- 英
- tryptophan Trp W
- 同
- α-アミノ-β-(3-インドリル)プロピオン酸 α-amino-β-(3-indolyl)-propionicacid、2-アミノ-3-(3-インドリル)プロピオン酸 2-amino-3-(3-indolyl)-propionicacid
- 関
- アミノ酸、芳香族アミノ酸
/\
-CH2-------| ○|
|| | |
\ / \/
NH
サプリメントの効能
効くとは断言できないが、効能の可能性が示唆されている
- 月経前症候群(PMS):L-トリプトファンを1日6g摂取すると気分変動、きんちょうおよび神経過敏を減弱しうる
- 禁煙:L-トリプトファンを摂取すると禁煙療法の効果を促進するらしい
効かないかもしれない
科学的データの不十分
- うつ、不安、季節性気分障害、注意欠陥多動性障害、睡眠障害の治療
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2016/12/24 08:30:42」(JST)
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L-トリプトファン |
|
|
IUPAC名
Tryptophan or (2S)-2-amino-3-(1H-indol-3-yl)propanoic acid
|
別称
2-Amino-3-(1H-indol-3-yl)propanoic acid
|
識別情報 |
CAS登録番号 |
73-22-3 |
PubChem |
6305 |
ChemSpider |
6066 |
UNII |
8DUH1N11BX |
KEGG |
D00020 |
ChEMBL |
CHEMBL54976 |
IUPHAR/BPS
|
717 |
ATC分類 |
N06AX02 |
- c1ccc2c(c1)c(c[nH]2)C[C@@H](C(=O)O)N
|
- InChI=1S/C11H12N2O2/c12-9(11(14)15)5-7-6-13-10-4-2-1-3-8(7)10/h1-4,6,9,13H,5,12H2,(H,14,15)/t9-/m0/s1
Key: QIVBCDIJIAJPQS-VIFPVBQESA-N
InChI=1/C11H12N2O2/c12-9(11(14)15)5-7-6-13-10-4-2-1-3-8(7)10/h1-4,6,9,13H,5,12H2,(H,14,15)/t9-/m0/s1
Key: QIVBCDIJIAJPQS-VIFPVBQEBP
|
特性 |
化学式 |
C11H12N2O2 |
モル質量 |
204.23 g mol−1 |
水への溶解度 |
Soluble: 0.23 g/L at °C,
11.4 g/L at 25 °C,
17.1 g/L at 50 °C,
27.95 g/L at 75 °C
|
溶解度 |
熱アルコール、アルカリ水酸化物に溶ける。クロロホルムには溶けない。 |
酸解離定数 pKa |
2.38 (カルボキシル基), 9.39 (アミノ基)[1] |
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。 |
トリプトファン (Tryptophan) はアミノ酸の一種である。ヒトにおける9つの必須アミノ酸の内の1つ。
系統名 2-アミノ-3-(インドリル)プロピオン酸。略号はTrpまたはW。
側鎖にインドール環を持ち、芳香族アミノ酸に分類される。蛋白質構成アミノ酸である。糖原性・ケト原性の両方を持つ。多くのタンパク質中に見出されるが、含量は低い。ナイアシンの体内活性物質であるNAD(H)をはじめ、セロトニン・メラトニンといったホルモン、キヌレニン等生体色素、また植物において重要な成長ホルモンであるインドール酢酸の前駆体、インドールアルカロイド(トリプタミン類)などの前駆体として重要である。
目次
- 1 物性
- 2 代謝経路
- 3 トリプトファンの効果
- 4 食品中の量
- 5 脚注
- 6 参考文献
- 7 関連項目
- 8 外部リンク
物性
- 分子量 204.23
- 等電点 5.89
- 溶解性:蟻酸に可溶、水に難溶、エタノールに極めて難溶、希塩酸に可溶。
- 溶解度(水、g/100g)1.06 (20℃)、1.44 (40℃)、2.05 (60℃)
- ファンデルワールス半径:163
- 味:苦(閾値 0.9mg/ml)(L-体。D-体は甘い)
代謝経路
