- 英
- valproic acid
- 同
- ジプロピル酢酸 dipropylacetic acid
- 化
- バルプロ酸ナトリウム sodium valproate, valproate sodium
- 商
- エピレナート、サノテン、セレニカR、プロモーション、セレブ、デパケン、ハイセレニン、バルデケンR、バルプラム、バレリン、Depakene, Depakote, Epival
- 関
- てんかん、バルプロ酸ナトリウム中毒
特徴
作用機序
- GABAトランスアミナーゼを阻害(SPC.187)
薬理作用
- GABAの異化を抑制→GABAの濃度↑
- 全ての型のてんかんに作用するが、特に欠神発作によく効く (SPC.187)
注意
副作用
参考
- http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/1139004Q1097_2_02/1139004Q1097_2_02?view=body
- http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/1139004G1024_1_16/1139004G1024_1_16?view=body
臨床関連
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/07/23 02:17:13」(JST)
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バルプロ酸ナトリウム |
|
|
識別情報 |
CAS登録番号 |
1069-66-5 |
KEGG |
D00710 |
特性 |
化学式 |
C8H15NaO2 |
モル質量 |
166.20 |
外観 |
白色粉末 |
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。 |
バルプロ酸ナトリウム (sodium valproate) は、抗けいれん薬と気分安定薬作用がある有機化合物。略称はVPA。主にてんかん・双極性障害の治療として、一部では大うつ病の治療に用いられる。また片頭痛と統合失調症の治療にも使われている。分子式は C8H15NaO2 で、特異なにおいがあり、水に溶けやすい。GABA(γ-アミノ酪酸)トランスアミナーゼを阻害することにより抑制性シナプスにおけるGABA量を増加させ、薬理作用を発現する。バルプロ酸は過量投薬のリスクが高く、治療薬物モニタリングが必要である[1]。
一般的な副作用には、疲労感・振戦・鎮静や胃腸障害がある。加えて10%に可逆的な脱毛がみられる[2]。
2008年、アメリカ食品医薬品局(FDA)は、199の二重盲検試験を分析し、データに用いられた24週間では、抗てんかん薬服用時の自殺念慮や自殺企図が2倍―てんかん用途では3.5倍、精神科では1.5倍―に高まることを警告した(それ以上の期間は単に未調査)[3]。2009年4月23日以降、認可されたすべての抗てんかん薬に警告表示が追加された[4]。日本でも、自殺企図の既往や自殺念慮を有する場合に注意書きがある[5]。
目次
- 1 薬理
- 2 効能
- 3 禁忌
- 4 副作用
- 5 製剤の種類
- 6 用法・用量
- 7 脚注
- 8 関連項目
- 9 外部リンク
薬理
バルプロ酸は、人間の脳の神経伝達物質であるGABAの作用に関連すると考えられている。主にGABAトランスアミナーゼを阻害し、GABA濃度を増加させるとされる。しかしながら近年、その他にいくつかの精神神経疾患に対しての作用機序が存在することが報告されている[6]。
バルプロ酸はまた、電位依存性ナトリウムチャネルとT型カルシウムチャネルをブロックする。これらのメカニズムによりバルプロ酸は広域スペクトル抗けいれん薬である。
バルプロ酸は ヒストン脱アセチル化酵素1 (HDAC1) 酵素阻害剤であり、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤に分類される。
効能
双極性障害の治療に用いられるリチウム塩に代わるものである。抗けいれん薬として、バルプロ酸は欠神発作・強直間代発作(大発作)・複雑部分発作・レノックスガストー症候群に関連する若年性ミオクロニーてんかんのコントロールに用いられる。
