- 英
- primary biliary cholangitis
- 同
- 原発性胆汁性肝硬変
- first aid step1 2006 p.280
- 2009/7/16 III 消化器
まとめ
- 肝内の小葉間胆管が組織的に慢性非可能性破壊性胆管炎により障害され、肝内に胆汁うっ滞をきたしてうっ血性肝障害を起こす疾患である。発症は中年以降の女性に好発する。またHLA-DR8と関連があるらしい。初期症状は皮膚掻痒感であり、黄疸を示さない無症候性PBCがほとんどである。疾患の進行により、黄疸、全身倦怠感が出現、やがて肝硬変、さらに非代償性の肝硬変に陥り、腹水、門脈圧亢進症などを呈する。病理学的には慢性非化膿性破壊性胆管炎が特徴的であり、門脈域周囲にリンパ球の浸潤、非乾酪性壊死を認める。血清学的には抗ミトコンドリア抗体(M2抗体)が疾患特異的に出現し、抗平滑筋抗体も50%弱の症例で陽性となり、またIgMの上昇が認められる。その他血液検査は胆汁うっ滞による肝障害に特徴的な異常がみられる。合併症として、シェーグレン症候群が多く、関節リウマチ、橋本甲状腺炎、強皮症(あるいはCREST症候群)の合併もありうる。治療は対症療法的にウルソデオキシコール酸、ベサフィブラートを用い、肝障害が末期的になれば肝移植の適応となる。
概念
- 特定疾患治療研究対象疾患
- 肝内の中等大小葉間胆管ないし隔壁胆管が障害される原因不明の慢性肝内胆汁うっ滞症。
- 慢性非化膿性破壊性胆管炎(CNSDC)による慢性の肝内胆汁うっ滞を来す疾患(YN.)。
- 初発症状は皮膚掻痒感。
- 末期になると肝硬変像を示す。 → 門脈圧亢進症
- 血清学的には抗ミトコンドリア抗体(IgM)が特徴的だが、胆管障害機序は不明。 → 自己免疫機序?
- 胆汁うっ滞に基づく症状を呈さないPBCを無症候性PBC、症状を呈すものを症候性PBCという。
疫学
- 発症年齢は40から60歳代に集中。約90%は女性。 → 中年以降の女性に好発
YN.
- 有病率:3-4人/10万人。欧米より低いと推定されている。
- 40-60歳の女性。女性が90%
病型と症状
- 初発症状:皮膚掻痒が最も多い。門脈圧亢進症に基く消化管出血が初発症状の場合がある。
- 無症候性PBC:皮膚掻痒感、黄疸など症状を欠く。新規症例の2!3
- 症候性PBC-S1:倦怠感、掻痒感
- 症候性PBC-S2:非代償性。黄疸,腹水
病理
[show details]
病理所見
- 胆管上皮の増殖性変化,胆管上皮細胞の壊死, 胞体の腫大や好酸性変化
- 基底膜の破壊、核の非偏在化、核の重層化、門脈域にリンパ球、形質細胞が浸潤
- 門脈域主体の炎症細胞浸潤
- 小葉内胆管の障害像
- 非乾酪性類上皮肉芽腫
- 好酸球
病態
- 自己免疫機序によると思われる胆管の傷害 → 胆汁うっ滞 → 肝細胞傷害および線維化 → 門脈圧亢進症 → 肝硬変
- 肝内の中等大小葉間胆管ないし隔壁胆管が障害されることによる肝内性胆汁うっ滞 ← これは「肝内胆管が拡張しない」ことの説明になるの?(QB.B-339)
症状(YN., HIM.chapter 302)
- 初発症状:皮膚掻痒感(診断された症例の50%に見られる)、皮膚黄色腫
- 疲労感:肝臓の状態や年齢にそぐわないようなひどい疲労感
- 黄疸
身体所見
- 門脈圧亢進症に基づく症状:肝腫大、脾腫大、腹水、浮腫
- 原発性胆汁性肝硬変に特有:色素沈着(皮膚を掻爬するため)、黄色腫・眼瞼周囲の黄色腫(高脂血症による)
合併症
- YN.
検査(YN.)