トリプトファンの代謝は極めて多様であり、また複雑である。大まかには以下のように分類できる。[2]
代謝経路 |
組織 |
説明 |
キヌレニン経路 |
肝臓 |
インドールアミン酸素添加酵素 (IDO) によりL-キヌレニンを経てキヌレン酸へ至る経路。ヒトで約95%[3]。 |
セロトニン経路 |
腸
脳
マスト細胞 |
セロトニン・メラトニンの合成に向かう経路。 |
グルタル酸経路 |
肝臓 |
(キヌレニン経路を経て2-アミノ-3-カルボキシムコン酸セミアルデヒドから) エネルギー源としてアセチルCoAへと代謝され完全分解にいたる経路。 (トリプトファンの代謝分解を参照) |
NAD 経路 |
肝臓 |
(キヌレニン経路を経てキノリン酸から) NAD の合成に向かう経路 |
トリプタミン経路 |
|
脱炭酸によりトリプタミンの合成に向かう経路。 |
インドール経路 |
|
脱アミノによりインドールピルビン酸の合成に向かう経路。 |
蛋白質合成 |
全細胞 |
タンパク質を構成するアミノ酸のひとつとして使用 |
その他 |
腸内細菌 |
腸内細菌や真菌によりインドールへと合成される経路。
腸内微生物により代謝されたインドール類は腸管のAHR受容体等を経由し、キヌレニン経路のIDOとともに腸管の免疫恒常性の維持に利用される。 |
トリプトファンの効果
トリプトファンは、ヒトの体内に置いて、概日リズムと関連するセロトニンやメラトニンに代謝される。
ヒトの健康維持にとって欠かせ無い物質であり、かつ、ヒトの体内では十分量が合成出来無い「必須アミノ酸」の1つであって、適量の摂取は精神・神経を落ち着かせるなど、ヒトの健康増進に役立つとされている。
この為、特に改善に役立つとされているのは、不眠症、時差ボケ、うつ病等の疾患であり、米国においてはそれらの症状に処方される場合もある。日本においては、法規上の取り扱いとして成分本質 (原材料) では医薬品でないもの、即ち「医薬品的効果効能を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質 (原材料)」に区分されており、現状、国内や海外ではトリプトファンを含むサプリメントが広く流通し販売されている。
しかし、その一方で、トリプトファンもまた多くの栄養素と同様、その過剰摂取に付いて、幾つかの危険性が報告されている。
過剰摂取、或いは他の栄養素や薬品との相互作用で出現する副作用としては、肝硬変の患者に置ける肝性脳症の発症リスク、とりわけトリプトファンはヒトの体内で代謝物のセロトニンを増加させる事から、セロトニン症候群の発症リスクが懸念される。この為、肝硬変の患者へのアミノ酸輸液に付いては、通常の患者に用いる輸液用製剤とは異なる、トリプトファン等の肝性脳症リスクのある物質の配合量を減らした製剤を用いる。
加えて、妊娠中の胎児への影響も報告例があり、1,000mgの摂取で胎児の呼吸不全を招いた懸念が存在する。
更に、過去にはL-トリプトファンを含むサプリメントが好酸球増多筋痛症候群(EMS)を発症させた疑義が在ったが、昭和電工が或る時期に製造した特定の製造ロットの製品を購入した消費者のみにEMSの発症が見られた事から、専門家らで構成された調査委員会の報告では、それらの健康被害はトリプトファンとは別の不純物が原因であるとされた。
詳細は「トリプトファン事件」を参照
食品中の量
基本的には食品中のタンパク質が多いほど多く含まれる。したがって、肉、魚、豆、種子、ナッツ、豆乳や乳製品などに豊富に含まれる。またチョコレート、燕麦、バナナ、ドリアン、マンゴー、ナツメヤシ、牛乳、ヨーグルト、カッテージチーズ、鶏卵、家禽類の肉(ニワトリ、アヒルなど)、ゴマ、ヒヨコマメ、ヒマワリの種、スピルリナ、ラッカセイなどに含まれる、という報告がある[5]。
食品中に含まれるトリプトファンの量
(食品 100 g あたり)[6]
食品名 |
含有量
(mg) |
バナナ |
10 |
牛乳 |
42 |
ヨーグルト |
47 |
豆乳 |
53 |
白米 |
89 |
そば |
192 |
アーモンド |
201 |
肉類 |
150~250 |
糸引納豆 |
242 |
プロセスチーズ |
291 |
ひまわりの種 |
310 |
たらこ |
291 |
すじこ |
331 |
脚注
- ^ Dawson RMC, et al. (1969). Data for Biochemical Research. Oxford: Clarendon Press. ISBN 0-19-855338-2.