またミオクローヌスの治療にも使用されている。一部の国では経口バルプロ酸の製剤は、ステータスてんかん重積のセカンドライン治療として、フェニトインの代替としても使用されている。バルプロ酸は心的外傷後てんかん治療に使用される最も一般的な薬の一つである。[7]
またバルプロ酸はFDAにより、躁病エピソードに関連する双極性障害、複数の発作型(てんかんを含む)の治療補助、および片頭痛の予防に承認されている[8]。 最近では神経因性疼痛(特にデルタ繊維から痛みを刺すような)を治療するセカンドラインの薬剤として使用されている。
2010年8月、脊髄を損傷したマウスに、神経細胞の元になる神経幹細胞を移植してバルプロ酸を注射したところ、歩行能力のある程度の回復が認められたとする報告を、奈良先端科学技術大学院大学の中島欽一教授らのグループが行った。iPSを用いた人間への応用が期待される。
禁忌
- 重篤な肝臓障害のある患者(致死的な肝障害悪化の恐れ)
- カルバペネム系抗生物質との併用(バルプロ酸の血中濃度低下)
- 尿素サイクル異常症患者(高アンモニア血症の恐れ)
- 妊娠している者は原則として服用を避ける(催奇性・胎児への肝障害など発現、退薬症状発現の恐れ)
副作用
- 精神神経系
- 傾眠、失調、ふらつき
- 消化器症状
- 悪心、嘔吐、食欲不振、胃腸障害、
- その他
- 全身倦怠感、脱毛、体重増加、カルニチン欠乏症など
- 重篤な副作用
- 致死的肝障害、高アンモニア血漿を伴う意識障害、血液障害(血小板・顆粒球の減少)、膵炎、催奇形性(胎児への影響)など[9]。
製剤の種類
日本では協和発酵キリンからデパケン®、興和からセレニカ®などの商品名で販売されている。一日の服用回数が少なくて済むデパケン®R、セレニカ®Rという徐放剤もある。後発医薬品も多くの製薬会社より販売されている。共和薬品工業のバルプロ酸ナトリウムジェネリックはアメルだが同じく共和薬品工業で成分がフルニトラゼパムのアメルとは異なる。
- 錠剤:100 mg、200 mg
- 錠剤(徐放剤):100 mg、200 mg、400 mg(400 mg はセレニカ®のみ)
- 細粒:20%、40%
- シロップ:50%
用法・用量
- 1日 400–1200 mg を分割経口投与する。なお症状、年齢により適宜増量する。
- 治療効果が期待できる濃度域が限定されるため (50–100 μg/mL)[10][11]、バルプロ酸 (VPA) として血中濃度をモニタリングする必要がある。
脚注
- ^ 日本臨床薬理学会 『臨床薬理学』 医学書院、2011年、第3版、78頁。ISBN 978-4260012324。
- ^ Gelder, M.; Mayou, R.; Geddes, J. (2005). Psychiatry (3rd ed. ed.). New York: Oxford. p. 250.
- ^ “Postmarket Drug Safety Information for Patients and Providers > Information for Healthcare Professionals: Suicidal Behavior and Ideation and Antiepileptic Drugs”. U.S. Food and Drug Administration (FDA) (2008年1月31日). 2013年1月15日閲覧。
- ^ “Postmarket Drug Safety Information for Patients and Providers > Suicidal Behavior and Ideation and Antiepileptic Drugs”. U.S. Food and Drug Administration (FDA) (2009年5月5日). 2013年1月15日閲覧。
- ^ リーマス錠100/ リーマス錠200 添付文書情報(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)
- ^ Rosenberg, G. (2007). “The mechanisms of action of valproate in neuropsychiatric disorders: can we see the forest for the trees?”. Cellular and Molecular Life Sciences 64 (16): 2090–2103. doi:10.1007/s00018-007-7079-x. PMID 17514356.
