- 英
- antiphospholipid syndrome, antiphospholipid antibody syndrome, anti-phospholipid syndrome, anti-phospholipid antibody syndrome, APS
- 同
- 抗リン脂質症候群
- 関
- [[]]
概念
分類
- 全身性エリテマトーデスに合併(SLEの20-40%に合併)
- 劇症型(catastrophic APS):血小板減少症・重症、3部位以上の多臓器不全
病因
疫学
症状
- 胎盤内の血栓形成→胎盤機能不全。妊娠5-6か月に多い。明らかな基礎疾患のない習慣流産患者のうちの20%を占める。3回続けて流産した場合は疑われる。
- 1. 静脈血栓症:深部静脈血栓症(Budd-Chiari症候群、下肢、腎、網膜など)、肺塞栓症、腸間膜静脈血栓症
- 2. 動脈血栓症:脳血管障害(一過性脳虚血発作、脳梗塞)、末梢動脈閉塞、腸間膜動脈血栓症、心筋梗塞、網膜動脈血栓症
- 3. 習慣性流産:子宮内胎児死亡
- 4. 血小板減少症(出血傾向は来さないことが多い)
- 5. その他:網状皮斑(livedo),皮膚潰瘍、溶血性貧血、偏頭痛、舞踏病、てんかん、肺高血圧症など
REU.188
- SLE様症状(蝶形紅斑、DLE、光線過敏症など)もありうる
診断
診断基準 REU.190
- 臨床症状1椎上、検査基準1つ以上を満たしたとき、抗リン脂質抗体症候群と診断
- 1. 血栓症:動脈、静脈、小血管
- 2. 妊娠合併症
- a. 妊娠10週以降の胎児死亡
- b. 重症子癇前症、子癇、あるいは重症胎盤機能不全による34週以前の早産
- c. 3回以上続けての妊娠10週以前の自然流産
検査
- → 梅毒血清反応(STS):偽陽性
- 抗β2-GFI/カルジオリピン複合体抗体
- → リン脂質依存性の血液凝固反応の阻害(内因系) → APTT:延長。PT:正常
治療
- 動脈血栓症の再発予防・・・アスピリン少量内服が第一選択
- 静脈血栓症の再発予防・・・ワルファリン
予後
予防
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抗リン脂質抗体症候群 |
分類及び外部参照情報 |
ICD-10 |
D68.8 (ILDS D68.810) |
ICD-9 |
ICD9 289.81 |
OMIM |
107320 |
DiseasesDB |
775 |
eMedicine |
med/2923 |
Patient UK |
抗リン脂質抗体症候群 |
MeSH |
D016736 |
抗リン脂質抗体症候群(こうりんししつこうたいしょうこうぐん、Anti-phospholipid antibody syndrome; APS)は自己免疫疾患のひとつ。自己抗体ができることによって、全身の血液が固まりやすくなり、動脈塞栓・静脈塞栓を繰り返す疾患である。特に習慣性流産や若年者に発症する脳梗塞の原因として重要である。特定疾患のひとつであるが、これだけでは公費対象ではない。
目次
- 1 歴史
- 2 症状、徴候
- 3 検査所見
- 4 診断基準
- 5 治療
- 6 予後
- 7 参考文献
- 8 外部リンク
歴史
抗リン脂質抗体症候群は、1983年、Harrisらによって報告された疾患概念である。第一例目は全身性エリテマトーデス(SLE)に合併する疾患として報告された。ループスアンチコアグラントや抗リン脂質抗体が陽性となって血栓イベントや習慣流産の原因となるものと報告された。抗リン脂質抗体症候群はSLEを合併しない症例と合併する症例がある。
症状、徴候
血栓症
血栓症は、動脈、静脈のいずれにも生じ、また全身のどこにでも生じうる。生じる部位には個人差があると言われているが、そのメカニズムはわかっていない。
- 動脈血栓
- 脳梗塞、心筋梗塞、副腎梗塞、胃十二指腸動脈梗塞、腸間膜動脈塞栓症を指すが、皮膚潰瘍、四肢壊疽を呈することもある。
- 静脈血栓
- 深部静脈血栓症、脳静脈洞血栓症、肺塞栓症、下大静脈血栓、バッド・キアリ症候群など
- 一度に複数の部位に同時に多発性の血栓症を起こし、生命の危険のある病型を劇症型抗リン脂質抗体症候群と称する。
流産
抗リン脂質抗体症候群は習慣流産の原因の一つである。胎盤の血管に生じた血栓が引き起こす胎盤梗塞により、胎児に血液が供給されなくなるのが原因と考えられている。
