- 英
- Fisher syndrome, FS
- 同
- ミラー・フィッシャー症候群 Miller-Fisher症候群 Miller-Fisher syndrome、Miller Fisher syndrome、Fisher症候群
- 関
- ギラン・バレー症候群、ビッカースタッフ型脳幹脳炎、全眼筋麻痺、免疫介在性ニューロパチー
概念
- ギラン・バレー症候群の亜型であり、抗GQ1b-ガングリオシド抗体が出現している。GQ1b-ガングリオシドを多く含むCN III, IV, VI, VIIが主に障害される。
- 1956年Miller Fisherが報告。
- ミラー・フィッシャー症候群(Miller-Fisher syndrome)ないしフィッシャー症候群(Fisher syndrome)は急性の外眼筋麻痺・運動失調・腱反射消失を三主徴とする免疫介在性ニューロパチーである。
- 多くは上気道感染後に発症し、1-2週間進行した後に自然経過で改善に向かうという単相性の経過をとる。
- 先行感染、髄液蛋白細胞解離などのギラン・バレー症候群と共通する特徴を有し、同症候群の亜型と考えられている。
- フィッシャー症候群患者の80-90%において血清ガングリオシドGGQ1b IgG抗体が検出されており、この自己抗体が診断マーカーとなっている。
- 眼運動神経(動眼・滑車・外転神経)に他の脳神経や脊髄前後根よりGQ1bが豊富に発現していることからGQ1b抗体が外眼筋麻痺に関与していると考えられている。
- 参考2
- 三徴がそろわず、眼球運動障害のみ(急性外眼筋麻痺)や運動失調・腱反射低下のみ(急性失調性ニューロパチー)を呈する不全型が存在する。
病型
亜型
- 典型的フィッシャー症候群:(約半数例)外眼筋麻痺・運動失調・腱反射消失
- 不全型フィッシャー症候群:眼球運動のみ、運動失調と腱反射低下のみ
近縁疾患との関係・移行
疫学
- 欧米よりアジアにて多い
- 日本では、フィッシャー症候群例とギラン・バレー症候群例の和を分母とするとフィッシャー症候群例は全体の26%ないし34%といわれている。
- ギランバレー症候群は年間10万人中1.5人発症すると言われているため、日本でのフィッシャー症候群は0.5%と推測されている。日本の50例における男女比は34:16と男性優位であり、平均発症年齢は40歳であったが、発症年齢は13-78歳とあらゆる年代に渡っており、地域差は認めなかった。
病因
先行感染
- 平均潜伏期間(感染症状から神経症状発現まで):7日
- 80-90%で先行感染が認められ、80%が上気道炎、4-25%で胃腸炎が先行する。
論文報告
|
n
|
先行感染
|
上気道炎
|
胃腸炎
|
発熱
|
2001
|
50
|
0.8
|
0.76
|
0.04
|
0.02
|
2008
|
466
|
|
0.76
|
0.25
|
0.02
|
病原体
- 上気道炎:インフルエンザ桿菌
- 胃腸炎 :カンピロバクター
病態生理
- 自己抗体であるGQ1b IgG抗体がGQ1bの発現が高い眼神経運動、後根神経節大型感覚ニューロン、筋紡錘を障害するとの仮説が有力視されている。
症状
- 初発症状:複視(外眼筋麻痺)、ふらつき(運動失調)
その他の症状
- 瞳孔異常 42%
- 眼瞼下垂 58%
- 顔面神経麻痺 32%
- 球麻痺 26%
- 四肢しびれ・異常感覚 24%
- 表在覚低下 20%
- 深部覚・振動覚低下 18%
経過
- 典型的フィッシャー症候群の自然経過での回復は良好である。
- フィッシャー症候群患者50例の解析報告では、運動失調は発症から平均1ヶ月で、外眼筋麻痺は平均3ヶ月で消失した。発症から6ヶ月の段階で運動失調・外眼筋麻痺は48例で消失しており、2例で軽度の福祉が残存していた。
- フィッシャー症候群92名の解析では免疫グロブリン治療群、血液浄化療法群、免疫治療を受けなかった群では、外眼筋麻痺、運動失調の改善・消失時期を比較したところ優位さは認められなかった。
- 発症から6ヶ月の時点で眼球運動障害、運動失調はほとんどの例で消失。
- 再発例の報告はすくなからずある。
鑑別診断
- 急性の外眼筋麻痺
- 運動失調をきたす脳幹・あるいは多発脳神経を侵す疾患が鑑別となる。
国試
参考
- 1. 診断基準? Diagnostic and classification criteria for the Guillain-Barré syndrome.
- Van der Meché FG, Van Doorn PA, Meulstee J, Jennekens FG; GBS-consensus group of the Dutch Neuromuscular Research Support Centre.SourceUniversity Hospital, Rotterdam, The Netherlands. vandermeche@neur.azr.nl
- European neurology.Eur Neurol.2001;45(3):133-9.
- BACKGROUND: Diagnostic criteria for the Guillain-Barré syndrome (GBS) have been available since 1978. Since then, several variants have been described. More recently, a distinction has been made between pure motor forms, severe sensory forms, primary axonal and primary demyelinating varieties. Asso
- PMID 11306855
- 2.Fisher syndrome: clinical features, immunopathogenesis and management.