- ^ Posner, E.; Lorenzo, N. (2006年10月11日). “Posttraumatic epilepsy”. 2008年7月30日閲覧。
- ^ “FDA Issues Approvable Letter For Stavzor Delayed Release Valproic Acid Capsules”. 2007 MediLexicon International. (2007年10月25日). http://www.medicalnewstoday.com/articles/86674.php 2007年10月29日閲覧。
- ^ EasyTDM
- ^ ブライアン・P・クイン 『「うつ」と「躁」の教科書』 大野裕監訳、岩坂彰訳、紀伊国屋書店、2003年、226頁。ISBN 431400939X。
- ^ 三菱化学メディエンス バルプロ酸ナトリウム/臨床検査の三菱化学メディエンス
関連項目
- てんかん
- 双極性障害
- 片頭痛
- うつ病
- 気分安定薬
- 抗躁薬
外部リンク
気分安定薬 |
|
カルバマゼピン ジバルプロエックスナトリウム ガバペンチン ラモトリギン リカルバゼピン リチウム オクスカルバゼピン プレガバリン バルプロ酸ナトリウム チアガビン トピラマート バルプロ酸
|
|
UpToDate Contents
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Japanese Journal
- 1-III-9 HDAC阻害剤:バルプロ酸がトリプトファンーナイアシン転換経路に及ぼす影響(一般演題要旨,日本ビタミン学会第63回大会講演要旨)
- 1-II-2 非環式レチノイドとバルプロ酸の併用処理による相乗的な肝癌細胞増殖抑制効果の検討(一般演題要旨,日本ビタミン学会第63回大会講演要旨)
- 症例 妊娠後期の精神運動興奮にバルプロ酸が奏功し無事出産に至った1症例
Related Links
- バルプロ酸ナトリウム (Sodium Valproate) は、抗けいれん薬と気分安定化薬作用が ある有機化合物。主にてんかん・双極性障害の治療として、一部では大うつ病の治療に 用いられる。また片頭痛と統合失調症の治療にも使われている。 分子式は C8H15 NaO2 ...
- デパケンとは?バルプロ酸の効能,副作用等を説明,ジェネリックや薬価も調べられる( おくすり110番:薬事典版)
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Japan Pharmaceutical Reference
薬効分類名
販売名
エピレナート徐放顆粒40%
組成
- 1g中日本薬局方バルプロ酸ナトリウム400mgを含有
- 添加物としてステアリン酸カルシウム、エチルセルロース、クエン酸トリエチル、軽質無水ケイ酸、その他2成分を含有
禁忌
- 重篤な肝障害のある患者[肝障害が強くあらわれ致死的になるおそれがある。]
- 本剤投与中はカルバペネム系抗生物質(パニペネム・ベタミプロン、メロペネム水和物、イミペネム水和物・シラスタチンナトリウム、ビアペネム、ドリペネム水和物、テビペネム ピボキシル)を併用しないこと(「相互作用」の項参照)。
- 尿素サイクル異常症の患者[重篤な高アンモニア血症があらわれることがある。]
効能または効果
- 各種てんかん(小発作・焦点発作・精神運動発作ならびに混合発作)およびてんかんに伴う性格行動障害(不機嫌・易怒性等)の治療。
躁病および躁うつ病の躁状態の治療。
*片頭痛発作の発症抑制。
*[片頭痛発作の発症抑制]
- 本剤は、片頭痛発作の急性期治療のみでは日常生活に支障をきたしている患者にのみ投与すること。
○各種てんかん(小発作・焦点発作・精神運動発作ならびに混合発作)およびてんかんに伴う性格行動障害(不機嫌・易怒性等)の治療、躁病および躁うつ病の躁状態の治療
- 通常、バルプロ酸ナトリウムとして400〜1200mgを1日1回経口投与する。ただし、年齢、症状に応じ適宜増減する。
*○片頭痛発作の発症抑制
- 通常、バルプロ酸ナトリウムとして400〜800mgを1日1回経口投与する。なお、年齢、症状に応じ適宜増減するが、1日量として1000mgを超えないこと。
慎重投与
- 肝機能障害又はその既往歴のある患者[肝機能障害が強くあらわれるおそれがある。]
- 薬物過敏症の既往歴のある患者
- 自殺企図の既往及び自殺念慮のある躁病及び躁うつ病の躁状態の患者[症状が悪化するおそれがある。]
- 以下のような尿素サイクル異常症が疑われる患者[重篤な高アンモニア血症があらわれるおそれがある。]
- 原因不明の脳症もしくは原因不明の昏睡の既往のある患者
- 尿素サイクル異常症又は原因不明の乳児死亡の家族歴のある患者
重大な副作用
劇症肝炎等の重篤な肝障害、黄疸、脂肪肝等
頻度不明
- これらの症状を起こすことがあるので、定期的に検査を行うなど観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
高アンモニア血症を伴う意識障害
頻度不明
- 高アンモニア血症を伴う意識障害があらわれることがあるので、定期的にアンモニア値を測定するなど観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
溶血性貧血、赤芽球癆、汎血球減少、重篤な血小板減少、顆粒球減少
頻度不明
- これらの症状があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
急性膵炎
頻度不明
- 急性膵炎があらわれることがあるので、激しい腹痛、発熱、嘔気、嘔吐等の症状があらわれたり、膵酵素値の上昇が認められた場合には、本剤の投与を中止し、適切な処置を行うこと。
間質性腎炎、ファンコニー症候群
頻度不明