血液一般
- 赤血球、白血球、血小板:減少 → 門脈圧亢進症による脾腫が原因
生化学 - 脂質
生化学 - 銅
- 血清Cu:上昇、尿中Cu:上昇、肝組織内銅含有量:上昇
- 血清セルロプラスミン:上昇
肝障害
胆汁
- 胆汁うっ滞の所見が特徴的。ただし総ビリルピンの上昇は末期
免疫血清学
- 抗ミトコンドリア抗体(AMA):陽性。臓器特異性はない ← 90%の患者で陽性。PBCに特異的。
- M2抗体:PBCに特異的。 AMA陰性患者でもほとんどの場合M2抗体が陽性。
- M2の主要対応抗原はミトコンドリア内膜のpyruvate dehydrogenase (PDH) E2 component。
- 抗PDH抗体:陽性。抗PDH-E2抗体と反応する分子がPBCの胆管上皮に高濃度に存在。
- IgM:上昇:70%の症例 ← PBCではIgM産生能が高まったB細胞が末梢血中に存在する。PBCの発症機序との関連が示唆されている。(参考3)
- ANA、抗平滑筋抗体は50%の症例で陽性
- AMA陽性 + ANA陽性 = オーバーパップ症候群
AMAのターゲット(HIM.chapter.302)
- これらの抗原に対する自己抗体は病態形成には関与していないが、疾患のマーカーとなる。
- pyruvate dehydrogenase complex
- branched chain-2-oxoacid dehydrogenase complex
- 2-oxogluterate dehydrogenase complex
超音波検査・CT・MRI
診断
- 臨床症状、血清学的検査、エコー、CTで疑い、肝生検による組織診で確定診断する。
- ALP、γ-GTP → エコーで胆道閉塞性疾患を否定 → AMA、IgM検査 → 肝生検
- AMA陰性の場合は肝生検が決め手
参考2より抜粋
- 次のいずれか1つに該当するものをPBCと診断する。
- 1. 組織学的にCNSDCを認め,検査所見がPBCとして矛盾しないもの。
- 2. AMAが陽性で,組織学的にはCNSDCの所見を認めないが,PBCに矛盾しない組織像を示すもの。
- 3. 組織学的検索の機会はないが,AMAが陽性で,しかも臨床像及び経過からPBCと考えられるもの。
鑑別診断
- 1期: florid duct lesion - 無症候性
- 慢性非化膿性破壊性胆管炎(CNSDC)といわれる所見、すなわち、胆管上皮細胞の変性、壊死、脱落と、胆管周囲へのリンパ球、形質細胞の浸潤。
- 2期: ductular prliferation - 無症候性
- 細胆管の増生と門脈域より肝実質へのリンパ球浸潤。
- 架橋壊死と線維性隔壁を伴った瘢痕。
- 肝硬変
予後
- 黄疸が出現したら肝臓の予後は不良 → つまり進行性
- 無症候性PBCの予後はおおむね良好、15-20年間経過観察された無症候性PBCの約10%が症候性PBC(黄疸あり)へ移行
- 症候性PBCの5年生存率は約40%、総ビリルビン>2.0mg/mlで数年以内に腹水貯留などの肝不全の徴候があらわれてくることが多い
冶瞭
- UDCA(ウルソデオキシコール酸)、ベサフィブラート、肝移植(scheuer stage IV)
薬物療法
- ウルソデオキシコール酸:胆汁排泄を促進して胆道系酵素を低下させる。 → 病態の進行を遅らせるだけに過ぎない
臓器移植
- 進行例に対して肝移植を施行
- 肝移植: 1年生存率 75-90%、 5年生存率 75-85%
- 再発は20-30%(確診), 28-90%(compartible)
禁忌
- ステロイド:骨粗鬆症の増悪を招くため! → 自己免疫性肝炎ではステロイドを使用(よく反応するらしい)。 PBCに対するステロイド療法は症状緩和のみで根治できず、長期投与が必要になるということか???
