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この項目では、癌抑制を目的とした薬剤について説明しています。他の疾患の治療を目的とした薬剤全般の情報については「化学療法」をご覧ください。 |
抗がん剤(こうがんざい、英語:Anticancer drug)とは、悪性腫瘍(がん)の増殖を抑えることを目的とした薬剤である。抗癌剤、制癌剤とも。
抗がん剤とは悪性腫瘍の増殖を抑えることを目的とした薬剤のことである。抗がん剤を用いた療法は、「化学療法」に分類されている。
抗がん剤はもともと強い毒性を持つものが多く、がん細胞だけでなく健常な細胞の機能までも抑制(妨害)・破壊することにより、患者は抗がん剤の強い副作用に悩まされてきた経緯がある。抗がん剤の副作用として一般的なのは脱毛、吐き気(悪心)、骨髄抑制、口内のただれ、肌荒れ、等々である。なかでも悪心(吐き気)は患者をひどく苦しめる、と言われており、一般的に言えば抗がん剤の投与を選択するとQOLが低下する、ということは言われている。
抗癌剤の作用機序としては、DNA合成阻害、細胞分裂阻害、DNA損傷、代謝拮抗、栄養阻害などがある。
腫瘍細胞はいくつかの種類のものが混在しており、更に耐性を得やすく、抗癌剤の持つ毒性のため投与量に制限があることが多く、単剤投与は失敗に終わることが多いため一般に多剤併用療法となる。多剤併用療法であっても、やみくもに組み合わせればよいというものではなく、いくつかの重要な経験則がある。標的とする分子が異なる薬物、有効とされる細胞周期の時期が異なる物質、用量規定毒性が異なる薬物を併用するのが一般的である。さらにできるだけ相乗効果(シナジー)を得られる投薬を工夫する。このようにすることで、結果として最小の毒性で最大の結果が得られると考えられている。また、近年は支持療法の進歩で、多くの抗がん剤において最大耐容量をさらに増やすことができるようになったということが注目に値する。G-CSFの投与によって骨髄抑制の回復を図る時間を短く取ることができ、アロプリノールの投与によって、腫瘍融解症候群を抑制し、全身合併症を減少させることができるようになった。フォリン酸(ロイコボリン)の投与によってメソトレキセートの大量投与が可能になった。またフォリン酸とフルオロウラシルの併用がフルオロウラシル単独投与よりも治療効果が高いということも分かってきた。またacute emesisの治療薬が開発されることにより、治療中も食事摂取が可能な場合が増えてきたといったことが挙げられる[※ 1]。
感染症治療と抗がん剤投与が原理がほぼ同じであるため、感染症学で多用されるPD(薬力学)、PK(薬物動態学)といった概念は腫瘍学でも有効であり、抗がん剤にもシナジーは存在し、脳腫瘍では血液脳関門があるため使用薬剤は制限される。抗菌薬投与で髄液移行性が問題となったように、脳腫瘍に有効な抗がん剤は極めて少ない。非ホジキンリンパ腫は基本的にR-CHOP療法で治療されることが多いが、病変が脳の場合はR-CHOP療法は有効でなく、HD-AraCやHD-MTXといった治療が選択される。
がん細胞は細胞周期が速く進む(分裂が速い)といったところを標的にすることが多いが、アポトーシス感受性の違いも重要なターゲットとなる。細胞周期がターゲットなると、骨髄や消化管上皮、毛包といった細胞周期が早い正常細胞も攻撃される。抗がん剤で必発と言われる症状は骨髄抑制、悪心、脱毛である[※ 2]。
前述のように、抗腫瘍薬は異なる細胞周期に働きかけるもの、用量規定因子が異なるもの、作用する部位が異なりシナジーを得られるものを組み合わせて作られている。ある程度の理論的背景は存在する(ただし、薬剤が実際に有効なのか、あるいは効果がないのかという点については、実際に疫学的な調査を行ってみるまで判らない。つまりEBMによってなされなければならない)。
細胞周期はDNAを合成するS期、有糸分裂をするM期に分かれる。細胞が分裂し、DNAの合成が始まるまでをgap1 (G1) といい、DNAの合成が終了し有糸分裂が始まるまでをgap2 (G2) という。これらはサイクリンとサイクリン依存性キナーゼによって調節されており、これらを監視する系に数多くのがん抑制遺伝子が存在する。原則としてはアルキル化薬は細胞周期非依存性に働き、それ以外は何かしら周期に特異的に働く。傾向としてステロイドはG1に働き、代謝拮抗薬やトポイソメラーゼ阻害薬はDNA合成のS期に働く、ビンカアルカロイド系など微小管機能阻害薬はM期に働く。基本的に用量規定因子は骨髄抑制であることが多く、それゆえに骨髄機能を温存する為に間欠的スケジュールで投与する場合が多い。
主な抗がん剤は以下に大別される。DNA合成あるいは何らかのDNAの働きに作用し、作用する細胞周期をもって分類する。この項では抗がん剤の類縁物質は抗がん剤として使われない薬物でも記載する。傾向としては抗菌薬の類縁物質は抗がん剤としても利用可能なことが多い。
