- 英
- calcitonin (Z,PT), CT
- 同
- サイロカルシトニン thyrocalcitonin
- 関
- パラソルモン、甲状腺、副甲状腺。プロカルシトニン
- 「血中カルシウム濃度が高くすぎないように調節する」ホルモン
分類
性状
産生組織
標的組織
作用 (2007年度後期生理学授業プリント)
- 血中カルシウム濃度↓ (血中カルシウム濃度が高いときのみ)
- 破骨細胞に作用して骨吸収を抑制
- 尿細管に作用してCa,P,Na,Clを排泄
- 腸管に作用してカルシウムの吸収を抑制する
- 胃酸分泌を下げる
分泌の調節 (2007年度後期生理学授業プリント)
- 血中のカルシウム濃度(カルシウムイオン、タンパク質に結合しているカルシウムを含む)が高いときにサイロカルシトニンが分泌される。
- 血中カルシウム濃度 5mEq/l このうち血中カルシウムイオン濃度は 2.5 mEq/l
- 分泌調節のポイント:カルシトニン ←Ca2+ + protein binding Ca 。 副甲状腺ホルモン ←Ca2+
分子機構
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カルシトニンのリボンモデル。ヒトのカルシトニンのアミン酸配列;Cys-Gly-Asn-Leu-Ser-Thr-Cys-Met-Leu-Gly-Thr-Tyr-Thr-Gln-Asp-Phe-Asn-Lys-Phe-His-Thr-Phe-Pro-Gln-Thr-Ala-Ile-Gly-Val-Gly-Ala-Pro
カルシトニン (calcitonin) とは、哺乳類では甲状腺の傍濾胞細胞、哺乳類以外では鰓後体のC細胞(calcitonin cellsの略)などから分泌される32アミノ酸残基を有するペプチドホルモンである。動物種によりそのアミノ酸構成は大きく異なる。P.E. Hirschにより1963年に発見された。
目次
- 1 生理
- 2 受容体
- 3 臨床応用
- 4 参考文献
- 5 脚注
- 6 関連項目
生理[編集]
ヒトにおいては甲状腺C細胞以外でも産生されるため、甲状腺を全摘出した後でも血中に検出される。 半減期が短く、このため高カルシトニン状態は持続しにくい。血中カルシトニン高値の場合は、甲状腺髄様癌を疑うべきである。[1]
カルシトニンは血中のカルシウム濃度の上昇により分泌が促進され、カルシウム濃度が低下すると分泌が抑制される。カルシトニンは破骨細胞に存在するカルシトニン受容体(英)に作用して骨からのカルシウムの放出を抑制し、骨へのカルシウムとリン酸の沈着を促進する。尿中へのカルシウムとリン酸の排泄を促進する作用も有する。また長期的には、新たな破骨細胞の形成を抑制して、骨形成作用を相対的に増加させる。腎臓に対しては薬理的用量では腎臓のカルシウム排泄を増加させるが、生理的用量では腎臓のカルシウム排泄を減少させる。生体内でカルシトニンと拮抗する作用を持つ物質は、上皮小体から分泌されるパラトルモン (PTH)である。カルシトニンはガストリン、コレシストキニン、ドーパミン、エストロゲンにより分泌が促進される。
受容体[編集]
カルシトニン受容体は細胞膜上にある膜7回貫通のGタンパク質共役受容体で、Gsサブユニットを介してアデニル酸シクラーゼと結合しており、カルシトニンが結合することで細胞内のcAMPが増加する。カルシトニン受容体は破骨細胞や前破骨細胞に多く発現している。
臨床応用[編集]
血中カルシトニン高値をみた場合は甲状腺髄様癌、多発性内分泌腫瘍2A型(MEN-2A)、髄様癌以外のカルシトニン産生腫瘍を疑い精査する。
骨パジェット病や骨粗鬆症、高カルシウム血症に対する治療薬として、ヒトカルシトニンより効果の強いサケカルシトニン、ブタカルシトニン、合成ウナギカルシトニン(エルカトニン)が用いられている。
参考文献[編集]
- 高橋迪雄監訳 『獣医生理学 第2版』 文永堂出版 2000年 ISBN 4830031824
- 貴邑冨久子、根来英雄 『シンプル生理学 改訂第6版』 南江堂 ISBN 4524247335
- Fawcett, Don Wayne (1994), “The thyroid gland”, Bloom and Forcett, a textbook of histology, 12th ed., New York: Chapman & Hall, pp. 490-497, ISBN 0412046911
脚注[編集]
- ^ 臨床検査データブック2007-2008 医学書院
関連項目[編集]
内分泌器:ホルモン(ペプチドホルモン、ステロイドホルモン) |
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視床下部 - 脳下垂体 |
視床下部
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GnRH - TRH - ドーパミン - CRH - GHRH - ソマトスタチン - ORX - MCH - MRH - MIH
|
|
脳下垂体後葉
|
バソプレッシン - OXT
|
|
脳下垂体中葉
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インテルメジン
|