合併症
鑑別診断
他疾患との比較
PBCとPSCの比較
Table 16-7. Main Features of Primary Biliary Cirrhosis and Primary Sclerosing Cholangitis
|
Parameter
|
primary biliary cirrhosis
|
primary sclerosing cholangitis
|
Age
|
Median age 50 years (30-70)
|
Median age 30 years
|
Gender
|
90% female
|
70% male
|
Clinical course
|
Progressive
|
Unpredictable but progressive
|
Associated conditions
|
Sjogren syndrome (70%)
|
inflammatory bowel disease (70%)
|
scleroderma (5%)
|
pancreatitis (≦25%)
|
thyroid disease (20%)
|
idiopathic fibrosing disease (retroperitoneal fibrosis)
|
Serology
|
95% AMA positive
|
0% to 5% AMA positive (low titer)
|
20% ANA positive
|
6% ANA positive
|
60% ANCA positive
|
82% ANCA positive
|
Radiology
|
normal
|
strictures and beading of large bile ducts; pruning of smaller ducts
|
duct lesion
|
florid duct lesion; loss of small ducts
|
concentric periductal fibrosis; loss of small ducts
|
自己免疫性肝炎と原発性胆汁性肝硬変
症例
- 52歳女性。3ヶ月前から皮膚の掻痒感と軽度の黄疸が出現したため来院した。抗ミトコンドリア抗体が陽性である。
参考
- http://www.nanbyou.or.jp/sikkan/029_i.htm
- http://www.nanbyou.or.jp/pdf/029_s.pdf
- 3. [charged] Pathogenesis of primary biliary cirrhosis - uptodate [1]
国試
Wikipedia preview
出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2020/07/13 17:36:46」(JST)
[Wiki ja表示]
原発性胆汁性肝硬変 |
---|
分類および外部参照情報 |
---|
診療科・ 学術分野 |
消化器学 |
---|
ICD-10 |
K74.3 |
---|
ICD-9-CM |
571.6 |
---|
DiseasesDB |
10615 |
---|
eMedicine |
med/223 |
---|
Patient UK |
原発性胆汁性胆管炎 |
---|
MeSH |
D008105 |
---|
テンプレートを表示 |
原発性胆汁性胆管炎(げんぱつせいたんじゅうせいたんかんえん、英語: PBC:Primary biliary Cholangitis)とは、胆汁うったい(うっ滞)型の肝硬変を呈する疾患。旧来「原発性胆汁性肝硬変」と呼ばれていた[1]。特定疾患治療研究事業対象疾患の一つ。
名称
以前は「肝硬変」になって発見されることが多かったが、近年は血液検査等での精査で「肝硬変」に至らない無症候性での発見診断が多くなり、また早期からの内服加療等にて「肝硬変」へ進行しない症例が多くなってきていた。
そこで、2015年に「欧州肝臓学会(European Association for the Study of the Liver:EASL)」と「米国肝臓学会(American Association for the Study of Liver Diseases:AASLD)」がそれぞれ「Primary Biliary Cirrhosis→Cholangitis」と名称変更を行った。略称は「PBC」で同じ。日本でも、2016年3月に「日本肝臓学会」と「日本消化器病学会」が連名で、「日本医学会」へ「原発性胆汁性肝硬変→原発性胆汁性胆管炎」の名称変更を要請し、同年4月に同学会において名称変更がなされた。
疫学
比較的中年の女性に多い。多くの症例で、自己抗体の一つである抗ミトコンドリア抗体が陽性になる[2]。
臨床像