- これらの症状があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
**中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)
頻度不明
- これらの症状があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
過敏症症候群
頻度不明
- 過敏症症候群があらわれることがあるので、観察を十分に行い、初期症状として発疹、発熱がみられ、さらにリンパ節腫脹、肝機能障害、白血球増加、好酸球増多、異型リンパ球出現等の症状があらわれた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。なお、発疹、発熱、肝機能障害等の症状が再燃あるいは遷延化することがあるので注意すること。
脳の萎縮、認知症様症状(健忘、見当識障害、言語障害、寡動、知能低下、感情鈍麻等)、パーキンソン様症状(静止時振戦、硬直、姿勢・歩行異常等)
頻度不明
- これらの症状があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
なお、これらの症状が発現した例では中止により、ほとんどが1〜2ヵ月で回復している。
横紋筋融解症
頻度不明
- 横紋筋融解症があらわれることがあるので、観察を十分に行い、筋肉痛、脱力感、CK(CPK)上昇、血中及び尿中ミオグロビンの上昇等が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)
頻度不明
- 抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、低ナトリウム血症、低浸透圧血症、尿中ナトリウム量の増加、高張尿等があらわれた場合には水分摂取の制限等の適切な処置を行うこと。
薬効薬理
薬理作用14〜16)
抗けいれん作用
- バルプロ酸ナトリウムは、マウスにおいてメトラゾールけいれん、最大電撃けいれん、ベメグリドけいれん、ストリキニーネけいれん、ピクロトキシンけいれん、無酸素けいれんを、またラットにおいて聴原発作を抑制する。
発作性放電に対する作用
- バルプロ酸ナトリウムは、ウサギにおいて海馬後放電及び扁桃核の発作性放電を抑制する。
筋肉微細振動に対する作用
- バルプロ酸ナトリウムは、マウスにおいて中脳網様体刺激による筋肉微細振動の増強効果を鋭敏に抑制する。
抗躁作用
- バルプロ酸ナトリウムは、マウス及びラットにおいて躁病の動物モデルと考えられる、デキサンフェタミンとクロロジアゼポキシドとの併用投与により生じる自発運動亢進作用を有意に抑制する。
*作用機序17〜19)
- Na+チャネルとT型Ca2+チャネルの抑制、及びGABA分解酵素のGABAトランスアミナーゼの阻害によるGABAの増量が考えられている。
抗躁作用及び片頭痛発作の発症抑制作用についてもGABA神経伝達促進作用が寄与している可能性が考えられている。
有効成分に関する理化学的知見
一般名
- バルプロ酸ナトリウム(Sodium Valproate)
化学名
- Monosodium 2-propylpentanoate
分子式
分子量
性状
- 白色の結晶性の粉末である。
水に極めて溶けやすく、エタノール(99.5)又は酢酸(100)に溶けやすい。
吸湿性である。
★リンクテーブル★
[★]
- 22歳の女性。不眠と、まとまらない言動とを心配した家族に伴われて来院した。3年前に母親を亡くした後に、まとまらない言動を示し、約1か月の入院加療で完全寛解に至り仕事に復帰した。その後、通院加療を受けていたが、1年前から通院を中断していた。10日前から友人と海外旅行に行ったが、不眠が続き何かにおびえているような態度を示すようになった。昨日、帰国後もおびえた様子で眠らず、とりとめのないことを呟き、急に攻撃的になったため受診した。診察時、質問に返答することはなく視線を合わせず黙り込んだかと思うと「今、真理をつかむために神と話し合っている。邪魔するな」と興奮状態となった。神経学的所見、血液所見、血液生化学所見、脳波所見および頭部単純CTに異常を認めない。
- 治療薬として最も適切なのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [109A022]←[国試_109]→[109A024]
[★]
- 44歳の男性。過活動を心配した妻に連れられて受診した。3か月前から疲れがとれないと訴え、朝は起床が困難で、会社に遅刻するようになった。2週間前から、特にきっかけなく急に元気になった。「体調が最高なので、眠らなくても全く疲労を感じない」と言い、夜中に欧州支社の担当者と国際電話で話し続け、ほとんど眠らずに出勤するようになったため、妻に連れられ受診した。早口・多弁で、よく話すが話題が転々と変わりやすい。妻が家における患者の状態について話すと、些細なことで不機嫌になった。意識は清明であり、身体所見に異常を認めない。
- 治療薬として適切なのはどれか。2つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [113D072]←[国試_113]→[113D074]
[★]
- 23歳の男性。行動の異常を心配した家族に連れられて来院した。6か月前に大学を卒業し就職した。3か月前から遅刻が目立つようになり、休みがちとなった。1か月前からは、1日中自室に閉じこもるようになった。1週前から誰かと話しているような独り言がみられ、さらに「誰かに見張られている」「数人が自分の悪口を言い合っている」とおびえるようになった。夜間眠らず、部屋の中を動き回るようになったため家族に連れられて受診した。意識は清明。神経学的所見に異常を認めない。血液生化学所見に異常を認めない。