- ^ “Tryptophan metabolism”. KEGG. 2012年5月14日閲覧。
- ^ 滝川修研究室. “国立長寿医療センター研究所ラジオアイソトープ管理室”. 2010年2月23日閲覧。
- ^ Vitamins supplements guide. “Tryptophan - Vitamins & health supplements guide”. 2009年11月22日閲覧。
- ^ 文部科学省 (2005年1月24日). “五訂増補 日本食品標準成分表”. 2009年11月22日閲覧。
参考文献
- Luigina Romani (April 2011). “Immunity to fungal infections”. Nature Reviews Immunology: 275-288. doi:10.1038/nri2939. http://www.nature.com/nri/journal/v11/n4/fig_tab/nri2939_F3.html 2012年6月5日閲覧。.
関連項目
- 昭和電工によるトリプトファン事件(1988年-1989年)
- アミノ酸発酵
- トリプトファン発酵
- 日本食品標準成分表
- ナイアシン
外部リンク
- トリプトファン -「健康食品」の安全性・有効性情報 (国立健康・栄養研究所)
タンパク質を構成するアミノ酸 |
主なトピック |
|
|
特性 |
脂肪族 |
- 分枝鎖アミノ酸 (バリン
- イソロイシン
- ロイシン)
- メチオニン
- アラニン
- プロリン
- グリシン
|
芳香族 |
- フェニルアラニン
- チロシン
- トリプトファン
- ヒスチジン
|
極性なし |
|
正電荷 (pKa) |
- リシン (≈10.8)
- アルギニン (≈12.5)
- ヒスチジン (≈6.1)
|
負電荷 (pKa) |
- アスパラギン酸 (≈3.9)
- グルタミン酸 (≈4.1)
- システイン (≈8.3)
- チロシン (≈10.1)
|
|
分類 |
- 必須アミノ酸
- ケト原性アミノ酸
- 糖原性アミノ酸
- タンパク質を構成しないアミノ酸(英語版)
|
- 主要な生体物質
- 炭水化物
- アルコール
- 糖タンパク質
- 配糖体
- 脂質
- エイコサノイド
- 脂肪酸/脂肪酸の代謝中間体
- リン脂質
- スフィンゴ脂質
- ステロイド
- 核酸
- 核酸塩基
- ヌクレオチド代謝中間体
- タンパク質
- タンパク質を構成するアミノ酸/アミノ酸の代謝中間体
- テトラピロール
- ヘムの代謝中間体
|
|
|
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UpToDate Contents
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Japanese Journal
- 11.ヒトトリプトファン2,3-ジオキシゲナーゼの3次元立体構造の同定と精神疾患への意義(第422回研究協議会研究発表要旨,ビタミンB研究委員会)
- 高トリプトファン含有飼料稲の開発 (技術革新は養鶏産業の変革を進める)
Related Links
- トリプトファン (Tryptophan) はアミノ酸の一種である。系統名 2-アミノ-3-(インドリル) プロピオン酸。略号はTrpまたはW。 側鎖にインドール環を持ち、芳香族アミノ酸に分類 される。蛋白質構成アミノ酸で、必須アミノ酸の一つである。糖原性・ケト原性を持つ。 ...
- トリプトファンは神経アミノ酸と呼ばれていて、セロトニンと呼ばれる神経ホルモンに変換 するアミノ酸です。セロトニンは興奮を ... となりやすい症状. 1日あたり6000mg以上の トリプトファンの継続摂取はノルエピネフリンの生産分泌に影響をあたえる可能性がある 。 ...