以前は黄疸、腹水貯留、意識障害などの肝硬変・肝不全症状を呈して発見された場合が多かったが、近年は健康診断が普及し、無症状で血液検査での軽度黄疸や肝胆道系酵素の異常値で早期に発見されて診断に至る場合が80%以上でほとんどである。
分類
以下の種類に大別されている。
- 症候性(symptomatic PBC:sPBC)
- 無症候性(asymptomatic PBC:aPBC)
症状
症状は以下が多く認められる。
- 合併症
- 食道・胃静脈瘤
- 骨粗鬆症、骨塩減少などの骨病変、口腔・眼の乾燥症状(Sicca syndrome)
- 高率に脂質異常症
- 自己免疫疾患(日本では、シェーグレン症候群 - 20%、慢性関節リウマチ - 約5%、慢性甲状腺炎 - 約5%)
- 全身性エリテマトーデス[3]
病理
Cholangitis慢性非化膿性破壊性胆管炎(CNSDC:chronic non-suppurative destructive cholangitis)
検査
一般検査
- 黄疸(T-Bil↑)
- 肝胆道系酵素高値(AST/ALT↑ ALP/γ-GTP↑)
自己抗体
以下の自己抗体検査が診断精査に有用とされている。
- 抗ミトコンドリア抗体(AMA)陽性 特にM2分画(AMA-M2)陽性(約90%)
- 抗セントロメア抗体(抗核抗体)陽性(約30%)
- 抗核膜孔抗体(抗gp210抗体)(約25%)
- 抗Sp100抗体(約10%)
治療
内服加療
治療は胆汁排泄促進剤(ウルソデオキシコール酸:UDCA)の内服で経過をみていく。内服加療での奏功によって肝硬変へ移行せずに無症候性のまま自然経過の場合が多くなってきている。
- 治療抵抗例において、ベザフィブラートとウルソデオキシコール酸の併用は、ウルソデオキシコール酸単独に比べ、有意に肝機能を改善させたとの報告がある[4]。
手術加療
肝硬変へと進展し、肝不全に至る症例では肝移植の適応疾患。生体肝移植の成績は他疾患の場合に比較して良好である。
脚注
- ^ 田中篤、滝川一、三輪洋人 ほか、「PBCの病名変更:「原発性胆汁性肝硬変」から「原発性胆汁性胆管炎」へ」 『肝臓』 57巻 7号 2016年 p.309-311, doi:10.2957/kanzo.57.309
- ^ 原発性胆汁性肝硬変(PBC) 難病情報センター
- ^ 石黒晴哉、木村貴純、二上敏樹 ほか、「経過観察中に全身性エリテマトーデスを発症した,肝細胞がん合併原発性胆汁性肝硬変の1例」『肝臓』 52巻 10号 2011年 p.679-686, doi:10.2957/kanzo.52.679
- ^ Corpechot C, and others. A Placebo-Controlled Trial of Bezafibrate in Primary Biliary Cholangitis. N Engl J Med 2018; 378:2171-2181. doi:10.1056/NEJMoa1714519
出典
- 原発性胆汁性胆管炎(PBC) kompas 慶應義塾大学病院
外部リンク
- 原発性胆汁性肝硬変(指定難病93) - 難病情報センター
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…treating end-stage liver disease from primary biliary cholangitis (PBC; previously referred to as primary biliary cirrhosis). The total number of transplants performed for PBC in recent years has declined slightly …
Japanese Journal
- 症例報告 甲状腺癌術後および原発性胆汁性胆管炎の経過観察中に発生した肝reactive lymphoid hyperplasiaの1例
- 宮川 哲平,富川 盛啓,平林 かおる,白川 博文,尾澤 巖,菱沼 正一,尾形 佳郎
- 福島医学雑誌 = Fukushima medical journal 70(1), 25-31, 2020-04
- NAID 40022254379
- 肝機能の薬と患者さん : 肝機能障害の原因について,正しく把握していますか? (特集 "ただ処方する"から卒業! 薬の上手な処方ガイド : SDMで患者と決めて薬効を最大に!)
- 病気とともに,生きていく : 自己免疫性肝疾患の患者の声 (特集 自己免疫性肝疾患 : 自己免疫性肝炎,原発性胆汁性胆管炎,原発性硬化性胆管炎) -- (特論)
- 古川 祥子
- 日本臨床 = Japanese journal of clinical medicine 78(1), 174-179, 2020-01
- NAID 40022115948
Related Links
