- 英
- fingolimod
- 化
- フィンゴリモド塩酸塩 fingolimod hydrochloride
- 商
- イムセラ、ジレニア
- 関
- 多発性硬化症
- 他に分類されない代謝性医薬品
参考
- http://www.mt-pharma.co.jp/release/nr/2011/pdf/MTPC111125_1.pdf
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フィンゴリモド
|
IUPAC命名法による物質名 |
IUPAC名
2-amino-2-[2-(4-octylphenyl)ethyl]propane-1,3-diol
|
臨床データ |
販売名 |
Gilenya |
Drugs.com |
monograph |
ライセンス |
EMA:リンク、US FDA:リンク |
胎児危険度分類 |
|
法的規制 |
- AU: 処方箋薬(S4)
- CA: ℞-only
- UK: 処方箋のみ (POM)
- US: ℞-only
|
投与方法 |
Oral |
識別 |
CAS番号
(MeSH) |
162359-55-9 |
ATCコード |
L04AA27 |
PubChem |
CID: 107970 |
IUPHAR/BPS |
2407 |
ChemSpider |
97087 |
UNII |
3QN8BYN5QF |
ChEBI |
CHEBI:63115 |
ChEMBL |
CHEMBL314854 |
化学的データ |
化学式 |
C19H33NO2 |
分子量 |
307.471 g/mol |
SMILES
-
OCC(N)(CCc1ccc(cc1)CCCCCCCC)CO
|
InChI
-
InChI=1S/C19H33NO2/c1-2-3-4-5-6-7-8-17-9-11-18(12-10-17)13-14-19(20,15-21)16-22/h9-12,21-22H,2-8,13-16,20H2,1H3
-
Key:KKGQTZUTZRNORY-UHFFFAOYSA-N
|
フィンゴリモド(Fingolimod、開発コード:FTY720)は免疫抑制剤で、リンパ球がリンパ節から体液中に出るのを妨げて免疫を抑制する。系統名は2-アミノ-2-[2-(4-オクチルフェニル)エチル]プロパン-1,3-ジオール。CAS登録番号[162359-55-9]。
京都大学の藤多哲朗教授と台糖、吉富製薬(FTYの名称は三者にちなむ)の共同研究でIsaria sinclairii (冬虫夏草菌の一種)に含まれる成分ミリオシン(Myriocin、ISP-1)に免疫抑制効果が見出されたことから、この化合物の構造に基づいて新たに合成され、その後三菱ウェルファーマ(現・田辺三菱製薬)等で開発が行われた。
腎移植および多発性硬化症に対する治験が行われ、現在は多発性硬化症治療薬として発売されている。アメリカ合衆国では2010年9月、日本では2011年11月28日に発売された[1]。
商品名はイムセラ®(田辺三菱製薬)、ジレニア®(ノバルティスファーマ)。
従来の多発性硬化症治療薬のインターフェロンβ-1a(筋肉内注射)とは異なり、1日1回、1カプセルを経口投与する。
目次
- 1 効能・効果
- 2 作用機序
- 3 警告
- 4 禁忌
- 5 副作用
- 6 文献
- 7 外部リンク
効能・効果
「多発性硬化症の再発予防及び身体的障害の進行抑制」について認可されているが、偽薬対照第III相比較臨床試験の結果、身体的障害の進行抑制については効果が認められなかった[2]。
作用機序
スフィンゴシンのアナログであり、スフィンゴシンキナーゼによりリン酸化され[3][4]、スフィンゴシン-1-リン酸受容体の1つであるS1PR1に結合してアゴニストとして働くと考えられている[5]。またそれとは別に、カンナビノイド受容体のアンタゴニスト[6]、ホスホリパーゼA2(cPLA2)阻害剤[7]、またはセラミド合成酵素阻害剤[8]であるとの報告もある。
その他の自己免疫疾患への適用も考えられている[9]。
警告
投与開始後数日間、心拍数が大きく低下する事が有る[10][11]。
禁忌
クラスIa(キニジン、プロカインアミド等)又はクラスIII(アミオダロン、ソタロール等)の抗不整脈剤を投与中の患者には禁忌である[10][11]。また、重篤な感染症の有る患者に用いてはならない。
副作用
心拍数の低下(徐脈もしくは徐脈性不整脈)、感染症、黄斑浮腫、呼吸障害、肝機能障害など[12]。
重大な副作用は、感染症(細菌、真菌、ウイルス等 45.3%)、徐脈性不整脈(徐脈:11.2%、房室ブロック(第I度から第II度:5.0%、第III度:0.04%)等)、黄斑浮腫(0.6%)、悪性リンパ腫、可逆性後白質脳症症候群、進行性多巣性白質脳症(PML)、虚血性及び出血性脳卒中、末梢動脈閉塞性疾患(0.04%)[10][11]。(頻度未記載は頻度不明)
文献
- ^ 田辺三菱製薬とノバルティスファーマ、多発性硬化症における経口治療薬「フィンゴリモド」を発売、患者の負担軽減に期待、マイライフ手帳@ニュース、2011年12月28日(2012年4月8日閲覧)
- ^ Lublin F, Miller DH, Freedman MS, Cree BA, Wolinsky JS, Weiner H et al. (2016). “Oral fingolimod in primary progressive multiple sclerosis (INFORMS): a phase 3, randomised, double-blind, placebo-controlled trial.”. Lancet 387 (10023): 1075-84. doi:10.1016/S0140-6736(15)01314-8. PMID 26827074. http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(15)01314-8/abstract.
