出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2013/06/19 19:00:37」(JST)
ハンチントン病(はんちんとんびょう、英: Huntington's disease)は、大脳中心部にある線条体尾状核の神経細胞が変性・脱落することにより進行性の不随意運動(舞踏様運動、chorea(ギリシャ語で踊りの意))、認識力低下、情動障害等の症状が現れる常染色体優性遺伝病。日本では特定疾患に認定された指定難病である。
一般にハンチントン舞踏病(Huntington's chorea)として知られている。
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かつて「ハンチントン舞踏病」(Huntington's Chorea)と呼ばれていたこともあるが、全身の不随意運動のみが着目されてしまうため、1980年代から欧米では「ハンチントン病」(Huntington's Disease)と呼ばれるようになった。日本では2001年から「ハンチントン病」の名称を用いている。
原因となる変異をもつ場合には、高い確率で40歳前後に発症し、10~20年かけて進行する。世代を経るごとにその発症年齢が早くなること、父親から原因遺伝子を受け継いだときにそれが顕著になる現象も知られている。2006年現在では治療する方法は知られていない。1872年に米国ロングアイランドの医師ジョージ・ハンチントン(George Huntington)によって報告され、人種により異なるが白人での発生率は5-10/100,000、アジア人、アフリカ人ではその数十分の1となる。
原因遺伝子として、第4染色体短腕上にあるhuntingtin遺伝子が同定されている[1]。huntingtin遺伝子の第1エクソンには、CAG(グルタミンをコード)の繰り返し配列が存在する。これは非病原性の場合では11~34コピーの反復であるが、病原性遺伝子では37~876コピーにもなる。繰り返し配列は系代する際に伸長し、特に父方の患者から受け継ぐときには原因不明の機構により大きく増加する。
huntingtin遺伝子は3145アミノ酸残基のHuntingtin(ハンチンチン)タンパク質をコードする。このタンパク質は様々な組織で発現し全長タンパク質は主に細胞質に存在する。他のタンパク質とはとくに明確なアミノ酸配列類似性は無いが、ある種の神経栄養因子の発現量上昇に、転写抑制因子の抑制を通して機能しているという報告がなされている[2][3]。このことから神経栄養因子の量を増加させる何らかの手法が治療法になる可能性もあるかもしれないが、単純な機能喪失変異ではなく優性に作用することからそうではない可能性も高い。
CAG の繰り返しが増加した遺伝子からはアミノ末端のグルタミンの連続が長くなったタンパク質が作られ、このような Huntingtinタンパク質はより凝集を起こしやすくなっている。また長いポリグルタミンは他のタンパク質との相互作用に影響すること、Huntingtinタンパク質自身の切断を促進することなどが報告された。切断されたタンパク質は核に多く存在し、このことが細胞に対する毒性を発揮するさいに必要と考えられている。神経変性を引き起こす詳細な機構はいまだはっきりとはしないが、患者の脳でのミトコンドリアの呼吸鎖の異常やミトコンドリアDNAの欠失率の上昇、アポトーシス機構の関連、転写制御との関連などが指摘されている。 平均的に女児に多い。
南アフリカの「アフリカーナー」と呼ばれる250万人程の集団のうち、100万人は20種類の姓に限られており、これらは20家族の子孫と考えられる。この20家族のうちにハンチントン病の患者が居たために、アフリカーナーの集団にそれが好発することは、遺伝の専門家の間では有名である。本来なら10万人に1人といったレベルの病気であるが、信じられない頻度で見つかる。
遺伝性疾患の為に、根本的な治療法や進行を防止する治療法は現在のところ確立されていない。
ハンチントン病はHuntingtinと呼ばれる特定タンパク質の変異によって起こる病であるが、近年そのHuntingtinの凝集を遅らせる「コンゴーレッド」と言われる物質が明らかになっている。 しかし、その「コンゴーレッド」のままでは使用することが出来ず、更なる改良が待たれている状況である。 仮にこの物質が利用できるようになると神経障害の程度が低くなったり、また病状の進行を遅らせることが出来ると考えられている。
他には胆汁から抽出した物質が持つ神経機能防護作用の利用や胎児の脳細胞を移植する治療法が提案されている。
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