アルキル化薬は細胞内条件下で、種々の電気陰性基をアルキル化することからその名称がつけられた。アルキル化剤は直接DNAを攻撃して二重鎖のグアニル塩基同士を架橋することで腫瘍の増殖を停止させる。架橋によりDNAは一本鎖になったり分離することが出来なくなる。二重鎖が解けることはDNAの複製に必須の為、細胞はもはや分裂することができなくなる。
これらはアルキル基を有する求電子性分子であり、このアルキル基がDNAの求核性部位と間に共有結合を形成する。これによりDNAを周期非特異的に傷害する。最もよく使われるのがシクロホスファミドであるが、用量規定毒性は骨髄抑制である。有名な副作用に出血性膀胱炎があるが、メスナ(ウロミテキサン)にて予防がある程度可能である。また、シクロホスファミドを始めとするアルキル化薬は免疫抑制薬として用いられることもある。この場合は抗腫瘍薬としてよりも低用量である。
いずれも悪性リンパ腫や慢性骨髄性白血症で用いられることがある。ニトロソウレア類は中枢神経の移行もよく、脳腫瘍に用いられることがある。
用量規定因子は腎毒性があり、この他に悪心、嘔吐といった消化管症状もよく見られる。カルボプラチンはシスプラチンの腎毒性を軽減し、抗腫瘍効果も同等であることから、シスプラチンに置き換わって使用される傾向がある。オキサリプラチンは大腸癌直腸癌に有効性が示されている。よく知られている副作用に末梢神経障害があり、FOLFOXの患者にしばしば起きる。
代謝拮抗剤 (anti-metabolites) はDNAの構成要素のプリンやピリミジンのイミテーションであり、(細胞周期の)S期にDNAへのプリンやピリミジンの取り込みを防止する。それにより、正常な増殖や分裂は停止する。重要な代謝拮抗剤の代表として5-フルオロウラシル (5-FU) が挙げられる。
葉酸は1炭素単位の移動(C1代謝という人もいる)を含む多くの酵素反応に関与するビタミンである。これらの反応はDNAとRNAの前駆体、グリシン、メチオニン、グルタミン酸といったアミノ酸、ホルミルメチオニンtRNAや他の重要な代謝産物の生合成に重要な反応である。植物は自ら生合成するが人は生合成することができず経口摂取する。しかし、DHF、THF、MTHFの変換といった代謝は行われているので、その部位をターゲットとした場合、葉酸代謝阻害薬でヒト細胞も傷害できる。
血中のL-アスパラギンを分解することにより、アスパラギン要求性の腫瘍細胞を栄養欠乏状態とする。急性白血病や悪性リンパ腫で用いられる。凝固異常や急性膵炎を起こすことがあるので、採血にてモニタリングが必要である。Amyおよび凝固系のモニタリングを行いATIII>70となるようにする。
I型トポイソメラーゼは1本鎖DNAのらせん制御、II型トポイソメラーゼは2本鎖DNAのらせん制御をすると考えられており、作用が複雑で多目的な働きをするII型トポイソメラーゼを阻害したほうが効果があると考えられている。
用量規定因子は消化器毒性と骨髄抑制である。特に下痢は致死的になることもある。FOLFIRIでは止痢剤としてロペミンを併用することがしばしばある。骨髄抑制も非常に強い。
1953年に梅沢浜夫が発見したザルコマシシンが最初の抗がん性抗生物質 (antitumour antibiotic) であり、DNAポリメラーゼを阻害する。いろいろ異なる種類があるが、主に2つの方法で細胞分裂を阻止する。
「がん細胞の、増殖、浸潤、転移に関わる分子を標的にして、その分子を阻害することにより、がんの治療を行う」とされる薬。「正常細胞へのダメージを少なくしてがん細胞だけを攻撃すること」を目指す。分子標的治療薬には小(低)分子化合物 (small molecule) とモノクローナル抗体がある。分子標的薬の一般名の付け方として、モノクローナル抗体の語尾をマブ (mab) 、小分子薬の語尾をイブ(ib=阻害薬)と名付ける。また、マブ (mab) の前にxiがつけば、異なった遺伝子型混在のキメラ抗体となる。 低分子化合物の抗癌剤には、キナーゼ阻害薬(イマチニブなど)やmTOR阻害薬(エベロリムスなど)、プロテアソーム阻害薬などがある。
いくつかの悪性腫瘍はホルモン療法に反応する。
他にもホルモン感受性腫瘍が存在するが、作用機序は不明である。
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肝細胞傷害型 | 肝壊死型 | 中心帯壊死(zone 3) | 四塩化炭素,アセトアミノフェン,ハロタン |
中間帯壊死(zone 2) | フロセミド | ||
周辺帯壊死(zone 1) | リン,硫酸鉄 | ||
肝炎型 | イソニアジド,メチルドパ,ケトコナゾール | ||
肝線維症型 | メトトレキサート,塩化ビニル,ビタミンA | ||
脂肪肝型 | 小滴性 | テトラサイクリン,バルプロ酸,リン | |
大滴性 | エタノール,メトトレキサート | ||