- ^ Paugh SW, Payne SG, Barbour SE, Milstien S, Spiegel S (2003). “The immunosuppressant FTY720 is phosphorylated by sphingosine kinase type 2”. FEBS Lett 554 (1-2): 189-93. doi:10.1016/S0014-5793(03)01168-2. PMID 14596938.
- ^ Billich A, Bornancin F, Dévay P, Mechtcheriakova D, Urtz N, Baumruker T (2003). “Phosphorylation of the immunomodulatory drug FTY720 by sphingosine kinases”. J Biol Chem 278 (48): 47408-15. doi:10.1074/jbc.M307687200. PMID 13129923. [1]
- ^ Hla T, Lee MJ, Ancellin N, Paik JH, Kluk MJ (2001). “Lysophospholipids--receptor revelations”. Science 294 (5548): 1875-8. doi:10.1126/science.1065323. PMID 11729304.
- ^ Paugh SW, Cassidy MP, He H, Milstien S, Sim-Selley LJ, Spiegel S, Selley DE (2006). “Sphingosine and its analog, the immunosuppressant 2-amino-2-(2-[4-octylphenyl]ethyl)-1,3-propanediol, interact with the CB1 cannabinoid receptor.”. Mol Pharmacol. 70: 41-50. PMID 16571654.
- ^ Payne SG, Oskeritzian CA, Griffiths R, Subramanian P, Barbour SE, Chalfant CE, Milstien S, Spiegel S. (2007). “The immunosuppressant drug FTY720 inhibits cytosolic phospholipase A2 independently of sphingosine-1-phosphate receptors.”. Blood 109: 1077-85. doi:10.1182/blood-2006-03-011437. PMID 17008548.
- ^ Berdyshev EV, Gorshkova I, Skobeleva A, Bittman R, Lu X, Dudek SM, Mirzapoiazova T, Garcia JG, Natarajan V. (2009). “FTY720 inhibits ceramide synthases and up-regulates dihydrosphingosine 1-phosphate formation in human lung endothelial cells.”. Journal of Biological Chemistry 284 (9): 5467-77. doi:10.1074/jbc.M805186200. PMID 19119142.
- ^ 千葉健治 (2009). “スフィンゴシン1-リン酸受容体調節薬,フィンゴリモド(FTY720)の自己免疫疾患治療への応用”. 薬学雑誌 129 (6): 655-65. [2]
- ^ a b c “イムセラ カプセル 0.5mg 添付文書” (2016年7月). 2016年7月6日閲覧。
- ^ a b c “ジレニアカプセル0.5mg 添付文書” (2016年7月). 2016年7月6日閲覧。
- ^ ノバルティスのフィンゴリモドをFDAが承認〜多発性硬化症の再発を有意に抑制し、身体障害の進行を遅らせる新しい第一選択薬〜、ノバルティスファーマ、2010年9月28日(2012年4月8日閲覧)
外部リンク
- 「ジレニア®」(フィンゴリモド)の使用経験が全世界で20,000患者年以上に - ノバルティスファーマ
- 冬虫夏草由来の画期的新薬がこん平さんを救う?ーFTY720 - 化学者のつぶやき
UpToDate Contents
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Japanese Journal
- 妊娠及びフィンゴリモド中断を契機に再発を繰り返し,原発性胆汁性胆管炎を合併した多発性硬化症の1例
- 莇 舜平,此枝 史恵,佐藤 秀樹
- 臨床神経学, 2021
- … sclerosis,以下MSと略記)で,29歳時にフィンゴリモドの内服を開始した後は再発なく経過していた.35歳時に妊娠が発覚し内服を中断したところ,妊娠中から再発を繰り返した.また,出産後に肝胆道系酵素上昇・好酸球増多を認め,抗ミトコンドリアM2抗体陽性から原発性胆汁性胆管炎(primary biliary cholangitis,以下PBCと略記)と診断された.妊娠やフィンゴリモド中断を契機に病勢が悪化し,PBCを発 …
- NAID 130007956109
- 肺動脈性肺高血圧症に対するフィンゴリモドの薬効評価
- 藤原 萌園,山村 彩,鈴木 良明,山村 寿男
- 日本薬理学会年会要旨集 93(0), 1-LBS-18, 2020
- <p>Pulmonary arterial hypertension (PAH) is pathophysiologically characterized by vasoconstriction and vascular remodeling of the pulmonary artery. Pulmonary vascular remodeling is mainly mediat …
- NAID 130007811194
- 各種難病の最新治療情報 日本人多発性硬化症患者のフィンゴリモド使用
Related Links
- フィンゴリモド製剤の効果と作用機序. リンパ球 の血液中への移出抑制作用などにより 髄鞘 の破壊などを抑える薬. 多発性硬化症 (MS)はリンパ球が中枢(脳や 脊髄 )へ移行し神経線維を覆う髄鞘が破壊させる 脱髄 により様々な障害があらわれる. リンパ球はS1P1受容体というものを介して血液中へ移出し中枢へ移行する. 本剤はS1P1受容体へ結合することで ...
