出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/08/22 22:31:40」(JST)
プロラクチン (英:Prolactin, PRL) は、主に下垂体前葉のプロラクチン分泌細胞 (lactotroph) から分泌されるホルモンである。
主なプロラクチンは199個のアミノ酸から成り、分子量は23kDa。下垂体のプロラクチン産生細胞の他、胎盤や子宮など末梢組織でも産生される。成長ホルモンと構造が近く、同一の祖先遺伝子が重複し、機能が分化したと考えられている。ヒトの場合遺伝子は6番染色体に位置する。
人間の場合、成人男性は3.6~16.3ng/ml、成人女性は4.1~28.9ng/mlである。
子供が母親の胸に吸い付く搾乳刺激により、視床下部からのドーパミンなどのプロラクチン抑制因子 (PIF:prolactin inhibiting factor) の放出が抑えられ、またTRHなどのプロラクチン放出因子 (PRF:prolactin releasing factor) の放出が促進される。それによりプロラクチンの分泌が促進される。搾乳刺激後1~3分で血漿中の濃度があがり始め、10分でピークに達する。
ラットにおいてプロラクチンの血漿中濃度は、発情前期の夜から発情期の朝にかけて最も高くなる。発情前期にエストラジオールのシグナルが視床下部に伝わり下垂体でのプロラクチン分泌が促される。
交配刺激がおこるとその刺激が脳の視床下部に伝わり、ドーパミンの放出を抑える。それによりプロラクチン分泌が促進される。プロラクチン血漿濃度は分娩時に最も高くなる。
サーカディアンリズムに影響され、一日のうち睡眠中に血漿中濃度が最も高くなる。
その他、聴覚・嗅覚からの刺激、ストレスの影響により分泌が促される。
プロラクチン受容体は、普段は単量体で存在しJak2というチロシンキナーゼと結合している。受容体がプロラクチンと結合すると二量体化し、ホモダイマーを形成する。すると受容体のJak2同士がお互いをリン酸化し、さらに受容体自身のチロシン残基をリン酸化する。Jak2や受容体のリン酸基は、Statというタンパク質に転移し活性化させる。Jak2からリン酸基を受け取ったStatと受容体からリン酸基を受け取ったStatが二量体を形成し、細胞核内へ移行して特定の遺伝子発現を促進する。
プロラクチンの分泌は視床下部からのPIFの分泌によって抑制されているのが通常である。即ち視床下部の障害によって脱抑制され、高プロラクチン血症にいたる。PIF分泌に最も関与するのがドパミンと考えられている。またTRHはTSHだけではなくPRLの分泌を促進する作用があるということを念頭に置くと理解しやすい。主な原因を列記する。
腺腫の存在によりPRLの自律性分泌によるPRL過剰である。以前はフォーブスオールブライト症候群といわれていた。ミクロアデノーマ、マクロアデノーマの両方が存在する。マクロアデノーマで視野障害や下垂体卒中がある場合はハーディ手術を行うこともある。
視床下部の機能的障害や視床下部におよぶ腫瘍、炎症、肉芽腫によってドパミンの産出、輸送が障害されるとPIF脱抑制によってPRLの分泌が亢進される。特発性の場合はドパミン作動薬であるブロモクリプチンの投与で改善することが多い。
ドパミン遮断薬クロルプロマジンなどが存在するとPIF脱抑制が生じ、PRL分泌が亢進される。
甲状腺ホルモンの低下によって視床下部からのTRHの分泌が亢進し、その結果PRL分泌も亢進される。甲状腺機能異常は亢進すると妊娠、周産期に問題となり、低下すると無月経となるため生殖においては非常に問題である。
プロラクチン分泌が過剰になり、排卵抑制や乳汁分泌などの症状が現れる。これらは無月経や不妊症の原因として重要である。
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リンク元 | 「下垂体腺腫」「先端巨大症」「下垂体前葉ホルモン」「プロラクチン」「シーハン症候群」 |
拡張検索 | 「PRL-secreting pituitary adenoma」「PRL receptor」 |
関連記事 | 「PR」「P」 |
ホルモン名称 | 腫瘍 | 頻度 (IMD.1040) |
頻度 (RNT. 64) |
症候 | 検査(IMD.1041より引用) |
成長ホルモン | 成長ホルモン産生腺腫 | 20%. | 20%. | 頭痛、視野欠損、手足の成長、顔貌粗造、手根管症候群、いびきおよび閉塞性睡眠時無呼吸、下顎成長および下顎前突症、骨関節炎および関節痛、過剰発汗、醜形恐怖 | ・安静空腹時のGHが10ng/ml以上と持続的に高値。 ・75gOGTTによっても5ng/ml以下にならない。 ・TRHおよびLH-RH負荷に反応してGH増大。 ・L-ドパまたはブロモクリプチンに対する増加反応がない。(正常:DRアゴニスト→GH↑) ・ソマトメジンC(IGF-I)高値。 |
