出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/08/05 18:09:19」(JST)
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ニコチン | |
---|---|
識別情報 | |
CAS登録番号 | 54-11-5 |
KEGG | D03365 |
特性 | |
化学式 | C10H14N2 |
モル質量 | 162.23 |
外観 | 無色油状液体 |
密度 | 1.01, 液体 |
融点 |
−80 |
沸点 |
247 (分解) |
水への溶解度 | 混和する |
粘度 | 2.7 mPa·s (25 ℃) |
出典 | |
ICSC | |
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。 |
ニコチン (nicotine) は、アルカロイドの一種の有毒物質である。揮発性がある無色の油状液体で、化学式は C10H14N2。主にタバコ属(ニコチアナ)の葉に含まれる。
天然由来の物質であり、即効性の非常に強い神経毒性を持つ。半数致死量は人で0.5mg~1.0mg/kgと猛毒で、その毒性は青酸カリの倍以上に匹敵する。人体に対して神経毒としての有害性は持ち、ニコチン自体に発癌性はないが代謝物であるニトロソアミンに発癌性が確認されている[1]。
複数回の摂取によりニコチン依存症を発症させる。WHO世界保健機関は「ニコチンはヘロインやコカインと同程度に高い依存性がある」と発表している[2]。 しかし日本の柳田知司はアカゲザルの実験を元に、「ニコチンは依存性薬物ではあるものの、身体的な依存性は有ったとしても非常に弱いもので精神依存の増強は認められず、その精神依存性は他の依存性薬物と共通する特性が見られるものの主要な依存性薬物と比較して明らかに弱いこと、また精神毒性(例えば、ニコチンの摂取は自動車の運転などの作業に悪影響を及ぼさない)も依存性薬物の中では唯一、これが認められない」と発表している[3]。柳田知司の実験結果は日本たばこ産業の公式サイトに採用され掲載されている。
ほぼ全ての生物に対して毒性を発揮するため、殺虫などの用途で使用されている。しかし人間に対しても毒性を発揮するため、近年[いつ?]は昆虫などに対してのみ選択的に毒性を発揮するよう改良されたネオニコチノイドなどが開発され使用されるようになった。
「ニコチン」の名前は1550年にタバコ種をパリに持ち帰ったフランスの駐ポルトガル大使ジャン・ニコ(Jean Nicot, 1530年 – 1600年)に由来する。
トリプトファンを出発物質としてキヌレニン経路の数段階の合成経路を経てニコチン酸がまず出来上がる。そして、ニコチン酸にオルニチン由来のピロリジン環が付加することでニコチンが合成される。また、ニコチン酸にリシン由来のピペリジン環が付加する事で、類縁化合物のアナバシン (anabasine) が合成される。
なお、ニコチンはタバコ葉内にリンゴ酸塩、またはクエン酸塩として存在する。ニコチンの類縁化合物はアナバシンを含めて30種類以上あり、ニコチン系アルカロイドと総称されている。
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ニコチンは主に中枢神経および末梢に存在するニコチン性アセチルコリン受容体 (nAChR) に作用することで薬理作用を顕すと考えられている。nAChRは中枢神経の広範囲に分布しているため、ニコチンは脳の広い範囲に影響を与える。依存性薬物の中で唯一、精神毒性がない[4]。