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★リンクテーブル★
[★]
- 英
- amino acid
- 関
- ケト原性アミノ酸、糖原性アミノ酸
定義
- L-アミノ酸、D-アミノ酸がある。一般的に生合成されるポリペプチドはL-アミノ酸を材料としている。D-アミノ酸は細菌が産生し、ごく短いペプチドとして特に、細胞壁に存在する。これはペプチダーゼによる分解を免れるためと言われている。D-アミノ酸を含むポリペプチドは、通常の翻訳経路で生合成されない。(FB.58)
- ケト原性:Leu, Lys
- 糖原性/ケト原性:Ile, Phe, Trp
- 糖原性:Met, Thr, Val, Arg, His
- ArgとHisは成長期に必要
- PriVaTe TIM HALL
一覧
分類
|
極性
|
電荷
|
名前
|
1
|
3
|
糖原性
|
ケトン原性
|
必須アミノ酸
|
分枝アミノ酸
|
|
pK1 α-COOH
|
pK2 α-NH2
|
pKR 側鎖
|
側鎖
|
疎水性アミノ酸
|
無
|
無
|
グリシン
|
G
|
Gly
|
|
|
|
|
|
2.35
|
9.78
|
|
―H
|
無
|
無
|
アラニン
|
A
|
Ala
|
|
|
|
|
|
2.35
|
9.87
|
|
―CH3
|
無
|
無
|
バリン
|
V
|
Val
|
|
|
○
|
○
|
|
2.29
|
9.74
|
|
―CH(CH3)2
|
無
|
無
|
フェニルアラニン
|
F
|
Phe
|
○
|
○
|
○3
|
|
|
2.2
|
9.31
|
|
―○C6H5
|
無
|
無
|
プロリン
|
P
|
Pro
|
|
|
|
|
|
1.95
|
10.64
|
|
αCとNH2の間に ―CH2CH2CH2-
|
無
|
無
|
メチオニン
|
M
|
Met
|
|
|
○2
|
|
|
2.13
|
9.28
|
|
―CH2CH2-S-CH3
|
無
|
無
|
イソロイシン
|
I
|
Ile
|
○
|
○
|
○
|
○
|
|
2.32
|
9.76
|
|
―CH(CH3)CH2CH3
|
無
|
無
|
ロイシン
|
L
|
Leu
|
|
○
|
○
|
○
|
|
2.33
|
9.74
|
|
―CH2CH(CH3)2
|
荷電アミノ酸
|
有
|
酸性
|
アスパラギン酸
|
D
|
Asp
|
|
|
|
|
|
1.99
|
9.9
|
3.9 β-COOH
|
―CH2COOH
|
有
|
酸性
|
グルタミン酸
|
E
|
Glu
|
|
|
|
|
|
2.1
|
9.47
|
4.07 γ-COOH
|
―CH2CH2COOH
|
有
|
塩基性
|
リシン
|
K
|
Lys
|
|
○
|
○
|
|
|
2.16
|
9.06
|
10.54 ε-NH2
|
側鎖のCH2は4つ ―-CH2CH2CH2CH2NH2
|
有
|
塩基性
|
アルギニン
|
R
|
Arg
|
|
|
○1
|
|
|
1.82
|
8.99
|
12.48 グアニジウム基
|
側鎖のCH2は3つ ―CH2CH2CH2-NH-C-(NH2)NH
|
極性アミノ酸
|
有
|
無
|
セリン
|
S
|
Ser
|
|
|
|
|
|
2.19
|
9.21
|
|
―CH2OH
|
有
|
無
|
スレオニン
|
T
|
Thr
|
○
|
○
|
○
|
|
|
2.09
|
9.1
|
|
―CH(CH3)OH
|
有
|
無
|
チロシン
|
Y
|
Tyh
|
○
|
○
|
|
|
|
2.2
|
9.21
|
10.46 フェノール
|
―CH2-φ
|
有
|
塩基性
|
ヒスチジン
|
H
|
His
|
|
|
○
|
|
|
1.8
|
9.33
|
6.04 イミダゾール基
|
―CH2-C3H3N2
|
有
|
無
|
システイン
|
C
|
Cys
|
|
|
|
|
|
1.92
|
10.7
|
8.37 -SH基
|
―CH2-SH
|
有
|
無
|
アスパラギン
|
N
|
Asn
|
|
|
|
|
|
2.14
|
