出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/11/12 20:58:06」(JST)
正常圧水頭症(せいじょうあつすいとうしょう, normal-pressure hydrocephalus; NPH)は、明らかな脳圧亢進症状の見られない、水頭症の一種である。日本では特定疾患に認定された指定難病である。
1965年にコロンビアの脳神経外科医サロモン・ハキムとレイモンド・アダムスによって、脳室拡大を認めるが髄液圧は正常範囲内で、髄液シャント手術にて症状の改善を認めた症例として報告された。
原因不明で、脳脊髄液の循環不全が起こり、本症を発症するもの。
特定できる原因によって脳脊髄液の循環不全が起こり、本症を発症するもの。くも膜下出血、頭部外傷、髄膜炎などが主な原因である。
好発年齢は60歳以降。発症頻度に明らかな男女の差は認められていない。特発性の正常圧水頭症は、認知症と診断された患者の約5%を占める。
特発性の本症について、動脈硬化危険因子のうち高血圧・糖尿病のみが危険因子となる。特に高血圧については、高血圧の程度と本症の症状の重さ(特に歩行障害)の間に正の相関が見つかっている。
脳脊髄液は、脈絡叢で産生され、各脳室を通り脊髄腔に流れ、吸収される。この脳脊髄液の生成・循環・吸収のバランスが崩れ、急激な脳圧亢進症状を来たすことなく慢性的に軽度の脳圧亢進状態が持続すると、脳の機能が次第に障害される。
三大症状として認知症、歩行障害、尿失禁を始めとした多彩な神経症状が出現する。
特発性の本症では、軽いくも膜炎によってくも膜が癒着や線維化し、脳脊髄液の循環不全を起こすと考えられている。また、微小な脳梗塞病巣により、脳室周囲組織の弾力性が低下し、脳室が拡大するとの機序も考えられている。
頭部CT検査などの脳画像検査で側脳室の拡大または前頭葉の脳溝の狭小化がみられるため、水頭症と診断される。その時、実際には微妙に脳圧は亢進しているが、検査では脳圧亢進とは診断されないため、正常圧の水頭症と呼ばれる。 三徴(痴呆・歩行障害・尿失禁)や性格変化などの症状も参考にされるが、これらはアルツハイマー型認知症やパーキンソン病などと誤診される場合もある症状なので注意が必要。 基本的な診断には、実際に髄液を腰から排出して経過を見る髄液タップテストというものが行われる。
脳室と腹腔を結ぶ「V-Pシャント」、脳室と心房を結ぶ「V-Aシャント」、腰椎と腹腔を結ぶ「L-Pシャント」などが治療法。脳脊髄液の一部を試験的に除去しても症状改善が見られない場合、治療適応とはならない。
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など
アルツハイマー病 | 脳血管性認知症 | ピック病 | |
認知症 | 全般的認知症 | まだら認知症 | アルツハイマー病に類似。 早期には人格、注意力が障害され、 次第に記憶力も障害される。 |
人格 | 晩期に人格障害 | 保たれる | 早期に人格障害 |
病識 | なし(初期にはあり) | あり | なし |
経過 | 進行性 | 動揺性、階段状に進行性 | 進行性 |
基礎疾患 | 特になし | 高血圧、糖尿病、心疾患 | 特になし |
画像検査 | 対称性の脳溝開大 | 脳実質内に脳梗塞巣 | 側頭葉と前頭葉の萎縮 |
機能画像検査 | 側頭葉、頭頂葉での代謝低下 | 前頭葉を中心とした多発性の脳代謝低下 | 前頭葉、側頭葉での代謝低下 |
相談体制 | 保健所 | 地域保健法が定める事業内容「母性及び乳幼児並びに老人の保健に関する事項」による老人精神衛生相談事業 | |
高齢者総合相談センター | 厚労省が都道府県レベルに設置している高齢者に関する相談窓口 | ||
在宅介護支援センター | 老人福祉法により市町村が実施の主体となっている施設であり、在宅の要介護高齢者やその介護者の要望に対応した適切なサービスが円滑に提供されるように市町村や関連機関との連絡・調節などを行っている。 | ||
認知症疾患医療センター | |||
在宅対策 | 介護 | 訪問介護 | ホームヘルプサービス |
通所介護 | デイサービス | ||
短期入所生活介護 | ショートステイ | ||
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認知症対応型老人共同生活介護 | グループホーム | ||
老人認知症疾患デイ・ケア施設 | |||
福祉 | 訪問指導 | ||
施設対策 | 介護 | 介護療養型医療施設 | |
介護老人保健施設 | |||
介護老人福祉施設 | |||
医療 | 老人性認知症疾患治療病棟 | ||
福祉 | 養護老人ホーム | ||
特別養護老人ホーム |
特発性 | パーキンソン病 | |
続発性 | 感染性 | 脳炎後パーキンソン症候群 |
梅毒性パーキンソン症候群 | ||
中毒性 | 一酸化炭素中毒 | |
マンガン中毒 | ||
薬物中毒(抗精神病薬(ベンズアミド系(スルピリド)、フェノチアジン系(クロルプロマジン)、ブチロフェノン系(ハロペリドール))、降圧薬(レセルピン、αメチルドパ)) | ||
血管性 | 動脈硬化症による | |
脳梗塞による | ||
関連疾患 | 線条体黒質変性症 | |
オリーブ橋小脳萎縮症 | ||
シャイ・ドレーガー症候群 | ||
進行性核上性麻痺 | ||
レビー小体型認知症 | ||
ウイルソン病 | ||
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正常圧水頭症 |
Stein Langfitt grading scale : 2 件 Stein-Langfitt scale : 5 件
grade 0 | 神経学的に異常所見なく,労働能力あり |
grade 1 | 軽度の障害はあるが,自宅では自立して生活できる |
grade 2 | 自宅での生活活動においても少しの保護,監督が必要 |
grade 3 | 自立した機能はかなり残存しているが,保護,監督が必要 |
grade 4 | 自立した生活は不可能 |
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