- 英
- hyponatremia
- 同
- 低Na血症
- 関
- ナトリウム、高ナトリウム血症、電解質異常
定義
- 血清ナトリウムが134mEq/L以下の病態。(正常の下限は135mEq/Lとされる)
- 水とナトリウムのバランスという観点で、2つに分けられる
疫学
分類
-
病型
ICU.525
- 利尿・副腎不全: 尿中Na > 20mEq
- 嘔吐・下痢 : 尿中Na < 20mEq
- 等容量性低ナトリウム血症:細胞外液は増加していないが、水の方が多くなった状態。臨床的に浮腫が無い。下表で[1]に相当
- 循環血増加性低ナトリウム血症:細胞外液にナトリウムと水が増加しており、なおかつ水の方が多い病態:下表で[3]に相当
- 腎不全 : 尿中Na > 20mEq
- 心不全・肝不全: 尿中Na < 20mEq
IMD
- [1] 細胞外液量増加:組織間質に非常に多量の水と多量のナトリウムが移動。移動する原因は血液のうっ滞、膠質浸透圧の低下など
-
- うっ血性心不全や腹水を伴う肝硬変では、圧受容器が循環血液量の減少を検出してバソプレシンを分泌する(cases.200)
- 消化管からの喪失(下痢、嘔吐、腸閉塞など)、熱傷、利尿薬の過剰投与、腎疾患、副腎不全など。
- [3] 細胞外液量正常:ナトリウムの摂取・排泄は変わらないが、水が異常に蓄積されるため? ← 最も多いらしい
- 内分泌疾患(副腎不全、抗利尿ホルモン(ADH)不適合分泌症候群(SIADH)、甲状腺機能低下症)、薬物、水中毒(心因性多飲)など。
- 高浸透圧性:高血糖、マンニトール投与など。
- 正浸透圧性:脂質異常症(高脂血症)、高蛋白血症など。
水とナトリウムのバランスによる分類
低ナトリウム血症+血漿浸透圧上昇
- QB.D-333
- 高脂血症 → (炎光光度法で測定する場合)過剰の脂質によって血漿の非液相成分が増加し血漿浸透圧が上昇するが、液相成分が減少しているため見かけ上低ナトリウム血症となる (ICU.523) → 偽性低ナトリウム血症
- 高血糖 ← 高血糖だけで低血糖になる?
- 尿毒症 → 浸透圧較差の増大による。ある種の毒性物質(エタノール、メタノール、エチレングリコール、腎不全によって蓄積した同定できない毒素)が細胞外液にあるときに増加する(ICU.517)(つまり、毒性物質が浸透圧を生み出す物質として作用するということ)。ちなみに、急性腎不全では正常であり、慢性腎不全で浸透圧較差は上昇する。
病態生理
- 体液電解質異常と輸液 改訂第3版 p.51
低ナトリウム血症のメカニズム
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障害の原因
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障害の例
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effective osmole(Na, K)の欠乏
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長期間のの下痢・嘔吐・絶食
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浸透圧利尿
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水分過剰
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口渇感の異常 (多飲)
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尿自由水排泄能力を超えた量の飲水
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心因性多飲
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マラソン中の多量飲水
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尿希釈能の低下 (水排泄障害)
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尿細管での 自由水生成障害
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有効循環血漿量低下 (心不全、肝不全、脱水)
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極度の低栄養・偏食
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腎障害
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不適切な抗利尿ホルモン作用
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SIADH
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有効循環血漿量低下
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甲状腺機能低下
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糖質コルチコイド欠乏
|
症状
- 急性:症状が出現しやすい。意識障害を呈する
- 慢性:無症候。125mEq/L以下にならなければ顕性化しない事が多い。臨床的に問題となるのは非常に低いレベル(120mEq/L)。
- 全身 :無力感、全身倦怠感
- 消化器:食欲不振、悪心・嘔吐
- 神経 :意識障害(傾眠、昏睡)
- 筋 :痙攣、腱反射低下、筋力低下
重症度別(YN.D137)
- 軽症:120mEq/L以上:無気力、疲労感、軽度の食思不振、頭痛
- 重症:120mEq/L以下:悪心・嘔吐、強い食思不振や頭痛、精神症状や間代性痙攣、意識障害
検査
- 血清Na・K 測定、腎機能検査、ADH、コルチゾール、アルドステロン、甲状腺ホルモンの測定、血液ガス分析など(IMD)
- 尿の浸透圧、尿Na濃度
治療
YN.D-137改変
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脱水
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水
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Na
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体液
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病態生理
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尿中Na
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尿浸透圧
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ADH
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治療
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原疾患
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[1]
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なし
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hyponatremia with hypervolemia