- 治療薬として適切なのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [110D043]←[国試_110]→[110D045]
[★]
- 40歳の女性。「気分の上がり下がり」を主訴に夫とともに来院した。1年前の転居を機に気分が落ち込み、家事が全く手につかず寝込むようになった。家事を夫に任せて生活していたところ2か月前から回復し、この2週間は逆に気分が高揚して多弁で眠らない状態が続いているため受診した。話があちこちに飛び、まとまらない。「以前の調子の悪さが嘘のようで絶好調だ」という。身体所見に異常を認めない。
- 治療薬として適切なのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [109D022]←[国試_109]→[109D024]
[★]
- 72歳の男性。手のふるえと動きにくさとを主訴に来院した。 1年前から左手がふるえるようになった。 2か月前から歩行が不安定になり、歩幅が狭くなったという。顔面筋の動きに乏しい。安静状態で左手が規則的にふるえる。四肢に強い筋強剛があり、特に左側で顕著である。筋力に異常を認めない。感覚障害を認めない。
- 腱反射に異常はなく、病的反射を認めない。
- 治療薬として適切なのはどれか。 2つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [106D052]←[国試_106]→[106D054]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [108I029]←[国試_108]→[108I031]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [108D005]←[国試_108]→[108D007]
[★]
- a. (1)(2)
- b. (1)(5)
- c. (2)(3)
- d. (3)(4)
- e. (4)(5)
[★]
- 英
- drug-induced liver injury, drug-induced hepatopathy, drug-induced liver disease
- 同
- 薬剤性肝障害
- 関
- 薬物性肝炎 drug-induced hepatitis
[show details]
概念
疫学
分類
- 中毒性肝障害:薬物が肝細胞を障害
- アレルギー性肝障害:IV型アレルギーの機序により肝細胞が障害
原因薬物
- 抗菌薬(21.9%)が最も多く、抗炎症薬(11.86%)がこれに次ぐ。(第32回日本肝臓学会西部会より)
薬物と障害部位
肝細胞傷害型
|
肝壊死型
|
中心帯壊死(zone 3)
|
四塩化炭素,アセトアミノフェン,ハロタン
|
中間帯壊死(zone 2)
|
フロセミド
|
周辺帯壊死(zone 1)
|
リン,硫酸鉄
|
肝炎型
|
イソニアジド,メチルドパ,ケトコナゾール
|
肝線維症型
|
メトトレキサート,塩化ビニル,ビタミンA
|
脂肪肝型
|
小滴性
|
テトラサイクリン,バルプロ酸,リン
|
大滴性
|
エタノール,メトトレキサート
|
リン脂質症
|
アミオダロン,DH剤
|
胆汁うっ滞型
|
hepatocanalicular
|
クロルプロマジン,エリスロマイシンエストレート
|
canalicular
|
C-17アルキル化ステロイド,経口避妊薬,シクロスポリンA
|
ductular
|
ベノキサプロフェン
|
血管障害型
|
肝静脈血栓
|
経口避妊薬,抗腫瘍薬
|
門脈血栓
|
経口避妊薬
|
静脈閉塞性疾患
|
蛋白同化ステロイド,経口避妊薬,抗腫瘍薬
|
肝紫斑病
|
蛋白同化ステロイド,経口避妊薬,トロトラスト,アザチオプリン,ファロイジン,塩化ビニル
|
肉芽腫形成型
|
アロプリノール,カルバマゼピン
|
腫瘍形成型
|
限局性結節性過形成
|
経口避妊薬
|
腺腫
|
経口避妊薬,蛋白同化ステロイド
|
癌腫
|
経口避妊薬,蛋白同化ステロイド,トロトラスト,塩化ビニル
|
血管肉腫
|
トロトラスト,塩化ビニル,蛋白同化ステロイド
|
病態
- 投与開始から5-90日の経過で発症し、肝障害に基づく症状・検査値異常をきたす。 ← 長期間服用(例えば2年)している薬物は除外できる。最近服用を始めた薬物の問診が重要
身体所見
症状
検査
治療
薬物性肝障害判定基準
- 参考1
表 DDW-J 2004薬物性肝障害ワークショップのスコアリング(肝臓 2005; 46: 85-90より引用)
|
|
肝細胞障害型
|
|
胆汁うっ滞または混合型
|
|
スコア
|
1. 発症までの期間
|
初回投与
|
再投与
|
初回投与
|
再投与
|
|
a.投与中の発症の場合 投与開始からの日数
|
5~90日
|
1~15日
|
5~90日
|
1~90日
|
2
|
<5日、>90日
|
>15日
|
<5日、>90日
|
>90日
|
1
|
b.投与中止後の 発症の場合 投与中止後の日数
|
15日以内
|
15日以内
|
30日以内
|
30日以内
|
1
|
>15日
|
>15日
|
>30日
|
>30日
|
0
|
2. 経過
|
ALTのピーク値と正常上限との差
|
|
ALPのピーク値と正常上限との差
|
|
投与中止後のデータ
|
8日以内に50%以上の減少
|
|
(該当なし)
|
3
|
30日以内に50%以上の減少
|
|
180日以内に50%以上の減少
|
2
|
(該当なし)
|
|
180日以内に50%未満の減少
|
1
|
不明または30日以内に50%未満の減少
|
|
不変、上昇、不明
|
0
|
30日後も50%未満の減少か再上昇
|
|
(該当なし)
|
-2
|
投与続行および不明
|
|
|
0
|
3. 危険因子
|
肝細胞障害型
|
胆汁うっ滞または混合型
|
|
飲酒あり
|
飲酒または妊娠あり
|
1
|
飲酒なし
|
飲酒、妊娠なし
|
0
|