- Mori M, Kuwabara S, Yuki N.SourceDepartment of Neurology, Graduate School of Medicine, Chiba University, 1-8-1 Inohana, Chuo-ku, Chiba 260-8670, Japan. morim@olive.ocn.ne.jp
- Expert review of neurotherapeutics.Expert Rev Neurother.2012 Jan;12(1):39-51. doi: 10.1586/ern.11.182.
- Since Miller Fisher's first report in 1956, evidence has accumulated about clinical and laboratory features, immunopathogenesis and treatment of Fisher syndrome (FS). Our literature review revealed the nature of FS. It has relatively uniform clinical and laboratory features. Ophthalmoplegia, ataxia
- PMID 22149656
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/09/01 15:46:09」(JST)
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フィッシャー症候群(フィッシャーしょうこうぐん、英語: Fisher's syndrome)は、ギラン・バレー症候群の亜型とされる疾患である。急性・単相性の疾患であり、先行感染や髄液蛋白細胞解離を伴うという点ではギラン・バレー症候群と類似しているが、上肢の運動麻痺はないという点が異なる。ランビエ絞輪周囲の髄鞘に局在するガングリオシドGQ1bに対する抗体により動眼神経・滑車神経・外転神経が障害を受け、外眼筋の麻痺を示す。
ギラン・バレー症候群と同等の治療を行うこともあるが、経過観察で自然治癒することも多い。
目次
- 1 歴史
- 2 ビッカースタッフ型脳幹脳炎との関係
- 3 脚注
- 4 参考文献
- 5 外部リンク
歴史
1956年フィッシャー(Fisher)が急性発症の外眼筋麻痺と運動失調、腱反射消失を主徴とし、単相性の経過をたどる3例を報告した。責任病巣に関しては2010年現在も未だに論争中である。
ビッカースタッフ型脳幹脳炎との関係
1951年ビッカースタッフ(Bickersttaff)が Mesencephalitis and rhombencephalitis と題して3例、次いで1957年に Brainstem encephalitis として5例を加えた8例の報告を行った。カンピロバクターやインフルエンザ桿菌による先行感染後、外眼筋麻痺、失調、意識障害などを呈し、脳波でも全般性徐波が認められ、単相性の予後良好な疾患でありビッカースタッフ型脳幹脳炎と言われるようになった。ギラン・バレー症候群と同様の分子相同性疾患と考えられており、責任抗体も抗GQ1b抗体でありフィッシャー症候群に類似する。脳波、体性感覚誘発電位など電気生理学的検査や病的反射陽性例や深部腱反射亢進といった臨床症状で中枢神経系の障害が認められる点がフィッシャー症候群と異なる。ギラン・バレー症候群を合併し、四肢の筋力低下も伴うことがある。しかし、合併例と非合併例で臨床所見に有意差が認められない。ビッカースタッフ型脳幹脳炎とフィッシャー症候群を連続する疾患単位ととらえて Fisher-Bicerstaff 症候群と呼称したり、anti-GQ1b IgG antibody syndorome としてとらえる動きもある。anti-GQ1b IgG antibody syndorome にはPCB[1]も含まれる。重要な鑑別疾患に治療可能なウェルニッケ脳症がある。
脚注
- ^ 英: pharygeal-cervical-brashial weakness
参考文献
- Fisher syndrome and Bickerstaff brainstem encephalitis (Fisher-Bickerstaff syndrome).、Yuki N. J Neuroimmunol誌 2009年10月30日;215(1-2):1-9. Epub 2009 Jul 29. Review.PMID 19643503
- Clinical features, pathogenesis, and treatment of Guillain-Barré syndrome.、van Doorn PA, Ruts L, Jacobs BC. Lancet Neurol誌 2008年10月;7(10):939-50. Review.PMID 18848313
- Clinical and immunological spectrum of the Miller Fisher syndrome.、Lo YL、Muscle Nerve誌 2007年11月;36(5):615-27. Review.PMID 17657801
外部リンク
UpToDate Contents
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Japanese Journal
- 末梢神経疾患の治療--ギラン・バレー症候群,フィッシャー症候群 (神経内科の病気のすべて) -- (末梢神経疾患・筋疾患)
- カンピロバクター感染とギラン・バレー症候群,フィッシャー症候群 (今月の主題 食中毒)
Related Links
- フィッシャー症候群とは. 目が動かなくなり、身体がふらついてうまく歩けなくなる病気で、 多くは風邪をひいたり下痢をしたりした後数日して急に症状がでてきます。ギラン・バレー 症候群とよく似た病気と考えられています。
- フィッシャー症候群は外眼筋麻痺・運動失調・腱反射の低下ないし消失を3徴とする疾患 である。多くは呼吸器系あるいは消化器系などの感染に引き続いて発症し、急性期を すぎると病勢は鎮静化して回復に向うという単相性の予後良好な経過をとり、髄液検査 で ...