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大過剰
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過剰
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細胞外液量増加
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(>20mEq/L)
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分泌される
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・ループ利尿薬+水,Na制限 ・(不十分)サイアザイド追加 ・低Kや体腔液貯留が強い場合スピロノラクトン追加
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末期腎不全
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(<20mEq/L)
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うっ血性心不全、肝硬変
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[2]
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あり
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hyponatremia with hypovolemia
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ナトリウム喪失型 ナトリウム欠乏性低ナトリウム血症
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-
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過少
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細胞外液量減少
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Na OUT →○⇒
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↑ 80mEq/L (>20mEq/L)
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・Naの補給+等張液輸液(生食,乳酸リンゲル) ・Na排泄率をモニターしIN>OUTを確認
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腎性:利尿薬の過剰投与、Addison病、尿細管傷害
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↓ 20mEq/L (<20mEq/L)
|
腎外性:消化管からの喪失(下痢、嘔吐、腸閉塞)、熱傷、
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Na IN →○→
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↓ 20mEq/L
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経口摂取不能
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[3]
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なし
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hyponatremia with normovolemia
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水過剰型 希釈性低ナトリウム血症
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過剰
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-
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細胞外液量正常
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水 OUT →○→
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→ 40mEq/L
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ADH excess >320 mOsm/kg (>100mOsm/L)
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分泌抑制不可能
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・水制限 ・ループ利尿薬+生理食塩水
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SIADHなど
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水IN ⇒○→
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↓ 20mEq/L
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<100 mOsm/kg (<100mOsm/L)
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分泌抑制を上回るwater intake
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低張輸液過多、水中毒(心因性多飲)
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[4]
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偽性低Na血症
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高浸透圧性
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高血糖、マンニトール投与
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正浸透圧性
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脂質異常症(高脂血症)、高蛋白血症
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対症療法
- 脱水:等張の生理食塩水
- SIADH:飲水制限
- 水とナトリウムの過剰:水とナトリウムの摂取制限、利尿薬
- 研修医当直御法度 症例帳 p.28
- 低ナトリウム血症だからといって生理食塩水を輸液すればいいわけではない。
- [1] ナトリウム過剰(それ以上に水貯留):(症状)浮腫、腹水などによる著明体重増加。(基礎疾患)心不全、ネフローゼ症候群、肝硬変
- ・・・ 生理食塩水輸液××
- ・・・ 生理食塩水輸液ok