4. 薬物以外の原因の有無2)
|
カテゴリー1、2がすべて除外
|
2
|
カテゴリー1で6項目すべて除外
|
1
|
カテゴリー1で4つか5つが除外
|
0
|
カテゴリー1の除外が3つ以下
|
-2
|
薬物以外の原因が濃厚
|
-3
|
5. 過去の肝障害の報告
|
過去の報告あり、もしくは添付文書に記載
|
1
|
|
なし
|
0
|
6.好酸球増多(6%以上)
|
あり
|
1
|
|
なし
|
0
|
7. DLST
|
陽性
|
2
|
|
擬陽性
|
1
|
|
陰性および未施行
|
0
|
8.偶然の再投与が行われた時の反応
|
肝細胞障害型
|
胆汁うっ滞または混合型
|
|
単独再投与
|
ALT倍増
|
ALP(T.Bil)倍増
|
3
|
初回肝障害時の併用薬と共に再投与
|
ALT倍増
|
ALP(T.Bil)倍増
|
1
|
偶然の再投与なし、または判断不能
|
|
|
0
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1) 薬物投与前に発症した場合は「関係なし」、発症までの経過が不明の場合は「記載不十分」 と判断して、スコアリングの対象としない。 投与中の発症か、投与中止後の発症化により、a またはb どちらかのスコアを使用する。 2) カテゴリー1:HAV、 HBV、 HCV、 胆道疾患(US)、アルコール、ショック肝 カテゴリー 2:CMV、 EBV. ウイルスはIgM HA 抗体、HBs 抗原、HCV 抗体、IgM CMV 抗体、IgM EB VCA 抗体で判断する。 判定基準:総スコア 2点以下:可能性が低い 3、4点:可能性あり 5点以上:可能性が高い
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参考
- 1. 重篤副作用疾患別対応マニュアル 薬物性肝障害 平成20年4月 厚生労働省
- http://www.info.pmda.go.jp/juutoku/file/jfm0804002.pdf
- 2. 薬物性肝障害スコア計算ソフト 帝京大学医学部内科 滝川一 田辺三菱製薬 提供
- http://www.jsh.or.jp/medical/date/scoresoft.xls
- http://www.jsh.or.jp/medical/date/dil05.pdf
-薬剤性肝障害
[★]
- 英
- antiepileptic drug, antiepileptic antiepileptics
- 関
- てんかん、薬理学
抗てんかん薬
*1 第一選択薬ではない
*2 他薬が無効な精神運動発作のみに使用
*3 てんかん重積の第一選択薬
*4 第一選択薬
新規の抗てんかん薬
抗てんかん薬の選択
- 部分発作:カルバマゼピン、バルプロ酸
- 全般発作:バルプロ酸、フェニトイン
- ミオクローヌス発作:クロナゼパム
[★]
- 英
- congenital anomaly, congenital abnormality
- ラ
- congenitalis anomalia
- 同
- 先天性異常
- 関
- [[]]
[show details]
発生
- 発生第3-8週(妊娠第5-11週)に器官原基形成(発生第3週に三胚葉性胚盤となり、第3週末に中枢神経の分化が始まり第8週までに主要な器官原基が確立される。
感受性の高い時期
妊娠区分
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妊娠初期
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胎齢
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0
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1
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2
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3
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5
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妊娠週数
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0
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1
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15
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妊娠月数
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第1月
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第2月
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第3月
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第4月
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器官原基形成
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原因
- NGY.512
-
- X線:小頭症、二分脊椎、口蓋裂、四肢の異常
- 高熱:無脳症
- 耐糖能異常合併妊娠:種々の奇形:心臓や神経管の異常