プロラクチン | プロラクチン産生腺腫 | 32%. | 30%. | 頭痛、視野欠損、希発月経または無月経、妊孕性の低下、性欲喪失、勃起不全、エストロゲンで初回刺激を受けた(estrogen-primed)女性乳房における乳汁漏出 | ・抗精神病薬、乳房刺激などの原因を除外しても血清PRL濃度が100ng/ml以上。 ・インスリン負荷(IRI)(0.1U/kg)による低血糖刺激(正常:低血糖→TRH↑→PRL↑)、TRH負荷(500μg)(正常:TRH↑→PRL↑)、クロルプロマジン負荷(25mg)(正常:D2R↓→PRL↑)による反応減少。 |
副腎皮質刺激ホルモン | ACTH産生腺腫 | 3%. | 5%. | 頭痛、視野欠損、近位筋障害、求心性の脂肪分布、神経精神医学的症状、線条、易傷性、皮膚の菲薄化、多毛、骨減少 | ・血中コルチゾールが高値、かつ日内変動なし。 ・尿中17-ヒドロキシコルチコステロイド(17-OHCS)、尿中17-ケトステロイド(17-KS)、尿中コルチゾールが高値。 ・CRH試験(CRH100μg静注) ・健常者:血中ACTHは30分後に、血中コルチゾールは60分後に、それぞれ前値の約2倍に上昇。 ・Cushing病:過剰反応 ・副腎腫瘍・異所性ACTH産生腫瘍によるCushing症候群:無反応 |
甲状腺刺激ホルモン | 動悸、振戦、体重減少、不眠、過剰な排便(hyperdefecation)、発汗 | *freeT3、freeT4上昇。 *TSHが、(1)上昇、(2)T3で抑制されない、(3)TRH負荷で無反応。 | |||
卵胞刺激ホルモン | ゴナドトロピン産生腺腫 | 10%. | |||
黄体形成ホルモン | |||||
非機能性腺腫 | 18%. | 40%. | 頭痛、視野欠損、下垂体不全、などmassの圧排による続発性性腺機能低下症。まれに、卵巣過剰刺激、精巣増大、またはテストステロン値の上昇、 |
名称 | 構造 | 分泌細胞 | 下垂体前葉細胞 全細胞に対する 産生細胞の割合 |
染色性 | 腫瘍 | 頻度 (IMD.1040) |
頻度 (RNT. 64) |
症候 | |||
成長ホルモン | GH | ペプチド | somatotroph | 40-50% | 好酸性 | 成長ホルモン産生腺腫 | 成長ホルモン分泌細胞腺腫 | 20%. | 20%. | 頭痛、視野欠損、手足の成長、顔貌粗造、手根管症候群、いびきおよび閉塞性睡眠時無呼吸、下顎成長および下顎前突症、骨関節炎および関節痛、過剰発汗、醜形恐怖 | |
プロラクチン | PRL | mammotroph | 10-25% | 好酸性 | プロラクチン産生腺腫 | プロラクチノーマ | 32%. | 30%. | 頭痛、視野欠損、希発月経または無月経、妊孕性の低下、性欲喪失、勃起不全、エストロゲンで初回刺激を受けた(estrogen-primed)女性乳房における乳汁漏出 | ||
副腎皮質刺激ホルモン | ACTH | corticotroph | 0.1 | 好塩基性 | 嫌色素性 | ACTH産生腺腫 | コルチコトロフ腺腫 | 3%. | 5%. | 頭痛、視野欠損、近位筋障害、求心性の脂肪分布、神経精神医学的症状、線条、易傷性、皮膚の菲薄化、多毛、骨減少 | |
甲状腺刺激ホルモン | TSH | 糖タンパク | thyrotroph | 0.05 | 好塩基性 | 甲状腺刺激ホルモン分泌細胞腺腫 | 動悸、振戦、体重減少、不眠、過剰な排便(hyperdefecation)、発汗 | ||||
卵胞刺激ホルモン | FSH | gonadotroph | 10-15% | 好塩基性 | ゴナドトロピン産生腺腫 | 10%. | |||||
黄体形成ホルモン | LH | 好塩基性 | |||||||||
非機能性腺腫 | 非機能性腺腫 | 18%. | 40%. | 頭痛、視野欠損、下垂体不全、などmassの圧排による続発性性腺機能低下症。まれに、卵巣過剰刺激、精巣増大、またはテストステロン値の上昇、 |
検査 | 先端巨大症 | 正常 | 備考 |
グルコース負荷試験 | 高値を維持 | 低下 | |
TRH負荷試験 | 上昇 | 不変 | 奇異性上昇 |
LHRH負荷試験 | |||
ドパミン作動薬(ブロモクリプチン) | 低下 | 上昇 | |
日内変動 | なし | あり | 調節を失う |
成長ホルモン GH | プロラクチン PRL | |||
先端巨大症 | 正常 | PRL産生腫瘍 | 正常 | |
グルコース負荷試験 | → | ↓ | ー | ー |