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脳下垂体前葉
|
αサブユニット糖タンパク質ホルモン(FSH - LH - TSH) - GH - PRL - POMC(ACTH - MSH - エンドルフィン - リポトロピン)
|
|
|
副腎 |
副腎髄質
|
副腎髄質ホルモン(アドレナリン - ノルアドレナリン - ドーパミン)
|
|
副腎皮質
|
副腎皮質ホルモン(アルドステロン - コルチゾール - DHEA)
|
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甲状腺 |
甲状腺
|
甲状腺ホルモン(T3 - T4 - カルシトニン)
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副甲状腺
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PTH
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生殖腺 |
精巣
|
テストステロン - AMH - インヒビン
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卵巣
|
エストラジオール - プロゲステロン - インヒビン/アクチビン - リラキシン(妊娠時)
|
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その他の内分泌器 |
膵臓
|
グルカゴン - インスリン - ソマトスタチン
|
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松果体
|
メラトニン
|
|
|
内分泌器でない器官 |
胎盤:hCG - HPL - エストロゲン - プロゲステロン - 腎臓:レニン - EPO - カルシトリオール - プロスタグランジン - 心臓:ANP - BNP - ET - 胃:ガストリン - グレリン - 十二指腸:CCK - GIP - セクレチン - モチリン - VIP - 回腸:エンテログルカゴン - 脂肪組織:レプチン - アディポネクチン - レジスチン - 胸腺:サイモシン - サイモポイエチン - サイムリン - STF - THF - 肝臓:IGFs(IGF-1 - IGF-2) - 耳下腺:バロチン - 末梢神経系:CGRP - P物質
|
|
誘導タンパク質 |
NGF - BDNF - NT-3
|
|
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Japanese Journal
- 家里 明日美,春日 好雄,原田 道彦,上原 剛
- 信州医学雑誌 60(3), 157-161, 2012-06-10
- Medullary thyroid carcinoma (MTC) is a relatively rare phenomenon. We report three cases of MTC over the past 14years in our department. Two cases were determined out by hypercarcinoembryonic antigene …
- NAID 120004186221
- 脳幹孤束核細胞におけるカルシトニン遺伝子関連ペプチドおよびアドレノメディリンのカルシウムチャネルに対する促進作用と細胞内シグナル伝達機構
- 発熱患者に対するプロカルシトニン (特集 緊急度・重症度指標--検査施行・入院判断のために) -- (検査実施のための指標)
Related Links
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- カルシトニンはカルシウム調節ホルモンのひとつとして副甲状腺ホルモンに拮抗し、血清 カカルシウム濃度を下げ、骨吸収を抑制する事である。またカルシトニンは甲状腺髄様癌 では異常高値となる場合が多く、肺癌など他の悪性腫瘍でも高値となる場合がある ...
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Japan Pharmaceutical Reference
薬効分類名
販売名
注射用カルシトラン10
組成
成分・含量
- 1管中 日局カルシトニン(サケ) 10国際単位(IU)
- 〔カルシトニン(サケ)の活性は,WHOの国際標準品,International Reference Preparation of Calcitonin,Salmon,for Bioassayを基準にして生物学的測定法により測定し,国際単位で表示されている.〕
添加物
- 1管中 乳糖水和物 10mg,pH調整剤,等張化剤
添付溶解液
- 1管に対し生理食塩液(塩化ナトリウムと注射用水) 1mL1管
禁忌
効能または効果
- 用時,添付の溶解液で溶解し,通常,成人にはカルシトニン(サケ)として1回10国際単位(1管)を週2回筋肉内に注射する.なお,症状により適宜増減する.
慎重投与
- 発疹,蕁麻疹等の過敏症状を起こしやすい体質の患者
- 気管支喘息又はその既往歴のある患者
[喘息発作を誘発するおそれがある.]
