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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/12/11 13:31:08」(JST)
進行性核上性麻痺(progressive supranuclea palsy PSP)は1964年にSteele JC、Richardson JC、Olszewski Jの3人によって報告された疾患である。原著では7人の剖検例を含む9例のPSP患者の報告がされている。その臨床的特徴としては垂直性注視麻痺、偽性球麻痺、項部ジストニア、認知症、姿勢保持反射障害があげられている。10万人あたり6人程度である。臨床診断基準を満たすものでもいくつかの亜型があることが知られている。典型的な臨床像はRichardson症候群とよばれる。
Richardson症候群の欧米における有病率は人口10万人あたり6.0~6.4人と推定されている。Richardson症候群以外の臨床病型を含めるともっと多いと考えられる。平均60歳代で発症し、男性に多い。平均罹患期間は5~9年とされている。
淡蒼球、視床下核、小脳歯状核、赤核、黒質、脳幹被蓋の神経細胞が脱落し、異常リン酸化タウ蛋白(4リピート優位)が神経細胞内およびグリア細胞内に蓄積する。突起にタウ蛋白が房状に沈着するtuft-shaped astrocyteが特徴的な所見である。
進行性核上性麻痺、皮質基底核変性症などがタウオパチーとして知られている。1975年タウは神経系に特異的に発現する微小管結合蛋白質として発見された。微小管はα、βチューブリンのヘテロ二量体からなる主要な細胞骨格のひとつと考えられている。タウは細胞内において微小管の重合促進および安定化、細胞骨格構造の形成、維持に重要な役割を果たし、その機能はリン酸化(大きな電荷によるコンホメーション変化)によって調節されている。タウ遺伝子はヒトでは17番染色体上17q21.2に存在し、16個のエクソンからなる。タウは単一遺伝子から転写されたpre-mRNAが選択的スプライシングされることで6つのアイソフォームが発現する。エクソン2,3,10の選択的スプライシングの結果アミノ酸352~441個の6つアイソフォーム、即ち352(0N3R)、381(1N3R)、383(0N3R)、410(2N3R)、412(1N4R)、441(2N4R)ができる。Rはタウのカルボキシル基末端側の微小管結合部のリピート数を示す。微小管結合部はエクソン9~12にコードされておりエクソン10を含む4Rタウとエクソン10を含まない3Rタウに分けられる。タウの微小管結合能は4Rの方が大きくN末端の配列は影響しない。NはタウのN末端部位に存在するプロジェクション領域と言われる部分のプロフィールであり微小管の間の間隔を決定している。エクソン2.3の有無によって決定されエクソン2,3ともに認められないと0Nであり、エクソン2がある場合は1N、エクソン2.3ともにあれば2Nと分類される。ヒト胎生期~新生児期は352(0N3R)のみ発現するが成人では6つのアイソフォームすべてが発現する。これは微小管ネットワークのダイナミクスを保つ上で3Rタウによる微小管形成が必要であり、安定な微小管ネットワークを保持するには4Rタウによる微小管形成が必要である可能性が示唆されている。神経細胞内線維状封入体を形成するタウのアイソフォームは各疾患によって異なり主に3R型、主に4R型、あるいは3R、4R両者が同じ比率で含まれるタイプに分類される。3R型にはピック病、4R型には進行性核上性麻痺、皮質基底核変性症など、両者にはアルツハイマー病などがある。
タウ病変の分布によって脳幹優位型(PSP-P、PSP-PAGF)と大脳皮質優位型(PSP-CBS、PSP-PNFA、PSP-FTD)に分類される。
初期から転倒を伴う姿勢保持障害、垂直性核上性注視麻痺、体軸性固縮、認知症などが特徴とされる。半数以上が1年以内に転倒を繰り返す。また注視麻痺は病初期には認められないことが多く、下方視の障害は平均3年目に出現する。PSP全体の54%程度を占める。
