出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2016/01/20 04:14:32」(JST)
進行性多巣性白質脳症(しんこうせいたそうせいはくしつのうしょう,progressive multifocal leukoencephalopathy; PML)とは、免疫不全患者等においてJCウイルスによって発症する脱髄性疾患である。特定疾患に指定されている。
ポリオーマウイルス科ポリオーマウイルス属に分類されるJCウイルスが原因となる。JCウイルスは成人の約70%に不顕性感染しており、普段は何の症状も起こさないが、AIDSや臓器移植等において免疫不全となることで発症する。JCウイルスは脳のオリゴデンドロサイトにおいて増殖し、細胞溶解を経て脱髄を引き起こす。ベースに細胞性免疫の抑制があるため炎症が認められず脳症となると考えられている。かつては極めて稀な疾患であったがHIV感染の増加とともに頻度が上昇している。実にAIDSの患者の5%にPMLが発症するという報告も存在する。JCウイルスが小児期に不顕性感染を起こしており、それが活性化して発症するという意味では麻疹後の亜急性硬化性全脳炎(SSPE)と同様に遅発性ウイルス疾患である。
人口100万対3程度の発症率である。以前は100万対1程度であったが、AIDSの増加に伴いPMLも増加しつつある。
特異的な症状はなく、大脳が侵されることで起こる一般的な症状を呈する。実に多彩であり、複数の症状が同時に現れることも多い。これは病変が大脳白質部分全てに起こり得るためである。大脳の症状が圧倒的に多いが時に小脳白質にも病変を生ずることがあり、脳MRIによる診断は不可欠である。 初期症状として、半盲(片方の視野を認識しない。失明とは異なる)などの視覚障害、片麻痺や精緻運動障害(字が書けない、紐を結べない、細かな動作が出来ない)といった運動麻痺、失語、失認、けいれん発作、見当識能力の低下などが多いとされている。
プリオン病及び遅発性ウイルス感染症に関する研究班により診断基準が定められている。免疫不全患者が進行性の症状を呈したときに疑う。MRIで脱髄病変、髄液でJCウイルスDNAが認められればほぼ確定となる。
AIDS痴呆症候群との鑑別が重要。 臨床症状だけで見ると認知症(痴呆症)との鑑別は困難である場合が多い。従ってHIV感染者や高齢の免疫抑制剤使用患者にあっては、脳MRIによる診断を速やかに行うことが重要である。 進行が極めて早く病変は不可逆的であるので、可能な限り早期に鑑別診断がなされなければならない。
有効な治療薬はない。治療は免疫抑制剤や抗癌剤などPMLを誘発する薬剤を速やかに中止することであり、原疾患がAIDSの場合はHAART療法を開始することである。抗ウイルス薬の投与やJCVが5HT2Aを介することから抗精神病薬の投与が追加されることもある。抗精神病薬の投与による改善効果に関しては議論中である。
2009年に米国の研究者によって抗マラリア薬メフロキンにJCV抑制効果があることが発表された。これを受けて日本においても「がん・感染症センター都立駒込病院」など一部の医療機関に於いて治験的使用が開始され、臨床的に有効である(病変の進行停止・JCVの検出限界値以下への抑制)との結果を得ているが、2010年時点統一的な治療法の確立には至っていないのが現状である。
進行が極めて早いため、発症後速やかに免疫機能の回復が実現されないと生命予後(生存確率)、生存予後(生存後のQOL)ともに成績は非常に悪い。発症後数ヶ月で無動性無言症を経て植物状態となり、多くの場合1年以内に死亡する。 仮に一命を取り留めたとしても白質層の破壊が、早期の段階で深刻になりやすく重篤な後遺障害が残る。
ヘマトキシリンに濃染する腫大した核を有する細胞を病巣に認めかつ炎症所見がない(脳症)ことを特徴とする。
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など
アルツハイマー病 | 脳血管性認知症 | ピック病 | |
認知症 | 全般的認知症 | まだら認知症 | アルツハイマー病に類似。 早期には人格、注意力が障害され、 次第に記憶力も障害される。 |
人格 | 晩期に人格障害 | 保たれる | 早期に人格障害 |
病識 | なし(初期にはあり) | あり | なし |
経過 | 進行性 | 動揺性、階段状に進行性 | 進行性 |
基礎疾患 | 特になし | 高血圧、糖尿病、心疾患 | 特になし |
画像検査 | 対称性の脳溝開大 | 脳実質内に脳梗塞巣 | 側頭葉と前頭葉の萎縮 |
機能画像検査 | 側頭葉、頭頂葉での代謝低下 | 前頭葉を中心とした多発性の脳代謝低下 | 前頭葉、側頭葉での代謝低下 |
相談体制 | 保健所 | 地域保健法が定める事業内容「母性及び乳幼児並びに老人の保健に関する事項」による老人精神衛生相談事業 | |
高齢者総合相談センター | 厚労省が都道府県レベルに設置している高齢者に関する相談窓口 | ||
在宅介護支援センター | 老人福祉法により市町村が実施の主体となっている施設であり、在宅の要介護高齢者やその介護者の要望に対応した適切なサービスが円滑に提供されるように市町村や関連機関との連絡・調節などを行っている。 | ||
認知症疾患医療センター | |||
在宅対策 | 介護 | 訪問介護 | ホームヘルプサービス |
通所介護 | デイサービス | ||
短期入所生活介護 | ショートステイ | ||
認知症老人向け毎日通所型デイサービスセンター | |||
認知症対応型老人共同生活介護 | グループホーム | ||
老人認知症疾患デイ・ケア施設 | |||
福祉 | 訪問指導 | ||
施設対策 | 介護 | 介護療養型医療施設 | |
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