[★]
- 英
- teratogen, teratogenic factor
- 同
- 催奇形性物質、催奇形物質、奇形発生因子、催奇形剤
L.138
催奇形因子
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先天異常
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感染因子
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風疹
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白内障,緑内障,心臓異常,聾,歯異常
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サイトメガロウイルス
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小頭症,盲目,精神発達遅滞,胎児死亡
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単純ヘルペスウイルス
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小眼球症,小頭症,網膜異形成
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水痘ウイルス
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肢低形成,精神発達遅滞,筋萎縮
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HIV
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小頭症,発育遅延
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トキソプラズマ症
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水頭症,大脳実質石灰化,小眼球症
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梅毒
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精神発達遅滞,聾
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物理的因子
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X線
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小頭症,脊椎裂,口蓋裂,四肢の異常
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高熱
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無脳症
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化学的因子
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サリドマイド
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四肢の異常,心臓異常
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アミノプテリン
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無脳症,水頭症,唇裂と口蓋裂
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ジフェニルヒダントイン(フェニトイン)
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胎児性ヒダントイン症候群:顔面異常,精神発達遅滞
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バルプロ酸
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神経管異常,心,頭蓋顔面,肢異常
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トリメタジオン
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口蓋裂,心臓異常,泌尿生殖器と骨格の異常
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リチウム
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心臓異常
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アンフェタミン
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唇裂と口蓋裂,心臓異常
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ワルファリン
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軟骨形成不全,小預症
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ACE阻害薬