その他
網様皮斑、リーブマン・サックス心内膜炎、自己免疫性溶血性貧血などを合併することがある。
検査所見
- 凝固系
- 活性化部分トロンボプラスチン時間が延長する。
- 自己抗体
- ループスアンチコアグラント、抗カルジオリピンIgGまたはIgM抗体、抗カルジオリピンβ2GPI抗体が陽性となる。
- 血算
- 中等度の血小板減少症を伴うことが多い。
- その他
- 梅毒検査(Serological Test for Syphilis; STS)が陽性となる(生物学的偽陽性、Biological False Positive; BFP)。より梅毒に特異的なTPHA(Treponema pallidum hemagglutination)やFTA-ABS(Fluorescent Treponemal Antibody-ABSorption)が陰性であることが生物学的偽陽性と判断する鍵であるが、梅毒感染初期には同様の検査所見を呈することがあり注意を要する。
診断基準
国際的な診断基準が、北海道大学教授の小池隆夫らにより1999年に提唱され、札幌基準(クライテリア)と呼ばれている。これは本症を特徴的臨床所見(血栓塞栓症状または習慣流産)のうちひとつと、特徴的検査所見(自己抗体)のうちひとつを6週間以上の間隔をあけて二回確認されるものとしており、基本的に臨床研究に用いるためにつくられたが現場でも用いられている。2006年、改訂版が提案され、自己抗体確認の間隔が12週間に延長されるなどした。
治療
おおまかに2つの臨床症状に対して治療がなされる。下記の臨床症状がでておらず、抗リン脂質抗体(ループスアンチコアグラントも含む)のみが陽性である場合に、治療を行うかどうかはいまだ議論の分かれるところである。
血栓症
血栓症の進行を防ぐため、すなわち2次血栓予防のために薬剤が投与される。脳梗塞などの動脈系の血栓であればアスピリンなどの抗血小板薬が使用される。下大静脈血栓や、動脈血栓で効果が足りないときにはワルファリンを投与する。劇症型抗リン脂質抗体症候群に対し、ステロイド剤やシクロフォスファミドも投与されることがある。
不育症、流産の治療
自己免疫によるものとしては血液凝固異常をきたす抗リン脂質抗体症候群(APS)が有名である。不育症の患者の場合は以前に自己免疫疾患の基準を満たさなかったとしても20%の頻度で自己抗体が陽性になることが知られており特に重要視されているのが抗リン脂質抗体である。抗リン脂質抗体としてはループスアンチコアグラント、抗カルジオリピン抗体、抗カルジオリピン・β2GPI複合体抗体、抗フォスファチジルエタノールアミン(PE)抗体、抗フォスファチジルセリン(CL)抗体(抗プロトロンビン抗体)、抗アネキシンⅤ抗体などが知られている。ループスアンチコアグラントは生体外ではリン脂質依存性のaPTTの延長を示すが生体内では血栓症を引き起こすことが知られている。抗カルジオリピン・β2GPI複合体抗体は抗カルジオリピン抗体のうち血栓症の病的意義が明らかになっている抗体である。抗PE抗体と同様にキニノーゲンに結合する。抗CL抗体はプロトロンビンに結合する。2006年度のAPS分類基準では不育症を認めた場合は比較的容易にAPSと診断されることに注意が必要である。APSによる不育症の治療としては低用量アスピリン療法(LDA)、ヘパリン療法、両者の併用療法、免疫グロブリン静注が知られている。十分なエビデンスは2008年現在存在しないがヘパリン・アスピリン併用療法が一般的である。LDAの投与量は40~100mgである。これは脳血管障害といった病的血管に対しての投与量よりもさらに少量でよいという考え方があるからである。アスピリンの投与に関しては投与期間に関してはコンセンサスを得られていない。妊娠前から投与することもあるし、妊娠が判明してから投与することもある。36週までで投与を中止することが多いがこれは流産の流産、死産のリスクのためであり、催奇形性はない。他のNSAIDs同様に動脈管早期閉鎖などが関与していると考えられている。ヘパリンに関しては教育入院の後、ヘパリンカルシウム(カプロシン)5000単位の12時間ごとの皮下注を行うことが多い。よりリスクが低いと考えられている低分子ヘパリンの皮下注用製剤としてはエノキサバリンが認可される見込みがある。