出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2013/06/19 16:11:44」(JST)
胃石(いせき、gastrolith)は、動物が消化管内に持つ石である。
英語では gastrolith。語源は、ギリシア語の gastro-(胃)と lithos(石)。
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一部の脊椎動物は、飲み込んだ石を胃石とする。胃石で食物をすりつぶして消化の助けとするか、水棲動物の場合は体重の調整にも使う。
現生の脊椎動物では、胃石はアザラシ、アシカ、ワニ類、草食性の鳥類に広く見られる。
絶滅動物、例えば竜脚下目の恐竜も、硬い植物をすり潰すため胃石を持っていたことが判明している。獣脚類の化石と共に胃石が発見されることは希であり、肉食恐竜が食物の粉砕に胃石を用いたとは考えづらい。
食物をすり潰すのに適した歯を持たない動物は、胃石を砂嚢の中に保持して咀嚼に替える。
首長竜など水棲の絶滅動物は、現生のワニと同様、体重を調整する重りとして石を飲み込んでいたようである[1]。
胃石の大きさはそれを持つ動物の大きさによって、またその食性によって異なる。小は砂程度のものから大は大礫以上のものまでが発見されている。恐竜の胃石は、合計数kgにも及ぶことがある。またダチョウが飲み込む石は、時に長さ10cmを越える。
化石の胃石は磨かれて丸くなっている場合がある一方、現生の鳥類の胃石は全く擦られていない。
ふつう地質学の分野では、複数の根拠が無い限り、恐竜化石と共に見つかる岩石が消化を助けるためのものだとは認められない。第1に、その岩石は周辺の地質と相容れないものである必要がある。第2に、その岩石は擦られて丸くなっていなくてはならない。第3に、その岩石の見つかる場所が恐竜の消化器(のあった所)でなくてはならない。ただしホイットル(C. Whittle)は走査型電子顕微鏡を用いて胃石の表面パターンを分析する手法を開発している(1988、9年)。
ユタ州中部の白亜紀初期の地層には、丸くなった赤や黒のチャートが極めてよく見られるが、その一部は胃石なのであろう。胃石は、英語ではしばしば Morrison stones(モリスンの石)と呼ばれるが、これは胃石がモリスン群層(Morrison Formation;コロラド州の町モリスンに因む。ジュラ紀後期の地層)からよく見つかることが理由である。珪化木で出来た胃石もある。
甲殻類の胃石は、体内で析出した炭酸カルシウムである。脱皮中のカルシウムのストックとして利用される。
甲殻類は、脱皮の前に殻(外骨格)のカルシウムをカルシウムイオンとして血中に回収し、胃の中に、左右1対の炭酸カルシウムの丸石ないし円盤として析出させる。胃石は脱皮後数日で血液に再吸収され、含まれていたカルシウムは新しい殻で石灰化する。
甲殻類は脱皮後に脱いだ殻を食べ、この行為によってもカルシウムを補給するとも言われる[2]。しかし、ザリガニを使った実験では、脱いだ殻にカルシウムは含まれておらず、この行為でカルシウムは補給されない[3]。
胃石は特に淡水産甲殻類(たとえばザリガニ、アカテガニ、ベンケイガニ[4])で発達する。海産甲殻類の場合、海水に溶けているカルシウムイオンを利用できるからである。
ザリガニの胃石はかつて、ラテン語でオクリ・カンクリ oculi cancri(カニの目)、あるいは江戸時代の日本では転訛し「オクリカンキリ」と呼ばれ、万能薬、とりわけ、眼病[2][4]や肺病・泌尿器病[3]の薬として珍重された。
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