重大な副作用
ショック(頻度不明)
- ショック症状を起こすことがあるので,観察を十分に行い,不快感,口内異常,喘鳴,眩暈,便意,耳鳴等があらわれた場合には投与を中止すること.
薬効薬理
実験的骨粗鬆症に対する作用5),6)
- カルシトニン(サケ)は,卵巣摘出・低カルシウム食及び腎亜全摘により作製された実験的骨粗鬆症ラットにおいて,骨強度及び骨灰分含量を改善する.
骨保護に働く因子に及ぼす作用7)
- カルシトニン(サケ)は,その血清カルシウム低下作用に伴う糸球体カルシウムろ過量の変化を補った実験系(ラット)において,尿中カルシウム排泄を抑制する.また,ビタミンD欠乏・甲状腺・副甲状腺摘出ラットの腎において,25(OH)-D3から1,25(OH)2-D3への産生を高める.この両作用により生体のカルシウムバランスを正にする.
骨吸収抑制に伴う血清カルシウム低下作用8)
- カルシトニン(サケ)は,各種動物において,骨吸収を抑制する結果,持続的な血清カルシウム低下作用を示す(マウス,ラット,モルモット,ウサギ,イヌ).
有効成分に関する理化学的知見
分子量
性 状
- 白色の粉末である.水に溶けやすい.希酢酸に溶ける.本品20mgを水2mLに溶かした液のpHは5.0?7.0である.吸湿性である.
★リンクテーブル★
[★]
- 次の文を読み、 53~ 55の問いに答えよ。
- 74歳の女性。意欲低下と全身倦怠感とを主訴に来院した。
- 現病歴: 3年前に夫を亡くし、そのころから意欲低下を自覚するようになったが誰にも相談しなかった。 3か月前から意欲低下がこれまでより増悪し、全身倦怠感も徐々に出現した。一昨日、転倒して尻もちをついた。昨日、腰痛も自覚したためかかりつけ医を受診し、カルシトニンの筋肉注射を受け、さらに精査のため紹介されて受診した。
- 既往歴: 68歳で脂質異常症と骨粗鬆症とを指摘され、 HMG-CoA還元酵素阻害薬と活性型ビタミンDとを服用中である。
- 生活歴: 3年前から一人暮らし。喫煙歴と飲酒歴とはない。
- 家族歴:夫が心筋梗塞のため 75歳で死亡。妹が脂質異常症で治療中。
- 現症:意識は清明。身長 153 cm、体重 58 kg。体温 35.8 ℃。脈拍 52/分、整。血圧 116/64 mmHg。甲状腺はびまん性に腫大し硬い。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。
- 検査所見:血液所見:赤血球 408万、 Hb 12.0 g/dl、Ht 38%、白血球 5,300、血小板 17万。血液生化学所見:総蛋白 7.0 g/dl、アルブミン 3.7 g/dl、AST 62 IU/l、ALT 42 IU/l、LD 484 IU/l(基準 176~353)、 ALP 275 IU/l(基準 115~359)、 γ -GTP 3 3IU/l(基準 8~50)、 CK 682 IU/l(基準 30~140)、 CK-MB 15 IU/l(基準 20以下 )、尿素窒素 16 mg/dl、クレアチニン 0.9 mg/dl、尿酸 7.2 mg/dl、血糖 98 mg/dl、総コレステロール 216 mg/dl、トリグリセリド 130 mg/dl、HDLコレステロール 45 mg/dl、Na137 mEq/l、K 4.5 mEq/l、Cl 102 mEq/l、Ca 9.5 mg/dl、TSH 56.3 μU/ml(基準 0.2~4.0)、 FT3 0.8 pg/ml(基準 2.5~4.5)、 FT4 0.2 ng/dl(基準 0.8~2.2)。 CRP 1.0 mg/dl。心電図で肢誘導の低電位を認める。胸部エックス線写真で心胸郭比 54%。
- この患者にみられる CK高値の原因として最も考えにくいのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [108B052]←[国試_108]→[108B054]
[★]
- 82歳の女性。傾眠状態のため家族に連れられて来院した。生来健康だったが先月から血尿、口渇、便秘、悪心および食欲不振が出現していた。昨日から傾眠傾向となり増悪するため同居する息子夫婦が自家用車に乗せて連れてきた。身長 152cm、体重 40kg。体温 36.2℃。脈拍 80/分、整。血圧 142/56mmHg。呼びかけると開眼するが、すぐに閉眼する。眼瞼結膜は貧血様である。口腔内は著明に乾燥している。頸部と腋窩のリンパ節を触知しない。心尖部を最強点とするⅢ/Ⅵの収縮期雑音を聴取する。呼吸音に異常を認めない。腹部は平坦、軟。右鼠径部に径約4cm、弾性硬、可動性不良の腫瘤を触知する。尿所見:赤色調、蛋白1+、糖(-)、潜血3+、沈渣に赤血球多数/1視野、異型性の強い上皮細胞多数/1視野。血液所見:赤血球 380万、Hb 10.8g/dL、白血球 8,100、血小板 13万。血液生化学所見:総蛋白 5.1g/dL、アルブミン 3.2g/dL、総ビリルビン 0.7mg/dL、AST 29U/L、LD 283U/L(基準 176~353)、ALP 146U/L(基準 115~359)、尿素窒素 23mg/dL、クレアチニン 1.3mg/dL、尿酸 11.1mg/dL、血糖 198mg/dL、HbA1c 6.4%(基準 4.6~6.2)、Na 140mEq/L、K 3.5mEq/L、Cl 99mEq/L、Ca 15.0mg/dL、P 2.5mg/dL。