L-ドーパ負荷試験 | ↓/→(1) | ↑ | ↓ | ↓ |
TRH | ↑ | |||
LH-RH |
名称 | 構造 | 分泌細胞 | 下垂体前葉細胞 全細胞に対する 産生細胞の割合 |
染色性 | サブユニット | 残基数 (aa.) |
分子量 (kDa) |
その他 | ||
成長ホルモン | GH | ペプチド | somatotroph | 40-50% | 好酸性 | 1 | 191 | 22 | ||
プロラクチン | PRL | mammotroph | 10-25% | 好酸性 | 1 | 199 | 23 | |||
副腎皮質刺激ホルモン | ACTH | corticotroph | 0.1 | 好塩基性 | 嫌色素性 | 1 | 39 | 4.5 | POMC由来 | |
甲状腺刺激ホルモン | TSH | 糖タンパク | thyrotroph | 0.05 | 好塩基性 | 2 | α: 92, β:118 | 28 | αサブユニットは共通 | |
卵胞刺激ホルモン | FSH | gonadotroph | 10-15% | 好塩基性 | 2 | α: 92, β:111 | 32.6 | |||
黄体形成ホルモン | LH | 好塩基性 | 2 | α: 92, β:121 | 29.4 |
Table 333-1 Anterior Pituitary Hormone Expression and Regulation | |||||
Cell | corticotrope | somatotrope | lactotrope | thyrotrope | gonadotrope |
Tissue-specific transcription factor | T-Pit | Prop-1, Pit-1 | Prop-1, Pit-1 | Prop-1, Pit-1, TEF | SF-1, DAX-1 |
Fetal appearance | 6 weeks | 8 weeks | 12 weeks | 12 weeks | 12 weeks |
Hormone | POMC | GH | PRL | TSH | FSH LH |
Chromosomal locus | 2p | 17q | 6 | -6q; -1p | -11p; -19q |
Protein | ポリペプチド | 糖タンパク | |||
Amino acids | 266 (ACTH 1–39) | 191 | 199 | 211 | 210 204 |
Stimulators | CRH, AVP, gp-130 cytokines | GHRH, ghrelin, bromocriptine(1) | estrogen, TRH, VIP | TRH | GnRH, activins, estrogen |
Inhibitors | glucocorticoids | somatostatin, IGF-I | dopamine | T3, T4, dopamine, somatostatin, glucocorticoids | sex steroids, inhibin |
Target gland | adrenal | liver, other tissues | breast, other tissues | thyroid | ovary, testis |
Trophic effect | steroid production | IGF-I production, growth induction, insulin antagonism | milk production | T4 synthesis and secretion | sex steroid production, follicle growth, germ cell maturation |
分泌促進 | 分泌抑制 |
吸乳 エストロゲン 妊娠 睡眠 ストレス プロラクチン放出因子 セロトニン作動薬 ドーパミン受容体遮断薬 TRH |
ドーパミン受容体作動薬 プロラクチン |
ACTH↓ | 易疲労感、低血糖、低ナトリウム血症、低血圧、恥毛・腋毛の脱落 | |
PRL↓ | 乳汁分泌低下 | |
TSH↓ | 耐寒性の低下、不活発、便秘、皮膚の乾燥 | |
GH↓ | 筋力低下、体脂肪増加 | |
FSH・LH↓ | エストロゲン↓ | 第2度無月経、性欲低下、乳房・内外性器の萎縮、骨粗鬆症 |
プロゲステロン↓ | 基礎体温:低温1相 |
[★] プロラクチン産生下垂体腺腫、プロラクチン分泌下垂体腺腫
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