そのうち、特に依存性の形成に関与する部位として中脳辺縁系のドーパミン神経系が挙げられる。中脳の腹側被蓋野、側座核などの nAChR にニコチンが結合すると、直接的あるいはグルタミン酸の放出を介してドーパミン系神経の脱抑制を起こす。このドーパミン神経系は「報酬系回路」として知られており、快の感覚を個体に与えるため、強化行動をひき起こす。この中脳辺縁系のドーパミン神経の興奮を介した依存性の形成メカニズムは他の依存性薬物(コカイン、ヘロイン、アンフェタミンなど)と同じとされる[要出典]が半数致死量の低さと他細胞系への薬理作用の点から[要出典]、麻薬とはされておらず、毒物に指定されている。末梢においては、中枢神経からの間接的な作用と、末梢の nAChR に作用することで毛細血管を収縮させ血圧を上昇させるが、ヒトにニコチン 1.5 mg/分を5分間静注すると脳血流が増すという報告[5]もあり、縮瞳・悪心・嘔吐・下痢などをひきおこす。中毒性があり、通常量でも頭痛・不眠・苛立ちを感じるなどの症状、過量投与では嘔吐・振戦・痙攣・死亡を起こす[要出典]。ニコチンは体内で急速に代謝され、コチニンとなって主に尿中から排泄される。ニコチンの血中半減期が20~30分であるのに対し、コチニンの血中半減期は30時間以上と長い。この長い半減期の差を利用して、喫煙(受動喫煙含む)者・非喫煙者の判別テストなどが行われる。
ADHDの認知障害を軽減したとする報告がある[6]。
強迫性障害を改善したとの報告がある[7]。
誤食・誤飲によるニコチン中毒患者の多くは乳幼児である。誤食では、胃液の酸性のためにニコチンの溶出が悪く吸収は遅い。しかし、すでに水に溶けたニコチンは、吸収が早く症状も重いとされている。
乳幼児ではニコチン量で10–20mg(タバコ0.5–1本)、成人は40–60mg(2–3本)を、直接、溶液で飲下した場合に急性中毒に達する(急性致死量)[8][9]。
毒物及び劇物取締法上での毒物は誤飲した場合の致死量が2g程度以下のものとされ、薬事法上の毒薬は経口投与で体重1kgあたり30mg以下、皮下注射で体重1kgあたり20mg以下のものをいう。このため、ニコチンは毒物及び劇物取締法上での毒物であり、薬事法上の毒薬ではないが、急性中毒による死亡リスクをとらえ、最小中毒量を最小致死量の目安とすれば、いずれの致死量に関する条件にも合致する。
また、タバコや禁煙補助薬はニコチンを含み、一般人でも簡単に購買可能であり、子供・老人による誤食事故が問題になることがある。
軽症では嘔気やめまい、脈拍上昇・呼吸促迫などの刺激・精神の脱抑制や興奮症状がみられる。重くなると、徐脈・痙攣・意識障害・呼吸麻痺などの抑制症状が見られる。嘔吐は 10~60分以内、中毒症状は2~4時間の間にほとんど現われ、誤食による中毒症状の出現頻度は、軽い症状も含めて14%程度とされる[8]。
低カリウム血症、低血糖、白血球増加など。重症では、ショックに伴う臓器障害を起こしうるので、肝機能・腎機能・凝固線溶系の異常が見られることがある。動脈血ガス分析では、呼吸麻痺による低酸素血症や高 CO2 血症がみられる。
タバコを飲み込んだ場合は、他物の誤食と異なり、水やミルクを飲ませた後に吐かせる方法は、痙攣を突発的に誘発することがあるので勧められないが、ニコチン自身の作用によって自然に嘔吐することも多い。摂取1時間以内で、重い症状を示したり致死量を摂取していると思われる場合のみ胃洗浄をおこない、重症なら活性炭・下剤で排泄を促進する。 徐脈に対してはアトロピンを投与する。摂取後4時間経っても症状が出ない場合は、治療は不要である。
また、たばこ1本でニコチン量20mgとすれば、胃酸中では一時間に2.4mg(0.2%/分)人体に吸収されること[8]から、無理に吐かせようと水などを多く飲ませる処置が、胃酸を薄めニコチンの吸収を速めて重篤化を招くことを重くみて、米国では、乳幼児のタバコの中毒量はタバコ2本(吸いがら6本)以上[8]とされ、それ以下では処置しないと報告されており、摂取後4時間および24時間までの経過観察を、電話などで丁寧におこなう方法がとられる(旅行などの際には、注意すること)。
この節はその主題が日本に置かれた記述になっており、世界的観点からの説明がされていない可能性があります。ノートでの議論と記事の発展への協力をお願いします。(2013年8月) |
日本では、毒物および劇物取締法に毒物として指定されている。
ニコチンを硝酸などにより酸化すると、ニコチン酸が得られる[10]。ニコチン酸はニコチン酸アミドとともにナイアシンの成分として知られる。
ウィキメディア・コモンズには、ニコチンに関連するカテゴリがあります。 |
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D