- [3] ナトリウム正常(水が過剰):水中毒、SIADH
- ・・・ 生理食塩水輸液××
合併症
- 急速な低ナトリウム血症の補正により生じうる。
- 中枢神経に細胞内脱水をきたし、橋部を中心に脱髄病変を示す。
- 症状:神経障害、意識障害、痙攣、四肢麻痺など
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2013/05/28 17:10:15」(JST)
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低ナトリウム血症 |
分類及び外部参照情報 |
ナトリウム
|
ICD-10 |
E87.1 |
ICD-9 |
276.1 |
DiseasesDB |
6483 |
eMedicine |
emerg/275 med/1130 ped/1124 |
MeSH |
D007010 |
プロジェクト:病気/Portal:医学と医療 |
テンプレートを表示 |
低ナトリウム血症(ていナトリウムけっしょう、英:Hyponatremia)とは血中ナトリウム濃度が135mEq/l以下になることをいう。血清Naの基準値は135~145mEq/lであり、尿中Na量は4~8g/日である。Naの摂取経路は経口および輸液であり、排出はレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系による調節と心房性ナトリウム利尿ペプチド (ANP) によって決定されている。
目次
- 1 ナトリウムの動態学
- 2 調節機構破綻による低ナトリウム血症
- 3 分類
- 4 治療
- 5 診断
- 6 症状
- 7 関連項目
- 8 参考文献
|
ナトリウムの動態学 [編集]
体液の調節機構はCV系とVQ系とVV系という3つを想定するとわかりやすい。重要なことは体内ナトリウム量が細胞外液量を規定し、血清ナトリウム濃度が血漿浸透圧を規定するということである。
- CV系
血清ナトリウム濃度Cをとらえて体液量Vを調節する系である。Cを感知するセンサーは視床下部にある浸透圧受容体細胞である。脳細胞は一般的に血液脳関門(BBB)によって守られており、体液の変化を直接感知することはあまりないのだが、この部分はBBBの発達が悪く、血漿浸透圧を感知できると考えられている。血漿浸透圧が285~290mOsm/kgH2Oから2% 程上昇すると浸透圧受容体細胞が感知し、口渇中枢を刺激し、飲水を促し、また抗利尿ホルモンであるADHの分泌を促進する。ADHのわずかな上昇で、尿の濃縮は最大に達してしまうのが特徴である。逆に2%ほど血漿浸透圧が低下すると、ADHの作用はほぼ抑制されてしまう。ADHは集合管における水の再吸収にかかわっており、ADHが分泌されればナトリウムと独立に水の再吸収がおこり、濃縮尿が排出される。ADHの作用が抑制されれば、Na依存性の再吸収しか起こらない。GFRが100ml/minほどあればADHが抑制されれば20ml/minの自由水が排出できることが知られている。即ち、明らかな腎障害がなければ、人は1時間に1200mlの水を24時間摂取し続けてもADHの作用を抑制するだけでその水分を排出することができ、低ナトリウム血症には至らない。
- VQ系
体液量Vをとらえて、溶質量Qを調節する系である。具体的にはレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系のことである。
- VV系
これは体液量Vをとらえて体液量Vを調節する系であり、HANPやBNPが相当する。また、左房圧の低下はADHの分泌を亢進させ、水分の再吸収を亢進させることも知られている。左房圧低下でのADHの分泌はあまり鋭敏ではないが極めて強力である。
調節機構破綻による低ナトリウム血症 [編集]
上述のCV系の働きにより通常ならば低ナトリウム血症は滅多な事では起こりえない。それが起こるにはそれなりの理由が必要である。血漿浸透圧が低下するのも関わらず、自由水が排出できない、即ち尿が低浸透圧にならない病態があるのである。そのようになるものは2つほど知られている。ひとつは自由水を作っているヘンレの上行脚に十分量の尿量が到達しない、もうひとつは血漿浸透圧が低下しているにも関わらずADHがの分泌が亢進しており集合管で水の再吸収が起こっている場合である。
- ヘンレの上行脚に十分な尿量が到達しない場合
真っ先に考えられることは急性腎不全や慢性腎不全で糸球体濾過量(GFR)が低下し、乏尿となっているのに水負荷をしたときである。またGFRが低下していなくとも有効動脈血流量が低下した病態では近位尿細管での尿再吸収が亢進した結果ヘンレの上行脚に十分量の尿量が到達しなくなる。こういった病態は心不全、肝不全、ネフローゼ症候群で知られている。
- 血漿浸透圧と関係なくADHが分泌されている病態
まっさきに考えられるのはVV系による修飾、即ち有効循環血漿量が低下しているときである。それ以外に薬剤、ストレス(疼痛)、糖質コルチコイドの欠乏などがあげられる。またSIADHという病態も重要である。ADHが作用しすぎた場合は低ナトリウム血症の症状が出るのにも関わらず、ADHが作用しない尿崩症では高ナトリウム血症で発症することは少ない。これは尿崩症の場合は多飲で代償するからであると考えられている。多飲出来ない環境ならば高ナトリウム血症となりえる病態である。
分類 [編集]
臨床上は以下の4つのタイプが観測されている。
- 細胞外液不足(欠乏性低ナトリウム血症)
- 水欠乏を上回るナトリウム欠乏が起こっている病態である。腎性体液喪失として尿細管障害やアジソン病、利尿薬の投与などでおこる。腎外性体液喪失としては嘔吐、下痢、経管ドレナージなど消化管からの喪失や、熱傷、膵炎、腹膜炎といったサードスペースへの喪失などがあげられる。発汗などで水分塩分を大量に失い、塩分を補給せず水分のみ大量に補給することでも陥りやすい。細胞外液不足のため腎臓への血流が極度に低下し、腎前性腎不全となる。
- 水過剰(正常循環血液量性低ナトリウム血症)
- このカテゴリーで最も多いの高齢者の癌患者などでおこるSIADH、その他甲状腺機能低下症、ACTH単独欠損症、多飲症、reset osmostatなどがあげられる。尿中ナトリウム濃度が20mEqを超えているのが特徴である。
- 細胞外液過剰(希釈性低ナトリウム血症)
- ナトリウム過剰を上回る水過剰がある場合である。多くは浮腫を伴っている。腎不全やその他の浮腫性病変として、うっ血性心不全、肝硬変、ネフローゼ症候群などがあげられる。入院患者でよく見られる。
- 偽性
- 脂肪などの増加による見かけ上の水過剰。高脂血症や高血糖で起こることがある。
これらを鑑別するには身体診察やバイタルサインによることが多い。細胞外液量が低下しているときは皮膚、粘膜の乾燥、脈拍増加、血圧低下(特に起立性低血圧)などで判断する。逆に浮腫があれば細胞外液は増加していると考える。こういった所見がなく、明らかな病歴がなければ細胞外液量は正常とみなして考えていくのが一般的である。そして尿中のナトリウム濃度を調べる。細胞外液や有効循環血漿量や血圧が低下した時は、細胞外液を維持するため腎臓はナトリウムを再吸収しようとするので腎臓が適切に働いていれば、尿中ナトリウム濃度は10mEq位と低値になっているはずである。
治療 [編集]
- ナトリウム欠乏の場合は塩化ナトリウムを補充する。48時間以内に25mEq/l以上のナトリウム補正をすると橋中心髄鞘崩壊症 (CPM) を起すことがある。
- 水分過剰(例:水中毒)の場合は水分制限を行う。特にSIADHの場合は重要である。
- 細胞外液過剰の場合は、厳重な水制限、水排出促進、ナトリウム摂取制限やナトリウム排出促進が必要である。水制限でうまくいかないとき、例えば、痰が絡んで水を制限すると呼吸不全になりそうなときは、レダマイシン、炭酸リチウムなどを用いて尿崩症を起してみたり、副腎皮質ホルモンを用いるという裏業も存在する。しかしそれはどこまでの治療を要求するのかという社会的な問題もある。
診断 [編集]