- 原発性 胆汁性胆管炎(げんぱつせいたんじゅうせいたんかんえん)という病気は、肝臓の中のとても細い胆管が壊れる病気です。英語ではPrimary Biliary Cholangitisといい、頭文字をとってPBC(ピー・ビー・シー)と呼ばれています。肝臓
- 原発性胆汁性胆管炎は、肝臓内にある小さな胆管が破壊されてしまうことで胆汁の流れが悪くなり、肝臓内にうっ滞してしまうために発症します。
- 原発性胆汁性胆管炎(げんぱつせいたんじゅうせいたんかんえん)という病気は、肝臓の中のとても細い胆管が壊れる病気です。
★リンクテーブル★
[★]
- 58歳の女性。健康診断で異常を指摘されたため来院した。自覚症状はない。飲酒歴はない。輸血歴はない。身長 152cm、体重 72kg。血圧 152/84mmHg。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。神経診察で異常を認めない。血液所見:赤血球 385万、Hb 12.5g/dL、Ht 38%、白血球 4,900、血小板 18万。血液生化学所見:アルブミン 4.4g/dL、総ビリルビン 1.1mg/dL、直接ビリルビン 0.8mg/dL、AST 78U/L、ALT92 U/L、LD 293U/L(基準 120~245)、ALP 347U/L(基準 115~359)、γ-GT 94U/L(基準 8~50)、アミラーゼ 79U/L(基準 37~160)、尿素窒素 18mg/dL、クレアチニン 0.9mg/dL、尿酸 6.9mg/dL、血糖 158mg/dL、HbA1c 7.6%(基準 4.6~6.2)、総コレステロール 216mg/dL、トリグリセリド 190mg/dL、Na 139mEq/L、K4.4mEq/L、Cl 103mEq/L。免疫血清学所見:HBs抗原 陰性、HCV抗体 陰性、抗核抗体 陰性、抗ミトコンドリア抗体 陰性。
- 肝障害の原因として、最も考えられるのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [114A060]←[国試_114]→[114A062]
[★]
- 35歳の女性。職場の健康診断で肝機能検査の異常を指摘されて来院した。自覚症状はない。昨年も同様の指摘をされたがそのままにしていた。飲酒は機会飲酒。常用薬はなく、自然食品やサプリメントも服用していない。身長 163cm、体重 56kg。体温 36.3℃。脈拍 56/分、整。血圧 116/62mmHg。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。圧痛を認めない。下肢に浮腫を認めない。血液所見:赤血球 325万、Hb 12.0g/dL、Ht 32%、白血球 5,300、血小板 27万、PT-INR 1.0(基準 0.9~1.1)。血液生化学所見:総蛋白 7.0g/dL、アルブミン 4.3g/dL、総ビリルビン 0.7mg/dL、AST 36U/L、ALT 42U/L、ALP 852U/L(基準 115~359)、γ-GTP 542U/L(基準 8~50)、空腹時血糖 85mg/dL、HbA1c 5.4%(基準 4.6~6.2)、総コレステロール 254mg/dL、トリグリセリド 95mg/dL。HBs抗原陰性、HCV抗体陰性。
- 考えられるのはどれか。2つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [112A067]←[国試_112]→[112A069]
[★]
- 70歳の女性。数か月前から食後に心窩部痛があるため来院した。体温 37.1℃。血圧 124/62mmHg。眼球結膜に黄染を認める。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。血液所見:赤血球 432万、白血球 7,600、血小板 26万。血液生化学所見:総ビリルビン 7.9mg/dL、直接ビリルビン 5.2mg/dL、AST 271U/L、ALT 283U/L、ALP 2,118U/L(基準 115~359)、γ-GTP 605U/L(基準 8~50)、アミラーゼ 42U/L(基準 37~160)。CRP 6.1mg/dL。ERCP(別冊No. 8)を別に示す。
- 最も可能性が高いのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [112C038]←[国試_112]→[112C040]
[★]
- 英
- primary biliary cirrhosis, PBC
- 関
- 胆汁性肝硬変、続発性胆汁性肝硬変、慢性非化膿性破壊性胆管炎、無症候性原発性胆汁性肝硬変
- 難病
歴史
- 診断の改善に伴い、肝硬変をきたしていないPBCが多く見られるようになったため、2016年に日本で病名変更が承認された。