8.72
|
|
―CH2-CO-NH2
|
有
|
無
|
グルタミン
|
Q
|
Gln
|
|
|
|
|
|
2.17
|
9.13
|
|
―CH2-CH2-CO-NH2
|
無
|
無
|
トリプトファン
|
W
|
Trp
|
○
|
○
|
○
|
|
|
2.46
|
9.41
|
|
―Indol ring
|
1 人体で合成できるが、不十分。
|
2 Cysが足らなければ、Metから合成することになる。
|
必須アミノ酸
参考
[★]
- 英
- cirrhosis of liver (M), liver cirrhosis LC, cirrhosis
- 関
- 肝臓
定義
(アトラス肝臓病 金原出版 谷川久一、阿部弘彦 昭和62年1月30日 p.57)
- 1. 肝細胞死が原因で、びまん性の結合組織増生が肝臓全域に見られる
- 2. 肝実質の結節性再生と小葉構造の改築が認められるもの
概念
- 肝硬変はびまん性に線維化した肝病変の終末像であり、慢性肝炎とともにもっともしばしばみられる肝の病態である。臨床的には様々な程度の肝細胞機能不全状態と門脈圧亢進症による症状がみられる慢性疾患である。
疫学
- 人口10万人あたりの死亡率12.5人
- 45-59歳の男性では死亡順位第4位
- 西日本に多い
病因
病理
- 炎症による細胞の破壊と再生を繰り返す結果、再生した肝細胞と新たに形成された線維性の隔壁を有する結節が形成され(再生結節)、肝硬変となる。(BPT.647)
- ウイルス性肝炎の慢性化による肝硬変では、3mm以上の結節がみられる(macronodular cirrhosis)。
- アルコール性肝炎の慢性化による肝硬変では、平均3mmの結節がみられる(micronodular cirrhosis)。
病態生理
- 肝機能低下により(1)エストロゲンの肝臓における異化が低下、(2)アルブミン合成能が低下、(3)門脈圧亢進が起こる。(1)によるエストロゲンなどの血管拡張因子により血管が拡張し循環血漿量が減少する。(2)による膠質浸透圧の低下はサードスペースへの体液移動を引き起こしさらに循環血漿量を低下させる。これには(3)も相加的に作用すると思われる。循環血漿量の低下はRAA系の亢進をきたし、アルドステロンによるNa、水の貯留引き起こす。
- 非代償性肝硬変では、肝網内系(クッパー細胞など)の機能低下、白血球減少による易感染性を呈する。
症状
合併症
- 参考2
身体所見
[show details]
- 腹部:脾腫 ← 門脈圧と脾腫の程度は相関しない (QB.B-315)
検査
血算
-
- 血小板減少が門脈圧亢進の最初の徴候(HIM.1978)
- 白血球減少 ← 門脈圧亢進によるうっ血性の脾腫に伴う脾機能亢進。 骨髄での産生低下も原因らしい(出典不明)
血液生化学
-
- 総ビリルビン T-Bil:上昇
- アンモニア NH3:上昇
- Fischer比:低下
- 線維化マーカー (ヒアルロン酸、IV型コラ-ゲン):上昇
- 膠質反応(TTT,ZTT):上昇
- γグロブリン:上昇 ← 門脈血に含まれる細菌の抗原が肝臓をシャントしてリンパ組織に到達するためとされている(uptodate)
-
-
- 糖の処理障害により食後高血糖を来しやすく、糖尿病を発症しやすい。
- 低ナトリウム血症、血漿浸透圧低下 ← 血液中の水が間質に移動する結果、電解質も共に移動する。血液中には水が過剰となり、低ナトリウム血症、血症浸透圧低下となる。volume depletionに対してADHが主に作用するからか、あるいはH2Oが移動しやすいからなのかは不明。
免疫血清検査
- 多クローン性γグロブリン血症
- IgG:増加する傾向あり。 ← 門脈血が肝臓を通過せずにリンパ組織に流れ込む結果。著しく高値であったら自己免疫性肝炎。(参考1)
- IgM:高値であったら90-95%はPBCである。(参考1)
- 壊死、炎症が持続的に起きているから上がると解釈することもできる、みたい。
画像
- (US,CT, MRI,Angio,肝シンチ、上部消化管内視鏡)
腹腔鏡、肝生検