- ゴリモド0.5mg群とフィンゴリモド1.25mg群で治療効果に有意差はなかったが,投与 中止につながる重症度の高い有害事象がフィンゴリモド0.5mg群5.6%,フィンゴリモ ド1.25mg群10.0%,IFNb-1a群3.7%と,フィンゴリモド1.25mg群で最も
- フィンゴリモドは,免疫抑制作用を有する真菌代謝物ミリオシンを化学修飾することにより1992年に初めて合成された化合物です。フィンゴリモド塩酸塩 (FTY720) は経口投与が可能な免疫調整剤で,リンパ系器官からのリンパ球漏出を阻害する
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Japan Pharmaceutical Reference
薬効分類名
販売名
ジレニアカプセル0.5mg
組成
成分・含量
- 1カプセル中フィンゴリモド塩酸塩0.56mg(フィンゴリモドとして0.5mg)
添加物
- D-マンニトール、ステアリン酸マグネシウム
カプセル本体にゼラチン、酸化チタン、三二酸化鉄含有
禁忌
- 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
- 重篤な感染症のある患者(「重要な基本的注意」の項参照)
- クラスIa(キニジン、プロカインアミド等)又はクラスIII(アミオダロン、ソタロール等)抗不整脈剤を投与中の患者(「相互作用」の項参照)
- 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人(「重要な基本的注意」、「妊婦、産婦、授乳婦等への投与」の項参照)
効能または効果
- 進行型多発性硬化症に対する本剤の有効性及び安全性は確立していない。
- 通常、成人にはフィンゴリモドとして1日1回0.5mgを経口投与する。
慎重投与
- 感染症のある患者又は感染症が疑われる患者〔感染症が増悪するおそれがある。〕(「重要な基本的注意」の項参照)
- 水痘又は帯状疱疹の既往歴がなく、予防接種を受けていない患者(「重要な基本的注意」の項参照)
- 易感染性の状態にある患者〔感染症を誘発するおそれがある。〕(「重要な基本的注意」の項参照)
- 第II度以上の房室ブロック、洞不全症候群、虚血性心疾患又はうっ血性心不全のある患者〔投与開始時に重篤な心リズム障害があらわれるおそれがある。〕(「重要な基本的注意」の項参照)
- 心拍数の低い患者、β遮断薬を投与中の患者、カルシウム拮抗薬を投与中の患者又は失神の既往歴のある患者〔投与開始時に本剤による心拍数低下の影響を受けやすい。〕(「重要な基本的注意」の項参照)
- 低カリウム血症、先天性QT延長症候群又はQT延長のある患者〔QT間隔を過度に延長させるおそれがある。〕(【薬物動態】の項参照)
- 高血圧の患者〔症状が増悪するおそれがある。〕(「重要な基本的注意」の項参照)
- 黄斑浮腫のある患者、糖尿病の患者又はブドウ膜炎の既往歴のある患者〔黄斑浮腫が増悪又は発現するおそれがある。〕(「重要な基本的注意」の項参照)
- 肝機能障害又はその既往歴のある患者〔血中濃度が上昇又は半減期が延長するおそれがある。また、症状が増悪するおそれがある。〕(「重要な基本的注意」、【薬物動態】の項参照)
- 重度の呼吸器疾患を有する患者〔症状が増悪するおそれがある。〕
- 高齢者(「高齢者への投与」の項参照)
重大な副作用
感染症注1)(45.3%)
- 細菌、真菌、ウイルス等による感染症があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には適切な処置を行うこと。なお、重篤な感染症が認められた場合には本剤を休薬又は中止し、適切な処置を行うこと。播種性帯状疱疹注2)、ヘルペス脳炎注2)の死亡例が報告されている。(「重要な基本的注意」の項参照)
徐脈性不整脈注1)(徐脈:11.2%、房室ブロック(第I度から第II度:5.0%、第III度注2):0.04%)等)
- 心拍数低下、房室伝導の遅延等の徐脈性不整脈があらわれ、血圧低下、浮動性めまい、疲労、動悸等の症状を伴うこともあるため、観察を十分に行い、異常が認められた場合には適切な処置を行うこと。(「重要な基本的注意」の項参照)