- 輸液とともに投与すべきなのはどれか。2つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [111A054]←[国試_111]→[111A056]
[★]
- 49歳の男性。高カルシウム血症のため入院した。1か月前から食欲不振と全身倦怠感とが強くなったため近医を受診し、血清Ca16.7mg/dl、血清PI.8mg/dlが判明した。入院後、血清生化学検査でPTH1,500pg/ml(基準10~60)、超音波検査で甲状腺右下極に直径1.5cmの腫瘤が描出された。入院後2日目から意識障害が出現し、時間・場所・人に対する見当識が失われている。血清Caは17.5mg/dlこ上昇していた。まず行う治療として適切でないのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [097A050]←[国試_097]→[097A052]
[★]
- 32歳の女性。学校ではクラスで一番身長が低かった。現在まで、月経の発来がない。3年前から手指のしびれと突っ張りを訴えるようになった。昨日、突然家族の呼びかけに応答しなくなり、その状態が10分持続する発作があり来院した。身長140cm、体重52kg。恥毛は認められない。深部腱反射亢進。病的反射はない。血清生化学所見:総蛋白 7.0g/dl、アルブミン 4.2g/dl、Na 140mEq/l, K 4.0mEq/l、Ca 5.2mg/dl、P 6.4 mg/dl。手のX線写真を次に示す。
- この患者で高値を示すのはどれか
- (1) 血清副甲状腺ホルモン濃度
- (2) 血清カルシトニン濃度
- (3) 血清1,25-dihydroxy-vitamin D濃度
- (4) PTH負荷後尿中cAMP排泄量
- (5) 尿細管リン再吸収率
- a. (1)(2)
- b. (1)(5)
- c. (2)(3)
- d. (3)(4)
- e. (4)(5)
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [103E022]←[国試_103]→[103E024]
[★]
- 内分泌器官と分泌されるホルモンの組合せで正しいのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [096G046]←[国試_096]→[096G048]
[★]
- ホルモンと産生組織の組合せで誤っているのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [097G042]←[国試_097]→[097G044]
[★]
- 多発性内分泌腫瘍II型で血中濃度が上昇するのはどれか。
- a. (1)(2)
- b. (1)(5)
- c. (2)(3)
- d. (3)(4)
- e. (4)(5)
[正答]
※国試ナビ4※ [095B061]←[国試_095]→[095B063]
[★]
- 分泌過剰によって骨密度が低下するのはどれか。2つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [104I022]←[国試_104]→[104I024]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [104E026]←[国試_104]→[104E028]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [095B063]←[国試_095]→[095B065]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [101F044]←[国試_101]→[101F046]
[★]
- 英
- hormone
古典的な定義
- 特定の内分泌腺から分泌され、血行によって運ばれ、遠隔部の特定の標的器官に作用して特異的効果を現す物質(PT.403)
例外
- 消化管ホルモン (PT.403)
- 視床下部ホルモン (PT.403)
- 甲状腺濾胞ホルモン?
- カルシトニン?