なおこれら血栓症の治療薬は分娩後も継続するのが一般的である。帝王切開では12時間後より、経腟分娩では6時間後より使用を再開し、6~8週間にワーファリンに切り替える。アスピリンは継続することが多い。ワーファリンは催奇形性があることから妊娠中は用いたくない薬の一つである。ステロイド剤もリスク減少が報告されるが、ステロイド剤自体も胎児リスクを有する薬剤である点に留意すべきである。その他、血栓性の不育症を起こすものはループスアンチコアグラント、抗カルジオリピン抗体といった免疫学的な異常によって引き起こされる凝固異常の他、第ⅩⅡ因子、プロテインC、プロテインS、アンチトロンビンⅢの欠乏なども血栓症による胎盤機能不全による不育症を起こすことが知られている。第ⅩⅡ因子は肺塞栓症の原因としてもよく知られている。通常は50%以下で不足と考えるが60%程度でも注意が必要である。プロテインC、プロテインS、アンチトロンビンⅢの欠乏は頻度としては非常に少ない。
予後
重篤な合併症からも予想されるように、本症は生命予後に影響する。全身性エリテマトーデスに本症を合併している患者は、そうでない患者よりも予後が悪い。
参考文献
- 抗リン脂質抗体症候群における脳卒中の二次予防についての検討。
-
- Levine SR, Brey RL, Tilley BC, et al. Antiphospholipid antibodies and subsequent thrombo-occlusive events in patients with ischemic stroke. JAMA 2004; 291:576–584. PMID:14762036 (APASSスタディ。1440人を対象としたランダム化二重盲検試験。脳卒中二次予防において、アスピリンとワルファリンの効果に有意な差はなかった)
- van Goor MP, Alblas CL, Leebeek FW, et al. Do antiphospholipid antibodies increase the long-term risk of thrombotic complications in young patients with a recent TIA or ischemic stroke? Acta Neurol Scand 2004; 109:410–415.PMID:15147465 (128人を対象としたコホート研究。抗リン脂質抗体は脳卒中再発の危険因子ではなく、抗凝固療法は再発抑制に寄与しなかった)
- 抗リン脂質抗体症候群におけるワルファリンの治療強度についての検討。
-
- Crowther MA, Ginsberg JS, Julian J, et al. Comparison of two intensities of warfarin for the prevention of recurrent thrombosis in patients with the antiphospholipid antibody syndrome. NEJM. 2003; 349:1133–1138. PMID:13679527 (114人を対象としたランダム化二重盲検試験。ワルファリンの治療目標値をINR 2.0-3.0(通常療法群)とINR 3.0-4.0(強化療法群)にわけたところ、脳卒中の再発率に有意な差はみられなかった)
- Finazzi G, Marchioli R, Brancaccio V, et al. A randomized clinical trial of high-intensity warfarin vs. conventional antithrombotic therapy for the prevention of recurrent thrombosis in patients with the antiphospholipid syndrome (WAPS). J Thromb Haemost 2005; 3:848–853.PMID:15869575 (WAPSスタディ。109人を対象としたランダム化二重盲検試験、やはりワルファリンをINR 2.0-3.0と3.0-4.0の二つの目標値にわけたが脳卒中の再発率に有意な差はみられなかった)
外部リンク
- 難病情報センター:抗リン脂質抗体症候群