- → 原発性胆汁性胆管炎
[★]
原発性胆汁性肝硬変 primary biliary cirrhosis → 原発性胆汁性胆管炎 primary biliary cholangitis
[★]
原発性胆汁性胆管炎
[★]
- 英
- bile
- 関
- 肝臓、胆嚢、胆管
- 0.5-1.0 L/day, pH 8.0-8.6
- 消化酵素を含まないアルカリ性の分泌液である
分泌部位
部位 胆汁 割合
肝細胞 毛細管胆汁 2/3
胆細管 胆細管胆汁 1/3
分泌経路
- 肝臓胆汁が総肝管を経由して胆嚢にいたり、ここで濃縮を受けて胆嚢胆汁となる。
機能
- 胆汁酸により、直径1μm以下の脂肪滴が形成され、表面積拡大によりリパーゼと反応しやすくなる。
- ミセルの直径5nm。胆汁酸は両親媒性であり親水基と疎水基を持つ。
- 親水性: OH基,ペプチド結合,カルポキシル基
- 疎水性: 上記部分以外
- 胆汁に含まれる胆汁酸とリン脂質により、モノグリセリド・脂肪酸とミセルを形成することができる。
- 3. コレステロールとビリルビンの排出
- 4. 胃酸の中和
組成
1. 胆汁酸
- see HBC.236
1次胆汁:コレステロールより合成
コール酸
キノデオキシコール酸
2次胆汁:1次胆汁の腸内細菌による代謝(7位の部位のOH基が除去される)
デオキシコール酸
リトコール酸
3次胆汁:肝臓から分泌される状態(可溶性)
タウロコール酸(タウリンと抱合)
グリココール酸(グリシンと抱合)
2. 胆汁色素
ビリルビン:Hbの代謝産物
間接型(不溶性)
↓←グルクロン酸抱合
直接型(水溶性)(抱合型ビリルビン)
↓
ウロビリノーゲン(腸管)
↓
ステルコピリン(腸管)
↓
排泄
3. 脂質
リン脂質(主にレシチン)
不溶性であるが胆汁酸存在下でミセル形成(可溶性)
コレステロール
不溶性であるが胆汁酸存在下でミセル形成(可溶性)
4.電解質成分
陽イオン:Na+(主)、その他K+,Ca2+
陰イオン:Cl-,HCO3-(アルカリ性)
胆汁の分泌と排出
1. 毛細管胆汁
1-1. 胆汁酸依存性胆汁
胆汁酸と水分の分泌:胆汁酸の腸肝循環に依存。
腸肝循環:肝臓から分泌された胆汁が小腸で吸収され、門脈を経て肝臓に戻り、再び排泄されること。
タウロコール酸・グルココール酸
陰イオンに解離しやすく吸収されやすい。
リトコール酸
非解離型なので糞便中に排泄される。
分泌された胆汁酸の95%は腸肝循環により再利用される。
1-2. 胆汁酸非依存性胆汁
胆汁酸以外の分泌:Na+,K+,Ca2+,Cl-,HCO3-,ビリルビン(有機陰イオン)
等張性 :Na+,Cl-,HCO3-は血漿濃度に類似
2. 胆細管胆汁
2-1. Na+,HCO3-(高濃度),水の分泌---セクレチンによる
2-2. Na+,Cl-の吸収
3. 胆汁の濃縮(胆嚢)
電解質吸収(Na+,Cl-の能動的吸収)とそれに伴う水の吸収→5-50倍に濃縮
4. 胆汁排出
食後30分で胆嚢収縮開始。液性の調節機構による排出が主である。
4-1. 液性
十二指腸内食物→CCK分泌→オッディ括約筋弛緩・胆嚢収縮
十二指腸内食物→セクレチン分泌→CCKの作用に拮抗
胃内食物→ガストリン分泌→胆嚢収縮
4-2. 神経性
迷走神経性反射→オッディ括約筋弛緩,胆嚢収縮(関与の程度不明)
臨床関連
- 胆道系に形成された結石。半数以上は無症状SilentStoneである
- 食後3時間程度で痛痛発作、黄痘などを呈する事がある。
- コレステロール系結石(全体の70%):コレステロールの過飽和による。
- ビリルビン系結石(全体の30%):黒色石+ビリルビンCa石
- その他:炭酸カルシウム石など
-
- 1. ビリルビンの生成過多
- 2. 肝細胞によるビリルビンの取り込み減少
- 3. グルクロン抱合障害
- 4. 胆汁へのビリルビン分泌障害
- 5. 胆管閉塞
[★]
- 英
- bile duct (Z), biliary tract
- 同
- 胆汁路
- 関
- 肝内胆管、肝外胆管
胆管径
- 腹部超音波テキスト 第1版 p.169
- 胆摘後では肝外胆管が10mm以上になりうる
- 加齢によって太くなる
- 胆嚢炎:8.7±1.7
- 胆石:11±3.3
- 胆嚢切除後:9.5±2.6
- 膵炎:9.8±2.2
- 膵癌:14.0±2.8
- リンパ腫:9.5±2.6
- 十二指腸疾患(十二指腸炎、十二指腸潰瘍、十二指腸瘢痕):8.4±1.0
[★]
- 英
- primary
- 関
- 一次、一次的、一級、原発性、主要、初生、第一次、第一級、プライマリ、プライマリー
[★]
- 英
- primary
- 関
- 二次性、続発性
- 他の病気の結果として起こる病気ではなく、その病気自体が原因となる疾患を示す
[★]
- 英
- cholangitis
- 同
- 胆道炎