ホルモンの一覧表
[★]
- 英
- acute pancreatitis
- 関
- 膵炎、慢性膵炎
概念
- 種々の原因で膵酵素が膵内で活性化され、組織を自己消化して起こる急性炎症。
- 原因としてはアルコールと胆石が一般的と思われる。
- 突然上腹部痛を呈し、 種々の腹部所見(軽度の圧痛から反跳痛まで)が見られる。
- 症候、身体所見、および検査値異常として、嘔吐、発熱、頻脈、白血球増加、血中・尿中の膵酵素の上昇を見る。
- 重症急性膵炎は特定疾患治療研究事業の対象疾患である(公費対象)
病因
- アルコール
- 胆石症
- 特発性
- 医原性
- 外傷
- 慢性膵炎急性増悪
- 膵・胆道奇形
- 代謝・栄養障害
- SSUR.626
- アルコール、胆石症、ERCP、手術、薬剤、脂質異常症、副甲状腺亢進症
小児の急性膵炎
- YN.B-82
発症機序
- SSUR.626
- 共通管説:胆石性膵炎
- 膵外分泌亢進-膵管閉塞説:アルコール性膵炎:アルコール化量摂取が膵外分泌を亢進させ、乳頭部の浮腫や痙攣を惹起して膵液の相対的流出障害を起こす。
- Oddi括約筋の痙攣、不溶性蛋白栓の沈殿による膵導管の閉塞、および 膵プロテアーゼの活性化が考えられている(ガイドイラン1)。
- 十二指腸液逆流説:小腸閉塞、Billroth II法再建胃切除術後の輸入脚症候群における急性膵炎
分類
障害組織による分類
- 浮腫性膵炎:炎症に伴いびまん性または限局性に膵臓は腫大し、壊死を伴わないもの。造影CTで不染領域をみとめないもの
- 壊死性膵炎:びまん性または限局性に膵実質が壊死に陥ったもの。壊死組織は造影CTで造影不良をみる。膵壊死組織への細菌感染の有無が予後を規定する。
疫学
- 発生頻度は27.7/10 万人/年
- 男女比=2:1
- アルコール性膵炎は男性に多く、胆石性膵炎は女性に多い。
病態
- SSUR.626
- 膵酵素の膵実質障害 → 炎症反応惹起 → (炎症が高度の場合)高サイトカイン血症 → 活性化された顆粒球による多臓器障害
- 膵酵素、エンドトキシン、顆粒球やマクロファージから産生されたホスホリパーゼA2により肺胞が障害される。
- 膵臓からの滲出液の後腹膜腔への貯留 + サイトカイン血症による血管透過性の亢進 → 血液量減少
症状
- 上腹部腹痛から背部痛、悪心嘔吐、腹部膨満感、発熱。
合併症
- 早期合併症:(重症化例で)DIC、ショック、呼吸不全、腎不全、MODS
- 後期合併症:膵仮性嚢胞(2-3%の症例にみられる)、膵膿瘍、腹腔内膿瘍、出血、重症感染症
検査
CT
- (浮腫性膵炎)単純CTで膵臓の浮腫による腫大、炎症の波及による膵周囲脂肪織の濃度上昇。
- (壊死性膵炎)浮腫性膵炎の所見に加え、造影CTで造影不良領域が認められる。
血液一般検査・生化学
- 白血球:増加
- Plt:低下 (なぜ? DICが存在するのであれば、想像できるが)
- Ht:増加(浸出液増加による血液濃縮)
- Ca:↓(重症のサイン。鹸化壊死で消費) ← また、血中グルカゴン上昇により、カルシトニンが甲状腺より遊離されるため(QB.B-349) おかしくない???