- 抗リン脂質抗体症候群(大学病院ブログ)
UpToDate Contents
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Japanese Journal
- 抗リン脂質抗体症候群 (特集 膠原病 最近の動向(Update 2012) : 日常診療に役立つ膠原病診療) -- (膠原病主要疾患の実地診療 2012 Update(「診断と治療」のトピックス))
- 中川 育磨,奥 健志,渥美 達也
- 成人病と生活習慣病 : 日本成人病(生活習慣病)学会準機関誌 42(8), 983-986, 2012-08
- NAID 40019422915
- 後天性血液凝固制御異常に伴う血栓症 : とくに抗リン脂質抗体症候群(APS) (AYUMI 血液凝固異常研究の進歩)
- 今月の症例 内側縦束症候群で発症し,経過中に肥厚性硬膜炎を合併した高齢発症SLEの1例
- 全身性エリテマトーデスと抗リン脂質抗体症候群 (特集 産科外来診療フローチャート : 妊婦管理のすべて) -- (合併症妊娠の評価と管理)
Related Links
- 抗リン脂質抗体症候群は、血液中に抗リン脂質抗体(抗カルジオリピン抗体や、 ループスアンチコアグラント)という自己抗体が証明 され、習慣性に(2回以上)流産を 起こしたり、動脈や静脈の中で血の固まりが出来る血栓症(脳梗塞、肺梗塞、四肢の 静脈血栓症 ...
- 抗リン脂質抗体(aPL)には、抗カルジオリピン抗体(aCL)、ループス抗凝固因子(LAC)、 ワッセルマン反応(STS)偽 陽性などが含まれるが、これらの抗体を有し、臨床的に動・ 静脈の血栓症、血小板減少症、習慣流産・死産・子宮内胎児死亡などをみる場合に抗 ...
- 抗リン脂質抗体症候群(こうりんししつこうたいしょうこうぐん、Anti-phospholipid antibody syndrome; APS)は自己免疫疾患のひとつ。自己抗体ができることによって、 全身の血液が固まりやすくなり、動脈塞栓・静脈塞栓を繰り返す疾患である。特に習慣 性流産 ...
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★リンクテーブル★
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- 44歳の女性。左下肢の腫脹を主訴に来院した。1年前から発熱と口腔内や陰部に痛みを伴うびらんと潰瘍、移動性の関節痛、下腿から足部の頭尾方向に延びる発赤を伴う有痛性皮疹を繰り返していた。3週前から左下腿の腫脹、疹痛が出現し改善しないため受診した。意識は清明。身長 158cm、体重 45kg。体温 39.9℃。脈拍 100/分、整。血圧 96/60mmHg。口唇粘膜にアフタ性口内炎を認める。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。表在リンパ節の腫大を認めない。左下腿から足関節部にかけて軽度の熱感を認める。四肢関節に腫脹や圧痛を認めない。尿所見:蛋白(-)、潜血(-)、白血球3+。検査所見:赤沈 73mm/1時間。血液所見:赤血球 354万、Hb 9.1g/dL、Ht 28%、白血球 8,400(桿状核好中球 5%、分葉核好中球 67%、好酸球 1%、単球 10%、リンパ球 17%)、血小板 36万、PT-INR 1.2(基準0.9~1.1)、APTT 27.8秒(基準対照 32.2)、フィブリノゲン 525mg/dL(基準 186~355)、Dダイマー 4.1μg/mL(基準 1.0以下)。血液生化学所見:総蛋白 7.3g/dL、アルブミン 2.3g/dL、AST 14U/L、ALT 11U/L、LD 144U/L(基準 120~245)、尿素窒素 9.1mg/dL、クレアチニン 0.4mg/dL、CK 51U/L(基準 30~140)。CRP 12mg/dL。両下肢の写真(別冊No.13A)及び鼠径部の造影CT(別冊No.13B)を別に示す。
- 最も考えられるのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [114A038]←[国試_114]→[114A040]
[★]