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抗利尿ホルモン : 約 57,000 件 バソプレシン : 約 19,000 件 バゾプレシン : 約 9,010 件 バソプレッシン : 約 7,590 件 バゾプレッシン : 約 4,160 件
en
arginine vasopressin : 約 7,090 件 vasopressin : 約 9,170 件 antidiuretic hormone : 約 7,410 件
抗利尿作用 | 集合管上皮細胞 | V2R |
血管平滑筋収縮(昇圧作用) | 血管内皮 | V1R |
分泌促進 | 分泌抑制 | |
血漿浸透圧・循環血液量 | 出血→血圧低下、循環血液量減少 | 水負荷→血漿浸透圧低下、循環血液量増加 |
水制限→循環血液量減少、血漿浸透圧上昇 | 等張液負荷→循環血液量増加 | |
高張食塩水負荷→血漿浸透圧上昇 | ||
薬物 | プロスタグランジンE2 | フェニトイン |
モルフィン | アルコール | |
ニコチン | 心房性Na利尿ペプチド | |
β受容体作動薬 | α受容体作動薬 | |
アンジオテンシンII | ||
麻酔薬 | ||
低酸素症 | ||
高炭酸ガス血症 | ||
ビンクリスチン | ||
シクロホスファミド | ||
クロフィブレート | ||
カルバマゼピン | ||
バルビツール酸系薬 | ||
アセチルコリン | ||
ヒスタミン | ||
メトクロプラミド | ||
環境など | 立位・失神、疼痛、陽圧呼吸、遠心力 | 寒冷、陰圧呼吸、水中、臥位 |
精神依存 | 身体依存 | |
コカイン、アンフェタミン類(アンフェタミン、メチルフェタミン)、大麻 | ○ | |
麻薬(モルヒネ、ヘロイン、コデイン)、バルビツール酸系(フェノバルビタール、チオペンタール)、アルコール | ○ | ○ |
受容体 | サブユニット | 局在 | 透過するイオン | 作動薬 | 阻害薬 | |
NM受容体 | 胎児 | (α1)2, β1, γ, δ | 骨格筋の神経筋接合部 | Na+, K+ | アセチルコリン ニコチン スキサメトニウム デカメトニウム |
ベクロニウム パンクロニウム アトラクリニウム d-ツボクラリン |
成人 | (α1)2, β1, ε, δ | |||||
NN受容体 | (α3)2, (β4)3 | 自律神経節 副腎髄質 |
Na+, K+ | アセチルコリン ニコチン epibatidine dimethylphenylpiperazinium |
triethaphan mecamylamine | |
CNS | (α4)2, (β4)3 | postjunctional prejunctional |
Na+, K+ | cytisine, epibatidine anatoxin A |
mecamylamine dihydro-β-erythrodine erysodine lophotoxin | |
(α7)5 | postsynaptic presynaptic |
Ca2+ | anatoxin A | methyllycaconitine α-bungarotoxin α-conotoxin IMI |
アセチルコリン受容体 | 作動薬 | 遮断薬 | 存在部位 | 作用 | ||
ニコチン性受容体 | イオンチャネル型受容体 | NN | ジメチルフェニルピペラジニウム | トリメタファン | 自律神経節 | 節後細胞脱分極(fast EPSP発生) |
ニコチン | ヘキサメソニウム | 副腎髄質 | カテコールアミン分泌促進 | |||
ムスカリン性受容体 | Gタンパク共役型受容体 | M1 | オキソトレモリン | ピレンゼピン | 自律神経節 | 節後細胞脱分極(slow EPSP発生) |
ムスカリン | アトロピン | |||||
M2 | ムスカリン | トリピトラミン | 心臓 | 心拍数,伝導速度,心房収縮力低下 | ||
アトロピン | ||||||
M3 | ムスカリン | ダリフェナシン | 平滑筋 | 収縮 | ||
アトロピン | 分泌腺 | 分泌促進 |
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