- 分枝鎖アミノ酸(branched chain amino acids, BCAA)と芳香族アミノ酸(aromatic amino acids; AAA)の分子比(モル比)
-
- 肝臓、末梢(筋肉など)でよく代謝される
- ほぼ肝臓で代謝される
診断
治療
- IMD 参考2 YN.B-47
- 治療のゴールは、(1)肝疾患の進展を遅らせたり治癒させること、(2)他の原因による肝臓障害を予防すること、(3)合併症の予防、(4)肝移植の時期を決定することである。
- 方針:原疾患の治療を行い、肝硬変の進展を抑えるように食事、生活療法を行う、非代償期には合併症の治療を行う。
- (1)肝疾患の進展を遅らせたり治癒させる:原疾患の治療を行う(自己免疫性肝炎であればステロイドや免疫抑制薬、アルコール性肝障害であれば禁酒、ウイルス性肝炎であれば病原体に応じた治療)。
- (2)他の原因による肝臓障害を予防する:肝臓に障害を与えないようにする(アルコール摂取、アセトアミノフェンの過剰服用)。予防接種を受ける(肝予備能がほとんど無ければA型肝炎、B型肝炎。肺炎球菌、インフルエンザウイルスに対する予防接種も考慮される。
- (3)合併症の予防:肝細胞癌、静脈瘤出血、特発性細菌性腹膜炎、肝腎症候群、肝性脳症、肝肺症候群
- (4)肝移植の時期を決定:
代償期
- 食後の安静、適切な熱量(25-30kcal/kg/日)で適切な蛋白質(1.2-1.5g/kg)の食事を摂取、ビタミンB、ビタミンK補充
- 肝庇護薬(ウルソデオキシコール酸、グリチルリチンなど)
非代償期
-
- 食塩制限(5-7g以下)。飲水制限(1L/day)(腹水貯留時)
- 蛋白質の補充:分枝鎖アミノ酸の多い食事、分枝鎖アミノ酸製剤の点滴。NH3が上昇するなど肝性脳症の危険があれば低蛋白食とする。
- 膠質浸透圧の維持:アルブミン製剤
- 早朝低血糖に対し、夜食を勧める(肝機能低下により糖新生↓のはず)。(出典不明)
- 利尿薬:抗アルドステロン薬(スピロノラクトン)、トルバプタン、フロセミド、サイアザイド → 後2者はhypokalemiaからmetabolic alkalosisを惹起、アンモニアのNH4+ ⇔ NH3 + H+の平衡を左に移行させてアンモニアの排泄を阻害、高アンモニア血症を増悪しうる(非イオン化状態では尿細管で再吸収されやすいはず)(出典不明)。
- 腹水濃縮再注入法
- 肝内門脈大循環シャント、腹膜静脈短絡術
- 食道静脈瘤の治療:内視鏡的食道静脈瘤硬化術・結紮術、外科的治療
- 肝性脳症の治療:腹水の食事療法に準じるが、NH3再吸収につながる便秘の予防に気をつける。
- 肝移植
予後
- 死因:(1)肝性脳症、(2)静脈瘤破綻、(3)肝癌合併
- (1),(2)の治療が発達したことにより、(3)での死亡が増加している。
参考
- 1. [charged] Diagnostic approach to the patient with cirrhosis - uptodate [1]
- 2. [charged] Overview of the complications, prognosis, and management of cirrhosis - uptodate [2]
国試
[★]
- 英
- pellagra
- 関
- ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド NAD
- ニコチン酸、ナイアシン、ビタミンB3、ナイアシン欠乏症、ニコチン酸欠乏症
疫学
- 男女比=2:1。これはエストロゲンの代謝産物によってトリプトファンの代謝(つまりナイアシンの生合成?)が阻害される事による。 (HBC.498)
病因
-
- 飢餓状態にあっては、ナイアシン欠乏のみならず、トリプトファンからナイアシンを合成するための補酵素(鉄、リボフラビン、ビリドキシン)の欠乏によっても生ずる
- Hartnup diseaseでは細胞膜上のトリプトファン輸送機構が障害されており、小腸からの吸収、腎尿細管での再吸収が障害されるるため(HBC.498)
pellagra 3D
- 皮膚炎 dermatitis
- 下痢 diarrhea
- 痴呆 dementia
- (死 death)
症状