- 78歳の女性。右片麻痺と意識障害のため救急車で搬入された。昨晩はいつもどおりに就寝したが、本日の朝、意識がなくなっているのを夫が発見し、救急車を要請した。これまでに脂質異常症を指摘されたことがある。意識レベルはJCS Ⅲ-100。体温 36.8℃。脈拍 72/分、整。血圧 156/92mmHg。呼吸数 16/分。右片麻痺を認める。血液所見:赤血球 410万、Hb 13.1g/dL、Ht 40%、白血球 6,600、血小板 31万。血糖 96mg/dL。CRP 0.2mg/dL。心電図に異常を認めない。胸部エックス線写真で異常を認めない。頭部単純CT(別冊No. 24A)を別に示す。開頭手術を行い血腫を除去した。術中採取した血腫周囲の脳組織のCongo-Red染色標本(別冊No. 24B)を別に示す。
- 脳出血の原因で最も考えられるのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [110I072]←[国試_110]→[110I074]
[★]
- 疾患と皮膚所見の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [102I030]←[国試_102]→[102I032]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [103I024]←[国試_103]→[103I026]
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[正答]
※国試ナビ4※ [108G013]←[国試_108]→[108G015]
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- a. (1)(2)(3)
- b. (1)(2)(5)
- c. (1)(4)(5)
- d. (2)(3)(4)
- e. (3)(4)(5)
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[正答]
※国試ナビ4※ [097B037]←[国試_097]→[097B039]
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※国試ナビ4※ [103B030]←[国試_103]→[103B032]
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[正答]
※国試ナビ4※ [097H062]←[国試_097]→[097H064]
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※国試ナビ4※ [109I019]←[国試_109]→[109I021]
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[正答]
※国試ナビ4※ [114D007]←[国試_114]→[114D009]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [102G003]←[国試_102]→[102G005]
[★]
[★]
- 英
- idiopathic thrombocytopenic purpura, ITP
- 同
- ヴェルルホフ紫斑病 Werlhof purpura、(immune thrombocytopenic purpura← これは上位の疾患概念?)
- 関
- 血小板減少
概念
- 血小板に対する自己抗体によって血小板数が減少し、出血傾向をきたす自己免疫疾患
- 他の自己免疫性疾患による血小板減少は除外(除外診断)。
- 他の自己免疫性疾患との合併も多く、自己免疫性溶血性貧血・SLE・橋本病などが合併しうる。
疫学
- 小児に多い。1-3週前にウイルス感染症に罹患した後に発症。6ヶ月以内に治癒。
- 成人(10歳以上。20-40歳)女性に多い。緩慢に発症。軽快と増悪を繰り返す。
病因
- 血小板に対する自己抗体の出現による。
- 凝集に関与する糖蛋白GpIIb\GpIIIaに対する自己抗体が出現することで、自己の血小板に対する免疫反応が惹起され、血小板の破壊亢進が起こる。さらに原因は不明ではあるが粘着に関与する糖蛋白GpIb/GpIXに対する自己抗体も出現してくる。
症候