治療法がわかってこそ、診断には意味がある。まずは血漿浸透圧、尿浸透圧を測定する。次に病歴から急性か慢性かを診断する。急性であったら治療に緊急性が生じてくる。次に原因の詮索をする。
- 原因として考えられるもの。
- 下痢、嘔吐、大量の発汗などの体液喪失
- バソプレッシン(ADH)分泌量を調べる。
- 薬物、ピンクリスチン、カルバマゼピン、シクロホスファミド、NSAIDsはADHの分泌、作用に影響を与える。
- 利尿薬服薬歴、甲状腺機能低下症、副腎不全、SIADHなどを考える。
症状 [編集]
以下のような表が有名である。
血清ナトリウム濃度 |
症状 |
130mEq/l以上 |
一般的には無症状 |
120~130mEq/l |
軽度の虚脱感や疲労感が出現 |
110~120mEq/l |
精神錯乱、頭痛、悪心、食思不振 |
110mEq/l以下 |
痙攣、昏睡 |
しかし、臨床的には実際の濃度より進行速度とよく相関することが知られている。とはいえ急変時の重症度をみるには濃度が進行速度と比例するため有効である。
関連項目 [編集]
参考文献 [編集]
- 黒川清 『水・電解質と酸塩基平衡―Step by stepで考える (Short seminars)』 南江堂、2004年9月、改訂第2版。ISBN 9784524224227。
UpToDate Contents
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Japanese Journal
- 胃腸炎関連痙攀症例の臨床的検討 ~低ナトリウム血症傾向とカルバマゼピン単回投与の効果について~
- 中陳 瑠美,須藤 章,佐野 仁美,半田 つばさ,谷口 宏太,小関 直子,藤原 伸一,川村 信明
- 2011-03-31
- … また、入院時の血液検査では代謝性アシドーシス(HC0 3-= 18.3±3.1mEq/L) と低ナトリウム血症 (133 ±2.6mEq/L) 、高尿酸血症 (8.7 ±1.6mg/dL)の傾向が確認された。 …
- NAID 120003145490
- バイポーラーシステムを利用した経尿道的前立腺核出術 : (Transurethral enucleation with bipolar:TUEB)の臨床的検討
- 奥木 宏延,牧野 武朗,加藤 春雄,大山 裕亮,岡崎 浩,中村 敏之
- 日本泌尿器科學會雜誌 102(1), 2-8, 2011-01-20
- … 腺重量は53.2g(11.8?105.6g),平均手術時間は125.5分(76分?212分),平均核出時間は96.1分(56?169分),平均核出重量は32.3g(6?82g),平均尿道カテーテル留置期間は2.5日(2?7日)であった.周術期合併症として輸血症例や低ナトリウム血症例は認めなかった.1分間あたりの平均核出重量は症例を重ねるにつれ有意に増加していた(P<0.001).手術前と比較してIPSS,QOL index,OABSS,PVRは術後1カ月で有意に改善し,その後12カ月まで持続していた.Qmaxは術 …
- NAID 110008440741
- 本当は子どもに"使えない"薬の話--実際と,これをどう打開するか(7)頭部外傷の子どもの治療
- 電解質異常(高カルシウム血症,低ナトリウム血症) (特集 進行・再発婦人科がんの治療と管理)
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★リンクテーブル★
[★]
- 32歳の男性。頸部と鼠径部との腫瘤を主訴に来院した。1か月前に歩行中、右鼠径部の違和感を覚え腫瘤に気付いたが痛みはなかった。その後、髭を剃っている時に偶然右頸部の腫れに気付いた。喫煙30本/日を12年間。体温37.6℃。脈拍76/分、整。血圧122/76mmHg。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。体表リンパ節は表面平滑、弾性硬で、右頸部に径2cmを3個、右鎖骨上窩に径3cmを1個、左頸部に径1.5cmを2個、右腋窩に径1.5cmを2個、右鼠径部に径2.5cmを1個触知する。心音と呼吸音とに異常を認めない。左肋骨弓下に脾を3cm触知し、臍下正中部に径5cmの腫瘤を触知する。血液所見:赤血球460万、Hb14.2g/dl、Ht42%、白血球6,700、血小板18万。血清生化学所見:総蛋白6.3g/dl。アルブミン4.2g/dl、尿素窒素20mg/dl、クレアチニン1.3mg/dl。総コレステロール156mg/dl、総ビリルビン1.0mg/dl、AST42IU/l、ALT30IU/l、LDH875IU/l(基準176~353)。免疫学所見:CRP4.2mg/dl、可溶性IL-2受容体2,300U/ml(基準550以下)。右頸部リンパ節生検H-E染色標本を以下に示す。
- 治療開始後に注意すべきことはどれか。2つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [101A033]←[国試_101]→[101A035]
[★]
- 72歳の男性。悪心と意識障害とのために家族に伴われて来院した。6か月前に肺扁平上皮癌と診断され、化学療法を受けた。終了後、外来で観察されていた。2日前から尿量が多くなり、食欲不振と口渇とが出現した。昨日から悪心を伴うようになり、いつも眠っているようになった。意識はやや混濁し、呼びかけに対して容易に反応するが、時と場所に対する失見当識が認められる。脈拍104/分、整。血圧100/64mmHg。ばち指を認める。右下肺にcoarse cracklesを聴取する。心電図でQT時間の短縮を認める。
[正答]
※国試ナビ4※ [098A037]←[国試_098]→[098A039]
[★]
- 30歳の女性。慢性腎不全に対して腎移植を行うことになり、移植前日から免疫抑制薬シクロスポリンが開始された。投与を継続していたところ、移植2日後に心電図でP波が消失し、QRS幅が0.14秒となった。
- 意識は清明。体温37.2℃。脈拍48/分、整。血圧120/80mmHg。血液所見:赤血球312万、Hb9.2g/dl、Ht30%、白血球8,800、血小板15万。血清生化学所見:総蛋白6.5g/dl、アルブミン4.0g/dl、尿素窒素80mg/dl、クレアチニン7.5mg/dl、AST28単位(基準40以下)、ALT26単位(基準35以下)、CK35単位(基準10~40)。
- 可能性の高い電解質異常はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [098I022]←[国試_098]→[098I024]
[★]
- 4歳の男児。1週前からの発熱と関節痛とを主訴に来院した。意識は清明。皮下に出血斑を認める。眼瞼結膜は軽度貧血様。腹部はやや膨隆している。肝は右肋骨弓下に4cm触知し、脾は左肋骨弓下に3cm触知する。血液所見:赤血球380万、Hb8.2g/dl、白血球320,000、血小板2万。骨髄塗抹染色標本で小型リンパ芽球様細胞を97%認める。抗腫瘍薬による寛解導入療法開始時に生じやすいのはどれか。2つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [100A034]←[国試_100]→[100A036]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [107D008]←[国試_107]→[107D010]
[★]
- 代謝異常を伴わない患者の長期完全静脈栄養で誤っている組合せはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [097G105]←[国試_097]→[097G107]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [100G102]←[国試_100]→[100G104]
[★]
