞(ex. 偽球麻痺)により機能が障害される。
- 機械的閉塞 喉頭、咽頭、あるいは食道自体の内的な疾患と周辺臓器の外的な疾患を考える。VINDICATEが有効。
- V vascular 大動脈瘤、心拡大
- I inflammatory 喉頭炎、扁桃炎、食道炎、縦隔炎。 infection シャーガス病
- N neoplasm 食道と気管の癌腫(carcinoma)、縦隔の皮様嚢腫
- D degenerative and deficiency Plummer-Vinson syndrome(鉄欠乏性貧血)
- I intoxication アルカリ狭窄(lye stricture)
- C congenital and acquired 食道閉鎖症(esophageal atresia)、食道憩室
- A autoimmune 強皮症
- T trauma 食道破裂
- E endocrine 甲状腺腫大(endemic goiter(風土病としての甲状腺腫)、グレーブス病)
- 生理的閉塞 神経から筋肉にいたるまでの障害であり、この経路を想像しながら鑑別を上げていく。
- 1. end organ 緊張性ジストロフィー、皮膚筋炎、アカラシア、びまん性食道痙攣
- 2. 神経筋接合部 重症筋無力症
- 3. 下位運動ニューロン 急性灰白髄炎、ジフテリア性神経炎、脳幹における感染症もしくは腫瘍
- 4. 上位運動ニューロン 偽性球麻痺(脳梗塞、脳塞栓、脳出血、多発性硬化症、認知症、びまん性脳動脈硬化症)、パーキンソン病や他の錐体外路症状を呈する疾患
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- 英
- congenital esophageal atresia
- 同
- 食道閉鎖 食道閉鎖症 esophageal atresia
- 関
- 小児科学。小児外科
臨床上の特徴
疫学
病因
- 胎生4-6週に前腸から発生した気道と食道が分離するが、この時期の異常により生じる。この時期のには心臓や直腸肛門が形成される時期であり、その他の奇形合併が多い。 → 18トリソミー、VACTER連合
病型
頻度
- PED.1009
C型:80-85%
A型:7-10%
E型:2-3%
病態
- PED.1009
- 唾液や母乳は嚥下不能 → 嘔吐、誤嚥、肺炎、脱水・電解質異常
- 胃・食道接合部のHis角が鈍であるため、胃内容物が逆流しやすい → 瘻孔を通じて肺内へ → 肺胞障害
- 唾液や母乳は嚥下不能 → 嘔吐、誤嚥、肺炎、脱水・電解質異常
症状
- 泡沫状の唾液流出、哺乳後の嘔吐、多呼吸、チアノーゼ
- 出生直後から口腔内に粘稠性の唾液の貯留を認め、泡沫状に認められる。
- ミルクを飲ませればチアノーゼをきたす。
- 誤嚥性の肺炎をきたしうる。
検査
- カテーテルによる検査:鼻腔より胃へのカテーテルを挿入を試みる。胸部単純X線写真でcoil-up sign認める。
- 胸部単純X線写真:胃泡があればC型、なければA型
治療
外科的治療
- SPE.121 PED.1009 SSUR.675
- 方針:気管と食道の瘻孔を切断。上下の食道を吻合。一期的根治術をめざすが、上下食道間の距離が大きい、あるいは身体状態が不良(低出生体重児、重症合併奇形、重症肺炎)であれば、多段階の手術とする。
- C型:気管食道瘻の切離・閉鎖。食道吻合。
- A型:食道吻合。
- 一期的根治術が不能である場合、気管食道の閉鎖と胃瘻造設を行い、身体状態の好転、あるいは食道ブジーによる食道の延長を計り食道吻合を行う。あるいは代用食道(小腸、結腸)による食道再建を行う。
術後合併症
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- 英
- esophagus (Z)
- 関
- 消化器系
解剖
- 正中面付近を下行してくるが、横隔膜近傍で左側に寄り、背面で胸大動脈と交叉する。
- L10椎体の高さで、食道裂孔を食道神経叢と共に通過して腹腔に入る
部位区分
- SSUR.456
生理的狭窄部 (KL.283, KH. 139)
- 第1狭窄部位:輪状軟骨狭窄部:cricopharyngeal constriction
- 切歯から15cm
- 食道の上端で、咽頭に連なる部位
- 下咽頭収縮筋が食道を囲み、輪状軟骨に付き、この筋の緊張によると考えられる
- 第2狭窄部位:大動脈狭窄部:bronchoaortic constriction
- 切歯から25cm
- 食道の中部で、大動脈弓と左気管支が交叉し、それによって圧される。つまり大動脈弓の
- 第3狭窄部位:横隔膜狭窄部:diaphragmatic constriction
運動 (SP.720)
組織
- 食道腺は粘膜筋板の下に存在する。 ← 粘膜下組織に腺があるのは食道の固有食道腺と十二指腸のブルンネル腺だけ
- 食道は横隔膜より上位では漿膜がなく、癌が周囲に浸潤しやすい
食道の上皮と上皮下の組織
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層構造
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1
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2
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3
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4
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5
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6
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器官
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単層扁平上皮
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単層立方上皮
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単層円柱上皮
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角化重層扁平上皮
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非角化重層扁平上皮
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上皮表層の構成細胞
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粘膜固有層
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腺の構成細胞
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粘膜筋板
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粘膜下組織 (大抵、粗結合組織)
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筋層
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漿膜(結合組織+単層扁平上皮) 外膜(結合組織のみ)
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食道
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○
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食道噴門腺 (咽頭付近と胃付近に局在)、粘液腺
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粘液細胞 (スムーズに食べ物を流す)
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縱層 (縦走筋のみ)
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固有食道腺(粘液腺、管状胞状、ペプシノーゲン、リゾチーム)
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内輪筋層 外縱筋層 (食道上1/3:骨格筋、食道中1/3:骨格筋、平滑筋、食道下1/3:平滑筋)
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外膜(横隔膜まで) 漿膜
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臨床関連
- 食事の通過障害は生理的狭窄部でおこりやすい。特に第1狭窄部で異物が見られる (KH.141)
- 生理的狭窄部は癌の好発部位であり、第2,第3狭窄部位に多い (KH.141)
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- 英
- closure
- 同
- 縫合
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- 英
- sis, pathy
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- 英
- atresia
- 関
- 閉鎖、閉塞症