黄斑浮腫注1),注2)(0.6%)
- 黄斑浮腫があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には眼科学的検査を実施し、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。(「重要な基本的注意」の項参照)
悪性リンパ腫注1)(頻度不明)
- 悪性リンパ腫が認められたとの報告があるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には適切な処置を行うこと。
可逆性後白質脳症症候群注1),注2)(頻度不明)
- 可逆性後白質脳症症候群があらわれることがあるので、患者の状態を十分に観察し、頭痛、意識障害、痙攣、視力障害等の症状があらわれた場合は、MRI等による画像診断を行うとともに、投与を中止し、適切な処置を行うこと。
虚血性及び出血性脳卒中注1),注2)(頻度不明)
- 虚血性及び出血性脳卒中があらわれることがあるので、患者の状態を十分に観察し、頭痛、嘔気、麻痺症状、言語障害等の症状があらわれた場合は、MRI等による画像診断を行うとともに、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
末梢動脈閉塞性疾患注1),注2)(0.04%)
- 末梢動脈閉塞性疾患があらわれることがあるので、患者の状態を十分に観察し、四肢の疼痛、しびれ等の症状があらわれた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
*進行性多巣性白質脳症(PML)注1)(頻度不明)
- 進行性多巣性白質脳症(PML)があらわれることがあるので、本剤の投与中及び投与中止後は患者の状態を十分に観察すること。意識障害、認知障害、麻痺症状(片麻痺、四肢麻痺)、言語障害等の症状があらわれた場合は、MRIによる画像診断及び脳脊髄液検査を行うとともに、投与を中止し、適切な処置を行うこと。
薬効薬理
作用機序
- フィンゴリモドは生体内で活性代謝物であるリン酸化体に代謝される。21)リン酸化体は、スフィンゴシン1-リン酸(S1P)受容体1(S1P1受容体)と結合し、その内在化と分解を誘導することで、S1P1受容体の機能的アンタゴニストとして作用するため、リンパ節などの二次リンパ組織からのリンパ球の移出を抑制する。ミエリン抗原特異的なTh17細胞を含む自己反応性T細胞も、同様の機序でリンパ節からの移出が抑制されるため、中枢神経系組織への浸潤が抑制される。22,23)
一方、外来性病原体の感染に対し重要な役割を担うエフェクターメモリーT細胞は、二次リンパ組織を介する循環能を有さないため、フィンゴリモドはエフェクターメモリーT細胞に対しほとんど影響しない。24)
また、フィンゴリモドは、ヒト及び動物の中枢神経系(CNS)への移行性を有し、アストログリオーシス、脱髄、及び神経細胞の傷害を抑制することが明らかにされている。25)
実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)
- 多発性硬化症の動物モデルであるマウスの再発寛解型EAEにおいて、フィンゴリモドを治療的に経口投与したとき、神経症状の再発抑制作用を示した。26)
有効成分に関する理化学的知見
一般名
- フィンゴリモド塩酸塩
(Fingolimod Hydrochloride)
化学名
- 2-Amino-2-[2-(4-octylphenyl)ethyl]propane-1,3-diol monohydrochloride
分子式
分子量
性状
- 白色の粉末である。水、メタノール又はエタノールに溶けやすく、アセトニトリルにほとんど溶けない。
分配係数
★リンクテーブル★
[★]
- 関
- QT延長症候群、QT間隔
原因
- 洞結節機能不全
- 房室ブロック:2度房室ブロック、3度房室ブロックアンドロゲン遮断療法(GnRHアゴニスト/アンタゴニスト療法または両側性精巣摘除術)
- 利尿薬:低マグネシウム血症・低カリウム血症の誘発による
- 鎮吐薬: