出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2016/09/23 12:34:04」(JST)
四塩化炭素 | |
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一般情報 | |
IUPAC名 | 四塩化炭素、テトラクロロメタン |
分子式 | CCl4 |
分子量 | 153.82 g/mol |
形状 | 無色液体 |
CAS登録番号 | [56-23-5] |
SMILES | ClC(Cl)(Cl)Cl |
性質 | |
密度と相 | 1.5842 g/cm3, 液体 |
水への溶解度 | 0.08 g/100 mL (20 ℃) |
融点 | −22.9 °C |
沸点 | 76.8 °C |
四塩化炭素(しえんかたんそ、英: carbon tetrachloride)あるいはテトラクロロメタン(英: tetrachloromethane)は、化学式 CCl4 で表される化学物質。
常温・常圧では無色透明の液体で、わずかに甘い特異臭を持つ。水には溶けにくい。エタノールやベンゼンなどと任意の割合で混合する。以前は溶剤のほか、消火剤や冷却材として広く利用され、俗に四塩炭(しえんたん)とも呼ばれていたが、その毒性の為に既に使用が禁止された。現在では試薬としてのみ流通している。
「四塩化炭素」、「テトラクロロメタン」のどちらも IUPAC名として使用できるが、これは無機化合物と見るか有機化合物と見るかで区別されているためである。
四塩化炭素の多くは二硫化炭素の塩素化により生産されている。反応温度は 105 ℃ から 130 ℃ である。
またジクロロメタンやクロロホルム生産時の副生成物としても得られてくる。
四塩化炭素分子は1個の炭素に4個の塩素が結合した四面体構造を取っている。このため分子全体としては双極子モーメントを持たず、無極性分子である。
溶媒としては、他の無極性物質を溶解するのに適している。揮発性があるため、他の塩素系溶媒と同じく特有の臭気を発する。炭素−水素結合がないため、四塩化炭素がフリーラジカル反応を起こすことは難しい。このためハロゲンガスや NBS 等を用いたハロゲン化反応に利用することができる。
不燃性である。
高温下で金属と接触させることによりホスゲンが生成する。水分が共存すると徐々に分解し、鉄などの金属を腐食するので、水分の混入を避けて、風通しのよい冷所に保管する。
20世紀前半には、ドライクリーニングの溶剤、冷却材、消火器の薬剤などに幅広く利用されていた。また機械器具の脱脂に使われ、オーディオなどでは接点復活剤やテープレコーダーヘッドの清掃溶剤として用いられてきた。しかし健康への悪影響が明らかになってくると代替物質への転換が進み、1940年をピークに使用量は減少していった。その後も貯蔵穀物に対する農薬として利用されていたが、アメリカ合衆国では1970年に消費財への使用が禁止された。
モントリオール議定書が成立するまでは、フロンの原料としても大量に使用されていた。その後フロンや四塩化炭素自体がオゾン層破壊物質と考えられるようになったため、四塩化炭素の使用量も減少していった。日本やアメリカ合衆国といった先進国では1996年までに生産が全廃されたが、発展途上国では2006年現在でも生産が認められている。
ニュートリノの検出にも用いられる。またアッペル反応では塩素源として利用される。
IRスペクトル(赤外分光測定)では > 1600 cm−1の領域で大きなシグナルを持たないため、時として赤外分光測定において便利な溶媒として用いられることがある。また水素原子を持たないため、1H−NMRの溶媒としても長年用いられてきた。しかし毒性が大きく溶解力が小さいという欠点を持っているため[1]、分光器によりロックをかけることができる重溶媒を用いることが主流となった。
麻酔性があり、高濃度の蒸気や溶液に晒されることにより中枢神経に悪影響を与え、長期に曝露するなどした場合は昏睡、そして死亡する可能性がある。また慢性的な暴露により肝臓や腎臓に悪影響を与え、また、悪性腫瘍の発生を誘発する可能性もあると見られている。作用機序としては、四塩化炭素がシトクロムP450(cytochrome P450 2E1) により代謝され、反応性の高いトリクロロメチルラジカルを生じるというものが考えられている。国際がん研究機関の発がん性評価では、グループ2Bの「発がん性の可能性がある物質」に分類されている。取り扱う際にはSDSなどにより情報を収集し、充分に注意を払う必要がある。
日本では労働安全衛生法により第二類物質の特別有機溶剤等に、PRTR法により第1種指定化学物質に、毒物及び劇物取締法により原体と製剤が劇物に指定されている。
化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律 (化審法) 昭和四十八年 法律百十七号 第二条 3により第二種特定化学物質として指定されている[2]
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四塩化炭素研究データ
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国試過去問 | 「097G068」「099E078」 |
リンク元 | 「薬物性肝障害」「次亜塩素酸」「水質汚濁に係る環境基準」 |
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関連記事 | 「炭素」「塩化」「四塩化」 |
C
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D
※国試ナビ4※ [099E077]←[国試_099]→[099E079]
肝細胞傷害型 | 肝壊死型 | 中心帯壊死(zone 3) | 四塩化炭素,アセトアミノフェン,ハロタン |
中間帯壊死(zone 2) | フロセミド | ||
周辺帯壊死(zone 1) | リン,硫酸鉄 | ||
肝炎型 | イソニアジド,メチルドパ,ケトコナゾール | ||
肝線維症型 | メトトレキサート,塩化ビニル,ビタミンA | ||
脂肪肝型 | 小滴性 | テトラサイクリン,バルプロ酸,リン | |
大滴性 | エタノール,メトトレキサート | ||
リン脂質症 | アミオダロン,DH剤 | ||
胆汁うっ滞型 | hepatocanalicular | クロルプロマジン,エリスロマイシンエストレート | |
canalicular | C-17アルキル化ステロイド,経口避妊薬,シクロスポリンA | ||
ductular | ベノキサプロフェン | ||
血管障害型 | 肝静脈血栓 | 経口避妊薬,抗腫瘍薬 | |
門脈血栓 | 経口避妊薬 | ||
静脈閉塞性疾患 | 蛋白同化ステロイド,経口避妊薬,抗腫瘍薬 | ||
肝紫斑病 | 蛋白同化ステロイド,経口避妊薬,トロトラスト,アザチオプリン,ファロイジン,塩化ビニル | ||
肉芽腫形成型 | アロプリノール,カルバマゼピン | ||
腫瘍形成型 | 限局性結節性過形成 | 経口避妊薬 | |
腺腫 | 経口避妊薬,蛋白同化ステロイド | ||
癌腫 | 経口避妊薬,蛋白同化ステロイド,トロトラスト,塩化ビニル | ||
血管肉腫 | トロトラスト,塩化ビニル,蛋白同化ステロイド |
表 DDW-J 2004薬物性肝障害ワークショップのスコアリング(肝臓 2005; 46: 85-90より引用) | |||||
肝細胞障害型 | 胆汁うっ滞または混合型 | スコア | |||
1. 発症までの期間 | 初回投与 | 再投与 | 初回投与 | 再投与 | |
a.投与中の発症の場合 投与開始からの日数 |
5~90日 | 1~15日 | 5~90日 | 1~90日 | 2 |
<5日、>90日 | >15日 | <5日、>90日 | >90日 | 1 | |
b.投与中止後の 発症の場合 投与中止後の日数 |
15日以内 | 15日以内 | 30日以内 | 30日以内 | 1 |
>15日 | >15日 | >30日 | >30日 | 0 | |
2. 経過 | ALTのピーク値と正常上限との差 | ALPのピーク値と正常上限との差 | |||
投与中止後のデータ | 8日以内に50%以上の減少 | (該当なし) | 3 | ||
30日以内に50%以上の減少 | 180日以内に50%以上の減少 | 2 | |||
(該当なし) | 180日以内に50%未満の減少 | 1 | |||
不明または30日以内に50%未満の減少 | 不変、上昇、不明 | 0 | |||
30日後も50%未満の減少か再上昇 | (該当なし) | -2 | |||
投与続行および不明 | 0 | ||||
3. 危険因子 | 肝細胞障害型 | 胆汁うっ滞または混合型 | |||
飲酒あり | 飲酒または妊娠あり | 1 | |||
飲酒なし | 飲酒、妊娠なし | 0 | |||
4. 薬物以外の原因の有無2) | カテゴリー1、2がすべて除外 | 2 | |||
カテゴリー1で6項目すべて除外 | 1 | ||||
カテゴリー1で4つか5つが除外 | 0 | ||||
カテゴリー1の除外が3つ以下 | -2 | ||||
薬物以外の原因が濃厚 | -3 | ||||
5. 過去の肝障害の報告 | 過去の報告あり、もしくは添付文書に記載 | 1 | |||
なし | 0 | ||||
6.好酸球増多(6%以上) | あり | 1 | |||
なし | 0 | ||||
7. DLST | 陽性 | 2 | |||
擬陽性 | 1 | ||||
陰性および未施行 | 0 | ||||
8.偶然の再投与が行われた時の反応 | 肝細胞障害型 | 胆汁うっ滞または混合型 | |||
