出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2016/05/18 16:20:13」(JST)
B型肝炎 | |
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分類及び外部参照情報 | |
ICD-10 | B16, B18.0–B18.1 |
ICD-9 | 070.2–070.3 |
OMIM | 610424 |
DiseasesDB | 5765 |
MedlinePlus | 000279 |
eMedicine | med/992 ped/978 |
Patient UK | B型肝炎 |
MeSH | D006509 |
B型肝炎(Bがたかんえん、英: Hepatitis B)とは、B型肝炎ウイルス (HBV) に感染することで発症するウイルス性肝炎の一つ。
日本においてB型肝炎ウイルス保有者(キャリア)は、150万人程度といわれている。そのうち10%が肝炎発症となり、慢性肝炎、肝硬変、肝細胞癌に進行する。しかし、95%は自然治癒する。したがって、キャリアのうち5%が慢性肝疾患になる。
近年、日本ではあまり見られなかったジェノタイプA(北米、欧州、アフリカ中部に多く分布する)のB型肝炎ウイルス感染が広がりつつある。ジェノタイプAのB型肝炎ウイルスに感染した場合、その10%前後が持続感染状態(キャリア化)に陥る。本来、日本に多いジェノタイプCのB型肝炎ウイルスは、成人してからの感染では、キャリア化することはまれであったことから、ジェノタイプAのB型肝炎ウイルス感染の拡大には、警戒が必要である。
B型肝炎ウイルスは血液を介して感染する。感染経路は主に以下がある。成人以降での水平感染 の多くは一過性であることが多い。
かつては幼児期(7歳まで)の輸血による感染が多かったが、現在では先進国では検査体制が確立した為ほとんど見られない。針刺し事故や覚醒剤注射の回し打ち・刺青での針の再使用などもある。
日本では、戦後から昭和63年頃まで行われた幼児期の集団予防接種における注射針や注射筒の使い回しにより、HBVウイルスが蔓延した。国は昭和23年には注射針・注射筒の連続使用の危険性を認識していたが、40年にわたり使い回しの現状を放任していた。現在、推定150万人の持続感染者(キャリア)の内、集団予防接種による感染者は30%前後と言われており[2]、この集団感染訴訟は、2011年6月28日に国と原告との間で基本合意が締結し、2012年1月13日に特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法が施行され、裁判上の和解等が成立した者に対し、国は法に基づく給付金等を支給することになった[3][4]。
B型肝炎ウイルスに感染した場合、多くは無症状で経過するが、20~30%が急性肝炎を発症し、1~2%が劇症肝炎化する。D型肝炎の混合感染が生じる場合もある。成人の初感染の多くは、免疫応答でウイルスを排除しての一過性感染であるが、近年成人感染のキャリア化が報告されている。
母子感染の90%以上は、C型肝炎と同様、B型肝炎ウイルスに持続的感染を呈する場合が多い。1986年から母子間ブロックが行われるようになってからは感染はほとんど防げている。
C型肝炎と異なり、B型肝炎では肝硬変を経ずに肝細胞癌の発症が見られる。無症候性キャリアであっても発症することもある。
B型肝炎の感染経路は、主にB型肝炎に感染している母親から出産時の子への感染(母子感染。垂直感染)、出産後の集団予防接種、それ以外による医療者の針刺し事故・集団予防接種での注射器の使いまわし・性交渉・入れ墨で器具を消毒せず繰り返し使用した場合・覚醒剤使用時に注射器を共用した場合、等がある。(但し、成人してからの感染は慢性化する事が少なく一過性の急性肝炎が主な症状になるので、慢性B型肝炎患者の場合は予防接種・母子感染が主な感染経路になる事も考えられる) なので出生時の母親の感染有無、集団予防接種時の時期(昭和23年7月~昭和63年)、輸血暦、手術暦、針刺し事故、覚醒剤注射・異性関係などの感染の原因となりうることがあったかどうかを確認が大切である。
臨床的には大まかに以下のように状態評価していく。
HBs抗原 | HBs抗体 | HBe抗原 | HBe抗体 | HBV-DNA | 臨床像 |
---|---|---|---|---|---|
(-) | (+) | (-) | (-) | (-) | 既感染・治癒 |
(+) | (-) | (-) | (+) | (-) | HBe抗体陽性無症候性キャリア |
(+) | (-) | (+) | (-) | (+) | HBe抗原陽性無症候性キャリア |
(+) | (-) | (+) | (-) | (+) | 慢性B型肝炎 |
以下の画像検査によって、慢性肝炎~肝硬変・肝細胞癌の発生を評価していく。
現在、B型肝炎キャリアの多くは母親からの垂直感染(母子感染)であり、外国では母子感染予防の為、B型肝炎ワクチンを乳児期に定期接種している例が多い。日本では、母子感染防止対策事業として、妊婦に対するHBs抗原検査が実施され、健康保険によりHBs抗原陽性妊婦からの出生児へ、抗HBs人免疫グロプリン投与・B型肝炎ワクチン接種を施行している。
労災事故防止(対象 医療関係者・救急関係者等)の観点から実習前の段階からB型肝炎ワクチンの接種が望ましいとされているが、日本では労働安全衛生法上の義務にも関わらず一部の医療機関でB型肝炎ワクチンの予防接種の未実施や接種費用の一部の自己負担を請求している等の問題がある。
渡航者もB型肝炎ワクチンの接種対象となる。日本製、または、日本で承認されているB型肝炎ワクチンのHBs抗原(B型肝炎ウイルス表面抗原)量は10マイクログラム/0.5mLであり、日本以外の製品の20マイクログラムの半分量であること、また、いずれの場合も、"low responder"や"non-responder"という、抗体産生反応をしにくい被接種者がいることも熟知されたい。
VD(性行為感染症)としては、コンドームの着用である程度予防することができる。
B型肝炎ウイルスに対しては、高HBIG(高力価HBs抗原ヒト免疫グロブリン)・HBワクチンにより感染の減少がみられる。
B型肝炎と、将来の肝がんを予防するため、不活化ワクチンを接種する。世界180か国以上で行われている、ワクチンの中でも最も安全なものの一つ[5]。
水平感染予防の観点から、厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会は定期接種化が必要としていて[6]、厚生労働省は2016年10月に予防接種法に基づく「定期接種」にする方針を決めた[7]。
慢性B型肝炎の治療の目的は、慢性肝炎の沈静化(ALTの正常化)と、その後の肝硬変への移行・肝細胞癌発症の阻止にある。急性B型肝炎は基本的に保存的加療がなされる。
抗ウイルス治療はB型肝炎ウイルスを排除する治療である。B型肝炎ウイルスは自然経過において排除抗体(HBs抗体ないしHBe抗体)を取得し、ウイルスの活性化が沈静化していき、これを「セロコンバージョン(seroconversion)」と呼ばれているが、抗ウイルス治療はこれを促していくことを目標としていく。治療適応は「HBe抗原陽性無症候性キャリア」・「慢性B型肝炎」・「B型肝硬変」である。
抗ウイルス治療は、インターフェロン(IFN)と、核酸アナログ製剤で行われる。核酸アナログ製剤は一度開始すると終生継続していく必要性があることと、希に耐性ウイルスが出現することも多く、それによる急性肝炎(breack through hepatitis)が発生することも少なくない。
基本的に年齢によって治療選択される。
抗ウイルス療法以外に、ALTの正常化を計る目的で、以下が用いられる。ただ、肝庇護療法はC型肝炎には比較的効果はあるが、B型肝炎にはあまり効果を示さない場合も多い。
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