- 出血症状:皮膚の紫斑(点状出血・斑状出血)・鼻出血・歯肉出血・性器出血(月経多過)
- 関節内出血や深部出血は稀。
身体所見
- 急性特発性血小板減少性紫斑病:軽度の発熱、脾臓の軽度腫大?(10%の子供の患者にみられるが、正常な群でも同程度みられる。また、脾摘を受けた患者では脾臓の重さは正常であった。(WCH.1537) → つまり脾腫は一般的な症状とは言えない)
検査
血液
- 血小板数 10万 /μl 以下。赤血球数・白血球数は正常
骨髄検査
- 正形成。巨核球数は正常or増加
- 血小板付着を欠く巨核球が多い。
- [show details]
巨核球が若干多いかもしれないがよく分からない
免疫血清学的検査
- 血小板結合性IgG(PAIgG):高値 ←特異度低(SLE、肝硬変などでも↑)
- GPIIb・GPIIIa・GPIb・GPIXに対する自己抗体:特異度は高いが、感度が低い。民間病院レベルでは施行できない。
診断
成人の慢性ITPの診断基準
- 厚生労働省特定疾患特発性造血障害研究班(2004試案)
- 1.血小板減少(10万/ul以下)
- 2.末梢血塗沫標本は正常
- 3.以下の検査のうち3項目以上を満たすこと
- (1)貧血がない
- (2)白血球減少がない
- (3)末梢血液中の抗GPIIb/GPIIIa抗体産生B細胞の増加
- (4)血小板関連抗GPIIb/GPIIIa抗体の増加
- (5)網状血小板比率の増加
- (6)血漿トロンボポエチン軽度上昇にとどまる(<300pg/ml)
- 4.他の免疫性血小板減少を除外できる(SLE, リンパ増殖性疾患, HIV感染症, 肝硬変, 薬剤性)。
鑑別診断
治療
modality
- ステロイド
- 免疫グロブリン
- ヘリコバクター・ピロリの除菌:日本ではHP感染症との関連が統計的に明らかとなっており、ステロイドに先んじてHP除菌が試みられる。
- 脾摘:ステロイドが奏効しない場合にはやむなく脾臓摘出が検討される。小児の場合は急性例であることが多く、かつ免疫機構の一部として重要な臓器であるため、発症6ヶ月以内では脾摘は見合わせる。
- 血小板輸血は、輸血後破壊されてしまうために、緊急時以外は適応ではない。
治療の選択
- 出典不明
- 血小板数3万/ul以上:経過観察
- 血小板数1万-3万/ul以上 or 重篤な粘膜出血:経口ステロイド
- 血小板数1万以下-3万/ul以上:免疫グロブリン
参考
- 1. 妊娠により重症化した難治性特発性血小板減少性紫斑病に対して摘脾が有効であった1例
- http://www.med.osaka-cu.ac.jp/labmed/ITP.pdf
- 2. 難病情報センター | 特発性血小板減少性紫斑病(公費対象)
- http://www.nanbyou.or.jp/entry/303
uptodate
- 1. [charged] 成人における免疫性(特発性)血小板減少性紫斑病の臨床症状および診断 - uptodate [1]
- 2. [charged] 成人における免疫性(特発性)血小板減少性紫斑病の治療および診断 - uptodate [2]
- 3. [charged] 成人における慢性難治性免疫性(特発性)血小板減少性紫斑病 - uptodate [3]
- 4. [charged] 小児における免疫性(特発性)血小板減少性紫斑病の臨床症状および診断 - uptodate [4]
- 5. [charged] 小児における免疫性(特発性)血小板減少性紫斑病の治療および予後 - uptodate [5]
国試
[★]
- 英
- HELLP syndrome hemolysis, elevated liver enzymes, low platelets
- 同
- ヘルプ症候群
概念
- 溶血、肝臓酵素上昇、血小板減少を伴う。(NGY.399)
- 本疾患の溶血は微小血管障害性に起因する(参考6)ものであり、これで肝臓酵素上昇、血小板減少が説明できると思われる。
- 放置するとDICを発症する。(NGY.399)
- 妊娠高血圧症候群に伴うことが多い(NGY.399)。しかし15-20%の本疾患の患者では発症前に高血圧や蛋白尿を示していないため、妊娠高血圧腎症とは別の疾患概念と考える専門家もいる。(参考6)
疫学
- 発生頻度:0.021%、妊娠高血圧症候群の約2%(NGY.399)
臨床所見
- 右上腹部圧痛 80%