左右差をもって発症し、姿勢時振戦や静止時振戦をみられ、しばしばパーキンソン病と診断される。L-DOPAが2~3年効果がある。初期の転倒や眼球運動障害や認知機能障害は認められない。PSP全体の32%を占める。タウ病変の分布はRichardson症候群と同様であるが程度が軽いとされている。罹患年数は平均9.1年と長く、死亡時年齢も平均75.5年と長い。
発症が緩徐で早期に歩行または発語のすくみ現象がある。筋強剛や振戦がみとめられずL-DOPAに対する反応性がないもの。すくみが他の神経症候より長時間先行し罹患期間は平均13年と長い。
臨床的にCBSを示すものでありPSPの3%を占める。
進行性非流暢性失語あるいは発語失行が前景にたつ。下前頭回を含む前頭葉のタウ病変が高度である。
人格変化、行動異常、無為、無感情、脱抑制を示し前頭側頭葉型認知症の臨床像をとる。PSPの4%ほどをしめる。
小脳皮質の萎縮がない脊髄小脳変性症で鑑別が必要である。
中脳被蓋の萎縮、前頭葉の萎縮、第三脳室の拡大、上小脳脚の萎縮などが知られている。
前頭葉の血流低下が知られている。
NINDS-PSPの診断基準が知られている。
初期はL-DOPAが有効な場合がある。
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など
アルツハイマー病 | 脳血管性認知症 | ピック病 | |
認知症 | 全般的認知症 | まだら認知症 | アルツハイマー病に類似。 早期には人格、注意力が障害され、 次第に記憶力も障害される。 |
人格 | 晩期に人格障害 | 保たれる | 早期に人格障害 |
病識 | なし(初期にはあり) | あり | なし |
経過 | 進行性 | 動揺性、階段状に進行性 | 進行性 |
基礎疾患 | 特になし | 高血圧、糖尿病、心疾患 | 特になし |
画像検査 | 対称性の脳溝開大 | 脳実質内に脳梗塞巣 | 側頭葉と前頭葉の萎縮 |
機能画像検査 | 側頭葉、頭頂葉での代謝低下 | 前頭葉を中心とした多発性の脳代謝低下 | 前頭葉、側頭葉での代謝低下 |
相談体制 | 保健所 | 地域保健法が定める事業内容「母性及び乳幼児並びに老人の保健に関する事項」による老人精神衛生相談事業 | |
高齢者総合相談センター | 厚労省が都道府県レベルに設置している高齢者に関する相談窓口 | ||
在宅介護支援センター | 老人福祉法により市町村が実施の主体となっている施設であり、在宅の要介護高齢者やその介護者の要望に対応した適切なサービスが円滑に提供されるように市町村や関連機関との連絡・調節などを行っている。 | ||
認知症疾患医療センター | |||
在宅対策 | 介護 | 訪問介護 | ホームヘルプサービス |
通所介護 | デイサービス | ||
短期入所生活介護 | ショートステイ | ||
認知症老人向け毎日通所型デイサービスセンター | |||
認知症対応型老人共同生活介護 | グループホーム | ||
老人認知症疾患デイ・ケア施設 | |||
福祉 | 訪問指導 | ||
施設対策 | 介護 | 介護療養型医療施設 | |
介護老人保健施設 | |||
介護老人福祉施設 | |||
医療 | 老人性認知症疾患治療病棟 | ||
福祉 | 養護老人ホーム | ||
特別養護老人ホーム |
特発性 | パーキンソン病 | |
続発性 | 感染性 | 脳炎後パーキンソン症候群 |
梅毒性パーキンソン症候群 | ||
中毒性 | 一酸化炭素中毒 | |
マンガン中毒 | ||
薬物中毒(抗精神病薬(ベンズアミド系(スルピリド)、フェノチアジン系(クロルプロマジン)、ブチロフェノン系(ハロペリドール))、降圧薬(レセルピン、αメチルドパ)) | ||
血管性 | 動脈硬化症による | |
脳梗塞による | ||
関連疾患 | 線条体黒質変性症 | |
オリーブ橋小脳萎縮症 | ||
シャイ・ドレーガー症候群 | ||
進行性核上性麻痺 | ||
レビー小体型認知症 | ||
ウイルソン病 | ||
クロイツフェルト・ヤコブ病 | ||
正常圧水頭症 |
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