- 先天性副腎皮質過形成 ( 21α-hydroxylase欠損症:塩喪失型 )の検査所見として考えられるのはどれか。2つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [108D016]←[国試_108]→[108D018]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [103G005]←[国試_103]→[103G007]
[★]
- a. (1)(2)
- b. (1)(5)
- c. (2)(3)
- d. (3)(4)
- e. (4)(5)
[正答]
※国試ナビ4※ [098H059]←[国試_098]→[098H061]
[★]
- 数日間で進行する高齢者の意識障害の原因として可能性が低いのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [113F021]←[国試_113]→[113F023]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [105E022]←[国試_105]→[105E024]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [113A012]←[国試_113]→[113A014]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [111E012]←[国試_111]→[111E014]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [107B035]←[国試_107]→[107B037]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [108G024]←[国試_108]→[108G026]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [100G092]←[国試_100]→[100G094]
[★]
- (1) 術中用いる灌流液は生理食塩液が適している。
- (2) 術中合併症として外科的皮膜の穿孔がある
- (3) 術中合併症として低ナトリウム血症がある。
- (4) 晩期合併症として尿道狭窄がある
- (5) 切除組織では病理診断はできない。
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [096H003]←[国試_096]→[096H005]
[★]
[★]
- 英
- cirrhosis of liver (M), liver cirrhosis LC, cirrhosis
- 関
- 肝臓
定義
(アトラス肝臓病 金原出版 谷川久一、阿部弘彦 昭和62年1月30日 p.57)
- 1. 肝細胞死が原因で、びまん性の結合組織増生が肝臓全域に見られる
- 2. 肝実質の結節性再生と小葉構造の改築が認められるもの
概念
- 肝硬変はびまん性に線維化した肝病変の終末像であり、慢性肝炎とともにもっともしばしばみられる肝の病態である。臨床的には様々な程度の肝細胞機能不全状態と門脈圧亢進症による症状がみられる慢性疾患である。
疫学
- 人口10万人あたりの死亡率12.5人
- 45-59歳の男性では死亡順位第4位
- 西日本に多い
病因
病理
- 炎症による細胞の破壊と再生を繰り返す結果、再生した肝細胞と新たに形成された線維性の隔壁を有する結節が形成され(再生結節)、肝硬変となる。(BPT.647)
- ウイルス性肝炎の慢性化による肝硬変では、3mm以上の結節がみられる(macronodular cirrhosis)。
- アルコール性肝炎の慢性化による肝硬変では、平均3mmの結節がみられる(micronodular cirrhosis)。
病態生理
- 肝機能低下により(1)エストロゲンの肝臓における異化が低下、(2)アルブミン合成能が低下、(3)門脈圧亢進が起こる。(1)によるエストロゲンなどの血管拡張因子により血管が拡張し循環血漿量が減少する。(2)による膠質浸透圧の低下はサードスペースへの体液移動を引き起こしさらに循環血漿量を低下させる。これには(3)も相加的に作用すると思われる。循環血漿量の低下はRAA系の亢進をきたし、アルドステロンによるNa、水の貯留引き起こす。
- 非代償性肝硬変では、肝網内系(クッパー細胞など)の機能低下、白血球減少による易感染性を呈する。
症状
合併症
- 参考2
身体所見
[show details]
- 腹部:脾腫 ← 門脈圧と脾腫の程度は相関しない (QB.B-315)
検査
血算
-
- 血小板減少が門脈圧亢進の最初の徴候(HIM.1978)
- 白血球減少 ← 門脈圧亢進によるうっ血性の脾腫に伴う脾機能亢進。 骨髄での産生低下も原因らしい(出典不明)
血液生化学
-
- 総ビリルビン T-Bil:上昇
- アンモニア NH3:上昇
- Fischer比:低下
- 線維化マーカー (ヒアルロン酸、IV型コラ-ゲン):上昇
- 膠質反応(TTT,ZTT):上昇
- γグロブリン:上昇 ← 門脈血に含まれる細菌の抗原が肝臓をシャントしてリンパ組織に到達するためとされている(uptodate)
-
-
- 糖の処理障害により食後高血糖を来しやすく、糖尿病を発症しやすい。
- 低ナトリウム血症、血漿浸透圧低下 ← 血液中の水が間質に移動する結果、電解質も共に移動する。血液中には水が過剰となり、低ナトリウム血症、血症浸透圧低下となる。volume depletionに対してADHが主に作用するからか、あるいはH2Oが移動しやすいからなのかは不明。
免疫血清検査
- 多クローン性γグロブリン血症
- IgG:増加する傾向あり。 ← 門脈血が肝臓を通過せずにリンパ組織に流れ込む結果。著しく高値であったら自己免疫性肝炎。(参考1)
- IgM:高値であったら90-95%はPBCである。(参考1)
- 壊死、炎症が持続的に起きているから上がると解釈することもできる、みたい。
画像
- (US,CT, MRI,Angio,肝シンチ、上部消化管内視鏡)
腹腔鏡、肝生検
- 分枝鎖アミノ酸(branched chain amino acids, BCAA)と芳香族アミノ酸(aromatic amino acids; AAA)の分子比(モル比)
-
- 肝臓、末梢(筋肉など)でよく代謝される
- ほぼ肝臓で代謝される
診断
治療
- IMD 参考2 YN.B-47
- 治療のゴールは、(1)肝疾患の進展を遅らせたり治癒させること、(2)他の原因による肝臓障害を予防すること、(3)合併症の予防、(4)肝移植の時期を決定することである。
- 方針:原疾患の治療を行い、肝硬変の進展を抑えるように食事、生活療法を行う、非代償期には合併症の治療を行う。
- (1)肝疾患の進展を遅らせたり治癒させる:原疾患の治療を行う(自己免疫性肝炎であればステロイドや免疫抑制薬、アルコール性肝障害であれば禁酒、ウイルス性肝炎であれば病原体に応じた治療)。
- (2)他の原因による肝臓障害を予防する:肝臓に障害を与えないようにする(アルコール摂取、アセトアミノフェンの過剰服用)。予防接種を受ける(肝予備能がほとんど無ければA型肝炎、B型肝炎。肺炎球菌、インフルエンザウイルスに対する予防接種も考慮される。
- (3)合併症の予防:肝細胞癌、静脈瘤出血、特発性細菌性腹膜炎、肝腎症候群、肝性脳症、肝肺症候群
- (4)肝移植の時期を決定:
代償期
- 食後の安静、適切な熱量(25-30kcal/kg/日)で適切な蛋白質(1.2-1.5g/kg)の食事を摂取、ビタミンB、ビタミンK補充
- 肝庇護薬(ウルソデオキシコール酸、グリチルリチンなど)
非代償期
-
- 食塩制限(5-7g以下)。飲水制限(1L/day)(腹水貯留時)
- 蛋白質の補充:分枝鎖アミノ酸の多い食事、分枝鎖アミノ酸製剤の点滴。NH3が上昇するなど肝性脳症の危険があれば低蛋白食とする。
- 膠質浸透圧の維持:アルブミン製剤
- 早朝低血糖に対し、夜食を勧める(肝機能低下により糖新生↓のはず)。(出典不明)