- 血糖:上昇(ランゲルハンス島の破壊)
- BUN:上昇(腎機能障害)
- LDH:上昇(重症例で。組織破壊)
- TG?:血中リパーゼ濃度が上昇し、脂肪が分解されるため、らしい。
逸脱酵素
- 血清アミラーゼ:高値。発症数時間で上昇。3日程度で正常化。尿中アミラーゼは持続日数が長い。鑑別:高アミラーゼ血症
- 血清トリプシン:高値。特異性高い。
- 血清リパーゼ:高値。特異性高い。
- 血清エラスターゼ-I:高値。特異性高い。高値が持続する。膵臓に特異的らしい。アミラーゼ、リパーゼに比べ正常化が遅れるため、経過を見るのに適す(YN.B-80)。
肝機能・胆道系酵素
画像検査
診断
重症度
- 重症度は血清カルシウム、血糖値、BUNで判定できる。血清アミラーゼは参考にならない。
ガイドライン1
- 予後因子3点と造影CT Grade 2以上の場合に重症と判定される。
予後因子(各1点)
- 1. Base Excess≦-3 mEq/L, またはショック(収縮期血圧≦80 mmHg) 代謝性アシドーシス
- 2. PaO2≦60 mmHg (roomair), または呼吸不全(人工呼吸管理が必要) 換気機能低下
- 3. BUN≧40 mg/dL (or Cr≧2 mg/dL), または乏尿(輸液後も1 日尿量が400 mL 以下) 腎機能低下
- 4. LDH≧基準値上限の2 倍 組織障害
- 5. 血小数≦10 万/mm3 血小板の消費
- 6. 総Ca≦7.5 mg/dL 脂肪壊死
- 7. CRP≧15 mg/dL 炎症
- 8. SIRS 診断基準における陽性項目数≧3 全身性の炎症
- 9. 年齢≧70 歳 ストレスに対する適応能力低下
- SIRS診断基準項目:(1)体温>38℃または<36℃,(2)脈拍>90 回/分,(3)呼吸数>20 回/分またはPaCO2<32 torr,(4)白血球数>12,000/mm3か<4,000 mm3または10%幼若球出現
造影CT Grade
- 前腎傍腔 0点
- 結腸間膜根部 1点
- 腎下極以遠 2点
- 膵を便宜的に3 つの区域(膵頭部, 膵体部, 膵尾部) に分け判定する。
- 各区域に限局している場合,または膵の周辺のみの場合 0点
- 2つの区域にかかる場合 1点
- 2つの区域全体を占める,またはそれ以上の場合 2点
- 1点以下 Grade 1
- 2点 Grade 2
- 3点以上 Grade 3
治療
- SSUR.627
- 血液量減少:急速輸液
- 膵臓を休ませる?:高カロリー輸液
- 感染防止:抗菌薬
- 組織障害抑制:膵酵素阻害薬
- 多臓器不全:人工呼吸、血漿交換、腹膜透析、血液透析
- (胆石性膵炎では)膵炎の治療の前に内視鏡的乳頭切開術による胆石除去を行う
- 手術療法:壊死膵組織が感染して膵膿瘍、敗血症となった場合に限り適応。膵壊死部摘除術、膵切除術、open drainageを行い、壊死巣を除去する。
手術適応
- B.352
- 緊急手術を要する疾患と鑑別が困難な場合(穿孔性腹膜炎など)
- 保存治療が奏功しない場合
- 胆道疾患が合併するとき
- 合併症が存在するとき(膿瘍、血腫、仮性嚢胞、慢性膵炎)
ガイドライン
- 1. 日本膵臓学会 - 急性膵炎診療ガイドライン2010
- http://www.suizou.org/APCGL2010/APCGL2010.pdf
- 2. 急性膵炎GL2010改訂出版委員会編/医療・GL(10年)/ガイドライン
- http://minds.jcqhc.or.jp/stc/0011/1/0011_G0000243_GL.html
参考
- 1. 急性膵炎の重症度判定基準 - 日本メディカルセンター
- http://www.nmckk.jp/pdf.php?mode=puball&category=CLGA&vol=23&no=10&d1=2&d2=0&d3=0
- http://www.jslm.org/books/guideline/19.pdf
- 3. 難病情報センター | 重症急性膵炎(公費対象)
- http://www.nanbyou.or.jp/entry/271
国試
- 英
- acute pancreatitis
- 同
- acute pancreatitis
[★]
- 英
- calcium
- 関
- カルシウムイオン、リン
- calcium channel blockers, calcium channels
基準値
- 血清総Ca 8.6-10.1 mg/dl(臨床検査法提要第32版)
- 8.6-10.2 mg/dL (QB) だいたい 9.4 ± 0.8
- 血清Caイオン 1.15-1.30 mmmol/l(臨床検査法提要第32版), 4.6-5.1 mg/dl
血液ガス
- 血液ガスでは (mEq/l)で出されるが 4倍すれば (mg/dl)に変換できる 原子量が約40ゆえ
溶解度積
リン酸カルシウム
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366x10-6
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(30℃)
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リン酸カルシウム
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0.35x10-6
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(38℃)
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炭酸カルシウム