リン脂質症 | アミオダロン,DH剤 | ||
胆汁うっ滞型 | hepatocanalicular | クロルプロマジン,エリスロマイシンエストレート | |
canalicular | C-17アルキル化ステロイド,経口避妊薬,シクロスポリンA | ||
ductular | ベノキサプロフェン | ||
血管障害型 | 肝静脈血栓 | 経口避妊薬,抗腫瘍薬 | |
門脈血栓 | 経口避妊薬 | ||
静脈閉塞性疾患 | 蛋白同化ステロイド,経口避妊薬,抗腫瘍薬 | ||
肝紫斑病 | 蛋白同化ステロイド,経口避妊薬,トロトラスト,アザチオプリン,ファロイジン,塩化ビニル | ||
肉芽腫形成型 | アロプリノール,カルバマゼピン | ||
腫瘍形成型 | 限局性結節性過形成 | 経口避妊薬 | |
腺腫 | 経口避妊薬,蛋白同化ステロイド | ||
癌腫 | 経口避妊薬,蛋白同化ステロイド,トロトラスト,塩化ビニル | ||
血管肉腫 | トロトラスト,塩化ビニル,蛋白同化ステロイド |
表 DDW-J 2004薬物性肝障害ワークショップのスコアリング(肝臓 2005; 46: 85-90より引用) | |||||
肝細胞障害型 | 胆汁うっ滞または混合型 | スコア | |||
1. 発症までの期間 | 初回投与 | 再投与 | 初回投与 | 再投与 | |
a.投与中の発症の場合 投与開始からの日数 |
5~90日 | 1~15日 | 5~90日 | 1~90日 | 2 |
<5日、>90日 | >15日 | <5日、>90日 | >90日 | 1 | |
b.投与中止後の 発症の場合 投与中止後の日数 |
15日以内 | 15日以内 | 30日以内 | 30日以内 | 1 |
>15日 | >15日 | >30日 | >30日 | 0 | |
2. 経過 | ALTのピーク値と正常上限との差 | ALPのピーク値と正常上限との差 | |||
投与中止後のデータ | 8日以内に50%以上の減少 | (該当なし) | 3 | ||
30日以内に50%以上の減少 | 180日以内に50%以上の減少 | 2 | |||
(該当なし) | 180日以内に50%未満の減少 | 1 | |||
不明または30日以内に50%未満の減少 | 不変、上昇、不明 | 0 | |||
30日後も50%未満の減少か再上昇 | (該当なし) | -2 | |||
投与続行および不明 | 0 | ||||
3. 危険因子 | 肝細胞障害型 | 胆汁うっ滞または混合型 | |||
飲酒あり | 飲酒または妊娠あり | 1 | |||
飲酒なし | 飲酒、妊娠なし | 0 | |||
4. 薬物以外の原因の有無2) | カテゴリー1、2がすべて除外 | 2 | |||
カテゴリー1で6項目すべて除外 | 1 | ||||
カテゴリー1で4つか5つが除外 | 0 | ||||
カテゴリー1の除外が3つ以下 | -2 | ||||
薬物以外の原因が濃厚 | -3 | ||||
5. 過去の肝障害の報告 | 過去の報告あり、もしくは添付文書に記載 | 1 | |||
なし | 0 | ||||
6.好酸球増多(6%以上) | あり | 1 | |||
なし | 0 | ||||
7. DLST | 陽性 | 2 | |||
擬陽性 | 1 | ||||
陰性および未施行 | 0 | ||||
8.偶然の再投与が行われた時の反応 | 肝細胞障害型 | 胆汁うっ滞または混合型 | |||
単独再投与 | ALT倍増 | ALP(T.Bil)倍増 | 3 | ||
初回肝障害時の併用薬と共に再投与 | ALT倍増 | ALP(T.Bil)倍増 | 1 | ||
偶然の再投与なし、または判断不能 | 0 | ||||
1) 薬物投与前に発症した場合は「関係なし」、発症までの経過が不明の場合は「記載不十分」 と判断して、スコアリングの対象としない。 投与中の発症か、投与中止後の発症化により、a またはb どちらかのスコアを使用する。 2) カテゴリー1:HAV、 HBV、 HCV、 胆道疾患(US)、アルコール、ショック肝 カテゴリー 2:CMV、 EBV. ウイルスはIgM HA 抗体、HBs 抗原、HCV 抗体、IgM CMV 抗体、IgM EB VCA 抗体で判断する。 判定基準:総スコア 2点以下:可能性が低い 3、4点:可能性あり 5点以上:可能性が高い |
-薬剤性肝障害
http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/4291403F1026_2_14/ http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/4291403A1088_1_03/
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