- 皮膚・粘膜症状:皮膚炎(色素沈着/脱出を残す)、舌炎、口角炎、口内炎
- 神経症状:知覚障害、運動失調
- 消化器症状:
- 精神症状:健忘症、認知症
HIM.443
疫学
- HIM.443
- トウモロコシを主食とした人々に多い:中国、アフリカ、インド。
- 北米では、アルコール中毒、先天的に小腸と腎臓でニコチン酸の吸収が低下しているヒト(Hartnup disease)、カルチノイド症候群(トリプトファンがセロトニンに変換されて消費される)
[★]
- 英
- serotonin syndrome
- 関
- セロトニン、セロトニン受容体
概念
- 抗うつ薬(特に SSRI と呼ばれる選択的セロトニン再取り込み阻害薬。≒セロトニン受容体作動薬)などのセロトニン系の薬物を服用中に出現する副作用
- 精神症状(不安、混乱する、いらいらする、興奮する、動き回るなど)
- 錐体外路症状(手足が勝手に動く、震える、体が固くなるなど)
- 自律神経症状(汗をかく、発熱、下痢、脈が速くなるなど)
- 服薬開始数時間以内に症状が表れることが多い
- 服薬を中止すれば24時間以内に症状は消失
- 「不安」、「混乱する」、「いらいらする」に加えて以下の症状がみられる場合に医療機関受診を推奨している(参考1)
- 「興奮する」、「動き回る」、「手足が勝手に動く」、「眼が勝手に動く」、「震える」、「体が固くなる」、「汗をかく」、「発熱」、「下痢」、「脈が速くなる」
原因となりうる薬剤
トリプトファン、アンフェタミン、コカイン、MDMA、LSD、レボドパ、カルビドパ、トラマドール、ペンタゾシン、メペリジン、SSRI、SNRI、TCA、MAO阻害薬、リネゾリド、5-HT3阻害薬(オンダンセトロン、グラニセトロン)、メトクロプラミド(プリンペラン)、バルプロ酸、カルバマゼピン、シブトラミン(やせ薬)、シクロベンザプリン(中枢性筋弛緩)デキストロメルファン、(メジコン)、ブスピロン(5-HT1A阻害薬、抗不安薬)、トリプタン製剤、エルゴタミン、フェンタニル、リチウム
診断基準
- QJM. 2003 Sep;96(9):635-42
Hunter criteria
感度84%, 特異度97%
参考
- http://www.pmda.go.jp/files/000144659.pdf
[★]
- 英
- serotonin, 5-HT, 5-hydroxytryptamine
- 関
- 神経伝達物質、セロトニン受容体、セロトニン作動性ニューロン、5-ヒドロキシインドール酢酸 5-HIAA
生合成
トリプトファン → 5-ヒドロキシトリプトファン
トリプトファン5-モノオキシゲナーゼ
OH
/\ /\/
-OOC-CH(NH3+)-CH2----|○| → -OOC-CH(NH3+)-CH2----| ○|
|| | | || | |
\ / \/ \ / \/
NH NH
+ +
テトラヒドロビオプテリン ジヒドロビオプテリン
+
O2
5-ヒドロキシトリプトファン → セロトニン
芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ
OH
/\ /\/
-OOC-CH(NH3+)-CH2----|○ | → H2N-CH2-CH2----| ○|
|| | | || | |
\ / \/ \ /\/
NH NH
薬理学
セロトニン再取り込み阻害薬
セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬
[★]
- 英
- tryptophan hydroxylase、TPH
- 関
- トリプトファンヒドロキシラーゼ
[★]
- 英
- tryptophan-tRNA ligase
- 関
- トリプトファニルtRNA合成酵素
[★]
- 英
- tryptophan oxygenase
- 関
- トリプトファン酸化酵素
[★]
- 英
- tryptophan residue、Trp residue
- 関
- Trp残基
[★]
99mTc-N-ピリドキシル-5-メチルトリプトファン
[★]
- 英
- bird、avian
- 関
- 鳥類
[★]
- 英
- fan
- 関
- 送風機