- 英
- multiple system atrophy, MSA, multisystem atrophy
多系統萎縮症
-
-
共通点
- 3疾患は進行すると共通した病理像を呈する。
- 脳幹のグリアや神経細胞の細胞質内に特徴的な封入体(glial cytoplasmic inclusion, GCI、neuronal cytoplasmic inclusion, NCI)が存在する
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2013/10/17 21:00:07」(JST)
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多系統萎縮症(たけいとういしゅくしょう、英: multiple system atrophy; MSA)は、代表的な神経変性疾患の1つである。
進行性の小脳症状をしばしば呈することから、脊髄小脳変性症の1型(孤発性)と分類され、本邦の脊髄小脳変性症の中で最も多い。このうち、小脳症候を主徴とするものはオリーブ橋小脳萎縮症(OPCA、1900年)、起立性低血圧、排尿障害、睡眠時無呼吸(喉頭喘鳴)などの自律神経症状を主徴とするものはシャイ・ドレーガー症候群(Shy-Drager syndrome、SDS、1960年)、動作緩慢、小刻み歩行、姿勢反射障害などのパーキンソン症状を主徴とするものは線条体黒質変性症(SND、1960-64年)である。これら3型の臨床病理学的な類似点が指摘され、1969年にMSAの病名が誕生した。
1989年に、MSAの病理学的特徴である、神経膠細胞の細胞質内封入体(glial cytoplasmic inclusion、GCI)が記載され、MSAが病理学的な一疾患単位であることが確立した。
1998-1999年にかけてMSAの診断に関する合意表明(診断基準)が発表され、MSAは自律神経障害(起立性低血圧または排尿障害)と運動障害(レボドパ不応性パーキンソン症候群または小脳障害)の両者を有するものと定義され、運動障害の内容により小脳型(MSA-C)、パーキンソン型(MSA-P)と分類されるようになった。この合意表明は、最近、追記改定された。
目次
- 1 症状
- 2 病理
- 3 診断
- 4 治療
- 5 予後
- 6 参考文献
- 7 関連項目
- 8 外部リンク
症状[編集]
- 小脳症状
- 運動失調性構音障害
- 上肢の運動失調
- 運動失調性歩行障害
- 錐体外路症状
- 錐体路症状(本邦症例では少ない)
- 自律神経症状
- 排尿障害
- 起立性低血圧
- 睡眠時無呼吸、喉頭喘鳴
- 便秘
- 陰茎勃起障害
病理[編集]
小脳全層の細胞変性、橋核ニューロンの消失、黒質メラニン含有細胞の脱落が認められる。広範囲にリン酸化αーシヌクレイン陽性となる封入体 glial cytoplasmic inclusion (GCI) が認められるため、シヌクレオパチーと考えられている。
診断[編集]
- 核磁気共鳴画像法(MRI)
- 小脳の萎縮。
- 橋の萎縮、T2強調画像水平断で橋に十字の高信号を呈する(クロスサイン)。
- 被殻の萎縮、T2強調画像水平断で被殻後外側に高信号を呈する(スリットサイン)。
治療[編集]
症状に応じた対症療法を行う。小脳症状に対して、タルチレリンなどを用い、運動・作業のリハビリテーションを行う。パーキンソン症候群に対して、パーキンソン病に準じてレボドパなどを用いる。起立性低血圧に対して、弾性ストッキング、塩分負荷食、交感神経刺激薬、塩分保持性ステロイドなどを用いる。排尿障害(尿失禁、頻尿)に対して抗コリン薬などを用いる。残尿が100 ml以上ある場合や尿閉に対して、間欠自己導尿 (CIC) を行う。睡眠時無呼吸に対して、簡易呼吸補助器 (CPAP) などを用いる。
予後[編集]
10年以内に死亡することが多いが、以前より生存期間が延長している。
参考文献[編集]
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
- 多系統萎縮症の診断に関する第2回コンセンサス (PDF)
- 東邦大学-多系統萎縮症
- 全国脊髄小脳変性症・多系統萎縮症友の会
- 都立神経病院-脊髄小脳変性症の理解のために (PDF)
- 難病ドットコム(東京医科歯科大学監修)-脊髄小脳変性症
- 神経難病解説-脊髄小脳変性症
- 難病情報センター 脊髄小脳変性症 特定疾患情報
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Japanese Journal
- レム睡眠行動障害で初診しその後の経過中に多系統萎縮症が明らかになった1症例
- 田島 康敬,水戸 泰紀,須藤 和昌
- 2011-03-31
- … レム睡眠行動障害(REM sleep behavior disorder: RBD)と考えられる症状で初診し、その後に多系統萎縮症(multiple system atrophy: M SA-C)の所見が明らかとなった59歳男性例を画像所見の経過と合わせ提示する。 …
- NAID 120003145491
- パーキンソン関連疾患における経頭蓋超音波検査による中脳黒質の高輝度変化の検討
- 岩波 正興,宮本 智之,宮本 雅之,高田 悦雄,平田 幸一
- Dokkyo journal of medical sciences 38(1), 103-109, 2011-03-25
- … 的:パーキンソン病 (Parkinson disease:PD),多系統萎縮症 (multiple system atrophy:MSA),進行性核上性麻痺 (progressive supranuclear palsy:PSP) の患者において経頭蓋超音波検査 (transcranial sonography:TCS) よる中脳黒質の高輝度変化を検討した.方 法:パーキンソン関連疾患連続110 例 (PD 86 例,MSA 12 例,PSP 12 例) と健常者34 例に対しTCSを施行した.中脳黒質を観察しえたPD 47 例,MSA 10 例,PSP 6 例,健常者32 例を解析対象として中脳黒質高輝度所見を評価し …
- NAID 110008449024
- 臨床報告 八味地黄丸が有効であった多系統萎縮症の一例
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- 多系統萎縮症(1)線条体黒質変性症(公費対象). たけいとういしゅくしょう せんじょうたい こくしつへんせいしょう. 研究班名簿 · 病気の解説 (一般利用者向け) 診断・治療指針 ( 医療従事者向け) FAQ (よくある質問と回答). この病気は公費負担の対象疾患です。