- 浮腫を伴う体重増加 60%
- 高血圧(重症 50%, 軽症 30%, なし 20%)
症状(NGY.399)
- 上腹部痛・心窩部痛(90%)、疲労感・倦怠感(90%)、嘔気・嘔吐(50%)
合併症
- DIC 20%
- 常位胎盤早期剥離 16%
- 腎不全 7%
- 肝破裂
- (子癇発作を起こしやすい)
診断
- 参考5
- 1. 肝機能:血清AST(GOT)値70U/l 以上、血清LDH 値600U/l 以上
- 2. 溶 血:血清間接ビリルビン値1.2mg/dl 以上、血清LDH 値600U/l 以上。病的赤血球の出現
- 3. 血小板数減少:血小板数10 万/μ l 以下
- 2)Sibai の基準を全て満たさなくても以下のような基準をひとつでも満たす場合には、HELLP 症候群発症を警戒し、注意を喚起する(妊娠中毒症学会HELLP 症候群検討小委員会)
- 1. 肝機能:血清AST(GOT)値、血清LDH 値が各施設の正常域を越えて高値の場合
- 2. 溶 血:血清間接ビリルビン値、血清LDH 値が各施設の正常域を越えて高値の場合
- 3. 血小板数減少:血小板数15 万/μ l 以下の場合
- 4. その他:血中アンチトロンビン活性が正常値の80% 未満の低下を示した場合やハプトグロビン値の低下した場合
鑑別疾患
治療
- 参考6
- 初期治療の方針:母体の安定化と胎児の評価を行い、急速遂娩の必要性を評価
- 1. termination:最良の治療法
- 以下に当てはまれば急速遂娩の適応:(1)妊娠34週以降である、(2)胎児の状態がnon-assureing statusである、(3)重篤な母体状態(多臓器不全、DIC、肝梗塞、肝出血、腎不全、早期胎盤剥離)である。
治療の禁忌
- 参考5
- 病態に交感神経活性化があるために、β受容体拮抗薬(リトドリン)、副交感神経遮断薬(ブスコパン)は血管攣縮を助長するため禁 ← 前者はα受容体の相対的活性化、後者は交感神経優位となるため、と思う。
予後
資料
- 1. HELLP, TTP, HUS の診断およびその管理
- http://www.jsog.or.jp/PDF/51/5102-31.pdf
- 2. 妊娠高血圧症候群 - 日本産科婦人科学会 - 日産婦誌58巻5号
- http://www.jsog.or.jp/PDF/58/5805-061.pdf
- 3. 2)妊娠中毒症(妊娠高血圧症候群) HELLP 症候群 - 日本産科婦人科学会
- http://www.jsog.or.jp/PDF/57/5709-257.pdf
- 4. HELLP症候群の診断と対応(児娩出後の悪化への対応) - 日本産科婦人科学会 - 日産婦誌62巻9号
- http://www.jsog.or.jp/PDF/62/6209-273.pdf
- 5. C.産科疾患の診断・治療・管理 6.異常分娩の管理と処置 - 日産婦誌56巻6号
- http://www.jsog.or.jp/PDF/56/5606-107.pdf
- 6. [charged] HELLP syndrome - uptodate [6]
[★]
- 英
- thrombotic thrombocytopenic purpura, TTP
- 同
- モシュコビッツ症候群 モシュコウィッツ病 Moschkowitz's syndrome Moschcowitz disease
- 関
- 溶血性尿毒症症候群 hemolytic uremic syndrome HUS、血小板減少、難病
- 同
- TTP
- ICU.594やuptodate([7] [8])も参考になった
病型
- 特発性:VWF-CP に対する自己抗体産生
- 二次性:自己免疫疾患、薬物(チクロピジン)、妊娠などによる自己抗体の出現
病因
- 1. 先天的な酵素活性の低下
- 2. vWF切断酵素に対する自己抗体
病態
- IMD.985 YN.G-83
- vWF切断酵素(ADAMTS13)活性の低下 → unusually large vWFマルチマーが分解されない → 血小板凝固促進
- 1. 血小板消費 → 出血傾向
- 2. 微小血管血小板血栓
- 2-1. 循環障害 → 腎臓(腎不全)、脳の障害(精神症状)
- 2-2. 狭窄血管の中への赤血球循環 → 破砕赤血球(MAHA) → 溶血性貧血