単独再投与 | ALT倍増 | ALP(T.Bil)倍増 | 3 | ||
初回肝障害時の併用薬と共に再投与 | ALT倍増 | ALP(T.Bil)倍増 | 1 | ||
偶然の再投与なし、または判断不能 | 0 | ||||
1) 薬物投与前に発症した場合は「関係なし」、発症までの経過が不明の場合は「記載不十分」 と判断して、スコアリングの対象としない。 投与中の発症か、投与中止後の発症化により、a またはb どちらかのスコアを使用する。 2) カテゴリー1:HAV、 HBV、 HCV、 胆道疾患(US)、アルコール、ショック肝 カテゴリー 2:CMV、 EBV. ウイルスはIgM HA 抗体、HBs 抗原、HCV 抗体、IgM CMV 抗体、IgM EB VCA 抗体で判断する。 判定基準:総スコア 2点以下:可能性が低い 3、4点:可能性あり 5点以上:可能性が高い |
-薬剤性肝障害
次亜塩素酸(じあえんそさん、Hypochlorous acid)は塩素のオキソ酸の1つで、塩素の酸化数は+1である。組成式では HClO と表わされるが、水素原子と塩素原子が酸素原子に結合した構造 H−O−Cl を持つ。不安定な物質であり水溶液中で徐々に分解する。次亜塩素酸および次亜塩素酸の塩類は酸化剤、漂白剤、外用殺菌剤、消毒剤として利用される。
実験室的には水酸化カリウム水溶液などに塩素を通じたりして調整した次亜塩素酸塩水溶液を硫酸で中和し、水蒸気蒸留して遊離酸の水溶液を得る。また、酸化水銀 の四塩化炭素懸濁液に塩素を通じた後に水で抽出したり、あるいは酸化ビスマスを水懸濁液中に塩素を通じることで遊離酸の水溶液を得る方法も知られている。
薄い水溶液としては存在するが、25%以上の濃度では一酸化二塩素に変化するので遊離酸を単離することはできない。濃厚水溶液は淡黄色である。また、遊離酸が弱酸 (pKa = 7.53)<ref>「次亜塩素酸」、『岩波理化学辞CD-ROM版』 第5版、岩波書店、1998年。</ref> のため、次亜塩素酸ナトリウムなどの次亜塩素酸塩水溶液はかなり強い塩基性を示す。
水溶液中でも不安定で、次のような不均化により塩化水素を放出しながら徐々に分解する。
次亜塩素酸やその塩の水溶液は、カルキ臭と呼ばれるプールの消毒槽のようなにおいを持つ。
また、塩素を水に溶かすと、次のような平衡により一部が塩酸と次亜塩素酸となる<ref>「次亜塩素酸」、『世界百科事典CD-ROM版』 V1.22、平凡社、1998年。</ref>。
{\rm Cl_2 + H_2O \ \overrightarrow\longleftarrow \ HCl + HClO} \quad K _{\rm w}=1.56 \times 10^{-4} </math> すなわち、中性~酸性条件ではこの反応はあまり進行しないが、アルカリ性条件では生成する遊離酸が次亜塩素酸塩となり平衡が右に偏るので、次亜塩素酸塩を製造する方法の1つとなる。
\rm Cl_2O + H_2O \longrightarrow 2HClO </math>
\rm HClO + H_2O_2 \longrightarrow HCl + H_2O + O_2 </math>
<references />
項目 | 基準値 |
カドミウム | 0.003mg/L 以下 |
全シアン | 検出されないこと。 |
鉛 | 0.01mg/L 以下 |
六価クロム | 0.05mg/L 以下 |
砒素 | 0.01mg/L 以下 |
総水銀 | 0.0005mg/L以下 |
アルキル水銀 | 検出されないこと。 |
PCB | 検出されないこと。 |
ジクロロメタン | 0.02mg/L 以下 |
四塩化炭素 | 0.002mg/L以下 |
1,2-ジクロロエタン | 0.004mg/L以下 |
1,1-ジクロロエチレン | 0.1mg/L 以下 |
シス-1,2-ジクロロエチレン | 0.04mg/L 以下 |
1,1,1-トリクロロエタン | 1mg/L 以下 |
1,1,2-トリクロロエタン | 0.006mg/L以下 |
トリクロロエチレン | 0.03mg/L 以下 |
テトラクロロエチレン | 0.01mg/L 以下 |
1,3-ジクロロプロペン | 0.002mg/L以下 |
チウラム | 0.006mg/L以下 |
シマジン | 0.003mg/L以下 |
チオベンカルブ | 0.02mg/L 以下 |
ベンゼン | 0.01mg/L 以下 |
セレン | 0.01mg/L 以下 |
硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素 | 10mg/L 以下 |
ふっ素 | 0.8mg/L 以下 |
ほう素 | 1mg/L 以下 |
1,4-ジオキサン | 0.05mg/L以下 |
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