- 利尿薬:抗アルドステロン薬(スピロノラクトン)、トルバプタン、フロセミド、サイアザイド → 後2者はhypokalemiaからmetabolic alkalosisを惹起、アンモニアのNH4+ ⇔ NH3 + H+の平衡を左に移行させてアンモニアの排泄を阻害、高アンモニア血症を増悪しうる(非イオン化状態では尿細管で再吸収されやすいはず)(出典不明)。
- 腹水濃縮再注入法
- 肝内門脈大循環シャント、腹膜静脈短絡術
- 食道静脈瘤の治療:内視鏡的食道静脈瘤硬化術・結紮術、外科的治療
- 肝性脳症の治療:腹水の食事療法に準じるが、NH3再吸収につながる便秘の予防に気をつける。
- 肝移植
予後
- 死因:(1)肝性脳症、(2)静脈瘤破綻、(3)肝癌合併
- (1),(2)の治療が発達したことにより、(3)での死亡が増加している。
参考
- 1. [charged] Diagnostic approach to the patient with cirrhosis - uptodate [1]
- 2. [charged] Overview of the complications, prognosis, and management of cirrhosis - uptodate [2]
国試
[★]
- 英
- Bartter syndrome, Bartter's syndrome
- 同
- Bartter症候群
- 関
- ギテルマン症候群 Gitelman症候群
概念
- 常染色体劣性遺伝 AR
- RAA系の亢進 にもかかわらず 正常血圧、浮腫の欠如
- 低カリウム血症、代謝性アルカローシス
- 傍糸球体細胞の過形成
- 多飲、多尿 ← アルドステロンのエスケープ現象(尿濃縮脳の障害)。これにより血圧上昇がキャンセル?
- ヘンレループ太い上行脚にあるループ利尿薬の標的輸送体の機能異常 → 常にフロセミドが効いた状態と考えてみる。
病因
- 1つは、NKCC2をコードしているSLC12A1の遺伝子異常
原因遺伝子
|
Location
|
Phenotype
|
Phenotype
|
Gene/Locus
|
Gene/Locus
|
MIM number
|
|
|
MIM number
|
|
1
|
15q21.1
|
[[3]]
|
Bartter syndrome, type 1
|
601678
|
[[4]]
|
SLC12A1
|
600839
|
[[5]]
|
2
|
11q24.3
|
[[6]]
|
Bartter syndrome, type 2
|
241200
|
[[7]]
|
KCNJ1
|
600359
|
[[8]]
|
3
|
1p36.13
|
[[9]]
|
Bartter syndrome, type 3
|
607364
|
[[10]]
|
CLCNKB
|
602023
|
[[11]]
|
4A
|
1p36.13
|
[[12]]
|
Bartter syndrome, type 4, digenic
|
602522
|
[[13]]
|
CLCNKB
|
1p32.3
|
[[14]]
|
Bartter syndrome, type 4a
|
BSND
|
606412
|
[[15]]
|
Sensorineural deafness with mild renal dysfunction
|
4B
|
1p36.13
|
[[16]]
|
Bartter syndrome, type 4b, digenic
|
613090
|
[[17]]
|
CLCNKA
|
602024
|
[[18]]
|
病態
- uptodate.1
- 尿希釈能低下:ヘンレループ上行脚と遠位曲尿細管の療法は尿希釈に重要な部位であり(ADHの作用がない条件下で、水の移動なしにNaClを再吸収できるので)、本疾患では尿希釈能の低下をきたす。
- 尿濃縮能低下:尿濃縮にはループヘンレの正常な働きととADHが必要 → 本疾患では尿濃縮能の低下をきたす ⇔ ギテルマン症候群ではnot substantially impaired
症候および検査異常
- uptodate.1
- しかし、出典不明の情報では、RAA系の亢進による血圧上昇がプロスタグランジンE2による血圧低下で相殺され、血圧正常とあるが、、、どうなの?出典はYNらしい。
- 発育遅滞、精神発達遅滞 ← 幼小児で発見されるきっかけ?
- 低カリウム血症
- 代謝性アルカローシス
- 多尿、多飲 ← 尿濃縮能低下
- 尿中カルシウム:正常~増加
- 血清マグネシウム:正常~軽度低下
- (時に)低リン酸血症 ← 二次性副甲状腺亢進症による
鑑別診断
- IMD.1003
バーター症候群とギテルマン症候群
- 出典不明
参考
uptodate
- 1. [charged] バーター症候群およびギテルマン症候群 - uptodate [19]
- 2. [charged] 原因不明の代謝性アルカローシスおよび低カリウム血症:嘔吐;利尿薬;ギテルマンまたはバーター症候群 - uptodate [20]
OMIM
- 1. BARTTER SYNDROME, ANTENATAL, TYPE 1
- http://omim.org/entry/601678
- 2. BARTTER SYNDROME, ANTENATAL, TYPE 2
- http://omim.org/entry/241200
- 3. BARTTER SYNDROME, TYPE 3
- http://omim.org/entry/607364
- 4. BARTTER SYNDROME, TYPE 4A
- http://omim.org/entry/602522
- 5. BARTTER SYNDROME, TYPE 4B
- http://omim.org/entry/613090
国試
[★]
- 英
- syndrome of inappropriate secretion of antidiuretic hormone, (国試)SIADH
- syndrome of inappropriate secretion of antidiuresis, SIAD
- 同
- 抗利尿ホルモン不適合分泌、ADH不適合分泌症候群 inappropriate antidiuretic hormone secretion inappropriate secretion of antidiuretic hormone syndrome inappropriate ADH syndrome IADHS、シュワルツ・バーター症候群 Schwartz-Bartter syndrome。抗利尿ホルモン分泌異常症。不適切ADH分泌症候群
- syndrome of inappropriate ADH、syndrome of inappropriate ADH secretion、syndrome of inappropriate antidiuretic hormone、syndrome of inappropriate antidiuretic hormone secretion、syndrome of inappropriate diuresis、syndrome of inappropriate secretion of ADH、syndrome of inappropriate secretion of antidiuretic hormone
- 関
- バソプレシン AVP
病因
- 1. 抗利尿ホルモンが分泌される血漿浸透圧の閾値が異常となっている ← セットポイントの異常
- 2. 何らかの原因によって、恒常的に抗利尿ホルモンが分泌されている
HIM.2222改変
- 癌腫:肺、十二指腸、膵臓、卵巣、膀胱・尿路系
- その他:胸腺腫、中皮腫、気管支腺腫、カルチノイド、gangliocytoma、ユーイング肉腫
- 頭部外傷
- 感染症
- 血管障害
- 神経疾患
- 先天奇形
- 代謝異常
- 薬剤性
病態生理
- なぜ、waterのreabsorptionが増えるにもかかわらず、血圧が上昇しないの?