TTPの5徴候
- let's memorize: The Fr.(=The franch)
(⇔溶血性尿毒症症候群 HUS は血小板減少、細血管障害性溶血性貧血、腎障害。精神症状と発熱は特徴的ではない)
鑑別診断
治療
- 奏功するはっきりとしたメカニズムは不明だが、異常なvWF重合体、血小板活性化因子 PAF、あるいは免疫複合体除去、ULvWF重合体やプロスタサイクリンの置換(血漿交換で血漿内に入れる)によるものと考えられている(WCH.1559)
- 血漿輸注療法 → 先天性のTTPの場合
- 抗血小板薬
- 副腎皮質ステロイド
- 血小板輸血は原則禁忌:血小板輸血の間に腎機能や神経学的状態(neurologic status)が著明に悪化するため(WCH.1559)
USMLE
予後
- 寛解後した患者の1/3が初期再発(完全寛解後1ヶ月間)、あるいは後期再発(late relapse)(最初のエピソードから10年以内)する。
参考
- http://www.nanbyou.or.jp/sikkan/026_i.htm
[★]
- 英
- autoantibody
- 関
- 抗体
疾患特異的自己抗体
- 抗Sm抗体-SLE
- 抗RNA抗体-SLE,MCTD(overlap syndrome)
- 抗SS-B抗体-シェーグレーン症候群
- 抗Scl-70抗体-強皮症
- 抗セントロメア抗体-強皮症(手足限局型)
- 抗Jo-1抗体-多発性筋炎
- 抗白血球細胞質抗体(ANCA)
- C-ANCA-Wegener肉芽腫
- P-ANCA-壊死性半月体形成性腎炎、顕微鏡的多発血管炎、チャーグ-ストラウス症候群(アレルギー性肉芽腫性血管炎)
特異的自己抗体 NDE.178
[★]
- 英
- syndrome, symptom-complex
- 同
- 症状群
- 関
- [[]]
- 成因や病理学的所見からではなく、複数の症候の組み合わせによって診断される診断名あるいは疾患。
内分泌
先天的代謝異常
高プロラクチン血症
- 分娩後の視床下部障害によるプロラクチン分泌抑制因子の分泌抑制のため、高プロラクチン血症を呈する。
- 分娩に関係なくプロラクチン分泌抑制因子の分泌抑制をきたし、高プロラクチン血症を呈する。
性腺機能低下
- 嗅覚の低下・脱出、低ゴナドトロピン性性腺機能低下症
- 肥満、網膜色素変性症、知能低下、低ゴナドトロピン性性器発育不全、多指症、低身長
性早熟
- 思春期早発症、多発性線維性骨異形成症、皮膚色素沈着
- 女性型の肥満、性器の発育障害の2主徴を示し、視床下部に器質的障害をもつ疾患群。
脳神経外科・神経内科
[★]
- 英
- phosphorus P
- 関
- serum phosphorus level
分子量
- 30.973762 u (wikipedia)
- 単体で化合物としてはP4、淡黄色を帯びた半透明の固体、所謂黄リンで毒性が高い。分子量124.08。
基準値
- 血清中のリンおよびリン化合物(リン酸イオンなどとして存在)を無機リン(P)として定量した値。
- (serum)phosphorus, inorganic 2.5–4.3 mg/dL(HIM.Appendix)
- 2.5-4.5 mg/dL (QB)
代謝
- リンは経口的に摂取され、小腸から吸収され、細胞内に取り込まれる。
- 骨形成とともに骨に取り込まれる。
- 腎より排泄される。
尿細管での分泌・再吸収
- 排泄:10%
尿細管における再吸収の調節要素
臨床検査
- 無機リンとして定量される。
基準範囲
血清
- 小児:4-7mg/dL
- 閉経後女性は一般集団より0.3mg/dL高値となる
尿
測定値に影響を与える要因
臨床関連
参考
- http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%B3
[★]
- 英
- antibody, Ab
- 関
- γ-globline、免疫グロブリン
- 抗原を特異的に認識する糖蛋白質である免疫グロブリンの一種。
- 血液・リンパ液中で抗原と非結合状態のものを指す
- 液性免疫に関与
[★]
- 英
- group
- 関
- グループ、集団、分類、群れ、基、グループ化
[★]
- 英
- symptom and sign
- 関
- 症状, 徴候 兆候