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0.0087x10-6
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(25℃)
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酒石酸カルシウム
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0.0077x10-6
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(25℃)
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シュウ酸カルシウム
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0.00257x10-6
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(25℃)
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オレイン酸カルシウム
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0.000291x10-6
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(25℃)
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パルチミン酸カルシウム
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0.000000161x10-6
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(23℃)
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カルシウムの吸収(SP.744)
- +健康成人の1日あたりの食物Ca摂取0.6g
- +消化管分泌物と脱落上皮細胞のCa 0.6g
- -吸収されるCa 0.7g
- -そのまま排泄 0.5g
- 正味吸収されるCa 0.1g
カルシウムの吸収部位
カルシウム代謝の調節機構
副甲状腺ホルモン
- 1. 破骨細胞に作用してCa,Pが血中へ。
- 2. 腎の遠位尿細管に作用してCa再吸収の亢進、近位尿細管でのP再吸収の抑制。
- 3. 近位尿細管に作用して酵素を活性化し、1,25水酸化ビタミンD3の産生亢進。
1,25(OH)2D3
- 1. 空腸からのCaとPの吸収。
- 2. 骨形成促進。
- 3. 遠位尿細管でのCaとPの再吸収促進。
- 4. 副甲状腺ホルモンの合成を抑制
尿細管における部位別カルシウム輸送
- 糸球体で濾過されるのはイオン化Caと陰イオン複合型Ca(蛋白結合型Caは濾過されない)
- 濾過されたカルシウムのうち95%が再吸収される。
- 近位尿細管:60-70%
- ヘンレループ:20-25%
- 遠位尿細管、集合管:10-15%
近位尿細管
- Na+依存的に再吸収。受動輸送80%、能動輸送20%
- 基底側のCa2+ ATPase, 3Na+-Ca2+逆輸送系
ヘンレループ
- 太いヘンレループ上行脚で
- 受動輸送:管腔内電位が正であるため
遠位尿細管~集合管
- 糸球体濾過量の10-15%が再吸収されている → 量としては少ないが能動的に吸収が行われる部位。
- 能動輸送:管腔内電位が負であるため。
- PTH、カルシトニンに調節されている
- チアジド系利尿薬により細胞内Na↓となるとCa再吸収↑となる!!!! ← ループ利尿薬と違う点。よって高カルシウム血症が起こることがある。
接合尿細管
- 管腔側:Ca2+チャネル/非選択的カチオンチャネル
- 基底側:Na+-K+ ATPase, 3Na+-Ca2+交換系
尿細管におけるカルシウムの輸送の調節 SP.796
- Ca2+の尿中排泄量はNa+の尿中排泄量と比例。循環血漿量が増加するとCa2+排泄も増加
- Ca2+の尿中排泄量は血漿Ca2+濃度と比例する。
血清カルシウム濃度
- 血液中でCa2+は調節を受けて一定に保たれるが、蛋白と結合しているCaはアルブミンの量によって増減する。
- 血清アルブミン濃度 4 g/dl、血清Ca濃度 9mg/dl。補正Ca濃度 9mg/dl → 正常
- 血清アルブミン濃度 2 g/dl、血清Ca濃度 7mg/dl。 → 大変!!低カルシウム血症!! → ホント? ってことになる。アルブミンの量が減ってAlb-Caが減っただけで生理的に重要なCa2+は保たれているのではないか。 → こんな時に補正Ca濃度を用いるのである
- →補正Ca濃度 9mg/dl → 正常
- つまり、低アルブミン血症ではCa2+は保たれているにもかかわらず、血清Caは低値となりそのままでは評価できないために補正を行う。
- 補正Ca濃度(mg/dl)=Ca実測値(mg/dl)+(4-血清アルブミン濃度(g/dl)) ・・・Payneの式
- アルブミンのpIは7より小さく、アシデミアでは負に帯電しているアルブミンが減少、アルカレミアでは負に帯電しているアルブミンが増加する。すなわち、pHが下がるとアルブミンとくっつなくなったCaが増加するので、血液pH0.1の低下につきfreeイオン化Ca(Ca2+)は0.12mg/dl増加する???????????