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★リンクテーブル★
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- 16歳の女子。複視と歩行時のふらつきとを主訴に来院した。2週前に咽頭痛、全身倦怠感および微熱を生じたが数日で軽快した。昨日、起床時に物が二重に見えることと歩行時のふらつきとを自覚し、徐々に症状が増悪してきた。水平方向の眼球運動制限を認め、左方視で複視が出現する。四肢で筋力は正常であるが、腱反射が消失している。血液検査では異常を認めない。脳脊髄液検査では細胞数は正常、蛋白は軽度の上昇を認める。
- 適切な治療はどれか。2つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [100H033]←[国試_100]→[100H035]
[★]
[★]
- 英
- Guillain-Barré syndrome Guillain-Barre syndrome GBS
- 同
- (国試)Guillain-Barre症候群
- 急性炎症性脱髄性多発神経根ニューロパチー acute inflammatory demyelinating polyradiculoneuropathy AIDP
- 感染性多発神経炎 infective polyneuritis infectious polyneuritis、急性炎症性多発ニューロパシー acute inflammatory polyneuropathy
- 関
- 免疫介在性ニューロパチー
病型
- SPE.645
- ギラン・バレー症候群:経過中に蛋白細胞解離が見られたもの
症状
- 知覚異常:(初発)腰痛、手足のしびれ感。感覚障害は軽度にとどまる
- 運動神経:下肢末梢から左右対称性、上行性の弛緩麻痺。腱反射消失
- 自律神経:自律神経の障害による症状(不整脈、洞性頻脈、血圧の変動、発汗異常)が見られることがある。
検査
-
- 抗原:GM1、GQ1b(→Fisher症候群と関連)、GD1a、GalNAc-GD1a、ガラクトセレブロシド
- 蛋白細胞解離。発症から1週間後の患者の80-90%の患者で見られる。近位神経根のレベルで血液神経関門の透過性が亢進したことによるのかもしれない(increased permeability of the blood-nerve-barrier at the level of the proximal nerve roots)。(参考1)
治療
- 免疫吸着療法(プラスマフェレーシス):侵襲の大きさから大量ガンマグロブリン静注療法が行われることが多いらしい。
- 大量ガンマグロブリン静注療法(高ガンマグロブリン大量静注法)
予後
- 予後良好:2週間程度で極期に達し徐々に回復する。しかしながら約5%の例で死亡、約10%の例では重篤な機能障害を残す。(IMD)
関連疾患
参考
- 1. [charged] Clinical features and diagnosis of Guillain-Barré syndrome in adults - uptodate [1]
- 2. [charged] Treatment and prognosis of Guillain-Barré syndrome in adults - uptodate [2]
国試
[★]
- 英
- total ophthalmoplegia
- ラ
- ophthalmoplegia totalis
- SOP.253
|
動眼神経
|
滑車神経
|
外転神経
|
視神経
|
三叉神経第1枝
|
三叉神経第2枝
|
三叉神経第3枝
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その他症状
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原因
|
CN III
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CN IV
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CN VI
|
CN II
|
CN V1
|
CN V2
|
CN V3
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眼窩先端部症候群
|
○
|
○
|
○
|
○
|
○
|
○
|
○?
|
|
|
上眼窩裂症候群
|
|
○
|
○
|
○
|
○
|
|
|
|
|
海綿静脈洞症候群
|
|
○
|
○
|
○
|
○
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○
|
|
|
|
トロサ・ハント症候群
|
|
○
|
○
|
○
|
|
|
|
疼痛
|
眼窩先端部の炎症性肉芽腫
|
フィッシャー症候群
|
|
○
|
○
|
○
|
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|
小脳失調、深部腱反射消失
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細菌感染後の自己免疫的機序
|
[★]
- 英
- immune-mediated neuropathies, immune-mediated neuropathy
概念
- 末梢神経の構成成分に対する自己免疫によるニューロパチー
急性経過
慢性経過
[★]
- 関
- ガングリオシド、シアロ糖脂質、フィッシャー症候群
[★]
フィッシャー症候群
[★]
- 英
- syndrome, symptom-complex
- 同
- 症状群
- 関
- [[]]
- 成因や病理学的所見からではなく、複数の症候の組み合わせによって診断される診断名あるいは疾患。
内分泌
先天的代謝異常
高プロラクチン血症
- 分娩後の視床下部障害によるプロラクチン分泌抑制因子の分泌抑制のため、高プロラクチン血症を呈する。
- 分娩に関係なくプロラクチン分泌抑制因子の分泌抑制をきたし、高プロラクチン血症を呈する。
性腺機能低下
- 嗅覚の低下・脱出、低ゴナドトロピン性性腺機能低下症
- 肥満、網膜色素変性症、知能低下、低ゴナドトロピン性性器発育不全、多指症、低身長
性早熟
- 思春期早発症、多発性線維性骨異形成症、皮膚色素沈着
- 女性型の肥満、性器の発育障害の2主徴を示し、視床下部に器質的障害をもつ疾患群。
脳神経外科・神経内科
[★]
- 英
- group
- 関
- グループ、集団、分類、群れ、基、グループ化
[★]
- 英
- symptom and sign
- 関
- 症状, 徴候 兆候