- HIM.2222
- 何らかの原因による不適切な抗利尿ホルモンの分泌 → 水の過剰な保持 →
- 1. → 細胞外液の増加 → (1)糸球体濾過量の増加と心房性利尿ペプチドの分泌、(2)レニン活性の抑制(supresses plasma renin activity)、(3)尿ナトリウム排泄の増加
- 細胞外液の増加を相殺しているが、その代償としてナトリウムを喪失し、低ナトリウム血症の増悪に繋がっている。 ← このために血圧は正常で、浮腫も起きないし、体液量も増えないと。
- 2. → 低ナトリウム血症 → 脳を含めた全身の細胞内液の増加 → 頭蓋内圧が亢進 → 急性水中毒症状
- 2-3日で脳の組織から水が排除されて症状が寛解する。
- 上記メカニズムに追加。
- 3. 1.の通り、循環血漿量の増加を招き、RAA系抑制などが起こる → 近位尿細管でのNa、水吸収低下(近位尿細管でのNa再吸収にはアンジオテンシンIIが関与) → 尿酸の再吸収低下、尿排泄増加(近位尿細管での挙動はNa、水と同じ、らしい) → 低尿酸血症
症状
- 低ナトリウム血症に基づくもの
- 尿量は変化がない ← 水の再吸収が亢進しているため??
検査
診断基準
- 1.低ナトリウム血症:血清ナトリウム濃度は135mEq/Lを下回る。
- 2.血漿バゾプレシン値:血清ナトリウムが135mEq/L未満で、血漿バゾプレシソ値が測定感度以上である。
- 3.低浸透圧血症:血漿浸透圧は280mOsm/kgを下回る。 ← 基準値:275-295 mOsmol/kg serum water(HIM.A)
- 4.高張尿:尿浸透圧は300mOsm/kgを上回る。 ← 基準値:50-1200 mOsm/l (QB) , 500-800 mOsmol/kg water(HIM.A)
- 5.ナトリウム利尿の持続:尿中ナトリウム濃度は20mEq/L以上である。
- 6.腎機能正常:血清クレアチニンは1.2mg/dl以下である。
- 7.副腎皮質機能正常:早朝空腹時の血清コルチゾールは6μg/dl以上である。
鑑別診断
治療
- 参考1
- 1.根治療 : 原疾患の治療を行う。
- 2.水分摂取制限: 1日の総水分摂取量を体重1 kg当り15~20 mlに制限する。
- 3.Na摂取 :食塩を経口的または非経口的に1日200 mEq以上投与する。
- 4. 自由水排泄 :重症低ナトリウム血症(120 mEq/L以下)で中枢神経系症状を伴うなど速やかな治療を必要とする場合はフロセミドを随時10~20 mg静脈内に投与し、尿中ナトリウム排泄量に相当する3%食塩水を投与する。その際、橋中心髄鞘崩壊を防止するために1日の血清ナトリウム濃度上昇は10 mEq/L以下とする。
- 5.ADH拮抗阻害薬:異所性バゾプレシン産生腫瘍に原因し、既存の治療で効果不十分な場合に限り、成人にはモザバプタン塩酸塩錠(30 mg)を1日1回1錠食後に経口投与する。投与開始3日間で有効性が認められた場合に限り、引き続き7日間まで継続投与することができる。
- 6.ADH拮抗阻害薬:デメクロサイクリンを1日600~1,200 mg経口投与する。
- 注意:急速な低Na血症の補正は橋中心髄鞘崩壊 CPMをきたす。
- ADH拮抗薬としては抗菌薬のデメクロサイクリン(レダマイシン)や抗てんかん薬のジフェニルヒダントイン(フェニトイン)が使われることがあった
参考
- http://square.umin.ac.jp/endocrine/tebiki/001/001008.pdf
国試
- 同
- 不適切ADH分泌症候群
[★]
- 英
- hypothyroidism
- 同
- 甲状腺機能不全症
- 関
- 粘液水腫、甲状腺ホルモン、甲状腺
- 甲状腺機能亢進症
概念
- 甲状腺ホルモンの合成、分泌が低下し、血液中の甲状腺ホルモンが不足している状態である。
病因
病態
- 参考1
- → 代謝の低下
- → 多くの組織の組織間隙にグリコサミノグリカンが蓄積
症候
- 全身:全身倦怠感、易疲労感、体重増加、低体温、嗄声、
貧血(EPO↓)、滲出液貯留(心膜液貯留(約30%の症例で見られる)、胸水貯留 ←血管透過性の亢進による)
- 消化器:絶肥大、便秘、食欲低下
- 循環器:粘液水腫心、心拍出量の低下?