循環血液量
血清Ca濃度
- 血清Ca濃度↑→PTH↓
- 生理活性のあるのはイオン化Ca(Ca2+)のみ
- 血清Ca濃度=イオン化Ca(45%) + 蛋白結合型Ca(40%) + 陰イオン複合型Ca(15%)
- イオン化Caは一定に保たれる
pH
- アシドーシス :pHが小さくなると負電荷減少:蛋白のCa結合能↓、イオン化Ca↑
- アルカローシス:pHが大きくなると負電荷増加:蛋白Caの結合能↑、イオン化Ca↓→Ca欠乏(低カルシウム血症)
低蛋白血症
- 低蛋白血症の際、蛋白結合型Caは減少するが、イオン化Ca一定。
尿中カルシウム
血中カルシウムと尿中カルシウム
- 薬剤などの影響がなければ、血中カルシウムと尿中カルシウムは相関がありそうである → 副甲状腺ホルモン
血清カルシウムと心電図
元素
- 金属元素。周期表第2族アルカリ土類金属元素
- 原子番号:20
- 元素記号:Ca
- 原子量 40.078 g/mol
臨床関連
参考
- http://www.orth.or.jp/osteoporose/caseizai.html
[★]
- 英
- amyloidosis
- 同
- アミロイド症
- 関
- 難病
[show details]
概念
病型
参考
- http://www.nanbyou.or.jp/sikkan/004_i.htm
- アミロイドーシス(公費対象) - 難病情報センター
- http://www.nanbyou.or.jp/entry/207
- http://amyloid1.umin.ne.jp/guideline2010.pdf
[★]
- 英
- parathyroid hormone, PTH
- 同
- 上皮小体ホルモン, パラソルモン parathormone
- 関
- 上皮小体、カルシトニン
- 副甲状腺、甲状腺
- カルシウム
- 「血中カルシウムイオンの低下」により分泌され、「血中カルシウムイオン濃度を上げる」ホルモン
分類
性状
産生組織
標的組織
作用
2007年度後期生理学授業プリント
-
- リン酸の再吸収↓ ← ビタミンDはリン酸の再吸収↑
- HCO3-排出↑ → 原発性副甲状腺機能亢進症では代謝性アシドーシスを起こす
- 活性ビタミンD3産生↑ (副甲状腺に対してネガティブフィードバックをかける)
-
- カルシウム再吸収↑
- 活性ビタミンD3存在下で、腸管からのカルシウム取り込み↑
YN.D46
- 1. 遠位尿細管でのCa2+再吸収↑→血中Ca↑
- 2. 近位尿細管でのP再吸収↓→血中P↓
- 3. 近位尿細管でのHCO3-再吸収↓→排泄↑→高Cl性代謝性アシドーシス
- 4. 近位尿細管で1α水酸化酵素活性化→1,25-(OH)2-D産生↑→腸管でのCaとPの吸収↑
- 5. 骨芽細胞に作用は破骨細胞の形成・機能↑→Ca2+遊離→血中Ca2+, P, H+↑
骨の形成と吸収 YN.D46
分泌の調節 (2007年度後期生理学授業プリント)
- 血中カルシウムイオン濃度↓→PTH分泌↑
- 血中カルシウムイオン濃度↑→PTH分泌↓
分泌調節のポイント:カルシトニン ←Ca2+ + protein binding Ca 。 副甲状腺ホルモン ←Ca2+
分子機構
臨床関連
臨床関連
[★]
- 英
- procalcitonin
- 関
- カルシトニン
概念
- 甲状腺外で産生されるカルシトニン
- 重症感染症(敗血症、重症敗血症、敗血症ショック)で上昇する炎症のマーカーである。ただし、深在真菌症(真菌単独感染)やウイルス性の炎症では上昇しにくい(参考3)。
資料
- http://radio848.rsjp.net/abbott/pdf/060505.pdf
- 2. モダンメディア 52巻12号2006(新しい検査法)
- http://www.eiken.co.jp/modern_media/backnumber/pdf/MM0612-03.pdf
- 3. Nkkei Medical 2011.6 p.25
[★]
- 英
- thyrocalcitonin, TCT
- 関
- カルシトニン
- カルシトニンのうち、特に甲状腺の濾胞上皮細胞で産生・分泌されるものを指す (2007年度後期生理学授業プリント)
[★]
- 英
- calcitonin gene-related peptide receptor、CGRP receptor
- 関
- カルシトニン遺伝子関連ペプチドレセプター、CGRP受容体、CGRPレセプター
[★]
- 英
- calcitonin receptor, CTR
- 同
- カルシトニンレセプター
- 関
- カルシトニン
[★]
- 英
- calcitonin gene-related peptide CGRP
- 関
- カルシトニン