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発育遅延,胎児死亡
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コカイン
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発育遅延,小頭症,行動異常,腹壁破裂
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アルコール
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胎児性アルコール症候群,短眼険裂,上顎骨発育不全,心臓,異常,精神発達遅滞
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イソトレチノイン(ビタミンA)
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ビタミンA胚子病:小さい異常な形をした耳,下顎骨発育不全,口蓋裂,心臓異常
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有機水銀
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脳性麻痺類似の神経症状
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鉛
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発育遅延,神経学的障害
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ホルモン
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男性化ホルモン(工チステロン,ノル工チステロン)
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女性生殖器男性化:陰唇の癒着,陰核肥大
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ジエチルスチルベストロール(DES)
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子宮,卵管,および腟上部の異常;腟癌;精巣異常
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母親の糖尿病
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さまざまな種類の異常;心臓と神経管の異常が最も一般的
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[★]
- 英
- drug-induced hypersensitivity syndrome DIHS
- 同
- drug rash with eosinophilia and systemic symptoms DRESS,drug-induced delayed multiorgan hypersensitivity syndrome DIDMOS
- 関
- 薬疹
概念
- 高熱と臓器障害を伴う薬疹で、医薬品中止後も遷延化する。多くの場合、発症後2-3週間後にHHV-6の再活性化を生じる。(参考1)
病因
原因薬物
- 原因薬物としては芳香族抗てんかん薬とスルホンアミド系抗菌薬が最も多い (参考2)
- 参考3
病態
- 特定の薬剤を服用した2-6週間後に突然の発熱と紅斑を来たし、ついには紅皮症を呈する。
- リンパ節腫脹、血液学的異常、肝機能障害を伴う。
- 肺炎、腎不全、心筋炎、甲状腺炎、神経学的症状を呈することがある。(参考2)
症状
身体所見
検査
- 血算:白血球増多、異型リンパ球有り、好酸球増多
- 血清学的検査:IgM-抗HHV-6抗体陽性
検査異常の出現頻度
- 参考2
- 肝炎:51%
- 間質性腎炎:11%
- 血液学的異常(好酸球増多、異型単核球):30%
診断基準
- 参考1
- 1. 限られた薬剤投与後に遅発性に生じ、急速に拡大する紅斑。多くの場合、紅皮症に移行する
- 2. 原因薬剤中止後も2週間以上遷延する
- 3. 38 ℃以上の発熱
- 4. 肝機能障害
- 5. 血液学的異常:a、b、c のうち1 つ以上
- a. 白血球増多(11,000/mm3 以上)
- b. 異型リンパ球の出現(5%以上)
- c. 好酸球増多(1,500/mm3 以上)
- 典型DIHS:1 - 7 すべて
- 非典型DIHS:1 - 5 すべて。ただし4 に関しては、その他の重篤な臓器障害をもって代えることができる。
治療
- 薬剤の中止、全身ステロイド療法(要するに静注ということか)。(参考1)
予後
- 完全に治癒する。重症例では生命予後不良。(参考1)
参考
- 1. 重篤副作用疾患別対応マニュアル 薬剤性過敏症症候群
- http://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1a09.pdf
- 2. [charged] Drug eruptions - uptodate [1]
- CLASSIC DRUG REACTION PATTERNSの1項目として記載。
- www.eiken.co.jp/modern_media/backnumber/pdf/MM1012_01.pdf
国試
[★]
- 英
- fetal valproate syndrome
- 関
- バルプロ酸
[★]
- 英
- acid
- 関
- 塩基
ブランステッド-ローリーの定義
ルイスの定義
[★]
- 英
- pro