- 骨格筋:こむらがえり、アキレス腱反射の子癇層の遅延(Lamberts徴候)、筋力低下(骨格筋ミオパチー)、筋肥大(Hoffmann症候群)、筋痛
- 皮膚 :四肢・顔面の粘液水腫、発汗減少、皮膚乾燥、頭皮脱毛、眉毛外1/3の脱毛、皮膚の黄染
- 神経 :末梢神経と中枢神経のいずれも影響が生じる。 (参考1)
- 橋本脳症:疾患概念についてはcontroversial
- 粘液水腫性昏睡(ICU.762)(低体温、浮腫性皮膚、意識レベル低下)
- 手根管症候群:よく見られる合併症。ホルモン療法により軽快。 ← 組織間質にグリコサミノグリカンが蓄積して手根管を狭窄せしめるのか
- 精神 :記銘力低下、計算力低下、言語緩慢、活動性低下
- 生殖系:月経不順(月経過多、無月経)。不妊、流産。 ← 初期に月経過多、後期に無月経を起こす(出典不明)。
- その他:乳汁分泌(三次性以外。TRH↑)、難聴、貧血。 ← 甲状腺ホルモンがエリスロポエチンの分泌を亢進させるので
生殖系の異常
月経前の婦人集団
|
集団サイズ(人)
|
患者全体に占める割合(%)
|
月経周期正常
|
無月経・希発月経
|
過多月経
|
甲状腺機能低下症
|
171
|
77
|
16
|
7
|
健常者
|
214
|
92
|
7
|
1
|
検査
胸部単純X線写真
心電図
血液検査
- AST,LDH,CKなど筋酵素が増加
- (1)心拍出量の低下 → 頚動脈圧受容器 → ADH分泌 (時に尿Na濃度が低下せず、SIADHの基準を満たす例がある)
- (2)GFR低下((1)の影響?) → ヘンレループの上行脚(diluting segment)に至る尿量減少 → 排泄できる自由水減少
診断基準
- a)かつb)を満たすもの
- 無気力、易疲労感、眼瞼浮腫、寒がり、体重増加、動作緩慢、嗜眠、記憶力低下、便秘、嗄声等いずれかの症状
治療
参考
- 1. [charged] 甲状腺機能低下症の臨床症状 - uptodate [21]
- 2. [charged] 甲状腺機能低下症における低ナトリウム血症 - uptodate [22]
- 3. [charged] 甲状腺機能低下症の治療 - uptodate [23]
- 4. [charged] 甲状腺機能低下性ミオパチー - uptodate [24]
- 5. 甲状腺機能低下症 - 甲状腺疾患診断ガイドライン
- http://www.japanthyroid.jp/doctor/guideline/japanese.html#teika
[★]
- 英
- diabetes insipidus DI
- 関
概念
- バソプレシンの不足または作用障害により腎集合管からの水分再吸収が低下し、多尿、口渇、多飲を来す疾患。
病型
障害部位
病因
-
- ニューロフィジンIIの遺伝子異常
- ADHレセプター異常症:V2受容体(伴性劣性遺伝)、アクアポリン2の異常(ほとんどが常染色体劣性遺伝)
- 頭蓋内占拠性病変:脳腫瘍
- 腎疾患:慢性腎不全、慢性腎盂腎炎、間質性腎炎、多発性嚢胞腎、閉塞性尿路疾患
- 電解質異常:低K血症や高Ca血症
- 薬物
- 続発性尿崩症の原因:脳腫瘍(50%)、外傷・ヒスチオサイトーシスX
疫学
- 日本の発症頻度は16人/人口10万人
- 病型:家族性2%、特発性43%、症候性55%/家族性1.6%、特発性42%、続発性56.4%(IMD)
- 性差:
- やや男子に多い。
- 家族性は女性に多く、他の型では男女比はほぼ等しい(平成5年厚生省特定疾患調査研究班報告書)
診断基準
- 参考1
症状
- 口渇
- 多飲 → 飲水量が十分でないと高ナトリウム血症、高浸透圧血症の引き金となる。
検査
- 血清ナトリウム濃度:正常高値~軽度高値
- 血清レニン濃度:正常高値~軽度高値
- 血漿浸透圧:高値
- 低張尿
負荷試験
画像検査
- [中枢性尿崩症]T1:(DI)低信号 ⇔ (健常者)高信号 ← T1で高信号になるものは脂肪、亜急性期の出血(メトヘモグロビン)、メラニン、高濃度蛋白質である。下垂体後葉が高信号を発するのは軸索中に高濃度のホルモンが存在するからなのか、軸索が集積しているためなのか、であろう。
診断(YN)
多尿 3000ml/day
|
|
|
|
|
↓
|
|
|
|
|
尿浸透圧
|
→
|
→ 290 mOsm/kg以上
|
→
|
浸透圧利尿
|
↓
|
|
|
|
|
↓水利尿
|
|
|
|
|
↓
|
|
|
|
|
血清ナトリウム濃度 血清レニン濃度
|
→
|
→ 低値
|
→
|
心因性多飲
|
↓
|
|
|
|
|
↓正常上限~軽度上昇
|
|
|
|
|
↓
|
|
|
|
|
水制限テスト バソプレシンテスト
|
→
|
→ 尿量不変、尿浸透圧不変
|
→
|
腎性尿崩症
|
↓
|
|
|
|
|
↓尿量減少、尿浸透圧上昇
|
|
|
|
|
↓
|
|
|
|
|
バソプレシン濃度(高張食塩水負荷時) MRIで基礎疾患の描出・T1で下垂体後葉の高信号の消失
|
|
|
|
|
↓
|
|
|
|
|
中枢性尿崩症
|
|
|
|
|
治療
参考
- http://square.umin.ac.jp/kasuitai/doctor/guidance.htm
- 2. MRI left:normal right:DI
- http://www.endotext.org/neuroendo/neuroendo2/figures/figure11.jpg
-diabetes insipidus