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★リンクテーブル★
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- 72歳の女性。右手が使いにくいことを主訴に来院した。3年前から料理のときに右手で炒めものをかき混ぜづらく、歩行時に右足を引きずると感じていたが、症状の進行は自覚しなかった。半年前、物を持って平地を歩いているときに小走りになって転倒した。そのころから徐々に右足の引きずりが強くなっているように感じている。10年前から便秘で5年前から嗅覚の低下を自覚している。3年前に夫と死別してから抑うつ傾向となり、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)を服用している。半年前に娘と旅行をしたとき、睡眠中に寝言を言いながら手足をバタバタさせていたという。表情は乏しいが、眼球運動は正常で眼振は認めない。右優位の筋強剛と無動を認めるが、振戦を認めない。四肢の腱反射は正常で、Babinski徴候は認めない。ドパミントランスポーターSPECT(別冊No. 19)を別に示す。
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- 62歳の男性。最近、歩行と動作とが遅くなったため来院した。半年前から手が震えることに気付いていた。意識は清明。脳神経に異常はない。腱反射は正常で、病的反射はない。四肢に筋固縮を認め、安静時に左手の振戦を認める。
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- 約 3年前から転びやすくなった 68歳の男性で、筋強剛と立ち直り反射障害があるが振戦はなく頭部 MRIでは異常を認めない。
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[正答]
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- パーキンソン症状を示す患者の頭部単純MRIのT1強調矢状断像(別冊No. 2)を別に示す。
- 最も考えられるのはどれか。
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- 高齢者で初発するてんかんの原因として最も頻度が高い変性疾患はどれか。
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[正答]
※国試ナビ4※ [109B018]←[国試_109]→[109B020]
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- 英
- REM sleep behavior disorder, RBD
- 同
- レム睡眠行動異常症
- 関
- 睡眠障害、睡眠時随伴症
[show details]
概念
- 主に男性に見られる慢性かつ進行性の疾患であり、レム睡眠における筋弛緩の欠如と粗暴な行動の出現が特徴的である。
疫学
病因
- 出典無し
症状
- 日中には問題はない。
- レム睡眠中に筋弛緩を欠いており、夢の内容をそのまま行動に移す結果、殴る、蹴る、跳ねる、ベッドから飛び出すなどの粗暴な行動が起き、自分自身あるいは家族を傷害することがある。
- 声をかけると覚醒し、目覚めたときの意識と見当識は正常で、異常行動を呈した場面を想起できることが多い。 ⇔ 譫妄、夜驚
診断基準
- 睡眠障害国際分類第2版(ICSD-2)
-
- けがをしてしまうか,あるいはけがをしてもおかしくないような睡眠時の荒々しい行動.
- 睡眠ポリグラフ検査中に記録されたREM睡眠時の異常行動.
- 筋抑制を欠いたREM睡眠(REM sleep without atonia)が存在する:持続的または間欠的な頤筋活動
の亢進や,頤筋または四肢の相動的な収縮(phasic EMG twitching).
- REM 睡眠中に,てんかん性脳波活動がみられない(RBDと他のREM 睡眠関連性けいれんの併発とを,明瞭に区別
できる場合を除く).
- 他の睡眠異常症では十分説明できない睡眠障害である(内科疾患や神経疾患,精神疾患,薬剤性や薬物乱用による疾患)
治療
[★]
- 英
- parkinsonian syndrome
- 同
- Parkinson症候群
- 関
- パーキンソニズム parkinsonism
[show details]
分類
中枢神経変性疾患 - パーキンソンニズムを主徴とする疾患
[★]
- 英
- olivopontocerebellar atrophy, OPCA, olivopontocerebellar atrophies
- 同
- デジュリーヌ・トーマ病 Dejerine-Thomas disease、オリーブ・橋・小脳萎縮症 olivo-ponto-cerebellar atrophy、オリーブ橋小脳変性症 olivopontocerebellar degeneration
- 関
- spinocerebellar ataxia, SCA1、多系統萎縮症、脊髄小脳変性症
概念
脊髄小脳変性症との関係
-
-
多系統萎縮症
症状
- YN.J-124
- 歩行障害→運動失調→平衡障害→構音障害
- 1. 小脳症状
- 2. 錐体路症状
- 3. 錐体外路症状
- 4. 自立心液晶状
- 5. 知能低下
治療
予後(YN.J-124)
国試
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- 英
- striatonigral degeneration, SND
- 関
- 多系統萎縮症
概念
脊髄小脳変性症との関係
-
-
多系統萎縮症
症状
- 錐体外路症状、錐体路症状、小脳症状(企図振戦、小脳失調性歩行)、自律神経障害
検査
[show details]
治療
国試
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- 英
- autonomic failure with multiple systematrophy
- 同
- AF with MSA
- 関
- シャイ・ドレーガー症候群
[★]
- 英
- atrophy
- ラ
- atrophia
- 関
- 退縮。肥大、過形成
概念
[★]
- 英
- atrophy、dwarf、dwarfism、kraurosis
- 関
- 萎縮、小人症、矮性、矮化、衰退、低身長症
[★]
- 英
- sis, pathy
[★]
- 英
- strain
- 同
- 系 line phyletic line stock phylogeny